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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189383
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
G03G15/20 555
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097933
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】光岡 徹典
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033AA41
2H033BA25
2H033BA31
2H033BB17
2H033BE03
2H033CA07
2H033CA23
2H033CA27
2H033CA46
(57)【要約】
【課題】供給する電力量を自在に調整することができる定着装置を提供する。
【解決手段】定着装置は、回転可能に設けられた定着ローラ171および加圧ローラ174と、定着ローラ171を加熱する熱源172aと、熱源172aへ供給する交流電力を制御する制御部50とを備え、定着ローラ171と加圧ローラ174とで挟持搬送した用紙上に未定着画像を定着させる。制御部50は、予め設定された制御周期中において、半波単位で位相角が異なる通電波形を含む通電を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられた定着部材および加圧部材と、
前記定着部材を加熱する熱源と、
前記熱源へ供給する交流電力を制御する制御部とを備え、
前記定着部材と前記加圧部材とで挟持搬送した用紙上に未定着画像を定着させる定着装置であって、
前記制御部は、予め設定された制御周期中において、半波単位で位相角が異なる通電波形を含む通電を行うこと
を特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記制御部は、前記制御周期と隣り合う前記制御周期との継ぎ目において、前記通電波形を連続させること
を特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の定着装置であって、
前記制御部は、前記制御周期中において、前記通電波形を連続させること
を特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の定着装置であって、
前記通電波形は、互いに重複しない位相角の範囲が設定された複数のグループのうちのいずれかに分類されており、
前記制御部は、前記制御周期中において、それぞれ異なるグループに属する前記通電波形同士を連続させた一群を設けること
を特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項4に記載の定着装置であって、
前記通電波形における位相角は、90度以下である場合に低位相角とされ、90度を超え120度以下である場合に中位相角とされ、120度を超え180度未満である場合に高位相角とされていること
を特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の定着装置であって、
前記制御部は、前記制御周期と隣り合う前記制御周期との継ぎ目において、隣接する前記通電波形の実効電圧の差を所定の値以下にすること
を特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の定着装置であって、
前記制御部は、前記制御周期毎に実効電圧を制御しており、現在の制御周期全体の実効電圧と次の制御周期全体の実効電圧との差を所定の値以下にすること
を特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1つに記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙上に未定着画像を定着させる定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置では、未定着のトナー像(未定着画像)が形成された用紙を加圧および加熱することで、トナー像の定着が行われる。定着装置に設けられたヒータでは、供給電力が大きいと突入電流が過大になって、電源系統に電圧変動フリッカを発生させることがあった。これを低減するため、ヒータの制御方法として、位相制御を用いたものがある(例えば、特許文献1ないし特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-268447号公報
【特許文献2】特開2004-191710号公報
【特許文献3】特開平10-162935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電子写真装置(画像形成装置)は、ヒータと、交流電源と、制御手段とを備える。そして、ヒータへ電源を供給する際、ヒータへの通電を指定位相角にて一定時間保持させた後、指定位相角よりも大きい位相角にて一定時間保持する制御を複数回繰り返してから全点灯させる。また、ヒータへの電源供給をオフする際、ヒータへの通電を指定位相角にて一定時間保持させた後、指定位相角よりも小さい位相角にて一定時間保持する制御を複数回繰り返してから全消灯させる。
【0005】
特許文献2に記載の画像形成装置は、ヒータと、定着部材と、温度検知手段と、制御手段とを備え、制御手段は、ヒータのON時に、交流電力をソフトスタート方式で位相制御し、所定のデューティ比で所定時間だけ位相制御を続けた後、所定のデューティ比と同じデューティ比の半波制御に切り替える。
【0006】
特許文献3に記載の画像形成装置は、ヒータの初期通電時の電気抵抗値に基づいて電圧-時間変化線を予め設定し、ヒータに実際に印加する電圧が所定の許容電圧範囲内に収まるように、位相制御信号を出力する位相制御手段と、位相制御信号に基づいてヒータに電圧を印加する電圧印加手段とを備える。
【0007】
近年、画像形成装置は、オフィスや家庭、店舗など様々な場所に設置されているが、ヒータのオン/オフに同期した電圧変動が、他の設置された機器に影響を与えることがあった。例えば、照明機器(以下、照明と称する)においては、電圧変動によって照度が変化し、ちらつきとしてユーザに不快感を与えることがあった。また、制御周期を設定した制御方法においては、制御周期の切り替わり時などに電力を変更する際にも、電圧変動が生じていた。
【0008】
上述した特許文献1ないし特許文献3では、制御周期中において、位相角を調整した半波波形を組み合わせることについて言及されておらず、供給する電力量を緻密に調整することができないという課題がある。また、位相角が大きい波形の多用は、高調波ノイズの増加をもたらし、特に、高次高調波成分が多いと、周辺機器の誤動作や焼損など重大な影響を及ぼす虞がある。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、供給する電力量を自在に調整することができる定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る定着装置は、回転可能に設けられた定着部材および加圧部材と、前記定着部材を加熱する熱源と、前記熱源へ供給する交流電力を制御する制御部とを備え、前記定着部材と前記加圧部材とで挟持搬送した用紙上に未定着画像を定着させる定着装置であって、前記制御部は、予め設定された制御周期中において、半波単位で位相角が異なる通電波形を含む通電を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る定着装置では、前記制御部は、前記制御周期と隣り合う前記制御周期との継ぎ目において、前記通電波形を連続させる構成としてもよい。
【0012】
本発明に係る定着装置では、前記制御部は、前記制御周期中において、前記通電波形を連続させる構成としてもよい。
【0013】
本発明に係る定着装置では、前記通電波形は、互いに重複しない位相角の範囲が設定された複数のグループのうちのいずれかに分類されており、前記制御部は、前記制御周期中において、それぞれ異なるグループに属する前記通電波形同士を連続させた一群を設ける構成としてもよい。
【0014】
本発明に係る定着装置では、前記通電波形における位相角は、90度以下である場合に低位相角とされ、90度を超え120度以下である場合に中位相角とされ、120度を超え180度未満である場合に高位相角とされている構成としてもよい。
【0015】
本発明に係る定着装置では、前記制御部は、前記制御周期と隣り合う前記制御周期との継ぎ目において、隣接する前記通電波形の実効電圧の差を所定の値以下にする構成としてもよい。
【0016】
本発明に係る定着装置では、前記制御部は、前記制御周期毎に実効電圧を制御しており、現在の制御周期全体の実効電圧と次の制御周期全体の実効電圧との差を所定の値以下にする構成としてもよい。
【0017】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る定着装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、位相角が互いに異なる複数の通電波形を、1つの制御周期中に含むことで、供給する電力量を自在に調整することができ、極端な電圧差の発生を避けつつ、波形の歪みによる高調波ノイズを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置を示す概略側面図である。
図2】定着装置の要部を抜き出して示す模式側面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図4】画像形成装置に供給される交流電力と、設置場所の照明との関係を示す説明図である。
図5】位相制御における電圧の変化を示す説明図である。
図6】位相制御における通電パターンを示す説明図である。
図7】従来のデューティ制御における電圧の変化を示す説明図である。
図8】本発明の実施の形態に係る画像形成装置での第1電圧制御の一例を示す説明図である。
図9】本発明の実施の形態に係る画像形成装置での第2電圧制御の一例を示す説明図である。
図10】画像形成装置での制御フローを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る画像形成装置および定着装置について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置を示す概略側面図である。
【0022】
画像形成装置1は、外部から伝達された画像データに応じて、所定の用紙に対して多色および単色の画像を形成し、露光装置11、現像装置12、感光体ドラム13、クリーナ装置14、帯電器15、中間転写ベルト装置16、定着装置17、給紙カセット18、および排紙トレイ19を備える構成とされている。
【0023】
画像形成装置1において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、現像装置12、感光体ドラム13、帯電器15、クリーナ装置14は、各色に応じた4種類の潜像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、これらによって4つの画像ステーションが構成されている。
【0024】
感光体ドラム13は、画像形成装置1の略中央に配置されている。帯電器15は、感光体ドラム13の表面を所定の電位に均一に帯電させる。露光装置11は、感光体ドラム13の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム13の表面にトナー像を形成する。上述した一連の動作によって、各感光体ドラム13の表面に各色のトナー像が形成される。クリーナ装置14は、現像および画像転写の後に感光体ドラム13の表面の残留トナーを除去および回収する。
【0025】
中間転写ベルト装置16は、感光体ドラム13の上側に配置され、中間転写ベルト21、中間転写ベルト駆動ローラ22、中間転写ベルト従動ローラ23、中間転写ローラ24、中間転写ベルトクリーニング装置25、およびテンションローラ26を備えている。なお、中間転写ローラ24は、YMCK用の各色の画像ステーションに対応して4本設けられている。
【0026】
中間転写ベルト駆動ローラ22、中間転写ベルト従動ローラ23、中間転写ローラ24、およびテンションローラ26は、中間転写ベルト21を張架して、中間転写ベルト21の表面を所定方向(図中矢符C方向)に移動させるように構成されている。
【0027】
中間転写ベルト21は、矢符Cの方向へ周回移動し、中間転写ベルトクリーニング装置25によって残留トナーを除去および回収され、各感光体ドラム13の表面に形成された各色のトナー像が順次転写して重ね合わされて、中間転写ベルト21の表面にカラーのトナー像が形成される。
【0028】
2次転写装置27の転写ローラ27aは、中間転写ベルト21との間にニップ域が形成されており、シート搬送経路Sを通じて搬送されて来た用紙Pをニップ域に挟み込んで搬送する。用紙Pは、ニップ域を通過する際に、中間転写ベルト21の表面のトナー像が転写される。
【0029】
給紙カセット18は、画像形成に使用する用紙Pを蓄積しておくためのカセットであり、露光装置11の下側に設けられている。また、排紙トレイ19は、画像形成部1aの上側に設けられており、画像形成済みの用紙Pを載置するためのトレイである。
【0030】
また、画像形成装置1において、給紙カセット18の用紙Pは、シート搬送経路Sを通じて、2次転写装置27や定着装置17を経由して排紙トレイ19に送られる。シート搬送経路Sに沿って、給紙ローラ31、レジストローラ32、レジスト前ローラ33、定着装置17、および排紙ローラ34が配置されている。
【0031】
給紙ローラ31は、給紙カセット18の端部近傍に備えられ、給紙カセット18から用紙Pを1枚ずつシート搬送経路Sに供給する。レジストローラ32は、給紙カセット18から搬送されている用紙Pを一旦保持し、感光体ドラム13上のトナー像の先端と用紙Pの先端とを合わせるタイミングで用紙Pを転写ローラ27aに搬送する。レジスト前ローラ33は、用紙Pの搬送を促進補助するための小型のローラである。
【0032】
定着装置17は、ベルト定着方式の定着装置とされており、複数のローラ(ここでは定着ローラ171および加熱ローラ172)に定着ベルト173(定着部材の一例)が巻き掛けられている。定着ベルト173は、加熱ローラ172から定着ローラ171へ熱伝達できるようになっている。定着装置17では、定着ベルト173を介して定着ローラ171に加圧ローラ174(加圧部材の一例)が押圧されるようになっている。定着装置17では、未定着のトナー像が形成された用紙Pを受け取り、用紙Pを定着ベルト173と加圧ローラ174との間に挟み込んで搬送する。定着ベルト173の近傍には、温度検知部60が設けられている。定着後の用紙Pは、排紙ローラ34によって排紙トレイ19上に排出される。なお、定着装置17については、後述する図2を参照して詳細を説明する。
【0033】
本実施の形態では、定着装置17は、ベルト定着方式の定着装置とされているがこれに限定されず、加圧ローラ174で定着ローラ171を直接押圧する方式としてもよいし、定着ローラ171の替わりに回動しない定着パッドで定着ベルト173を加圧ローラ174に押圧する方式としてもよい。前者の方式では、上述した定着部材は、定着ローラ171に相当し、後者の方式では、定着ベルト173に相当する。
【0034】
次に、本発明の実施の形態に係る定着装置について、図面を参照して説明する。
【0035】
図2は、定着装置の要部を抜き出して示す模式側面図である。なお、図1では、画像形成装置1の正面側から示しているのに対して、図2は、画像形成装置1の背面側から示しているため、左右が反転している。
【0036】
本実施の形態において、加圧ローラ174は、定着ローラ171に対して、圧接された圧接状態と、離間された圧解状態とを切り換え可能な構成とされている。加熱ローラ172は、内側に、例えば、ヒータなどの熱源172aが収められている。熱源172aが発する熱によって、加熱ローラ172および定着ベルト173が暖められる。定着ベルト173は、定着ローラ171の回転によって移動し、熱源172aに近い部分が徐々にずれて、全体が暖められる。温度検知部60は、非接触式の温度センサであって、加熱ローラ172の近傍であり、定着ベルト173に面して設けられている。
【0037】
図3は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。なお、図3では、画像形成装置1のうち、定着装置17に関わる一部の部材を抽出して示しており、他の部材を備えていてもよい。
【0038】
画像形成装置1は、上述した定着ローラ171、加圧ローラ174、熱源172a、および温度検知部60に加えて、さらに、制御部50を備えている。制御部50は、熱源172aへ供給する交流電力を制御する。画像形成装置1には、一般の家庭やオフィスなどの設置場所に用いられる電源から、照明と同様に交流電力が供給される。次に、画像形成装置1に供給される交流電力と、設置場所の照明との関係について、図4を参照して説明する。
【0039】
図4は、画像形成装置に供給される交流電力と、設置場所の照明との関係を示す説明図である。
【0040】
図4では、画像形成装置1に供給される交流電力に対応する電圧波形が上段に示され、設置場所の照明における照明照度が中段に示され、制御部50から熱源172aへの指示に対応するヒータ信号が下段に示されている。図4において、横軸は時間の経過を示し、縦軸はそれぞれの項目に応じた値を示している。具体的に、上段では、交流電圧の値を示し、0を示す基準の線から離れるに従って、正または負の方向に大きくなることを表している。中段では、0を示す基準の線から上に向かうに従って、照度が大きくなることを表している。下段では、ヒータ信号のオン(ON)とオフ(OFF)との切り替わりを表している。
【0041】
時間T0から時間T1の期間において、電圧波形は大きく振幅しており、照明照度は明るく、ヒータ信号はOFFになっている。時間T1において、ヒータ信号がONになり、時間T2までこれを維持する。熱源172aがオンになったことで、電圧が降下し、電圧波形の振幅が小さくなる。また、これに伴って、照明照度が暗くなる。時間T2において、ヒータ信号がOFFになり、時間T3までこれを維持する。時間T2から時間T3の期間は、ヒータ信号がOFFになっているので、時間T0から時間T1の期間と同じ状態になり、照明照度が明るくなる。その後、時間T3において、ヒータ信号がONになり、時間T1と同じ状態に戻る。つまり、時間T1から時間T3までの制御周期SPを繰り返している。
【0042】
画像形成装置1において、画像形成中は、定着ローラ171等を所望の温度に保つことが望ましく、熱源172aによって周期的に加熱している。熱源172aのオンとオフとを繰り返しに伴って、照明が暗くなったり、明るくなったりする照度変化が現れる。この照度変化は、照明の種類、点灯方式、電源環境、照明の周囲の壁や天井、床などの反射状況、人と照明との配置状況、および個人差により、不快と感じるレベルが異なるものの、人間の目は、照度変化の周期にもよるが、短時間で400Lux以上の照度変化があると、激しいちらつきと感じることが多い。一方、100~200Lux程度の照度変化では、ほとんど不快感を覚えない。そこで、画像形成装置1では、不快感を覚えない程度の照度変化となるように電圧変動を小さくするため、位相制御が行われる。
【0043】
図5は、位相制御における電圧の変化を示す説明図である。
【0044】
図5では、図4に示す電圧波形の欄と同じように、横軸は時間の経過を示し、縦軸は電圧の値を示している。画像形成装置1に供給される交流電力において、電圧は、正弦波のように、0となる点(ゼロクロス点、図5では、時間ST1の地点)から徐々に上昇し、正の最大値(図5では、時間ST2の地点)になった後、徐々に下降する。その後、ゼロクロス点(図5では、時間ST3の地点)を経て、負の最大値になった後、再度、上昇する。図5において、破線は、100%出力にした際の電圧の変化を示し、実線は、位相制御した際の電圧の変化を示している。なお、以下では説明のため、電圧波形について、いずれかのゼロクロス点(例えば、時間ST1の地点)から、次のゼロクロス点(例えば、時間ST3の地点)までを半波波形と呼ぶことがある。
【0045】
位相制御では、交流電力の周期毎におけるオン時間の割合を変化させることで、出力電圧を制御している。具体的に、図5では、時間ST1から時間ST2までがオフ時間とされており、電圧が0になっている。また、時間ST2から時間ST3までがオン時間とされており、100%出力にした際と同じように電圧が変化する。図5に示す位相制御において、位相角PAは、オフからオンに切り替えるタイミングに関し、オフ時間に対応している。また、導通角CAは、オン時間に対応している。図5において、位相角PAは、90度とされている。位相制御では、オン時間となっている期間の面積によって、電圧の値が決定される。
【0046】
図6は、位相制御における通電パターンを示す説明図である。
【0047】
図6では、位相制御における通電パターンの一例であって、位相角PAを変化させた電圧波形を示しており、以下では、図6に示す通電パターンのうち、5つの半波波形(第1半波SW1ないし第5半波SW5)について説明する。第1半波SW1における位相角(第1角ω1)は、30度とされており、第2半波SW2における位相角(第2角ω2)は、60度とされており、第3半波SW3における位相角(第3角ω3)は、90度とされており、第4半波SW4における位相角(第4角ω4)は、120度とされており、第5半波SW5における位相角(第5角ω5)は、150度とされている。
【0048】
ところで、従来の画像形成装置では、出力電圧を調整する際、デューティ制御を行う場合がある。次に、デューティ制御における電圧波形について、図7を参照して説明する。
【0049】
図7は、従来のデューティ制御における電圧の変化を示す説明図である。
【0050】
従来のデューティ制御では、通電時間TKと非通電時間HKとを組み合わせた1つの制御周期を繰り返している。通電時間TKは、オン時間とされており、通常の交流電力が供給される。非通電時間HKは、オフ時間とされており、電力の供給が停止される。デューティ制御においては、通電時間TKと非通電時間HKとの割合を変えることで、出力する電力の強さを調整している。つまり、通電時間TKの割合が増えると、出力が大きくなり、非通電時間HKの割合が増えると、出力が小さくなる。
【0051】
従来のデューティ制御では、通電時間TKと非通電時間HKとを切り替えているため、電圧が大きく増減し、照明のちらつきを生じさせてしまう。
【0052】
これに対し、本発明では、位相制御を取り入れることで、電圧変動を小さくしている。次に、本発明の実施の形態に係る画像形成装置での第1電圧制御および第2電圧制御について、図8および図9を参照して説明する。
【0053】
図8は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置での第1電圧制御の一例を示す説明図である。
【0054】
第1電圧制御では、全波時間P1と位相制御時間P2とを組み合わせた1つの制御周期を繰り返している。全波時間P1では、位相角が0度であり、常にオン時間とされた全波Waを出力する。次に、位相制御時間P2では、所定の位相角が設定された位相波Wbを出力する。位相波Wbにおける位相角は、位相制御時間P2の実効電圧に応じて変化させればよく、図5に示すように、位相角を大きくすると実効電圧が小さくなり、位相角を小さくすると実効電圧が大きくなる。なお、位相制御時間P2において、位相波Wbの位相角は、一定とされているが、一部の位相波Wbの位相角を異ならせてもよい。
【0055】
画像形成装置1では、全波時間P1と位相制御時間P2とを合わせて、1つの制御周期での実効電圧を制御し、熱源172aの加熱量を決定している。このように、制御周期中において、半波単位で位相角が異なる通電波形を含む連続通電を行うことで、供給する電力量を自在に調整することができ、極端な電圧差の発生を避けつつ、波形の歪みによる高調波ノイズを抑制することができる。つまり、本実施の形態では、従来のデューティ制御のように、電力が出力されない非通電時間HKを設けないので、熱源172aを連続点灯させながらも、加熱量を細かく変化させることができる。また、1つの制御周期における全波時間P1と位相制御時間P2との割合については、適宜変更してもよく、これに合わせて位相角も調整すればよい。具体的に、位相制御時間P2をより長くすることで、位相角を小さくしても、制御周期での実効電圧を十分に下げることができる。位相角を小さくすると、位相波Wbの波形が全波Waの波形に近づき、波形の歪みを小さくでき、高調波ノイズを抑制することができる。
【0056】
図9は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置での第2電圧制御の一例を示す説明図である。
【0057】
第2電圧制御では、位相角が異なる半波を複数組み合わせた1つの制御周期を繰り返している。図9においては、第2波W2から第8波W8までが1つの制御周期に含まれている。第1波W1は、1つ前の制御周期に含まれており、第2波W2の直前の半波とされている。また、第9波W9は、1つ後の制御周期に含まれており、第8波W8の直後の半波とされている。
【0058】
本実施の形態において、互いに重複しないように複数に分割された位相角の範囲からなる複数のグループが設定されている。そして、通電波形は、位相角が属する範囲によって、複数のグループのうちのいずれかに分類されている。具体的に、通電波形(半波)における位相角は、90度以下である場合に低位相角とされ、90度を超え120度以下である場合に中位相角とされ、120度を超え180度未満である場合に高位相角とされている。また、低位相角である半波は、第1グループに分類され、中位相角である半波は、第2グループに分類され、高位相角である半波は、第3グループに分類される。
【0059】
図9に示す一例の場合、第1波W1、第7波W7、および第9波W9が低位相角に対応し、第4波W4および第8波W8が中位相角に対応し、第2波W2、第3波W3、および第6波W6が高位相角に対応する。第5波W5は、位相角PAが0度とされた全波であり、低位相角に相当する。連続した第1波W1と第2波W2とでは、低位相角と高位相角との組み合わせとされている。また、連続した第3波W3と第4波W4と第5波W5とでは、低位相角と中位相角と高位相角との組み合わせとされている。第2電圧制御では、それぞれ異なるグループに属する通電波形同士を連続させた一群を設けられている。このように、隣接する通電波形の位相角にある程度の差を設けることで、電力量を柔軟に設定できる。また、位相角が大きい通電波形を連続させないことで、高調波ノイズの発生を避けることができる。さらに、制御周期同士の継ぎ目や、制御周期中において、通電波形を連続させることで、通電が途切れる区間をなくし、電圧変動を小さくすることができる。
【0060】
なお、高調波ノイズが悪化しにくい組み合わせは、上述したものに限らず、「高位相角+低位相角」、「高位相角+中位相角」、「低位相角+中位相角」、「低位相角+高位相角+中位相角」、「低位相角+高位相角+低位相角」、および「中位相角+高位相角+中位相角」などが挙げられる。
【0061】
次に、画像形成装置での制御フローについて、図10を参照して説明する。
【0062】
図10は、画像形成装置での制御フローを示すフロー図である。
【0063】
ステップS01では、温度検知部60によって、温度を検知する。
【0064】
ステップS02では、制御部50によって、温度検知部60の検知結果に基づいて、加熱が必要かどうかを判断する。熱源172aの温度については、設定値や上昇速度を考慮して制御すればよく、オーバーシュートなどが起きないように適宜調整すればよい。また、制御部50が判断するのは、制御周期が切り替わるタイミングを考慮してもよく、所定の間隔毎に温度を制御するようにしてもよい。制御部50での判断の結果、加熱が必要な場合(ステップS01:Yes)は、ステップS03へ進む。一方、加熱の必要がない場合(ステップS01:No)は、ステップS01へ戻る。
【0065】
ステップS03では、制御部50によって、実効電圧を参照する。実効電圧については、前の制御周期全体を参照してもよいし、前の制御周期における最後の半波を参照してもよい。また、次の制御周期については、制御部50が算出した加熱量に基づいて、実効電圧を推測する。
【0066】
ステップS04では、制御部50によって、直前の制御周期と次の制御周期とで、実効電圧の差が所定の値、ここでは第1閾値を超えているかどうかを判断する。本実施の形態において、第1閾値は、30Vとされている。その結果、実効電圧の差が第1閾値を超えている場合(ステップS04:Yes)は、ステップS06へ進む。一方、実効電圧の差が第1閾値を超えていない場合(ステップS04:No)は、ステップS05へ進む。
【0067】
ステップS05では、制御部50によって、制御周期の最初の2つの半波(2波)について、実効電圧が1段階で変化する位相角を適用する。制御部50は、制御周期の最初の2つの半波について、位相角を段階的に変化させる。つまり、直前の半波から、最初の2つの半波、以降の半波の順に段階的に位相角が変化するようにして、電圧を変動させる。このように、制御周期同士の継ぎ目において、隣接する半波の実効電圧の差を所定の値以下にして、電圧変動を小さくすることで、照明のちらつきを抑制しながら、高調波が増えない位相角の組み合わせパターンでの通電となる波形を組み合わせて、高調波ノイズを抑制することができる。なお、実効電圧の差が30V以下の場合では、照明の種類によるが、ほとんどの条件で照度変化が小さく、100Lux程度の変化に収まるので、ちらつきと感じにくくなる。
【0068】
電圧の制御については、上述した第1電圧制御および第2電圧制御のいずれを用いてもよく、いずれにおいても半波の位相角を調整することで、要求される実効電圧が得られる。なお、第1電圧制御および第2電圧制御では、予め点灯する半波毎の位相角を設定したテーブルを設けてもよく、制御部50は、テーブルから加熱量に応じた位相角を選択してもよい。上述したテーブルでは、デューティ比を1%刻みで変化させるように、位相角が設定されていてもよい。
【0069】
ステップS06では、制御部50によって、直前の制御周期と次の制御周期とで、実効電圧の差が第2閾値を超えているかどうかを判断する。本実施の形態において、第2閾値は、60Vとされている。その結果、実効電圧の差が第2閾値を超えている場合(ステップS06:Yes)は、ステップS08へ進む。一方、実効電圧の差が第2閾値を超えていない場合(ステップS06:No)は、ステップS07へ進む。
【0070】
ステップS07では、制御部50によって、制御周期の最初の3つの半波(3波)について、実効電圧が1段階で変化する位相角を適用する。制御部50は、制御周期の最初の3つの半波について、位相角を段階的に変化させる。つまり、直前の半波から、最初の3つの半波、以降の半波の順に段階的に位相角が変化するようにして、電圧を徐々に変動させる。
【0071】
具体的には、実効電圧の差が30V以上60V未満の場合、1回の切り替えだと電圧変動が大きいが、波数を2半波から3半波に増やし、変化を滑らかにすることで、ちらつきとして認識し難くなる。すなわち、数個の半波単位、あるいは複数の半波のブロック毎に、段階的に切り替えていくことも可能である。
【0072】
ステップS08では、制御部50によって、実効電圧が2段階で変化する位相角を適用する。制御部50は、制御周期の最初の2つの半波について、位相角を段階的に変化させる。つまり、直前の半波から、最初の2つの半波のうちの一方、最初の2つの半波のうちの他方、以降の半波の順に段階的に位相角が変化するようにして、電圧を徐々に変動させる。
【0073】
ステップS05、ステップS07、およびステップS08の後は、ステップS01に戻って処理を繰り返す。
【0074】
ステップS05、ステップS07、およびステップS08では、制御周期の最初の2つまたは3つの半波の位相角を段階的に変化するようにしたが、これに限定されず、制御周期単位で実効電圧を段階的に変化させてもよい。つまり、現在の制御周期と次の制御周期とで、実効電圧の差が所定の値を超える場合、次の制御周期については、直前の制御周期との実効電圧の差が所定の値以下になるように設定し、さらに、その後の制御周期を所望の実効電圧に設定する。つまり、大きく加熱する場合、段階的に分けて加熱することで、十分な加熱量を確保しつつ、電圧変動を小さくすることができる。
【0075】
なお、今回開示した実施の形態は数値を含め全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。消費電力の大きい交流電力を要する機器であれば熱源を備えた画像形成装置に限らず、例えば照明装置、圧縮機を備えた空気調和機や冷蔵庫であっても本発明が実施できる。照明装置であれば本発明を照度の制御に適用でき、空気調和機であれば圧縮機の能力の制御、つまり空調強度の制御に適用できる。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 画像形成装置
17 定着装置
171 定着ローラ(定着部材の一例)
172a 熱源
174 加圧ローラ(加圧部材の一例)
50 制御部
60 温度検知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10