(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189353
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】連結装置、下部走行体及び建設機械
(51)【国際特許分類】
B62D 55/10 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
B62D55/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097893
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】有田 隆一
(57)【要約】
【課題】本発明は、建設機械の重量増加を抑止しつつ、カーボディとクローラユニットとを容易に連結でき、かつ金属音の発生を低減できる連結装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る連結装置は、クローラフレームをカーボディに1軸のピンで連結させるピン連結部と、上記ピン連結部の上方に位置するメタルタッチ部とを備え、上記メタルタッチ部が、上記カーボディ及び上記クローラフレームのうちの一方に取り付けられる移動止と、他方に取り付けられるプレートとを有し、上記移動止が、板状の摺動部材及びこの摺動部材の周囲を取り囲む金属製のフレームを有し、上記プレートが、板状であり、クローラユニットを上記カーボディに連結させた際にその側縁の少なくとも一部が上記摺動部材の表面に当接し、上記摺動部材の最大静止摩擦係数と動摩擦係数との差分である摩擦係数差が、上記フレームの摩擦係数差よりも小さい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラフレーム及びこのクローラフレームに配設されるクローラを有するクローラユニットを、このクローラユニットが着脱可能に取り付けられるカーボディに連結するための連結装置であって、
上記クローラフレームを上記カーボディに1軸のピンで連結させるピン連結部と、
上記ピン連結部の上方に位置するメタルタッチ部と
を備え、
上記メタルタッチ部が、
上記カーボディ及び上記クローラフレームのうちの一方に取り付けられる移動止と、他方に取り付けられるプレートとを有し、
上記移動止が、板状の摺動部材及びこの摺動部材の周囲を取り囲む金属製のフレームを有し、
上記プレートが、板状であり、上記クローラユニットを上記カーボディに連結させた際にその側縁の少なくとも一部が上記摺動部材の表面に当接し、
上記摺動部材の最大静止摩擦係数と動摩擦係数との差分である摩擦係数差が、上記フレームの摩擦係数差よりも小さい連結装置。
【請求項2】
上記フレームが、
上記摺動部材の上記プレートが当接する面とは反対側の面が当接する裏板と、
上記摺動部材の外周部と係合う係合溝と
を有し、
上記摺動部材が、上記係合溝への係合い及び上記裏板へのボルト締結により上記フレームに取り付けられている請求項1に記載の連結装置。
【請求項3】
上記摺動部材の材料が、自己潤滑性樹脂又は潤滑剤を含侵させた焼結金属である請求項1又は請求項2に記載の連結装置。
【請求項4】
クローラフレーム及びこのクローラフレームに配設されるクローラを有するクローラユニットと、
このクローラユニットが着脱可能に取り付けられるカーボディと、
上記カーボディ及び上記クローラユニットを連結する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の連結装置と
を備える下部走行体。
【請求項5】
請求項4に記載の下部走行体を備える建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結装置、下部走行体及び建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばクレーン、油圧ショベル、杭打ち機等の建設機械として、一対のクローラを有する走行手段を備えた下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けられ、ブームが起伏可能に取り付けられる上部旋回体とを備えるものが知られている。
【0003】
このようなクローラを備えた建設機械はトレーラ等に積載されて輸送されるので、輸送時にはクローラを含むクローラユニットをカーボディから取り外してコンパクト化される場合がある。この場合、この建設機械ではクローラユニットをカーボディに着脱するための連結装置を必要とする。
【0004】
この連結装置としては、カーボディとクローラユニットとを1軸でピン連結するピン連結部と、この1軸の周りにクローラが回転することで生じる圧縮反力を受けるためのメタルタッチにより構成されたものが公知である(例えば特開2005-263016号公報参照)。
【0005】
上記連結装置では、カーボディとクローラユニットとは1軸でピン連結されるため、主に前後の位置合わせを行うことでカーボディとクローラユニットとを連結できる。従って、カーボディとクローラユニットとの連結が容易である。また、1軸でピン連結した場合、このピン周りにクローラユニットが回転し得るが、この回転は、カーボディ側に設けられた金属製の摺動面に、クローラフレーム側に設けられた板状のプレートの側縁の一部を当接させることで止められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、建設機械の輸送時の重量低減のため、構造物の軽量化が図られている。一方で、建設機械には、能力の増大が求められている。軽量化を図りつつ能力を増大した建設機械では、旋回時にクローラフレームが変形し易くなっている。クローラフレームが変形すると、上述のメタルタッチを利用した連結装置では、メタルタッチ部で摺動による金属音が生じ易い。
【0008】
この金属音の発生自体は、例えば建設機械の強度不足といった不都合によるものではない。しかし、操作者や周囲の作業者、ひいては近隣住民の不安感を煽り易いため、金属音を低減することが望まれている。
【0009】
この金属音はクローラフレームの変形により生じるため、クローラフレームの剛性を高めることで金属音の低減をなし得る。しかし、クローラフレームの高剛性化は、一般に重量増を招く。建設機械に強度上の問題がないにも関わらず、徒に重量が増えることとなり、重量低減の要請に反することとなる。
【0010】
金属音はメタルタッチ部での摺動により生じるため、連結装置にメタルタッチ部を用いずに、例えば2軸以上でピン連結する構成とすることでも低減し得る。しかし、2軸以上のピン連結を用いる場合、カーボディとクローラユニットとを連結する際に、前後方向に加えて上下方向も同時に位置合わせを行う必要が生じ、組立作業性が悪い。また、カーボディとクローラユニットとを連結するピンは大型であるため、連結するピン数が増えると、挿入のための油圧シリンダー等も増加し、建設機械の重量増加につながり易い。
【0011】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、建設機械の重量増加を抑止しつつ、カーボディとクローラユニットとを容易に連結でき、かつ金属音の発生を低減できる連結装置、下部走行体及び建設機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る連結装置は、クローラフレーム及びこのクローラフレームに配設されるクローラを有するクローラユニットを、このクローラユニットが着脱可能に取り付けられるカーボディに連結するための連結装置であって、上記クローラフレームを上記カーボディに1軸のピンで連結させるピン連結部と、上記ピン連結部の上方に位置するメタルタッチ部とを備え、上記メタルタッチ部が、上記カーボディ及び上記クローラフレームのうちの一方に取り付けられる移動止と、他方に取り付けられるプレートとを有し、上記移動止が、板状の摺動部材及びこの摺動部材の周囲を取り囲む金属製のフレームを有し、上記プレートが、板状であり、上記クローラユニットを上記カーボディに連結させた際にその側縁の少なくとも一部が上記摺動部材の表面に当接し、上記摺動部材の最大静止摩擦係数と動摩擦係数との差分である摩擦係数差が、上記フレームの摩擦係数差よりも小さい。
【0013】
本発明の別の一態様に係る下部走行体は、クローラフレーム及びこのクローラフレームに配設されるクローラを有するクローラユニットと、このクローラユニットが着脱可能に取り付けられるカーボディと、上記カーボディ及び上記クローラユニットを連結する本発明の連結装置とを備える。
【0014】
本発明のさらに別の一態様に係る建設機械は、本発明の下部走行体を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の連結装置、下部走行体及び建設機械は、建設機械の重量増加を抑止しつつ、カーボディとクローラとを容易に連結でき、かつ金属音の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る建設機械を示す模式的側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の建設機械でクローラユニットをカーボディに連結させた状態の下部走行体を示す模式的平面図である。
【
図3】
図3は、
図2の下部走行体の連結装置のうちカーボディ側の構成を示す模式的側面図である。
【
図4】
図4は、
図2の下部走行体の連結装置のうちクローラユニット側の構成を示す模式的側面図である。
【
図6】
図6は、クローラユニットをカーボディに連結させた際のメタルタッチ部付近を示す模式的斜視図である。
【
図7】
図7は、
図5のVII-VII線での模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[本発明の実施形態の説明]
メタルタッチ部での摺動により生じる金属音は、スティックスリップ現象により生じる。つまり、フレームが変形すると、メタルタッチ部において摺動面に当接しているプレートに力が加わる。その力が一定値以下である場合、プレートの静止摩擦力によりプレートは移動しない。しかし、その力が静止摩擦力を超えると、プレートは移動してしまう。このとき、プレートはこの変形による力が減少する方向へ摺動し、プレートに加わる力が動摩擦力を下回ると、停止する。この摺動時に金属音が生じ得る。本発明者は、このスティックスリップ現象において、静止摩擦係数と動摩擦係数の差が小さい場合、プレートに加わる力が動摩擦力より下回り易くなり、摺動距離が短くなることに着目した。
【0018】
すなわち、本発明の一態様に係る連結装置は、クローラフレーム及びこのクローラフレームに配設されるクローラを有するクローラユニットを、このクローラユニットが着脱可能に取り付けられるカーボディに連結するための連結装置であって、上記クローラフレームを上記カーボディに1軸のピンで連結させるピン連結部と、上記ピン連結部の上方に位置するメタルタッチ部とを備え、上記メタルタッチ部が、上記カーボディ及び上記クローラフレームのうちの一方に取り付けられる移動止と、他方に取り付けられるプレートとを有し、上記移動止が、板状の摺動部材及びこの摺動部材の周囲を取り囲む金属製のフレームを有し、上記プレートが、板状であり、上記クローラユニットを上記カーボディに連結させた際にその側縁の少なくとも一部が上記摺動部材の表面に当接し、上記摺動部材の最大静止摩擦係数と動摩擦係数との差分である摩擦係数差が、上記フレームの摩擦係数差よりも小さい。
【0019】
当該連結装置は、ピン連結部が1軸であるので、主に前後の位置合わせを行うことでカーボディとクローラユニットとを連結できる。このため、カーボディとクローラユニットとの連結が容易である。また、当該連結装置は、新たな油圧シリンダーの搭載等を必要としないため、建設機械の重量増加を抑止できる。さらに、当該連結装置は、クローラユニットをカーボディに連結させた際に、メタルタッチ部において、クローラフレームに取り付けられるプレートがカーボディに当接する位置に、摺動部材が設けられている。摺動部材は、摩擦係数差がこの摺動部材の周囲を取り囲むフレームよりも小さい。このため、当該連結装置は、金属音の発生を低減できる。
【0020】
上記フレームが、上記摺動部材の上記プレートが当接する面とは反対側の面が当接する裏板と、上記摺動部材の外周部と係合う係合溝とを有し、上記摺動部材が、上記係合溝への係合い及び上記裏板へのボルト締結により上記フレームに取り付けられているとよい。このように係合溝とボルトとを用いて摺動部材をフレームに固定することで、摺動部材の実効表面積の減少を抑止しつつ、屋外環境における高い耐久性と、交換の容易性とを向上させることができる。
【0021】
上記摺動部材の材料が、自己潤滑性樹脂又は潤滑剤を含侵させた焼結金属であるとよい。このように上記摺動部材の材料を自己潤滑性樹脂又は潤滑剤を含侵させた焼結金属とすることで、静止摩擦係数を維持しつつ、摩擦係数差を小さくできるので、金属音の発生をさらに低減できる。
【0022】
本発明の別の一態様に係る下部走行体は、クローラフレーム及びこのクローラフレームに配設されるクローラを有するクローラユニットと、このクローラユニットが着脱可能に取り付けられるカーボディと、上記カーボディ及び上記クローラユニットを連結する本発明の連結装置とを備える。
【0023】
当該下部走行体は、本発明の連結装置を備えるので、カーボディとクローラユニットとを容易に連結でき、かつ金属音の発生を低減できる。
【0024】
本発明のさらに別の一態様に係る建設機械は、本発明の下部走行体を備える。
【0025】
当該建設機械は、本発明の下部走行体を備えるので、カーボディとクローラユニットとを容易に連結でき、かつ金属音の発生を低減できる。
【0026】
ここで、「最大静止摩擦係数」及び「動摩擦係数」は、それぞれプレートに対する摩擦係数を指し、例えばピン・オン・ディスク法を用いて測定することができる。
【0027】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る建設機械について、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0028】
〔建設機械〕
図1に示す建設機械1は、下部走行体2と、この下部走行体2上に水平方向に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に起伏可能に取り付けられるブーム4と、フック5と、ブーム4の先端からフック5を垂下するワイヤロープ6とを備える。
【0029】
<上部旋回体>
上部旋回体3は、ブーム4の取り付け部に隣接する操縦者用キャビン7や、ブーム4を起伏させるブーム起伏ウインチ(不図示)等を有する。
【0030】
このうち、操縦者用キャビン7は、操縦者が乗り込み、当該建設機械1の操作を行う場所である。
【0031】
<ブーム>
ブーム4は、上部旋回体3に前後に揺動可能に取り付けられる。ブーム4は、先端部にワイヤロープ6を案内するシーブを有する。
【0032】
<フック>
フック5は、ワイヤロープ6の下端部に固定され、吊り荷の吊り上げあるいは吊り下ろしをするためのものである。
【0033】
<ワイヤロープ>
ワイヤロープ6は、ブーム4の先端部のシーブを経由して、上部旋回体3に設置されているウィンチ(不図示)に巻回されている。なお、上記ウィンチは、ブーム4の背側(ブーム4を倒伏した状態で上になる側)に設置してもよい。
【0034】
<下部走行体>
下部走行体2は、それ自体が本発明の一態様である。当該下部走行体2は、
図2に示すように、一対のクローラユニット8と、このクローラユニット8が着脱可能に取り付けられるカーボディ9と、カーボディ9及びクローラユニット8を連結する連結装置10とを備える。
【0035】
(クローラユニット)
クローラユニット8は、当該下部走行体2の走行装置であり、
図1に示すように、クローラフレーム8aと、このクローラフレーム8aに配設されるクローラ8bとを有する。
【0036】
(カーボディ)
カーボディ9は、上部旋回体3を支持するフレームであり、上部旋回体3を回転させるための旋回ベアリング等を有する。
【0037】
カーボディ9は、
図2に示すように、左右方向外側に向かって延びるアクスル9aを、当該下部走行体2の進行方向に対して、左右それぞれ一対ずつ有する。また、一対のアクスル9aは、当該下部走行体2の進行方向に対して前後に配列されている。この一対のアクスル9aの先端に連結装置10を介してクローラユニット8が取り付けられている。なお、「左右方向」とは、この下部走行体2の前進方向を基準とした左右を意味する。
【0038】
〔連結装置〕
連結装置10は、それ自体が本発明の一実施形態である。当該連結装置10は、クローラユニット8を、このクローラユニット8が着脱可能に取り付けられるカーボディ9に連結するための連結装置である。上述のように、クローラユニット8は、一対のアクスル9aの先端に取り付けられており、クローラユニット8は、左右に一対存在するから、当該建設機械1は、合計で4つの当該連結装置10を有している。
【0039】
当該連結装置10は、
図3及び
図4に示すように、クローラフレーム8aと、カーボディ9のアクスル9aとに分かれて搭載される。当該連結装置10は、クローラフレーム8aをカーボディ9に1軸のピンで連結させるピン連結部11と、ピン連結部11の上方に位置するメタルタッチ部12と、位置調整部13とを備える。
【0040】
<ピン連結部>
ピン連結部11の構成としては、公知の構成を用いることができる。
図3及び
図4に示す当該連結装置10では、ピン連結部11を構成するため、カーボディ9のアクスル9aの先端から突出する1枚の第1板状体11aと、クローラフレーム8aから突出し、クローラユニット8をカーボディ9に連結させた際に第1板状体11aを両側から挟み込むように配置されている一対の第2板状体11bとが設けられている。第1板状体11a及び一対の第2板状体11bには、それぞれ連結ピン(不図示)が挿入可能な第1挿入孔11c及び一対の第2挿入孔11dが設けられている。第1挿入孔11c及び一対の第2挿入孔11dは、クローラユニット8をカーボディ9に連結させた際、連続するように構成されている。
【0041】
ピン連結部11では、クローラユニット8をカーボディ9に連結させた際に連続する第1挿入孔11c及び一対の第2挿入孔11dに連結ピンを挿入することで、クローラユニット8とカーボディ9とを連結させる。上記連結ピンの挿入は、例えば油圧シリンダーにより行われる。また、連結ピン挿入後は、上記連結ピンが抜け落ちないようにピン留めされるとよい。
【0042】
<メタルタッチ部>
メタルタッチ部12は、カーボディ9に取り付けられる移動止12aと、クローラフレーム8aに取り付けられ、板状であるプレート12bとを有する。
【0043】
移動止12aは、
図5に示すように、板状の摺動部材12cと、この摺動部材12cの周囲を取り囲む金属製のフレーム12dとを有する。
【0044】
プレート12bは、
図6に示すように、方形状である。プレート12bは、その1辺が摺動部材12cの表面と平行であり、前後方向に延びている。また、この平行な1辺は、クローラユニット8をカーボディ9に連結させた際に摺動部材12cの表面に当接する。つまり、プレート12bは、クローラユニット8をカーボディ9に連結させた際にその側縁の一部が、少なくとも摺動部材12cの表面に当接する(以下、この「側縁の一部」を単に「先端縁」ともいう)。
【0045】
ピン連結部11は、1軸の連結であるので、クローラユニット8は、連結ピンの周りに回転し得る。メタルタッチ部12は、この回転によるクローラユニット8とカーボディ9との相対移動を抑止する機能を果たす。当該連結装置10では、クローラユニット8がカーボディ9に連結された状態で、クローラユニット8の上部が内側に移動するように重量配分されている。このため、プレート12bの側縁の一部が摺動部材12cの表面に当接し、その静止摩擦によりそれ以上の移動をすることを抑止できる。
【0046】
(フレーム)
フレーム12dは、
図7に示すように、摺動部材12cのプレート12bが当接する面とは反対側の面が当接する裏板12eと、摺動部材12cの外周部と係合う係合溝12fとを有している。
【0047】
フレーム12dを構成する金属としては、例えばステンレス鋼、鉄鋼等が挙げられる。
【0048】
(摺動部材)
摺動部材12cは、表面が方形状であり、その表面が上下方向と平行となるように、かつクローラフレーム8aと対向するように配置されている。また、方形状の表面を構成し、対向する二対の辺のうち、一対の辺が前後方向に延びており、他の一対の辺が上下方向に延びている。
【0049】
摺動部材12cの最大静止摩擦係数と動摩擦係数との差分である摩擦係数差は、フレーム12dの摩擦係数差よりも小さい。
【0050】
摺動部材12cの材料としては、自身が固体潤滑作用を持ち、油切れによる摺動不良が発生しない、いわゆる無給油ブッシュ材料が好ましい。具体的には、摺動部材12cの材料として、黄銅系材料に円筒状の潤滑樹脂を埋め込んだもの、潤滑剤を含侵させた焼結金属、自己潤滑性樹脂等を挙げることができる。中でも、自己潤滑性樹脂及び潤滑剤を含侵させた焼結金属が好ましく、自己潤滑性樹脂がより好ましい。このように摺動部材12cの材料を自己潤滑性樹脂又は潤滑剤を含侵させた焼結金属とすることで、静止摩擦係数を維持しつつ、摩擦係数差を小さくできるので、金属音の発生をさらに低減できる。
【0051】
上記自己潤滑性樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などを挙げることができる。中でもPTFEが好ましい。プレート12bが摺動部材12cに当設する部分が摺動する距離は数mmと比較的小さい。PTFEは、このような微小摺動状態においても十分に潤滑し、摩擦係数差を低く維持できる。なお、上記自己潤滑性樹脂は、繊維強化樹脂等の耐荷重を向上させた樹脂であることが好ましい。
【0052】
摺動部材12cは、
図5及び
図7に示すように、摺動部材12cの外周部がフレーム12dの係合溝12fに係合うとともに、フレーム12dの裏板12eにボルト12gで締結されている。すなわち、摺動部材12cは、係合溝12fへの係合い及び裏板12eへのボルト締結によりフレーム12dへ取り付けられている。
【0053】
当該建設機械1のフレーム変形は荷重の移動により起こるため、プレート12bの上向き摺動時と下向き摺動時とでは、摺動部材12cに作用する面圧が異なり、一方方向に偏って、ずれ剥がれが生じ易い。この点、ボルト12gによる物理締結方式は、より強固に摺動部材12cを固定することができるので、ずれ剥がれが抑止できる。
【0054】
一方、ボルト締結のみで摺動部材12cを固定する場合、ボルト12gにせん断が生じるおそれがある。これを防ぐには締結ボルト数を増やす必要がある。しかし、締結ボルト数を増やすと、ボルト12gの頭部を埋め込むための座繰部が増え、実際に荷重を支持できる摺動部材12cの面積(実効表面積)が減少する。そこで、係合溝12fによる摺動部材12cの固定を併用する。つまり、摺動部材12cのずれの動きは主に係合溝12fにより抑止し、摺動部材12cの浮き上がり(剥がれ)は、主にボルト締結により抑止する。これによりボルト締結の必要数を減らすことができ、摺動部材12cの実効表面積の減少を抑止することができる。また、摺動部材12cのずれは上下方向に生じ易いので、係合溝12fは摺動部材12cの少なくとも上縁側及び下縁側に設けると、ずれの動きの抑止に効果的である。
【0055】
また、摺動部材12cは摩耗するため交換が必要となるが、係合溝12fやボルト12gによる固定では、交換時に摺動部材12cを容易に脱着できるというと利点もある。
【0056】
(プレート)
プレート12bは、上述のようにクローラユニット8をカーボディ9に連結させた際にその先端縁が少なくとも摺動部材12cの表面に当接するが、先端縁全体が摺動部材12cの表面に当接することが好ましい。このように先端縁全体を摺動部材12cの表面に当接させることで、プレート12bの摺動を円滑化し、スティックスリップ現象を抑止できる。
【0057】
プレート12bは、例えばフレーム12dと同様の金属製とすることができる。
【0058】
なお、当該連結装置10では、プレート12bは、
図6に示すように、クローラユニット8をカーボディ9に連結させた際に、カーボディ9側が斜め上に傾斜するよう配置されているが、水平に配置することも可能である。
【0059】
(位置調整部)
位置調整部13は、
図3に示すように、第1板状体11aの上端に設けられ、上方が開放されている凹部13aと、
図4に示すように、一対の第2板状体11bに架け渡される支持軸13bとを有する。
【0060】
支持軸13bは、クローラユニット8をカーボディ9に連結させた際に、前後方向に延び、凹部13aと係合するように設けられている。また、凹部13a及び支持軸13bの位置は、凹部13a及び支持軸13bが係合した際に、クローラユニット8がその自重により、第1挿入孔11c及び一対の第2挿入孔11dが連続する位置で安定するように調整されている。
【0061】
従って、この構成により、クローラユニット8をカーボディ9に連結させる際には、一対の第2板状体11bが第1板状体11aを挟み込むように、クローラユニット8の前後方向の位置を調整し、支持軸13bを凹部13aに係合させることで、自然に第1挿入孔11c及び一対の第2挿入孔11dが連続する。この位置調整により、連結ピンを連続する第1挿入孔11c及び一対の第2挿入孔11dに、容易に挿入することができる。
【0062】
<利点>
当該連結装置10は、ピン連結部11が1軸であるので、主に前後の位置合わせを行うことでカーボディ9とクローラユニット8とを連結できる。このため、カーボディ9とクローラユニット8との連結が容易である。また、当該連結装置10は、新たな油圧シリンダーの搭載等を必要としないため、当該建設機械1の重量増加を抑止できる。さらに、当該連結装置10は、クローラユニット8をカーボディ9に連結させた際に、メタルタッチ部12において、クローラフレーム8aに取り付けられるプレート12bがカーボディ9に当接する位置に、摺動部材12cが設けられている。摺動部材12cは、摩擦係数差がこの摺動部材12cの周囲を取り囲むフレーム12dよりも小さい。このため、当該連結装置10は、金属音の発生を低減できる。
【0063】
当該下部走行体2及び当該建設機械1は、本発明の連結装置10を備えるので、カーボディ9とクローラユニット8とを容易に連結でき、かつ金属音の発生を低減できる。
【0064】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0065】
上記実施形態では、ブーム及びフックを備える建設機械を例に取り説明したが、本発明の建設機械はブーム及びフックを備えるものに限定されるわけではなく、クローラフレーム及びこのクローラフレームに配設されるクローラを有するクローラユニットと、このクローラユニットが着脱可能に取り付けられるカーボディとを有するものであればよい。
【0066】
上記実施形態では、移動止がカーボディに取り付けられ、プレートがクローラフレームに取り付けられる場合を説明したが、プレートがカーボディに取り付けられ、移動止がクローラフレームに取り付けられる構成であってもよい。すなわち、当該連結装置では、カーボディ及びクローラフレームのうちの一方に移動止が取り付けられ、他方にプレートが取り付けられていれば、同様の効果を奏する。
【0067】
上記実施形態では、摺動部材のフレームへの取付機構として、フレームに設けられ、摺動部材の外周部と係合う係合溝と、摺動部材をフレームの底部に締結するボルトとを有する構成を説明したが、摺動部材のフレームへの取付機構はこれに限定されない。例えば接着剤や両面テープ等で張り付ける構成としてもよい。
【0068】
上記実施形態では、連結装置が位置調整部を有する場合を説明したが、位置調整部は上述の構成に限定されるものではない。また、位置調整部は必須の構成ではなく、省略することもできる。
【0069】
上記実施形態では、プレートが方形状である場合を説明したが、プレートは方形状に限定されるものではなく、クローラユニットをカーボディに連結させた際にその側縁の少なくとも一部が摺動部材の表面に当接する限り、他の形状を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明の連結装置、下部走行体及び建設機械は、建設機械の重量増加を抑止しつつ、カーボディとクローラとを容易に連結でき、かつ金属音の発生を低減できる。
【符号の説明】
【0071】
1 建設機械
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 ブーム
5 フック
6 ワイヤロープ
7 操縦者用キャビン
8 クローラユニット
8a クローラフレーム
8b クローラ
9 カーボディ
9a アクスル
10 連結装置
11 ピン連結部
11a 第1板状体
11b 第2板状体
11c 第1挿入孔
11d 第2挿入孔
12 メタルタッチ部
12a 移動止
12b プレート
12c 摺動部材
12d フレーム
12e 裏板
12f 係合溝
12g ボルト
13 位置調整部
13a 凹部
13b 支持軸