(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189331
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】記憶装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/8239 20060101AFI20221215BHJP
H01L 45/00 20060101ALI20221215BHJP
H01L 49/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01L27/105 449
H01L45/00 A
H01L49/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097861
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 都文
(72)【発明者】
【氏名】上牟田 雄一
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083FZ10
5F083GA10
5F083GA27
5F083JA39
5F083JA60
5F083KA01
5F083KA05
(57)【要約】
【課題】従来よりも低電流で動作することのできる記憶装置を提供する。
【解決手段】記憶装置10は、テルルを含む相変化層40と、相変化層40と隣接する位置に配置されており、ゲルマニウム、シリコン、炭素、スズ、アルミニウム、ガリウム、及びインジウムのうちの少なくとも1つを含む拡散層50と、を備える。相変化層40は、電気抵抗において互いに異なる第1状態と第2状態との間を可逆的に遷移可能である。第1状態及び第2状態のいずれにおいても、相変化層40は結晶状態である。z方向に対し垂直な方向に沿った拡散層50の長さは、同方向に沿った相変化層40の長さよりも短い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配線層と、
前記第1配線層から第1方向に離間する位置に配置された第2配線層と、
前記第1配線層と前記第2配線層との間に配置されており、テルルを含む抵抗変化層と、
前記第2配線層と前記抵抗変化層との間において、前記抵抗変化層と隣接する位置に配置されており、ゲルマニウム、シリコン、炭素、スズ、アルミニウム、ガリウム、及びインジウムのうちの少なくとも1つを含む隣接層と、を備え、
前記抵抗変化層は、電気抵抗において互いに異なる第1状態と第2状態との間を可逆的に遷移可能であり、
前記第1状態及び前記第2状態のいずれにおいても、前記抵抗変化層は結晶状態であり、
前記第1方向に対し垂直な第2方向に沿った前記隣接層の長さが、同方向に沿った前記抵抗変化層の長さよりも短い、記憶装置。
【請求項2】
前記抵抗変化層は、前記第1方向にC軸が配向した結晶構造を有する、請求項1に記載の記憶装置。
【請求項3】
前記抵抗変化層と前記第1配線層との間に、遷移金属を含む結晶層が形成されている、請求項2に記載の記憶装置。
【請求項4】
前記第1方向に沿った前記抵抗変化層の厚さが5nm以上である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記憶装置。
【請求項5】
前記抵抗変化層を、前記第1状態と前記第2状態との間で遷移させる際には、
前記第1配線層の電位が前記第2配線層の電位よりも高くなるような電圧パルスが、前記抵抗変化層及び前記隣接層に対して印加される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の記憶装置。
【請求項6】
第1配線層と、
前記第1配線層から第1方向に離間する位置に配置された第2配線層と、
前記第1配線層と前記第2配線層との間に配置されており、前記第1方向にC軸が配向した結晶構造を有する抵抗変化層と、
前記第2配線層と前記抵抗変化層との間において、前記抵抗変化層と隣接する位置に配置されており、前記抵抗変化層の内部に拡散する拡散材料を含む隣接層と、を備え、
前記抵抗変化層は、前記隣接層から拡散した前記拡散材料の分布に応じて、電気抵抗において互いに異なる第1状態と第2状態との間を可逆的に遷移可能であり、
前記第1状態及び前記第2状態のいずれにおいても、前記抵抗変化層は結晶状態である、記憶装置。
【請求項7】
前記第1方向に対し垂直な第2方向に沿った前記隣接層の長さが、同方向に沿った前記抵抗変化層の長さよりも短い、請求項6に記載の記憶装置。
【請求項8】
前記抵抗変化層がテルルを含む、請求項6又は7に記載の記憶装置。
【請求項9】
前記拡散材料はゲルマニウム、シリコン、炭素、スズ、アルミニウム、ガリウム、及びインジウムのうちの少なくとも1つである、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の記憶装置。
【請求項10】
前記第1方向に沿った前記抵抗変化層の厚さが5nm以上である、請求項6乃至9のいずれか1項に記載の記憶装置。
【請求項11】
前記抵抗変化層を、前記第1状態と前記第2状態との間で遷移させる際には、
前記第1配線層の電位が前記第2配線層の電位よりも高くなるような電圧パルスが、前記抵抗変化層及び前記隣接層に対して印加される、請求項6乃至10のいずれか1項に記載の記憶装置。
【請求項12】
前記抵抗変化層と前記第1配線層との間に、遷移金属を含む結晶層が形成されている、請求項6乃至11のいずれか1項に記載の記憶装置。
【請求項13】
第1配線層と、
前記第1配線層から第1方向に離間する位置に配置された第2配線層と、
前記第1配線層と前記第2配線層との間に配置された抵抗変化層と、
前記第2配線層と前記抵抗変化層との間において、前記抵抗変化層と隣接する位置に配置されており、前記抵抗変化層の内部に拡散する拡散材料を含む隣接層と、を備え、
前記抵抗変化層は、前記隣接層から拡散した前記拡散材料の分布に応じて、電気抵抗において互いに異なる第1状態と第2状態との間を可逆的に遷移可能であり、
前記第1状態及び前記第2状態のいずれにおいても、前記抵抗変化層は結晶状態であり、
前記第1方向に対し垂直な第2方向に沿った前記隣接層の長さが、同方向に沿った前記抵抗変化層の長さよりも短い、記憶装置。
【請求項14】
前記抵抗変化層がテルルを含む、請求項13に記載の記憶装置。
【請求項15】
前記拡散材料はゲルマニウム、シリコン、炭素、スズ、アルミニウム、ガリウム、及びインジウムのうちの少なくとも1つである、請求項13又は14に記載の記憶装置。
【請求項16】
前記抵抗変化層は、前記第1方向にC軸が配向した結晶構造を有する、請求項13乃至15のいずれか1項に記載の記憶装置。
【請求項17】
前記抵抗変化層と前記第1配線層との間に、遷移金属を含む結晶層が形成されている、請求項16に記載の記憶装置。
【請求項18】
前記第1方向に沿った前記抵抗変化層の厚さが5nm以上である、請求項13乃至17のいずれか1項に記載の記憶装置。
【請求項19】
前記抵抗変化層を、前記第1状態と前記第2状態との間で遷移させる際には、
前記第1配線層の電位が前記第2配線層の電位よりも高くなるような電圧パルスが、前記抵抗変化層及び前記隣接層に対して印加される、請求項13乃至18のいずれか1項に記載の記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話等の情報機器に用いられる記憶装置として、「相変化メモリ」と称される新たな方式の記憶装置の開発が進められている。このような記憶装置としては、例えば、相変化材料に電圧パルスを印加することで、高抵抗の非結晶状態と、低抵抗の結晶状態と、の間を可逆的に遷移させるものが提案されている。また、相変化材料に電圧パルスを印加することで、相変化材料に含まれる特定元素(例えばGe)の分布を変化させ、その結果として相変化材料の電気抵抗を変化させるものも提案されている。このような記憶装置では、電源が切られた後においても相変化材料の電気抵抗が安定的に保持されるため、当該電気抵抗に対応して情報を記憶することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0268503号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開示された実施形態によれば、従来よりも低電流で動作することのできる記憶装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る記憶装置は、第1配線層と、第1配線層から第1方向に離間する位置に配置された第2配線層と、第1配線層と第2配線層との間に配置されており、テルルを含む抵抗変化層と、第2配線層と抵抗変化層との間において、抵抗変化層と隣接する位置に配置されており、ゲルマニウム、シリコン、炭素、スズ、アルミニウム、ガリウム、及びインジウムのうちの少なくとも1つを含む隣接層と、を備える。抵抗変化層は、電気抵抗において互いに異なる第1状態と第2状態との間を可逆的に遷移可能である。第1状態及び第2状態のいずれにおいても、抵抗変化層は結晶状態である。この記憶装置では、第1方向に対し垂直な第2方向に沿った隣接層の長さが、同方向に沿った抵抗変化層の長さよりも短い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る記憶装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のメモリセルアレイの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1のメモリセルアレイの他の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る記憶装置のうち、メモリセル及びその近傍の構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、抵抗変化層におけるゲルマニウムの分布を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、抵抗変化層及び隣接層に印加される電圧パルスを示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る記憶装置の製造方法について説明するための図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る記憶装置の製造方法について説明するための図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る記憶装置の製造方法について説明するための図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る記憶装置の製造方法について説明するための図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る記憶装置の構成を模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係る記憶装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0008】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る記憶装置10は、元素偏析を利用した界面抵抗変化型相変化メモリである。
図1に示されるように、記憶装置10は、メモリセルアレイMCAと、ワード線ドライバ11と、ビット線ドライバ12と、制御回路13と、を備えている。
【0009】
メモリセルアレイMCAは、データを記憶するメモリセルMCを複数有する部分である。記憶装置10には、ワード線20とビット線30がそれぞれ複数設けられている。これらはいずれも、メモリセルMCに対し電圧を印加するための配線層として形成されている。メモリセルMCの一端はいずれかのワード線20に接続されており、他端はいずれかのビット線30に接続されている。
図2に示されるように、メモリセルMCは、ワード線20とビット線30とが互いに交差する位置のそれぞれに設けられている。尚、
図1においては、メモリセルアレイMCAが有する複数のメモリセルMCのうちの一部のみが図示されている。
【0010】
それぞれのメモリセルMCは、相変化層40と、セレクタ60と、を有している。
図1においては等価回路で示されるように、ワード線20とビット線30との間において、相変化層40及びセレクタ60は電気的に直列接続されている。尚、
図1においては、相変化層40がビット線30側に配置されており、セレクタ60がワード線20側に配置されているように描かれているのであるが、相変化層40及びセレクタ60の配置はこれに限定されない。一部又は全てのメモリセルMCにおいて、相変化層40及びセレクタ60の配置が
図1の配置とは逆になっていてもよい。
【0011】
相変化層40は、相変化材料により形成された層であって、その電気抵抗の値に対応させて情報を記憶する部分である。本実施形態では、当該相変化材料として三テルル化二アンチモン(Sb2Te3)からなるカルコゲナイド材料が用いられている。相変化層40の材料としては、これに限定されず他の相変化材料を用いることができる。相変化材料としては、少なくともテルルを含む化合物を用いることが好ましい。
【0012】
相変化層40に所定の電圧パルスが印加されると、相変化層40の電気抵抗(具体的には、後述の拡散層50との界面近傍部分における電気抵抗)が変化する。後に説明するように、相変化層40は、印加される電圧パルスの波形に応じて、電気抵抗が比較的高い第1状態と、電気抵抗が比較的低い第2状態と、の間を可逆的に遷移する。それぞれのメモリセルMCでは、相変化層40の電気抵抗に対応して情報(0又は1)が記憶される。
【0013】
セレクタ60は、2端子型のスイッチング素子であって、非線形の電流-電圧特性を有している。セレクタ60の両端に印加される電圧が所定の閾値以下の場合は、セレクタ60には殆ど電流が流れない。セレクタ60の両端に印加される電圧が上記閾値を超えると、セレクタ60には急激に電流が流れる。それぞれのメモリセルMCにセレクタ60が設けられていることで、データの書き込み又は消去の対象となる相変化層40のみに電流を流し、当該相変化層40の電気抵抗を変化させることが可能となっている。
【0014】
ワード線ドライバ11は、それぞれのワード線20の電位を調整するための回路である。ワード線ドライバ11には、それぞれのワード線20の一端が接続されている。ワード線ドライバ11は、それぞれのワード線20と電圧生成回路(不図示)との間の開閉を切り換えるための不図示のスイッチ群を含んでいる。ワード線ドライバ11の動作は、後述の制御回路13により制御される。
【0015】
ビット線ドライバ12は、それぞれのビット線30の電位を調整するための回路である。ビット線ドライバ12には、それぞれのビット線30の一端が接続されている。ビット線ドライバ12は、それぞれのビット線30と電圧生成回路(不図示)との間の開閉を切り換えるための不図示のスイッチ群を含んでいる。ビット線ドライバ12は、ビット線30を流れる電流に基づいて、それぞれのメモリセルMCに記憶されたデータを取得するための回路を含んでいてもよい。また、ビット線ドライバ12は、それぞれのビット線30の電位を、書き込みデータに応じて調整するための回路を含んでいてもよい。ビット線ドライバ12の動作は制御回路13により制御される。
【0016】
制御回路13は、記憶装置10の全体の動作を統括制御する回路である。制御回路13は、上記のように、ワード線ドライバ11及びビット線ドライバ12の動作を制御することで、各メモリセルMCに対する電圧パルスの印加等を行う。メモリセルアレイMCAへのデータの書き込み時において、制御回路13は、書き込み対象となっているメモリセルMCのそれぞれに対し、書き込みデータに応じた電圧パルスを印加することで、各メモリセルMCの相変化層40の電気抵抗を書き込みデータに対応した値に変化させる。また、メモリセルアレイMCAからのデータの読み出し時において、制御回路13は、読み出し対象となっているメモリセルMCのそれぞれに電圧を印加し、各メモリセルMCを流れる電流に基づいて、各相変化層40の電気抵抗値に対応したデータを読み出す。
【0017】
図2には、メモリセルアレイMCAの構成が模式的に描かれている。尚、
図2においては、メモリセルアレイMCAのうち、ワード線20、ビット線30、メモリセルMC、及び半導体基板BP(後述)のみが図示されており、メモリセルMC等の周囲に形成された絶縁層81、82(
図4を参照)の図示が省略されている。
【0018】
図2においては、ワード線20が伸びる方向に沿ってx軸が設定されている。また、ビット線30が伸びる方向に沿ってy軸が設定されており、上下方向に沿ってz軸が設定されている。x軸、y軸、及びz軸は互いに垂直である。x軸に沿った方向のことを、以下では「x方向」とも称する。同様に、y軸に沿った方向のことを、以下では「y方向」とも称する。z軸に沿った方向のことを、以下では「z方向」とも称する。以下では、他の図を参照する場合においても、上記と同じx軸、y軸、z軸、x方向、y方向、z方向を用いて、各部の構成を説明することがある。
【0019】
図2に示されるように、メモリセルアレイMCAは半導体基板BPの上方側に形成されている。半導体基板BPは、例えばシリコン基板である。
【0020】
ワード線20は、上記のようにx方向に沿って伸びており、y方向に沿って複数並んでいる。ビット線30は、上記のようにy方向に沿って伸びており、x方向に沿って複数並んでいる。
【0021】
本実施形態では、ワード線20よりも下方側の部分と上方側の部分とのそれぞれに、複数のビット線30が配置されている。このため、上面視においてワード線20とビット線30とが交差する部分に設けられるメモリセルMCは、ワード線20とその下方側にあるビット線30との間、及び、ワード線20とその上方側にあるビット線30との間、のそれぞれに設けられている。ワード線20の下方側に配置されたビット線30のことを、以下では「ビット線31」とも称する。また、ワード線20の上方側に配置されたビット線30のことを、以下では「ビット線32」とも称する。
【0022】
図2のような態様に替えて、
図3に示されるように、複数のビット線30が、ワード線20の上方側にのみ配置されているような態様であってもよい。この場合、メモリセルMCは、ワード線20とその上方側にあるビット線30との間、にのみ設けられることとなる。
【0023】
メモリセルMCの更なる具体的な構成について、
図4を参照しながら説明する。
図4では、メモリセルMC及びその近傍の部分を、x軸に垂直な面に沿って切断した場合の断面が示されている。同図では、ワード線20の上下それぞれに配置された一対のメモリセルMCの断面が描かれている。
図4の例では、それぞれのメモリセルMCにおいて、セレクタ60及び相変化層40がz方向にこの順に並ぶように配置されている。しかしながら、それぞれのメモリセルMCにおけるセレクタ60及び相変化層40の配置順序はこれとは逆になっていてもよい。また、上方側のメモリセルMCにおけるセレクタ60及び相変化層40の配置順序と、下方側のメモリセルMCにおけるセレクタ60及び相変化層40の配置順序とが、互いに逆になっていてもよい。
【0024】
ワード線20の下方側に配置されたメモリセルMCのことを、以下では「メモリセルMC1」とも称する。ワード線20の上方側に配置されたメモリセルMCのことを、以下では「メモリセルMC2」とも称する。また、下方側のメモリセルMC1が有する相変化層40及びセレクタ60のことを、以下ではそれぞれ「相変化層41」及び「セレクタ61」とも称する。同様に、上方側のメモリセルMC2が有する相変化層40及びセレクタ60のことを、以下ではそれぞれ「相変化層42」及び「セレクタ62」とも称する。
【0025】
それぞれのメモリセルMCは、z方向に沿って相変化層40と隣接する拡散層50を更に有している。相変化層40は本実施形態における「抵抗変化層」に該当し、拡散層50は本実施形態における「隣接層」に該当する。
【0026】
拡散層50は、高濃度のゲルマニウム(Ge)により形成されている。尚、ここでいう「高濃度」とは、例えば100%であってもよいが、拡散層50におけるゲルマニウムの原子濃度が、少なくとも、相変化層40におけるゲルマニウムの原子濃度よりも高くなっていればよい。拡散層50のゲルマニウムは、相変化層40の内部に拡散する「拡散材料」として機能する。拡散層50に含まれる拡散材料は、必ずしもゲルマニウムである必要は無く、シリコン(Si)、炭素(C)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)のうちの少なくとも1つであってもよい。下方側のメモリセルMC1が有する拡散層50のことを、以下では「拡散層51」とも称する。同様に、上方側のメモリセルMC2が有する拡散層50のことを、以下では「拡散層52」とも称する。
【0027】
メモリセルMC1の構成について説明する。
図4に示されるように、メモリセルMC1は、セレクタ61、導電層72、相変化層41、拡散層51を有しており、これらが下方側から順に、z方向に沿って積層された構成となっている。
図4の例では、それぞれのメモリセルMC1において、相変化層41及び拡散層51がz方向にこの順に並ぶように配置されている。しかしながら、それぞれのメモリセルMC1における相変化層41及び拡散層51の配置順序はこれとは逆になっていてもよい。また、上方側のメモリセルMC2における相変化層42及び拡散層52の配置順序と、下方側のメモリセルMC1における相変化層41及び拡散層51の配置順序とが、互いに逆になっていてもよい。
【0028】
セレクタ61は、その下方側にあるビット線31に対し、導電層71を介して接続されている。導電層71としては、例えばタングステンのような金属材料を用いることができる。セレクタ61は、例えばカルコゲン元素を含有した材料により形成されている。
【0029】
導電層72は、導電層71と同様の金属材料からなる層であって、セレクタ61と相変化層41との間に形成されている。
【0030】
相変化層41は、先に述べたように三テルル化二アンチモン(Sb
2Te
3)により形成された層である。
図5には、相変化層41を構成するSb
2Te
3の結晶構造が模式的に示されている。同図に示されるように、相変化層41は六方晶系(hexagonal)の結晶構造を有している。尚、同図の矢印「CX」は、Sb
2Te
3の結晶構造におけるC軸方向を示している。当該方向はz方向に一致している。このように、相変化層41のSb
2Te
3は、z方向(つまり、相変化層41と拡散層51とが積層されている方向)にC軸が配向した結晶構造を有している。尚、ここでいう「z方向にC軸が配向した結晶構造」には、Sb
2Te
3のC軸方向がz方向に完全に一致している場合のみならず、Sb
2Te
3のC軸方向がz方向から数度程度傾いている場合も含まれる。
【0031】
図5のようなSb
2Te
3の結晶においては、当該結晶に含まれるTe原子同士の間隔が、C軸方向(z方向)に沿って比較的広くなっている部分、すなわち、
図5において「Gap」の文字が付された部分であるTe-Teギャップが、x-y平面に沿って形成されている。このようなTe-Teギャップは更に、C軸方向(z方向)に沿って複数並んでいる。
【0032】
図4に戻って説明を続ける。拡散層51は、ワード線20と相変化層41との間において、相変化層41と隣接する位置に配置されている。拡散層51は、先に述べたように高濃度の拡散材料を含む層であって、本実施形態では拡散材料としてゲルマニウム(Ge)が用いられている。拡散層51は、相変化層41の上面を直接覆うように形成されている。ただし、y方向に沿った拡散層51の長さは、同方向に沿った相変化層41の長さよりも短い。このため、z方向に沿って見た場合における拡散層51の断面形状は、同方向に沿って見た場合における相変化層41の断面形状よりも小さくなっている。このような構成に替えて、又はこのような構成に加えて、x方向に沿った拡散層51の長さが、同方向に沿った相変化層41の長さよりも短い構成としてもよい。例えば、上記断面形状が円形である場合には、拡散層51の半径が相変化層41の半径よりも小さくなっていればよい。
【0033】
拡散層51は、その上方側にあるワード線20に対し、導電層73を介して接続されている。導電層73は、導電層71、72と同様の金属材料からなる層である。
【0034】
メモリセルMC2の構成は、以上に説明したメモリセルMC1の構成と同一である。つまり、メモリセルMC2が有するセレクタ62、相変化層42、拡散層52のそれぞれの材料や構造は、メモリセルMC1が有するセレクタ61、相変化層41、拡散層51のそれぞれの材料や構造と同一である。ただし、先に述べたように、メモリセルMC2におけるセレクタ62、相変化層42、及び拡散層52の配置順序は、メモリセルMC1におけるセレクタ61、相変化層41、及び拡散層51の配置順序と異なっていてもよい。
【0035】
ワード線20とセレクタ62との間には、導電層71と同様の金属材料からなる導電層74が設けられている。セレクタ62と相変化層42との間には、導電層72と同様の金属材料からなる導電層75が設けられている。拡散層52とビット線32との間には、導電層73と同様の金属材料からなる導電層76が設けられている。
【0036】
図4に示されるように、メモリセルMCの周囲には絶縁層81が形成されている。絶縁層81は、例えば酸化シリコン(SiO
2)のような絶縁材料により形成された層である。x方向もしくはy方向に沿って異なる位置にあるメモリセルMCは、絶縁層81によって互いに分離されており、電気的に絶縁されている。また、絶縁層81は比較的熱伝導率の小さい材料により形成されているので、異なる位置にあるメモリセルMCは熱的にも絶縁されている。これにより、一部のメモリセルMCへの書き込み動作により生じたジュール熱が、他のメモリセルMCに伝わって誤書き込み(若しくは誤消去)を生じさせる事態が防止される。
【0037】
メモリセルMCやワード線20の側面は、絶縁層82により覆われている。このため、メモリセルMCは、絶縁層81には接しておらず、絶縁層82を介して絶縁層81に覆われている。絶縁層82は、例えば窒化シリコン(SiN)のような、酸素を含まない絶縁材料により形成された層である。絶縁層82により、拡散層50に含まれるゲルマニウム等の材料の酸化が防止されている。
【0038】
記憶装置10の動作時における、相変化層40の状態変化等について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
図6には、相変化層40の内部におけるGeの分布の例が模式的に示されている。また、
図7には、ビット線30とワード線20との間に印加される電圧パルスの波形の例が示されている。
【0039】
先に述べたように、相変化層40(抵抗変化層)は、電気抵抗において互いに異なる第1状態と第2状態との間を可逆的に遷移可能となっている。このような状態の遷移は、拡散層50から相変化層40へと拡散した拡散材料(Ge)の分布に応じて生じる。
【0040】
図6(A)に示されるのは、第1状態の相変化層40におけるGeの分布の例である。同図に示されるように、第1状態においては、相変化層40の内部に分布しているGeの量は極めて少なくなっている。ただし、相変化層40のうち拡散層50に接している部分から、-z方向側の狭い範囲においては、拡散層50から拡散してきた微量のGeが分布している。この第1状態においては、z方向に沿って相変化層40等を電流が流れる経路における電気抵抗は比較的大きい。
【0041】
相変化層40を、
図6(A)の第1状態から
図6(B)の第2状態に遷移させるためには、相変化層40を間に挟むビット線30及びワード線20に対して
図7(A)のような電圧パルスが印加される。当該電圧パルスは、相変化層40側の電位が、拡散層50側の電位よりも高くなるように印加される。従って、例えば、下方側の相変化層41を第2状態に遷移させる場合には、ビット線31の電位がワード線20の電位よりも高くなる方向で、ビット線31とワード線20との間に
図7(A)の電圧パルスが印加される。また、上方側の相変化層42を第2状態に遷移させる場合には、ワード線20の電位がビット線32の電位よりも高くなる方向で、ビット線32とワード線20との間に
図7(A)の電圧パルスが印加される。
【0042】
図7(A)の例では、時刻t0から時刻t1までの期間において、ビット線30とワード線20との間の電圧は0からV1まで上昇している。その後、当該電圧は時刻t2までの間V1に維持された後、時刻t2から時刻t4までの期間において、V2まで下降する。V2は、V1よりも低い電圧であり、且つ、セレクタ60をONとするための閾値よりも高い電圧である。ビット線30とワード線20との間の電圧は、時刻t4から時刻t5までの期間においてV2に維持された後、時刻t5から時刻t6までの期間において0に戻される。
【0043】
ビット線30とワード線20との間に電圧が印加されている期間においては、ジュール熱によって相変化層40及び拡散層50の温度がそれぞれ上昇する。このとき、相変化層40及び拡散層50におけるGeの濃度差に起因して、拡散層50から相変化層40の内部に向けた方向(-z方向)にGeの拡散が促進される。このような原理で生じるGeの拡散のことを、以下では「第1拡散」とも称する。
【0044】
ところで、拡散層50の内部に拡散したGe原子は、正に帯電した状態となっている。このため、相変化層40側の電位が、拡散層50側の電位よりも高くなるように電圧パルスが印加されているときには、Ge原子は、相変化層40の内部から拡散層50へと向かう方向(z方向)に電界からの力を受けることとなる。この力は、同方向へのGeの拡散を促進する。このような原理で生じるGeの拡散のことを、以下では「第2拡散」とも称する。
【0045】
以上のようであるから、ビット線30とワード線20との間に電圧パルスが印加されている期間におけるGeの拡散は、互いに逆の方向に向けた第1拡散と第2拡散との両方が生じ得る。第1拡散は、ビット線30とワード線20との間の電圧が低下して行く期間において主に生じる。第2拡散は、上記電圧がV1に維持されている期間において主に生じる。このため、
図7(A)の例のように、冷却時において段階的に時間をかけて電圧を下降させて行く場合には、拡散層50から相変化層40の内部へと向かう方向の第1拡散の方が支配的となる。従って、相変化層40のうち拡散層50に接する界面近傍の部分においては、Geが相変化層40の内部へと移動し、
図6(A)よりも-z方向のより深い部分までGeが分布した状態、すなわち、
図6(B)に示される第2状態となる。
【0046】
図5を参照しながら説明したように、本実施形態の相変化層40は、z方向にC軸が配向した結晶構造を有しているため、複数のTe-Teギャップがz方向に沿って複数並んだ構成となっている。拡散層50から拡散してくるGeは、それぞれのTe-Teギャップに入り込むことで、当該部分におけるバンドギャップを縮小させる。その結果として、当該部分における相変化層40の電気抵抗は小さくなる。
【0047】
このように、
図6(B)の第2状態では、相変化層40うち拡散層50に接する界面近傍の電気抵抗が、
図6(A)の第1状態における電気抵抗よりも小さくなる。第2状態は、電圧パルスの印加が終了した以降においても安定的に維持される。
【0048】
尚、電圧パルスが印加されているときには、相変化層40及び拡散層50の温度はジュール熱によって上昇する。ただし、それぞれの層が融解する程度までは上昇しないように、電圧パルスのピーク値等が予め調整されている。従って、第1状態から第2状態に遷移する過程においては、相変化層40は結晶状態のままであり、非結晶状態になることは無い。
【0049】
相変化層40を、
図6(B)の第2状態から
図6(A)の第1状態に遷移させるためには、相変化層40を間に挟むビット線30及びワード線20に対して
図7(B)のような電圧パルスが印加される。当該電圧パルスも
図7(A)の場合と同様に、相変化層40側の電位が、拡散層50側の電位よりも高くなるように印加される。従って、例えば、下方側の相変化層41を第1状態に遷移させる場合には、ビット線31の電位がワード線20の電位よりも高くなる方向で、ビット線31とワード線20との間に
図7(B)の電圧パルスが印加される。また、上方側の相変化層42を第2状態に遷移させる場合には、ワード線20の電位がビット線32の電位よりも高くなる方向で、ビット線32とワード線20との間に
図7(B)の電圧パルスが印加される。
【0050】
図7(B)の例でも、時刻t0から時刻t1までの期間において、ビット線30とワード線20との間の電圧は0からV1まで上昇している。その後、当該電圧は時刻t2までの間V1に維持される。その後、当該電圧は時刻t2から時刻t3までの期間において0に戻される。
【0051】
尚、第2状態から第1状態に遷移させる際の電圧パルスのピーク値が、第1状態から第2状態に遷移させる際の電圧パルスのピーク値(V1)とは異なっていてもよい。また、第2状態から第1状態に遷移させる際の電圧パルスがピーク値に維持される時間が、第1状態から第2状態に遷移させる際の電圧パルスがピーク値に維持される時間(時刻t1から時刻t2までの時間)とは異なっていてもよい。
【0052】
第2状態から第1状態に遷移させる際においては、電圧は時刻t2から段階的に低下するのではなく、電圧V1から0まで概ね一定の速度で低下する。時刻t2から時刻t3までの時間は、時刻t2から時刻t6までの時間よりも短い。
【0053】
図7(B)の例では、冷却時において電圧を比較的短時間で0に戻す場合には、拡散層50から相変化層40の内部へと向かう方向の第1拡散が、
図7(A)の例に比べて生じにくい。このため、
図7(B)の例では、時刻t2までの期間に生じる、相変化層40の内部から拡散層50へと向かう方向の第2拡散の方が支配的となる。従って、相変化層40のうち拡散層50に接する界面近傍の部分においては、相変化層40のTe-Teギャップに入り込んでいたGeが拡散層50側へと移動する。その結果、相変化層40は
図6(A)に示される第1状態に戻る。このとき、相変化層40のTe-TeギャップからGeが移動することにより、当該部分におけるバンドギャップは拡大する。その結果として、当該部分における相変化層40の電気抵抗は大きくなる。
【0054】
このように、
図6(A)の第1状態では、相変化層40うち拡散層50に接する界面近傍の電気抵抗が、
図6(B)の第2状態における電気抵抗よりも小さくなる。第1状態は、電圧パルスの印加が終了した以降においても安定的に維持される。
【0055】
第2状態から第1状態に遷移する過程においても、相変化層40及び拡散層50の温度は上昇するのであるが、それぞれの層が融解する程度までは上昇しないように、電圧パルスのピーク値等が予め調整されている。従って、第2状態から第1状態に遷移する過程においても、相変化層40は結晶状態のままであり、非結晶状態になることは無い。
【0056】
以上のように、第1状態及び第2状態のいずれにおいても、相変化層40は結晶状態となっている。また、第1状態から第2状態に遷移する過程、及び、第2状態から第1状態に遷移する過程のいずれにおいても、相変化層40は結晶状態のまま維持され、非結晶状態になることは無い。相変化層の状態を結晶状態と非結晶状態との間で遷移させる構成の記憶装置に比べると、本実施形態では相変化層40を融解させる必要が無いので、記憶装置10の書き込み動作等のために必要な電流は小さくなっている。つまり、記憶装置10を従来よりも低電流で動作させることが可能となっている。
【0057】
また、本実施形態では、y方向に沿った拡散層50の長さが、同方向に沿った相変化層40の長さよりも小さくなっている。電圧パルスの印加時において、電流の流れる経路が拡散層50において絞られているので、記憶装置10の書き込み動作等のために必要な電流は更に小さくなっている。また、相変化層40においては局所的な経路で電流が通ることとなるので、相変化層40における状態の遷移がより効率的に行われるという効果も奏する。
【0058】
メモリセルMCを間に挟むワード線20及びビット線30のうち、当該メモリセルMCの相変化層40(抵抗変化層)から見たときに、z方向に沿って拡散層50(隣接層)とは反対側となる位置に配置されたものは、本実施形態における「第1配線層」に該当する。また、当該メモリセルMCの拡散層50(隣接層)から見たときに、z方向に沿って相変化層40(抵抗変化層)とは反対側となる位置に配置されたものは、本実施形態における「第2配線層」に該当する。
【0059】
例えば、下方側のメモリセルMC1については、ビット線31が第1配線層に該当し、ワード線20が第2配線層に該当する。また、上方側のメモリセルMC2については、ワード線20が第1配線層に該当し、ビット線32が第2配線層に該当する。いずれの場合でも、第1配線層及び第2配線層は互いにz方向に離間する位置に配置され、両者の間に相変化層40及び拡散層50が配置されている。相変化層40を、第1状態と第2状態との間で遷移させる際には、第1配線層の電位が第2配線層の電位よりも高くなるような電圧パルスが、相変化層40及び拡散層50に対して印加されることとなる。
【0060】
以上に説明した効果、すなわち、記憶装置10を従来よりも低電流で動作させるという効果を奏するためには、z方向に沿った相変化層40の厚さは5nm以上であることが好ましく、同方向に沿った拡散層50の厚さは5nm以下であることが好ましい。
【0061】
本実施形態に係る記憶装置10の製造方法について説明する。
【0062】
<積層工程>最初の積層工程では、半導体基板BPの上方側に絶縁膜が形成された後、当該絶縁膜の上に複数のビット線31が形成される。ビット線31は、例えば、CVDによって金属膜を成膜した後、当該金属膜に対し、フォトリソグラフィを用いたエッチングを施すことで形成することができる。エッチングが行われた後は、ビット線31及びその周囲を覆うように例えばCVDにより絶縁膜が形成され、当該絶縁膜に対しCMPによる平坦化処理が行われる。これにより、ビット線31の上面が露出した状態とされる。
【0063】
その後、ビット線31の上方側を覆うように、導電層71、セレクタ61、導電層72、相変化層41、拡散層51、及び導電層73が、例えばCVDによって下方から順に形成される。
図8には、以上のような積層工程が完了した状態における一部断面が描かれている。
【0064】
<パターニング工程>積層工程に続くパターニング工程では、例えばフォトリソグラフィを用いたエッチングにより、ビット線31よりも上方側に積層された膜が部分的に除去される。具体的には、積層された膜のうちメモリセルMC1となる部分のみが残されて、他の部分が除去される。
図9には、パターニング工程が完了した状態における一部断面が描かれている。
【0065】
<凹部形成工程>パターニング工程に続く凹部形成工程では、例えばウェットエッチングにより、上記のように残された積層膜の側面部分が洗浄される。このとき、拡散層51に対し選択性を持つ薬液が用いられる。洗浄と同時に拡散層51の一部が除去される結果、y方向に沿った拡散層51の長さが、同方向に沿った相変化層41の長さよりも小さくなる。相変化層41と導電層73との間には、拡散層51に向けて後退するように凹部50Aが形成される。
図10には、凹部形成工程が完了した状態における一部断面が描かれている。
【0066】
<絶縁層形成工程>凹部形成工程に続く絶縁層形成工程では、パターニング工程において形成された複数のメモリセルMC1の周囲を埋めるように、絶縁層82及び絶縁層81が、CVDによってこの順に形成される。最初に形成される絶縁層82は、凹部50Aの内側に入り込む。本実施形態では、凹部50Aの全体が絶縁層82によって埋められる。絶縁層81、82が形成された後、絶縁層81、82等の上面全体にCMP(chemical mechanical polishing)が施され、平坦な表面Sに沿って導電層73が露出した状態とされる。
図11には、絶縁層形成工程が完了した状態における一部断面が描かれている。
【0067】
以上のようにメモリセルMC1及びその周囲の部分が形成された後は、表面Sに沿って、ビット線31が形成された際と同様の方法でワード線20が形成される。続いて、上記の積層工程、パターニング工程、凹部形成工程、及び絶縁層形成工程を再度行うことで、各メモリセルMC1の直上となる位置に、ワード線20を挟んでメモリセルMC2が形成される。その後、メモリセルMC2の上方側に、ビット線31が形成された際と同様の方法でビット線32が形成される。以上のような方法により、
図4のようなメモリセルMCを有する記憶装置10を製造することができる。
【0068】
ところで、従来のiPCMのように、例えばGeTeとSb2Te3とが交互に積層された超格子構造の相変化層を有する記憶装置を製造する際には、超格子を構成する複数の層を交互に形成する必要がある。これに対し、本実施形態に係る記憶装置10を製造するにあたっては、上記のような複数の層を交互に積層する工程を経る必要が無い。従って、従来のiPCMを製造する場合に比べて、記憶装置10を比較的容易に製造することができる。
【0069】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0070】
図12には、本実施形態に係る記憶装置10のうち、メモリセルMC及びその近傍の部分の構成が、
図4と同様の視点で描かれている。
図12に示されるように、本実施形態においては、拡散層50の周囲に空隙GPが形成されている。「拡散層50の周囲」とは、具体的には、相変化層41と導電層73との間であって且つ拡散層51と隣り合う位置、及び、相変化層42と導電層76との間であって且つ拡散層52と隣り合う位置、のことである。
【0071】
本実施形態では、メモリセルMCに電圧パルスが印加される際に、生じたジュール熱を空隙GPにより閉じ込めることができる。このため、相変化層40の温度を、第1状態と第2状態との間で遷移させるために必要な温度まで、より少ない電流で到達させることができる。これにより、記憶装置10を従来よりも更に低電流で動作させることができる。
【0072】
このような構成の記憶装置10を製造する際には、絶縁層形成工程において、凹部50Aの内部まで絶縁層82を入り込ませないようにすればよい。例えば、積層工程において拡散層51の厚さ(z方向に沿った寸法)を小さくしておいたり、凹部形成工程において凹部50Aの奥行き寸法(y方向に沿った寸法)を大きくしておいたりすることで、凹部50Aの形状を空隙GPの残りやすい形状とすればよい。また、絶縁層形成工程において、絶縁層82の成膜条件を変更することにより空隙GPを形成してもよい。
【0073】
第3実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0074】
図13には、本実施形態に係る記憶装置10のうち、メモリセルMC及びその近傍の部分の構成が、
図4と同様の視点で描かれている。
図13に示されるように、本実施形態においては、相変化層40に対し-z方向側に隣り合う位置に、結晶層90が形成されている。下方側のメモリセルMC1が有する結晶層90のことを、以下では「結晶層91」とも称する。同様に、上方側のメモリセルMC2が有する結晶層90のことを、以下では「結晶層92」とも称する。
【0075】
結晶層91が形成されている位置は、相変化層41とビット線31との間ともいうことができる。また、結晶層92が形成されている位置は、相変化層42とワード線20との間ともいうことができる。それぞれの位置はいずれも、メモリセルMCのうち抵抗変化層と第1配線層との間となる位置、に該当する。
【0076】
結晶層90は、二テルル化チタン(TiTe2)の結晶により形成されている。TiTe2は二次元結晶であって、当該結晶のa軸及びb軸がz方向に対して垂直な方向に配向するように結晶層90が形成されている。結晶層90の材料はTiTe2に限定されず、他の遷移金属化合物を結晶層90の材料としてもよい。このような材料としては、例えば、二テルル化ハフニウム(HfTe2)や二テルル化ジルコニウム(ZrTe2)のような材料を用いることができる。
【0077】
本実施形態に係る記憶装置10を製造するには、積層工程において、導電層72を形成した後に結晶層91を形成し、結晶層91を覆うように相変化層41を形成することとすればよい。同様に、導電層75を形成した後に結晶層92を形成し、結晶層92を覆うように相変化層42を形成することとすればよい。
【0078】
この場合、相変化層40は、予め配向層として形成されたTiTe2の上面に対して形成されるので、z方向にC軸が配向した結晶構造をより容易に実現することができる。また、相変化層40と、その下方側の電極層(導電層72又は導電層75)との密着性がより高くなるという効果も得られる。
【0079】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0080】
10:記憶装置、20:ワード線、30:ビット線、40:相変化層、50:拡散層。