(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189332
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】記憶装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/8239 20060101AFI20221215BHJP
H01L 45/00 20060101ALI20221215BHJP
H01L 49/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01L27/105 449
H01L45/00 A
H01L49/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097862
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 都文
(72)【発明者】
【氏名】上牟田 雄一
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083FZ10
5F083GA10
5F083GA27
5F083JA39
5F083JA60
5F083KA01
5F083KA05
(57)【要約】
【課題】動作速度の向上した記憶装置を提供する。
【解決手段】記憶装置10は、ワード線20と、ビット線30と、ワード線20とビット線30との間に配置され、結晶状態と非結晶状態との間を可逆的に遷移可能な相変化層40と、相変化層40に接している層であって、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムのうちの少なくとも1つと、テルルと、を含む隣接層50と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配線層と、
第2配線層と、
前記第1配線層と前記第2配線層との間に配置され、結晶状態と非結晶状態との間を可逆的に遷移可能な相変化層と、
前記相変化層に接している層であって、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムのうちの少なくとも1つと、テルルと、を含む隣接層と、を備える記憶装置。
【請求項2】
前記隣接層におけるテルルの原子濃度が、60%以上であり且つ70%以下である、請求項1に記載の記憶装置。
【請求項3】
前記相変化層は、ゲルマニウム、アンチモン、及びテルルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の記憶装置。
【請求項4】
第1配線層と、
第2配線層と、
前記第1配線層と前記第2配線層との間に配置され、結晶状態と非結晶状態との間を可逆的に遷移可能な相変化層と、
前記相変化層に接している層であって、前記相変化層が前記結晶状態に遷移する際の起点となる結晶核を含む隣接層と、を備え、
前記隣接層は、
前記第1配線層、前記相変化層、及び前記第2配線層が並ぶ第1方向に対し垂直な第2方向に沿って、前記相変化層と隣り合う位置に配置されている記憶装置。
【請求項5】
前記隣接層は、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムのうちの少なくとも1つと、テルルと、を含む、請求項4に記載の記憶装置。
【請求項6】
前記隣接層におけるテルルの原子濃度が、60%以上であり且つ70%以下である、請求項5に記載の記憶装置。
【請求項7】
前記相変化層は、ゲルマニウム、アンチモン、及びテルルのうちの少なくとも1つを含む、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話等の情報機器に用いられる記憶装置として、「相変化メモリ」と称される新たな方式の記憶装置の開発が進められている。このような記憶装置としては、例えば、相変化材料に電圧パルスを印加することで、高抵抗の非結晶状態と、低抵抗の結晶状態と、の間を可逆的に遷移させるものが提案されている。このような記憶装置では、電源が切られた後においても相変化材料の電気抵抗が安定的に保持されるため、当該電気抵抗に対応して情報を記憶することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開示された実施形態によれば、動作速度の向上した記憶装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る記憶装置は、第1配線層と、第2配線層と、第1配線層と第2配線層との間に配置され、結晶状態と非結晶状態との間を可逆的に遷移可能な相変化層と、相変化層に接している層であって、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムのうちの少なくとも1つと、テルルと、を含む隣接層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る記憶装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のメモリセルアレイの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1のメモリセルアレイの他の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る記憶装置のうち、メモリセル及びその近傍の構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る記憶装置の製造方法について説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る記憶装置の製造方法について説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る記憶装置の製造方法について説明するための図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る記憶装置のうち、メモリセル及びその近傍の構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係る記憶装置のうち、メモリセル及びその近傍の構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係る記憶装置の製造方法について説明するための図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る記憶装置の製造方法について説明するための図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係る記憶装置の製造方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0008】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る記憶装置10は、所謂「相変化メモリ」であって、PCM(Phase-change memory)とも称されるものである。
図1に示されるように、記憶装置10は、メモリセルアレイMCAと、ワード線ドライバ11と、ビット線ドライバ12と、制御回路13と、を備えている。
【0009】
メモリセルアレイMCAは、データを記憶するメモリセルMCを複数有する部分である。記憶装置10には、ワード線20とビット線30がそれぞれ複数設けられている。これらはいずれも、メモリセルMCに対し電圧を印加するための配線層として形成されている。メモリセルMCの一端はいずれかのワード線20に接続されており、他端はいずれかのビット線30に接続されている。
図2に示されるように、メモリセルMCは、ワード線20とビット線30とが互いに交差する位置のそれぞれに設けられている。尚、
図1においては、メモリセルアレイMCAが有する複数のメモリセルMCのうちの一部のみが図示されている。
【0010】
それぞれのメモリセルMCは、相変化層40と、セレクタ60と、を有している。
図1においては等価回路で示されるように、ワード線20とビット線30との間において、相変化層40及びセレクタ60は電気的に直列接続されている。尚、
図1においては、相変化層40がビット線30側に配置されており、セレクタ60がワード線20側に配置されているように描かれているのであるが、相変化層40及びセレクタ60の配置はこれに限定されない。一部又は全てのメモリセルMCにおいて、相変化層40及びセレクタ60の配置が
図1の配置とは逆になっていてもよい。
【0011】
相変化層40は、相変化材料により形成された層であって、その電気抵抗の値に対応させて情報を記憶する部分である。本実施形態では、当該相変化材料としてゲルマニウム-アンチモン-テルル(GeSbTe)からなるカルコゲナイド材料が用いられている。相変化層40の材料としては、これに限定されず他の相変化材料を用いることができる。相変化材料としては、ゲルマニウム、アンチモン、及びテルルのうちの少なくとも1つを主成分として含む材料を用いることが好ましい。
【0012】
相変化層40に所定の電圧パルスが印加されると、相変化層40はジュール熱により融解した状態となる。融解した相変化層40は、その後に急速に冷却された場合には非結晶(アモルファス)状態となり、時間をかけて徐冷された場合には結晶状態となる。尚、相変化層40の冷却速度は、例えば、電圧パルスの立ち下がり速度によって調整される。
【0013】
非結晶状態における相変化層40の電気抵抗は、結晶状態における相変化層40の電気抵抗よりも大きい。このように、相変化層40は、結晶状態と非結晶状態との間を可逆的に遷移可能となっており、それぞれの状態において互いに異なる電気抵抗の値を示すこととなる。それぞれのメモリセルMCでは、相変化層40の電気抵抗に対応して情報(0又は1)が記憶される。
【0014】
セレクタ60は、2端子型のスイッチング素子であって、非線形の電流-電圧特性を有している。セレクタ60の両端に印加される電圧が所定の閾値以下の場合は、セレクタ60には殆ど電流が流れない。セレクタ60の両端に印加される電圧が上記閾値を超えると、セレクタ60には急激に電流が流れる。それぞれのメモリセルMCにセレクタ60が設けられていることで、データの書き込み又は消去の対象となる相変化層40のみに電流を流し、当該相変化層40の電気抵抗を変化させることが可能となっている。
【0015】
ワード線ドライバ11は、それぞれのワード線20の電位を調整するための回路である。ワード線ドライバ11には、それぞれのワード線20の一端が接続されている。ワード線ドライバ11は、それぞれのワード線20と電圧生成回路(不図示)との間の開閉を切り換えるための不図示のスイッチ群を含んでいる。ワード線ドライバ11の動作は、後述の制御回路13により制御される。
【0016】
ビット線ドライバ12は、それぞれのビット線30の電位を調整するための回路である。ビット線ドライバ12には、それぞれのビット線30の一端が接続されている。ビット線ドライバ12は、それぞれのビット線30と電圧生成回路(不図示)との間の開閉を切り換えるための不図示のスイッチ群を含んでいる。ビット線ドライバ12は、ビット線30を流れる電流に基づいて、それぞれのメモリセルMCに記憶されたデータを取得するための回路を含んでいてもよい。また、ビット線ドライバ12は、それぞれのビット線30の電位を、書き込みデータに応じて調整するための回路を含んでいてもよい。ビット線ドライバ12の動作は制御回路13により制御される。
【0017】
制御回路13は、記憶装置10の全体の動作を統括制御する回路である。制御回路13は、上記のように、ワード線ドライバ11及びビット線ドライバ12の動作を制御することで、各メモリセルMCに対する電圧パルスの印加等を行う。メモリセルアレイMCAへのデータの書き込み時において、制御回路13は、書き込み対象となっているメモリセルMCのそれぞれに対し、書き込みデータに応じた電圧パルスを印加することで、各メモリセルMCの相変化層40の電気抵抗を書き込みデータに対応した値に変化させる。また、メモリセルアレイMCAからのデータの読み出し時において、制御回路13は、読み出し対象となっているメモリセルMCのそれぞれに電圧を印加し、各メモリセルMCを流れる電流に基づいて、各相変化層40の電気抵抗値に対応したデータを読み出す。
【0018】
図2には、メモリセルアレイMCAの構成が模式的に描かれている。尚、
図2においては、メモリセルアレイMCAのうち、ワード線20、ビット線30、メモリセルMC、及び半導体基板BP(後述)のみが図示されており、メモリセルMC等の周囲に形成された絶縁層81、82(
図4を参照)の図示が省略されている。
【0019】
図2においては、ワード線20が伸びる方向に沿ってx軸が設定されている。また、ビット線30が伸びる方向に沿ってy軸が設定されており、上下方向に沿ってz軸が設定されている。x軸、y軸、及びz軸は互いに垂直である。x軸に沿った方向のことを、以下では「x方向」とも称する。同様に、y軸に沿った方向のことを、以下では「y方向」とも称する。z軸に沿った方向のことを、以下では「z方向」とも称する。以下では、他の図を参照する場合においても、上記と同じx軸、y軸、z軸、x方向、y方向、z方向を用いて、各部の構成を説明することがある。
【0020】
図2に示されるように、メモリセルアレイMCAは半導体基板BPの上方側に形成されている。半導体基板BPは、例えばシリコン基板である。
【0021】
ワード線20は、上記のようにx方向に沿って伸びており、y方向に沿って複数並んでいる。ワード線20は、本実施形態における「第1配線層」に該当する。ビット線30は、上記のようにy方向に沿って伸びており、x方向に沿って複数並んでいる。ビット線30は、本実施形態における「第2配線層」に該当する。
【0022】
本実施形態では、ワード線20よりも下方側の部分と上方側の部分とのそれぞれに、複数のビット線30が配置されている。このため、上面視においてワード線20とビット線30とが交差する部分に設けられるメモリセルMCは、ワード線20とその下方側にあるビット線30との間、及び、ワード線20とその上方側にあるビット線30との間、のそれぞれに設けられている。ワード線20の下方側に配置されたビット線30のことを、以下では「ビット線31」とも称する。また、ワード線20の上方側に配置されたビット線30のことを、以下では「ビット線32」とも称する。
【0023】
図2のような態様に替えて、
図3に示されるように、複数のビット線30が、ワード線20の上方側にのみ配置されているような態様であってもよい。この場合、メモリセルMCは、ワード線20とその上方側にあるビット線30との間、にのみ設けられることとなる。
【0024】
メモリセルMCの更なる具体的な構成について、
図4を参照しながら説明する。
図4では、メモリセルMC及びその近傍の部分を、x軸に垂直な面に沿って切断した場合の断面が示されている。同図では、ワード線20の上下それぞれに配置された一対のメモリセルMCの断面が描かれている。
図4の例では、それぞれのメモリセルMCにおいて、セレクタ60及び相変化層40がz方向にこの順に並ぶように配置されている。しかしながら、それぞれのメモリセルMCにおけるセレクタ60及び相変化層40の配置順序はこれとは逆になっていてもよい。また、上方側のメモリセルMCにおけるセレクタ60及び相変化層40の配置順序と、下方側のメモリセルMCにおけるセレクタ60及び相変化層40の配置順序とが、互いに逆になっていてもよい。
【0025】
ワード線20の下方側に配置されたメモリセルMCのことを、以下では「メモリセルMC1」とも称する。ワード線20の上方側に配置されたメモリセルMCのことを、以下では「メモリセルMC2」とも称する。また、下方側のメモリセルMC1が有する相変化層40及びセレクタ60のことを、以下ではそれぞれ「相変化層41」及び「セレクタ61」とも称する。同様に、上方側のメモリセルMC2が有する相変化層40及びセレクタ60のことを、以下ではそれぞれ「相変化層42」及び「セレクタ62」とも称する。
【0026】
尚、それぞれのメモリセルMCは、相変化層40に接するように形成された隣接層50を更に有している。各メモリセルMCに隣接層50が設けられていることの理由については後に説明する。下方側のメモリセルMC1が有する隣接層50のことを、以下では「隣接層51」とも称する。同様に、上方側のメモリセルMC2が有する隣接層50のことを、以下では「隣接層52」とも称する。
【0027】
メモリセルMC1の構成について説明する。
図4に示されるように、メモリセルMC1は、セレクタ61、導電層72、相変化層41、隣接層51を有しており、これらが下方側から順に積層された構成となっている。
図4の例では、それぞれのメモリセルMC1において、相変化層41及び隣接層51がz方向にこの順に並ぶように配置されている。しかしながら、それぞれのメモリセルMC1における相変化層41及び隣接層51の配置順序はこれとは逆になっていてもよい。また、上方側のメモリセルMC2における相変化層42及び隣接層52の配置順序と、下方側のメモリセルMC1における相変化層41及び隣接層51の配置順序とが、互いに逆になっていてもよい。
【0028】
セレクタ61は、その下方側にあるビット線31に対し、導電層71を介して接続されている。導電層71としては、例えばタングステンのような金属材料を用いることができる。セレクタ61は、例えばカルコゲン元素を含有した材料により形成されている。
【0029】
導電層72は、導電層71と同様の金属材料からなる層であって、セレクタ61と相変化層41との間に形成されている。
【0030】
相変化層41は、先に述べたように、相変化材料であるゲルマニウム-アンチモン-テルル(GeSbTe)により形成された層である。記憶装置10の動作時においては、ワード線20とビット線31との間にパルス状の電圧が印加される。これにより、相変化層41の状態が結晶状態と非結晶状態の間で可逆的に遷移する。
【0031】
隣接層51は、相変化層41の上面全体を直接覆うように形成された層である。つまり、隣接層51は相変化層41の上面に対して接した状態で形成されている。本実施形態では、隣接層51の材料として二テルル化チタン(TiTe2)が用いられている。隣接層51の材料としては、これに限定されず、例えば二テルル化ハフニウム(HfTe2)や二テルル化ジルコニウム(ZrTe2)のような材料を用いることができる。つまり、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムのうちの少なくとも1つを含むテルル化合物を用いることができる。いずれの場合であっても、隣接層51におけるテルルの原子濃度が、60%以上であり且つ70%以下となるように、隣接層51の材料を選定することが好ましい。
【0032】
隣接層51は、その上方側にあるワード線20に対し、導電層73を介して接続されている。導電層73は、導電層71、72と同様の金属材料からなる層である。
【0033】
メモリセルMC2の構成は、以上に説明したメモリセルMC1の構成と同一である。つまり、メモリセルMC2が有するセレクタ62、相変化層42、隣接層52のそれぞれの材料は、メモリセルMC1が有するセレクタ61、相変化層41、隣接層51のそれぞれの材料と同一である。ただし、先に述べたように、メモリセルMC2におけるセレクタ62、相変化層42、及び隣接層52の配置順序は、メモリセルMC1におけるセレクタ61、相変化層41、及び隣接層51の配置順序と異なっていてもよい。
【0034】
ワード線20とセレクタ62との間には、導電層71と同様の金属材料からなる導電層74が設けられている。セレクタ62と相変化層42との間には、導電層72と同様の金属材料からなる導電層75が設けられている。隣接層52とビット線32との間には、導電層73と同様の金属材料からなる導電層76が設けられている。
【0035】
図4に示されるように、メモリセルMCの周囲には絶縁層81が形成されている。絶縁層81は、例えば酸化シリコン(SiO
2)のような絶縁材料により形成された層である。x方向もしくはy方向に沿って異なる位置にあるメモリセルMCは、絶縁層81によって互いに分離されており、電気的に絶縁されている。また、絶縁層81は比較的熱伝導率の小さい材料により形成されているので、異なる位置にあるメモリセルMCは熱的にも絶縁されている。これにより、一部のメモリセルMCへの書き込み動作により生じたジュール熱が、他のメモリセルMCに伝わって誤書き込み(若しくは誤消去)を生じさせる事態が防止される。
【0036】
メモリセルMCやワード線20の側面は、絶縁層82により覆われている。このため、メモリセルMCは、絶縁層81には接しておらず、絶縁層82を介して絶縁層81に覆われている。絶縁層82は、例えば窒化シリコン(SiN)のような、酸素を含まない絶縁材料により形成された層である。絶縁層82により、相変化層40に含まれるゲルマニウム等の材料の酸化が防止されている。
【0037】
ところで、メモリセルMCにパルス状の電圧が印加された後、融解した相変化層40が冷却され結晶状態となるプロセスは、最初に結晶核が生成されるまでの第1段階と、生成された結晶核を起点として結晶が成長していく第2段階と、に分けることができる。相変化層40の全体が融解している状態から、結晶核が生成され第1段階が完了するまでに要する期間の長さは、概ね数十マイクロ秒程度である。一方、結晶核が生成されてから、相変化層40の全体が結晶状態となり第2段階が完了するするまでに要する期間の長さは、数十ナノ秒程度である。このように、相変化層40が冷却され結晶状態となるにあたっては、最初の結晶核が生成されるまでの第1段階が律速となる。
【0038】
所謂「ドーム型」と称される構成の相変化メモリにおいては、データが書き込まれる際に、相変化層の全体ではなく一部のみが融解した状態となり、融解する部分の周囲は結晶状態のままとなっている。この場合、結晶状態のままとなっている部分が結晶核として常に存在するので、上記の第1段階を経ることなく、相変化層は短時間のうちに全体が結晶状態となる。
【0039】
しかしながら、本実施形態のような構成においては、相変化層40に対しその下面全体から電圧パルスが印加されるので、相変化層40の全体が融解することとなり、相変化層40の一部が結晶核として残ることは無い。このため、本実施形態と同様に相変化層の全体が融解する構成の記憶装置においては、結晶核が生成される第1段階を経る必要があるため、データの書き込みに長時間を要してしまうという問題がある。そこで、本実施形態に係る記憶装置10では、メモリセルMCのそれぞれに隣接層50を設けることにより、上記の問題を解決することとしている。
【0040】
隣接層50は、先に述べたようにTiTe2により形成された層となっている。TiTe2は二次元の結晶構造を有しており、相変化層40の材料であるGeSbTeに比べて融点が高い材料である。本発明者らが行った実験によれば、隣接層50は、電圧パルスが印加され相変化層40が融解する際においても、融解したり他の材料と混じり合ったりすることなく、安定して当初の結晶状態を維持し続けることが確認されている。
【0041】
本実施形態では、このような隣接層50が、相変化層40の一部に接した状態で設けられている。融解した相変化層40が冷却される際には、隣接層50を構成するTiTe2が結晶核として機能し、当該結晶核を起点として相変化層40の結晶化が進行して行くこととなる。つまり、本実施形態では、相変化層40に接する隣接層50を設けておくことで、結晶核を生成するための上記の第1段階が省略されるので、相変化層40の全体が結晶状態となるまでに要する期間を短くすることができる。その結果として、メモリセルアレイMCAにデータを書き込む際における記憶装置10の動作速度を向上させることができる。以上のような効果は、隣接層50の材料として、HfTe2やZrTe2を用いた場合においても同様に奏することができる。
【0042】
本実施形態に係る記憶装置10の製造方法について説明する。
【0043】
<積層工程>最初の積層工程では、半導体基板BPの上方側に絶縁膜が形成された後、当該絶縁膜の上に複数のビット線31が形成される。ビット線31は、例えば、CVDによって金属膜を成膜した後、当該金属膜に対し、フォトリソグラフィを用いたエッチングを施すことで形成することができる。エッチングが行われた後は、ビット線31及びその周囲を覆うように例えばCVDにより絶縁膜が形成され、当該絶縁膜に対しCMPによる平坦化処理が行われる。これにより、ビット線31の上面が露出した状態とされる。
【0044】
その後、ビット線31の上方側を覆うように、導電層71、セレクタ61、導電層72、相変化層41、隣接層51、及び導電層73が、例えばCVDによって下方から順に形成される。
図5には、以上のような積層工程が完了した状態における一部断面が描かれている。
【0045】
<パターニング工程>積層工程に続くパターニング工程では、例えばフォトリソグラフィを用いたエッチングにより、ビット線31よりも上方側に積層された膜が部分的に除去される。具体的には、積層された膜のうちメモリセルMC1となる部分のみが残されて、他の部分が除去される。
図6には、パターニング工程が完了した状態における一部断面が描かれている。
【0046】
<絶縁層形成工程>パターニング工程に続く絶縁層形成工程では、パターニング工程において形成された複数のメモリセルMC1の周囲を埋めるように、絶縁層82及び絶縁層81が、CVDによってこの順に形成される。その後、絶縁層81、82等の上面全体にCMP(chemical mechanical polishing)が施され、平坦な表面Sに沿って導電層73が露出した状態とされる。
図7には、絶縁層形成工程が完了した状態における一部断面が描かれている。
【0047】
以上のようにメモリセルMC1及びその周囲の部分が形成された後は、表面Sに沿って、ビット線31が形成された際と同様の方法でワード線20が形成される。続いて、上記の積層工程、パターニング工程、及び絶縁層形成工程を再度行うことで、各メモリセルMC1の直上となる位置に、ワード線20を挟んでメモリセルMC2が形成される。その後、メモリセルMC2の上方側に、ビット線31が形成された際と同様の方法でビット線32が形成される。以上のような方法により、
図4のようなメモリセルMCを有する記憶装置10を製造することができる。
【0048】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0049】
図8には、本実施形態に係る記憶装置10のうち、メモリセルMC及びその近傍の部分の構成が、
図4と同様の視点で描かれている。
図8に示されるように、本実施形態においては、隣接層50が、相変化層40の上面を覆うように形成されているのではなく、相変化層40の内部に埋め込まれた状態で形成されている。相変化層40の上面は、本実施形態では導電層73又は導電層76により覆われている。
【0050】
このような本実施形態においても、隣接層50は、相変化層40に対し直接接した状態となっているので、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏することができる。
【0051】
尚、
図8に示される構成のメモリセルMCを形成するにあたっては、相変化層40を形成している途中の段階において、CVDにより隣接層50を形成し、これに続いて相変化層40の残りの部分を形成することとすればよい。
【0052】
第3実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0053】
図9には、本実施形態に係る記憶装置10のうち、メモリセルMC及びその近傍の部分の構成が、
図4と同様の視点で描かれている。
図9に示されるように、本実施形態においては、隣接層50が、相変化層40の上面を覆うように形成されているのではなく、相変化層40の側面の一部を覆うように形成されている。具体的には、第1実施形態(
図4)において相変化層40の側面全体を覆っていた絶縁層82の一部を、本実施形態では隣接層50に置き換えた構成となっている。相変化層40の上面は、本実施形態では導電層73又は導電層76により覆われている。
【0054】
このように、本実施形態における隣接層50は、ワード線20(第1配線層)、相変化層40、及びビット線30(第2配線層)が並ぶ方向(z方向)に対し垂直な方向(x方向及びy方向)に沿って、相変化層40と隣り合う位置に配置されている。このような本実施形態においても、隣接層50は、相変化層40に対し直接接した状態となっているので、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏することができる。
【0055】
本実施形態に係る記憶装置10の製造方法について説明する。本実施形態においても、第1実施形態と同様の積層工程、パターニング工程、及び絶縁層形成工程を行うことにより、先ず下方側のメモリセルMC1が形成される。ただし、本実施形態では、積層工程においては隣接層51が形成されない。このため、絶縁層形成工程が完了した状態においては、
図7ではなく
図10に示される状態となる。
【0056】
<凹部形成工程>本実施形態では、下方側の絶縁層形成工程が上記のように完了した後、凹部形成工程が行われる。凹部形成工程では、例えばウェットエッチングにより、絶縁層82のうち上方側の部分が選択的に除去される。その結果、
図11に示されるように、表面Sには凹部90が形成される。凹部90においては、相変化層41の側面の一部(上方側部分)が露出している。
【0057】
<隣接層形成工程>続いて、例えばCVDによって、凹部90を埋めるように隣接層51が形成される。その後、CMPによって表面Sが再度平坦化される。
図12には、このような隣接層形成工程が完了した状態における一部断面が描かれている。
【0058】
以上のような方法でメモリセルMC1が形成された後は、表面Sに沿って、第1実施形態と同様にワード線20が形成される。続いて、上記の積層工程、パターニング工程、絶縁層形成工程、凹部形成工程、及び隣接層形成工程を再度行うことで、各メモリセルMC1の直上となる位置に、ワード線20を挟んでメモリセルMC2が形成される。その後、メモリセルMC2の上方側に、ビット線31が形成された際と同様の方法でビット線32が形成される。以上のような方法により、
図9のようなメモリセルMCを有する記憶装置10を製造することができる。
【0059】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0060】
10:記憶装置、20:ワード線、30:ビット線、40:相変化層、50:隣接層。