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特開2022-189372エンジンブロック、樹脂ブロック及びエンジンブロックの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189372
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】エンジンブロック、樹脂ブロック及びエンジンブロックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/00 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
F02F1/00 D
F02F1/00 S
F02F1/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097920
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304000836
【氏名又は名称】学校法人 名古屋電気学園
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】岡坂 周
(72)【発明者】
【氏名】西島 義明
【テーマコード(参考)】
3G024
【Fターム(参考)】
3G024AA26
3G024AA31
3G024AA33
3G024CA05
3G024FA10
3G024GA00
3G024GA18
3G024GA33
3G024HA13
3G024HA20
(57)【要約】
【課題】樹脂ブロックを備えたエンジンブロックにおいて、熱効率を向上させる技術を提供する。
【解決手段】エンジンブロック10は、シリンダライナ120と、熱硬化性樹脂の硬化物により構成される樹脂ブロック200と、シリンダライナ120より外周側の領域に設けられたウォータジャケット232とを備え、樹脂ブロック200は、シリンダライナ120の外周面側に設けられた第1部分210と、第1部分210より外側に位置する第2部分220とを有し、第1部分210は、少なくともウォータジャケット232のシリンダライナ120側の壁面を構成しており、その壁面を構成している領域において、シリンダライナ120からウォータジャケット232への方向を厚み方向としたときの厚み方向の熱抵抗が、ピストンのストローク方向の上死点側の領域と下死点側の領域とで異なる熱抵抗変化部を構成している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属外周面を有するシリンダライナと、
熱硬化性樹脂の硬化物により構成される樹脂ブロックと、
前記シリンダライナより外周側の領域に設けられた冷却用水路と、
を備え、
前記樹脂ブロックは、前記シリンダライナの前記金属外周面側に設けられた第1部分と、前記第1部分より外側に位置する第2部分とを有し、
前記第1部分は、少なくとも前記冷却用水路の前記シリンダライナ側の壁面を構成しており、
前記第1部分が前記壁面を構成している領域において、前記シリンダライナから前記冷却用水路への方向を厚み方向としたときの前記厚み方向の熱抵抗が、ピストンのストローク方向の上死点側の領域と下死点側の領域とで異なる熱抵抗変化部を構成している、
エンジンブロック。
【請求項2】
前記熱抵抗変化部は、上死点側の熱抵抗が下死点側の熱抵抗以上であって、
熱抵抗が相対的に大きい第1の領域と、
前記第1の領域より熱抵抗が相対的に小さい第2の領域と、を有し、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも、ピストンのストローク方向で上死点側の領域に設けられている、
請求項1に記載のエンジンブロック。
【請求項3】
前記第1の領域は、少なくとも上死点側からストローク長の20%の範囲の領域を含む、請求項2に記載のエンジンブロック。
【請求項4】
前記熱抵抗変化部は、下死点側の熱抵抗が上死点側の熱抵抗以上であって、
熱抵抗が相対的に大きい第1の領域と、
前記第1の領域より相対的に熱抵抗が小さい第2の領域と、を有し、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも、ピストンのストローク方向で上死点側の領域である、
請求項1に記載のエンジンブロック。
【請求項5】
前記第2の領域は、少なくとも上死点側からストローク長の20%の範囲の領域を含む、請求項4に記載のエンジンブロック。
【請求項6】
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも厚みが厚い、請求項2から5までのいずれか1項に記載のエンジンブロック。
【請求項7】
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも前記硬化物に含まれる中空領域の体積比率が大きい、請求項2から6までのいずれか1項に記載のエンジンブロック。
【請求項8】
前記第1の領域と前記第2の領域とは、異なる熱硬化性樹脂の硬化物で構成されており、
前記第1の領域の硬化物の熱伝導率が、前記第2の領域の硬化物の熱伝導率よりも小さい、請求項2から7までのいずれか1項に記載のエンジンブロック。
【請求項9】
前記第1部分の厚みが連続的に変化している領域を有している、請求項2から8までのいずれか1項に記載のエンジンブロック。
【請求項10】
前記第1部分の厚みが連続的に変化している領域は断面の前記冷却用水路の境界が直線状に変化している領域有する、請求項9に記載のエンジンブロック。
【請求項11】
前記第1部分の厚みが連続的に変化している領域は断面の前記冷却用水路の境界が曲線状に変化している領域を有する、請求項9または10に記載のエンジンブロック。
【請求項12】
前記第1部分の厚みが非連続的に変化している領域を有する、請求項2から11までのいずれか1項に記載のエンジンブロック。
【請求項13】
前記樹脂ブロックの前記第1部分には、前記シリンダライナ側の壁面に接着剤層が設けられており、
前記接着剤層は、前記第2の領域に対応する壁面より前記第1の領域に対応する壁面に多く設けられている、請求項2から12までのいずれか1項に記載のエンジンブロック。
【請求項14】
前記樹脂ブロックの前記第1部分は、前記シリンダライナ側の壁面に凹凸が形成されており、
前記凹凸は、前記第2の領域に対応する壁面より前記第1の領域に対応する壁面に多く設けられている、請求項2から13までのいずれか1項に記載のエンジンブロック。
【請求項15】
前記樹脂ブロックの前記第1部分と前記シリンダライナとの間に筒状の金属ブロックを有する、請求項1から14までのいずれか1項に記載のエンジンブロック。
【請求項16】
前記樹脂ブロックの前記第1部分を形成する前記熱硬化性樹脂はフェノール樹脂で構成されている、請求項1から15までのいずれか1項に記載のエンジンブロック。
【請求項17】
前記樹脂ブロックの前記第1部分を形成する前記熱硬化性樹脂の硬化物の熱伝導率は、1.00W/(m・K)以下である、請求項1から16までのいずれか1項に記載のエンジンブロック。
【請求項18】
前記樹脂ブロックの前記第1部分を形成する前記熱硬化性樹脂の硬化物のMD線膨張係数は、前記金属外周面を形成する金属のMD線膨張係数の75%以上125%以下であり、
前記樹脂ブロックの前記第1部分を形成する前記熱硬化性樹脂の硬化物のTD線膨張係数は、前記金属外周面を形成する金属のTD線膨張係数の75%以上125%以下である、請求項1から17までのいずれか1項に記載のエンジンブロック。
【請求項19】
前記樹脂ブロックの前記第1部分を形成する前記熱硬化性樹脂の硬化物の密度は、2.2g/cm以下である、請求項1から18までのいずれか1項に記載のエンジンブロック。
【請求項20】
前記樹脂ブロックの前記第1部分を形成する前記熱硬化性樹脂の硬化物のガラス転移点は160℃以上である、請求項1から19までのいずれか1項に記載のエンジンブロック。
【請求項21】
請求項1から20までのいずれか1項に記載のエンジンブロックを構成する樹脂ブロック。
【請求項22】
請求項1から20までのいずれか1項に記載のエンジンブロックを製造法する方法であって、
シリンダライナの外周面に樹脂ブロックを嵌め込む、エンジンブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンブロック、樹脂ブロック及びエンジンブロックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の二酸化炭素排出量を減らすために、自動車分野では、自動車の軽量化と内燃機関の効率向上が依然として不可欠である。熱効率を向上させるには、燃焼過程で動力に変換されないで捨てられているエネルギー損失を大幅に低減できる新しい技術が必要である。軽量化の観点では、エンジンの軽量化において、アルミニウム合金やマグネシウム合金といった軽金属をエンジン部品として適用するのが主流だったが、樹脂化の実現により大幅な軽量化が見込めるようになっている。
【0003】
非特許文献1には、鉄製のシリンダライナを囲む樹脂を備えるエンジンが開示されている。当該文献において、エンジンの冷却損失は、樹脂がシリンダライナを囲む場合において、アルミニウムがシリンダライナを囲む場合よりも低減することが記載されている。
【0004】
特許文献1及び2には、金属のシリンダライナを囲む樹脂からなるブロックを備え、シリンダライナにウォータジャケットが形成されたエンジンブロックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0159581号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0159582号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】水野 貴大、辻 龍希、藤村 俊夫「1次元シミュレーションを用いたSIエンジンの燃費性能改善予測」日本機械学会東海支部第65期総会・講演会講演論文集(2016年3月17-18日)No.163-1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、シリンダライナを樹脂で囲むことで冷却損失の低減を図るエンジンが提案されているが、近年では一層のエネルギー利用効率の向上が求められており、そのようなエンジンにおいて新たな技術が必要とされていた。
【0008】
本発明の目的は、樹脂ブロックを備えたエンジンブロックにおいて、熱効率を向上させる技術を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、
金属外周面を有するシリンダライナと、
熱硬化性樹脂の硬化物により構成される樹脂ブロックと、
前記シリンダライナより外周側の領域に設けられた冷却用水路と、
を備え、
前記樹脂ブロックは、前記シリンダライナの前記金属外周面側に設けられた第1部分と、前記第1部分より外側に位置する第2部分とを有し、
前記第1部分は、少なくとも前記冷却用水路の前記シリンダライナ側の壁面を構成しており、
前記第1部分が前記壁面を構成している領域において、前記シリンダライナから前記冷却用水路への方向を厚み方向としたときの前記厚み方向の熱抵抗が、ピストンのストローク方向の上死点側の領域と下死点側の領域とで異なる熱抵抗変化部を構成している、
エンジンブロックを提供できる。
本発明によれば、上述のエンジンブロックを構成する樹脂ブロックを提供できる。
本発明によれば、上述のエンジンブロックを製造法する方法であって、
シリンダライナの外周面に樹脂ブロックを嵌め込む、エンジンブロックの製造方法を提供できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂ブロックを備えたエンジンブロックにおいて、熱効率を向上させる技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るエンジンブロック及びシリンダヘッドの分解図である。
図2図1に示したエンジンブロックの製造方法の一例を説明するための図である。
図3図1に示したエンジンブロックの製造方法の一例を説明するための図である。
図4図1に示したエンジンブロックの製造方法の一例を説明するための図である。
図5図1に示したエンジンブロックの製造方法の一例を説明するための図である。
図6】シリンダライナ及び金属ブロックの詳細の一例を説明するための横断面図である。
図7】シリンダライナ及び金属ブロックの詳細の一例を説明するための縦断面図である。
図8】第1部分において異なる熱抵抗を有する構造の一例を説明するための縦断面図である。
図9】第1部分において異なる熱抵抗を有する構造の一例を説明するための縦断面図である。
図10】第1部分において異なる熱抵抗を有する構造の一例を説明するための縦断面図である。
図11】第1部分において異なる熱抵抗を有する構造の一例を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係るエンジンブロック10の斜視図である。ここでは、エンジンブロック10の上側に取り付けられるシリンダヘッドは省いて示し、ガスケット28のみを示している。
【0014】
<エンジンブロック10概要>
図1を用いて、エンジンブロック10の概要を説明する。エンジンブロック10は、シリンダライナ120及び樹脂ブロック200を備えている。図1では便宜的に樹脂ブロック200を墨塗りで示している。以下では、2気筒エンジンのエンジンブロック10について例示する。
【0015】
樹脂ブロック200は、第1部分210及び空隙230を含んでいる。第1部分210は、シリンダライナ120の金属外周面122を覆っている。空隙230は、第1部分210より外側に位置しており、ウォータジャケット232を画定している。
【0016】
上述した構成によれば、シリンダライナ120から発生する熱による樹脂ブロック200の損傷を低減することができる。
【0017】
具体的には、上述した構成においては、樹脂ブロック200の第1部分210は、ウォータジャケット232によって囲まれている。ウォータジャケット232に流れる冷媒(例えば、水)によって樹脂ブロック200の第1部分210の熱損傷を低減することができる。
【0018】
<エンジンブロック10>
図1を用いて、エンジンブロック10の詳細を説明する。
エンジンブロック10は、ブロック部材110、シリンダライナ120、金属ブロック140、突起130及び樹脂ブロック200を備えている。
【0019】
ブロック部材110は、金属(例えば、鋳鉄、アルミニウム合金またはマグネシウム合金)からなっている。図1に示す例において、ブロック部材110は、樹脂ブロック200を支持するためのベースとして機能している。
【0020】
シリンダライナ120は、ブロック部材110に取り付けられている。シリンダライナ120は、ブロック部材110と一体となっていてもよいし、またはブロック部材110に取り付け可能かつ取り外し可能であってもよい。
【0021】
シリンダライナ120は、金属(例えば、鉄またはアルミニウム)からなっている。シリンダライナ120は、金属からなる外周面(すなわち、金属外周面122)を有している。
【0022】
金属ブロック140は、ブロック部材110の一部であり、シリンダライナ120の金属外周面122を覆うように筒状に設けられている。筒状は単一であってもよいし複数連結した構造であってもよい。金属ブロック140のブロック外周面142を覆うように樹脂ブロック200が設けられている。なお、金属ブロック140が省かれて直接シリンダライナ120に樹脂ブロック200が設けられてもよい。
【0023】
突起130は、ブロック部材110からシリンダヘッド(またはガスケット28)に向けて突出している。突起130は、開口132を有している。開口132には、固定具22を挿入可能である。固定具22は、ガスケット28を挟んでシリンダヘッドをエンジンブロック10に固定する。固定具22は、例えば、ボルトにすることができる。
【0024】
<樹脂ブロック200>
樹脂ブロック200は、第1部分210、第2部分220及び空隙230を含んでいる。第2部分220は、空隙230の外側に位置している。空隙230は、第1部分210及び第2部分220の間にある。第1部分210及び第2部分220は、樹脂ブロック200の下方部分で互いに一体となっている。
【0025】
樹脂ブロック200の第1部分210は、例えば接着剤300(図4参照)を介して金属ブロック140のブロック外周面142に取り付けられる。接着剤は、樹脂ブロック200の第1部分210及び金属ブロック140のブロック外周面142の間に位置し、樹脂ブロック200の第1部分210及び金属ブロック140のブロック外周面142を互いに接着する。接着剤は、応力緩和層として機能してもよい。
【0026】
樹脂ブロック200の第1部分210は、接着剤を介さないで金属ブロック140のブロック外周面142と一体的に接合されていてもよい。この場合、樹脂ブロック200の第1部分210及び金属ブロック140のブロック外周面142の間の界面では、樹脂(樹脂ブロック200)及び金属(金属ブロック140)の直接接合が形成される。
【0027】
樹脂ブロック200は上面202を有している。上面202は空隙230を形成する溝を有しており、空隙230がブロック部材110から露出している。このような構造においては、シリンダライナ120の上端及びその近傍における樹脂ブロック200の熱損傷を特に低減することができる。したがって、上述した構造は、金属ブロック140やシリンダライナ120の温度がそれらの上端及びその近傍において特に上昇する場合において特に有意義である。更に、上述した構造においては、空隙230は、樹脂ブロック200を金属ブロック140に取り付ける前だけでなく、樹脂ブロック200を金属ブロック140に取り付けた後であっても、形成可能である。したがって、空隙230を形成するためのプロセスの自由度を高くすることができる。
【0028】
空隙230は、樹脂ブロック200の上面202から露出されていなくてもよく、樹脂ブロック200の内部に存在していてもよい。この場合においても、ウォータジャケット232に流れる冷媒によって樹脂ブロック200の第1部分210の熱損傷を低減することができる。
【0029】
第2部分220は、開口222を有している。樹脂ブロック200は、突起130が第2部分220の開口222を貫通するように、位置している。突起130は、樹脂ブロック200をブロック部材110に取り付けるためのガイドとして機能することができる。
【0030】
<樹脂ブロック200の材料および物性>
樹脂ブロック200の第1部分210及び第2部分220は、熱硬化樹脂の硬化物を含んでいる。言い換えると、樹脂ブロック200は、熱硬化性樹脂からなっている。樹脂ブロック200は、無機フィラー(例えば、ガラス繊維)を更に含んでいてもよい。樹脂ブロック200は、樹脂ブロック200の全重量に対して、例えば50重量%以上の無機フィラーを含んでいてもよい。樹脂ブロック200を形成する熱硬化性樹脂は、例えば、フェノール樹脂にすることができる。
【0031】
樹脂ブロック200を形成する熱硬化性樹脂の熱伝導率は、低くすることができ、例えば、1.00W/m・K以下にすることができる。当該熱伝導率が低いことで、エンジンブロック10の冷却損失を低減することができる。
【0032】
樹脂ブロック200を形成する熱硬化性樹脂の密度は、小さくすることができ、例えば、2.2g/cm以下にすることができる。当該密度が小さいことで、エンジンブロック10を軽量化することができる。
【0033】
樹脂ブロック200を形成する熱硬化性樹脂のガラス転移点は、高くすることができ、例えば、160℃以上、好ましくは200℃以上にすることができる。当該ガラス転移点が高いことで、エンジンブロック10を高温下で使用することができる。
【0034】
樹脂ブロック200を形成する熱硬化性樹脂の線膨張係数は、金属ブロック140のブロック外周面142を形成する金属の線膨張係数と等しくし、または近似させることができる。例えば、樹脂ブロック200を形成する熱硬化性樹脂の機械方向(MD)線膨張係数は、金属ブロック140を形成する金属のMD線膨張係数の75%以上125%以下にしてもよく、樹脂ブロック200を形成する熱硬化性樹脂の横断方向(TD)線膨張係数は、金属ブロック140を形成する金属のTD線膨張係数の75%以上125%以下にしてもよい。樹脂ブロック200を形成する熱硬化性樹脂の線膨張係数及び金属ブロック140を形成する金属の線膨張係数が等しくし、または近似させることで、金属ブロック140及び樹脂ブロック200の双方が加熱された際における金属ブロック140から樹脂ブロック200への応力を緩和することができる。
【0035】
樹脂ブロック200を形成する熱硬化性樹脂のMD線膨張係数及び金属ブロック140を形成する金属のMD線膨張係数のそれぞれは、例えば、10ppm以上40ppm以下にすることができる。
【0036】
樹脂ブロック200を形成する熱硬化性樹脂のTD線膨張係数及び金属ブロック140を形成する金属のTD線膨張係数のそれぞれは、例えば、10ppm以上40ppm以下にすることができる。
【0037】
なお、金属ブロック140が省かれシリンダライナ120に樹脂ブロック200が設けられる場合は、上記の熱硬化性樹脂の線膨張係数はシリンダライナ120との関係で上記値とすることができる。
【0038】
<エンジンブロック10の製造方法>
図2から図5は、図1に示したエンジンブロック10の製造方法の一例を説明するための図である。
【0039】
図2図3及び図5を用いて、エンジンブロック10の製造方法の一例の概要を説明する。まず、図2に示すように、ベースブロック100を形成する。ベースブロック100は、シリンダライナ120及び金属ブロック140を有している。シリンダライナ120は、金属外周面122を有している。金属ブロック140は、シリンダライナ120を囲んでいる。次いで、図3に示すように、ベースブロック100から金属ブロック140の肉厚が薄くなるように一部を除去するように加工する。加工前の金属ブロック140が所望の肉厚であれば除去する加工は不要である。つづいて図5に示すように、金属ブロック140を樹脂ブロック200で囲む。
【0040】
上述したプロセスによれば、金属ブロック140及びシリンダライナ120を樹脂ブロック200で囲むための製造プロセスを低コストで実現することができる。具体的には、上述したプロセスにおいては、金属ブロック140を含むベースブロック100は、既存のエンジンブロックを形成するための既存の設備(例えば、既存のエンジンブロックを形成するための鋳造に用いられる金型)を用いて形成することができる。つまり、金属ブロック140を一部除去加工する場合でも、金属ブロック140が取り除かれたベースブロック100を形成するための新規の設備を設ける必要がない。したがって、金属ブロック140及びシリンダライナ120を樹脂ブロック200で囲むための製造プロセスを低コストで実現することができる。
【0041】
図2から図5を用いて、エンジンブロック10の製造方法の一例の詳細を説明する。
まず、図2に示すように、ベースブロック100を形成する。ベースブロック100は、ブロック部材110、シリンダライナ120及び金属ブロック140を有している。ブロック部材110、シリンダライナ120及び金属ブロック140のそれぞれは、金属からなっている。特に、金属ブロック140は、例えば、鋳鉄、アルミニウム合金またはマグネシウム合金からなっている。
【0042】
ベースブロック100は、シリンダライナ120及び金属ブロック140の間の空隙150を有している。空隙150は、ウォータジャケット152を画定している。ベースブロック100は、既存のエンジンブロック(すなわち、ウォータジャケット152を有するエンジンブロック)を形成するための既存の設備を用いて形成することができる。一例において、ベースブロック100は、鋳造、より具体的には、ダイカストによって形成することができる。この例において、ダイカストに用いられる金型は、既存のエンジンブロックを形成するための金型を用いることができる。
【0043】
ベースブロック100は、開口132を更に有している。図1を用いて説明したように、開口132には、固定具22(図1)を挿入可能である。ベースブロック100は、図3に示す突起130を形成する部分を含んでいる。この部分は、図3に示す工程(金属ブロック140を除去する工程)において、突起130を形成する。
【0044】
次いで、図3に示すように、ベースブロック100から金属ブロック140の一部を除去し肉厚を薄くする。図3に示す例では、金属ブロック140は、シリンダライナ120の周囲に肉厚が薄くなるように加工されるとともに、突起130が形成され、かつ開口132が残るように、除去されている。
【0045】
次いで、図4に示すように、金属ブロック140のブロック外周面142上に接着剤300を形成する。図4に示すように、接着剤300は、突起130の外周面上にも形成してもよい。
【0046】
次いで、図5に示すように、樹脂ブロック200を金属ブロック140に囲むように嵌め込む。樹脂ブロック200は、突起130が樹脂ブロック200の開口222を貫通するように取り付けられる。樹脂ブロック200の第1部分210及び金属ブロック140のブロック外周面142は、接着剤300(図4)を介して互いに接着され、樹脂ブロック200の開口222の内面及び突起130の外周面は、接着剤300(図4)を介して互いに接着される。
【0047】
接着剤300(図4)は形成しなくてもよい。接着剤300を形成しない場合、樹脂ブロック200の第1部分210は、接着剤(例えば、接着剤300(図4))を介さないで金属ブロック140のブロック外周面142と一体的に接合されていてもよい。
【0048】
図5に示す例において、樹脂ブロック200は、第1部分210、第2部分220及び空隙230を含んでいる。空隙230は、ウォータジャケット232を画定している。空隙230は、金属ブロック140を樹脂ブロック200で囲む前に形成されてもよいし、または金属ブロック140を樹脂ブロック200で囲んだ後に形成されてもよい。
【0049】
エンジンブロック10の製造方法は、図2から図5に示した例に限定されない。エンジンブロック10は、以下の例のようにして製造されてもよい。
【0050】
第1に、図2に示したベースブロック100を形成することなく、図3に示したブロック(ブロック部材110、シリンダライナ120及び突起130)を形成してもよい。図3に示したブロックは、鋳造、より具体的には、ダイカストによって形成することができる。この例において、ダイカストに用いられる金型は、図3に示すブロックに沿った形状を有している。
【0051】
第2に、エンジンブロック10をインサート成形によって製造してもよい。この例においては、図3に示したブロック(ブロック部材110(金属ブロック140)、シリンダライナ120及び突起130)を金型内に配置して、樹脂ブロック200を形成する樹脂を金型内に供給する。この例によれば、図4に示した接着剤300を設けることなく、樹脂ブロック200を金属ブロック140に直接的に接合させることができる。接着剤300として、例えば、高放熱1成分縮合型RTVシリコン接着シール剤(熱伝達率:0.83W/mk)を用いることができる。
【0052】
<シリンダライナ120及び金属ブロック140>
図6及び図7は、シリンダライナ120及び金属ブロック140の詳細の一例を説明するための断面図である。図6はシリンダライナ120及び金属ブロック140の横断面を示している。図7はシリンダライナ120及び金属ブロック140の横断面を示している。
【0053】
シリンダライナ120は、鉄層120a及びアルミニウム層120bを含んでいる。鉄層120aは、シリンダライナ120の内周面を形成している。鉄層120aは、鉄及び合金鉄のうちの少なくとも一方を含んでいる。アルミニウム層120bは、鉄層120aの外側に位置しており、金属外周面122を形成している。アルミニウム層120bは、アルミニウム及びアルミニウム合金のうちの少なくとも一方を含んでいる。
【0054】
金属ブロック140は、シリンダライナ120のアルミニウム層120bの周囲を囲むように設けられている。
【0055】
金属ブロック140のブロック外周面142の表面粗さRa(算術平均粗さ)は、例えば、0.2μm以上3.0μm以下にすることができる。
【0056】
金属ブロック140のブロック外周面142は、90°未満の先端角を有する突出部を有しないようにしてもよい。このような突出部は、金属ブロック140及び樹脂ブロック200の熱応力の集中部になり得、樹脂ブロック200のクラックを引き起こし得る。このような突出部がない場合、樹脂ブロック200のクラックを低減することができる。
【0057】
<第1部分210の熱抵抗(1)>
図8図11を参照して、第1部分210の熱抵抗Rtについて、特に、第1部分210の厚みに着目して説明する。図8図11は、それぞれ図7の領域Aを拡大して示した図であり、合計4種類の構造例を説明する。第1部分210がウォータジャケット232の壁面232Aを構成している領域において、シリンダライナ120からウォータジャケット232への方向を厚み方向としたときの厚み方向の熱抵抗Rtが、ピストン190のストローク方向の上死点TDC側の領域と下死点BDC側の領域とで異なる熱抵抗変化部170を構成している。第1部分210の組成や密度が一定とした場合、熱抵抗Rtは第1部分210の厚みtに比例する。
【0058】
図8に示す構造例は、断面視においてウォータジャケット232と第1部分210との境界、すなわちウォータジャケット232の壁面232Aが連続的に変化している連続変化領域211となっており、特に直線状に変化している直線部212を有する。
【0059】
図8(a)の構造は、壁面232Aが断面視で斜め直線状(傾斜)の直線部212であって、第2部分220の厚みtが下死点BDC側より上死点TDC側が厚くなっている。換言すると、熱抵抗変化部170は、図示で上側(上死点TDC側)が熱抵抗Rtの大きい第1の領域171であって、下側(下死点BDC側)が第1の領域171より熱抵抗Rtの小さい第2の領域172と言える。このように第1部分210の厚みtを上死点TDC側を厚くすることで熱抵抗Rtを大きくした構成とすることで、燃料が燃焼室内で燃焼するタイミング(すなわちピストン190が上死点TDC付近にあるとき)において、燃焼時の熱がウォータジャケット232に逃げてしまうことを抑制することで高い熱効率を実現できる。また、厚みtが連続的に直線状に変化するため、熱歪みや熱応力が局所的に集中することを避けることができる。特に、燃焼タイミング(すなわち発熱タイミング)を考慮した場合、ストローク長に対して上死点TDCから30%までの範囲、特に20%までの範囲について、第1の領域171の熱抵抗Rtの設計が重要である。また、上死点TDC側を肉厚にすることで、樹脂ブロック200を金属ブロック140に組み付ける際に組み付け作業が容易になる。
【0060】
図8(b)の構造は、壁面232Aが断面視で斜め直線状であって、第2部分220の厚みtが上死点TDC側より下死点BDC側が厚くなっている。換言すると、熱抵抗変化部170は、図示で下側(下死点BDC側)が熱抵抗Rtの大きい第1の領域171であって、上側(上死点TDC側)が第1の領域171より熱抵抗Rtの小さい第2の領域172と言える。このように第1部分210の厚みtを上死点TDC側を薄くすることで熱抵抗Rtを小さくする構成であるため、燃料が燃焼室内で燃焼するタイミング(すなわちピストン190が上死点TDC付近にあるとき)において、熱をウォータジャケット232に逃がし冷却を促すことができる。燃焼時に燃焼室内の温度が高くなりノッキングが生じやすいエンジンにおいて効果的である。特に、燃焼タイミング(すなわち発熱タイミング)を考慮した場合、ストローク長に対して上死点TDCから30%までの範囲、特に20%までの範囲について、第2の領域172の熱抵抗Rtの設計が重要である。また、厚みtが連続的に直線状に変化するため、熱歪みや熱応力が局所的に集中することを避けることができる。
【0061】
図9に示す構造例は、断面視においてウォータジャケット232と第1部分210との境界、すなわちウォータジャケット232の壁面232Aが連続的に変化している連続変化領域211となっており、特に曲線状に変化している曲線部213を有する。なお、曲線部213として、漸次増加または減少する曲線にかぎらず様々な曲線を採用しうる。
【0062】
図9(a)の構造は、壁面232Aが断面視で上死点TDC側より下死点BDC側が金属ブロック140(すなわちシリンダライナ120)側に曲線状に近づいた構成である。言い換えると、第1部分210の厚みtが下死点BDC側より上死点TDC側が厚くなっており、厚みtの変化が曲線状である。換言すると、熱抵抗変化部170は、図示で上側(上死点TDC側)が熱抵抗Rtの大きい第1の領域171であって、下側(下死点BDC側)が第1の領域171より熱抵抗Rtの小さい第2の領域172と言える。このように第1部分210の厚みtを上死点TDC側を厚くして熱抵抗Rtを大きくした構成とすることで、燃料が燃焼室内で燃焼するタイミング(すなわちピストン190が上死点TDC付近にあるとき)において、燃焼時の熱がウォータジャケット232に逃げてしまうことを抑制することで高い熱効率を実現できる。また、厚みtが連続的に変化するため、熱歪みや熱応力が局所的に集中することを避けることができる。また、厚みtが曲線状に変化することで、燃焼時やその後のシリンダ内温度に応じた最適な断熱/冷却構造を実現できる。
【0063】
図9(b)の構造は、壁面232Aが断面視で下死点BDC側より上死点TDC側が金属ブロック140側に曲線状に近づいた構成である。言い換えると、第1部分210の厚みtが下死点BDC側より上死点TDC側が薄くなっており、厚みtの変化が曲線状である。換言すると、熱抵抗変化部170は、図示で下側(下死点BDC側)が熱抵抗Rtの大きい第1の領域171であって、上側(上死点TDC側)が第1の領域171より熱抵抗Rtの小さい第2の領域172と言える。このように第1部分210の厚みtを上死点TDC側を薄くすることで熱抵抗Rtを小さくする構成であるため、燃料が燃焼室内で燃焼するタイミング(すなわちピストン190が上死点TDC付近にあるとき)において、熱をウォータジャケット232に逃がし冷却を促すことができ、またノッキングの発生を抑制できる。
また、厚みtが連続的に変化するため、熱歪みや熱応力が局所的に集中することを避けることができる。また、厚みtが曲線状に変化することで、燃焼時やその後のシリンダ内温度に応じた最適な断熱/冷却構造を実現できる。
【0064】
図10に示す構造例は、断面視においてウォータジャケット232と第1部分210との境界、すなわちウォータジャケット232の壁面232Aが連続的に変化している連続変化領域211となっており、上死点TDC側の壁面232A1と下死点BDC側の壁面232A2の各断面は、一方が垂直であり、他方が傾斜している。
【0065】
図10(a)の構成は、変化点175より上死点TDC側の壁面232A1が垂直に設けられている。変化点175より下死点BDC側の壁面232A2が下側ほど金属ブロック140側に近づくように傾斜した直線部212(連続変化領域211)を構成し、第2部分220の厚みtが下死点BDC側より上死点TDC側が厚くなっている。変化点175より上死点TDC側を熱抵抗Rtが相対的に大きい第1の領域171、下死点BDC側を熱抵抗Rtが相対的に小さい第2の領域172と言うことができる。このように第1部分210の厚みtを上死点TDC側を厚くすることで熱抵抗Rtを大きくした構成とすることで、燃料が燃焼室内で燃焼するタイミング(すなわちピストン190が上死点TDC付近にあるとき)において、燃焼時の熱がウォータジャケット232に逃げてしまうことを抑制することで高い熱効率を実現できる。
【0066】
図10(b)の構成は、変化点175より上死点TDC側の壁面232A1が上側ほど金属ブロック140側に近づくように傾斜した直線部212(連続変化領域211)を構成し、第2部分220の厚みtが下死点BDC側より上死点TDC側が厚くなっている。変化点175より下死点BDC側の壁面232A2が垂直に設けられている。変化点175より下死点BDC側を熱抵抗Rtが相対的に大きい第1の領域171、上死点TDC側を熱抵抗Rtが相対的に小さい第2の領域172と言うことができる。このように第1部分210の厚みtを上死点TDC側を薄くすることで熱抵抗Rtを小さくする構成であるため、燃料が燃焼室内で燃焼するタイミング(すなわちピストン190が上死点TDC付近にあるとき)において、熱をウォータジャケット232に逃がし冷却を促すことができ、またノッキングの発生を抑制できる。
【0067】
図11に示す構造例は、断面視においてウォータジャケット232と第1部分210との境界、すなわちウォータジャケット232の壁面232Aが非連続(すなわち段差状)に変化している。上死点TDC側の壁面232A1と下死点BDC側の壁面232A2の各断面は、一方が垂直であり、他方が傾斜しており、それらの境界が段差となった非連続部214となっている。言い換えると、図10の構成において、変化点175を段差の非連続部214とした構成といえる。
【0068】
図11(a)の構成は、非連続部214より下死点BDC側の壁面232A1が垂直に設けられている。非連続部214より上死点TDC側の壁面232A2が上側ほど金属ブロック140側から遠くなるように、すなわち肉厚になるように傾斜した直線状に設けられている。非連続部214より上死点TDC側を熱抵抗Rtが相対的に大きい第1の領域171、下死点BDC側を熱抵抗Rtが相対的に小さい第2の領域172と言うことができる。図10と同様の効果を実現でき、また、非連続部214で厚みtを大きく変更できるため、上死点TDC側と下死点BDC側とで要求される熱抵抗Rtが大きく違う場合でも対応が可能である。
【0069】
図11(b)の構成は、非連続部214より上死点TDC側の壁面232A1が垂直に設けられている。非連続部214より下死点BDC側の壁面232A2が下側ほど金属ブロック140側に近づくように傾斜した直線状に設けられている。非連続部214より下死点BDC側を熱抵抗Rtが相対的に大きい第1の領域171、上死点TDC側を熱抵抗Rtが相対的に小さい第2の領域172と言うことができる。図10と同様の効果を実現でき、また、非連続部214で厚みtを大きく変更できるため、上死点TDC側と下死点BDC側とで要求される熱抵抗Rtが大きく違う場合でも対応が可能である。
【0070】
<第1部分210の熱抵抗(2)>
図8図11では、第1部分210の厚みの違いにより第1部分210の熱抵抗Rtに領域によって違いを与えたが、そのほかに、第1部分210の材料により違いを与えることができる。具体的には、第1の領域171と第2の領域172とで、熱伝導率が異なる材料を用いることで実現できる。例えば、第1の領域171では、熱硬化性樹脂の硬化物中の体積当たりの中空比率を高くし熱伝導率を小さくする。すなわち熱抵抗Rtを大きくする。第2の領域172では逆に第1の領域171より中空比率を小さくし熱伝導率を大きくする。すなわち熱抵抗Rtを小さくする。例えば、熱硬化性樹脂の硬化物中に気泡(マイクロバルーン)や中空フィラーを含有させた構成とし、その含有量を調整することで所望の中空比率を実現できる。
【0071】
<第1部分210の熱抵抗(3)>
第1部分210の熱抵抗Rtに領域毎に違いを与えるために、樹脂ブロック200を金属ブロック140(またはシリンダライナ120)に取り付ける際に用いる接着剤300(図4参照)に違いを有してもよい。例えば第2の領域172に対応する壁面より第1の領域171に対応する壁面に、接着剤を多く用いることで、第1の領域171における熱抵抗Rtを第2の領域172の熱抵抗Rtより大きくできる。
【0072】
<第1部分210の熱抵抗(4)>
第1部分210の熱抵抗Rtに領域毎に違いを与えるために、第1部分210の金属ブロック140(またはシリンダライナ120)側の内壁面に凹凸を形成し、第2の領域172に対応する壁面より第1の領域171に対応する壁面に多く設ける。凹凸は、例えば、第1部分210の内壁面に、溝を周回させるように形成する。溝の幅、深さ、数を領域毎に調整することで、所望の熱抵抗Rtを実現できる。これによって、第1の領域171の熱抵抗Rtを第2の領域172より大きくすることができる。
【0073】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。例えば、上記の実施形態では、樹脂ブロック200を2気筒のエンジン(エンジンブロック10)へ適用した例を説明したが、気筒数に拘わらず単気筒のエンジンや3気筒以上のエンジンに適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10 エンジンブロック
20 シリンダヘッド
100 ベースブロック
110 ブロック部材
120 シリンダライナ
120a 鉄層
120b アルミニウム層
122 金属外周面
140 金属ブロック
142 ブロック外周面
150 空隙
152 ウォータジャケット(冷却用水路)
170 熱抵抗変化部
171 第1の領域
172 第2の領域
200 樹脂ブロック
210 第1部分
211 連続変化領域
212 直線部
213 曲線部
220 第2部分
230 空隙
232 ウォータジャケット(冷却用水路)
232A 壁面
300 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11