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特開2022-189326高分子フィルム用コーティング剤組成物、並びにそれを用いた改質フィルムの製造方法及び改質フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189326
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】高分子フィルム用コーティング剤組成物、並びにそれを用いた改質フィルムの製造方法及び改質フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20221215BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221215BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D171/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097854
(22)【出願日】2021-06-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八田 明生
(72)【発明者】
【氏名】小澤 真貴子
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DF001
4J038HA166
4J038HA446
4J038KA08
4J038KA09
4J038NA06
4J038NA11
4J038PB02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】
高分子フィルム上に優れた流滴性及び耐湿潤擦傷性を有する被膜部を形成できる高分子フィルム用コーティング剤組成物、及びそれを用いた改質フィルムの製造方法及び改質フィルムを提供する。
【解決手段】
高分子フィルム用コーティング剤組成物は、無機粒子(A)及び酸イオンを含有する。酸イオンは、還元蒸留-インドフェノール青吸光光度法で定量される硝酸イオン、滴定法で定量される塩化物イオン及び液体クロマトグラフィーで定量される酢酸イオンから選ばれる少なくとも一つである。コーティング剤組成物は、その固形分100質量部に対して、酸イオンを0.001~2.0質量部の割合で含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子(A)及び下記の酸イオンを含有する高分子フィルム用コーティング剤組成物であって、
前記コーティング剤組成物の固形分100質量部に対して、前記酸イオンを0.001~2.0質量部の割合で含有することを特徴とするコーティング剤組成物。
酸イオン:還元蒸留-インドフェノール青吸光光度法で定量される硝酸イオン、滴定法で定量される塩化物イオン及び液体クロマトグラフィーで定量される酢酸イオンから選ばれる少なくとも一つ
【請求項2】
前記コーティング剤組成物の固形分100質量部に対して、前記酸イオンを0.01~1.5質量部の割合で含有する請求項1に記載のコーティング剤組成物。
【請求項3】
前記酸イオンが、硝酸イオン及び塩化物イオンから選ばれる少なくとも一つである請求項1又は2に記載のコーティング剤組成物。
【請求項4】
更に、ポリオキシアルキレン誘導体及びポリグリセリンから選ばれる少なくとも一つのエーテル化合物(B)を含有する請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティング剤組成物。
【請求項5】
前記無機粒子(A)と前記エーテル化合物(B)の固形分の合計を100質量部とした場合に、前記無機粒子(A)を20~99質量部、及び前記エーテル化合物(B)を1~80質量部の割合で含有する請求項4に記載のコーティング剤組成物。
【請求項6】
高分子フィルムからなるベースフィルム部と、前記ベースフィルム部の表面の少なくとも一部に請求項1から5のいずれか一項に記載のコーティング剤組成物から形成された被膜部とを備えることを特徴とする改質フィルム。
【請求項7】
高分子フィルムの表面の少なくとも一部に、請求項1から5のいずれか一項に記載のコーティング剤組成物を塗布する塗布工程を含むことを特徴とする改質フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子フィルム用コーティング剤組成物、並びにそれを用いた改質フィルムの製造方法及び改質フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用ハウスに用いるフィルムとして、ポリエチレン等の樹脂製の透明な高分子フィルムが広く使用されている。しかし、一般的に高分子フィルムの表面は疎水性であるため、農業用ハウスに用いた場合に温度や湿度の変化によりその表面に微細な水滴が付着し、結露や曇りを生じやすい。その結果、太陽光線の透過率が低下し、作物の発育不良を招くことがある。さらに、フィルムに付着した水滴が農業用ハウス内の植物上に落下することにより、植物の病害等の原因となることもある。そのため農業用ハウスに用いるフィルムには、透明性に加えて、優れた防曇性や流滴性が求められている。
【0003】
特許文献1及び2には、防曇性や流滴性を向上するために、基材である高分子フィルム上に所定のコロイド状無機化合物及び親水性樹脂を含有するコーティング剤組成物からなる被膜部を有する改質フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-146733号公報
【特許文献2】特開2003-13038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、コーティング剤組成物が塗布された改質フィルムの保管時や展張作業時には、改質フィルム同士または改質フィルムが他の物品と擦れることがある。また改質フィルム展張後も、改質フィルムが風などにより動くことで改質フィルムを支持する骨材と擦れることがある。このような摩擦、特に展張後の高湿度環境における摩擦は、被膜部の部分的な剥離の原因となり、改質フィルムの性能低下を招く場合がある。
【0006】
そこで本発明は、高分子フィルム上に優れた流滴性及び耐湿潤擦傷性を有する被膜部を形成できる高分子フィルム用コーティング剤組成物、及びそれを用いた改質フィルムの製造方法及び改質フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採る。
[1]無機粒子(A)及び下記の酸イオンを含有する高分子フィルム用コーティング剤組成物であって、前記コーティング剤組成物の固形分100質量部に対して、前記酸イオンを0.001~2.0質量部の割合で含有することを特徴とするコーティング剤組成物。
酸イオン:還元蒸留-インドフェノール青吸光光度法で定量される硝酸イオン、滴定法で定量される塩化物イオン及び液体クロマトグラフィーで定量される酢酸イオンから選ばれる少なくとも一つ
[2]前記コーティング剤組成物の固形分100質量部に対して、前記酸イオンを0.01~1.5質量部の割合で含有する[1]のコーティング剤組成物。
[3]前記酸イオンが、硝酸イオン及び塩化物イオンから選ばれる少なくとも一つである[1]又は[2]のコーティング剤組成物。
[4]更に、ポリオキシアルキレン誘導体及びポリグリセリンから選ばれる少なくとも一つのエーテル化合物(B)を含有する[1]から[3]のいずれかのコーティング剤組成物。
[5]前記無機粒子(A)と前記エーテル化合物(B)の固形分の合計を100質量部とした場合に、前記無機粒子(A)を20~99質量部、及び前記エーテル化合物(B)を1~80質量部の割合で含有する[4]のコーティング剤組成物。
[6]高分子フィルムからなるベースフィルム部と、前記ベースフィルム部の表面の少なくとも一部に[1]から[5]のいずれかのコーティング剤組成物から形成された被膜部とを備えることを特徴とする改質フィルム。
[7]高分子フィルムの表面の少なくとも一部に、[1]から[5]のいずれかのコーティング剤組成物を塗布する塗布工程を含むことを特徴とする改質フィルムの製造方法。
【0008】
なお、本明細書において「○○~△△」で示した数値範囲はその上限及び下限を含む範囲を表す。つまり、「○○~△△」は「○○以上、△△以下」を意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高分子フィルム上に優れた流滴性及び耐湿潤擦傷性を有する被膜部を形成できる高分子フィルム用コーティング剤組成物、及びそれを用いた改質フィルムの製造方法及び改質フィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪高分子フィルム用コーティング剤組成物≫
本発明の高分子フィルム用コーティング剤組成物(以下、「コーティング剤組成物」ともいう)は、無機粒子(A)及び酸イオンを含有する。コーティング剤組成物は、更にエーテル化合物(B)を含有することが好ましい。
【0011】
<無機粒子(A)>
無機粒子(A)は、コーティング剤組成物中に分散できる、より具体的にはゾルを形成できるものであればよく、従来公知の無機酸化物を使用可能である。無機粒子(A)としては、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、チタニアを用いることができ、中でもアルミナ及びシリカから選ばれる少なくとも一つを含むものが好ましい。無機粒子(A)は1種又は2種以上を用いることができる。
【0012】
無機粒子(A)は、その表面の少なくとも一部にシラノール化合物の縮合重合物等が付着した複合粒子であってもよい。シラノール化合物の縮合重合物が表面に付着した無機粒子(A)は、前記した無機酸化物の分散体存在下において、シラノール形成性有機シラン化合物を加水分解し、生成したシラノール化合物を縮合重合することにより得ることができる。シラノール形成性有機シラン化合物としては、トリアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類、モノアルコキシシラン類等が挙げられる。
【0013】
トリアルコキシシラン類としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリプロポキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。ジアルコキシシラン類としては、ジメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。また、モノアルコキシシラン類としては、トリメチルメトキシシラン等が挙げられる。これらのシラノール形成性有機シラン化合物のうち、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルジメトキシシラン及びメチルトリエトキシシランが好ましい。
【0014】
無機粒子(A)の粒子径は特に制限されないが、1~100nmが好ましく、5~50nmがより好ましく、8~40nmが更に好ましい。なお、本明細書中における無機粒子の粒子径の分布は、電子顕微鏡写真により20個の無機粒子の粒子径を測定して求めたものである。
【0015】
<酸イオン>
酸イオンは、硝酸イオン、塩化物イオン及び酢酸イオンから選ばれる少なくとも一つである。特に酸イオンは、硝酸イオン及び塩化物イオンから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0016】
本明細書において、それぞれの酸イオンは所定の分析手段により定量される。硝酸イオンは、JIS K 0102に記載の方法に準ずる還元蒸留-インドフェノール青吸光光度法で定量される。塩化物イオンは、JIS A 1154に記載の塩化物イオン電極を用いた電位差滴定法に準ずる滴定法で定量される。酢酸イオンは液体クロマトグラフィーで定量される。液体クロマトグラフィーとしては、例えばJIS K 0127に準拠するイオンクロマトグラフィーを用いることができる。
【0017】
<エーテル化合物(B)>
エーテル化合物(B)は、ポリオキシアルキレン誘導体及びポリグリセリンから選ばれる少なくとも一つである。エーテル化合物(B)は、1種又は2種以上を用いることができる。コーティング剤組成物は、エーテル化合物(B)を含有することにより耐湿潤擦傷性が向上し、また、ぬれ性が良好となるためコーティング剤組成物を均一に塗布することが容易となる。
【0018】
[ポリオキシアルキレン誘導体]
ポリオキシアルキレン誘導体としては、特に制限はなく、従来公知のものが使用可能である。例えば、アルキレンオキシド(共)重合体、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンを用いることができる。
【0019】
アルキレンオキシド(共)重合体としては、1種又は2種以上のアルキレンオキシドを重合したものであればよい。また、重合方法も、ブロック重合及びランダム重合のいずれであってもよい。アルキレンオキシドの種類は特に制限されないが、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。アルキレンオキシド(共)重合体の数平均分子量は500~40000のものが好ましく、1000~30000のものがより好ましい。
【0020】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、炭素数1~26の脂肪族アルコール、炭素数1~26の脂肪酸、及びアルキル基の炭素数1~26のアルキルフェノール及び炭素数1~26のモノアルキルアミンに、複数のアルキレンオキシドが付加されているものが挙げられる。上記脂肪族アルコール、脂肪酸、アルキルフェノール及びモノアルキルアミンの炭素数は6~20が好ましく、8~18がより好ましい。また、それぞれの炭化水素鎖は直鎖であってもよいし、分岐していても良い。脂肪族アルコール及び脂肪酸の炭化水素鎖は、飽和であっても不飽和であってもよい。付加されるアルキレンオキシドの種類は特に限定されないが、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。この場合、分子中のプロピレンオキシドの付加モル数に対するエチレンオキシドの付加モル数のモル比は、特に制限はないが、エチレンオキシド/プロピレンオキシド=20~100/80~0(モル比)のものが好ましい。この中でも、エチレンオキシド/プロピレンオキシド=40~100/60~0(モル比)であることがより好ましい。また、複数種のアルキレンオキシドが付加されている場合、ブロック重合されていてもよいし、ランダム重合されていてもよい。付加されるアルキレンオキシドの付加モル数は、合計で3~300モルが好ましく、5~100モルがより好ましく、8~40がより好ましい。
【0021】
ポリエーテル変性シリコーンとしては、特に制限はなく、例えば、ABn型ポリエーテル変性シリコーン、側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、両末端型ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル基とアルキル基の両方が側鎖、又は、末端に導入されたアルキルポリエーテル変性シリコーン、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族化合物、又は、脂肪酸化合物で封鎖されたもの、両末端型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族化合物、又は、脂肪酸化合物で封鎖されたもの等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。具体的な商品名としては、信越シリコーン社製の商品名KF-6011、KF-6011P、KF-6012、KF-6013、KF-6015、KF-6016、KF-6017、KF-6017P、KF-6004、KF-6043、KF-6048、KF-6028、KF-6028P、KF-6038、X-22-4952、X-22-4272、KF-6123、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-355、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-644、KF-6020、KF-6204、X-22-4515、KF-6004、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製の商品名TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4450、TSF4446、TSF4452、TSF4460、SF1188A、Silsoft840、Silsoft860、Silsoft870、Silsoft875、Silsoft876、Silsoft895、Silsoft900、SF1528、SF1540、東レ・ダウコーニング社製の商品名SH3771M、SH3773M、SH3775M、SS-2802、SS-2804、FZ-2222、FZ-2233、CB-2250、BY22-008M、BY11-030、BY25-337、5200 Formulation Aid、ES-5612 Formulation Aid、ES-5300 Formulation Aid、FZ-2104、FZ-2110、FZ-2123、FZ-2164、FZ-2191、FZ-5609、L-7001、L-7002、L-7604、OFX-0309 FLUID、OFX-5211 FLUID、SF8410 FLUID、OFX-0193、SH3745 FLUID、SH3771、SH8400 FLUID、SH8700 FLUID、Y-7006、FZ-2215、FZ-2203、旭化成ワッカーシリコーン社製の商品名L03、L033、L053、L066等が挙げられる。これらポリエーテル変性シリコーンの製造方法は、特に限定されず、従来公知技術を適宜採用することができる。例えばハイドロジェンシリコーンにアルキレンオキシドを含有するポリエーテル化合物をヒドロシリル化反応により付加する方法等が挙げられる。
【0022】
ポリエーテル変性シリコーンは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキシドの付加物であることが好ましい。この場合、分子中のプロピレンオキシドの付加モル数に対するエチレンオキシドの付加モル数のモル比は、特に制限はないが、エチレンオキシド/プロピレンオキシド=80~100/20~0(モル比)のものが好ましい。この中でも、エチレンオキシド/プロピレンオキシド=95~100/5~0(モル比)であることがより好ましい。
【0023】
ポリエーテル変性シリコーンは、シロキサン結合を主体とする主鎖とポリエーテル結合を有する側鎖とを有する。分子中における側鎖の含有量に対する主鎖の含有量の質量比は、特に制限はないが、主鎖/側鎖=10~90/90~10(質量比)であることが好ましい。
【0024】
ポリエーテル変性シリコーンの粘度は、特に制限はないが、25℃における動粘度が10~10,000mm/sであることが好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上させる。なお、動粘度は、キャノン・フェンスケ粘度計を用いて測定した。
【0025】
[ポリグリセリン]
ポリグリセリンとしては、特に制限はなく、従来公知のものが使用可能である。ポリグリセリンの重合度は特に限定されず、2~20が好ましく、4~10がより好ましい。ポリグリセリンの具体例としては、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、ドデカグリセリン等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
<コーティング剤組成物の配合割合>
コーティング剤組成物は、コーティング剤組成物の固形分100質量部に対して、酸イオンを0.001~2.0質量部の割合で含有するが、0.01~1.5質量部の割合で含有することが好ましく、更に0.05~1.0質量部の割合で含有することがより好ましい。酸イオンの配合割合が0.001~2.0質量部の範囲内であれば、優れた耐湿潤擦傷性を実現できる。
【0027】
また、コーティング剤組成物は任意の量のエーテル化合物(B)を含有することができる。流滴性及び耐湿潤擦傷性の観点から、無機粒子(A)とエーテル化合物(B)の固形分の合計を100質量部とした場合に、無機粒子(A)を20~99質量部、及びエーテル化合物(B)を1~80質量部の割合で含有することが好ましく、更に、無機粒子(A)を40~70質量部、及びエーテル化合物(B)を30~60質量部の割合で含有することがより好ましい。
【0028】
コーティング剤組成物は、通常、液体溶媒、好ましくは水を含有する。液体溶媒の含有割合は特に限定されないが、コーティング剤組成物の塗布性及び被膜部形成性の観点から、90~99.5質量%が好ましく、より好ましくは95~99質量%である。すなわち、コーティング剤組成物中の溶質(各成分の合計)の濃度(以下、「純分濃度」という)は0.5~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
【0029】
<その他の添加物>
コーティング剤組成物には、その他にも従来公知の添加物を目的に応じて添加することができる。そのような添加物としては、例えば、界面活性剤、バインダー、着色剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、防黴剤、抗菌剤、防汚剤、紫外線吸収剤、防腐剤、滑剤等が挙げられる。
【0030】
≪コーティング剤組成物の製造方法≫
コーティング剤組成物は、酸イオンを含む酸を液体溶媒に溶解した後、無機粒子(A)を混合撹拌することにより製造される。無機粒子(A)は液体溶媒に完全に分散し、ゾルを形成していることが好ましい。コーティング剤組成物がエーテル化合物(B)や他の添加剤を含有する場合、無機粒子(A)を液体溶媒に分散させた後に他の成分と混合することが好ましい。
【0031】
≪改質フィルムの製造方法≫
本発明の改質フィルムは、高分子フィルムの表面の少なくとも一部にコーティング剤組成物を塗布する塗布工程を含む製造方法により製造される。
【0032】
<高分子フィルム>
高分子フィルムは、透明性を有する樹脂からなるものであれば、特に限定されない。高分子フィルムは熱可塑性樹脂フィルム及び熱硬化性樹脂フィルムのいずれでもよく、熱可塑性樹脂フィルムが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、芳香族ビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。また、高分子フィルムは単層でも多層でもよい。
【0033】
オレフィン系樹脂としては、エチレン又は炭素原子数が3以上のα-オレフィンの単独重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、2種以上のα-オレフィンの共重合体等が挙げられる。尚、α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。上記オレフィン系樹脂は、好ましくは、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、又はエチレン・プロピレン共重合体である。ポリオレフィン系樹脂は、二つ以上のポリオレフィン系樹脂を混合して用いることもできる。
【0034】
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0035】
高分子フィルムには、その他にも従来公知の樹脂用添加剤を目的に応じて添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、防霧剤、保温剤、着色剤等が挙げられる。
【0036】
改質フィルムの製造に用いる高分子フィルムは、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、火炎処理等により表面処理されているか、あるいは、アンダーコート層が形成された表面を備えてもよい。高分子フィルムの厚さは、特に限定されない。
【0037】
上記塗布工程において、高分子フィルムにコーティング剤組成物が塗布される。コーティング剤組成物を塗布する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、グラビアコート法、スプレーコート法、浸漬コート法、ロールコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、エアナイフコート法等を採用することができる。塗布量及び塗膜の厚さは、特に限定されないが、塗膜乾燥後の被膜として0.05~3.0g/mが好ましく、0.1~2.0g/mがより好ましい。
【0038】
改質フィルムを製造する方法において、塗布工程の後、必要に応じて、形成された塗膜を乾燥する工程(以下、「乾燥工程」という)を備えることができる。本発明において、乾燥工程を行う場合、自然乾燥、冷風乾燥、熱風乾燥、赤外線乾燥、又はこれらを組み合わせて塗膜を乾燥することができる。
【0039】
上述の製造方法により得られた改質フィルムは、高分子フィルムからなるベースフィルム部と、その表面の少なくとも一部にコーティング剤組成物から形成された被膜部とを備える。改質フィルムの被膜部は、ベースフィルム部の1面側のみに形成されていてもよいし、両面側に形成されていてもよい。
【0040】
本発明の改質フィルムの用途に特に制限はないが、農業用ハウスに用いることが特に好ましい。改質フィルムの被膜部の表面を傾斜させつつ地面に向けた状態で展張することにより、被膜部表面に付着した水滴を改質フィルムに沿って下方に流すことができると共に、農業用ハウス内の高湿度環境においても優れた耐擦傷性を発揮できるからである。
【実施例0041】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は質量基準である。
【0042】
≪コーティング剤組成物の原料≫
コーティング剤組成物の製造に用いた原料は以下の通りである。
【0043】
<無機粒子(A)>
A-1:粒子径17~25nmの粒状結晶型アルミナ
A-2:粒子径10~17nmの板状結晶型アルミナ
A-3:粒子径15~30nmの板状結晶型アルミナ
A-4:粒子径8~12nmの粒状結晶型アルミナ
A-5:粒子径10~15nmの粒状アルミナ変性シリカ
A-6:粒子径30~40nmの粒状アルミナ変性シリカ
【0044】
<エーテル化合物(B)>
B-1:主鎖/側鎖=50/50(質量比)、エチレンオキシド/プロピレンオキシド=100/0(モル比)、25℃動粘度が600mm/sのポリエーテル変性シリコーン
B-2:主鎖/側鎖=40/60(質量比)、エチレンオキシド/プロピレンオキシド=100/0(モル比)、25℃動粘度が1,000mm/sのポリエーテル変性シリコーン
B-3:炭素数12~13の脂肪族混合アルコールのエチレンオキシド10モル及びプロピレンオキシド10モルのランダム付加体
B-4:ラウリルアルコールのエチレンオキシド10モル付加体
B-5:炭素数9~11の脂肪族混合2級アルコールのエチレンオキシド9モル付加体
B-6:オレイルアルコールのエチレンオキシド14モル付加体
B-7:ステアリルアルコールのエチレンオキシド20モル付加体
B-8:エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロック重合ポリマー(E-P-E型、エチレンオキシドの重合割合が45%、数平均分子量2000)
B-9:ポリグリセリン(重合度4~10)
【0045】
<酸イオン>
C-1:硝酸
C-2:塩酸
C-3:酢酸
C-4:硫酸
【0046】
≪コーティング剤組成物の作製≫
上記の原料を用いて高分子フィルム用コーティング剤組成物を作製した。
【0047】
<実施例1-1>
水4900部に対して硝酸イオン(酸イオン)が0.05部になるよう水と硝酸(C-1)を混合して撹拌した後、粒子径17~25nmの粒状結晶型アルミナ(無機粒子:A-1)49.95部を徐々に加えて30分以上攪拌混合し、無機粒子を完全に水に分散させた。さらにポリエーテル変性シリコーン(エーテル化合物:B-1)25部と、炭素数12~13の脂肪族混合アルコールのエチレンオキシド10モルプロピレンオキシド10モルランダム付加体(エーテル化合物:B-3)25部を加えて30分以上攪拌混合し、純分濃度2%のコーティング剤組成物(X-1)を調製した。
【0048】
<実施例1-2~1-8、比較例1-1~1-4>
実施例1-1と同様にして、下記表1に示す組成のコーティング剤組成物(X-2)~(X-8)、(Y-1)~(Y-4)を調製した。なお、酸イオンの原料である硝酸(C-1)、塩酸(C-2)、酢酸(C-3)及び硫酸(C-4)は、コーティング剤組成物中の対応する酸イオンの含有割合が表1に記載の酸イオンの質量部と一致するよう混合した。
【0049】
<液安定性>
コーティング剤組成物(X-1)~(X-8)、(Y-1)~(Y-4)の液安定性を下記の方法により評価した。その結果を表1に示す。
[評価方法]
100gのコーティング剤組成物を、容積100cmのガラス容器に収容して密閉した後、20℃で24時間静置保管した。保管中のコーティング剤組成物の状態を観察し、分離するまでの時間を下記の基準に基づき評価した。
◎:24時間後に分離無し
○:12時間以上、24時間未満で分離
×:12時間未満で分離
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1-1~1-8及び比較例1-4のコーティング剤組成物は、硝酸イオン、塩化物イオン及び酢酸イオンの少なくとも一つを含むため、優れた液安定性を有していた。一方、比較例1-1~1-3は、硝酸イオン、塩化物イオン及び酢酸イオンのいずれも含まないため、液安定性で劣っていた。
【0052】
≪高分子フィルムの作製≫
続いて、コーティング剤組成物を塗布する高分子フィルムを作製した。
【0053】
<作製例1>
エチレン・1-ブテン共重合体(エチレン単位量:95%、密度:0.920g/cm、MFR2.1g/10分)を、直径75mmでリップ間隙3mmのダイを取り付けたインフレーション成形(樹脂押出温度:200℃、BUR=1.8)に供し、厚さ150μmのオレフィン樹脂フィルムを得た。次いで、このオレフィン重合体フィルムの表面にコロナ放電処理を施し、表面処理オレフィン樹脂フィルム(以下、「高分子フィルム(F-1)」という)を得た。コロナ放電処理面のぬれ張力を、JIS K 6768に準ずる方法により測定したところ、44mN/mであった。
【0054】
<作製例2>
エチレン・1-ブテン共重合体に代えて、エチレン・1-ヘキセン共重合体(エチレン単位量:96%、密度:0.930g/cm、MFR(1.0g/10分)を用いた以外は、作製例1と同様の操作を行い、表面処理オレフィン樹脂フィルム(以下、「高分子フィルム(F-2)」という)を得た。コロナ放電処理面のぬれ張力は40mN/mであった。
【0055】
<作製例3>
エチレン・1-ブテン共重合体に代えて、エチレン・酢酸ビニル共重合体(エチレン単位量:93%、MFR(1.5g/10分)を用いた以外は、作製例1と同様の操作を行い、表面処理オレフィン樹脂フィルム(以下、「高分子フィルム(F-3)」という)を得た。コロナ放電処理面のぬれ張力は42mN/mであった。
【0056】
<作製例4>
エチレン・1-ブテン共重合体に代えて、ポリエチレン(密度:0.927g/cm、MFR(4.0g/10分)を用いた以外は、作製例1と同様の操作を行い、表面処理オレフィン樹脂フィルム(以下、「高分子フィルム(F-4)」という)を得た。コロナ放電処理面のぬれ張力は44mN/mであった。
【0057】
<作製例5>
エチレン・1-ブテン共重合体に代えて、エチレン・プロピレン共重合体(エチレン単位量:4%、密度:0.90g/cm、MFR(8.0g/10分)を用いた以外は、作製例1と同様の操作を行い、表面処理オレフィン樹脂フィルム(以下、「高分子フィルム(F-5)」という)を得た。コロナ放電処理面のぬれ張力は43mN/mであった。
【0058】
≪改質フィルムの作製及び評価≫
上記のコーティング剤組成物及び高分子フィルムを用いて改質フィルムを作製し、その後、下記試験方法により改質フィルムを評価した。
【0059】
<実施例2-1>
コーティング剤組成物(X-1)を、ベースフィルム(F-1)のコロナ放電処理面に、絶乾塗布量が0.2g/mとなるように浸漬法により塗布し、温風乾燥機にて70℃で乾燥し、高分子フィルム(F-1)のコロナ放電処理面上にコーティング剤組成物(X-1)からなる被膜部を有する改質フィルム(M-1)を得た。次いで、改質フィルム(M-1)を用いて以下の(1)~(3)の試験を行った。その結果を下記表2に示す。
【0060】
<実施例2-2~実施例2-8及び比較例2-1~比較例2-4>
表2に示すコーティング剤組成物、高分子フィルム及び絶乾塗布量を用いたこと以外は実施例2-1と同様にして、改質フィルムM-2~M-12を得た。その後、各改質フィルムを用いて以下の(1)~(3)の試験を行った。その結果を表2に示す。
【0061】
(1)初期流滴性
水温60℃の恒温水槽の上方に、改質フィルムの被膜部が温水槽に向くように、且つ、水平に対して15度の傾斜をつけて、改質フィルムを配置した。被膜部に接触した水蒸気が水滴となって付着する状況を目視観察し、水滴の付着面積が10%未満となるまでに要した時間を測定し、以下の基準で初期流滴性を評価した。
◎:15分未満であった(初期流滴性に非常に優れる)。
○:15分以上30分未満であった(初期流滴性に優れる)。
×:30分以上であり、水滴の付着面積が10%以上であった(初期流滴性に劣る)。
【0062】
(2)流滴持続性
上記(1)と同じ要領で、改質フィルムを、7日間連続で配置した後の水滴の付着状態を目視観察し、以下の基準で流滴持続性を評価した。
◎:水滴の付着がなかった(流滴持続性に非常に優れる)。
○:水滴の付着面積が10%未満であった(流滴持続性に優れる)。
×:水滴の付着面積が10%以上であった(流滴持続性に劣る)。
【0063】
(3)耐湿潤擦傷性
大栄科学精機製作所社製学振型染色堅牢度試験機のアームの摩擦面に300gの荷重をかけた状態で実験直前に水を噴霧して湿潤状態とした改質フィルムに対し10往復摩擦させた。摩擦処理した改質フィルムを上記(1)と同様にして恒温水層の上方に配置して、1時間に渡って水蒸気を接触させた。
1時間経過した時点において、高分子フィルムからの被膜部の剥離の程度を観察し、以下の基準で耐湿潤擦傷性を評価した。
◎:高分子フィルムからの被膜部の剥離面積が10%未満であった(耐湿潤擦傷性に非常に優れる)。
○:高分子フィルムからの被膜部の剥離面積が10%以上50%未満であった(耐湿潤擦傷性は実用レベルである)。
×:高分子フィルムからの被膜部の剥離面積が50%以上であった(耐湿潤擦傷性に劣る)。
【0064】
【表2】
【0065】
実施例2-1~2-8の改質フィルムは、初期流滴性、流滴持続性及び耐湿潤擦傷性に優れていた。一方、比較例2-1及び2-2の改質フィルムは、用いたコーティング剤組成物が硝酸イオン、塩化物イオン及び酢酸イオンのいずれも含んでいないため、耐湿潤擦傷性が劣っていた。比較例2-3の改質フィルムは、用いたコーティング剤組成物が硝酸イオン、塩化物イオン及び酢酸イオンの代わりに硫酸イオンを含んでいたため、初期流滴性、流滴持続性及び耐湿潤擦傷性の全てが十分ではなかった。比較例2-4の改質フィルムは、用いたコーティング剤組成物は硝酸イオンを過剰に含有していたため、初期流滴性、流滴持続性及び耐湿潤擦傷性の全てが十分ではなかった。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ及びシリカから選ばれる少なくとも一つの無機粒子(A)、下記の酸イオン、及び水を含有する高分子フィルム用コーティング剤組成物であって、
前記コーティング剤組成物中の水の割合が90~99.5質量%であり、
前記コーティング剤組成物の固形分100質量部に対して、前記酸イオンを0.05~1.0質量部の割合で含有することを特徴とするコーティング剤組成物。
酸イオン:還元蒸留-インドフェノール青吸光光度法で定量される硝酸イオン、滴定法で定量される塩化物イオン及び液体クロマトグラフィーで定量される酢酸イオンから選ばれる少なくとも一つ
【請求項2】
前記酸イオンが、硝酸イオン及び塩化物イオンから選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載のコーティング剤組成物。
【請求項3】
更に、ポリオキシアルキレン誘導体及びポリグリセリンから選ばれる少なくとも一つのエーテル化合物(B)を含有する請求項1又は2に記載のコーティング剤組成物。
【請求項4】
前記無機粒子(A)と前記エーテル化合物(B)の固形分の合計を100質量部とした場合に、前記無機粒子(A)を20~99質量部、及び前記エーテル化合物(B)を1~80質量部の割合で含有する請求項3に記載のコーティング剤組成物。
【請求項5】
高分子フィルムからなるベースフィルム部と、前記ベースフィルム部の表面の少なくとも一部に請求項1からのいずれか一項に記載のコーティング剤組成物から形成された被膜部とを備えることを特徴とする改質フィルム。
【請求項6】
高分子フィルムの表面の少なくとも一部に、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティング剤組成物を塗布する塗布工程を含むことを特徴とする改質フィルムの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採る。
[1]アルミナ及びシリカから選ばれる少なくとも一つの無機粒子(A)、下記の酸イオン、及び水を含有する高分子フィルム用コーティング剤組成物であって、前記コーティング剤組成物中の水の割合が90~99.5質量%であり、前記コーティング剤組成物の固形分100質量部に対して、前記酸イオンを0.05~1.0質量部の割合で含有することを特徴とするコーティング剤組成物。
酸イオン:還元蒸留-インドフェノール青吸光光度法で定量される硝酸イオン、滴定法で定量される塩化物イオン及び液体クロマトグラフィーで定量される酢酸イオンから選ばれる少なくとも一つ
[2]前記酸イオンが、硝酸イオン及び塩化物イオンから選ばれる少なくとも一つである[1]のコーティング剤組成物。
[3]更に、ポリオキシアルキレン誘導体及びポリグリセリンから選ばれる少なくとも一つのエーテル化合物(B)を含有する[1]又は[2]のコーティング剤組成物。
[4]前記無機粒子(A)と前記エーテル化合物(B)の固形分の合計を100質量部とした場合に、前記無機粒子(A)を20~99質量部、及び前記エーテル化合物(B)を1~80質量部の割合で含有する[3]のコーティング剤組成物。
[5]高分子フィルムからなるベースフィルム部と、前記ベースフィルム部の表面の少なくとも一部に[1]から[4]のいずれかのコーティング剤組成物から形成された被膜部とを備えることを特徴とする改質フィルム。
[6]高分子フィルムの表面の少なくとも一部に、[1]から[4]のいずれかのコーティング剤組成物を塗布する塗布工程を含むことを特徴とする改質フィルムの製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
≪高分子フィルム用コーティング剤組成物≫
本発明の高分子フィルム用コーティング剤組成物(以下、「コーティング剤組成物」ともいう)は、無機粒子(A)酸イオン、及び水を含有する。コーティング剤組成物は、更にエーテル化合物(B)を含有することが好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
<無機粒子(A)>
無機粒子(A)は、アルミナ及びシリカから選ばれる少なくとも一つである。無機粒子(A)は1種又は2種以上を用いることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
<コーティング剤組成物の配合割合>
コーティング剤組成物は、コーティング剤組成物の固形分100質量部に対して、酸イオンを0.05~1.0質量部の割合で含有する。酸イオンの配合割合が0.001~2.0質量部の範囲内であれば、優れた耐湿潤擦傷性を実現できる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
コーティング剤組成物は、水を含有する。水の含有割合は、コーティング剤組成物の塗布性及び被膜部形成性の観点から、90~99.5質量%であるが、より好ましくは95~99質量%である。すなわち、コーティング剤組成物中の溶質(各成分の合計)の濃度(以下、「純分濃度」という)は0.5~10質量%であり、1~5質量%がより好ましい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
<実施例1-2~1-5及び1-7、参考例1-6及び1-8、並びに比較例1-1~1-4>
実施例1-1と同様にして、下記表1に示す組成のコーティング剤組成物(X-2)~(X-8)、(Y-1)~(Y-4)を調製した。なお、酸イオンの原料である硝酸(C-1)、塩酸(C-2)、酢酸(C-3)及び硫酸(C-4)は、コーティング剤組成物中の対応する酸イオンの含有割合が表1に記載の酸イオンの質量部と一致するよう混合した。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
【表1】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
実施例1-1~1-5及び1-7、参考例1-6及び1-8、並びに比較例1-4のコーティング剤組成物は、硝酸イオン、塩化物イオン及び酢酸イオンの少なくとも一つを含むため、優れた液安定性を有していた。一方、比較例1-1~1-3は、硝酸イオン、塩化物イオン及び酢酸イオンのいずれも含まないため、液安定性で劣っていた。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
<実施例2-2~2-5及び2-7、参考例2-6及び2-8、並びに比較例2-1~比較例2-4>
表2に示すコーティング剤組成物、高分子フィルム及び絶乾塗布量を用いたこと以外は実施例2-1と同様にして、改質フィルムM-2~M-12を得た。その後、各改質フィルムを用いて以下の(1)~(3)の試験を行った。その結果を表2に示す。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
【表2】
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
実施例2-1~2-5及び2-7、参考例2-6及び2-8の改質フィルムは、初期流滴性、流滴持続性及び耐湿潤擦傷性に優れていた。一方、比較例2-1及び2-2の改質フィルムは、用いたコーティング剤組成物が硝酸イオン、塩化物イオン及び酢酸イオンのいずれも含んでいないため、耐湿潤擦傷性が劣っていた。比較例2-3の改質フィルムは、用いたコーティング剤組成物が硝酸イオン、塩化物イオン及び酢酸イオンの代わりに硫酸イオンを含んでいたため、初期流滴性、流滴持続性及び耐湿潤擦傷性の全てが十分ではなかった。比較例2-4の改質フィルムは、用いたコーティング剤組成物は硝酸イオンを過剰に含有していたため、初期流滴性、流滴持続性及び耐湿潤擦傷性の全てが十分ではなかった。