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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189398
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】体外式除細動器
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
A61N1/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097953
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宝積 敦
(72)【発明者】
【氏名】相馬 健治
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ11
4C053JJ15
4C053JJ18
4C053JJ23
(57)【要約】
【課題】成人用電極部が取り付けられた状態及び成人用電極部が取り外された状態のどちらの状態においても、体外式パドルを収容部内に保持することができ、かつ通電テストも良好に行うことができる、体外式除細動器を提供すること。
【解決手段】体外式除細動器は、収容部のうち、収容空間に収容される体外パドルに対向する位置に形成された第1の係合部と、体外パドルに設けられ、第1の係合部に係合可能な第2の係合部と、を有する。第1の係合部と第2の係合部は、体外パドルを収容部内における深さの異なる第1及び第2の収容位置で保持できるように構成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体表に接触可能な電極部をそれぞれ有する一対の体外パドルと、
前記体外パドルが接続され、前記体外パドルに除細動のための電気エネルギーを供給する除細動器本体と、
前記体外パドルを収容する凹状の収容空間を有する収容部と、
前記収容部のうち、前記収容空間に収容される前記体外パドルに対向する位置に形成された第1の係合部と、
前記体外パドルに設けられ、前記第1の係合部に係合可能な第2の係合部と、
を有し、
前記第1の係合部と前記第2の係合部は、前記体外パドルを前記収容部内における深さの異なる第1及び第2の収容位置で保持できるように構成されている、
体外式除細動器。
【請求項2】
前記第1の係合部は、前記体外パドルに対向する前記収容部の側面位置に設けられ、前記体外パドルの方向に進退可能な進退部であり、
前記第2の係合部は、前記体外パドルのフランジである、
請求項1に記載の体外式除細動器。
【請求項3】
前記第2の係合部は、
前記第1の収容位置で前記進退部に当接する面を有する第1のフランジと、前記第1の収容位置よりも深い前記第2の収容位置で前記進退部に当接する面を有する第2のフランジと、を有する、
請求項2に記載の体外式除細動器。
【請求項4】
前記第1の係合部は、
前記体外パドルに対向する前記収容部の側面位置に設けられ、前記体外パドルの方向に進退可能な進退部であり、
前記進退部は、
前記第1の収容位置で前記第2の係合部に係合する第1の進退部材と、前記第1の収容位置よりも深い前記第2の収容位置で前記第2の係合部に係合する第2の進退部材と、を有する、
請求項1に記載の体外式除細動器。
【請求項5】
前記一対の体外パドルは、それぞれ、成人用電極部を取り付け及び取り外し可能とされており、
前記第1の収容位置は、前記成人用電極部が取り付けられたときの前記成人用電極の表面と前記収容部の底面との距離が第1の距離である位置であるとともに、前記第2の収容位置は、前記成人用電極部が取り外されたときの小児用電極の表面と前記収容部の底面との距離が第2の距離である位置であり、
前記第1の距離と前記第2の距離とが等しい、
請求項1から4のいずれか一項に記載の体外式除細動器。
【請求項6】
前記一対の体外パドルは、それぞれ、成人用電極部を取り付け及び取り外し可能とされており、
前記第1のフランジの上面と前記第2のフランジの上面との差は、前記成人用電極部を取り付けたときと前記成人用電極部を取り外したときの前記体外パドルの厚さの差に等しい、
請求項3に記載の体外式除細動器。
【請求項7】
前記一対の体外パドルは、それぞれ、成人用電極部を取り付け及び取り外し可能とされており、
前記第1の進退部材の位置と前記第2の進退部材の位置との差は、前記成人用電極部を取り付けたときと前記成人用電極部を取り外したときの前記体外パドルの厚さの差に等しい、
請求項4に記載の体外式除細動器。
【請求項8】
前記収容部の底面には、収容された前記体外パドルの前記電極部に接触する板ばねが設けられている、
請求項1から7のいずれか一項に記載の体外式除細動器。
【請求項9】
前記板ばねは、前記体外パドルの通電テストに用いられる、
請求項8に記載の体外式除細動器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外式除細動器におけるパドルの収容構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、心臓が心室細動を起こし全身へ血液を送れなくなってしまった患者に対して、心臓の動きを正常に戻すために、電気ショックを与えて心臓の細動の除去を試みる装置として、体外式除細動器が知られている。
【0003】
体外式除細動器は、例えば、特許文献1に示すように、体外パドルと、体外パドルに供給する電気エネルギーを生成する除細動器本体と、を有する。また、除細動器本体は、体外パドルを通じて患者の心臓の状態に関わる情報(心電図ECG:Electrocardiogram)を取得することもできる。
【0004】
除細動器本体の上面には、パドル収容部を有する上部ケースが設けられている。パドル収容部は、体外パドルのフランジ部が収まるような大きさの凹状の収容空間を有する。
【0005】
加えて、パドル収容部は、体外パドルがパドル収容部から飛び出さないように保持する保持部を有する。保持部は、例えば体外パドルの側部に係合する可撓性の係合爪を有する。保持部によって体外パドルが保持されるので、例えば、パドル収容部に体外パドルを収容した状態でユーザーが除細動器を持ち運んだ場合に、パドル収容部からの体外パドルの飛び出しが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-181111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、体外式除細動器では、患者の胸部に当接させる電極として、成人用電極と小児用電極のいずれかを選択できるようになっている。成人用電極は、小児用電極よりも面積が大きい。一般に、成人用電極部は、小児用電極の上から体外パドルに取り付けられる。つまり、体外パドルは、成人患者に対しては成人用電極部を取り付けた状態で用いられ、小児患者に対しては成人用電極部を取り外した状態で用いられる。
【0008】
上述したように、パドル収容部に収容された体外パドルは、パドル収容部から飛び出さないようにパドル収容部内に保持される。しかし、従来は、成人用電極部が取り付けられた状態及び成人用電極部が取り外された状態のどちらの状態においてもパドル収容部内に体外パドルを保持できる構成については、十分な検討がなされていなかった。例えば、成人用電極部が取り付けられた状態ではパドル収容部内に体外パドルを保持できるが、成人用電極部が取り外された状態ではパドル収容部内に体外パドルを保持できないなどの欠点があった。
【0009】
加えて、体外式除細動器においては、一般に、パドル収容部の底面に通電テスト用の電極が設けられている。そして、パドル収容部に体外パドルを収容したときに通電テスト用の電極と体外パドルの電極とを電気的接続状態とし、その状態で通電テストを行うことができるようになっている。
【0010】
しかし、従来は、成人用電極部が取り付けられた状態及び成人用電極部が取り外された状態のどちらの状態においても通電テストを容易かつ良好に行うことができる構成については、十分な検討がなされていなかった。
【0011】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、成人用電極部が取り付けられた状態及び成人用電極部が取り外された状態のどちらの状態においても、体外式パドルを収容部内に保持することができ、かつ通電テストも良好に行うことができる、体外式除細動器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の体外式除細動器の一つの態様は、
患者の体表に接触可能な電極部をそれぞれ有する一対の体外パドルと、
前記体外パドルが接続され、前記体外パドルに除細動のための電気エネルギーを供給する除細動器本体と、
前記体外パドルを収容する凹状の収容空間を有する収容部と、
前記収容部のうち、前記収容空間に収容される前記体外パドルに対向する位置に形成された第1の係合部と、
前記体外パドルに設けられ、前記第1の係合部に係合可能な第2の係合部と、
を有し、
前記第1の係合部と前記第2の係合部は、前記体外パドルを前記収容部内における深さの異なる第1及び第2の収容位置で保持できるように構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成人用電極部が取り付けられた状態及び成人用電極部が取り外された状態のどちらの状態においても、体外式パドルを収容部内に保持することができかつ通電テストも良好に行うことができる、体外式除細動器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態の体外式除細動器の正面図
図2】体外式除細動器の上部の構成を示す斜視図
図3】体外式除細動器の上部の構成を示す平面図
図4】成人用電極部を取り付けた体外パドルと収容部との関係を示す斜視図
図5】成人用電極部を取り外した体外パドルと収容部との関係を示す斜視図
図6】体外パドルに成人用電極部が取り付けられた状態での収容状態を示す断面図
図7】体外パドルから成人用電極部が取り外された状態での収容状態を示す断面図
図8】収容部に体外パドルを立て掛けた状態を示す斜視図
図9】収容部に体外パドルを立て掛けた状態を示す平面図
図10】他の実施の形態の構成を示す断面図
図11】他の実施の形態の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
<1>体外式除細動器の全体構成
図1は、本実施の形態の体外式除細動器10の正面図である。
【0017】
体外式除細動器10は、除細動器本体20と、左右一対の体外パドル30とを有する。体外パドル30は、接続コード50によって除細動器本体20に接続されている。除細動器本体20は、除細動のための電気エネルギーを発生し、この電気エネルギーを接続コード50を介して体外パドル30に供給する。ユーザーは、体外パドル30のハンドル部30aを握って体外パドル30の電極を患者の胸部に押し当てることで除細動の処置を行う。
【0018】
除細動器本体20には、出力エネルギー設定ツマミ71、操作キー72及び表示部73などが設けられている。ユーザーは、出力エネルギー設定ツマミ71及び操作キー72を操作することで、除細動エネルギーや各種モードの設定などを行うことができる。表示部73には患者の心電図などが表示される。
【0019】
除細動器本体20の上部には本体ハンドル部60が設けられており、ユーザーは本体ハンドル部60を把持することで、体外式除細動器10を持ち上げて移動させることができる。
【0020】
体外式除細動器10の他の構成については。既知の構成を採用することができるので説明を省略する。
【0021】
<2>パドル収容部の構成
次に、図2図11を用いて、本実施の形態のパドル収容部(以下単に「収容部」と呼ぶ)の構成について説明する。
【0022】
図2及び図3は、それぞれ、体外式除細動器10の上部の構成を示す斜視図及び平面図である。図4は、成人用電極部40を取り付けた状態の体外パドル30と収容部100の様子を示す斜視図である。図5は、成人用電極部40を取り外した状態の体外パドル30と収容部100の様子を示す斜視図である。
【0023】
図2から分かるように、収容部100は、除細動器本体20の上部に取り付けられた上部ケース20aに形成されている。収容部100は、体外パドル30を収容する凹状の収容空間を有する。
【0024】
具体的には、図4及び図5から分かるように、収容部100の上部開口部分は体外パドル30のフランジ31の外形に沿った大きさとなっており、収容部100の底部開口部分は成人用電極部40の外形に沿った大きさとなっている。また、収容部100の深さは、成人用電極部40を取り付けた状態での成人用電極部40の下面からフランジ31までの高さにほぼ等しい。これにより、体外パドル30は、成人用電極部40を取り付けた状態において、収容部100内に横ぶれすることなく丁度収まるようになっている。
【0025】
収容部100の底面部101には、テスト用電極110が設けられている。テスト用電極110は、板バネ状の金属板であり、一端が底面部101から上方に突出した状態で設けられている。テスト用電極110の他端は、除細動器本体20内の電気回路(図示せず)に接続されている。
【0026】
体外パドル30のフランジ31の下方位置には小児用電極P1(図6図7)が形成されている。成人用電極部40は、小児用電極P1を覆うように体外パドル30の下部位置に取り付けられる。本実施の形態の場合、成人用電極部40はスライドにより体外パドル30に取り付け及び取り外しできるようになっている。
【0027】
成人用電極部40の下面には成人用電極P2(図6)が形成されている。成人用電極P2は小児用電極P1よりも面積が大きい。なお、成人用電極部40の取り付け構造は実施の形態の構造に限らず、要は小児用電極P1の下方に取り付け自在に成人用電極P2が取り付けることができる構造であればよい。
【0028】
体外パドル30が収容部100に収容されると、成人用電極P1又は小児用電極P2がテスト用電極110に当接することで、通電テストが可能な状態となる。
【0029】
かかる構成に加えて、本実施の形態では、図4及び図5から分かるように、フランジ31の下方位置に第2のフランジ31aが形成されている。
【0030】
また、図2及び図3から分かるように、収容部100には、進退部21が設けられている。進退部21は、左右それぞれの収容部100において、互いに対向する位置に設けられている。つまり、1つの収容部100につき2個の進退部21が設けられている。
【0031】
換言すれば、進退部21は、収容部100のうち、凹状の収容空間に収容される体外パドル30に対向する側面に設けられている。進退部21は、体外パドル30の方向に前進及び後退可能に構成されている。進退部21は、収容部100に収容された体外パドル30の上方向への移動を規制する。進退部21の詳しい構成及び動作については後述する。
【0032】
<3>収容部での体外パドルの保持
次に、本実施の形態による収容部100での体外パドル30の保持構造について詳しく説明する。
【0033】
図6及び図7は、収容部100に体外パドル30が収容された状態において、進退部21を通る鉛直面によって上部ケース20aと体外パドル30とを切った断面図である。特に、図6は体外パドル30に成人用電極部40が取り付けられた状態での断面図であり、図7は体外パドル30から成人用電極部40が取り外された状態での断面図である。
【0034】
先ず、進退部21の構成について詳しく説明する。進退部21は樹脂からなる断面がL字状の部材である。進退部21の基台部はネジ21bによって上部ケース20aに固定されている。ここで、上述したように、体外式除細動器10において、進退部21は1つの収容部100につき2個、よって、合計4個の進退部21が設けられている。各進退部21を上部ケース20aに固定している合計4つのネジ21bは、上部ケース20aを除細動器本体20に固定する機能をも有する。つまり、ネジ21bの先端は、除細動器本体20にまで達している。
【0035】
これにより、本実施の形態においては、ネジ21bによって、上部ケース20aへの進退部21の固定と同時に、除細動器本体20への上部ケース20aの固定をも行うことができるようになっている。進退部21が上部ケース20aと一体に成形されておらず、別体とされていることにより、進退部21が破損した場合に、上部ケース20a全体を交換することなく、破損した進退部21のみを交換すればよい。この結果、メンテナンス性を向上させることができる。
【0036】
進退部21の立ち上がり部の先端近傍には体外パドル30の方向に突き出た爪21aが形成されている。爪21aは、進退部21自体の弾性により、矢印d1で示した前進方向及び矢印d2で示した後退方向に移動可能となっている。
【0037】
次に、進退部21の動作について説明する。
【0038】
図6に示したように、成人用電極部40が取り付けられた体外パドル30がユーザーによって収容方向c2に移動されて収容部100に収容されると、進退部21の爪21aが第2のフランジ31aの上面に当接することにより、体外パドル30の収容部100からの逸脱方向c1への移動が規制されて、体外パドル30が収容部100内の所定位置に保持される。この所定位置とは、成人用電極P2の表面が収容部100の底面部101にほぼ一致する位置である。
【0039】
厳密に言うと、この所定位置において、成人用電極P2の表面は収容部100の底面部101から若干浮いた状態となる。これは、体外パドル30がテスト用電極110のバネ力によって逸脱方向c1に付勢されるためである。換言すれば、爪21a及びフランジ31aとの位置関係と、テスト用電極110の付勢力と、により、成人用電極P2の表面が収容部100の底面部101から所定距離若干浮いた状態に位置決めされる。これにより、上記所定位置においては、成人用電極P2の表面には底面部101は当接せずテスト用電極110のみが当接するので、成人用電極P2とテスト用電極110との電気的接続の信頼性が向上する。
【0040】
ユーザーは、除細動の処置を行う際には、体外パドル30のハンドル部30aを持って、図6の収容位置から、体外パドル30を逸脱方向c1に引っ張り上げる。このとき、引っ張り力が進退部21の弾性力に打ち勝つと、進退部21の爪21aが後退方向d2に移動する。この結果、爪21aが第2のフランジ31aを乗り越え、体外パドル30が逸脱方向c1に移動する。
【0041】
一方、図7に示したように、成人用電極部40が取り外された体外パドル30が収容部100に収容されると、進退部21の爪21aが第1のフランジ31の上面に当接することにより、体外パドル30の収容部100からの逸脱方向c1への移動が規制されて、体外パドル30が収容部100内の所定位置に保持される。この所定位置とは、小児用電極P1の表面が収容部100の底面部101にほぼ当接する位置である。
【0042】
厳密に言うと、この所定位置において、小児用電極P1の表面は収容部100の底面部101から若干浮いた状態となる。これは、体外パドル30がテスト用電極110のバネ力によって逸脱方向c1に付勢されるためである。換言すれば、爪21a及びフランジ31との位置関係と、テスト用電極110の付勢力と、により、小児用電極P1の表面が収容部100の底面部101から所定距離若干浮いた状態に位置決めされる。これにより、上記所定位置においては、小児用電極P1の表面には底面部101は当接せずテスト用電極110のみが当接するので、小児用電極P1とテスト用電極110との電気的接続の信頼性が向上する。
【0043】
ユーザーは、除細動の処置を行う際には、体外パドル30のハンドル部30aを持って、図7の収容位置から、体外パドル30を逸脱方向c1に引っ張り上げる。このとき、引っ張り力が進退部21の弾性力に打ち勝つと、進退部21の爪21aが後退方向d2に移動する。この結果、爪21aが第1のフランジ31を乗り越え、さらには第2のフランジ31aを乗り越えて、体外パドル30が逸脱方向c1に移動する。
【0044】
このように、第1及び第2のフランジ31、31aと進退部21とによって、小児用電極P1及び成人用電極P2のどちらもテスト用電極110に一定の力で当接されるようになる。この結果、小児用電極P1とテスト用電極110との接触圧と、成人用電極P2とテスト用電極110との接触圧がほぼ同じとなり、均等な接触抵抗の下での通電テストを行うことができるようになり、通電テストの信頼性が向上する。例えば、ユーザーによって体外パドル30を下方に押圧してテスト用電極110との当接を確保する場合と比較して、通電テストの信頼性が向上する。
【0045】
<4>収容部への体外パドルの立て掛け
本実施の形態では、収容部100に体外パドル30を立て掛けることができるようになっている。
【0046】
図8及び図9は、それぞれ、収容部100に体外パドル30を立て掛けた状態を示す斜視図及び平面図である。なお、図8及び図9では、成人用電極部40を取り付けた体外パドル30を立て掛けた状態が示されているが、勿論、成人用電極部40を取り外した状態の体外パドル30を立て掛けることもできる。
【0047】
収容部100の側壁には長孔22が形成されている。長孔22は、上部ケース20aの側壁(収容部100の側壁と言ってもよい)を上下方向に亘って切り欠いたものであり、一端が上部ケース20aの上端位置(収容部100の上端位置と言ってもよい)で開口しているとともに他端(下端)が上部ケース20aの底面部101(収容部100の底面部101と言ってもよい)に達しており、かつ孔幅が体外パドル30のフランジ31の厚みよりも大きい。
【0048】
長孔22に対向する上部ケース20aの壁面には、上下方向に亘って延びる案内溝23が形成されている。案内溝23の溝幅は体外パドル30のフランジ31の厚みよりも大きい。
【0049】
図8及び図9から分かるように、体外パドル30は、長孔22及び案内溝23に上方からフランジ31を差し込むことにより、収容部100に立て掛けることができる。
【0050】
長孔22及び案内溝23は、長孔22及び案内溝23に体外パドル30のフランジ31が差し込まれたときに、体外パドル30のハンドル部30aが収容部100の外部に配置されるような位置に形成されている。これにより、ユーザーが収容部100の外からハンドル部30aを容易に把持できるようになる。また、ハンドル部30aとフランジ31とで上部ケース20aの壁面を挟持することにより、ハンドル部30の立て掛け状態が安定する。
【0051】
ここで、実際に体外式除細動器10が使用される場合には、ユーザーは、先ず収容部100から体外パドル30を取り出して、次に使用する電極P1又はP2に導電性ジェルを塗る。次に、ユーザーは、体外式除細動器10の電源を入れ、体外パドル30を患者の胸部に押し当てる。この状態で体外式除細動器10によって患者の心電図が取得される。
【0052】
次に、ユーザーによってショックボタンが押されると、体外パドル30から患者に電気エネルギーが供給されて電気的除細動が行われる。次に、ユーザーは、必要に応じて患者に心臓マッサージなどの処置を行う。その後、ユーザーは、必要に応じて再び体外パドル30を患者の胸部に押し当てて除細動の処置を行う。
【0053】
ここで、処置を行う者が2人以上存在する場合には、体外パドル30により除細動の処置を行う者と心臓マッサージなどの処置を行う者とで役割分担を行うことができる。従って、除細動の処置を行う者は、1回目の除細動の処置を行った後に他の者が心臓マッサージなどの処置を行っている時間そのまま体外パドル30を持ったままで待機し、2回目の除細動の処置を行うことができる。
【0054】
これに対して、処置を行う者が1人しか存在しない場合には、除細動の処置を行う者が心臓マッサージなどの処置も行う必要がある。この場合、心臓マッサージなどの処置を行う際には、体外パドル30をどこかに置かなければならない。
【0055】
本実施の形態の場合には、体外パドル30を図8及び図9に示したように収容部100に立て掛けておくことができるので便利である。特に、体外パドル30を床や地面に直接置くと、導電性ジェルが汚れるおそれがあり好ましくない。また、体外パドル30を図6図7に示したように収容部100に完全に収容してしまうと、収容部100の底面部101やテスト用電極110に導電性ジェルが付着するおそれがあるので好ましくない。本実施の形態の構成によれば、このような不都合を回避できる。
【0056】
また、上述したように、長孔22の下端は、上部ケース20aの底面部101に達している。これにより、長孔22は水抜き孔として機能し、収容部100に水が貯まることが防止される。
【0057】
さらに、本実施の形態の場合には、収容部100の底面部101は、長孔22の下端に向かって低くなるように傾斜している。これにより、収容部100での水貯まりをより防止できるようになる。また、長孔22の下端の高さを、テスト用電極110の取り付け部の高さよりも低くすることが好ましい。このようにすることで、水貯まりの影響を受け易いテスト用電極110が水に浸ることを防止できる。
【0058】
このように、本実施の形態の構成によれば、長孔22に、収容部100の水抜きの機能と体外パドル30の立て掛けの機能とを持たせたので、簡易な構成により、水抜き機能と立て掛け機能とを実現できる。
【0059】
<5>実施の形態の効果
以上説明したように、本実施の形態の体外式除細動器10は、患者の体表に接触可能な電極部(電極P1、P2)をそれぞれ有する一対の体外パドル30と、体外パドル30に除細動のための電気エネルギーを供給する除細動器本体20と、体外パドル30を収容する凹状の収容空間を有する収容部100と、収容部100のうち、収容空間に収容される体外パドル30に対向する位置に形成された第1の係合部(進退部21)と、体外パドル30に設けられ、第1の係合部(進退部21)に係合可能な第2の係合部(フランジ31、31a)と、を有し、第1の係合部(進退部21)と第2の係合部(フランジ31、31a)は、体外パドル30を収容部100内における深さの異なる第1及び第2の収容位置で保持できるように構成されている。
これにより、成人用電極部40が取り付けられた状態及び成人用電極部40が取り外された状態のどちらの状態においても、体外パドル30を収容部100内に保持することができかつ通電テストも良好に行うことができる、体外式除細動器10を実現できる。
【0060】
ここで、本実施の形態においては、前記第1の収容位置は、成人用電極部40が取り付けられたときの成人用電極40の表面と収容部100の底面との距離が第1の距離である位置であるとともに、第2の収容位置は、成人用電極部40が取り外されたときの小児用電極の表面と収容部100の底面との距離が第2の距離である位置であり、前記第1の距離と前記第2の距離とが等しい。
【0061】
また、本実施の形態においては、図6に示したように、第1のフランジ31の上面と第2のフランジ31aの上面との差t1は、成人用電極部40を取り付けたときと成人用電極部40を取り外したときの体外パドル30の厚さの差t2に等しい。
【0062】
<6>他の実施の形態
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0063】
上述の実施の形態では、第2の係合部を、第1の収容位置で進退部21に当接する上面を有する第1のフランジ31と、第1の収容位置よりも低い第2の収容位置で進退部21に当接する上面を有する第2のフランジ31aと、を有するように構成した場合について述べたが、本発明はこれに限らない。要は、第1及び第2の係合部を、体外パドル30を収容部100内における深さの異なる第1及び第2の収容位置で保持できるように構成すればよい。
【0064】
図6及び図7との対応部分に同一符号を付して示した図10及び図11は、他の実施の形態の構成を示す断面図である。図10及び図11の構成では、第1の係合部としての進退部21は、第1の収容位置で第2の係合部(フランジ31a)に係合する第1の進退部材(爪21a)と、第1の収容位置よりも低い第2の収容位置で第2の係合部(フランジ31a)に係合する第2の進退部材(爪21c)と、を有する。
【0065】
図10に示したように、第1の進退部材(爪21a)の位置と第2の進退部材(爪21c)の位置との差t1は、成人用電極部40を取り付けたときと成人用電極部40を取り外したときの体外パドル30の厚さの差t2に等しい。
【0066】
このような構成でも、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
具体的に説明する。図10に示したように、成人用電極部40が取り付けられた体外パドル30が収容部100に収容されると、進退部21の爪21aがフランジ31aの上面に当接することにより、体外パドル30の収容部100からの逸脱方向c1への移動が規制されて、体外パドル30が収容部100内の所定位置に保持される。
【0068】
一方、図11に示したように、成人用電極部40が取り外された体外パドル30が収容部100に収容されると、進退部21の爪21cがフランジ31aの上面に当接することにより、体外パドル30の収容部100からの逸脱方向c1への移動が規制されて、体外パドル30が収容部100内の所定位置に保持される。
【0069】
上述の実施の形態では、収容部100に第1の係合部として進退部21を形成し、体外パドル30に第2の係合部としてフランジ31、31aを形成する場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、収容部100に第1の係合部としてフランジを形成し、体外パドル30に第2の係合部として進退部を形成してもよい。さらに、第1の係合部及び第2の係合部は、上述の実施の形態のような進退部21及びフランジ31、31aに限らず、要は、第1の係合部と第2の係合部は、体外パドルを収容部内における深さの異なる第1及び第2の収容位置で保持できる構成であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、体外パドルに成人用電極部を取り付け及び取り外し可能な体外式除細動器に好適である。
【符号の説明】
【0071】
10 体外式除細動器
20 除細動器本体
20a 上部ケース
21 進退部
21a、21c 爪
21b ネジ
22 長孔
23 案内溝
30 体外パドル
30a ハンドル部
31、31a フランジ
40 成人用電極部
50 接続コード
60 本体ハンドル部
100 収容部
101 底面部
110 テスト用電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11