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  • 特開-画像形成方法及び画像形成システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189360
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】画像形成方法及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   G03G 8/00 20060101AFI20221215BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20221215BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20221215BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G03G8/00
B41M5/00 134
G03G9/097 365
G03G9/087 325
G03G9/087 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097903
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉江 直樹
【テーマコード(参考)】
2H186
2H500
【Fターム(参考)】
2H186AB33
2H186AB39
2H186AB44
2H186AB51
2H186AB52
2H186AB54
2H186AB56
2H186AB57
2H500AA01
2H500AA08
2H500CA03
2H500CA06
2H500CA30
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、ポストプレス加工として画像に塗布する液状物質の塗布性及び画像との接着性をより向上させた画像形成方法及び画像形成システムを提供することである。
【解決手段】画像形成後に画像表面を改質する画像形成方法であって、離型剤を含有する印字材料で記録媒体上に画像を形成する工程と、前記画像表面に水溶液を塗布する工程と、前記水溶液の塗布後に前記画像表面を乾燥する工程と、前記画像表面に硬化膜を形成する工程とを有し、かつ、前記水溶液が、少なくとも水と界面活性剤を含有し、前記水溶液の表面張力が、温度25℃において、20~30mN/mの範囲内であることを特徴とする画像形成方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成後に画像表面を改質する画像形成方法であって、
離型剤を含有する印字材料で記録媒体上に画像を形成する工程と、
前記画像表面に水溶液を塗布する工程と、
前記水溶液の塗布後に前記画像表面を乾燥する工程と、
前記画像表面に硬化膜を形成する工程とを有し、かつ、
前記水溶液が、少なくとも水と界面活性剤を含有し、
前記水溶液の表面張力が、温度25℃において、20~30mN/mの範囲内である
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記画像を形成する工程が、電子写真方式の画像形成工程である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記水溶液の表面張力が、温度25℃において、22~27mN/mの範囲内である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記界面活性剤が、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム又はポリオキシエチレンラウリルエーテルである
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記離型剤が、エステル系ワックス又は炭化水素系ワックスである
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記印字材料が、結着樹脂を含有し、前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂及び芳香族ポリエステル樹脂を含有する
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記水溶液が、水溶性樹脂を含有する
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記水溶性樹脂が、ヒドロキシエチルセルロースである
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記硬化膜が、ニスの塗膜である
ことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記ニスの表面張力が、温度25℃において、30mN/m以下である
ことを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記水溶液が、アルコール又はグリコールエーテルを含有する
ことを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記画像を乾燥する方法が、風又は熱による方法である
ことを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記ニスが、活性線硬化型樹脂又はその構成成分である単量体を主成分とし、液状物質の膜を形成後、活性線を照射して硬化させる
ことを特徴とする請求項9から請求項12までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項14】
前記ニスが、水系樹脂エマルジョンを主成分とし、液状物質の膜を形成後、水分を蒸発させて、前記硬化膜を形成する
ことを特徴とする請求項9から請求項12までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項15】
画像形成後に画像表面を改質する画像形成システムであって、
請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載の画像形成方法を実施するための画像形成システムであり、かつ、
静電荷像現像用トナーと電子写真画像形成装置を用いる
ことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法及び画像形成システムに関する。より詳しくは、ポストプレス加工として画像に塗布する液状物質の塗布性及び画像との接着性をより向上させた画像形成方法及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロダクションプリンティング(PP)市場においては、印刷用の版を必要としないことから、必要枚数分のプリント物をオンデマンドに作成することができる電子写真方式の画像形成方法を用いることが行われている。
電子写真方式の画像形成方法によっては、トナー像や当該トナー像が熱定着された画像(以下、これらをまとめて「定着像」ともいう。)が形成されるが、画像品位や耐久性を向上させるために当該画像にポストプレス加工することが一般的である。
【0003】
ところで、電子写真方式の画像形成に用いられる印字材料に、例えば静電荷像現像用トナーにワックスのような離型剤の低表面エネルギー成分が含まれていると、その成分は当該画像の表面にブリードして表面エネルギーを下げることが知られている。
表面エネルギーは、塗布性や接着性と密接に関連しており、上記の様に表面エネルギーが下がった画像に、例えばニスのような液状物質を塗ることによりポストプレス加工をしても、塗布性(はじき、ラベリング等)や接着性が劣下してしまう。
画像の表面への液状物質の塗布性や接着性を向上させるためには、上記の画像の表面エネルギーを上げ、液状物質及び画像の表面エネルギーを適切な範囲内に制御する表面処理を画像に施すことが考えられる。
【0004】
画像の表面エネルギーを上げる表面処理の従来技術としては、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
特許文献1では、放電処理(プラズマ)で画像処理を行い、画像の水接触角を90度以下にする技術が開示されている。
ただ、上記の技術では、塗布性を上げることはできても、接着性の確保という観点からは不十分であった。
また、コロナ処理、プラズマ処理等では、枚葉紙により画像形成を行うと、貼りつきが起こり、搬送不良となる問題があった。
【0005】
よって、画像の表面エネルギーを上げる表面処理の技術としては、安全性の観点からも例えば界面活性剤のような水溶性の塗布液による表面処理が好ましいと考えられるが、どのような界面活性剤でもよいというわけではない。
特許文献2では、画像の表面エネルギーを上げる表面処理の技術として、画像に界面活性剤としてエタノールを塗布し、その後エタノールが乾燥せず、画像に残存しているうちにニスを塗布する技術が開示されている。
上記の技術は、界面活性剤のエタノール(液体)とニス(液体)が混合することで、ニスが画像に塗布しやすくなる(画像への濡れ性が向上する)という技術であるが、画像形成に用いられる印字材料に、例えばワックスのような離型剤の低表面エネルギー成分が含まれている場合には、エタノールとニスの混合液では、液状物質及び画像の表面エネルギーを適切な範囲内に制御することができず、ワックスのような離型剤がブリードアウトした画像からニスがはじかれると推定されることから改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-59575号公報
【特許文献2】特開2004-330570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ポストプレス加工として画像に塗布する液状物質の塗布性及び画像との接着性をより向上させた画像形成方法及び画像形成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、離型剤のような低表面エネルギー成分を含有した印字材料によって形成された画像に、表面エネルギーを適度に上げる表面処理を、画像のポストプレス加工前に施すことによって上記課題を解決できることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0009】
1.画像形成後に画像表面を改質する画像形成方法であって、離型剤を含有する印字材料で記録媒体上に画像を形成する工程と、前記画像表面に水溶液を塗布する工程と、前記水溶液の塗布後に前記画像表面を乾燥する工程と、前記画像表面に硬化膜を形成する工程とを有し、かつ、前記水溶液が、少なくとも水と界面活性剤を含有し、前記水溶液の表面張力が、温度25℃において、20~30mN/mの範囲内であることを特徴とする画像形成方法。
【0010】
2.前記画像を形成する工程が、電子写真方式の画像形成工程であることを特徴とする第1項に記載の画像形成方法。
【0011】
3.前記水溶液の表面張力が、温度25℃において、22~27mN/mの範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の画像形成方法。
【0012】
4.前記界面活性剤が、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム又はポリオキシエチレンラウリルエーテルであることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0013】
5.前記離型剤が、エステル系ワックス又は炭化水素系ワックスであることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0014】
6.前記印字材料が、結着樹脂を含有し、前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂及び芳香族ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0015】
7.前記水溶液が、水溶性樹脂を含有することを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0016】
8.前記水溶性樹脂が、ヒドロキシエチルセルロースであることを特徴とする第7項に記載の画像形成方法。
【0017】
9.前記硬化膜が、ニスの塗膜であることを特徴とする第1項から第8項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0018】
10.前記ニスの表面張力が、温度25℃において、30mN/m以下であることを特徴とする第9項に記載の画像形成方法。
【0019】
11.前記水溶液が、アルコール又はグリコールエーテルを含有することを特徴とする第1項から第10項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0020】
12.前記画像を乾燥する方法が、風又は熱による方法であることを特徴とする第1項から第11項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0021】
13.前記ニスが、活性線硬化型樹脂又はその構成成分である単量体を主成分とし、液状物質の膜を形成後、活性線を照射して硬化させることを特徴とする第9項から第12項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0022】
14.前記ニスが、水系樹脂エマルジョンを主成分とし、液状物質の膜を形成後、水分を蒸発させて、前記硬化膜を形成することを特徴とする第9項から第12項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0023】
15.画像形成後に画像表面を改質する画像形成システムであって、第1項から第14項までのいずれか一項に記載の画像形成方法を実施するための画像形成システムであり、かつ、静電荷像現像用トナーと電子写真画像形成装置を用いることを特徴とする画像形成システム。
【発明の効果】
【0024】
本発明の上記手段により、ポストプレス加工として画像に塗布する液状物質の塗布性及び画像との接着性をより向上させた画像形成方法及び画像形成システムを提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0025】
ポストプレス加工として画像に塗布する液状物質の塗布性及び画像との接着性をより向上させた画像を形成するには、画像形成に用いられる印字材料を考える必要がある。
例えば上記の印字材料として、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」という。)が用いられる場合、当該トナーにはワックスのような低表面エネルギー成分を含んだ離型剤が多く含まれ、それが画像表面にブリードアウトするため、画像の表面エネルギーが低くなってしまうため、液状物質の塗布性及び画像との接着性向上のためには、画像の表面エネルギーを上げる必要がでてくる。
ただし、ただ画像の表面エネルギーを上げるのではなく、画像の表面エネルギーと液状物質(例えばニス。)との表面エネルギーのバランスを適切に制御する必要があり、本発明では、液状物質の塗布前に、界面活性剤を添加した水溶液を塗布し、乾燥させることにより画像と液状物質の間に界面活性剤の膜を形成する。
本発明では、上記の(1)界面活性剤を含有する水溶液が画像に塗布されて、(2)ニスのような液状物質が界面活性剤の膜に塗れるようにすることにより液状物質の塗布性及び画像との接着性をより向上させるが、(1)と(2)の関係はトレードオフの関係になるため、当該関係を考慮した適切な表面張力のバランスがとれるような界面活性剤を選択している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)本発明に係る画像の表面処理の意義を表す概念図(b)本発明に係る画像の表面処理の意義を表す概念図
図2】本発明に係る画像表面の改質工程を表す概念図
図3】画像形成装置の構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の画像形成方法は、画像形成後に画像表面を改質する画像形成方法であって、離型剤を含有する印字材料で記録媒体上に画像を形成する工程と、前記画像表面に水溶液を塗布する工程と、前記水溶液の塗布後に前記画像表面を乾燥する工程と、前記画像表面に硬化膜を形成する工程とを有し、かつ、前記水溶液が、少なくとも水と界面活性剤を含有し、前記水溶液の表面張力が、温度25℃において、20~30mN/mの範囲内であることを特徴とする。
この特徴は、下記各実施態様(形態)に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0028】
本発明の実施態様としては、前記画像を形成する工程が、電子写真方式の画像形成工程であることが本発明の効果発現の観点から好ましい。
【0029】
また、前記水溶液の表面張力が、温度25℃において、22~27mN/mの範囲内であることが、塗布性の観点から好ましい。
【0030】
前記界面活性剤が、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム又はポリオキシエチレンラウリルエーテルであることが塗布性の観点から好ましい。
【0031】
前記離型剤が、エステル系ワックス又は炭化水素系ワックスであることが定着分離性の観点から好ましい。
【0032】
前記印字材料が、結着樹脂を含有し、前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂及び芳香族ポリエステル樹脂を含有することが低温定着性の観点から好ましい。
【0033】
前記水溶液が、水溶性樹脂を含有することが塗布性の観点から好ましい。
【0034】
前記水溶性樹脂が、ヒドロキシエチルセルロースであることが塗布性の観点からより好ましい。
【0035】
前記硬化膜が、ニスの塗膜であることが本発明の効果発現の観点から好ましい。
【0036】
前記ニスの表面張力が、温度25℃において、30mN/m以下であることが塗布性の観点から好ましい。
【0037】
前記水溶液が、アルコール又はグリコールエーテルを含有することが塗布性の観点から好ましい。
【0038】
前記画像を乾燥する方法が、風又は熱による方法であることが塗布性及び接着性の観点から好ましい。
【0039】
前記ニスが、活性線硬化型樹脂又はその構成成分である単量体を主成分とし、液状物質の膜を形成後、活性線を照射して硬化させることが本発明の効果発現の観点から好ましい。
【0040】
前記ニスが、水系樹脂エマルジョンを主成分とし、前記液状物質の膜を形成後、水分を蒸発させて、前記硬化膜を形成することが本発明の効果発現の観点から好ましい。
【0041】
本発明における画像形成方法は、静電荷像現像用トナーと電子写真画像形成装置を用いる画像形成システムに好適に用いられる。
【0042】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0043】
[本発明の画像形成方法の概要]
本発明の画像形成方法は、画像形成後に画像表面を改質する画像形成方法であって、
(1)離型剤を含有する印字材料で記録媒体上に画像を形成する工程と、
(2)前記画像表面に水溶液を塗布する工程と、
(3)前記水溶液の塗布後に前記画像表面を乾燥する工程と、
(4)前記画像表面に硬化膜を形成する工程とを有し、
かつ、前記水溶液が、少なくとも水と界面活性剤を含有し、前記水溶液の表面張力が、温度25℃において、20~30mN/mの範囲内であることを特徴とする。
【0044】
1.離型剤を含有する印字材料で記録媒体上に画像を形成する工程
(1.1)記録媒体
本発明の画像形成方法に用いられる記録媒体は特に制限はなく、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙又はコート紙等の塗工された印刷用紙、水溶紙、市販されている和紙やはがき用紙、プラスチックフィルム、布、皮革等の各種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、記録媒体の色は特に限定されない。
【0045】
(1.2)印字材料
本発明に係る印字材料は、離型剤を含有していることを特徴とする。
また、上記印字材料は、静電荷像現像用トナーであることが好ましい。
【0046】
前記印字材料が、結着樹脂を含有し、前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂及び芳香族ポリエステル樹脂を含有することが低温定着性の観点から好ましい。
【0047】
(離型剤)
離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知の種々のものを用いることができる。
例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0048】
以上の中でも、エステル系ワックス又は炭化水素系ワックスであることが定着分離性の観点から好ましい。
【0049】
以上のワックスは分岐等が多いため、結晶の大きさが極端に大きくなく、そのため表面の炭化水素基の配向がそれほど強くない。
そのため、ニスのような液状物質との塗布性が良くなる。
【0050】
離型剤の含有割合は、結着樹脂100質量部に対して1~30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5~20質量部の範囲内である。
離型剤の含有割合が上記範囲内であることにより、十分な定着分離性が得られる。
【0051】
離型剤のトナー粒子への導入方法としては、後述のトナーの製造方法の凝集、融着工程において、離型剤のみよりなる微粒子を非晶性樹脂微粒子、結晶性樹脂微粒子などとともに水系媒体中で凝集、融着する方法が挙げられる。
【0052】
離型剤微粒子は、離型剤を水系媒体に分散させた分散液として得ることができる。
離型剤微粒子の分散液は、界面活性剤を含有する水系媒体を離型剤の融点以上に加熱し、溶融した離型剤溶液を加えて機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、冷却することによって調製することができる。
【0053】
また、非晶性樹脂が、例えばスチレン・アクリル樹脂などである場合には、凝集、融着工程に供される非晶性樹脂微粒子(スチレン・アクリル樹脂微粒子)に離型剤をあらかじめ複合させておくことによって、当該離型剤をトナー粒子へ導入することもできる。
具体的には、スチレン・アクリル樹脂を形成するための重合性単量体の溶液に離型剤を溶解させ、これを界面活性剤を含有する水系媒体中に加え、上記と同様に機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、重合開始剤を加えて所望の重合温度で重合を行う、いわゆるミニエマルション重合法によって、離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子の分散液を調製することができる。
【0054】
なお、本発明に係る印字材料としての静電荷像現像用トナーは、結着樹脂、離型剤及び着色剤を含有し、前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂と芳香族系ポリエステル樹脂により形成されていることが低温定着性及び液状物質(例えばニス)の塗布性の観点からは好ましい。
また、その他必要に応じて荷電制御剤及び外添剤等を添加しても良く、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
本発明に係る静電荷像現像用トナーの上記以外の詳細については、後述する。
【0055】
(1.3)画像を形成する工程
本発明に係る離型剤及び印字材料で記録媒体上に画像を形成する工程の詳細については後述する。
【0056】
2.画像表面に水溶液を塗布する工程
本発明に係る「前記画像表面に水溶液を塗布する工程」において使用する前記水溶液が、少なくとも水と界面活性剤を含有し、前記水溶液の表面張力が、温度25℃において、20~30mN/mの範囲内であることを特徴とする。
【0057】
(2.1)水溶液による画像の表面処理の概要
図1は、本発明に係る画像の表面処理の意義を表す概念図である。
まず、図1(a)のように、画像形成の後、形成された画像上に少なくとも水と界面活性剤を含有する水溶液を塗布し、その後乾燥させることにより、画像上に界面活性剤の膜を作ることによって、その後塗布される液状物質(例えばニス)の塗布性を向上させる。
【0058】
ここで、本発明に係る少なくとも水と界面活性剤を含有する水溶液が画像に塗れるためには、画像の表面張力γよりも塗布する水溶液の表面張力γaqが低い必要がある。
前記画像は、離型剤を含有する印字材料(例えば静電荷像現像用トナー)で形成されており、表面エネルギーが低くなっていると考えられる(温度25°において、上記画像の表面張力は、およそ25~30mN/mの範囲内であると考えられる。)ため、前記水溶液が画像に塗れるための表面張力γaqは、理論上は上記の25~30mN/mの範囲内よりも小さく設定されていなければならない。
【0059】
(2.2)画像表面に塗布される水溶液
水溶液に含有されるものとしては、水、界面活性剤、水溶性の樹脂及び水溶性の有機溶媒等が上げられる。
【0060】
(2.2.1)水
本発明に係る水は、前記水溶液を界面活性剤とともに構成するものである。
水としては、公知の水が使用可能であり、特に制限されるものではない。
【0061】
(2.2.2)界面活性剤
本発明では、画像形成後に画像表面を改質するために、前記画像の表面処理を行い、画像に液状物質として例えばニスを塗る際に、画像とニスとの間に界面活性剤の膜を作りニスの塗布性を向上させるために用いており、画像とニスとの表面エネルギー調整剤として機能するものである。
【0062】
温度25℃において、表面張力20~30mN/mを満たす水溶液を構成する界面活性剤としては、石油系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤が挙げられる。
前記水溶液は、上記の界面活性剤が水に対して0.01~10質量%の範囲内で含有される。
上記の界面活性剤の割合が10%より大きいのは表面エネルギーの関係上好ましくないが、0.01%未満であると、界面活性剤の効果が得られない。
また、界面活性剤は、後述する画像表面を乾燥する工程後に、残存して界面活性剤の膜を形成する必要があることから、前記水溶液中の水に対して0.5~5%の範囲内で含有されるがより好ましい。
【0063】
(石油系界面活性剤)
石油系界面活性剤としては、例えばアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が挙げられる。
上記のアニオン性界面活性剤として、例えばアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
上記のノニオン性界面活性剤として、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
上記の中でも、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム又はポリオキシエチレンラウリルエーテルであることが塗布性の観点から好ましく、ノニオン性の界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルであるとさらに好ましい。
また、上記のポリオキシエチレンラウリルエーテルは、HLB値が8~12の範囲内であると本発明の効果がより高まることから好ましい。
【0064】
なお、「HLB値(hydrophilic lipophilic balance:親水性親油性バランス)」とは、グリフィン法により算出される値である。具体的には、下記式(H)にしたがって界面活性剤のHLB値を算出することができる。
HLB値=20×(親水基の質量%) ・・・(H)
【0065】
HLB値は、界面活性剤分子の親水基と親油基とのバランスから決められる値であり、HLB値が高いと親水性が高い界面活性剤であることを示し、HLB値が低いと親油性が高い界面活性剤であることを定性的に示す。
【0066】
HLB値が8以上であることで、水に溶解しやすくなり、12以下であることで、水溶液の表面張力が低くなり、画像に塗布しやすくなる。
【0067】
(フッ素系界面活性剤)
フッ素系界面活性剤として、例えばノニオン性のフッ素系界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性の他に、アニオン性及びカチオン性の界面活性剤もあるが、アニオン性及びカチオン性の界面活性剤はフッ素の配向が強く、塗布後フッ素が表面に出るため、液状物質(例えばニス)がはじかれる。
フッ素系界面活性剤の商品例としては、例えばサーフロン S-221(AGCセイミケミカル株式会社製、カチオン性)、サーフロンS-231(AGCセイミケミカル株式会社製、両性)、サーフロンS-242(AGCセイミケミカル株式会社製、ノニオン性)、サーフロンS-243(AGCセイミケミカル株式会社製、ノニオン性)等が挙げられる。
【0068】
(2.2.3)水溶性の樹脂
本発明に係る画像表面に塗布される水溶液には、塗布性を上げるために、水溶性樹脂を含有することが塗布性の観点から好ましい。
水溶性樹脂としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等があり、中でも、前記水溶性樹脂が、ヒドロキシエチルセルロースであることが塗布性の観点からより好ましいが、これらに限定されない。
上記の水溶性樹脂は、水に対して0.5~10質量%溶解させることが好ましい。
【0069】
(2.2.4)水溶性の有機溶媒
本発明に係る画像表面に塗布される水溶液が、アルコール又はグリコールエーテルのような水溶性の有機溶媒を含有することが塗布性の観点から好ましい。
上記の水溶性の有機溶媒は、水に対して3~20質量%の範囲内で添加することが好ましい。
アルコールとしては、エタノール、イソプロパノール、グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0070】
(2.3)水溶液の塗布方法
水溶液の塗布方法としては、ロールコーティング法、インクジェット法、噴霧法等が挙げられるが、水溶液を塗布することができればどれでもよい。
具体的には、上記のロールコーティング法で水溶液の塗布が行われる場合、図2のような構成が考えられる。
【0071】
図2においては、容器403に前記水溶液が入っており、ウレタンゴム製のローラー402にて前記水溶液を容器403から組み上げ、ウレタンゴム製のローラー401からウレタンゴム製の上塗布ローラー405に水溶液を供給する。
ローラー404には水量を調節するために粗さ(Ra=3μm)が付与されている。
【0072】
3.水溶液の塗布後に前記画像表面を乾燥する工程
図2においては、前記水溶液の画像への塗布後、乾燥装置406にて前記水溶液が塗布された画像に風を当てることで、前記水溶液中に含有される水を蒸発させ、乾燥させることにより前記画像表面に界面活性剤の膜を形成する。
なお、本例では、風を当てているが、加熱により乾燥させることも可能であり、前記画像を乾燥する方法が、風又は熱による方法であることが塗布性及び接着性の観点から好ましい。
【0073】
4.画像表面に硬化膜を形成する工程
(4.1)表面処理された画像への樹脂含有液状物質の塗布の概要
図1(b)のように、液状物質が界面活性剤の膜に塗れるためには、界面活性剤の膜の表面張力γが液状物質の表面張力γより大きい必要がある。
液状物質の表面張力γは、25~35mN/mの範囲内と考えられるため、前記画像の表面改質後の表面張力は、理論上35mN/m以上必要であると考えられる。
ただし、液状物質の塗布後すぐに硬化工程に入るため、前記水溶液の上限は30mN/mであると考えられる。
上限の温度25℃における表面張力30mN/mを超えると画像に水溶液を塗布することができなくなる。
また、前記水溶液の温度25°における表面張力の下限は、20mN/mであると考えられる。
これは、下限の表面張力を下回る水溶液を前記画像に塗布すると、低表面張力の界面活性剤を含有する前記水溶液は配向が強く、非極性基が表面に配向しやすいため、液状物質として例えばニスを塗布する時にニスがはじかれてしまうからである。
【0074】
以上のことから、前記水溶液の表面張力は、温度25℃において、20~30mN/mの範囲内であることで各表面エネルギーを適切に制御することができる。
また、前記水溶液の表面張力が、温度25℃において、22~27mN/mの範囲内であることが、塗布性の観点から好ましい
【0075】
画像表面に硬化膜を形成する工程は特に図示しないが、前述の前記画像表面に界面活性剤の膜を形成した後、硬化性液状物質を例えば前記水溶液の塗布方法と同じロールコーティング法にて前記画像表面に塗布することで液状物質の膜を形成後、活性線を照射して硬化させることにより行う。
前述の水溶液の塗布方法と同様に、液状物質の塗布方法としては、液状物質を塗布することができればどれでもよい。
前記硬化膜が、ニスの塗膜であることが本発明の効果発現の観点から好ましい。
前記ニスの表面張力が、温度25℃において、30mN/m以下であることが塗布性の観点から好ましい。
前記ニスが、活性線硬化型樹脂又はその成分単量体(モノマー)を主成分とすることが本発明の効果発現の観点から好ましい。
【0076】
前記ニスが、水系樹脂エマルジョンであることが本発明の効果発現の観点から好ましい。
【0077】
(4.2)硬化性液状物質
本発明に係る硬化性液状物質は、透明であり、樹脂又は当該樹脂を構成する成分単量体(モノマー)を有機溶剤や水に溶解させ、分散した液である。
前記液状物質としては、例えば水溶性樹脂を含有する液状物質や活性線硬化型樹脂又はその樹脂を構成する成分単量体(モノマー)を含有する液状物質が挙げられる。
上記の液状物質としては、活性線硬化型液状物質が好ましく、その中でも紫外線硬化型液状物質が特に好ましい。
活性線硬化型液状物質は、紫外線硬化型液状物質として用いることができる物質であり、反応性単量体(モノマー)とアクリル系樹脂、重合開始剤及びその他表面張力調整剤から成ることが好ましい。
【0078】
(4.2.1)反応性単量体
反応性単量体(モノマー)は、活性光線(紫外線、可視光線、電子線等)の照射により重合して硬化する化合物であって、下記の光重合開始剤及び顔料分散剤のいずれにも該当しないものをいう。
【0079】
反応性単量体(モノマー)としては、光重合性化合物が用いられる。
なお、「光重合開始剤」とは、活性光線の照射により、重合性化合物の重合反応を開始し得る機能を有する活性種を生成する化合物をいう。
また、「顔料分散剤」とは、トナー粒子において顔料を安定に均一分散させるものである。
【0080】
(光重合性化合物)
光重合性化合物としては、従来公知の種々の光重合性化合物を用いることができるが、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0081】
(メタ)アクリレートとしては、例えばトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等の二官能(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等の三官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0082】
(メタ)アクリレートは、変性物であってもよく、例えばエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート等のプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性(メタ)アクリレート;及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクタム変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートが好ましい。
【0083】
上記三官能以上の単量体(モノマー)比率が上がると、液の粘度が向上する。
二官能の三官能以上の単量体(モノマー)比率で液粘度の調整が可能である。
また、粘度の調整のため、ビニルピロリドン、アクリロイルモノフォリン等の希釈剤を用いても良い。
【0084】
(4.2.2)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂(ポリマー)は以下の単量体(モノマー)を重合させたものであるがこれらに限定されない。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(モノマー)の例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体が含まれる。
【0085】
上記アクリル系樹脂はスチレンが共重合されていても良い。
スチレンが共重合されている場合、スチレンの共重合比率は90質量%以下が好ましい。
【0086】
アクリル系樹脂の分子量Mwは3000~40000の範囲内が好ましい。
【0087】
アクリル系樹脂の液体に対する比率は、接着性、塗布性及び筋のような品質の観点から、5~20質量%の範囲内が好ましい。
【0088】
(4.2.3)重合開始剤
重合開始剤は、活性光線硬化性化合物がラジカル重合性の官能基を有する化合物であるときは、ラジカル重合開始剤を含み、活性光線硬化性化合物がカチオン重合性の官能基を有する化合物であるときは、光酸発生剤を含む。
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤と光酸発生剤の両方の組み合わせであってもよい。
【0089】
ラジカル重合開始剤には、開裂型ラジカル重合開始剤及び水素引き抜き型ラジカル重合開始剤が含まれる。
【0090】
(開裂型ラジカル重合開始剤)
開裂型ラジカル重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン及び2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンなどを含むアセトフェノン系の開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなどを含むベンゾイン系の開始剤、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドなどを含むアシルホスフィンオキシド系の開始剤、ベンジル、並びにメチルフェニルグリオキシエステルなどが含まれる。
【0091】
(水素引き抜き型ラジカル重合開始剤)
水素引き抜き型ラジカル重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン及び3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン系の開始剤、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン及び2,4-ジクロロチオキサントンなどを含むチオキサントン系の開始剤、ミヒラーケトン及び4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンなどを含むアミノベンゾフェノン系の開始剤、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、並びにカンファーキノンなどが含まれる。
【0092】
(光酸発生剤)
光酸発生剤の例には、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩、ヨードニウム(4-メチルフェニル)(4-(2-メチルプロピル)フェニル)ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート及び3-メチル-2-ブテニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートなどが含まれる。
【0093】
(配合量)
重合開始剤の配合量は、硬化性液状物質の全質量に対して、0.1~10質量%の範囲内となる量であることが好ましく、2~8質量%の範囲内となる量であることがより好ましい。
【0094】
(4.2.4)表面張力調整剤
その他、表面張力調整剤として、石油系の界面活性剤、フッ素系の界面活性剤を添加しても良い。
石油系、フッ素系の界面活性剤はアニオン性、ノニオン性界面活性剤が好適である。
また、粗さ付与のために、有機/無機の微粒子を添加しても良い。
【0095】
(4.3)水性液状物質(水系樹脂エマルジョン)
本発明で用いることのできる水系樹脂エマルジョンは、樹脂又はその構成成分である単量体(モノマー)が水分散された状態のものであり、好ましい単量体(モノマー)を挙げれば、アクリロニトリル、スチレン、アクリレート類(アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート)、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ブタジエン、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンが挙げられ、これらの単量体(モノマー)を二つ以上組み合わせた共重合体が好ましい。
また、共重合体に組み込まれた酢酸ビニルをケン化し、酢酸ビニルの一部、または全部をビニルアルコールに導いた熱可塑性樹脂、ポリウレタン、シリコーン-アクリル共重合体などが好ましく用いられ、また、ポリエステル、ポリウレタン樹脂も用いることができる。
【0096】
5.静電荷像現像用トナー
本発明に係る静電荷像現像用トナーは、結着樹脂、離型剤及び着色剤を含有し、前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂と芳香族系ポリエステル樹脂により形成されていることが低温定着性、液状物質(例えばニス)の塗布性の観点からは好ましい。
また、その他必要に応じて荷電制御剤及び外添剤等を添加しても良く、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
以下、静電荷像現像用トナーの構成を(A)~(G)に分けて説明する。
【0097】
(A)トナー母体粒子
本発明に係るトナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子を含む。
なお、本発明において、トナー粒子とは、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをいい、トナー粒子の集合体をトナーという。
【0098】
トナー母体粒子は、一般的には、そのままでもトナー粒子として用いることもできるが、本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子として用いる。
【0099】
また、以下の説明においては、トナー母体粒子とトナー粒子とを特に区別する必要がない場合、単に「トナー粒子」ともいう。
【0100】
(A-1)トナー粒子を構成する成分
本発明に係るトナー母体粒子は、結着樹脂を含有する。
また、本発明に係るトナー母体粒子は、離型剤(ワックス)を含有し、その他必要に応じて、着色剤及び荷電制御剤などの内添剤や、他の構成成分を含有してもよい。
【0101】
(A-2)トナー粒子の平均粒径
本発明に係るトナー粒子は、平均粒径が、例えば体積基準のメディアン径で3~9μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは3~8μmの範囲内とされる。
【0102】
この粒径は、例えば後述する乳化凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
【0103】
体積基準のメディアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
【0104】
トナー粒子の体積基準のメディアン径は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
【0105】
具体的には、試料(トナー粒子)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を調製し、このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
【0106】
ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。
そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径が体積基準のメディアン径とされる。
【0107】
(A-3)トナー粒子の平均円形度
本発明に係るトナー粒子は、転写効率の向上の観点から、平均円形度が0.930~1.000であることが好ましく、より好ましくは0.950~0.995である。
【0108】
トナー粒子の平均円形度は、「FPIA-2100」(Sysmex社製)を用いて測定されるものである。
【0109】
具体的には、試料(トナー粒子)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA-2100」(Sysmex社製)により、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000~10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出される。
【0110】
式(T):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0111】
(B)結着樹脂
本発明に係る結着樹脂の主成分として好ましい樹脂は、スチレン・アクリル樹脂若しくはポリエステル樹脂である。
前記液状物質の塗布性の観点からは、スチレン・アクリル樹脂を主成分にする方がよい。
【0112】
(B-1)スチレン・アクリル樹脂
スチレン・アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。
例えばアクリル樹脂、スチレン・アクリル共重合体樹脂、が挙げられる。
ここでいうスチレン単量体は、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。
【0113】
また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステルを含むものである。
【0114】
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」とを総称したものである。
【0115】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂の形成が可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の一例を以下に示す。
【0116】
(B-1-1)スチレン単量体
スチレン単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン及びこれらの誘導体などが挙げられる。
【0117】
(B-1-2)(メタ)アクリル酸エステル単量体
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体などが挙げられる。
【0118】
これら(メタ)アクリル酸エステル単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
(B-1-3)スチレン・アクリル樹脂の製造方法
スチレン・アクリル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫化物、過硫酸塩、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。
【0120】
(B-1-4)非晶性ビニル樹脂
本発明に係るスチレン・アクリル樹脂は非晶性ビニル樹脂である。
本発明において、「非晶性ビニル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークを有しない樹脂をいう。
ここで、「明確な吸熱ピーク」とは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
【0121】
非晶性ビニル樹脂とは、少なくともビニル単量体を用いた重合により得られる樹脂である。
非晶性ビニル樹脂は、結晶性樹脂との相分離を制御しやすい
非晶性ビニル樹脂は、単独でも又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0122】
スチレン・アクリル樹脂の含有量の下限値は、結着樹脂全量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらにより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。
5質量%以上であれば、結晶化樹脂との相溶状態が良好となり、低温定着性が良好となる。
【0123】
(B-1-5)ガラス転移温度
非晶性ビニル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が25~60℃の範囲内である非晶性樹脂であることが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が35~55℃の範囲内である非晶性樹脂であることがより好ましい。
【0124】
なお、本明細書において、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、「ダイヤモンドDSC」(株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いて測定される値である。
測定手順としては、測定試料(樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。
測定条件としては、測定温度0~200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat-cool-Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行い、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度とする。
【0125】
(B-1-6)重量平均分子量(Mw)
また、非晶性ビニル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、重量平均分子量(Mw)で10000~100000の範囲内であることが好ましい。
【0126】
なお、本明細書において、樹脂のGPCによる分子量は、以下のようにして測定される値である。
【0127】
すなわち、装置「HLC-8120GPC」(東ソー株式会社製)、カラムTSKgel guardcolumn SuperHZ-L」及び「TSKgel SuperHZM-M」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流し、測定試料(樹脂)を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させる。
【0128】
次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出される。
検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
【0129】
(B-2)ポリエステル樹脂
ポリエステル樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂がある。
本発明において、「結晶性樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。
また、「非晶性樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)により得られる吸熱曲線において、ガラス転移点(Tg)を有するが、融点すなわち昇温時の明確な吸熱ピークがない樹脂のことをいう。
なお、「明確な吸熱ピーク」の定義については後述する。
【0130】
(結晶性樹脂)
本発明に係る結晶性樹脂の含有量は、結着樹脂全量に対して3~30質量%の範囲内であることが好ましい。
より好ましくは、5~20質量%の範囲内であり、特に15~20質量%の範囲内であることが好ましい。
結晶性樹脂を入れることで、定着工程において、溶融が速くなり、定着強度を上げる。結晶性樹脂としては、脂肪族系ポリエステル樹脂が好ましい。
【0131】
(B-2-1)結晶性ポリエステル樹脂
前記結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂を含有していることが、トナー母体粒子の柔軟性が向上し、外添剤を好適に固着しやすくなるため好ましく、また、低温定着性の観点からも好ましい。
【0132】
結晶性ポリエステル樹脂は、二価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)及び/又はヒドロキシカルボン酸と、二価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な融解ピークを有する樹脂をいう。
【0133】
(明確な融解ピーク)
明確な融解ピークとは、具体的には、上述の結晶性ポリエステル樹脂単独の示差走査熱量測定によって得られたDSC曲線において、二回目の昇温過程における融解ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
【0134】
(融点)
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、65~85℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは75~85℃の範囲内である。
結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記範囲であることにより、十分な低温定着性及び優れた画像保存性が得られる。
なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。
【0135】
ここに、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、上述の結晶性ポリエステル樹脂単独の示差走査熱量測定によって得られたDSC曲線において、二回目の昇温過程における融解ピークのピークトップ温度であり、ダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)を用いてDSCによって測定することができる。
なお、当該DSC曲線において融解ピークが複数存在する場合は、一番吸熱量の大きい融解ピークのピークトップ温度を融点とする。
【0136】
具体的には、試料をアルミニウム製パンKITNo.B0143013に封入し、熱分析装置 Diamond DSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させる。
【0137】
一回目の加熱時には室温(25℃)から、二回目の加熱時には0℃から、10℃/分の昇温速度でそれぞれ150℃まで昇温して150℃を5分間保持し、冷却時には、10℃/分の降温速度で150℃から0℃まで降温して0℃の温度を5分間保持する。
二回目の加熱時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を融点として測定する。
【0138】
《多価カルボン酸》
結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸成分とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。
具体的には、例えばコハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの三価以上の多価カルボン酸;及びこれらカルボン酸化合物の無水物、又は炭素数1~3のアルキルエステルなどが挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸成分としては、飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。
これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
《多価アルコール》
結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価アルコール成分とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。
具体的には、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの三価以上の多価アルコールなどが挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価アルコール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましい。
これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0140】
<結晶性ポリエステル樹脂の製造方法>
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、上述の多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒下で反応させる一般的なポリエステルの重合法を用いて製造することができ、例えば直接重縮合やエステル交換法を、単量体の種類によって使い分けて製造することが好ましい。
【0141】
また、直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸を、前記多価カルボン酸及び/又は多価アルコールと組み合わせて用いることができる。
【0142】
結晶性ポリエステル樹脂を形成するための直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、5-ヒドロキシペンタン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、7-ヒドロキシペンタン酸、8-ヒドロキシオクタン酸、9-ヒドロキシノナン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、14-ヒドロキシテトラデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、18-ヒドロキシオクタデカン酸:及びこれらのヒドロキシカルボン酸が環化したラクトン化合物、又は炭素数1~3のアルコールとのアルキルエステルなどが挙げられる。
これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
また、結晶性ポリエステル樹脂を形成する際に、多価カルボン酸と多価アルコール成分とを用いることで反応を制御することが容易になり、目的の分子量の樹脂を得ることができるため好ましい。
【0144】
(触媒)
結晶性ポリエステル樹脂の製造に使用することのできる触媒としては、例えばチタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどのチタン触媒や、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドなどのスズ触媒などが挙げられる。
【0145】
上記の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、好ましくは1.5/1~1/1.5、さらに好ましくは1.2/1~1/1.2の範囲内である。
【0146】
(酸価)
結晶性ポリエステル樹脂は、その酸価が5~30mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~25mgKOH/g、さらに好ましくは15~25mgKOH/gの範囲内である。
この酸価は、1gの試料に含まれる酸の中和に必要な水酸化カリウム(KOH)の質量をmg単位で表したものである。樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に準じて下記手順により測定される。
【0147】
(試薬の準備)
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶解し、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を調製する。
JIS特級水酸化カリウム7gをイオン交換水5mLに溶解し、エチルアルコール(95体積%)を加えて1リットルとする。
炭酸ガスに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を調製する。
標定はJIS K0070-1992の記載に従う。
【0148】
(本試験)
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。
次いで、指示薬として調製したフェノールフタレイン溶液を数滴加えて、調製した水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。
なお、滴定の終点は指示薬の薄い紅色が約30秒間続いた時とする。
【0149】
(空試験)
試料を用いない(すなわち、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液のみとする)こと以外は、上記本試験と同様の操作を行う。
本試験と空試験の滴定結果を下記式(1)に代入して酸価を算出する。
【0150】
式(1) A=〔(C-B)×f×5.6〕/S
【0151】
A:酸価(mgKOH/g)
B:空試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
C:本試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
f:0.1mol/リットルの水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:試料の質量(g)
【0152】
(数平均分子量(Mn))
結晶性ポリエステル樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量分布から算出された重量平均分子量(Mw)が5000~50000の範囲内、数平均分子量(Mn)が1500~25000の範囲内であることが好ましい。
【0153】
GPCによる分子量測定は、以下のように行う。
すなわち、装置「HLC-8320」(東ソー社製)及びカラム「TSKgel guardcolumn SuperHZ-L」及び「TSKgel SuperHZM-M」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流す。
【0154】
測定試料(結晶性ポリエステル樹脂)を、室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で、濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルターで処理して試料溶液を得る。
この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。
【0155】
検量線測定用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical社製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成する。
【0156】
(B-3)非晶性ポリエステル樹脂
本発明に係る芳香族系ポリエステル樹脂は非晶性樹脂である。
本発明に、芳香族系ポリエステル樹脂を添加することで、接着性が向上するため、芳香族系ポリエステル樹脂の添加が好ましい。
芳香族系ポリエステル樹脂は、末端若しくは側鎖に酸があり、その極性のために接着性が向上すると考えられる。
【0157】
非晶性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂であって、示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。
また、非晶性ポリエステル樹脂を構成する単量体は、結晶性ポリエステル樹脂を構成する単量体とは異なるため、例えば核磁気共鳴(NMR)などの公知の機器分析技術による分析によって結晶性ポリエステル樹脂と区別することができる。
【0158】
非晶性ポリエステル樹脂は、二価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、二価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる。
具体的な非晶性ポリエステル樹脂については特に制限はなく、本技術分野における従来公知の非晶性ポリエステル樹脂が用いられ得る。
【0159】
<非晶性ポリエステル樹脂の製造方法>
非晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法は、特に限られるものではなく、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該樹脂を製造することができる。
製造の際に使用可能な触媒、重縮合(エステル化)の温度、重縮合(エステル化)の時間は特に限定されるものではなく、上記結晶性ポリエステル樹脂と同様である。
【0160】
(重量平均分子量(Mw))
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば5000~100000の範囲内であることが好ましく、5000~50000の範囲内であることがより好ましい。
上記重量平均分子量(Mw)が5000以上であると、トナーの耐熱保管性を向上させることができ、100000以下であると、低温定着性をより向上させることができる。
上記重量平均分子量(Mw)は、上記した方法により測定することができる。
【0161】
(その他)
非晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる多価カルボン酸及び多価アルコールの例としては、特に制限されないが、以下が挙げられる。
【0162】
《多価カルボン酸》
多価カルボン酸としては、不飽和脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸、及びこれらの誘導体を用いることが好ましい。
非晶性の樹脂を形成することができれば、飽和脂肪族多価カルボン酸を併用しても良い。
【0163】
上記不飽和脂肪族多価カルボン酸としては、例えばメチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸、炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;3-ブテン-1,2,3-トリカルボン酸、4-ペンテン-1,2,4-トリカルボン酸、アコニット酸等の不飽和脂肪族トリカルボン酸;4-ペンテン-1,2,3,4-テトラカルボン酸等の不飽和脂肪族テトラカルボン酸等が挙げられる。
また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
【0164】
上記芳香族多価カルボン酸としては、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-フェニレン二酢酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、ヘミメリット酸等の芳香族トリカルボン酸;ピロメリット酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸;メリト酸等の芳香族ヘキサカルボン酸等が挙げられる。
また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
【0165】
上記多価カルボン酸は、単独で用いても良いし、二種以上を混合して用いても良い。
【0166】
《多価アルコール》
多価アルコールとしては、結晶性ポリエステル樹脂との相溶性制御の観点から、不飽和脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール及びこれらの誘導体を用いることが好ましい。
非晶性の樹脂を得ることができれば、飽和脂肪族多価アルコールを併用しても良い。
【0167】
上記不飽和脂肪族多価アルコールとしては、例えば2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-ブチン-1,4-ジオール、9-オクタデセン-7,12-ジオール等の不飽和脂肪族ジオール等が挙げられる。また、これらの誘導体を用いることもできる。
【0168】
上記芳香族多価アルコールとしては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、これらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等のビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、1,3,5-ベンゼントリオール、1,2,4-ベンゼントリオール、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
また、これらの誘導体を用いることもできる。
これらの中でも、特に熱特性を適正化しやすいという観点から、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノールA化合物を用いることが好ましい。
【0169】
また、三価以上の多価アルコールの炭素数は特に制限されないが、熱特性を適正化させやすいことから、炭素数3~20の範囲内であることが好ましい。
【0170】
上記多価アルコールは、単独で用いても良いし、二種以上を混合して用いても良い。
【0171】
(B-3-1)ハイブリッド樹脂
本発明に係る非晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル重合セグメントと、スチレン由来の構成単位を有するビニル重合セグメントと、が化学的に結合したハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0172】
より詳細には、非晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル重合セグメントと、スチレン由来の構成単位を有するビニル重合セグメントと、が化学的に結合したグラフト共重合体構造を有するハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0173】
このようなハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂をシェルに用い、かつ、ハイブリッド率(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の全量に対する非晶性ポリエステル重合セグメントの質量%)が70~99質量%の範囲内である場合、コア粒子に対する被覆が容易となる。
したがって、定着画像にした際にもトナー母体粒子表面に存在する外添剤が埋没しづらく、隣接するトナー母体粒子同士の境界線上に外添剤の存在を保つことができる。
【0174】
そして、このように境界線上に存在する外添剤同士の繋がりが電荷の移動ルートとなり、さらに貼り付き現象を抑制することができる。
【0175】
なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中の各セグメントの構成成分及び含有割合は、例えばNMR測定、メチル化反応Py-GC/MS測定により特定することができる。
【0176】
(非晶性ポリエステル重合セグメント)
非晶性ポリエステル重合セグメントは、非晶性ポリエステル樹脂と同様の多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分であって、トナーの示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークが認められない重合セグメントをいう。
【0177】
非晶性ポリエステル重合セグメントは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。
例えば非晶性ポリエステル重合セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性ポリエステル重合セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のように明確な吸熱ピークが認められないものであれば、その樹脂は、本発明でいう非晶性ポリエステル重合セグメントを有するハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂に該当する。
【0178】
(ビニル重合セグメント)
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、上記非晶性ポリエステル重合セグメントの他に、スチレン由来の構成単位を含むビニル重合セグメントを含む。
ビニル重合セグメントとしては、スチレン由来の構成単位を含むものであれば特に制限されないが、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル重合セグメント(スチレン・アクリル重合セグメント)が好ましい。
【0179】
スチレン・アクリル重合セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を付加重合させて形成されるものである。
スチレン・アクリル重合セグメントの形成が可能な単量体の具体例としては、上記スチレン・アクリル樹脂で説明した単量体と同様のものが挙げられるため、ここでは説明を省略する。
【0180】
ビニル重合セグメント中のスチレン由来の構成単位の含有率は、ビニル重合セグメントの全量に対し、40~95質量%の範囲内であると好ましい。
また、ビニル重合セグメント中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、ビニル重合セグメントの全量に対し、5~60質量%の範囲内が好ましい。
【0181】
さらに、ビニル重合セグメントは、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、上記非晶性ポリエステル重合セグメントに化学的に結合するための化合物が付加重合されてなると好ましい。
具体的には、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに含まれる、多価アルコール成分由来のヒドロキシ基[-OH]又は多価カルボン酸成分由来のカルボキシ基[-COOH]とエステル結合する化合物を用いると好ましい。
【0182】
したがって、ビニル重合セグメントは、スチレン及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシ基[-COOH]又はヒドロキシ基[-OH]を有する化合物をさらに重合してなると好ましい。
【0183】
このような化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0184】
ビニル重合セグメント中の上記化合物に由来する構成単位の含有率は、ビニル重合セグメントの全量に対し、0.5~20質量%の範囲内が好ましい。
【0185】
スチレン・アクリル重合セグメントの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。
重合開始剤の具体例は、上記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の項で説明したものと同様である。
【0186】
ビニル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中2~25質量%の範囲内であることが好ましい。
【0187】
《多価カルボン酸》
上記多価カルボン酸成分としては、例えばシュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、6-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p′-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などのジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などが挙げられる。
【0188】
これら多価カルボン酸は、単独でも又は二種以上混合しても用いることができる。
これらの中でも、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸や、イソフタル酸やテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、トリメリット酸を用いることが好ましい。
【0189】
《多価アルコール》
また、多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などの二価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの三価以上のポリオールなどが挙げられる。
【0190】
これら多価アルコール成分は、単独でも又は二種以上混合しても用いることができる。
これらの中でも、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などの二価のアルコールが好ましい。
【0191】
(B-3-2)ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の製造方法
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。
代表的な方法としては、次の(1)~(3)の三つが挙げられる。
【0192】
(1)ビニル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該ビニル重合セグメントの存在下で非晶性ポリエステル重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
(2)非晶性ポリエステル重合セグメント及びビニル重合セグメントをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
(3)非晶性ポリエステル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該非晶性ポリエステル重合セグメントの存在下でビニル重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
【0193】
以上の中で、スチレン・アクリル樹脂と芳香族系ポリエステル樹脂を含むと、ニスに対して接着性が向上する。
ニスはアクリル系のポリマーを含むため、相性が良くなる。
【0194】
(C)離型剤
離型剤については、前述したものと同様のものを使用するので省略する。
【0195】
(D)着色剤
着色剤としては、一般に知られている染料及び顔料を用いることができる。
黒色のトナーを得るための着色剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、マグネタイト、フェライトなどの磁性体、染料、非磁性酸化鉄を含む無機顔料などの公知の種々のものを任意に使用することができる。
カラーのトナーを得るための着色剤としては、染料、有機顔料などの公知のものを任意に使用することができる。
【0196】
具体的には、有機顔料としては例えばC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:2、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントブルー15:3、同60、同76などを挙げることができる。
【0197】
染料としては例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同68、同11、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同69、同70、同93、同95などを挙げることができる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0198】
着色剤の含有割合は、結着樹脂100質量部に対して1~20質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは4~15質量部の範囲内である。
【0199】
(E)荷電制御剤
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の含有割合は、結着樹脂100質量部に対して通常0.1~5.0質量部の範囲内とされる。
【0200】
(F)外添剤
本発明に係るトナー粒子は、そのままで本発明のトナーを構成することができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナー粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤などの外添剤を添加して本発明のトナーを構成してもよい。
【0201】
後処理剤としては、例えばシリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などよりなる無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、又は、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。
これらは一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0202】
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
【0203】
これらの種々の外添剤の添加量は、その合計が、トナー100質量部に対して0.05~5質量部の範囲内、好ましくは0.1~3質量部の範囲内とされる。
また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0204】
(G)現像剤
本発明のトナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
【0205】
キャリアとしては、例えば鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、これらの中ではフェライト粒子を用いることが好ましい。
【0206】
また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
【0207】
キャリアとしては、体積平均粒径が15~100μmの範囲内のものが好ましく、25~80μmの範囲内のものがより好ましい。
【0208】
6.静電荷像現像用トナーの製造方法
静電荷像現像用トナー(以下「トナー」という。)を製造する方法としては、混練・粉砕法、乳化分散法、懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、ミニエマルジョン重合凝集法、カプセル化法、その他の公知の方法などを挙げることができるが、画像の高画質化を達成するために小粒径化されたトナーを得る必要があることを考慮して、製造コスト及び製造安定性の観点から、乳化重合凝集法を用いることが好ましい。
【0209】
乳化重合凝集法は、乳化重合法によって製造された結着樹脂よりなる微粒子(以下、「結着樹脂微粒子」ともいう)の分散液を、着色剤よりなる微粒子(以下、「着色剤微粒子」ともいう。)の分散液と混合し、pH調整による微粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させ、平均粒径及び粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行うことにより、トナーを製造する方法である。
【0210】
トナーを製造する方法において、乳化重合凝集法を用いる場合に形成させる結着樹脂微粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる二層以上の構成とすることもでき、この場合、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した第1結着樹脂微粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する方法を採用することができる。
【0211】
また、トナーはコア・シェル構造として構成されていてもよく、このコア・シェル構造のトナーの製造方法は、コア用の結着樹脂微粒子と着色剤微粒子とを会合、凝集、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層を形成するためのシェル用結着樹脂微粒子を添加して、コア粒子表面にこのシェル用結着樹脂微粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0212】
トナーがコア・シェル構造である場合において、その製造方法について(1)~(9)の工程に分けて以下具体的に説明する。
【0213】
(1)着色剤が微粒子状に分散された着色剤微粒子の分散液を調製する着色剤微粒子分散液調製工程、
【0214】
(2-1)主ワックス及び内添剤などを含有したコア用の結着樹脂よりなるコア用結着樹脂微粒子を得て、この分散液を調製するコア用結着樹脂微粒子重合工程、
【0215】
(2-2)シェル用の結着樹脂よりなるシェル用結着樹脂微粒子を得て、この分散液を調製するシェル用結着樹脂微粒子重合工程、
【0216】
(3)コア用結着樹脂微粒子と着色剤微粒子とを水系媒体中で凝集、融着させてコア粒子となるべき会合粒子を形成する凝集・融着工程、
【0217】
(4)会合粒子を熱エネルギーにより熟成させて形状を制御し、コア粒子を得る第1の熟成工程、
【0218】
(5)コア粒子の分散液中に、シェル層を形成すべきシェル用結着樹脂微粒子を添加してコア粒子の表面に当該シェル用結着樹脂微粒子を凝集、融着させてコア・シェル構造の粒子を形成するシェル層形成工程、
【0219】
(6)コア・シェル構造の粒子を熱エネルギーにより熟成させて形状を制御し、コア・シェル構造のトナー粒子を得る第2の熟成工程、
【0220】
(7)冷却されたトナー粒子の分散系(水系媒体)からトナー粒子を固液分離し、当該トナー粒子から界面活性剤などを除去するろ過、洗浄工程、
【0221】
(8)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程から構成され、必要に応じて乾燥工程の後に、
【0222】
(9)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する外添剤処理工程を加えてもよい。
【0223】
(1)着色剤微粒子分散液調製工程
この工程においては、水系媒体中に着色剤を添加して分散機によって分散処理することにより、着色剤が微粒子状に分散された着色剤微粒子の分散液を調製する処理が行われる。
【0224】
具体的には、着色剤の分散処理は界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態の水系媒体中で行われる。
なお、上記着色剤微粒子分散液の重合時に使用する水系媒体に用いられる界面活性剤については、(2-1)コア用結着樹脂微粒子重合工程にて後述する。
分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダ、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミルなどの媒体型分散機が挙げられる。
【0225】
この着色剤微粒子分散液における着色剤微粒子の分散径は、体積基準のメディアン径で40~200nmの範囲内であることが好ましい。
【0226】
この着色剤微粒子の体積基準のメディアン径は、「MICROTRAC UPA-150(HONEYWELL社製)」を用い、下記測定条件下により測定されるものである。
【0227】
<測定条件>
・サンプル屈折率 1.59
・サンプル比重 1.05(球状粒子換算)
・溶媒屈折率 1.33
・溶媒粘度 0.797(30℃)、1.002(20℃)
・0点調整 測定セルにイオン交換水を投入し調整した。
【0228】
(2-1)コア用結着樹脂微粒子重合工程
この工程においては、重合処理を行って主ワックス及び内添剤などを含有したコア用の結着樹脂よりなるコア用結着樹脂微粒子の分散液を調製する処理が行われる。
【0229】
この工程における重合処理の好適な一例においては、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、必要に応じて主ワックス及び内添剤などが含有された重合性単量体溶液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで水溶性の重合開始剤を添加し、当該液滴中において重合反応を進行させる。
【0230】
なお、前記液滴中に油溶性重合開始剤が含有されていてもよい。
この様な工程においては、機械的エネルギーを付与して強制的な乳化(液滴の形成)を行う処理が必須となる。
【0231】
かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサ、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌または超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
【0232】
(界面活性剤)
ここで、上記着色剤微粒子分散液やコア用結着樹脂微粒子の重合時に使用する水系媒体に用いられる界面活性剤について説明する。
【0233】
界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなど)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなど)などのイオン性界面活性剤を好適なものとして例示することができる。
【0234】
また、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドとのエステル、ソルビタンエステルなどのノニオン性界面活性剤も使用することができる。
【0235】
(重合開始剤)
以下、コア用結着樹脂微粒子重合工程で使用される重合開始剤について説明する。
【0236】
水溶性の重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素などを挙げることができる。
【0237】
また、油溶性重合開始剤としては、2,2′-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、1,1′-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2′-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t-ブチルヒドロペルオキサイド、ジ-t-ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(t-ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などが挙げられる。
【0238】
(連鎖移動剤)
以下、コア用結着樹脂微粒子重合工程で使用される連鎖移動剤について説明する。
得られるコア用の結着樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。
【0239】
連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、例えばn-オクチルメルカプタン、n-デシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン、n-オクチル-3-メルカプトプロピオン酸エステル等のメルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、及び、α-メチルスチレンダイマー等が使用される。
【0240】
(2-2)シェル用結着樹脂微粒子重合工程
この工程においては、上記(2-1)のコア用結着樹脂微粒子重合工程と同様に重合処理を行って、シェル用の結着樹脂よりなるシェル用結着樹脂微粒子の分散液を調製する処理が行われる。
【0241】
(3)凝集・融着工程
この工程においては、コア用結着樹脂微粒子と着色剤微粒子とを水系媒体中で凝集、融着させてコア粒子となるべき会合粒子を形成する処理が行われる。
【0242】
この工程における凝集、融着の方法としては、(1)の着色剤微粒子分散液調製工程により得られた着色剤微粒子及び(2-1)のコア用結着樹脂微粒子重合工程により得られたコア用結着樹脂微粒子を用いた塩析/融着法が好ましい。
【0243】
また、当該凝集・融着工程においては、コア用結着樹脂微粒子や着色剤微粒子とともにワックス微粒子や荷電制御剤などの内添剤微粒子を凝集、融着させることができる。
【0244】
ここで、「塩析/融着」とは、凝集と融着を並行して進め、所望の粒子径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するための加熱を継続して行うことをいう。
【0245】
塩析/融着法は、コア用結着樹脂微粒子と着色剤微粒子とが存在している水系媒体中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩及び三価の塩などからなる塩析剤を臨界凝集濃度以上の凝集剤として添加し、次いで、コア用結着樹脂微粒子のガラス転移点以上であって、かつ、コア用結着樹脂微粒子と着色剤微粒子の融解ピーク温度以上の温度に加熱することで塩析を進行させると同時に凝集・融着を行うものである。
【0246】
ここで、塩析剤であるアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属として、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられる。(3)の凝集・融着工程を塩析/融着によって行う場合、塩析剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くすることが好ましい。
【0247】
この理由は明確ではないが、塩析した後の放置時間によって、粒子の凝集状態が変動し、粒径分布が不安定になったり、融着させたトナーの表面性が変動したりする問題が発生する。
【0248】
また、塩析剤を添加する温度としては、少なくともコア用結着樹脂微粒子のガラス転移点以下であることが必要である。
【0249】
この理由としては、塩析剤を添加する温度がコア用結着樹脂微粒子のガラス転移点以上であると、コア用結着樹脂微粒子の塩析/融着は速やかに進行するものの、粒径の制御を行うことができず、大粒径の粒子が発生したりする問題が発生する。
【0250】
この添加温度の範囲としては結着樹脂のガラス転移点以下であればよいが、一般的には5~55℃の範囲内、好ましくは10~45℃の範囲内である。
【0251】
また、塩析剤をコア用結着樹脂微粒子のガラス転移点以下で加え、その後にできるだけ速やかに昇温し、コア用結着樹脂微粒子のガラス転移点以上であって、かつ、コア用結着樹脂微粒子と着色剤微粒子の融解ピーク温度(℃)以上の温度に加熱する。
【0252】
この昇温までの時間としては1時間未満が好ましい。
さらに、昇温を速やかに行う必要があるが、昇温速度としては、0.25℃/分以上が好ましい。
上限としては特に明確ではないが、瞬時に温度を上げると塩析が急激に進行するため、粒径制御がやりにくいという問題があり、5℃/分以下が好ましい。
【0253】
以上の塩析/融着法により、コア用結着樹脂微粒子及び任意の微粒子が塩析/融着されてなる会合粒子(コア粒子)の分散液が得られる。
【0254】
また、「水系媒体」とは、水50~100質量%と、水溶性の有機溶媒0~50質量%とからなる媒体をいう。
【0255】
水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
これらのうち、生成される樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0256】
(4)第1の熟成工程
この工程においては、会合粒子を熱エネルギーにより熟成させる処理が行われる。
そして、(3)の凝集・融着工程の加熱温度や特に(4)の第1の熟成工程の加熱温度と時間を制御することにより、粒径が一定で分布が狭く形成されたコア粒子表面が平滑だが均一的な形状を有するものになる様に制御することができる。
【0257】
具体的には、(3)の凝集・融着工程で加熱温度を低めにしてコア用結着樹脂微粒子同士の融着の進行を抑制させて均一化を促進させ、第1の熟成工程で加熱温度を低めに、かつ、時間を長くしてコア粒子の表面が均一な形状のものに制御する。
【0258】
(5)シェル層形成工程
この工程においては、コア粒子の分散液中にシェル用結着樹脂微粒子の分散液を添加してコア粒子の表面にシェル用結着樹脂微粒子を凝集、融着させ、コア粒子の表面にシェル用結着樹脂微粒子を被覆させてコア・シェル構造の粒子を形成するシェル化処理が行われる。
【0259】
この工程は、低温定着性と耐熱保存性の両方の性能を付与するための好ましい製造条件である。
また、カラー画像を形成する場合に、二次色について高い色再現性を得るために、このシェル層形成を行うことが好ましい。
【0260】
具体的には、コア粒子の分散液を(3)の凝集・融着工程及び(4)の第1の熟成工程における加熱温度を維持した状態でシェル用結着樹脂微粒子の分散液を添加し、加熱撹拌を継続しながら数時間かけてゆっくりとシェル用結着樹脂微粒子をコア粒子表面に被覆させてコア・シェル構造の粒子を形成させる。
加熱撹拌時間は、1~7時間の範囲内が好ましく、3~5時間の範囲内が特に好ましい。
【0261】
(6)第2の熟成工程
この工程においては、(5)のシェル層形成工程によりコア・シェル構造の粒子が所定の粒径になった段階で塩化ナトリウムなどの停止剤を添加して粒子成長を停止させ、その後もコア粒子に付着させたシェル用結着樹脂微粒子を融着させるために数時間加熱撹拌を継続する。
【0262】
そして、コア粒子の表面を被覆するシェル用結着樹脂微粒子による層の厚さを100~300nmの範囲内とする。
このようにして、コア粒子の表面にシェル用結着樹脂微粒子を固着させてシェル層を形成し、丸みを帯び、しかも形状の揃ったコア・シェル構造のトナー粒子が形成される。
【0263】
(7)ろ過、洗浄工程
この工程においては、まず、トナー粒子の分散液を冷却する処理が行われる。
冷却処理条件としては、1~20℃/minの範囲内の冷却速度で冷却することが好ましい。
冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
【0264】
次いで、所定温度まで冷却されたトナー粒子の分散液からトナー粒子を固液分離し、その後、固液分離されたトナーケーキ(ウエット状態にあるトナー粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理が行われる。
【0265】
ここで、ろ過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧ろ過法、フィルタープレス等を使用して行うろ過法など特に限定されるものではない。
【0266】
(8)乾燥工程
この工程においては、洗浄処理されたトナーケーキを乾燥する処理が行われる。
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0267】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2質量%以下とされる。
なお、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。
ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0268】
(9)外添処理工程
この工程においては、(8)の乾燥工程で乾燥処理されたトナー粒子に対して外添剤を添加する処理が行われる。
外添剤の添加方法としては、例えばヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置を用いて添加することができる。
【0269】
7.画像形成工程及び画像形成装置
本発明の画像形成方法は、画像形成後に画像表面を改質する画像形成方法であって、少なくとも、下記工程を有することを特徴とする。
(1)離型剤を含有する印字材料で記録媒体上に画像を形成する工程
(2)前記画像表面に水溶液を塗布する工程
(3)前記水溶液の塗布後に前記画像表面を乾燥する工程、
(4)前記画像表面に硬化膜を形成する工程
【0270】
上記各工程のうち、画像を形成する工程以外の画像表面を改質する工程については、前述したので、以下においては、画像を形成する工程(「画像形成工程」)について詳しく説明する。
本発明の実施態様としては、前記画像を形成する工程が、電子写真方式の画像形成工程であることが本発明の効果発現の観点から好ましい。
本発明に係る画像表面を改質する前の画像形成工程の方法は、具体的には、例えば下記(a)及び(b)の方法などが挙げられる。
【0271】
(a)静電潜像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像することによって形成されるトナー像を画像支持体に直接転写する工程と、画像支持体上に担持されたトナー像を加熱定着する工程とを経ることにより画像を形成する、いわゆる直接転写方式の画像形成方法。
【0272】
(b)静電潜像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像することによって形成されるトナー像を中間転写体に転写する工程と、中間転写体上に転写されたトナー像を画像支持体に転写する工程と、画像支持体に担持されたトナー像を加熱定着する工程とを経ることにより画像を形成する、いわゆる中間転写方式の画像形成方法。
【0273】
以下、上記(b)の方法を用いて本発明に係る画像表面を改質する前の画像形成方法について説明する。
【0274】
図3は、画像形成装置の一例であるタンデム型のカラー画像形成ユニットを搭載した画像形成装置(MFP)500の構成を模式的に示す図である。
【0275】
画像形成装置(MFP)500は、制御部100と画像形成部200とを含む。
画像形成部200は、典型的には、スキャナーユニット800がプリント対象の原稿の内容を光学的に読取って得られる画像情報に基づいて、給紙カセット1に装填されている用紙Pに対して、カラー又はモノクロの画像を形成する。
スキャナーユニット800には、ADF(Auto Document Feeder:原稿自動搬送装置)900が連結されており、このADF900からプリント対象の原稿が順次搬送されるようになっている。
【0276】
より具体的には、画像形成部200は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色の別に、プロセスユニット30C,30M,30Y,30K(以下、「プロセスユニット30」とも総称する。)を含む。
各色のプロセスユニット30は、転写ベルト8の移動方向に沿って配列されており、対応する色のトナー像を転写ベルト8上に順次形成する。
【0277】
プロセスユニット30C,30M,30Y,30Kは、それぞれ、一次転写ローラー10C,10M,10Y,10K(以下、「一次転写ローラー10」とも総称する。)と、感光体11C,11M,11Y,11K(以下、「感光体11」とも総称する。)と、現像ローラー12C,12M,12Y,12K(以下、「現像ローラー12」とも総称する。)と、プリントヘッド13C,13M,13Y,13K(以下、「プリントヘッド13」とも総称する。)と、帯電チャージャー14C,14M,14Y,14K(以下、「帯
電チャージャー14」とも総称する。)と、トナーユニット15C,15M,15Y,15K(以下、「トナーユニット15」とも総称する。)とを含む。
【0278】
各プロセスユニット30は、操作パネル300などに対するユーザーの操作に応じたプリント要求を受取ると、プリントすべき画像を構成する各色のトナー像を感光体11上に形成するとともに、他のプロセスユニット30とタイミングを合わせて、当該形成した各色のトナー像を転写ベルト8上に転写する。
このとき、一次転写ローラー10が対応する感光体11上のトナー像を転写ベルト8へ移動させる。
【0279】
各プロセスユニットでは、帯電チャージャー14が回転する感光体11の表面を帯電させるとともに、プリントヘッド13がプリントすべき画像情報に従って、感光体11の表面を露光する。
これにより、感光体11の表面には、形成すべきトナー像を表わす静電潜像が形成される。
その後、現像ローラー12が、感光体11の表面に対して、トナーユニット15のトナーを供給する。
これにより、感光体11上に、トナー像として、静電潜像が現像される。
その後、一次転写ローラー10が、駆動モーター9によって回転する転写ベルト8上に、各感光体11の表面に現像されたトナー像を順次転写する。
これにより、各色のトナー像が重ね合わされて、用紙Pに転写すべきトナー像が形成される。
【0280】
画像形成部200は、プリントされるトナー像の濃度を安定化させるために、転写ベルト8上のトナー濃度を検出するための濃度センサー31を含む。
【0281】
当該濃度センサー31を用いた画像安定化制御として、転写ベルト8上に現像器の現像出力を変えて、トナー濃度を変え印字したトナー濃度検出用パッチを数パッチ形成する。
画像形成部200は、濃度センサー31を用いてトナー濃度を検出し、その結果に応じて、現像器の現像出力にフィードバックを行うことにより、印字時に常に安定したトナー濃度を得ることが可能である。
装置本体のメインスイッチがオンした場合、トナーカートリッジが交換された場合、所定枚数を印字した場合等に画像安定化制御を実行することが可能である。
【0282】
画像形成部200は、給紙カセット1を含む。
給紙カセット1では、給紙ローラー1Aが、給紙カセット1に装填されている用紙Pを取り出す。
この取り出された用紙Pは、搬送ローラー74などによって搬送経路3に沿って搬送される。
搬送ローラー74は、用紙Pをタイミングセンサーに到達した位置で待機させる。
その後、搬送ローラー74は、転写ベルト8上に形成されたトナー像が二次転写ローラー5に到達するタイミングに合わせて、用紙Pを二次転写ローラー5へ搬送する。
【0283】
二次転写ローラー5及び対向ローラー6により、転写ベルト8上のトナー像が用紙Pへ転写される。典型的には、二次転写ローラー5にトナー像の有する電荷に応じた所定の電位(例えば約+2000V)を印加しておくことで、転写ベルト8上のトナー像が二次転写ローラー5側へ電気的に引き寄せる力が生じ、これにより、トナー像の用紙Pへの転写が行われる。
【0284】
さらに、用紙Pへ転写されたトナー像は、定着ベルト605及び加圧ローラー609等を含む定着装置において処理されることにより、用紙Pに定着する。
トナー像が定着した用紙Pは、排紙トレイに出力される。
これにより、一連のプリントプロセスは完了する。
画像形成装置(MFP)500において、定着ベルト605は定着部材の一例であり、加圧ローラー609は加圧部材の一例である。
【0285】
搬送経路3に沿って、平滑度センサー66が設けられている。
平滑度センサー66は、搬送経路3上の用紙Pの表面の平滑度を検出し、制御部100へ出力する。
画像形成装置(MFP)500は、平滑度センサー66として、空気漏洩式を含むいかなる方式のセンサーを備えることができる。
【0286】
8.画像形成システム
本発明の画像形成システムは、画像形成後に画像表面を改質する画像形成システムであって、前述した本発明の画像形成方法を実施するための画像形成システムであり、かつ、静電荷像現像用トナーと電子写真画像形成装置を用いることを特徴とする。
本発明の前記画像形成方法は、静電荷像現像用トナーと電子写真画像形成装置を用いる画像形成システムに好適に用いられる。
なお、静電荷像現像用トナーと電子写真画像形成装置については、既に前述したので省略する。
【実施例0287】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0288】
<離型剤を含有する印字材料で記録媒体上に画像を形成する工程>
図3の画像形成装置により、前述した画像形成方法に以下の工程により作製する静電荷像現像用トナーを用いて、下記画像形成条件で、記録媒体上に画像を形成した。
【0289】
(画像形成条件)
通紙速度400mm/sec
記録媒体(紙種:POD-157グロスコート紙(王子製紙))
トナー:トナー1及び2を用いる、各トナーの画像への付着量は8g/m
【0290】
[トナーの作製]
A.各分散液の調製
(A.1)非晶性ビニル樹脂粒子分散液X1の調製
(1)第1段重合:樹脂微粒子の分散液a1の調製
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、当該反応容器の内温を80℃に昇温させた。
昇温後、得られた混合液に過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた水溶液を添加し、得られた混合液の温度を再度80℃とした。
当該混合液に、下記組成からなる単量体混合液1を1時間かけて滴下後、80℃にて前記混合液を2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液a1を調製した。
【0291】
(単量体混合液1)
スチレン 480質量部
n-ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部
【0292】
(2)第2段重合:樹脂微粒子の分散液a2の調製
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、当該溶液を80℃に加熱後、80質量部の樹脂微粒子の分散液a1(固形分換算)と、下記組成からなる単量体及び離型剤を90℃にて溶解させた単量体混合液2とを添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック株式会社製、「CLEARMIX」は同社の登録商標)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
下記ベヘン酸ベヘニル(エステル系ワックス)は、離型剤であり、その融点は73℃である。
【0293】
(単量体混合液2)
スチレン 285質量部
n-ブチルアクリレート 95質量部
メタクリル酸 20質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8質量部
ベヘン酸ベヘニル 190質量部
【0294】
次いで、前記分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、得られた分散液を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液a2を調製した。
【0295】
(3)第3段重合:非晶性ビニル樹脂粒子分散液X1の調製
さらに、樹脂微粒子の分散液a2にイオン交換水400質量部を添加し、十分に混合した後、得られた分散液に、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下で、下記組成からなる単量体混合液3を1時間かけて滴下した。
滴下終了後、前記分散液を2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂(スチレン・アクリル樹脂)からなる非晶性ビニル樹脂粒子分散液X1を調製した。
【0296】
(単量体混合液3)
スチレン 307質量部
n-ブチルアクリレート 147質量部
メタクリル酸 52質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8質量部
【0297】
得られた非晶性ビニル樹脂粒子分散液X1について物性を測定したところ、非晶性樹脂微粒子の体積基準のメディアン径(d50)は220nmであり、ガラス転移温度(Tg)は46℃であり、重量平均分子量(Mw)は32000であった。
【0298】
(A.2)非晶性ビニル樹脂粒子分散液X2の調製
ワックスを、ベヘン酸ベヘニルからHNP-0190(炭化水素系ワックス)に変更した以外は、非晶性ビニル樹脂粒子分散液X1の調製と同様にして非晶性ビニル樹脂粒子分散液X2を調製した。
【0299】
(A.3)結晶性(無変性脂肪族)ポリエステル樹脂粒子分散液CP1の調製
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、多価カルボン酸であるセバシン酸300質量部及び多価アルコールである1,6-ヘキサンジオール170質量部を仕込み、撹拌しながら1時間かけて内温を190℃にまで昇温させた。
均一に撹拌された状態であることを確認した後、触媒としてTi(OBu)を、多価カルボン酸の仕込み量に対して0.003質量%の量で投入した。
生成する水を留去しながら、6時間かけて内温を190℃から240℃まで昇温させ、温度240℃の条件で6時間かけて脱水縮合反応を継続して重合を行うことにより、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
この結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)は66.8℃、数平均分子量(Mn)は6300であった。
【0300】
コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械株式会社製:BJ-30N)に、上記結晶性ポリエステル樹脂300質量部と、メチルエチルケトン(溶剤)160質量部と、イソプロピルアルコール(溶剤)100質量部とを入れ、水循環式恒温槽にて70℃に維持しながら、100rpmで撹拌混合しつつ樹脂を溶解させた。
【0301】
その後、撹拌回転数を150rpmにし、水循環式恒温槽を66℃に設定し、10質量%アンモニア水(試薬)17質量部を10分間かけて投入した後、66℃に保温されたイオン交換水を7質量部/分の速度で、合計900質量部滴下し転相させて、乳化液を得た。
【0302】
すぐに、得られた乳化液800質量部とイオン交換水700質量部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械社製)にセットした。
ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。
溶剤回収量が1100質量部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。
得られた分散液に溶剤臭は無かった。
この分散液中の樹脂粒子の体積基準のメディアン径(D50)は130nmであった。
その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20質量%になるように調整し、これを結晶性ポリエステル樹脂分散液CP1とした。
【0303】
(A.4)非晶性(芳香族系)ポリエステル樹脂粒子分散液AP-1の調製
下記ビニル樹脂の単量体、非晶性ポリエステル樹脂とビニル樹脂のいずれとも反応する置換基を有する単量体及び重合開始剤の混合液を滴下ロートに入れた。
【0304】
スチレン 80.0質量部
n-ブチルアクリレート 20.0質量部
アクリル酸 10.0質量部
ジ-t-ブチルパーオキサイド(重合開始剤) 16.0質量部
【0305】
また、下記非晶性ポリエステル樹脂の単量体を、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を備えた四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
【0306】
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 59.1質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 281.7質量部
テレフタル酸 63.9質量部
コハク酸 48.4質量部
【0307】
撹拌下で、滴下ロートに入れた混合液を四つ口フラスコへ90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の単量体を除去した。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.4質量部投入し、235℃まで昇温して、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間、反応を行った。
次いで、200℃まで冷却し、減圧下(20kPa)にて反応を行った後、脱溶処理を行い、非晶性ポリエステル樹脂を得た。
得られた非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が24000、酸価が16.2mgKOH/g、ガラス転移点(Tg)が60℃であった。
【0308】
次に、得られた非晶性ポリエステル樹脂100質量部を、400質量部の酢酸エチル(関東化学社製)に溶解し、あらかじめ調製しておいた0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合した。
混合液を撹拌しながら、超音波ホモジナイザーUS-150T(日本精機製作所製)によりV-LEVEL 400μAで30分間の超音波分散処理を行った。
その後、40℃に加温した状態で、ダイヤフラム真空ポンプV-700(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去して、固形分量が13.5質量%の非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液AP-1を調製した。
分散液中の非晶性ポリエステル樹脂粒子は、体積基準のメディアン径が98nmであった。
【0309】
(A.5)着色剤分散液Cy1の調製
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。
この溶液を撹拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の水系分散液(着色剤分散液)(Cy1)を調製した。
得られた着色剤粒子の水系分散液(Cy1)について、着色剤粒子の体積基準のメディアン径(d50)は110nmであった。
【0310】
B.トナー1~3の作製
(B.1)トナー1の作製
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、コア用非晶性ビニル樹脂粒子分散液X1を315質量部(固形分換算)、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液CP-1を30質量部(固形分換算)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩を樹脂比で1質量%(固形分換算)及びイオン交換水2000質量部を投入した。
室温下(25℃)下で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
さらに、着色剤粒子分散液Cy1を30質量部(固形分換算)投入し、塩化マグネシウム30質量部をイオン交換水30質量部に溶解させた溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。
3分間放置した後、60分間かけて80℃まで昇温した。
粒子径の成長速度が0.01μm/分となるように撹拌速度を調整して、コールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)により測定した体積基準のメディアン径が6.0μmになるまで成長させた。
次いで、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解させた水溶液を添加して、粒子径の成長を停止させた。
次いで、昇温して80℃の状態で撹拌し、トナー母体粒子の平均円形度が0.965になるまで粒子の融着を進行させ、下記の洗浄・乾燥工程を行った。
【0311】
(B.1.1)洗浄・乾燥工程
凝集・融着工程にて生成したトナー母体粒子の分散液を、バスケット型遠心分離機を用いて、固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。
このウェットケーキを、35℃のイオン交換水で洗浄後、25%の水酸化ナトリウム水溶液にてpHが4.0になるまで調整した(Net強度 0.10相当)。
前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後、「フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)」に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して「トナー母体粒子1」を作製した。
【0312】
(B.1.2)外添剤処理工程
上記の「トナー母体粒子1」に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、トナー1を作製した。
【0313】
(B.2)トナー2の作製
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、コア用非晶性ビニル樹脂粒子分散液X1を315質量部(固形分換算)、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液CP-1を30質量部(固形分換算)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩を樹脂比で1質量%(固形分換算)及びイオン交換水2000質量部を投入した。
室温下(25℃)下で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
さらに、着色剤粒子分散液Cy1を30質量部(固形分換算)投入し、塩化マグネシウム30質量部をイオン交換水30質量部に溶解させた溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。
3分間放置した後、60分間かけて80℃まで昇温した。
次いで、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液AP-1を74質量部(固形分換算)を30分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解させた水溶液を添加して、粒子径の成長を停止させた。
粒子径の成長速度が0.01μm/分となるように撹拌速度を調整して、コールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)により測定した体積基準のメディアン径が6.0μmになるまで成長させた。
次いで、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解させた水溶液を添加して、粒子径の成長を停止させた。
次いで、昇温して80℃の状態で撹拌し、トナー母体粒子の平均円形度が0.965になるまで粒子の融着を進行させ、下記の洗浄・乾燥工程を行った。
【0314】
(B.2.1)洗浄・乾燥工程
凝集・融着工程にて生成したトナー母体粒子の分散液を、バスケット型遠心分離機を用いて、固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、35℃のイオン交換水で洗浄後、25%の水酸化ナトリウム水溶液にてpHが4.0になるまで調整した(Net強度 0.10相当)。前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後、「フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)」に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して「トナー母体粒子2」を作製した。
【0315】
(B.2.2)外添剤処理工程
上記の「トナー母体粒子2」に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、トナー2を作製した。
【0316】
(B.3)トナー3の作製
トナー1の作製において、コア用非晶性ビニル樹脂粒子分散液をX2とした以外は、同様にしてトナー3を作製した。
【0317】
(B.4)トナーのまとめ
トナー1~3を簡単にまとめたものを表Iに示す。
【0318】
【表1】
【0319】
<画像表面に水溶液を塗布する工程>
画像表面への水溶液の塗布方法としては、前述したように図2のような装置にてロールコーティング法により行った。
前記水溶液の調整に用いられた水、界面活性剤、水溶性樹脂、水溶性有機溶媒の種類、濃度及び添加量等に関しては表IIに記載のとおりである。
なお、表II中では、少なくとも水と界面活性剤を含有する水溶液は、「表面改質水溶液」と記載してある。
【0320】
【表2】
【0321】
<水溶液の塗布後に前記画像表面を乾燥する工程>
前記画像を乾燥する方法は、図2の406のような基本構造をもった試作機により熱と風により行った。
【0322】
<画像表面に硬化膜を形成する工程>
表IIIのようにニスを調製した。
【0323】
【表3】
【0324】
前記画像の乾燥後、液状物質としてニスを塗布し、硬化を速度30m/分、塗布厚約5μmの条件でUVニスコーター(BNテクノロジーズ社製 Digi UV Coater)で実施して前記画像表面に硬化膜を形成した。
その際、液状物質塗布からUV照射までの時間は2秒であった。
【0325】
<各種測定方法>
(粘度測定)
振動式粘度計(株式会社セコニック社製 FVM70A-STC)を用いて常温(約25℃)にて振動子を液につけ、30秒後の値を測定した。
【0326】
(表面張力測定)
自動表面張力計(協和界面科学株式会社製 KYOWA DY300)を用いて常温(約25℃)にてプレート法より表面改質された画像の表面張力及びニスの表面張力を測定した。
【0327】
<各種評価>
以下の方法と評価基準により塗布性と接着性を評価した。
評価結果は表IVに示す。
【0328】
【表4】
【0329】
(塗布性の評価方法)
ニス塗布後の画像サンプルの表面状態を目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。
【0330】
(評価基準)
◎ 10cm×10cmの範囲にピンホールがない。
〇 10cm×10cmの範囲に微小なピンホールが1個以上2個以下。
△ 10cm×10cmの範囲に微小なピンホールが3個以上10個以下。
× 10cm×10cmの範囲にピンホールが11個以上、若しくははじいている。
【0331】
(接着性の評価方法)
ニス塗布後の画像サンプルの接着性の評価を、メンディングテープ剥離法により評価した。
手順は以下(1)~(7)のとおりである。
【0332】
(1)画像について、キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-6000を用いて倍率100倍で写真を撮影し、株式会社ニレコ製LUSEX-APにて二値化処理を行う。
(2)「メンディングテープ」(住友3M社製:No.810-3-12)を画像に軽く貼り付ける。
(3)1kPaの圧力でテープの上を3.5回往復擦り付ける。
(4)180度の角度、200gの力でテープを剥がす。
(5)剥離後の画像について、キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-6000を用いて倍率100倍で写真を撮影し、株式会社ニレコ製LUSEX-APにて二値化処理を行う。
(6)ニス定着率を下記式により算出する。
【0333】
ニス定着率[%]=(テープ剥離後のニスによる樹脂製の画像領域に対する隠ぺい率/テープ剥離前の粉体による樹脂製の画像領域に対する隠ぺい率)×100
【0334】
(7)下記評価基準に基づいて接着性を評価した。
【0335】
(評価基準)
◎ ニスの剥離なし。
〇 ニスの剥離が、5%未満。
△ ニスの剥離が、5~30%の範囲内
× ニスの剥離が、30%超。
【0336】
<まとめ>
以上実施例及び比較例の各評価より、比較例より実施例の方が総合的に優れていることがわかる。
【符号の説明】
【0337】
1 給紙カセット
1A 給紙ローラー
3 搬送経路
5 二次転写ローラー
6 対向ローラー
8 転写ベルト
9 駆動モーター
10C、10M、10Y、10K 1次転写ローラー
11C、11M、11Y、11K 感光体
12C、12M、12Y、12K 現像ローラー
13C、13M、13Y、13K プリントヘッド
14C、14M、14Y、14K 帯電チャージャー
15C、15M、15Y、15K トナーユニット
30C、30M、30Y、30K プロセスユニット
31 濃度センサー
66 平滑度センサー
74 搬送ローラー
100 制御部
200 画像形成部
300 操作パネル
500 画像形成装置(MFP)
605 定着ベルト
609 加圧ローラー
800 スキャナーユニット
900 原稿自動搬送装置
C シアン
M マゼンタ
Y イエロー
K ブラック
P 用紙
γ 画像の表面張力
γaq 水溶液の表面張力
γ 界面活性剤の膜の表面張力
γ 液状物質の表面張力
図1
図2
図3