(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189371
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】建設用車両
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20221215BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20221215BHJP
B60R 1/00 20220101ALI20221215BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20221215BHJP
G01S 15/931 20200101ALN20221215BHJP
G01S 17/931 20200101ALN20221215BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B66C13/00 D
B60R1/00 A
G01S13/931
G01S15/931
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097919
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 和彰
(72)【発明者】
【氏名】寺田 王彦
(72)【発明者】
【氏名】片山 将彰
【テーマコード(参考)】
5C054
5J070
5J083
5J084
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054FD03
5C054FE14
5C054FE17
5C054FE28
5C054HA30
5J070AB24
5J070AC02
5J070AF03
5J070BF07
5J083AA02
5J083AB13
5J083AD04
5J083AF06
5J084AA05
5J084AC02
5J084EA22
(57)【要約】
【課題】主に、ブームまたはアームに影響されることなく、または、ブームまたはアームの影響を抑えて車体の前方の物体を検知できるようにする。
【解決手段】ブーム30またはアームの先端が車体10から前方へ突き出した状態で走行可能なクレーン1に関する。
走行時に、車体10の前方の物体41までの距離42を検知する距離検知手段43を備え、
距離検知手段43は、ブーム30またはアームの先端側の車幅方向Yの両側となる位置に、車幅方向Yの外側へ向いた状態で設置されるようにしている。
距離検知手段43は、車体10から前方に延在された取付ブラケット61に取り付けられても良い。
距離検知手段43は、ブーム30またはアームにおける、車体10から前方に突出した部分に取り付けられても良い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームまたはアームの先端が車体から前方へ突き出した状態で走行可能な建設用車両であって、
走行時に、前記車体の前方の物体までの距離を検知する距離検知手段を備え、
前記距離検知手段は、前記ブームまたは前記アームの先端側の車幅方向の両側となる位置に、前記車幅方向の外側へ向いた状態で設置されていることを特徴とする建設用車両。
【請求項2】
ブームまたはアームの先端が車体から前方へ突き出した状態で走行可能な建設用車両であって、
走行時に、前記車体の前方の物体までの距離を検知する距離検知手段を備え、
前記距離検知手段は、前記車体の前部における車幅方向の端部の位置に直接、
または、前記車体から前方に延在された取付ブラケットに取り付けられていることを特徴とする建設用車両。
【請求項3】
ブームまたはアームの先端が車体から前方へ突き出した状態で走行可能な建設用車両であって、
走行時に、前記車体の前方の物体までの距離を検知する距離検知手段を備え、
前記距離検知手段は、前記ブームまたは前記アームにおける、前記車体から前方に突出した部分に取り付けられていることを特徴とする建設用車両。
【請求項4】
前記距離検知手段は、車幅方向の両側で、かつ、前記車幅方向の外側へ向いた状態で設置されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の建設用車両。
【請求項5】
前記距離検知手段の検知結果は、前記車体に設けられた複数のカメラの画像から生成された俯瞰画像に重ねてインジケータ表示されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の建設用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブームまたはアームの先端が車体から前方へ突き出した状態で走行可能な建設用車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車などの車両では、車体の前部に、車体の前方の物体を検知する検知手段を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、検知手段は、車体の前部における車幅方向の両側部の位置に、前方へ向けて取付けられており、検知手段が車体の前方の所定範囲内に物体を検知したときに、衝突被害軽減ブレーキ装置が作動して車両を停止させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両が上記特許文献1のような乗用車の場合には、車体の前部の位置に検知手段を取付けることによって、車体の前方の物体を支障なく検知することができる。
【0006】
しかし、車両が、ブームまたはアームの先端が車体から前方へ突き出した状態で走行する建設用車両などの場合には、特許文献1と同様に車体の前部の位置に検知手段を取付けると、車体から前方へ突き出したブームまたはアームが検知手段の検知領域内に入ることになる。すると、検知手段は、ブームまたはアームを検知することで、例えば、ブームまたはアームによって検知手段の検知領域が狭くなったり、ブームまたはアームの影響でノイズが発生したりするおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、ブームまたはアームに影響されることなく、または、ブームまたはアームの影響を抑えて車体の前方の物体を検知できる建設用車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対して、本発明は、
ブームまたはアームの先端が車体から前方へ突き出した状態で走行可能な建設用車両であって、
走行時に、前記車体の前方の物体までの距離を検知する距離検知手段を備え、
前記距離検知手段は、前記ブームまたは前記アームの先端側の車幅方向の両側となる位置に、前記車幅方向の外側へ向いた状態で設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成によって、ブームまたはアームに影響されることなく、または、ブームまたはアームの影響を抑えて車体の前方の物体を検知することなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1にかかる建設用車両の全体側面図である。
【
図3】俯瞰画像の上に重ねて表示されたインジケータ表示を示す図である。
【
図4】実施例2にかかる建設用車両の全体側面図である。
【
図6】実施例2の変形例にかかる建設用車両の全体側面図である。
【
図8】比較例にかかる建設用車両の全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1~
図8は、この実施の形態を説明するためのものである。
【0012】
以下、この実施の形態にかかる建設用車両の構成を説明する。建設用車両は、自走可能な車両、いわゆる自走式建設用車両とされる。自走式建設用車両の代表的なものはクレーンであり、クレーンには、運転席と操縦席とが一体となったラフテレーンクレーンや、運転席と操縦席とが別に設けられるオールテレーンクレーンやその他のクレーンが含まれる。以下、これらを単にクレーンという。この実施の形態では、ラフテレーンクレーンを建設用車両の例として説明する。なお、建設用車両には、クレーンの他にも、ホイールショベルやホイルローダなどの、車体よりも前にブームやアームが延びている作業機も含めることができる。
【0013】
[クレーンの構成]
図1、
図2を用いてこの実施の形態にかかるクレーン1(建設用車両)について説明する。なお、
図1、
図2は、実施例1を示すものである。まず、水平な地面2の上に置かれたクレーン1を基準として、互いに直交する3つの方向を、車両前後方向X、車幅方向Y、上下方向Zと規定する。車両前後方向Xは、クレーン1の走行時の進行方向を基準として、前方と後方とを規定する方向であり、車幅方向Yは、クレーン1の右方と左方とを規定する方向であり、上下方向Zは、地面2と垂直な方向で、上方と下方とを規定する方向である。
【0014】
クレーン1は、車体10と、旋回体20と、ブーム30またはアームとを備える。
【0015】
車体10は、道路や作業現場を自走するための車輪11や、車輪11を駆動するエンジンやモータなどの駆動源や、車輪11の操舵機構や、ブレーキなどを有する走行装置となっており、車体10には、作業時に使われるアウトリガー12が備えられている。
【0016】
アウトリガー12は、走行時には、格納状態とされ、作業時には、車体10から水平方向や垂直方向に張り出して車体10の全体を支えたり持ち上げたりして、地面2に対し車体10の姿勢を安定させる。
【0017】
旋回体20は、車体10の上部に設けられており、車体10に対して、上下方向Zに延びる鉛直軸21(または、旋回中心軸)の回りに回転(水平旋回)可能となっている。旋回体20は、キャビン22やウィンチ23やブーム30等を備える。図ではキャビン22は、クレーン1の進行方向(車両前後方向Xの前方)へ向いた状態で、ブーム30に対し車幅方向Yの右側に設けられている。なお、キャビン22は、クレーン1の進行方向へ向いた状態で、ブーム30に対し車幅方向Yの左側に設けても良い。この実施例では、キャビン22は、右側にあるものとして説明する。
【0018】
キャビン22は、ラフテレーンクレーンの場合、運転席および操縦席の機能を兼ね備えたものとされている。そのために、キャビン22には、車体10の走行を制御するための走行用の操作部(例えば、ステアリング、シフトレバー、アクセルペダル、および、ブレーキペダル等)が備えられる。また、キャビン22には、旋回体20やブーム30やウィンチ23等を操作するための作業用の操作部が備えられる。キャビン22に搭乗した乗員M(運転者または操作者)は、走行時には、走行用の操作部を操作して、クレーン1を自走させ、作業時には、作業用の操作部を操作して、旋回体20を旋回させたり、ブーム30を起伏および伸縮させたり、ウィンチ23を回転させたりして作業を行う。
【0019】
ブーム30は、基端部を旋回体20に起伏可能に取付けられており、基端側の基端ブーム31と、中間ブーム32と、先端側の先端ブーム33と、を備える。中間ブーム32と先端ブーム33は、基端ブーム31の内部に入れ子式に順次格納されており、伸縮シリンダ(不図示)を伸縮する(または、伸縮シリンダの伸縮動作によってシリンダ本体とロッドとの嵌め合い長さを変える)ことによって、先端ブーム33に対する中間ブーム32や先端ブーム33の突出量が変化されて、ブーム30は全体として伸縮する。
【0020】
基端ブーム31は、旋回体20に設けられた起伏シリンダ(不図示)によって起伏可能に支持される。作業時に起伏シリンダを伸縮する(または、起伏シリンダの伸縮動作によってシリンダ本体とロッドとの嵌め合い長さを変える)ことで、ブーム30は起伏する。
【0021】
先端ブーム33の先端には、ブームヘッド34が設けられ、ブームヘッド34には、シーブ35が単数または複数設置されている。旋回体20に設けられたウィンチ23には、吊り荷用のワイヤロープ36が巻付けられている。ワイヤロープ36は、ウィンチ23からブーム30に沿ってブーム30の先端のシーブ35まで配索される。そして、シーブ35に掛け渡され、掛け回されたワイヤロープ36は、シーブ35からほぼ鉛直下方へ延ばされ、ワイヤロープ36の最下部には、フック37が吊り下げ支持される。
【0022】
フック37は、荷物を吊るためのものであり、ウィンチ23の回転(正回転)によってワイヤロープ36が繰り出されることで、フック37が降下し、また、ウィンチ23を上記とは反対に回転(逆回転)してワイヤロープ36が巻き上げられることで、フック37が上昇する。
【0023】
[クレーン1の作用]
このように構成されたクレーン1は、作業時に、ウィンチ23によるワイヤロープ36の繰り出し・巻き上げ、ブーム30の起伏および伸縮動作、並びに旋回体20の旋回により、フック37に吊られた荷物を所定の位置に移動させる。
【0024】
また、クレーン1は、走行時には、ブーム30が縮められて格納され、ほぼ水平に伏した状態(スラントブームの場合には、先端が水平よりも下へ向いた状態)とされる。このとき、ブーム30は車両前後方向Xへ向けられ、ブーム30の先端が、車体10の前部10aにおける車幅方向Yの中間部(ほぼ中央部)から前方へ突き出した状態となり(突出部分38)、車体10はこの状態(ブーム30の先端が車体10から前方へ突き出した状態)のまま走行する。
【実施例0025】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0026】
上記のような、ブーム30(またはアーム)の先端が車体10から前方へ突き出した状態で走行可能なクレーン1に対し、この実施例では、以下のような構成を備えることができる。
【0027】
(1-1)この実施例のクレーン1では、
走行時に、
図3に示すように(
図1、
図2も併せて参照)、車体10の前方の物体41までの距離42を検知する距離検知手段43を備えている。
距離検知手段43は、ブーム30(またはアーム)の先端側の車幅方向Yの両側となる位置に、車幅方向Yの外側へ向いた状態で設置される。
【0028】
ここで、走行時は、ブーム30の先端を車体10から前方へ突き出した状態でクレーン1が道路や作業現場を前進しているときである。なお、距離検知手段43は、主に走行時に使われるが、ブーム30が伏した状態となっていれば、停止時や、停止状態からの発進時、走行状態からの停車時などにも使うことができる。以下、これらの状態を含めて単に走行時という場合がある。
【0029】
車体10の前方の物体41は、クレーン1の前方にあって、クレーン1の走行にとって障害となる物(障害物)のことであり、例えば、歩行者や作業者などの人や、他の車両や、その他の物などが含まれる。
【0030】
距離42は、車体10の前部10aと物体41との間における、車両前後方向Xの直線的な間隔のことである。この実施例では、距離検知手段43から物体41までの間隔と、車体10の前部10aから距離検知手段43までの間隔との和となる。なお、車体10の前部10aから距離検知手段43までの間隔は、既知の値となるので、距離42は、距離検知手段43から物体41までの間隔で見るようにしても良い。
【0031】
距離検知手段43は、距離42を検知することができればどのようなものを使っても良い。距離検知手段43には、例えば、ミリ波レーダ装置や、超音波センサや、LiDAR(Light Detection and Ranging)や、その他の距離センサなどを適宜使用することができる。
【0032】
クレーン1には、制動制御装置44(
図2)を設けて、距離検知手段43で検知した距離42を制動制御装置44へ入力することで、距離検知手段43で検知した距離42が予め定めた設定値(しきい値)よりも小さく(設定値以下、または、設定値未満と)なったときに、制動制御装置44が車体10に設けられたブレーキを作動してクレーン1の走行を停止させる、いわゆる衝突被害軽減ブレーキシステムを構成しても良い。ただし、距離検知手段43で検知した距離42は衝突被害軽減ブレーキシステム以外の目的で使用することもできる。
【0033】
ブーム30の先端側は、走行時のブーム30の先端寄り(前側)の部分のことである。この実施例では、ブーム30の先端側を、格納状態で伏されたブーム30における、車体10の最前部(前部10a)からブーム30の最先端までの範囲、即ち、最前部(前部10a)よりも前方に突出している部分(突出部分38)としている。なお、突出部分38を数値化して衝突被害軽減ブレーキシステムなどの制御に使用する場合には、車体10の最前部(前部10a)の位置、および、ブーム30の最先端の位置は、含めても含めなくてもどちらでも良い。
【0034】
両側は、車両前後方向Xに延びるブーム30を境界として、ブーム30の車幅方向Yの右側と左側の両方のことである。この実施例では、距離検知手段43は、ブーム30の右側と左側にそれぞれ1個ずつ、少なくとも2個(それぞれ外側へ向けて)設けられる。なお、距離検知手段43は、ブーム30の右側または左側に対して、単数または複数設けることができる。また、必要に応じ、上記したメインとなる距離検知手段43に加えて、ブーム30の先端側(先端部)における車幅方向Yの中央となる位置に対し、補助的な距離検知手段43aを正面へ向けて単数または複数設けるようにしても良い。
【0035】
外側は、車幅方向Yに対してブーム30とは反対となる側のことである。よって、ブーム30の右側の距離検知手段43は右方へ向けられ、ブーム30の左側の距離検知手段43は左方へ向けられる。この際、各距離検知手段43は、右方または左方のそれぞれにおける、真ん前(または真正面)に向かう方向と真後に向かう方向とを除いた180度よりも小さい範囲内のいずれかの方向に向けられることになる。
【0036】
外側へ向いた状態は、例えば、前方(真ん前)に向いた状態ではなく、前方(真前)に対して、距離検知手段43が外向きになっていることである。距離検知手段43は、僅かにでも外側へ傾けて取付けられていれば、外向きにしたことになる。距離検知手段43は、通常、固有の検知角45(
図2)を有しており、検知領域46が上下左右へ広がるので、距離検知手段43は、ブーム30やフック37が検知領域46内に入らないような角度に設置するのが好ましい。即ち、距離検知手段43は、検知角45の中心軸が、前方(真前)より若干でも外側へ傾けて取付けられていれば外向きに設置したことになるが、左右の距離検知手段43の検知領域46が互いにほとんど重ならず(全く重ならないか、または、互いに影響しない程度に僅かに重なる角度)、しかも、検知領域46にブーム30やフック37が入らないような角度となるように斜め前へ傾けて設置するのが障害物検知にとって好ましい状態である。上記は、距離検知手段43を斜め前へ向ける場合であるが、距離検知手段43を斜め後へ向ける場合も同様である。
【0037】
なお、距離検知手段43は、検知領域46の中心軸の向きを車幅方向Y(車体10の真横)に向けても良いが、検知したい物体41の位置や、距離検知手段43の検知角45などの状況に合わせるには、上記したように、検知領域46の中心軸の向きを互いに影響しない範囲で斜め前(または斜め後)に傾けた状態にするのが好ましい。
【0038】
例えば、左右の距離検知手段43どうしが、車幅方向Yに近接して配置されている場合には、検知角45のほぼ半分程度の角度で斜め前の外側に傾けて設置するのが好ましい。また、左右の距離検知手段43の間にブーム30やその他の物が介在されるなどして、左右の距離検知手段43どうしが、車幅方向Yに離れている場合には、(ブーム30やその他の物が検出されない範囲内で)左右の距離検知手段43の車幅方向Yの間隔の分だけ検知角45のほぼ半分程度の角度よりも小さい角度となるように配置することが可能である。左右の距離検知手段43は、互いに反対側にほぼ同じ角度で傾けるのが好ましいが、構造的には左右の距離検知手段43の角度を互いに異ならせることも可能である。
【0039】
なお、このように、距離検知手段43を車幅方向Yの外側へ向けて設置しても、上記したように、距離検知手段43が固有の検知角45を持つことによって、距離検知手段43の検知領域46は上下左右に対する所定の広がりを有しているので、車体10の前方の物体41を検知することが可能である。距離検知手段43を、外側へ向けて設置する場合、距離検知手段43は、検知角45の広いものを用いるのが好ましい。
【0040】
また、上下方向Zに対する検知領域46の中心軸の向きについては、水平に配置しても良いが、距離検知手段43と検知したい物体41との上下方向Zの位置関係(高さの差)や、距離検知手段43の検知角45などの状況に合わせて、水平に対し適宜傾けた状態で設置しても良い。例えば、距離検知手段43は、若干下向き(例えば、水平よりも10度程度下向き)に設置しても良い。
【0041】
距離検知手段43は、少なくとも、ブーム30の先端側の、車幅方向Yの両側となる位置に、外側へ向けて設置されていれば、クレーン1に対してどのように設置しても良い。例えば、距離検知手段43は、ブーム30の先端側(例えば、先端部など)の両側面に直接設置しても良いし、ブーム30の先端側(例えば、先端部など)に間接的に設置しても良い。
【0042】
この実施例では、距離検知手段43は、ブーム30の先端部に取付けられた左右一対の支持ブラケット47に対して間接的に設置されている。距離検知手段43は、各支持ブラケット47に対し、位置および向きを固定した状態でそれぞれ取付けられている。
【0043】
支持ブラケット47は、基端ブーム31の先端部の両側面にそれぞれ取付けられた平面視ほぼL字状の部材とされている。平面視ほぼL字状の支持ブラケット47は、基端ブーム31の先端部から外側へ向けて横に(基端ブーム31とほぼ垂直に)延びる横延在部48と、横延在部48の外側の端部から屈曲部分を有して前へ延びる前方延在部49とを有している。横延在部48は、距離検知手段43を基端ブーム31から車幅方向Yに所要量だけ離すためのものである。前方延在部49は、距離検知手段43をより前側の位置に設置できるようにするためのものである。前方延在部49によって、距離検知手段43はシーブ35を超えない程度に基端ブーム31の先端寄りの位置に設置されている。距離検知手段43は、前方延在部49の先端部分に外側へ向けて取付けられ(固定され)ている。なお、支持ブラケット47の形状などについては、これに限るものではない。また、図では、左右の支持ブラケット47は、全く同じ大きさおよび形状のものが、車両前後方向Xおよび上下方向Zの同じ位置に取付けられているが、左右の支持ブラケット47の大きさや、形状や、車両前後方向Xまたは上下方向Zに対する取付位置は、必要に応じて互いに異ならせることも、構造的には可能である。
【0044】
(1-2)
図3に示すように、距離検知手段43の検知結果は、車体10に設けられた複数のカメラ51a~51d(
図2)の画像52a~52dから生成された俯瞰画像53に重ねてインジケータ表示54されるようにしても良い。
【0045】
ここで、距離検知手段43の検知結果は、具体的な距離42を示す値などとして距離検知手段43から衝突被害軽減ブレーキシステムの制動制御装置44や、キャビン22内に設置されたモニタ55(の制御装置)などに出力される。モニタ55は、例えば、キャビン22内の前部に設けられた計器パネルなどに設置される。なお、キャビン22内には、モニタ55の他にブザーやスピーカーなどの音による報知手段57(警報装置や音声案内装置)も設置される。音による報知手段57は、衝突被害軽減ブレーキシステムの制動制御装置44や、モニタ55(の制御装置)によって制御することができる。
【0046】
カメラ51a~51dは、車体10(または旋回体20でも良い)の前部10a、後部10b、右側部10c、左側部10dなどの4つの辺に沿った各部や4つの角部などにそれぞれ単数または複数設けられており、カメラ51a~51dの画像52a~52dは、直接または画像処理や各種の加工などが施された状態でキャビン22内のモニタ55に表示することができる。
【0047】
俯瞰画像53は、複数のカメラ51a~51dの画像52a~52dを合成して生成された、車体10やその周辺を上から見た状態の一つの平面的な像である。俯瞰画像53によって車体10の周囲の状況を上から一望できるようになる。俯瞰画像53の表示を行うために、カメラ51a~51dは、例えば、車体10の前部10aと後部10b、および、車体10の右側部10cと左側部10dとの少なくとも4箇所以上の位置に対し、少なくともほぼ前後左右の4方向へ向けて設置される。俯瞰画像53には、インジケータ表示54の他にも、必要に応じて、クレーン1の各部に取付けられた各種のセンサからの様々な情報を重ねて表示することができる。例えば、ブーム30の先端側の中央に対し、正面へ向けて取り付けられた補助的な距離検知手段43aからの距離情報などを重ねて表示することなども可能である。
【0048】
インジケータ表示54は、車体10の前方の物体41に関する情報(例えば、位置や距離42など)を、実際の画像とは別の、何らかの指標(記号や図形など)を用いて概略的に示す表示のことである(この実施例では、指標は四角形状をした単数または複数の目盛56a~56cとなっている)。車体10の前方の物体41は、主に、車体10の前部10aよりも車両前後方向Xの前側に位置すると共に、車幅方向Yに対しては車体10の前部10aと僅かにでも重なるものが検出対象となる。インジケータ表示54は、このような前方の物体41を俯瞰画像53に重ねて表示する。インジケータ表示54は、走行時に自動的かつ強制的に表示されるようにしても良いが、表示・非表示を選択できるようにするのが好ましい。
【0049】
例えば、インジケータ表示54は、物体41の位置を示せるようにするために、例えば、車体10の右前の位置や左前の位置や、車体10の中央部の前側の位置(不図示)などの複数の位置に適宜表示させることができる。この際、インジケータ表示54は、物体41の実際の位置に合わせて画面上の自由な位置に表示させるようにしても良いし(自由表示)、物体41の概略の位置が分かるように予め定めた複数の固定位置のうちのいずれかに表示させるようにしても良い(固定表示)。物体41が複数ある場合には、インジケータ表示54も複数同時表示させることができるし、例えば、最も近い物体41の位置のみ表示させることもできる。また、各位置のインジケータ表示54は、物体41との距離42を示すために、例えば、車体10との車両前後方向Xの距離42に応じた多数または複数の目盛56a~56cを有しても良い。そして、複数の目盛56a~56cは、車両前後方向Xに並べて配置することで、距離42の変化を示すことができるものとなる。この場合、目盛56a~56cはシンプルで分かり易いように3段階表示となっており、例えば、車体10の遠くにある目盛56aは、物体41と車体10との距離42が遠い状態を示し、車体10の近くにある目盛56cは、物体41と車体10との距離42が近い状態を示している。ただし、目盛56a~56cは3段階表示に限るものではなく、2段階または4段階以上で表示しても良い。
【0050】
そして、例えば、前方の物体41が車体10に近づくに連れて、該当する位置にあるインジケータ表示54の、物体41との距離42に対応した目盛56a~56cが表示または点灯されるようにする。この実施例では、車体10の左側の物体41に対して、左側のインジケータ表示54のいずれかの目盛56a~56cが点灯されることになる。これにより、物体41の位置と距離42の情報をモニタ55に分かりやすく簡潔に表示することが可能になる。ただし、インジケータ表示54のやり方は、上記に限るものではない。例えば、各位置に対して複数設けられた各目盛56a~56cは、交代で1つのみ点灯したり、または、表示が積み重なって行くように(点灯する表示が順次増えて行くように)複数同時に点灯したりできる。各目盛56a~56cの表示を切り替える距離42については、適宜設定することができる。複数の目盛56a~56cは、互いに間隔を有するように離して設けたりしても良いし、互いに間隔ができないようにくっ付けて設けたりしても良い。
【0051】
この際、インジケータ表示54は、車体10の前方の物体41との距離42に応じて指標の表示形態を変化させるようにしても良い(可変指標)。
【0052】
例えば、インジケータ表示54は、車体10の前方の物体41を示す指標を、物体41との距離42に応じて予め定めた色彩(または色の変化)を付けて表すことができる。この場合、インジケータ表示54と衝突被害軽減ブレーキシステムとを連動させるものとし、衝突被害軽減ブレーキシステムが作動する距離の設定値を基準にして、物体41との距離42が遠くから設定値に近付くに連れて、指標の色が、例えば、安全色(例えば、緑または青)、注意・警戒色(例えば、黄色)、危険色(例えば、赤)の順に変化するようにして、指標の色が赤になったときに衝突被害軽減ブレーキシステムが作動されるようにしても良い。図の場合には、車体10から最も遠い位置の目盛56aを安全色で表示し、中間の位置の目盛56bを注意・警戒色で表示し、最も近い位置の目盛56cを危険色で表示するように、目盛56a~56cごとに表示色を分けるようにしている。
【0053】
この場合、安全色は、安全であることを示す色であり、直感的に分かり易いように信号の色に合わせて緑または青とし、注意・警戒色は、注意・警戒が必要であることを示す色であり、信号の色に合わせて黄色とし、危険色は、危険であることを示す色であり、信号の色に合わせて赤としているが、それぞれの色の設定は上記に限るものではない。また、表示色を安全色、注意・警戒色、危険色にそれぞれ切り替える距離42については、衝突被害軽減ブレーキシステムの作動距離に限らずに適宜設定することができる。さらに、表示の色は、3色に限らず、2色や4色以上などの複数の色にしても良い。また、インジケータ表示54は、指標の色彩の変化に替えてまたは加えて、指標の色の濃さの変化やその他の表示形態の変化などで表すこともできる。例えば、最も遠い位置の目盛56aを塗り潰し表示にし、中間の位置の目盛56bを半透明表示にし、最も近い位置の目盛56cを枠だけの中抜き表示にしても良い。
【0054】
また例えば、インジケータ表示54の指標を物体41との距離42に応じて点滅させることができる。この場合、インジケータ表示54と衝突被害軽減ブレーキシステムとを連動させるものとし、衝突被害軽減ブレーキシステムが作動する距離の設定値を基準にして、物体41との距離42が遠くから設定値に近付くに連れて、指標が点滅していない状態から、点滅を開始させ、さらに点滅の速度を徐々にまたは段階的に早くするようにして、指標の点滅が最も早くなったときに衝突被害軽減ブレーキシステムが作動されるようにしても良い。点滅の速度を切り替える距離42については、適宜設定することができる。点滅を使って表示する場合、一つの指標だけでも必要な表示を行うことはできるし、そのようにしても良いが、図のような三段階表示(多段階表示)の場合には、車体10から最も遠い位置の目盛56aは点滅させずに点灯させ、中間の位置の目盛56bはゆっくり点滅させながら点灯させ、最も近い目盛56cは早く点滅させながら点灯されるように、目盛56a~56cごとに点滅の状態を変えることができるようにしている。
【0055】
さらに例えば、インジケータ表示54は、指標に対する、上記した色などの変化と点滅の速度の変化とを組み合わせて表示させるようにしても良い。
【0056】
あるいは、指標は、距離42に応じて形状や大きさを変化させるようにしても良いし、これらを上記色や点滅の変化と適宜組み合わせても良い。さらに例えば、上記した各種のインジケータ表示54に連動して、ブザーやスピーカーなどの音による報知手段57により警告音や警告放送(音声案内)などを発生させて、音での報知を行わせても良い。ブザーやスピーカーなどによる警告音や警告放送(特に、警告音)は、例えば、最も遠い位置の目盛56aのときに音量を小にし、中間の位置の目盛56bのときに音量を中にし、最も近い位置の目盛56cのときに音量を大にしても良い。また、音量に替えてまたは加えて、音の長さや、音の発生回数や、音程のうちの少なくとも一つ以上を変化させても良い。音の長さや音の発生回数や音程は、距離42が遠いほど短く、少なくまたは低く、反対に、近いほど長く、多くまたは高くするのが好ましい。
【0057】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0058】
クレーン1は、上記したように、ブーム30を収縮し、旋回体20の上で伏した状態にして、キャビン22を車体10の前へ向けた状態にすることにより、ブーム30の先端が車体10から前方へ突き出した状態となる。クレーン1は、この状態で道路や作業現場などを自走する。
【0059】
走行時には、キャビン22内に設けられたモニタ55に、クレーン1の周辺の俯瞰画像53を表示させることができる。
【0060】
そして、クレーン1では、走行時に、距離検知手段43が車体10の前方にある物体41までの距離42を検知する。クレーン1は、制動制御装置44を備えており、距離検知手段43で検知した物体41との距離42が設定値よりも小さく(以下、または、未満と)なったときに、衝突被害軽減ブレーキシステムが作動して、または、制動制御装置44がブレーキを作動させて、クレーン1の走行を停止するようになっている。
【0061】
この際、距離検知手段43は、固有の検知角45を有しているため、距離検知手段43の検知領域46は、距離検知手段43から離れるに従って上下左右に広がって行く。そのため、
図8の比較例に示すように、距離検知手段43を車体10そのものの前部10aの位置(特に、ブーム30の真下の位置)に前方(真前)に向けた姿勢で(直接)取付けた場合には、上下左右(特に上方)に広がっている検知領域46の範囲内にブーム30や、ブーム30の先端に設置されたフック37が入ってしまうおそれが高い。すると、ブーム30やフック37を検知(または誤検知)することによって、距離検知手段43の検知領域46が狭くなったり、ブーム30やフック37の影響(例えば、距離検知手段43からの電波や音波のブーム30やフック37での乱反射など)によって検知結果にノイズが発生したりするおそれがある。
【0062】
そこで、ブーム30やフック37に影響されることなく車体10の前方の物体41を検知できるように、距離検知手段43の設置の仕方を工夫する必要がある。
【0063】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0064】
(効果 1-1)距離検知手段43は、ブーム30(またはアーム)の先端側の車幅方向Yの両側となる位置に、車幅方向Yの外側へ向いた状態で設置されても良い。クレーン1に対して、距離検知手段43をこのような位置や向きに設置することで、ブーム30の先端が車体10から前方へ突き出した状態でクレーン1が走行している場合などであっても、距離検知手段43の検知領域46を、ブーム30や、ブーム30の先端に設置されたフック37から確実に外すことができるため、距離検知手段43はブーム30やフック37を検知しなくなり、ブーム30やフック37に影響されることなく車体10の前方の物体41を検知することが可能になる。よって、ブーム30やフック37によって距離検知手段43の検知領域46が狭くなったり、ブーム30やフック37による影響で検知結果にノイズが発生したりするのを抑制、防止できる。
【0065】
また、距離検知手段43を車幅方向Yの外側へ向けて設置することで、各距離検知手段43の検知領域46どうしが重ならないようにできるため、より広い範囲を検知することが可能になる。
【0066】
そして、距離検知手段43は、ブーム30の先端側の車幅方向Yの両側となる位置に直接取付けても良いが、この実施例のように支持ブラケット47を介して間接的に取付けることで、距離検知手段43を、車体10の前方の物体41に対する検知にとって最適となる位置に、容易に設置できるようになる。
【0067】
(効果 1-2)距離検知手段43の検知結果を、車体10に設けられた複数のカメラ51a~51dの画像52a~52dから生成された俯瞰画像53に重ねてインジケータ表示54するようにしても良い。
【0068】
このように、クレーン1の走行時に、車体10の前方の物体41(障害物)が俯瞰画像53上にインジケータ表示54(指標によって表示)されることで、車体10の前方の物体41が視覚的に見やすく、また、直感的に分かりやすく表示されるようになるため、乗員M(運転者)に適切な注意喚起を行わせることができる。
【0069】
この際、インジケータ表示54は、車体10の前方の物体41を示す指標を、例えば、物体41との距離42に応じた色(色彩や色の濃さなどの変化)や表示形態で表すようにしても良い。そして、衝突被害軽減ブレーキシステムが作動するときの距離42の設定値を基準にして、物体41との距離42が遠くから設定値に近付くに連れて、例えば、指標の色が、安全色(例えば、緑または青)、注意・警戒色(例えば、黄色)、危険色(例えば、赤)の順に段階的に変化されるようにしても良い。これにより、車体10の前方の物体41までの距離42を、指標の色の変化によって分かりやすく知らせることができる。
【0070】
または、インジケータ表示54は、車体10の前方の物体41を示す指標を、例えば、物体41との距離42に応じて点滅させるようにしても良い。そして、衝突被害軽減ブレーキシステムが作動するときの距離42の設定値を基準にして、物体41との距離42が遠くから設定値に近付くに連れて、指標が点滅していない状態から、点滅を開始し、さらに点滅の速度を徐々にまたは段階的に早くなるようにしても良い。これにより、車体10の前方の物体41までの距離42を、指標の点滅や点滅速度の変化によって分かりやすく知らせることができる。
【0071】
さらに、インジケータ表示54では、指標を、上記した色の変化と点滅の速度の変化とを組み合わせて表示し、物体41との距離42が遠くから設定値に近付くに連れて、指標の色が変化すると共に、指標の点滅が早くなるようにしても良い。これにより、車体10の前方の物体41までの距離42を、指標の色の変化と点滅速度の変化との両方によって、より分かりやすく知らせることができる。その他、指標は、形状や大きさなどを変化させることもできる。また、上記した各種のインジケータ表示54と音とを組み合わせるようにしても良い。これにより、上記した距離42を、さらに分かり易く表示と音で乗員Mに知らせることができる。
【0072】
そして、例えば、距離検知手段43を衝突被害軽減ブレーキシステムと連動させるようにしても良い。これにより、指標の色が赤になったときや、指標の点滅が最も早くなったときに衝突被害軽減ブレーキシステムが作動してクレーン1の走行が停止されるようにできる。これにより、乗員Mは、衝突被害軽減ブレーキシステムによるクレーン1の停止タイミングを事前に察知して心の準備を行うことができ、衝突被害軽減ブレーキシステムの作動時の乗り心地悪化の影響を低減できる。
ここで、車体10の前部10aにおける車幅方向Yの端部とは、ブーム30の真下を避けた、車幅方向Yに対してブーム30から最も遠い位置であり、車体10における前部10aと右側部10cとが交わる角部(右端部)およびその周辺、または、車体10における前部10aと左側部10dとが交わる角部(左端部)およびその周辺のうちの、少なくとも一方または両方のことである。この場合、距離検知手段43は、ブーム30やフック37が検知領域46内に入らない程度に検知角45を狭くしたものを使用するのが好ましい。ただし、車体10の前部10aの左右の端部に距離検知手段43を直接取り付けることによっては、ブーム30やフック37が検知領域46に入るのを避けられない場合には、距離検知手段43を、取付ブラケット61を介して間接的に車体10に取付けるようにする。この場合、車体10の前部10aの左右の端部の距離検知手段43は、必要に応じ、残しておいて補助的に使用しても良いし、残さなくても良い。また、必要な場合には、ブーム30の先端部に補助的な距離検知手段43aを設けて、補助的に使用しても良い。これらの補助的な(左右の端部の)距離検知手段43や(ブーム30の先端部の)距離検知手段43aの検出データも、俯瞰画像53に適宜表示させるようにしても良い。取付ブラケット61は、車体10に取けられた、距離検知手段43を設置するためのブラケットであり、好ましくは、車体10の前部10aに取けられて、車体10の前部10aから前へ向けてほぼ水平に延びるように設置される。ただし、取付ブラケット61は、車体10の前部10aよりも前方に延在されるようになっていれば、車体10の車両前後方向Xのどの位置に取り付けても良い。
取付ブラケット61は、図のように位置固定状態で設置しても良いが、走行時には、車体10の前部10aから前方へ延び、作業時には、作業の邪魔にならないよう、車体10の前部10aに格納されるように、例えば、車両前後方向Xに伸縮自在なものなどとして距離検知手段43を前後に進退動させ得るようにすることもできる。取付ブラケット61の伸縮操作は、自動としても手動としても良い。
取付ブラケット61は、車体10の前部10aなどに対し、車幅方向Yのどの位置に取付けても良い。例えば、車幅方向Yの中央部や、車幅方向Yの両側部(左右の端部)やこれらの間の適宜の位置に単数または複数取付けることができる。この実施例では、取付ブラケット61は、車幅方向Yのほぼ中央部に1箇所設けて、距離検知手段43をブーム30のほぼ真下の位置に設置するようにしている。また、取付ブラケット61は、車幅方向Yの片側または両側の端部またはその近傍の位置に1箇所または2箇所設けて、距離検知手段43を、車体10の前部10aの左右の端部の少なくともいずれか一方または両方の周辺に、設置できるようにしても良い。
取付ブラケット61は、距離検知手段43を前方(真前)に向けたときに、距離検知手段43の検知領域46にブーム30やフック37が入らなくなる(または、干渉しなくなる)程度まで、ブーム30(の先端部)やフック37の位置での検知領域46の広がりが小さくなる位置(干渉回避位置62)と同じ長さか、干渉回避位置62を超える長さとなるように前方へ延ばされる。この干渉回避位置62は、固定の値ではなく、距離検知手段43の検知角45や車幅方向Yに対する距離検知手段43の取付位置などに応じて変化する値であり、状況に合わせて最適に設定される。干渉回避位置62は、距離検知手段43の検知角45が広いほど前側になり、検知角45が狭いほど後側になる。干渉回避位置62は、ブーム30の真下の位置から距離検知手段43の設置位置までの車幅方向Yの距離が、短いほど前側になり、長いほど後側になる。そして、干渉回避位置62が、車体10の前部10aの位置とほぼ等しくなった場合に、距離検知手段43は、車体10の前部10aの左右の端部の少なくともいずれかに、直接設置することが可能になる。
距離検知手段43は、前へ延びる取付ブラケット61の先端部(前端部)に、車体10の前部10aよりも前方へオフセットした状態で単数または複数取付けられる。この際、距離検知手段43の電波や音波を発生する部分が干渉回避位置62またはそれよりも前側に位置されるようにする。これにより、距離検知手段43の、車体10の前部10aに対する前方へのオフセット量は、取付ブラケット61の長さとほぼ等しいかそれよりも大きくなり、車体10の前部10aから干渉回避位置62まで、または、それ以上の量とすることができる。
距離検知手段43は、取付ブラケット61の先端部に対し、どのような向きで取付けても良いが、例えば、図のように、前方(真前)へ向けて取付けても良い。距離検知手段43を前方へ向けて設置する場合、距離検知手段43は、検知角45の狭いものを用いるのが好ましい。また、距離検知手段43は、例えば、後述する(2-3)のように取付けても良い。
ここで、ブーム30における、車体10から前方に突出した部分は、走行時の基端ブーム31における、車体10の前部10aよりも前側となる部分(突出部分38)である。
距離検知手段43は、実施例1のように基端ブーム31の両側や、基端ブーム31の両側に設けた支持ブラケット47に取付けても良いが、この変形例では、伏した状態の基端ブーム31の下側、例えば、基端ブーム31の下面における、車体10の前部10aと基端ブーム31の先端部との間の車両前後方向Xの中間位置から下方(ほぼ真下)へ延びる垂下ブラケット71に取付けるようにしている。
垂下ブラケット71は、図のように位置固定状態で設置しても良いが、走行時などには、伏した状態の基端ブーム31からほぼ真下に延びた状態に保持され、作業時には、作業の邪魔にならないよう、基端ブーム31に沿って添設した状態に格納されるようにしても良い。垂下ブラケット71は、例えば、上端部を車幅方向Yへ延びるヒンジ軸を有するヒンジ部を介して基端ブーム31の下面に回動自在に取付けて、伏した基端ブーム31に対して距離検知手段43を昇降回動させ得るようにすることもできる。垂下ブラケット71の回動操作は、自動としても手動としても良い。この際、基端ブーム31の下面と垂下ブラケット71との間には、垂下ブラケット71を、走行時などには下方へ延びた状態で保持し、作業時には、基端ブーム31に沿った添設状態に保持し続けさせるロック部を設けることができる。
垂下ブラケット71は、伏した基端ブーム31の下面に対し、上記した干渉回避位置62の周辺か、または、それよりも前側となる位置に単数または複数設置される。距離検知手段43は、垂下ブラケット71の先端部(下端部)に、車体10の前部10aよりも前方へオフセットした状態で単数または複数取付けられる。この際、距離検知手段43の電波や音波を発生する部分が干渉回避位置62またはそれよりも前側に位置されるようにする。これにより、距離検知手段43の、車体10の前部10aに対する前方へのオフセット量は、車体10の前部10aから干渉回避位置62まで、または、それ以上(で基端ブーム31の先端部まで)の量とすることができる。
距離検知手段43は、伏した状態のブーム30の車体10から前方に突出した部分のほぼ真下の位置(基端ブーム31の下面に取付けられた垂下ブラケット71の先端部)に対し、どのような向きで取付けても良いが、例えば、図のように、前方(真前)へ向けて取付けても良い。距離検知手段43を前方へ向けて設置する場合、距離検知手段43は、検知角45の狭いものを用いるのが好ましい。なお、この変形例においても、車体10の前部10aの左右の端部の距離検知手段43は、必要に応じ、残しておいて補助的に使用しても良いし、残さなくても良い。また、必要な場合には、ブーム30の先端部に補助的な距離検知手段43aを設けて、補助的に使用しても良い。これらの補助的な距離検知手段43や距離検知手段43aからの距離データも、俯瞰画像53に適宜表示させることができる。
具体的には、距離検知手段43は、例えば、取付ブラケット61の先端部や、垂下ブラケット71の先端部の左右の両面に対し、互いに反対側(外側)へ向けてそれぞれ取付けても良い。
また、距離検知手段43は、例えば、取付ブラケット61の先端部や、垂下ブラケット71の先端部を二股状にして、二股の各先端部に対し、互いに反対側(外側)へ向けてそれぞれ取付けても良い。
あるいは、距離検知手段43は、例えば、取付ブラケット61や、垂下ブラケット71を複数本設けて、各取付ブラケット61や、各垂下ブラケット71の先端部に対し、互いに反対側(外側)へ向けてそれぞれ取付けても良い。
なお、車幅方向Yの両側で、かつ、車幅方向Yの外側へ向いた距離検知手段43は、それらのみを設けるようにしても良いが、上記した前方へ向けて取付けた距離検知手段43と組み合わせて設けても良い。また、実施例2や実施例2の変形例の距離検知手段43と、実施例1の距離検知手段43や補助的な距離検知手段43aとを適宜組み合わせて設けても良い。また、表示などについても、備えられた全ての距離検知手段43や補助的な距離検知手段43aを用いて同様に行うことができる。
上記したように、距離検知手段43の固有の検知角45により、検知領域46は、距離検知手段43から離れるに従って上下左右に広がって行くため、距離検知手段43を車体10そのものの前部10a(におけるブーム30の真下)の位置に(直接)取付けた場合には、上下左右(特に上方)に広がった検知領域46の範囲内にブーム30や、ブーム30の先端に設置されたフック37が入ってしまうおそれがある。そのため、ブーム30やフック37によって距離検知手段43の検知領域46が狭くなったり、ブーム30やフック37による影響で検知結果にノイズが発生したりするおそれがある。
これに対し、距離検知手段43を、車体10の前部10aにおける左右の端部や、車体10の前部10aよりも前方の位置にオフセットさせて設置することにより、例えば、ブーム30(の先端部)やフック37の位置での検知領域46の上下方向Zの広がりが小さくなるようにして、ブーム30やフック37が距離検知手段43の検知領域46に入らないようにできるため、距離検知手段43がブーム30やフック37を検知するのを回避することが可能になる。
よって、距離検知手段43は、ブーム30やフック37に影響されることなく車体10の前方の物体41を検知することができるようになり、ブーム30やフック37によって距離検知手段43の検知領域46が狭くなったり、ブーム30やフック37による影響で検知結果にノイズが発生したりするのを抑制、防止できる。
(効果 2-1)距離検知手段43は、車体10の前部10aにおける車幅方向Yの端部の位置に直接取り付けても良い。これにより、ブーム30の真下を避けた、ブーム30から車幅方向Yに最も遠い位置に距離検知手段43が設置されるので、ブーム30やブーム30の先端に設置されたフック37が検知領域46に入り難くなるようにすることができる。また、フック37を、車体10の前部10a(に設けられたバンパーにおけるブーム30の真下の位置など)に取付けて保持するような場合などであっても、車体10に対するフック37の保持位置を避けた位置に距離検知手段43を支障なく設置することができる。または、距離検知手段43は、車体10から前方に延在された取付ブラケット61に対して(間接的に)取り付けても良い。これにより、距離検知手段43を、車体10から前方に延在された取付ブラケット61を用いて、車体10の前部10aの位置よりも前方にオフセットさせて配置することができる。そのため、距離検知手段43の検知領域46にブーム30やフック37が入らないように、取付ブラケット61で車両前後方向Xの位置を適正に調整した状態で距離検知手段43を設置できる。また、取付ブラケット61を用いて距離検知手段43を車体10よりも前方の位置に設置することで、距離検知手段43の車幅方向Yに対する取付位置の自由度を広げることができる。
(効果 2-2)上記の変形例として、距離検知手段43は、ブーム30(またはアーム)における、車体10から前方に突出した部分(突出部分38)に取り付けても良い。これにより、ブーム30における、車体10から前方に突出した部分(例えば、基端ブーム31の下面に取付けた垂下ブラケット71など)に対し、距離検知手段43を車体10の前部10aの位置よりも前方にオフセットさせて配置することができる。また、距離検知手段43をブーム30に対して比較的容易に設置することができる。
(効果 2-3)上記各場合において、距離検知手段43は、車幅方向Yの両側で、かつ、車幅方向Yの外側へ向いた状態で設置されても良い。クレーン1に対して、距離検知手段43をこのような位置や向きに設置することで、ブーム30の先端が車体10から前方へ突き出した状態でクレーン1が走行している場合であっても、距離検知手段43の検知領域46を、ブーム30や、ブーム30の先端に設置されたフック37から確実に外すことができるため、距離検知手段43はブーム30やフック37を検知しなくなり、ブーム30やフック37に影響されることなく車体10の前方の物体41を検知することが可能になる。よって、ブーム30やフック37によって距離検知手段43の検知領域46が狭くなったり、ブーム30やフック37による影響で検知結果にノイズが発生したりするのを防止できる。
また、距離検知手段43を車幅方向Yの外側へ向けて設置することで、各距離検知手段43の検知領域46どうしが重ならなくなるため、より広い範囲を検知することが可能になる。