(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189323
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】燃料ポンプの取付構造
(51)【国際特許分類】
F02M 37/10 20060101AFI20221215BHJP
F02M 37/04 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F02M37/10 B
F02M37/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097849
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 智紀
(72)【発明者】
【氏名】藤木 広
(57)【要約】
【課題】燃料ポンプの燃料タンクへの挿入取付時における突起と嵌合形成部の嵌合による位置決め機能を保持しつつ、セットプレートに作用する応力の低減を図って、セットプレートの破損の防止を図る。
【解決手段】燃料ポンプの取付構造は、燃料タンクの上面部位に形成される開口部を塞ぐ樹脂製のセットプレート24と、このセットプレート24を挟持する金属製のリテーナ26とを備える。そして、セットプレート24には突起34が設けられており、リテーナ26には突起34と嵌合する嵌合形成部36が設けられている。これにより、燃料ポンプの燃料タンクへの挿入取付時における位置決めがなされる。更に、突起34と嵌合形成部36の係合部44には、セットプレート24が燃料タンクのタンク形成面の面方向に相対変位した場合に突起34に作用する応力の低減を図る応力低減手段32が設定されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に設置される燃料ポンプの取付構造であって、
燃料タンクのタンク形成面に形成される前記燃料ポンプを挿入するための開口部を塞ぐ樹脂製のセットプレートと、前記セットプレートを前記燃料タンクの前記開口部を形成する前記タンク形成面との間に挟持する金属製のリテーナとを備え、
前記燃料ポンプの前記燃料タンクへの挿入取付時における位置決めのために、前記セットプレートには前記リテーナ側に向けて突出する突起が設けられており、前記リテーナには前記突起の垂直外周面に嵌合する嵌合形成部が設けられており、
前記突起と前記嵌合形成部の係合部には、前記セットプレートが前記燃料タンクのタンク形成面の面方向に相対変位した場合に前記突起に作用する応力の低減を図る応力低減手段が設定されている、燃料ポンプの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料ポンプの取付構造であって、
前記応力低減手段は、前記突起の根元がR面形状に形成されているとともに、前記嵌合形成部が前記R面形状の位置から離間した位置に配設された構成とされている、燃料ポンプの取付構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の燃料ポンプの取付構造であって、
前記応力低減手段は、前記嵌合形成部に嵌合する前記突起が支柱部と屈曲変形する屈曲部とにより形成されており、前記屈曲部が前記嵌合形成部と当接する位置側に配設されている、燃料ポンプの取付構造。
【請求項4】
燃料タンク内に設置される燃料ポンプの取付構造であって、
燃料タンクのタンク形成面に形成される前記燃料ポンプを挿入するための開口部を塞ぐ樹脂製のセットプレートと、前記セットプレートを前記燃料タンクの前記開口部を形成する前記タンク形成面との間に挟持する金属製のリテーナとを備え、
前記燃料ポンプの前記燃料タンクへの挿入取付時における位置決めのために、前記セットプレートには前記リテーナ側に向けて突出する突起が設けられており、前記リテーナには前記突起の垂直外周面に嵌合する嵌合形成部が設けられており、
前記突起は、前記リテーナを燃料タンクのタンク形成面に固定後に前記セットプレートから取り除き可能な形状に形成されており、固定後に取り除かれる、燃料ポンプの取付構造。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料ポンプの取付構造であって、
前記突起の前記セットプレートから取り除き可能な形状構成は、前記突起の根元部の径が本体部より径小部に形成された構成とされている、燃料ポンプの取付構造。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料ポンプの取付構造であって、
前記突起に形成される径小部は、前記突起が前記セットプレートに接続される位置に形成されるU形状環状溝の底面の接続面から上方に離間した位置に形成されている、燃料ポンプの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、燃料ポンプの取付構造に関する。特に、燃料タンク内に位置決めされて取付けられる燃料ポンプの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪自動車又は4輪自動車等の車両には、燃料タンクに貯留される液体燃料(ガソリン)をエンジンに供給する燃料供給経路に燃料ポンプが備えられる。この燃料ポンプは、通常、燃料タンク内に位置決めされて配置される。
【0003】
燃料ポンプの燃料タンク内への取付構造は、燃料タンクのタンク形成面に形成される燃料ポンプ挿入用の開口部を塞ぐ樹脂製のセットプレートと、このセットプレートを燃料タンクの上面との間に挟持する金属製のリテーナとを備えて構成される。通常、燃料ポンプを挿入するための開口部は燃料タンクの上面に形成されるが、2輪自動車の燃料タンクにおいては、底面又は側面に形成されることもある。かかるセットプレートとリテーナの配置構成において、セットプレートにはリテーナ側に向けて突出する突起が設けられており、リテーナにはこの突起に嵌合する嵌合形成部が設けられている。これにより、燃料ポンプの燃料タンクへの挿入取付時に、この突起と嵌合形成部の嵌合により位置決めがされて燃料ポンプは取付けられる(下記特許文献1の
図10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した燃料ポンプの燃料タンクへの取付構造にあっては、樹脂製で形成されるセットプレートの燃料膨潤、またはセットプレートとリテーナの熱膨張差が生じた場合に、セットプレートが破損する恐れがある。すなわち、かかる場合には、セットプレートの突起とリテーナの嵌合形成部が、燃料タンクの開口面と平行な面方向に相対的に変位し、これによりセットプレートに異常な応力が作用し、破損する恐れがある。
【0006】
而して、本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、上述した点に鑑みて創案されたものであって、燃料ポンプの燃料タンクへの挿入取付時における突起と嵌合形成部の嵌合による位置決め機能を保持しつつ、セットプレートに作用する応力の低減を図って、セットプレートの破損の防止を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本明細書に開示の燃料ポンプの取付構造は、次の手段をとる。
【0008】
第1の手段は、燃料タンク内に設置される燃料ポンプの取付構造であって、燃料タンクのタンク形成面に形成される前記燃料ポンプを挿入するための開口部を塞ぐ樹脂製のセットプレートと、前記セットプレートを前記燃料タンクの前記開口部を形成する前記タンク形成面との間に挟持する金属製のリテーナとを備え、前記燃料ポンプの前記燃料タンクへの挿入取付時における位置決めのために、前記セットプレートには前記リテーナ側に向けて突出する突起が設けられており、前記リテーナには前記突起の垂直外周面に嵌合する嵌合形成部が設けられており、前記突起と前記嵌合形成部の係合部には、前記セットプレートが前記燃料タンクのタンク形成面の面方向に相対変位した場合に前記突起に作用する応力の低減を図る応力低減手段が設定されている、燃料ポンプの取付構造である。
【0009】
上記第1の手段によれば、セットプレートの突起とリテーナの嵌合形成部との係合部には応力低減手段が設定される。これにより燃料膨潤等によりセットプレートが燃料タンクのタンク形成面の面方向に相対変位した場合でも、突起に作用する応力の低減を図ることができて、セットプレートの破損の防止を図ることができる。
【0010】
なお、上記第1の手段によれば、セットプレートの突起とリテーナの嵌合形成部との係合部の構成により、従来と同様に、燃料ポンプの燃料タンクへの挿入取付時における位置決めは確実に行われる。
【0011】
第2の手段は、上述した第1の手段の燃料ポンプの取付構造であって、前記応力低減手段は、前記突起の根元がR面形状に形成されているとともに、前記嵌合形成部が前記R面形状の位置から離間した位置に配設された構成とされている、燃料ポンプの取付構造である。
【0012】
上記第2の手段によれば、応力低減手段は、リテーナに形成される嵌合形成部の位置が、セットプレートに形成される突起のR面形状の根元位置から離間した位置に配設される構成とされることにより構成される。このようにリテーナの嵌合形成部の位置がセットプレートの突起の根元位置から離間した位置とされることにより、セットプレートが相対変位した場合に嵌合形成部と突起との係合部に作用する応力の低減を図ることができる。これにより、セットプレートの破損の防止を図ることができる。
【0013】
また、第2の手段によれば、リテーナに形成される嵌合形成部の位置が、セットプレートに形成される突起の根元位置から離間した位置に配設される。この結果、突起の根元位置に形成するR面形状を従来に比べ大きく形成することができる、これにより突起の根元における応力集中の低減を図ることができる。
【0014】
第3の手段は、上述した第1の手段又は第2の手段の燃料ポンプの取付構造であって、前記応力低減手段は、前記嵌合形成部に嵌合する前記突起が支柱部と屈曲変形する屈曲部とにより形成されており、前記屈曲部が前記嵌合形成部と当接する位置側に配設されている、燃料ポンプの取付構造である。
【0015】
上記第3の手段によれば、応力低減手段はリテーナの嵌合形成部に嵌合するセットプレートの突起が支柱部と屈曲変形する屈曲部とにより形成される。そして、屈曲部が嵌合形成部と当接する位置側に配設されているので、屈曲部により相対変位が生じた場合の変位を受けることになるので、応力の低減を図ることができる。
【0016】
第4の手段は、燃料タンク内に設置される燃料ポンプの取付構造であって、燃料タンクのタンク形成面に形成される前記燃料ポンプを挿入するための開口部を塞ぐ樹脂製のセットプレートと、前記セットプレートを前記燃料タンクの前記開口部を形成する前記タンク形成面との間に挟持する金属製のリテーナとを備え、前記燃料ポンプの前記燃料タンクへの挿入取付時における位置決めのために、前記セットプレートには前記リテーナ側に向けて突出する突起が設けられており、前記リテーナには前記突起の垂直外周面に嵌合する嵌合形成部が設けられており、前記突起は、前記リテーナを燃料タンクのタンク形成面に固定後に前記セットプレートから取り除き可能な形状に形成されており、固定後に取り除かれる、燃料ポンプの取付構造である。
【0017】
上記第4の手段によれば、セットプレートの突起はリテーナを燃料タンクのタンク形成面に固定後にセットプレートから取り除かれる構成となっている。したがって、セットプレートを位置決めしてリテーナに取付けた後においては、セットプレートの突起とリテーナの嵌合形成部の嵌合はないため、燃料膨潤等によりセットプレートの相対変位が生じた場合であっても応力の作用が生じることがなく、セットプレートの破損の防止を確実に図ることができる。
【0018】
なお、上記第4の手段においても、上述した第1の手段と同様に、燃料ポンプの燃料タンクへの挿入取付時においては、セットプレートの突起とリテーナの嵌合形成部との係合部の構成により、従来と同様に、燃料ポンプの燃料タンクへの位置決めは確実に行われる。そして、燃料ポンプの燃料タンク内への挿入後において、突起が取り除かれた後においては、リテーナによるセットプレートの挟持により燃料ポンプは確実に位置決めされる。
【0019】
第5の手段は、上述した第4の手段の燃料ポンプの取付構造であって、前記突起の前記セットプレートから取り除き可能な形状構成は、前記突起の根元部の径が本体部より径小部に形成された構成とされている、燃料ポンプの取付構造である。
【0020】
第6の手段は、上述した第5の手段の燃料ポンプの取付構造であって、前記突起に形成される径小部は、前記突起が前記セットプレートに接続される位置に形成されるU形状環状溝の底面の接続面から上方に離間した位置に形成されている、燃料ポンプの取付構造である。
【0021】
上記第5の手段及び第6の手段によれば、突起の根元部の径が本体部より径小部に形成されており、この径小部において、突起の本体部は折損されて取り除かれる。これにより、突起の取り除き時におけるセットプレートの身食いを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本明細書に開示の燃料ポンプの取付構造によれば、燃料ポンプの燃料タンクへの挿入取付時における突起と嵌合形成部の嵌合による位置決め機能を保持しつつ、セットプレートに作用する応力の低減を図って、セットプレートの破損の防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】2輪自動車の燃料タンクに燃料ポンプを搭載した構成を示す模式図である。
【
図2】第1の対策構成の応力低減手段の第1実施形態を示し、
図1のII矢視から見た上面図である。
【
図6】第1の対策構成の応力低減手段の第2実施形態を示す断面図である。
【
図8】第2の対策構成の実施形態を示し、
図1のII矢視から見た上面図である。
【
図10】
図8を斜め上方から見た斜視図であり、突起を取り除く前の状態を示す図である。
【
図11】
図10と同様の斜視図であり、突起を取り除いた後の状態を示す図である。
【
図12】第2の対策構成の変形実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本明細書に開示の技術である燃料ポンプの取付構造の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、本明細書の説明における左右、上下等の方向表示は、当該図示状態における方向を示すものであり、特に指定しない限り、燃料タンクの車両等に搭載した状態の方向を示すものではない。
【0025】
<燃料タンク10内への燃料ポンプ12の取付構造の全体構成>
図1は2輪自動車の燃料タンク10に燃料ポンプ12を搭載した構成の模式図を示す。
図1に示す燃料タンク10は密封箱形状に形成されており、箱形状は、
図1で見て、上面部位14、下面部位16、右側面部位18、左側面部位20から形成されている。この各面部位14、16、18、20が燃料タンク10のタンク形成面である。なお、本実施形態の燃料タンク10は金属製で形成されており、内部に液体燃料(ガソリン)が貯留可能とされている。なお、図示は省略されているが、燃料タンク10の上面部位14には液体燃料を燃料タンク10内に注入するための注入蓋装置が開閉可能に設定されている。
【0026】
図1において、燃料タンク10の上面部位14には、燃料ポンプ12挿入用の開口部22が形成されており、この開口部22を通じて燃料タンク10内に燃料ポンプ12が挿入されるようになっている。燃料ポンプ12挿入用の開口部22の形状は、普通には円形状とされている。燃料ポンプ12における上方位置にはセットプレート24が一体的に形成されて配置されており、前述の燃料ポンプ12挿入用の開口部22を塞ぐように配置される。このセットプレート24の形状も円形状とされている。燃料ポンプ12とセットプレート24とは一体的とされており、セットプレート24は開口部22を形成する燃料タンク10の上面部位14の上面に配置される。なお、セットプレート24は樹脂製とされており、燃料ポンプ12のケース部材と一体的に形成されている。
【0027】
図1に示されるように、セットプレート24はリテーナ26により燃料タンク10の上面部位14との間に挟持される形態として配置される。したがって、リテーナ26は燃料ポンプ12挿入用の開口部22の上方位置にあって、セットプレート24を覆って配置される形態となっている。なお、リテーナ26は金属製であり、リテーナ26の外周部において、ボルトナット等の締結具28により、燃料タンク10の上面部位14に固定されて配置される。これにより、リテーナ26は燃料タンク10の上面部位14に位置決めされて配置された状態となる。
【0028】
なお、
図1において、燃料タンク10内における燃料ポンプ12の下端部に接続配置されているのは燃料フィルタ30である。また、燃料ポンプ12の上部における燃料タンク10外の位置には、燃料ポンプ12に関する各種備品が配置されている。これらの備品については、後述する。
【0029】
<対策構成の種別>
上述した燃料タンク10内への燃料ポンプ12の取付構造において、本実施形態が特徴とするのは、従来技術の問題点として説明した、セットプレート24の燃料膨潤、またはセットプレート24とリテーナ26の熱膨張差が生じた場合に生じるセットプレート24の破損を防止するための対策構成である。本明細書に開示の燃料ポンプ12の取付構造における、その対策構成としては2つの対策構成がある。第1の対策構成は、セットプレート24に形成する突起34とリテーナ26に形成する嵌合形成部36との係合部44に応力低減手段32を設定する形態である。第2の対策構成は、セットプレート24に形成する突起34を燃料ポンプ12を燃料タンク10内に挿入して位置決めした後、取り除く形態である。以下、対策構成を順に説明する。
【0030】
<第1の対策構成である応力低減手段32の第1実施形態>
先ず、第1の対策構成である応力低減手段32の第1実施形態について説明する。この応力低減手段32の第1実施形態は、
図2~
図4に示される。
図2は
図1におけるII矢視から見た上面図である。
図3は
図2におけるIII―III線矢視断面を示す。
図4は
図2におけるIV-IV線矢視断面を示す。
【0031】
図2~
図4に示すように、応力低減手段32の第1実施形態では、セットプレート24には突起34が設けられており、リテーナ26には嵌合形成部36が設けられている。突起34と嵌合形成部36は燃料ポンプ12の燃料タンク10への挿入取付時における位置決めのために設けられる。そのため、セットプレート24の突起34はリテーナ26側に向けて突出する形態として配置されており、リテーナ26の嵌合形成部36は突起34の垂直外周面35に嵌合する形態として配置されている。
【0032】
前述もしたようにセットプレート24とリテーナ26の配設構成は、セットプレート24は燃料ポンプ12の上部位置に一体的に配置されており、円形状に形成されている。そして、リテーナ26はこのセットプレート24を上方から覆う形態として配設されている。このため、セットプレート24及び燃料ポンプ12は一体としてリテーナ26に対して周方向に回動可能な構成となっている。しかし、セットプレート24の突起34とリテーナ26の嵌合形成部36との係合部44の係合構成により位置決めされる構成となっている。その結果、燃料ポンプ12の燃料タンク10に対する位置決めがされる。この位置決め機能は従来と同様の機能である。なお、リテーナ26の燃料タンク10への位置固定は、
図2に示されるリテーナ26の外周部に穿設された取付孔38を通じて、
図1に示されるボルトナット等の締結具28により燃料タンク10の上面部位14に取付けられることにより固定される。
【0033】
第1実施形態の応力低減手段32は、突起34と嵌合形成部36の係合部44の配置関係により構成されている。係合部44の配置関係は、
図3及び
図4に示すように、突起34の根元46がR面形状48に形成されており、この根元46から立設形成された突起34の垂直外周面35における根元46から離間した位置において係合する置関係として配設されている。すなわち、突起34の根元46がR面形状48に形成されているとともに、嵌合形成部36がR面形状48の位置から離間した位置に配設された構成とされている。これにより、セットプレート24が燃料タンク10の上面部位14の面方向に相対変位した場合に、後述する作用効果で説明するように、突起34に作用する応力の低減を図る構成となる。
【0034】
図5は
図3に対比して示す従来の突起34と嵌合形成部36との係合部44の構成を示す。
図5に示すように、従来の係合部44の構成は、突起34と嵌合形成部36との係合位置が、突起34の根元46から離間することなく配設された構成となっている。この構成によれば、燃料膨潤等によりセットプレート24とリテーナ26が面方向に相対変位した場合に生じる応力が、直接的に突起34の根元46に集中する。そのため、
図5に符号50で示すように根元46に亀裂が入り、セットプレート24が破損し損傷する恐れがある。
【0035】
なお、従来から、突起34の根元46の形状はR面形状48とされており、上述の突起34の根元46に作用する応力集中の緩和を図ることが行われている。これは、リテーナ26の嵌合形成部36をプレス加工で形成する場合に生じる角部のダレ形状を利用して、突起34の根元46の形状をR面形状48とするものである。しかし、このR面形状48を大きくして応力緩和を図ろうとする場合には、セットプレート24とリテーナ26の組付け時に、突起34のR面形状48部分にリテーナ26の嵌合形成部36が乗り上げることになる。このため、従来の構成におけるR面形状48の形成による応力緩和には限度がある。
【0036】
なお、
図2に示すように、燃料ポンプ12の上部位置には、パイプ体60とコネクタ62が設置されている。パイプ体60は燃料ポンプ12により汲み上げられるガソリンをエンジンに送給するための配管である。コネクタ62は燃料タンク10の内部の電気備品に電気接続するための電気接続具である。なお、燃料ポンプ12の上部位置には、その他の各種の備品が設置されているが、本技術の特徴とは関係が薄いことから、図示は省略した。
【0037】
<応力低減手段32の第1実施形態の作用効果>
上述した第1の対策構成である応力低減手段32の第1実施形態によれば、リテーナ26の嵌合形成部36は、セットプレート24に形成される突起34の根元46から離間した位置に配設された構成とされる。したがって、突起34の根元46に形成するR面形状48は制約を受けることなく大きく形成することが可能となる。これにより、先ずは、R面形状48により突起34の根元46の応力集中の緩和を図ることができて、セットプレート24が破損し損傷することを防止する作用効果をなすことができる。そして、この第1実施形態における突起34の根元46のR面形状48の形成は、従来のようにセットプレート24とリテーナ26の組付けに影響を与えることがない。
【0038】
次に、リテーナ26の嵌合形成部36がセットプレート24の突起34の根元46から離間した位置に配設された構成とされることにより、リテーナ26とセットプレート24との相対変位により生じる作用力も、突起34の根元46から離間した位置となる。これにより、リテーナ26とセットプレート24との間に相対変位が生じた場合には、突起34の係合部44と根元46との間の撓み変形により吸収するができて、セットプレート24に亀裂50が生じて破損することを防止する作用効果をなす。
【0039】
<第1の対策構成である応力低減手段32の第2実施形態>
次に、第1の対策構成である応力低減手段32の第2実施形態について説明する。応力低減手段32の第2実施形態は、
図6及び
図7に示される。
図6は上述した第1実施形態における
図4に対応した第2実施形態の断面図である。
図7は
図6のVII矢視を示す。
図6及び
図7に示すように、応力低減手段32の第2実施形態は、リテーナ26に形成される嵌合形成部36に嵌合する突起34が、支柱部40と屈曲部42とにより形成される。
【0040】
図7に示すように、支柱部40と屈曲部42とを組み合わせた突起34の断面形状は円柱形状であり、
図6及び
図7で見て、右側位置に切り込み形状が形成されて、2分割形状として形成されている。これにより、支柱部40は剛性高く形成されており、屈曲部42は屈曲変形可能な形状とされている。そして、屈曲部42は嵌合形成部36と当接する位置側に配設されている。
【0041】
なお、第2実施形態では、突起34と嵌合形成部36が配設される位置、すなわち、係合部44の配設位置におけるリテーナ26とセットプレート24の配設は、重ね合わされた配設形態とされている。なお、
図6及び
図7において、破線枠で囲んだ部分が屈曲部42の配設位置である。
【0042】
なお、支柱部40と屈曲部42とからなる突起34の根元46における周囲形状は、U溝52が円環状に形成されている。また、支柱部40と屈曲部42との間の底部形状も、U溝53が直線状に形成されている。
【0043】
<応力低減手段32の第2実施形態の作用効果>
上述した応力低減手段32の第2実施形態は、突起34が支柱部40と屈曲部42で形成され、屈曲部42はリテーナ26に形成される嵌合形成部36側に配設されて、屈曲可能な構成とされている。これにより、リテーナ26とセットプレート24との間に相対変位が生じた場合には、セットプレート24に形成された突起34の屈曲部42が弾性変形して、突起34と嵌合形成部36との係合部44に生じる応力低減を図ることができる。その結果、セットプレート24に亀裂が生じて破損することを防止する作用効果をなす。
【0044】
なお、
図6に示すように、第2実施形態の突起34の屈曲部42の根元の形状もU溝53に形成されている。この形状によっても、応力低減が図られる。
【0045】
<第2の対策構成の実施形態>
次に、第2の対策構成の実施形態について説明する。第2の対策構成の実施形態は、
図8~
図11に示される。
図8は前述した第1の対策構成における
図2と同様に、第2の対策構成について、
図1のII矢視から見た上面図である。
図9は
図8のIX―IX線矢視断面図である。
図10は
図8を斜め上方から見た斜視図であり、突起34Aを取り除く前の状態を示す図である。
図11は
図10と同様の斜視図であり、突起34Aを取り除いた後の状態を示す図である。なお、第2の対策構成の実施形態の構成において、前述した第1の対策構成における各実施形態と実質的に同じ構成については、同じ符号を付して示しており、これにより重複説明を省略した場合がある。
【0046】
図9に示すように、第2の対策構成の実施形態の基本形態は、前述した
図5に示す形態と同様の形態であるが、突起34Aが長く形成された構成とされている。そして、突起34Aがリテーナ26を燃料タンク10の上面部位14に固定後にセットプレート24から取り除き可能な形状構成とされており、固定後に取り除かれる構成となっている。
【0047】
したがって、第2の対策構成の実施形態においても、燃料ポンプ12の燃料タンク10への挿入取付時においては、その燃料ポンプ12の位置決めのためにセットプレート24にはリテーナ26側に向けて突出する突起34が設けられている。そして、この突起34Aによる位置決めした固定後の取り除き作業を容易とするために、
図9及び
図10に示すように、リテーナ26より飛び出した形状とされている。これにより、位置決め固定後の突起34Aを取り除くための折損作業を容易としている。なお、突起34Aの取り除き作業はニッパ等の切断工具で切断してもよい。
【0048】
突起34Aはセットプレート24と樹脂製により一体的に成形されるものであるので、セットプレート24を樹脂成形する際の樹脂の流入通路の一部として設定することもできる。
【0049】
本実施形態においても、
図9に示すように突起34Aの根元46の周囲形状はU形状環状溝54とされており、このU形状環状溝54はセットプレート24の上面から一段下げた座面形状となっており、このU形状環状溝54の位置で折損もしくは切断を行う。
【0050】
なお、本実施形態においても、リテーナ26には突起34の垂直外周面35に嵌合する嵌合形成部36が設けられており、この突起34Aと嵌合形成部36の係合により位置決めが行われる。
【0051】
<第2の対策構成の変形実施形態>
図12は上述した第2の対策構成の変形実施形態を示す。この変形実施形態は、突起34Bは本体部57と径小部56とから形成されており、突起34Bの根元46において径小部56を設けた構成である。径小部56は
図12に示す突起34Bの形状構成において、突起34Bがセットプレート24に接続される位置に形成されるU形状環状溝54の底面の接続面58からわずかに上方に離間した位置に形成されている。径小部56の径幅H2は、突起34Bのセットプレート24への接続面58におけるU形状環状溝54の径幅H1より大幅に小径とされている。これにより、この変形実施形態における突起34Bの取り除きは、
図9に示すU形状環状溝54の位置ではなく、径小部56で行われることになる。これにより、突起34Bの取り除きはこの径小部56で行うことができて、突起34Bの削除時において、セットプレート24の身食いを防止することができる。
【0052】
<第2の対策構成の実施形態の作用効果>
先ず、第2の対策構成の実施形態においても、燃料ポンプ12を燃料タンク10へ取付けるための挿入時においては、第1の対策構成の実施形態の場合と同様に、セットプレート24に突起34Aが設定され、リテーナ26に嵌合形成部36が形成されている。これにより、
図9及び
図10に示すように、突起34Aと嵌合形成部36との係合部44により、従来と同様に確実に位置決め作用がなされる。
【0053】
次に、上記により突起34Aと嵌合形成部36の係合部44の作用により位置決めがなされて、セットプレート24がリテーナ26及び燃料タンク10に位置決め固定された後は、
図11に示されるように嵌合形成部36に係合した突起34Aが取り除かれる。この状態は
図12に示す破線で囲まれたT部分の突起34Aが取り除かれた状態である。これにより、セットプレート24の燃料膨潤等によりセットプレート24とリテーナ26との間に面方向の相対変位が生じたとしても、突起34Aと嵌合形成部36との間に当接作用が生じることがない。したがって、セットプレート24に応力による破損作用を生じることがない。
【0054】
(他の実施形態)
本明細書に開示の技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態の燃料ポンプの取付構造は、2輪自動車の燃料タンクに取り付けた場合であったが、4輪自動車等の車両の燃料タンクへの取付構造には、広く適用可能である。
【0056】
また、上記実施形態における燃料ポンプの燃料タンクの取付位置は、燃料タンク10の上面部位14の位置であったが、下面部位16の位置であっても良い。特に、2輪自動車にあっては、燃料タンク10の下面部位16の位置に取り付けられることがよくある。更には、燃料タンク10の側面部位18、20の位置に取り付ける構造とすることもできる。
【0057】
また、
図6に示されるように第1の対策構成である応力低減手段32の第2実施形態では、係合部44の配設位置におけるリテーナ26とセットプレート24の配設は、重ね合わされた配設形態とされていた。しかし、かかる係合部の配設は、第1実施形態と同様に離間した位置の配設形態であってもよい。すなわち、第1実施形態の
図3及び
図4と同様の離間した配設形態であってもよい。
【0058】
また、
図3及び
図4に示す応力低減手段32の第1実施形態の突起34の構成は、第2実施形態の
図6及び
図7に示すように、支柱部40と屈曲部42とに分割した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 燃料タンク
12 燃料ポンプ
14 上面部位
16 下面部位
18 右側面部位
20 左側面部位
22 開口部
24 セットプレート
26 リテーナ
28 締結具
30 燃料フィルタ
32 応力低減手段
34 突起
34A 突起
34B 突起
35 垂直外周面
36 嵌合形成部
38 取付孔
40 支柱部
42 屈曲部
44 係合部
46 突起の根元
48 R面形状
50 亀裂
52 U溝
53 U溝
54 U形状環状溝
56 径小部
57 本体部
58 接続面
60 パイプ体
62 コネクタ