(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189381
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】配管温度調節システム及び配管温度調節方法
(51)【国際特許分類】
B67D 1/08 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
B67D1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097931
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 亮多
(72)【発明者】
【氏名】中川 大雅
(72)【発明者】
【氏名】楠田 樹大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 ひかり
【テーマコード(参考)】
3E082
【Fターム(参考)】
3E082AA02
3E082BB01
3E082EE02
(57)【要約】
【課題】送液配管の温度を調節することができる配管温度調節システム及び配管温度調節方法を提供する。
【解決手段】配管温度調節システムは、送液配管13と、送液配管13との間に筒状空間Sを形成するように送液配管13を包囲する断熱カバー2と、筒状空間S内において送液配管13に沿って配置され、熱交換媒体が流れる熱交換流路51と、熱交換流路51に熱交換媒体を供給するポンプ81とを備える。送液配管13を筒状空間Sで包囲し、筒状空間Sにおいて熱交換流路51を介して熱交換媒体を流動させることにより、筒状空間S内の雰囲気温度を調節し、これによって送液配管13の温度を調節する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送液配管の温度を調節するための配管温度調節システムであって、
前記送液配管との間に筒状空間を形成するように前記送液配管を包囲する断熱カバーと、
前記筒状空間内において前記送液配管に沿って配置され、熱交換媒体が流れる熱交換流路と、
前記熱交換流路に熱交換媒体を供給するポンプと、
を備える配管温度調節システム。
【請求項2】
前記筒状空間内の雰囲気温度を検出する温度センサと、
前記熱交換流路に供給される熱交換媒体の温度を調節する温度調節装置と、
前記温度センサによって検出される前記筒状空間内の雰囲気温度が予め設定された目標温度になるように、前記温度調節装置及び前記ポンプを制御する制御部と、
をさらに備える請求項1に記載の配管温度調節システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記熱交換流路に供給される熱交換媒体の温度を、前記断熱カバーの外部環境と前記筒状空間との間の熱移動量が、前記熱交換流路内の熱交換媒体と前記筒状空間との間の熱移動量よりも小さくなる温度に調節するように、前記温度調節装置を制御する、請求項2に記載の配管温度調節システム。
【請求項4】
前記熱交換流路に接続された媒体貯留タンクをさらに備え、
前記ポンプは、熱交換媒体を前記熱交換流路と前記媒体貯留タンクとの間で循環させるように構成され、
前記温度調節装置は、前記媒体貯留タンク内に貯留されている熱交換媒体の温度を調節するように構成されている、請求項2又は3に記載の配管温度調節システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記温度センサによる検出温度が、前記目標温度よりも低い予め設定された下限温度まで低下した場合に、前記熱交換流路への熱交換媒体の供給を停止し、且つ、
熱交換媒体の供給が停止した後、前記温度センサによる検出温度が、前記下限温度よりも高く且つ前記目標温度以下である予め設定された上限温度まで上昇した場合に、前記熱交換流路への熱交換媒体の供給を再開するように、
前記ポンプを制御する、請求項2から4のいずれか一項に記載の配管温度調節システム。
【請求項6】
前記熱交換流路は、
熱交換媒体を前記断熱カバーの長手方向における一端側から他端側に流す第一区間と、
熱交換媒体を前記断熱カバーの前記他端側から前記一端側に流す第二区間と、
を有するように構成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の配管温度調節システム。
【請求項7】
前記熱交換流路の前記第一区間及び前記第二区間は、前記送液配管を挟んで互いに反対側に位置するように配置されている、請求項6に記載の配管温度調節システム。
【請求項8】
送液配管を筒状空間で包囲し、前記筒状空間において熱交換流路を介して熱交換媒体を流動させる、配管温度調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料充填装置において飲料を貯留タンクから充填機に送液する送液配管の温度を調節するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記飲料充填装置による充填工程において、ポンプによって貯留タンクから送り出された飲料は、充填工程の完了に伴ってポンプが停止した際に送液配管内に残留してしまうことがある。
【0003】
送液配管内の残留飲料について、従来では、圧縮空気又は水等の流体を送液配管に送り込むことによって押し出す(ブローする)ようにしている。この場合、押し出された残留飲料は、ブロー用流体との接触によって純度や風味が低下するため、再利用することなく廃棄され、充填工程におけるロスとなる。
【0004】
一方、充填装置として、貯留タンクと充填機との間で循環系が形成されたものが知られている(特許文献1)。このような充填装置によれば、送液配管内の残留飲料を循環させて貯留タンクに戻すことが可能であるが、循環中に空気に触れることによって飲料の風味が低下する問題がある。
【0005】
したがって、風味の低下やロスとなることを回避する観点から、送液配管内の残留飲料は、次回の充填工程が行われるまでに送液配管内に一時的に貯留しておくことが好適とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
飲料を送液配管に貯留するにあたり、風味が低下しないように飲料の温度を適温に維持することが重要である。ところで、送液配管の外部環境の気温は、天候や送液配管の設置場所によっては飲料の保存に適していない場合がある。この場合、外部環境との熱交換によって送液配管内の飲料の温度が外気温に近づいていくことで、飲料の風味が低下してしまう虞がある。
【0008】
そこで、外気温の影響によって飲料の風味が低下しないように、送液配管に貯留されている飲料の温度を適切に管理する技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述したような問題点を解決するためになされたものであり、送液配管に貯留されている飲料が適温に維持されるように、送液配管の温度を調節することができる配管温度調節システム及び配管温度調節方法の提供を目的としている。
【0010】
上述の目的を達成するための本発明に係る配管温度調節システムの特徴は、
送液配管との間に筒状空間を形成するように前記送液配管を包囲する断熱カバーと、
前記筒状空間内において前記送液配管に沿って配置され、熱交換媒体が流れる熱交換流路と、
前記熱交換流路に熱交換媒体を供給するポンプと、
を備える点にある。
【0011】
熱交換流路を流れる熱交換媒体と筒状空間との間の熱交換により、筒状空間内の雰囲気温度が調節され、その結果、筒状空間内に配置されている送液配管の温度が調節される。したがって、本構成によれば、熱交換媒体を熱交換流路に供給することで、送液配管内の飲料を風味が低下しない適温に維持することができる。これにより、飲料を送液配管内に一時的に貯留しておき、後に再利用することが可能となるため、廃棄によるロスを回避することができる。また、断熱カバーの設置によって、筒状空間と外部環境との間の熱交換が抑制され、外気温による筒状空間内の雰囲気温度への影響が軽減するので、雰囲気温度の調節が容易となる。
【0012】
熱交換流路を送液配管に接触させて送液配管との間の直接的な熱交換によって送液配管の温度を調節するような構成も考えられるが、このような構成では、熱交換が均等に行われるように熱交換流路を送液配管の外周に巻き付けるなどして接触面積を増やす必要があるため、熱交換流路を長く設けなければならない。この場合、熱交換流路が長くなる分、熱交換媒体の使用量が増加するだけでなく、圧力損失が大きくなるので熱交換媒体を流動させるためのポンプの消費電力も増大してしまう。これに対し、本構成では筒状空間内の雰囲気を介して送液配管の温度を調節するため、熱交換流路をより短いものとすることができ、その結果、熱交換媒体の使用量が少なくて済み、また、熱交換媒体の送液が容易であるのでポンプの消費電力を抑えることができ、環境への負荷が小さい。
【0013】
本発明に係る配管温度調節システムにおいて、
前記筒状空間内の雰囲気温度を検出する温度センサと、
前記熱交換流路に供給される熱交換媒体の温度を調節する温度調節装置と、
前記温度センサによって検出される前記筒状空間内の雰囲気温度が予め設定された目標温度になるように、前記温度調節装置及び前記ポンプを制御する制御部と、
をさらに備えると好適である。
【0014】
熱交換流路を熱交換媒体が流れることによって生じる筒状空間内の雰囲気温度の変化量は、主に熱交換媒体の温度及び流量に応じて決まる。本構成によれば、温度センサによって検出された筒状空間内の現在の雰囲気温度と目標温度との差が小さくなるように熱交換媒体の温度及び流量を調節し、これによって筒状空間内の雰囲気温度を目標温度に調節することができる。
【0015】
本発明に係る配管温度調節システムにおいて、前記制御部は、前記熱交換流路に供給される熱交換媒体の温度を、前記断熱カバーの外部環境と前記筒状空間との間の熱移動量が、前記熱交換流路内の熱交換媒体と前記筒状空間との間の熱移動量よりも小さくなる温度に調節するように、前記温度調節装置を制御すると好適である。
【0016】
断熱カバーの外部環境と筒状空間との間の熱移動量が、熱交換流路内の熱交換媒体と筒状空間との間の熱移動量よりも小さいということは、外部環境よりも熱交換媒体が筒状空間内の雰囲気温度に対して大きな影響を与えること、すなわち筒状空間内の雰囲気温度は熱交換媒体の温度に近づくように変化することを意味する。したがって、本構成によれば、外気温にかかわらず筒状空間内の雰囲気温度を目標温度に調節することができる。
【0017】
本発明に係る配管温度調節システムにおいて、
前記熱交換流路に接続された媒体貯留タンクをさらに備え、
前記ポンプが、熱交換媒体を前記熱交換流路と前記媒体貯留タンクとの間で循環させるように構成され、
前記温度調節装置が、前記媒体貯留タンク内に貯留されている熱交換媒体の温度を調節するように構成されていると好適である。
【0018】
本構成では、熱交換媒体は媒体貯留タンクと熱交換流路との間で循環して再利用される。熱交換流路を通った熱交換媒体を系外に排出して新たな熱交換媒体を系内に導入する場合と比べて、熱交換媒体の消費量を低減させてシステムの運転コストを抑えることができる。また、媒体貯留タンクを設けてその内部の熱交換媒体に対して温度調節を行う本構成によれば、熱交換媒体の所望の温度への調節及び維持が容易になる。
【0019】
本発明に係る配管温度調節システムにおいて、
前記制御部が、
前記温度センサによる検出温度が、前記目標温度よりも低い予め設定された下限温度まで低下した場合に、前記熱交換流路への熱交換媒体の供給を停止し、且つ、
熱交換媒体の供給が停止した後、前記温度センサによる検出温度が、前記下限温度よりも高く且つ前記目標温度以下である予め設定された上限温度まで上昇した場合に、前記熱交換流路への熱交換媒体の供給を再開するように、
前記ポンプを制御すると好適である。
【0020】
本構成は、筒状空間内の雰囲気温度が目標温度よりも高い場合に、低温の熱交換媒体を熱交換流路に供給することによって筒状空間を冷却させて雰囲気温度を低下させるための構成である。低温の熱交換媒体の供給により、筒状空間内の雰囲気温度が目標温度を超えて低下することがあるところ、本構成では、目標温度よりも低い下限温度を設け、温度センサによって検出された雰囲気温度が下限温度に到達すると熱交換媒体の供給を停止するようにしている。これにより、雰囲気温度が必要以上に下げられることを回避し、運転コストを抑えることができる。
【0021】
また、本構成では、下限温度よりも高く且つ目標温度以下である上限温度を設け、温度センサによって検出された雰囲気温度が上限温度に到達すると熱交換媒体の供給を再開するようにしている。熱交換媒体の供給の再開によって筒状空間は再び冷却されるので、雰囲気温度が目標温度を超えて上昇してしまうことを防止することができる。
【0022】
本発明に係る配管温度調節システムにおいて、
前記熱交換流路が、
熱交換媒体を前記断熱カバーの長手方向における一端側から他端側に流す第一区間と、
熱交換媒体を前記断熱カバーの前記他端側から前記一端側に流す第二区間と、
を有するように構成されていると好適である。
【0023】
熱交換媒体による温度調節効果は、熱交換流路を進むにつれ弱くなる。熱交換媒体を断熱カバーの長手方向における一端側から他端側に流す区間のみを有する熱交換流路と比べて、本構成の熱交換流路によれば、筒状空間の長手方向にわたって温度調節が比較的均一に行われるため、雰囲気温度にむらが生じることを抑えることができる。
【0024】
本発明に係る配管温度調節システムにおいて、前記熱交換流路の前記第一区間及び前記第二区間が、前記送液配管を挟んで互いに反対側に位置するように配置されていると好適である。
【0025】
本構成によれば、熱交換流路の第一区間及び第二区間によって送液配管の対向する両側の雰囲気温度を調節することができるので、送液配管の周りの雰囲気温度をより早く目標温度に調節することができる。
【0026】
上述の目的を達成するための本発明に係る配管温度調節方法の特徴は、送液配管を筒状空間で包囲し、前記筒状空間において熱交換流路を介して熱交換媒体を流動させる点にある。
【0027】
熱交換流路を流れる熱交換媒体と筒状空間との間の熱交換により、筒状空間内の雰囲気温度が調節され、その結果、筒状空間内に配置されている送液配管の温度が調節される。したがって、本構成によれば、熱交換媒体を熱交換流路に供給して筒状空間内の雰囲気温度を調節することで、送液配管に貯留されている飲料の温度を適温に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る配管温度調節システムを装備した充填装置の模式的構造図である。
【
図2】
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【
図3】外気温及び雰囲気温度の変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る配管温度調節システムは、送液配管の温度を調節するためのものである。以下、温度調節の対象として、飲料充填装置における送液配管を用い、本発明に係る配管温度調節システムの構成を詳細に説明する。なお、飲料充填装置に限らず、送液配管を備えた装置であれば、本発明を適用することができる。
【0030】
<飲料充填装置の構成>
図1は、本発明に係る配管温度調節システムを装備した飲料充填装置の模式的構造図である。
図1に示すように、飲料充填装置には、先の工程において生産された飲料を貯留する飲料貯留タンク11と、飲料を容器に充填する充填機12と、飲料貯留タンク11及び充填機12を接続して飲料貯留タンク11内の飲料を充填機12に送液する送液配管13と、が備えられている。図示しないが、送液配管13には、飲料貯留タンク11から飲料を吸引するポンプ、飲料の流量を調節するバルブ、及び飲料の流量を検出する流量センサ等が配設されている。送液配管13は、飲料貯留タンク11からの飲料を一時的に貯留しておくためにも使用される。
【0031】
<配管温度調節システムの構成>
図1及び
図2に示すように、配管温度調節システムは、断熱カバー2と、媒体貯留タンク3と、温度調節装置4と、媒体流路5と、制御部6とを備える。
【0032】
断熱カバー2は、中空部を有する円筒状のものである。断熱カバー2は、飲料充填装置の送液配管13が中空部の略中心に位置するように、送液配管13を包囲して配置され、送液配管13との間に略筒状の空間Sを形成している。断熱カバー2は、筒状空間Sと外部環境との熱交換を抑制する断熱材からなり、断熱材としては、ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム等の発泡系素材が使用されるが、これに限られない。また、断熱カバー2は、例えば2つの半円筒状の部材を組み合わせて構成されるが、2つより多い部材から構成されてもよい。
【0033】
図1において、断熱カバー2の長手方向における両端部は、便宜上、開放状態で示されているが、筒状空間Sへの空気の出入りを抑制するように、実際には、断熱カバー2と一体の部材、又は、断熱カバー2の端部に取り付けられた別個の部材によって閉じられている。また、筒状空間Sには、その雰囲気温度を検出する温度センサ7が配置されている。本実施形態では、断熱カバー2における充填機12側の端部に一つの温度センサ7を設けているが、これに限られない。温度センサ7は、断熱カバー2内の、飲料貯留タンク11側の端部を含む任意の位置に配置されてもよく、また、複数設けられてもよい。
【0034】
媒体貯留タンク3には、筒状空間Sと熱交換するための熱交換媒体が貯留されている。熱交換媒体の種類は特に限定されず、目標とする温度調節の条件に応じて選択すればよいが、例えば、水、油、フロン類冷媒等の液体媒体や、空気、二酸化炭素等の気体媒体が挙げられる。媒体貯留タンク3には温度調節装置4が接続されており、温度調節装置4は、媒体貯留タンク3に設けられた不図示の温度センサから、媒体貯留タンク3内の熱交換媒体の現在の温度を示す信号を受信すると共に、制御部6から、目標となる熱交換媒体の温度(後述の必要温度)を示す信号を受信し、これら信号に基づいて媒体貯留タンク3内の熱交換媒体に対する温度調節を行う。温度調節装置4は、例えば冷凍機やヒータが挙げられるが、これに限られない。
【0035】
媒体流路5は、熱交換媒体が流れる流路であり、熱交換流路51と、循環流路52とを有する。熱交換流路51は、筒状空間S内において送液配管13に沿って配置されており、熱交換媒体が断熱カバー2の長手方向における一端側と他端側との間を一往復するように、熱交換媒体を断熱カバー2の一端側から他端側に流す第一区間511と、熱交換媒体を断熱カバー2の他端側から一端側に流す第二区間513と、第一区間511及び第二区間513を接続する折り返し区間である第三区間512とから構成される。第一区間511及び第二区間513は、送液配管13を挟んで互いに反対側に位置するように配置されている。熱交換流路51は、内部の熱交換媒体と筒状空間Sとの間の熱交換が効率よく行われるように、ステンレス鋼、銅やアルミニウムなどの熱伝導率の高い材料からなる配管で構成される。
【0036】
本実施形態において、熱交換流路51は、断熱カバー2及び送液配管13のいずれとも接触しないように配置されているが、この限りではない。熱交換流路51は、断熱カバー2及び送液配管13のいずれか又は両方と少なくとも部分的に接触するように配置されていてもよい。また、本実施形態において、熱交換流路51は、熱交換媒体の流れの始点及び終点が断熱カバー2における飲料貯留タンク11側の端部にあるように配置されているが、熱交換媒体の流れの始点及び終点が断熱カバー2における充填機12側の端部にあるように配置されてもよい。
【0037】
循環流路52は、熱交換媒体が循環する閉回路を形成するように、媒体貯留タンク3と熱交換流路51とを接続する。循環流路52には、熱交換媒体を循環させる動力源となるポンプ81、流量弁82、及び不図示の流量センサ等が配設されている。
【0038】
制御部6は、温度センサ7による検出結果を信号として受信し、また、温度調節装置4及びポンプ81に対して制御信号を送信するように、これら要素に接続されている。制御部6は、送液配管13に飲料が一時的に貯留されている場合に、送液配管13内の飲料が適温に維持されるように、送液配管13を包囲する筒状空間Sの雰囲気温度に対する温度調節を制御する。
【0039】
以下、外気温が飲料の適温よりも高い場合を例に、制御部6によって行われる制御を説明する。
【0040】
<熱交換媒体の温度に対する制御>
上記の場合、熱交換媒体としては、筒状空間Sを冷却する冷却媒体、例えば冷水が使用され、温度調節装置4は、例えば冷凍機である。温度調節装置4は、制御部6による制御に応じて、媒体貯留タンク3に貯留されている冷水を所定の必要温度に調節する。ここで、必要温度とは、当該温度の冷水が熱交換流路51を流れることで、筒状空間Sの雰囲気温度が、飲料の適温以下である所定の温度(以下、目標温度)に調節され、これにより、送液配管13内の飲料が適温に維持される温度を意味する。冷却媒体の必要温度は、以下の数式を用いて算出される。
【0041】
【数1】
数式1は、外部環境から筒状空間Sへの熱移動量を求めるためのものであり、数式1において、θ
rは外気温(℃)を示し、T
1は目標温度(℃)を示し、αは表面の熱伝達率(W/m
2・K)を示し、OD
1は断熱カバー2の外径(m)を示し、ID
1は断熱カバー2の内径(m)を示し、λ
1は断熱カバー2の熱伝導率(W/m・K)を示し、lnは自然対数を示し、m
1は断熱カバー2の長さ(m)を示す。
【数2】
数式2は、筒状空間Sから熱交換流路51内への熱移動量を求めるためのものであり、数式2において、T
1は目標温度(℃)を示し、T
2は必要温度(℃)を示し、αは表面の熱伝達率(W/m
2・K)を示し、OD
2は熱交換流路51の外径(m)を示し、ID
2は熱交換流路51の内径(m)を示し、λ
2は熱交換流路51の熱伝導率(W/m・K)を示し、lnは自然対数を示し、m
2は熱交換流路51の長さ(m)を示す。
必要温度T
2は、Q
1<Q
2となる温度である。
【0042】
熱交換流路51に、必要温度以下の冷水が供給され続けると、断熱カバー2の外部環境と筒状空間Sとの間、及び熱交換流路51と筒状空間Sとの間にそれぞれ熱交換が生じるが、外部環境と筒状空間Sとの間の熱移動量Q1が、熱交換流路51と筒状空間Sとの間の熱移動量Q2よりも小さいことから、筒状空間S内の雰囲気温度は、経時的に低下してやがて目標温度に到達する。
【0043】
なお、熱交換流路51内の冷水の温度は、常に一定ではなく、筒状空間Sとの間の熱交換に伴って上昇していく。したがって、実際には、熱交換流路51を流れている間の温度の上昇幅と同程度又はそれ以上に、熱交換流路51に供給される冷水の温度を低く設定する必要がある。
【0044】
<熱交換媒体の流量に対する制御>
熱交換流路51への冷水の供給は、連続的とすることができる。この場合、ポンプ81は、制御部6による制御に応じて、熱交換流路51を流れている間に冷水の温度が必要温度を上回らないように、冷水の流量を調節する。なお、冷水の温度は、熱交換流路51に配設された不図示の温度センサによって検出され、信号として制御部6に送信され得る。
【0045】
また、熱交換流路51への冷水の供給は、パルス的とすることもできる。
図3は、L1で示される外気温及びL2で示される雰囲気温度の変化の一例を示すグラフである。送液配管13の設置場所によっては、外気温が一定でない、例えば
図3のL1に示すように時刻に応じて変化する場合がある。外気温の変化に追従して冷水の温度を調節すると、システムの負担が大きくなるので、このような場合では、上記数式1における外気温θ
rを予想される最高温度以上の温度に設定して必要温度を算出し、これに合わせて冷水の温度を調節することが好適である。
【0046】
ところで、このように算出された必要温度の冷水を熱交換流路51に連続的に供給すると、筒状空間S内の雰囲気温度は目標温度を超えて低下することになり、運転コストの無駄につながる。そこで、雰囲気温度が必要以上に冷却されないように、熱交換流路51への冷水の供給をパルス的とする。
【0047】
具体的には、
図3におけるL2に示すように、冷水の供給に伴って温度センサ7によって検出された筒状空間S内の雰囲気温度が低下していくところ、制御部6は、雰囲気温度が目標温度よりも低い予め設定された下限温度まで低下した場合に、熱交換流路51への冷水の供給を停止するようにポンプ81を制御する。そして、冷水の供給が停止した後、温度センサ7によって検出された筒状空間S内の雰囲気温度が、下限温度よりも高く且つ目標温度以下である予め設定された上限温度まで上昇した場合に、熱交換流路への冷水の供給を再開するようにポンプを制御する。このように、雰囲気温度を概ね上限温度と下限温度との間に制御することで、雰囲気温度を目標温度以下に保ちつつも、必要以上に雰囲気温度が下げられることを回避することができる。なお、制御部6は、ポンプ81の代わりに又はポンプ81に加えて、流量弁82を制御してもよい。
【実施例0048】
以下、気温が
図3におけるL1で示されるように変化する屋外に配置された送液配管13を例に本発明による温度調節を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
本実施例では、筒状空間S内の雰囲気温度の目標温度を、送液配管13内に貯留されている飲料の適温より低い23℃に設定する。また、外気温については、予想される最高気温よりも高い40℃に設定する。使用される送液配管13、断熱カバー2、熱交換流路51の詳細は次の通りである。
【0050】
<送液配管>
・内径:54.9mm
・外径:60.5mm
・構成材料:ステンレス304
<断熱カバー>
・内径:114.3mm
・外径:164.3mm
・長さ:300m
・構成材料:発泡ウレタンフォーム
・熱伝導率:0.022W/m・K
・表面の熱伝達率:7W/m2・K
<熱交換流路>
・内径:16.1mm
・外径:21.7mm
・長さ:600m
・構成材料:ステンレス304
・熱伝導率:16.7W/m・K
・表面の熱伝達率:7W/m2・K
・熱交換媒体:冷水
【0051】
上述した数式1に基づいて求められた、外部環境から断熱カバー2内の筒状空間Sへの熱移動量Q1は、1757.49W(1513.63Kcal/h)であり、上述した数式2に基づいて求められた、筒状空間Sから熱交換流路51内への熱移動量Q2は、285.937×(23-T2)である。そして、熱移動量Q1<熱移動量Q2となるための必要温度T2は、<約16.85℃である。
【0052】
媒体貯留タンク3に貯留されている冷水を、冷凍機である温度調節装置4によって必要温度T2に調節する。熱交換流路51には、必要温度T2に調節された冷水を、ポンプ81によって100(L/h)~300(L/h)の流量で供給する。冷水の供給により雰囲気温度が21℃まで低下すると、ポンプ81による冷水の供給を停止する。そして、冷水の供給が停止した後、筒状空間S内の雰囲気温度が再び上昇して22℃まで到達すると、ポンプ81による冷水の供給を再開する。これにより、筒状空間S内の雰囲気温度が21℃である下限温度と22℃である上限温度との間に維持する。
【0053】
〔別実施形態〕
(1)前述した実施形態では、筒状空間S内の雰囲気温度が低下するように熱交換媒体の温度及び流量を制御している。しかし、筒状空間S内の雰囲気温度が上昇するように熱交換媒体の温度及び流量を制御してもよい。すなわち、本発明は、送液配管を外気温よりも高い温度に調節する場合にも適用可能である。
【0054】
(2)前述した実施形態では、熱交換流路は、断熱カバーの長手方向における一端側と他端側との間を一往復するように配置されている。しかし、熱交換流路は、折り返すことなく断熱カバーの一端側から他端側に延びるように、すなわち熱交換媒体を断熱カバーの一端側から他端側に流す区間のみを有するように配置されてもよい。また、熱交換流路は、断熱カバーの一端側と他端側との間を複数回往復するように配置されてもよい。
【0055】
(3)前述した実施形態では、断熱カバー内に1本のみの熱交換流路を配置している。しかし、断熱カバー内には、互いに接続されていない熱交換流路を複数本配置してもよい。この場合、複数本の熱交換流路は、熱交換媒体の流れ方向が同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0056】
(4)前述した実施形態では、熱交換流路と媒体貯留タンクとの間に、熱交換媒体の循環系が構成されている。しかし、断熱カバーを通過した熱交換媒体を循環させることなく排出するようにしてもよい。
【0057】
(5)前述した実施形態では、飲料が貯留されている送液配管を対象に温度調節を行っていた。しかし、飲料が流れている送液配管を対象に温度調節を行ってもよい。また、本発明は、液体に限らず、気体や固体用の配管を対象とする温度調節にも適用可能である。