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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189357
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】患者衣
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/12 20060101AFI20221215BHJP
   A41D 13/08 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A41D13/12 145
A41D13/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097899
(22)【出願日】2021-06-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】519438648
【氏名又は名称】株式会社ケアウィル
(74)【代理人】
【識別番号】100121430
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 義之
(72)【発明者】
【氏名】笈沼 清紀
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA08
3B011AB08
3B011AC21
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】障害がある腕を露出させずに保持できる患者衣を提供する。
【解決手段】患者衣10は、着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状の外側布12と、外側布12の内側に配置された内側布14と、を有し、胸部の前において前腕を収容し下方から支持して保持可能である腕保持部16が外側布12と内側布14により形成され、前腕が挿通可能であるサイド開口部18A、18Bが腕保持部16における外側布12に覆われる位置に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状の外側布と、
前記外側布の内側に配置された内側布と、を有し、
胸部の前において前腕を収容し下方から支持して保持可能である腕保持部が前記外側布と前記内側布により形成され、
前腕が挿通可能である開口部が前記腕保持部における前記外側布に覆われる位置に形成された患者衣。
【請求項2】
請求項1において、
前記内側布も着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状であり、
前記開口部が前記内側布に形成された患者衣。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記開口部として前記内側布における前記腕保持部の左右方向の端部の位置にサイド開口部が形成された患者衣。
【請求項4】
請求項3において、
前記内側布は胸部を覆う前側部と、背中を覆う後側部とで構成され、
前記前側部と前記後側部は前記腕保持部の左右方向の端部において部分的に縫い合わされ、且つ、一部は縫い合わされずに前記サイド開口部が形成された患者衣。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかにおいて、
前記内側布における前記腕保持部の左右方向の中央の位置にセンター開口部が形成された患者衣。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかにおいて、
前記腕保持部の下端と両肩に対応する位置とを結ぶ一対の経路に沿って延在する紐状材が前記内側布及び前記外側布の少なくとも一方に縫い付けられた患者衣。
【請求項7】
請求項6において、
前記紐状材は前記両肩に対応する位置を結び下方に凸である円弧状の経路に沿って背中を覆う側にも延在し、前記一対の経路及び前記円弧状の経路に沿って連続して前記紐状材が前記内側布及び前記外側布の少なくとも一方に縫い付けられた患者衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩や肘等に障害がある患者のための患者衣に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肩や肘等に障害がある患者の腕を保持するために三角巾が広く用いられている。一方、患者は、障害がある腕が目立たないようにしたい場合があるが、三角巾を用いると腕に障害があることが目立ちやすい。これに対し、前身頃とその上に重ねられたポケット布との間に設けられた上下2段のポケットを備えるベスト型の患者衣が知られている(特許文献1参照)。前身頃とポケット布は上下2段のポケットの左右両側の部分が縫い合わされず開口部となっており、この開口部から腕をポケット部分に挿入することができる。また、前腕が挿通可能であるスリットと、スリットに連通する筒状のポケットを内側に備えるベスト型の患者衣が知られている(特許文献2参照)。この患者衣はスリットから挿入される前腕をポケットで保持することができる。また、前側中央の前腕保持部で前腕を保持し、肘と上腕を身頃内に収容可能である半袖シャツ状の患者用着衣が知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3142481号公報
【特許文献2】特開平11-104162号公報
【特許文献3】特開2006-112011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の患者衣はいずれも保持される腕の一部が外側に露出する。患者は、障害がある腕が露出しないようにしたい場合がある。本発明はこの問題点に鑑みてなされたものであって、障害がある腕を露出させずに保持できる患者衣を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状の外側布と、外側布の内側に配置された内側布と、を有し、胸部の前において前腕を収容し下方から支持して保持可能である腕保持部が外側布と内側布により形成され、前腕が挿通可能である開口部が腕保持部における外側布に覆われる位置に形成された患者衣により上記課題を解決したものである。
【0006】
この患者衣は、外側布が着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状である。さらに、前腕が挿通可能である開口部が腕保持部における外側布に覆われる位置に形成されている。したがって、腕保持部に保持される腕は外側布により完全に覆われ露出することがない。また、前腕とともにまたは前腕に代えて物を収容するポケットとして腕保持部を利用することもできる。
【0007】
内側布も着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状であり、開口部が内側布に形成されているとよい。内側布が外側布と同様に胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状であるので、外側布と内側布を備える二重構造でありながら、1枚の生地の衣服と同様の着用感が得られる。
【0008】
開口部として内側布における腕保持部の左右方向の端部の位置にサイド開口部が形成されているとよい。サイド開口部を介して側方から腕保持部に前腕を容易に挿入できる。
【0009】
内側布は胸部を覆う前側部と、背中を覆う後側部とで構成され、前側部と後側部は腕保持部の左右方向の端部において部分的に縫い合わされ、且つ、一部は縫い合わされずにサイド開口部が形成されていてもよい。
【0010】
サイド開口部が内側布の前側部と後側部が縫い合わされる部分に形成されるので、サイド開口部の形成が容易であり生産性の向上に寄与する。また、前側部は腕保持部を構成し、後側部は他の部分を構成する。したがって、例えば前側部の素材として腕保持部に適した素材を採用し、後側部の素材として裏地に適した他の素材を採用することができる。
【0011】
内側布における腕保持部の左右方向の中央の位置にセンター開口部が形成されていてもよい。サイド開口部から腕保持部に挿入された前腕の手首から先の部分をセンター開口部を介して内側布の内側に出すことができる。更に、内側布及び外側布の下方から手を前方に出して物を把持する等の作業をすることができる。例えば、筆記具を持って文字を書くことができる。また、箸、スプーン、フォーク等の食器を持って食事をすることができる。また、センター開口部から親指だけを内側布の内側に出すことにより、腕保持部に挿入した前腕の位置を安定させることができる。
【0012】
腕保持部の下端と両肩に対応する位置とを結ぶ一対の経路に沿って延在する紐状材が内側布及び外側布の少なくとも一方に縫い付けられていてもよい。患者衣には腕保持部で保持される腕の荷重が作用する。患者衣に作用する腕の荷重の分布を紐状材により調整することができる。
【0013】
紐状材は両肩に対応する位置を結び下方に凸である円弧状の経路に沿って背中を覆う側にも延在し、一対の経路及び円弧状の経路に沿って連続して紐状材が内側布及び外側布の少なくとも一方に縫い付けられていてもよい。背中を覆う側にも紐状材が延在し、内側布及び外側布の少なくとも一方に縫い付けられることで患者衣に作用する腕の荷重が背中側にも好適に分散される。したがって、患者衣の快適な着用に寄与する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、障害がある腕を露出させずに保持できる患者衣を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態の患者衣の斜視図
図2】同患者衣の構成を示す分解図
図3】同患者衣の正面図
図4】同患者衣の背面図
図5】同患者衣を構成する内側布の正面図
図6】同内側布の背面図
図7】腕保持部に片腕が保持された状態の同患者衣の斜視図
図8】本発明の第2実施形態の患者衣の構成を示す分解図
図9】本発明の第3実施形態の患者衣の構成を示す分解図
図10】同患者衣を構成する外側布の展開図
図11】同患者衣を構成する内側布の展開図
図12】本発明の第4実施形態の患者衣の構成を示す分解図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~6に示されるように、本発明の第1実施形態の患者衣10はケープのような外観形状で開閉はしないプルオーバーの衣服である。患者衣10は、着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状の外側布12と、外側布12の内側に配置された内側布14と、を有し、胸部の前において前腕を収容し下方から支持して保持可能である腕保持部16が外側布12と内側布14により形成され、前腕が挿通可能であるサイド開口部18A、18Bが腕保持部16における外側布12に覆われる位置に形成されている。内側布14も着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状であり、サイド開口部18A、18Bは内側布14に形成されている。より詳細には、内側布14における腕保持部16の左右方向の端部の位置にサイド開口部18A、18Bが形成されている。また、内側布14における腕保持部16の左右方向の中央の位置に前腕が挿通可能であるセンター開口部20が形成されている。
【0017】
外側布12は、胸部を覆う前側部22と背中を覆う後側部24で構成されている。前側部22の丈は後側部24の丈よりも短い。前側部22の下端の位置は着用者の肘の高さくらいの位置である。前側部22と後側部24は左右方向の側端部で縫い合わされている。なお、前側部22と後側部24の縫い代は内側(前側部22と後側部24の間)に収容されている。外側布12の左右の側端部の外側に縫い合わせ部の境界線(図示省略)が表れている。前側部22と後側部24が縫い合わされてクルーネック形状の首回り部が形成されている。外側布12を構成する前側部22と後側部24の生地の材質は、例えば綿、ポリエステル、ポリウレタン、あるいはこれらの混合素材等である。容易な着脱や着心地の観点から、伸縮しやすいメリヤス等のニット生地であることが好ましい。
【0018】
内側布14も、胸部を覆う前側部26と背中を覆う後側部28とで構成されている。内側布14の前側部26は外側布12の前側部22よりも幅が狭い。一方、内側布14の後側部28は肩及び上腕も覆う形状であり外側布12の後側部24よりも(展開状態の)幅が広い。後側部28の左右方向の両端部は前側の腕保持部16の左右方向の端部まで延在している。内側布14の前側部26と後側部28は腕保持部16の左右方向の端部において部分的に縫い合わされ、且つ、一部は縫い合わされていない。より詳細には、前側部26と後側部28は腕保持部16の左右方向の端部において上部と下部が縫い合わされ、中間部は縫い合わされていない。これによりスリット状のサイド開口部18A、18Bが形成されている。なお、前側部26と後側部28は腕保持部16の左右方向の端部において上部が縫い合わされ、下部は縫い合わされていないことによりスリット状のサイド開口部18A、18Bが形成されていてもよい。前側部26と後側部28の縫い代は内側布14と外側布12の間に収容されている。内側布14の前側部26の首回り部はVネック形状であり外側布12の前側部22よりも大きく開いている。一方、内側布14の後側部28の首回り部は外側布12の後側部24の首回りと同じクルーネック形状である。内側布14の前側部26は左側部26Aと右側部26Bで構成されている。左側部26Aと右側部26Bは腕保持部16の左右方向の中心において部分的に縫い合わされ、且つ、一部は縫い合わされていない。より詳細には、左側部26Aと右側部26Bは腕保持部16の左右方向の中心において上部と下部が縫い合わされ、中間部は縫い合わされていない。これによりスリット状のセンター開口部20が形成されている。なお、左側部26Aと右側部26Bは腕保持部16の左右方向の中心において上部が縫い合わされ、下部は縫い合わされていないことによりスリット状のセンター開口部20が形成されていてもよい。左側部26Aと右側部26Bの縫い代も内側布14と外側布12の間に収容されている。内側布14を構成する前側部26の生地の材質も、例えば綿、ポリエステル、ポリウレタン、あるいはこれらの混合素材等である。容易な着脱や着心地の観点から、伸縮しやすいメリヤス等のニット生地であることが好ましい。一方、内側布14を構成する後側部28の生地の材質は、例えばポリエステル、キュプラ、絹、あるいはこれらの混合素材等の裏地に適した材質である。
【0019】
内側布14の前側部26には、腕保持部16の下端(前側部26の下端)と両肩に対応する位置とを結ぶ一対の経路に沿って延在する紐状材30が縫い付けられている。紐状材30は内側布14の前側部26の前側の面(前側部26における外側布12の前側部22に面する側の面)に縫い付けられている。紐状材30は両肩に対応する位置から内側布14の前側部26の首回り部のVネックの形状に沿って下方、且つ、腕保持部16の左右方向の中心に向かう経路で延在している。また、紐状材30はVネックの下端近傍において腕保持部16の左右方向の中心に向かって凸に屈曲する経路で延在している。紐状材30はさらに両肩に対応する位置を結び下方に凸である円弧状の経路に沿って背中を覆う側にも延在し、内側布14の後側部28にも縫い付けられている。紐状材30は内側布14の後側部28の後側の面(後側部28における外側布12の後側部24に面する側の面)に縫い付けられている。紐状材30は胸部を覆う側の一対の経路及び背中を覆う側の円弧状の経路に沿って連続して内側布14に縫い付けられている。紐状材30は例えばポリエステルの糸とポリウレタンあるいは天然ゴムの弾性糸等で構成される平ゴム等のゴム紐である。
【0020】
内側布14の輪郭の形状(前側部26と後側部28が縫い合わされた形状)は、前側部26のVネック形状の首回り部以外は、外側布12の輪郭の形状(前側部22と後側部24が縫い合わされた形状)とほぼ同じである。したがって、内側布14は外側布12の内側の全周に亘って配置されている。内側布14は外側布12と下端において全周に亘って縫い合わされている。より詳細には、内側布14の前側部26は外側布12の前側部22と下端において縫い合わされている。また、内側布14の後側部28は外側布12の後側部24と下端において縫い合わされている。さらに、内側布14の後側部28の左右方向の両端部は外側布12の前側部22と下端において縫い合わされている。これらの縫い代は内側布14と外側布12との間に収容されている。なお、内側布14と外側布12の下端の縫い合わされた部分の境界線(図示省略)は下方に面しており側方からは視認されない。
【0021】
また、内側布14は外側布12と肩の部分において縫い合わされている。より詳細には、外側布12の前側部22、内側布14の前側部26、内側布14の後側部28、及び外側布12の後側部24が肩の部分において縫い合わされている。これらの縫い代も内側布14と外側布12との間に収容されている。外側布12の前側部22と内側布14の前側部26の縫い代は外側布12の前側部22と内側布14の前側部26の間に収容されている。また、内側布14の後側部28と外側布12の後側部24の縫い代は内側布14の後側部28と外側布12の後側部24の間に収容されている。
【0022】
外側布12の首回り部には衿部32が縫い付けられている。内側布14の後側部28の首回り部は衿部32とともに外側布12の後側部24に縫い付けられている。一方、内側布14の前側部26のVネック形状の首回り部は外側布12の前側部22に縫い合わされていない。したがって、腕保持部16は内側布14の前側部26のVネック形状の首回り部において開口している。
【0023】
次に、患者衣10の機能について説明する。患者衣10はケープのような外観形状のプルオーバーの衣服であるので、片腕に障害があっても他方の腕で容易に着用できる。また、内側布14が外側布12と同様に胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状であるので、外側布12と内側布14を備える二重構造でありながら、1枚の生地の衣服と同様の着用感が得られる。そして図7に示されるように、サイド開口部18A、18Bを介して側方から腕保持部16に患側の前腕を容易に挿入できる。また、外側布12が着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状である。さらに、サイド開口部18A、18Bが腕保持部16における外側布12に覆われる位置に形成されている。したがって、腕保持部16に保持される腕は外側布12により完全に覆われ露出することがない。また、前腕とともにまたは前腕に代えて物を収容するポケットとして腕保持部16を利用することもできる。なお、肘の位置よりも低い腹部は患者衣10から露出するので、必要に応じてタンクトップやTシャツの上に患者衣10を着用するとよい。
【0024】
また、サイド開口部18A、18Bから腕保持部16に挿入された前腕の手首から先の部分をセンター開口部20を介して内側布14の内側に出すことができる。更に、手を内側布14及び外側布12の下方から前方に出して物を把持する等の作業をすることができる。例えば、筆記具を持って文字を書くことができる。また、箸、スプーン、フォーク等の食器を持って食事をすることができる。また、センター開口部20から親指だけを内側布14の内側に出すことにより、腕保持部16に挿入した前腕の位置を安定させることができる。
【0025】
また、サイド開口部18A、18Bが内側布14の前側部26と後側部28が縫い合わされる部分に形成されるので、サイド開口部18A、18Bの形成が容易であり生産性の向上に寄与する。また、前側部26は腕保持部16を構成し、後側部28は他の部分を構成する。したがって、例えば前側部26の素材として腕保持部16に適した素材を採用し、後側部28の素材として例えば裏地に適した他の素材を採用することができる。また、センター開口部20は前側部26の左側部26Aと右側部26Bが縫い合わされる部分に形成されるので、センター開口部20の形成も容易であり、この点でも生産性の向上に寄与する。
【0026】
また、患者衣10には腕保持部16で保持される腕の荷重が作用する。腕保持部16の下端と両肩に対応する位置とを結ぶ一対の経路に沿って延在する紐状材30が内側布14の前側部26に縫い付けられているので、患者衣10に作用する腕の荷重の分布を紐状材30により調整することができる。さらに、紐状材30は両肩に対応する位置を結び下方に凸である円弧状の経路に沿って背中を覆う側にも延在し、内側布14の後側部28にも連続して縫い付けられているので、患者衣10に作用する腕の荷重が背中側にも好適に分散される。したがって、患者衣10の快適な着用に寄与する。
【0027】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図8に示されるように、第2実施形態の患者衣40は第1実施形態の患者衣10に対し、内側布42が前側にのみ配置されている。内側布42は、第1実施形態の内側布14の前側部26とほぼ同じ形状である。内側布42は左右方向の両端が外側布12(前側部22)に縫い付けられていない。これにより、内側布42における腕保持部16の左右方向の端部の位置にサイド開口部44A、44Bが形成されている。内側布42は左側部42Aと右側部42Bで構成されている。左側部42Aと右側部42Bは腕保持部16の左右方向の中心において上部と下部が縫い合わされ、中間部は縫い合わされていない。これによりスリット状のセンター開口部20が形成されている。なお、左側部42Aと右側部42Bは腕保持部16の左右方向の中心において上部が縫い合わされ、下部は縫い合わされていないことによりスリット状のセンター開口部20が形成されていてもよい。また、紐状材30が内側布42ではなく外側布12の前側部22の内側面と後側部24の内側面に縫い付けられている。なお、図8では便宜上、紐状材30の前側部22に縫い付けられた部分と後側部24に縫い付けられた部分が分割されているように描かれているが、紐状材30は連続して外側布12の前側部22と後側部24に縫い付けられている。他の構成は第1実施形態の患者衣10と同じであるので同じ構成については第1実施形態の図1~7と同じ符号を付することとして説明を省略する。
【0028】
患者衣40も第1実施形態の患者衣10と同様に、腕保持部16に保持される腕は外側布12により完全に覆われ露出することがない。また、前側にのみ配置された内側布42における左右方向の端部が縫い付けられておらず、これによりサイド開口部44A、44Bが形成されているのでサイド開口部44A、44Bの形成が容易であり生産性の向上に寄与する。また、紐状材30が外側布12の前側部22、及び後側部24に連続して縫い付けられているので、患者衣10に作用する腕の荷重が好適に分散される。したがって、患者衣40の快適な着用に寄与する。
【0029】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図9に示されるように、第3実施形態の患者衣50もケープのような外観形状で開閉はしないプルオーバーの衣服である。患者衣50は、着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状の外側布52と、外側布52の内側に配置された内側布54と、を有し、胸部の前において前腕を収容し下方から支持して保持可能である腕保持部56が外側布52と内側布54により形成され、前腕が挿通可能であるセンター開口部58A、58Bが腕保持部56における外側布52に覆われる位置に形成されている。より詳細には、内側布54における腕保持部56の左右方向の中央近傍の位置にセンター開口部58A、58Bが形成されている。
【0030】
図10の展開図に示されるように、外側布52は1枚の布地で構成され、図10における左右の上端部同士が縫い合わされている。なお、縫い代は内側に収容されている。外側布52の前側の左右の中央に縫い合わせ部の境界線が表れている。外側布52にはVネック形状の首回り部が形成されている。首回り部以外の外側布52の輪郭形状は第1及び第2実施形態の外側布12の輪郭形状と同じである。外側布52を構成する生地の材質も、例えば綿、ポリエステル、ポリウレタン、あるいはこれらの混合素材等である。容易な着脱や着心地の観点から、伸縮しやすいメリヤス等のニット生地であることが好ましい。
【0031】
内側布54も着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状である。図11の展開図に示されるように、内側布54も1枚の布地で構成されている。内側布54の首回り部はV形状であり前側部分は外側布52のV形状よりも大きいV形状で開いている。V形状の下端は内側布54の下端まで達している。一方、内側布54の首回り部の後側部分は外側布52の後側の首回り部と同じ形状である。内側布54の輪郭の形状は、V形状の首回り部の前側部分以外は、外側布52の輪郭の形状とほぼ同じである。内側布54は外側布52と下端において全周に亘って縫い合わされている。縫い代は内側布54と外側布52との間に収容されている。なお、内側布54と外側布52の下端の縫い合わされた部分の境界線(図示省略)は下方に面しており側方からは見えない。
【0032】
また、内側布54は外側布52と肩の部分において縫い合わされている。より詳細には、外側布52の前側部分、内側布54の前側部分、内側布54の後側部分、及び外側布52の後側部分が肩の部分において縫い合わされている。これらの縫い代も内側布54と外側布52との間に収容されている。外側布52の前側部分と内側布54の前側部分の縫い代は外側布52の前側部分と内側布54の前側部分の間に収容されている。また、内側布54の後側部分と外側布52の後側部分の縫い代は内側布54の後側部分と外側布52の後側部分の間に収容されている。
【0033】
外側布52の首回り部には衿部62が縫い付けられている。内側布54の後側部分の首回り部は衿部62とともに外側布52の後側部分に縫い付けられている。一方、内側布54の前側部分のV形状の部分は外側布52の前側部分に縫い合わされていない。これによりV形状のセンター開口部58A、58Bが形成されている。腕保持部56は内側布54のV形状のセンター開口部58A、58Bにおいて開口している。内側布54を構成する生地の材質も、外側布52と同様に、例えば綿、ポリエステル、ポリウレタン、あるいはこれらの混合素材等である。容易な着脱や着心地の観点から、伸縮しやすいメリヤス等のニット生地であることが好ましい。
【0034】
内側布54の前側部分には、腕保持部56の下端と両肩に対応する位置とを結ぶ一対の経路に沿って延在する紐状材60が縫い付けられている。紐状材60は内側布54の前側部分の前側の面(内側布54の前側部分における外側布52の前側部分に面する側の面)に縫い付けられている。紐状材60は両肩に対応する位置から内側布54の前側部分のV形状に沿って下方、且つ、腕保持部56の左右方向の中心に向かう経路で延在している。紐状材60はさらに両肩に対応する位置を結び下方に凸である円弧状の経路に沿って背中を覆う側にも延在し、内側布54の後側部分にも縫い付けられている。紐状材60は内側布54の後側部分の後側の面(内側布54の後側部分における外側布52の後側部分に面する側の面)に縫い付けられている。紐状材60は胸部を覆う側の一対の経路及び背中を覆う側の円弧状の経路に沿って連続して内側布54に縫い付けられている。紐状材60も紐状材30と同様に、例えばポリエステルの糸とポリウレタンあるいは天然ゴムの弾性糸等で構成される平ゴム等のゴム紐である。
【0035】
次に、患者衣50の機能について説明する。患者衣50もケープのような外観形状のプルオーバーの衣服であるので、片腕に障害があっても他方の腕で容易に着用できる。内側布54が外側布52と同様に胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状であるので、外側布52と内側布54を備える二重構造でありながら、1枚の生地の衣服と同様の着用感が得られる。そしてセンター開口部58A、58Bの一方に患側の前腕の肘側の部分を挿入し、他方に同前腕の先端側の部分を挿入することにより腕保持部56に患側の前腕を容易に挿入できる。また、外側布52が着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状である。さらに、センター開口部58A、58Bが腕保持部56における外側布52に覆われる位置に形成されている。したがって、腕保持部56に保持される腕は外側布52により完全に覆われ露出することがない。また、前腕とともにまたは前腕に代えて物を収容するポケットとして腕保持部56を利用することもできる。
【0036】
また、腕保持部56に挿入された前腕の先端側の部分をセンター開口部58Aまたは58Bから内側布54の内側に容易に出すことができる。これにより内側布54及び外側布52の下方から手を前方に出して物を把持する等の作業をすることができる。例えば、筆記具を持って文字を書くことができる。また、箸、スプーン、フォーク等の食器を持って食事をすることができる。
【0037】
また、腕保持部56の下端と両肩に対応する位置とを結ぶ一対の経路に沿って延在する紐状材60が内側布54の前側部分に縫い付けられているので、患者衣50に作用する腕の荷重の分布を紐状材60により調整することができる。さらに、紐状材は両肩に対応する位置を結び下方に凸である円弧状の経路に沿って背中を覆う側にも延在し、内側布54の後側部分にも連続して縫い付けられているので、患者衣50に作用する荷重が背中側にも好適に分散される。したがって、患者衣50の快適な着用に寄与する。
【0038】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図12に示されるように、第4実施形態の患者衣70は第3実施形態の患者衣50に対し、内側布72が胸部を覆う部分だけに備えられている。また、紐状材60が内側布72ではなく外側布52の内側面に縫い付けられている。なお、紐状材60は外側布52の前側部分と後側部分に連続して縫い付けられている。他の構成は第3実施形態の患者衣50と同じであるので同じ構成については第3実施形態の図9と同じ符号を付することとして説明を省略する。
【0039】
内側布72は、第3実施形態の内側布54における胸部を覆う部分と同じ形状である。内側布72は左右方向の両端が外側布52に縫い付けられていない。これにより、内側布72における腕保持部56の左右方向の端部の位置にサイド開口部74A、74Bが形成されている。
【0040】
患者衣70も第3実施形態の患者衣50と同様に、腕保持部56に保持される腕は外側布52により完全に覆われ露出することがない。また、センター開口部58A、58Bに加え、前側にのみ配置された内側布72における腕保持部56の左右方向の端部の位置にサイド開口部74A、74Bが形成されているので、サイド開口部74A、74Bから腕保持部56に前腕を挿入することも可能である。この場合、サイド開口部74A、74Bから腕保持部56に挿入された前腕の手首から先の部分をセンター開口部58A、58Bを介して内側布72の内側に出すことができる。更に、手を内側布72及び外側布52の下方から前方に出して物を把持する等の作業をすることができる。また、センター開口部58A、58Bから親指だけを内側布72の内側に出すことにより、腕保持部56に挿入した前腕の位置を安定させることができる。また、紐状材60が外側布52の前側部分と後側部分に連続して縫い付けられているので、患者衣70に作用する腕の荷重が好適に分散される。したがって、患者衣70の快適な着用に寄与する。
【0041】
なお、上記第1及び第3実施形態において、紐状材30、60は内側布14、54に縫い付けられているが、第1及び第3実施形態の構成においても第2及び第4実施形態のように、紐状材30、60が外側布12、52に縫い付けられていてもよい。また、上記第1~第4実施形態において、紐状材30、60は内側布14、54または外側布12、52のいずれか一方に縫い付けられているが、紐状材30、60は内側布14、54の前側の部分と外側布12、52の後側の部分に縫い付けられていてもよい。また、紐状材30、60は外側布12、52の前側の部分と内側布14、54の後側の部分に縫い付けられていてもよい。
【0042】
また、上記第1~第4実施形態において、紐状材30、60は下方に凸である円弧状の経路に沿って背中を覆う側に延在しているが、紐状材30、60は他の形状の経路に沿って背中を覆う側に延在していてもよい。例えば、下方に凸であるU形状またはV形状の経路に沿って背中を覆う側に延在していてもよい。また、上記第1~第4実施形態において、紐状材30、60は背中を覆う側(後側)にも延在しているが、紐状材30、60は胸部を覆う側(前側)にのみ延在していてもよい。
【0043】
また、上記第1及び第2実施形態において、サイド開口部18A、18B、44A、44Bと、センター開口部20が腕保持部16に形成されているが、第1及び第2実施形態の構成において、センター開口部が形成されず、サイド開口部18A、18B、44A、44Bのみが腕保持部16に形成されていてもよい。この場合、内側布14の前側部26または内側布42は1枚の生地で構成されていてもよい。また、上記第4実施形態においてサイド開口部74A、74Bと、センター開口部58A、58Bが腕保持部56に形成されているが第4実施形態の構成において、サイド開口部が形成されず、センター開口部58A、58Bのみが腕保持部56に形成されていてもよい。この場合、内側布72の左右方向の端部は外側布52に縫い付けられる。また、上記第1、第2、及び第4実施形態において、サイド開口部が腕保持部16、56の左右両側に形成されているが第1、第2、及び第4実施形態の構成において、サイド開口部が腕保持部16、56の左右のいずれか一方側にのみ形成されていてもよい。
【0044】
また、上記第1及び第2実施形態において、内側布14の前側部26または内側布42が左側部26A、42Aと右側部26B、42Bで構成され、これらの境界にセンター開口部20が形成されているが、1枚の布地で構成される内側布14の前側部または内側布42における腕保持部16の左右方向の中央の位置にセンター開口部20が形成されていてもよい。また、上記第1及び第2実施形態において、センター開口部20は前腕が挿通可能である大きさであるが、センター開口部は親指が挿通できるだけの大きさであってもよい。
【0045】
また、上記第1実施形態において、内側布14は前側部26と後側部28とで構成され、これらの境界にサイド開口部18A、18Bが形成されているが、第3実施形態の内側布54のような1枚の布地で構成される内側布における腕保持部の左右方向の端部の位置にサイド開口部が形成されていてもよい。
【0046】
また、上記第1~第4実施形態において、腕保持部16、56はポケットを備えていないが、腕保持部16、56の内側(外側布12、52及び/または内側布14、42、54、72の内側面)に例えばスマートホンや財布を収容するためのポケットを備えていてもよい。
【0047】
また、上記第1~第4実施形態において、外側布12、52は内側布14、42、54、72と丈が等しく患者衣10、40、50、70はケープのような外観形状であるが、患者衣は外側布の丈が内側布14、42、54、72の丈よりも長いマントのような外観形状であってもよい。例えば、着用者の腹部を覆う丈の外側布であってもよい。また、上記第1~第4実施形態において、患者衣10、40、50、70は開閉はしないプルオーバーの衣服であるが、スナップボタンのような点ファスナー、線ファスナー、あるいは面ファスナー等により開閉可能な患者衣であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、肩や肘等に障害がある患者のための患者衣に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
10、40、50、70 患者衣
12、52 外側布
14、42、54、72 内側布
16、56 腕保持部
18A、18B、44A、44B、74A、74B サイド開口部
20、58A、58B センター開口部
22、26 前側部
24、28 後側部
26A、42A 左側部
26B、42B 右側部
30、60 紐状材
32、62 衿部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状の外側布と、
前記外側布の内側に配置された内側布と、を有し、
胸部の前において前腕を収容し下方から支持して保持可能である腕保持部が前記外側布と前記内側布により形成され、
前腕が挿通可能である開口部が前記腕保持部における前記外側布に覆われる位置に形成され
前記内側布も着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状であり、
前記開口部が前記内側布に形成された患者衣。
【請求項2】
請求項1において、
前記開口部として前記内側布における前記腕保持部の左右方向の端部の位置にサイド開口部が形成された患者衣。
【請求項3】
請求項において、
前記内側布は胸部を覆う前側部と、背中を覆う後側部とで構成され、
前記前側部と前記後側部は前記腕保持部の左右方向の端部において部分的に縫い合わされ、且つ、一部は縫い合わされずに前記サイド開口部が形成された患者衣。
【請求項4】
請求項1~のいずれかにおいて、
前記内側布における前記腕保持部の左右方向の中央の位置にセンター開口部が形成された患者衣。
【請求項5】
着用者の胸部、背中、肩及び上腕を囲むように覆う形状の外側布と、
前記外側布の内側に配置された内側布と、を有し、
胸部の前において前腕を収容し下方から支持して保持可能である腕保持部が前記外側布と前記内側布により形成され、
前腕が挿通可能である開口部が前記腕保持部における前記外側布に覆われる位置に形成され、
前記腕保持部の下端と両肩に対応する位置とを結ぶ一対の経路に沿って延在する紐状材が前記内側布及び前記外側布の少なくとも一方に縫い付けられた患者衣。
【請求項6】
請求項において、
前記紐状材は前記両肩に対応する位置を結び下方に凸である円弧状の経路に沿って背中を覆う側にも延在し、前記一対の経路及び前記円弧状の経路に沿って連続して前記紐状材が前記内側布及び前記外側布の少なくとも一方に縫い付けられた患者衣。