(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189402
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】災害発生予測装置及び災害発生予測プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20120101AFI20221215BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20221215BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097958
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】恒川 裕史
(72)【発明者】
【氏名】大渕 正博
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋幸
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】建設工事に関する文書情報を用いない場合に比較して、より高精度に当該建設工事に関する災害の発生状況を予測することができる災害発生予測装置及び災害発生予測プログラムを得る。
【解決手段】災害発生予測装置10は、予測対象とする建設工事に関する属性情報、数値情報、及び文書情報が入力情報とされ、当該建設工事での災害の発生状況を示す発生状況情報が出力情報とされた災害発生予測モデル13Cを用いた災害発生予測装置10であって、属性情報、数値情報、及び文書情報を取得する取得部11Aと、取得部11Aによって取得された属性情報、数値情報、及び文書情報を災害発生予測モデル13Cに入力することで発生状況情報を導出する導出部11Bと、導出部11Bによって導出された発生状況情報が示す災害の発生状況に関する情報である災害発生関連情報を提示する提示部11Cと、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測対象とする建設工事に関する属性情報、数値情報、及び文書情報が入力情報とされ、当該建設工事での災害の発生状況を示す発生状況情報が出力情報とされた災害発生予測モデルを用いた災害発生予測装置であって、
前記属性情報、前記数値情報、及び前記文書情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記属性情報、前記数値情報、及び前記文書情報を前記災害発生予測モデルに入力することで前記発生状況情報を導出する導出部と、
前記導出部によって導出された前記発生状況情報が示す災害の発生状況に関する情報である災害発生関連情報を提示する提示部と、
を備えた災害発生予測装置。
【請求項2】
前記文書情報を、予め定められた形式の数値情報である特定形式数値情報に変換する変換部、を更に備え、
前記導出部は、前記変換部により得られた前記特定形式数値情報を前記文書情報として前記災害発生予測モデルに入力する、
請求項1に記載の災害発生予測装置。
【請求項3】
前記変換部は、
前記文書情報の形態素解析を行うことで、当該文書情報から単語を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された単語を前記予め定められた形式の数値情報に数値化する数値化部と、
を有する請求項2に記載の災害発生予測装置。
【請求項4】
学習に用いる前記属性情報、前記数値情報、前記文書情報、及び前記発生状況情報を取得する学習用情報取得部、を更に備え、
前記災害発生予測モデルは、前記学習用情報取得部によって取得された前記属性情報、前記数値情報、及び前記文書情報を入力情報とし、前記発生状況情報を出力情報として機械学習されたものである、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の災害発生予測装置。
【請求項5】
予測対象とする建設工事に関する属性情報、数値情報、及び文書情報が入力情報とされ、当該建設工事での災害の発生状況を示す発生状況情報が出力情報とされた災害発生予測モデルを用いた災害発生予測プログラムであって、
前記属性情報、前記数値情報、及び前記文書情報を取得し、
取得した前記属性情報、前記数値情報、及び前記文書情報を前記災害発生予測モデルに入力することで前記発生状況情報を導出し、
導出した前記発生状況情報が示す災害の発生状況に関する情報である災害発生関連情報を提示する、
処理をコンピュータに実行させるための災害発生予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生予測装置及び災害発生予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設工事に関して生じ得る災害の発生を防止するために適用することのできる技術として、以下の技術があった。
【0003】
特許文献1には、労働災害の発生を防止するための適切な情報を提供するための建設工事の安全情報システムが開示されている。この安全情報システムは、過去に発生した複数の労働災害の各々について、労働災害が発生した作業を、前記労働災害の発生要因及び前記労働災害における前記発生要因毎の影響度と対応させて記憶する記憶手段と、建設工事でこれから実施する作業を表すデータを入力する入力手段と、を有している。また、この安全情報システムは、前記記憶手段に記憶された労働災害のうち、入力手段によって入力された作業で過去に発生した労働災害における発生要因毎の影響度及び頻度に応じて各発生要因に重みを付与し、各発生要因に付与した重み及び個々の労働災害における前記発生要因毎の影響度に基づいて、前記過去に発生した労働災害の重要度の順位付けを行う順位付け手段を有している。そして、この安全情報システムは、前記過去に発生した労働災害を、前記順位付け手段による順位付けの結果に応じて出力する出力手段を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、機械学習されたモデルに対して、予測対象とする建設工事の対象とする建設物の構造種別等といった属性情報や、当該建設物の階数、床面積等といった数値情報を入力情報として適用することで、災害の発生状況を予測する技術が考えられる。
【0006】
しかしながら、この技術では、必ずしも高精度に災害の発生状況を予測することができるとは限らない、という問題点があった。
【0007】
即ち、建設工事においては、当該建設工事の作業内容を示す単語が含まれる、施工計画書、作業工程書、作業手順書、工事工程書等の各種文書情報が用いられており、当該文書情報には、災害が生じた場合の当該災害の発生原因に繋がる情報が内存されている。
【0008】
このため、この種の文書情報を用いて災害の発生状況を予測する方が、より高精度に当該予測を行うことができると考えられるが、上述した従来の機械学習されたモデルでは当該文書情報は用いられていない。
【0009】
なお、上記特許文献1に開示されている技術においても、上記文書情報については考慮されておらず、この問題を解決することはできない。
【0010】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、建設工事に関する文書情報を用いない場合に比較して、より高精度に当該建設工事に関する災害の発生状況を予測することができる災害発生予測装置及び災害発生予測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の本発明に係る災害発生予測装置は、予測対象とする建設工事に関する属性情報、数値情報、及び文書情報が入力情報とされ、当該建設工事での災害の発生状況を示す発生状況情報が出力情報とされた災害発生予測モデルを用いた災害発生予測装置であって、前記属性情報、前記数値情報、及び前記文書情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記属性情報、前記数値情報、及び前記文書情報を前記災害発生予測モデルに入力することで前記発生状況情報を導出する導出部と、前記導出部によって導出された前記発生状況情報が示す災害の発生状況に関する情報である災害発生関連情報を提示する提示部と、を備える。
【0012】
請求項1に記載の本発明に係る災害発生予測装置によれば、予測対象とする建設工事に関する属性情報、数値情報、及び文書情報が入力情報とされ、当該建設工事での災害の発生状況を示す発生状況情報が出力情報とされた災害発生予測モデルを用いるにあたり、属性情報、数値情報、及び文書情報を取得し、取得した属性情報、数値情報、及び文書情報を災害発生予測モデルに入力することで発生状況情報を導出し、導出した発生状況情報が示す災害の発生状況に関する情報である災害発生関連情報を提示することで、建設工事に関する文書情報を用いない場合に比較して、より高精度に当該建設工事に関する災害の発生状況を予測することができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る災害発生予測装置は、請求項1に記載の災害発生予測装置であって、前記文書情報を、予め定められた形式の数値情報である特定形式数値情報に変換する変換部、を更に備え、前記導出部が、前記変換部により得られた前記特定形式数値情報を前記文書情報として前記災害発生予測モデルに入力するものである。
【0014】
請求項2に記載の本発明に係る災害発生予測装置によれば、文書情報を、予め定められた形式の数値情報である特定形式数値情報に変換する一方、この変換により得られた特定形式数値情報を文書情報として災害発生予測モデルに入力することで、災害発生予測モデルの学習時に用いる文書情報や、運用時に用いる文書情報の種類を統一する必要がなくなる結果、災害発生予測モデルに対する学習効率や運用効率を、より向上させることができる。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る災害発生予測装置は、請求項2に記載の災害発生予測装置であって、前記変換部が、前記文書情報の形態素解析を行うことで、当該文書情報から単語を抽出する抽出部と、前記抽出部によって抽出された単語を前記予め定められた形式の数値情報に数値化する数値化部と、を有するものである。
【0016】
請求項3に記載の本発明に係る災害発生予測装置によれば、文書情報の形態素解析を行うことで、当該文書情報から単語を抽出し、抽出した単語を予め定められた形式の数値情報に数値化することで、これらの2段階の処理を適用せずに数値化する場合に比較して、より簡易に特定形式数値情報を得ることができる。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る災害発生予測装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の災害発生予測装置であって、学習に用いる前記属性情報、前記数値情報、前記文書情報、及び前記発生状況情報を取得する学習用情報取得部、を更に備え、前記災害発生予測モデルが、前記学習用情報取得部によって取得された前記属性情報、前記数値情報、及び前記文書情報を入力情報とし、前記発生状況情報を出力情報として機械学習されたものとされている。
【0018】
請求項4に記載の本発明に係る災害発生予測装置によれば、学習に用いる属性情報、数値情報、文書情報、及び発生状況情報を取得する一方、災害発生予測モデルを、取得した属性情報、数値情報、及び文書情報を入力情報とし、発生状況情報を出力情報として機械学習されたものとすることで、より簡易に災害発生予測モデルを構築することができる。
【0019】
請求項5に記載の本発明に係る災害発生予測プログラムは、予測対象とする建設工事に関する属性情報、数値情報、及び文書情報が入力情報とされ、当該建設工事での災害の発生状況を示す発生状況情報が出力情報とされた災害発生予測モデルを用いた災害発生予測プログラムであって、前記属性情報、前記数値情報、及び前記文書情報を取得し、取得した前記属性情報、前記数値情報、及び前記文書情報を前記災害発生予測モデルに入力することで前記発生状況情報を導出し、導出した前記発生状況情報が示す災害の発生状況に関する情報である災害発生関連情報を提示する、処理をコンピュータに実行させる。
【0020】
請求項5に記載の本発明に係る災害発生予測プログラムによれば、予測対象とする建設工事に関する属性情報、数値情報、及び文書情報が入力情報とされ、当該建設工事での災害の発生状況を示す発生状況情報が出力情報とされた災害発生予測モデルを用いるにあたり、属性情報、数値情報、及び文書情報を取得し、取得した属性情報、数値情報、及び文書情報を災害発生予測モデルに入力することで発生状況情報を導出し、導出した発生状況情報が示す災害の発生状況に関する情報である災害発生関連情報を提示することで、建設工事に関する文書情報を用いない場合に比較して、より高精度に当該建設工事に関する災害の発生状況を予測することができる。
【0021】
なお、前記属性情報は、前記建設工事の対象とする建設物の構造種別、前記建設工事の監督者の有無、及び前記建設工事の施工区分の少なくとも1つの情報を含むものとしてもよい。
【0022】
また、前記数値情報は、前記建設工事の対象とする建設物の階数、床面積、及び出来高の少なくとも1つの情報を含むものとしてもよい。
【0023】
更に、前記文書情報は、前記建設工事の作業手順書、報告書、及び工事工程書の少なくとも1つの情報を含むものとしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、建設工事に関する文書情報を用いない場合に比較して、より高精度に当該建設工事に関する災害の発生状況を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る災害発生予測システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る災害発生予測装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る災害発生予測装置の、災害発生予測モデルの学習時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る災害発生予測装置の、災害発生予測モデルの運用時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る学習用情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図6】実施形態に係る学習用文書情報が示す学習用文書の一例を示す正面図である。
【
図7】実施形態に係る運用用情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図8】実施形態に係る運用用文書情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図9】実施形態に係る運用用文書情報が示す運用用文書の一例を示す正面図である。
【
図10】実施形態に係る学習処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態に係る災害発生予測処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】実施形態に係る初期情報入力画面の構成の一例を示す正面図である。
【
図13】実施形態に係る予測結果画面の構成の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0027】
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る災害発生予測システム1の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る災害発生予測システム1の構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る災害発生予測システム1は、本システムの中心的な役割を担う災害発生予測装置10と、情報蓄積装置90と、を含む。本実施形態に係る災害発生予測装置10は、予め構築した災害発生予測モデルに対して、予測対象とする建設工事に関する属性情報、数値情報、及び文書情報を入力することで、当該建設工事での災害の発生状況を示す情報である発生状況情報を導出するものである。また、本実施形態に係る情報蓄積装置90は、災害発生予測装置10で取り扱う各種情報を蓄積するものである。
【0029】
本実施形態に係る情報蓄積装置90は不揮発性の記憶部92を備えている。記憶部92はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部92には、学習用情報データベース92A、運用用情報データベース92B、及び運用用文書情報データベース92Cが記憶されている。学習用情報データベース92A、運用用情報データベース92B、及び運用用文書情報データベース92Cについては、詳細を後述する。
【0030】
災害発生予測装置10と、情報蓄積装置90とは、ネットワークNを介して接続されており、災害発生予測装置10は、情報蓄積装置90とネットワークNを介して相互に通信可能とされている。なお、本実施形態では、ネットワークNとしてLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の企業内の通信回線を適用しているが、この形態に限定されるものではない。ネットワークNとして、例えば、インターネット、電話回線等の公共の通信回線を適用してもよく、これらの企業内の通信回線及び公共の通信回線を組み合わせて適用してもよい。また、本実施形態では、ネットワークNとして有線の通信回線を適用しているが、この形態に限定されるものではなく、無線の通信回線を適用してもよく、有線及び無線の各通信回線を組み合わせて適用してもよい。
【0031】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る災害発生予測装置10のハードウェア構成を説明する。
図2は、本実施形態に係る災害発生予測装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。なお、災害発生予測装置10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の各種コンピュータが挙げられる。
【0032】
本実施形態に係る災害発生予測装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16及び通信I/F部18はバスBを介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0033】
記憶部13はHDD、SSD、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、学習プログラム13A及び災害発生予測プログラム13Bが記憶されている。学習プログラム13A及び災害発生予測プログラム13Bの各プログラムは、当該各プログラムが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの上記各プログラムの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶(インストール)される。CPU11は、学習プログラム13A及び災害発生予測プログラム13Bの各プログラムを記憶部13から順次読み出してメモリ12に展開し、当該各プログラムが有するプロセスを順次実行する。
【0034】
また、記憶部13には、災害発生予測モデル13Cが記憶される。本実施形態に係る災害発生予測モデル13Cは、上述したように、予測対象とする建設工事に関する属性情報、数値情報、及び文書情報が入力情報とされている。また、本実施形態に係る災害発生予測モデル13Cは、上述したように、当該建設工事での災害の発生状況を示す発生状況情報が出力情報とされている。なお、ここでいう「文書情報」とは、予測対象とする建設工事の作業内容を示す単語が含まれる文書を示す情報を意味する。
【0035】
本実施形態に係る災害発生予測モデル13Cは、GBDT(Gradient Boosting Decision Tree、勾配ブースティング決定木)モデルを用いたAI(Artificial Intelligence、人工知能)によるモデルとされているが、これに限るものではない。CNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)やBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers、https://arxiv.org/abs/1810.04805)、transformer(https://arxiv.org/abs/1706.03762)を用いたAIによるモデルやMLP(Multilayer perceptron、多層パーセプトロン)等の、GBDTモデル以外のAI等の機械学習モデルを災害発生予測モデル13Cとして適用する形態としてもよい。
【0036】
なお、本実施形態では、属性情報として、予測対象とする建設工事(以下、「対象建設工事」ともいう。)の対象とする建設物の構造種別、対象建設工事の監督者の有無、及び対象建設工事の施工区分を含む情報を適用しているが、これに限るものではない。例えば、これらの情報に加えて、天候、作業名称、工事種別、建築種別等の他の対象建設工事の数値情報を除く情報を含めて、1つ、又は複数の組み合わせを含む情報を属性情報とする形態としてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、数値情報として、対象建設工事の対象とする建設物の階数、床面積、及び出来高を含む情報を適用しているが、これに限るものではない。例えば、これらの情報に加えて、工事価格等の他の数値で表す情報を含めて、1つ、又は複数の組み合わせを含む情報を数値情報とする形態としてもよい。
【0038】
更に、本実施形態では、文書情報として、対象建設工事の作業手順書、及び工事工程書を含む情報を適用しているが、これに限るものではない。例えば、これらの情報に加えて、施工計画書、報告書、作業工程書等の他の対象建設工事に関する文書情報を含めて、1つ、又は複数の組み合わせを含む情報を文書情報とする形態としてもよい。
【0039】
次に、
図3を参照して、本実施形態に係る災害発生予測装置10の、災害発生予測モデル13Cの学習時における機能的な構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る災害発生予測装置10の、災害発生予測モデル13Cの学習時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0040】
図3に示すように、災害発生予測モデル13Cの学習時における災害発生予測装置10は、学習用情報取得部11E、導出部11B、及び変換部11Dを含む。災害発生予測装置10のCPU11が学習プログラム13Aを実行することで、学習用情報取得部11E、導出部11B、及び変換部11Dとして機能する。
【0041】
本実施形態に係る学習用情報取得部11Eは、学習に用いる属性情報、数値情報、文書情報、及び発生状況情報(以下、これらの情報を総称して「学習用情報」という。)を取得する。
【0042】
なお、本実施形態では、上記発生状況情報として、災害の発生の有無、災害が発生する場合の災害の種別、及び災害が発生する時期の各々を示す情報を適用しているが、これに限るものではない。例えば、これらの情報に加えて、災害が発生する確率を示す情報等の他の災害の発生状況を示す情報を含めて、1つ、又は複数の組み合わせを含む情報を発生状況情報とする形態としてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、上記学習用情報を、詳細を後述する学習用情報データベース92A(
図5も参照。)から読み出すことにより取得する。但し、この形態に限るものではなく、学習用情報のうちの少なくとも1つの情報を、入力部14を介してユーザにより直接入力させる形態としてもよい。
【0044】
そして、本実施形態に係る災害発生予測モデル13Cは、学習用情報取得部11Eによって取得された属性情報、数値情報、及び文書情報を入力情報とし、発生状況情報を出力情報として機械学習される。なお、本実施形態では、属性情報及び数値情報が導出部11Bを介して災害発生予測モデル13Cに入力される一方、文書情報は変換部11D及び導出部11Bを介して災害発生予測モデル13Cに入力される。但し、導出部11B及び変換部11Dは、災害発生予測モデル13Cの運用時における災害発生予測装置10の機能的な構成と共通のブロックである。このため、これらの各ブロックの詳細な説明は、災害発生予測モデル13Cの運用時における災害発生予測装置10の機能的な構成の説明で行う。
【0045】
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る災害発生予測装置10の、災害発生予測モデル13Cの運用時における機能的な構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る災害発生予測装置10の、災害発生予測モデル13Cの運用時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0046】
図4に示すように、災害発生予測モデル13Cの運用時における災害発生予測装置10は、取得部11A、導出部11B、提示部11C、及び変換部11Dを含む。災害発生予測装置10のCPU11が災害発生予測プログラム13Bを実行することで、取得部11A、導出部11B、提示部11C、及び変換部11Dとして機能する。
【0047】
本実施形態に係る取得部11Aは、予測対象とする建設工事に関する属性情報、数値情報、及び文書情報(以下、これらの情報を総称して「運用用情報」という。)を取得する。ここで取得する文書情報は、通常の建築管理業務で作成した該当日の文書情報等を適用することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、上記運用用情報を、詳細を後述する運用用情報データベース92B(
図7も参照。)及び運用用文書情報データベース92C(
図8も参照。)から読み出すことにより取得する。但し、この形態に限るものではなく、運用用情報のうちの少なくとも1つの情報を、入力部14を介してユーザにより直接入力させる形態としてもよい。
【0049】
また、本実施形態に係る導出部11Bは、取得部11Aによって取得された属性情報、数値情報、及び文書情報を災害発生予測モデル13Cに入力することで発生状況情報を導出する。
【0050】
そして、本実施形態に係る提示部11Cは、導出部11Bによって導出された発生状況情報が示す災害の発生状況に関する情報である災害発生関連情報を提示する。
【0051】
なお、本実施形態では、提示部11Cが、災害発生関連情報を表示部15による表示により提示する場合について説明するが、これに限定されない。例えば、スピーカ等の音声生成装置による音声によって災害発生関連情報を提示する形態としてもよいし、プリンタ等の画像形成装置による印刷によって災害発生関連情報を提示する形態としてもよい。
【0052】
一方、本実施形態に係る変換部11Dは、文書情報を、予め定められた形式の数値情報である特定形式数値情報に変換する。そして、本実施形態に係る導出部11Bは、変換部11Dにより得られた特定形式数値情報を文書情報として、災害発生予測モデル13Cに入力する。
【0053】
本実施形態に係る変換部11Dは、抽出部11D1及び数値化部11D2を有する。本実施形態に係る抽出部11D1は、文書情報の形態素解析を行うことで、当該文書情報から単語を抽出する。また、本実施形態に係る数値化部11D2は、抽出部11D1によって抽出された単語を上記予め定められた形式の数値情報に数値化する。
【0054】
なお、本実施形態に係る数値化部11D2は、単語の分散表現法の一つであるWord2Vecを用いたニューラルネットワークが適用されている。本実施形態では、Word2Vecを用いて、建設工事及び労働安全関連の文書から学習した分散表現により、入力された文書情報から抽出部11D1によって抽出された単語の分散表現(ベクトル値)を計算し、当該ベクトル値を、例えば平均化する等した値を用いる。なお、Word2Vecに関しては、「坪井ほか:深層学習による自然言語処理、講談社、2017年5月」等にも記載されている、広く知られた技術であるため、ここでの、これ以上の説明は省略する。
【0055】
このように、本実施形態では、数値化部11D2としてWord2Vecを用いたニューラルネットワークが適用されているが、これに限るものではない。例えば、Bow(Bag of words)法や、BERT、transformer等の他のニューラルネットワーク等の、Word2Vec以外のニューラルネットワークを数値化部11D2として適用する形態としてもよい。
【0056】
Bow法は、抽出部11D1によって抽出された名詞や動詞の単語群を作成し、その単語数をnとした場合には、n次元ベクトルを用いて、入力された文書に登場した単語の値を1若しくは当該単語の頻度とする。但し、この形態に限るものではなく、単語の頻度に代えて、tf(Term Frequency)×idf(Inverse Document Frequency)を適用する形態としてもよい。なお、Bow法も広く知られた技術であるため、ここでの、これ以上の説明は省略する。
【0057】
このBow法を適用した場合で、かつ、入力文書の中に当該単語群に含まれない単語があった場合、予め学習したWord2Vecで単語群との類似度を算出し、 類似度の高い単語を類義語として置き換える形態としてもよい。
【0058】
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る学習用情報データベース92Aについて説明する。
図5は、本実施形態に係る学習用情報データベース92Aの構成の一例を示す模式図である。本実施形態に係る学習用情報データベース92Aは、災害発生予測モデル13Cの学習に用いる情報(上述した学習用情報)を記憶するためのものである。
【0059】
図5に示すように、本実施形態に係る学習用情報データベース92Aは、学習用情報ID(Identification)、属性情報、数値情報、文書情報、及び発生状況情報の各情報が関連付けられて記憶される。
【0060】
上記学習用情報IDは、学習用情報を個別に識別するために、学習用情報の各々毎に異なる情報として予め割り振られた情報である。また、上記属性情報、上記数値情報、上記文書情報、及び上記発生状況情報は、各々、上述した学習用情報における属性情報、数値情報、文書情報、及び発生状況情報である。
【0061】
図5に示す例では、学習用情報IDとして「L001」が割り振られた学習用情報では、属性情報における構造種別がSRC造であり、監督者の有無が有りであり、施工区分が建築であることが記憶されている。また、この学習用情報では、数値情報における階数が5階であり、床面積が300m
2であり、出来高が12000万円であることが記憶されている。更に、この学習用情報では、文書情報が学習用文書情報1であり、発生状況情報における災害発生の有無が有りであり、災害の種別が墜落、転落であり、災害発生の時期が塗装中であることが記憶されている。
【0062】
次に、
図6を参照して、本実施形態に係る学習用文書情報の一例について説明する。
図6は、本実施形態に係る学習用文書情報が示す学習用文書の一例を示す正面図である。なお、
図6では、本実施形態に係る学習用文書情報のうち、玉掛け作業の作業手順書を示す学習用文書情報の一例が示されている
【0063】
図6に示すように、この学習用文書情報は、作業区分、作業の手順、作業の急所、及び危険性又は有害性を含む情報が関連付けられて学習用情報データベース92Aに記憶されている。
【0064】
図6に示す例では、玉掛け作業における本作業では、作業の手順として「玉掛けをする」、「ワイヤロープを利かせる」等があり、当該「玉掛けをする」に対応する作業の急所として「二方向から荷の重心を見て」といった情報が含まれている。更に、当該「二方向から荷の重心を見て」に対応する危険性又は有害性の情報として「荷にワイヤを掛けるとき、荷崩れを起こし挟まれる」といった情報が含まれている。
【0065】
次に、
図7を参照して、本実施形態に係る運用用情報データベース92Bについて説明する。
図7は、本実施形態に係る運用用情報データベース92Bの構成の一例を示す模式図である。本実施形態に係る運用用情報データベース92Bは、予測対象とする建設工事に関する運用用情報の一部を記憶するためのものである。
【0066】
図7に示すように、本実施形態に係る運用用情報データベース92Bは、建設物ID、建設物名、属性情報、及び数値情報の各情報が関連付けられて記憶される。
【0067】
上記建設物IDは、対応する建設工事を個別に識別するために、対応する建設物の各々毎に異なる情報として予め割り振られた情報であり、上記建設物名は、対応する建設物の名称を示す情報である。また、上記属性情報及び上記数値情報は、各々、上述した運用用情報における属性情報及び数値情報である。
【0068】
図7に示す例では、建設物IDとして「B001」が割り振られた運用用情報では、属性情報における構造種別がRC造であり、監督者の有無が有りであり、施工区分が建築であることが記憶されている。また、この運用用情報では、数値情報における階数が7階であり、床面積が550m
2であり、出来高が30000万円であることが記憶されている。
【0069】
次に、
図8を参照して、本実施形態に係る運用用文書情報データベース92Cについて説明する。
図8は、本実施形態に係る運用用文書情報データベース92Cの構成の一例を示す模式図である。本実施形態に係る運用用文書情報データベース92Cは、予測対象とする建設工事に関する運用用情報における文書情報を記憶するためのものである。
【0070】
図8に示すように、本実施形態に係る運用用文書情報データベース92Cは、建設物ID、日程、及び文書情報の各情報が関連付けられて記憶される。
【0071】
上記建設物IDは、運用用情報データベース92Bの建設物IDと同一の情報であり、上記日程は、対応する文書情報が示す文書が対象としている日程を示す情報であり、上記文書情報は運用用の文書情報そのものを示す情報である。
【0072】
図8に示す例では、建設物IDとして「B001」が割り振られた文書情報における2021年4月25日に関する文書情報が運用用文書情報Aであることが記憶されている。
【0073】
次に、
図9を参照して、本実施形態に係る運用用文書情報の一例について説明する。
図9は、本実施形態に係る運用用文書情報が示す運用用文書の一例を示す正面図である。なお、
図9では、本実施形態に係る運用用文書情報のうち、新築工事の工事工程書を示す運用用文書情報の一例が示されている。
【0074】
図9に示すように、この運用用文書情報は、本日の作業内容、本日の作業手順、予測される災害、及び安全対策を含む情報が関連付けられて運用用文書情報データベース92Cに記憶されている。
【0075】
図9に示す例では、本日の作業内容として「準備作業」、「部材の搬入、荷下ろし」等が作業の実施順に記憶され、「準備作業」に対応する「本日の作業手順」として「使用用具・工具類点検」、「危険・立ち入り禁止区域設定」等が記憶されている。
【0076】
次に、
図10~
図13を参照して、本実施形態に係る災害発生予測装置10の作用を説明する。
【0077】
まず、
図10を参照して、災害発生予測モデル13Cを学習する場合における災害発生予測装置10の作用を説明する。
図10は、本実施形態に係る学習処理の一例を示すフローチャートである。
【0078】
災害発生予測装置10のCPU11が学習プログラム13Aを実行することによって、
図10に示す学習処理が実行される。
図10に示す学習処理は、ユーザにより、学習プログラム13Aの実行を開始する指示入力が入力部14を介して行われた場合に実行される。なお、錯綜を回避するために、以下では、学習用情報データベース92Aが既に構築されている場合について説明する。
【0079】
図10のステップ200で、CPU11は、学習用情報データベース92Aから一組の属性情報、数値情報、学習用文書情報、及び発生状況情報の各情報を読み出す。ステップ202で、CPU11は、上述したように、読み出した学習用文書情報に対して形態素解析を行うことで、当該学習用文書情報から単語を抽出し、抽出した単語を予め定められた形式の数値情報(上述した特定形式数値情報)に数値化する。
【0080】
ステップ204で、CPU11は、学習用情報データベース92Aに記憶されている全ての学習用文書情報についてステップ202による数値化が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ200に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ206に移行する。なお、ステップ200~ステップ204の処理を繰り返し実行する場合にCPU11は、それまでに対象としなかった学習用情報を処理の対象とするようにする。
【0081】
ステップ206で、CPU11は、読み出した属性情報及び数値情報と、数値化した学習用文書情報とを入力情報とし、読み出した発生状況情報を出力情報(正解情報)として、災害発生予測モデル13Cを機械学習する。ステップ208で、CPU11は、災害発生予測モデル13Cの機械学習が収束したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ206に戻る一方、肯定判定となった場合は本学習処理を終了する。なお、ステップ206~ステップ208の処理を繰り返し実行する場合にCPU11は、それまでに学習対象としなかった情報を学習対象とするようにする。
【0082】
以上の学習処理により、災害発生予測モデル13Cが学習されることになる。
【0083】
次に、
図11~
図13を参照して、災害発生予測モデル13Cを運用する場合における災害発生予測装置10の作用を説明する。
図11は、本実施形態に係る災害発生予測処理の一例を示すフローチャートである。
【0084】
災害発生予測装置10のCPU11が災害発生予測プログラム13Bを実行することによって、
図11に示す災害発生予測処理が実行される。
図11に示す災害発生予測処理は、ユーザにより、対象建設工事の工期中における各作業日の作業開始前に、災害発生予測プログラム13Bの実行を開始する指示入力が入力部14を介して行われた場合に実行される。なお、錯綜を回避するために、以下では、災害発生予測モデル13Cの学習が終了しており、運用用情報データベース92B及び運用用文書情報データベース92Cが既に構築されている場合について説明する。
【0085】
図11のステップ300で、CPU11は、予め定められた構成とされた初期情報入力画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ302で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0086】
図12には、本実施形態に係る初期情報入力画面の構成の一例が示されている。
図12に示すように、本実施形態に係る初期情報入力画面では、災害の予測の対象とする建設物(以下、「対象建設物」という。)の指定を促すメッセージが表示される。また、本実施形態に係る初期情報入力画面では、対象建設物を特定する情報(本実施形態では、建設物ID)を入力するための入力領域15Cが表示される。
【0087】
一例として
図12に示す初期情報入力画面が表示部15に表示されると、ユーザは、入力部14を用いて、災害の予測対象とする建設物の建設物IDを入力領域15Cに入力した後、終了ボタン15Gを指定する。
【0088】
ユーザによって終了ボタン15Gが指定されると、ステップ302が肯定判定となってステップ304に移行する。
【0089】
ステップ304で、CPU11は、入力された建設物IDに対応する属性情報及び数値情報を運用用情報データベース92Bから読み出すと共に、当該建設物IDに対応する運用用文書情報を運用用文書情報データベース92Cから読み出す。ステップ306で、CPU11は、上述したように、読み出した運用用文書情報に対して形態素解析を行うことで、当該運用用文書情報から単語を抽出し、抽出した単語を予め定められた形式の数値情報(上述した特定形式数値情報)に数値化する。
【0090】
ステップ308で、CPU11は、読み出した属性情報及び数値情報と、数値化した運用用文書情報とを災害発生予測モデル13Cに入力する。ステップ310で、CPU11は、属性情報、数値情報、及び数値化後の運用用文書情報の入力に応じて災害発生予測モデル13Cから出力される発生状況情報を取得する。
【0091】
ステップ312で、CPU11は、取得した発生状況情報を用いて、予め定められた構成とされた予測結果画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ314で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0092】
図13には、本実施形態に係る予測結果画面の構成の一例が示されている。
図13に示すように、本実施形態に係る予測結果画面では、災害の発生の可能性を指摘するコメントが表示されると共に、災害の種別及び発生時期の各情報(上述した災害発生関連情報)が表示される。従って、ユーザは、予測結果画面を参照することにより、これらの情報を容易に把握することができる。
【0093】
一例として
図13に示す予測結果画面が表示部15に表示されると、ユーザは、予測結果を把握した後、入力部14を用いて終了ボタン15Gを指定する。ユーザによって終了ボタン15Gが指定されると、本災害発生予測処理が終了する。
【0094】
ユーザは、対象建設工事の工期内における1日の作業が終了すると、災害発生予測処理において適用した運用用情報を用いて、当該作業中の災害の発生の有無、災害が発生した場合の当該災害の種別、及び当該災害の時期を学習用情報データベース92Aに追加する。
【0095】
そして、ユーザは、予め定められたタイミング(本実施形態では、毎月末日)に、未学習の情報を対象として、上述した学習処理を実行することにより、災害発生予測モデル13Cを学習する。
【0096】
これにより、災害発生予測モデル13Cを、より最適化することができる結果、災害発生予測モデル13Cによる発生状況情報の予測精度を向上させることができる。
【0097】
本発明の発明者らは、本実施形態に係る災害発生予測処理を適用して、本発明の出願人(株式会社竹中工務店)が有する安全情報システムに登録されている情報を用いたコンピュータ・シミュレーションを行った。この結果、属性情報及び数値情報のみを用いる場合に比較して、文書情報も用いた場合の災害の予測精度が約2倍となることが確認された。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係る災害発生予測装置10は、予測対象とする建設工事に関する属性情報、数値情報、及び文書情報が入力情報とされ、当該建設工事での災害の発生状況を示す発生状況情報が出力情報とされた災害発生予測モデル13Cを用いた装置であって、属性情報、数値情報、及び文書情報を取得する取得部11Aと、取得部11Aによって取得された属性情報、数値情報、及び文書情報を災害発生予測モデル13Cに入力することで発生状況情報を導出する導出部11Bと、導出部11Bによって導出された発生状況情報が示す災害の発生状況に関する情報である災害発生関連情報を提示する提示部11Cと、を備えている。従って、建設工事に関する文書情報を用いない場合に比較して、より高精度に当該建設工事に関する災害の発生状況を予測することができる。
【0099】
また、本実施形態によれば、文書情報を、予め定められた形式の数値情報である特定形式数値情報に変換する一方、この変換により得られた特定形式数値情報を文書情報として災害発生予測モデル13Cに入力している。従って、災害発生予測モデル13Cの学習時に用いる文書情報や、運用時に用いる文書情報の種類を統一する必要がなくなる結果、災害発生予測モデル13Cに対する学習効率や運用効率を、より向上させることができる。
【0100】
また、本実施形態によれば、文書情報の形態素解析を行うことで、当該文書情報から単語を抽出し、抽出した単語を上記予め定められた形式の数値情報に数値化している。従って、これらの2段階の処理を適用せずに数値化する場合に比較して、より簡易に特定形式数値情報を得ることができる。
【0101】
更に、本実施形態によれば、学習に用いる属性情報、数値情報、文書情報、及び発生状況情報を取得する一方、災害発生予測モデル13Cを、取得した属性情報、数値情報、及び文書情報を入力情報とし、発生状況情報を出力情報として機械学習されたものとしている。従って、より簡易に災害発生予測モデル13Cを構築することができる。
【0102】
なお、上記実施形態において例示した各種画面の構成は各々一例であり、変更を加えてもよいことは言うまでもない。
【0103】
また、上記実施形態では、災害発生予測モデル13Cの出力情報として、発生する可能性のある災害の種別及び発生時期の各情報を適用した場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、これらの情報に加えて、当該種別の災害が発生する確率や、当該災害を回避するために実施すべき事項の提案等の情報を災害発生予測モデル13Cの出力情報として適用する形態としてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、災害発生予測モデル13Cの出力情報における、発生する可能性のある災害の種別として1種類のみの種別を適用した場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、当該災害の種別として複数種類の種別を適用し、一例として
図13に示す予測結果画面において当該複数種類の災害を表示する形態としてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、特に言及しなかったが、災害発生予測処理によって得られた発生状況情報をデータベース化する等によって記憶しておき、単なる表示に留まらず、他の評価等に再利用する形態としてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、本発明の災害発生予測装置を、災害発生予測装置10及び情報蓄積装置90を用いた災害発生予測システム1として適用した場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、災害発生予測装置10及び情報蓄積装置90を一体化した単一の装置で本発明の災害発生予測装置を構成する形態としてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、学習用情報データベース92Aの発生状況情報に災害発生の有無を示す情報を含めた場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、災害が発生した場合のみを対象として、当該有無を示す情報を用いない形態としてもよい。また、災害発生有りの場合については、不休、休業3日以下、休業4日以上、死亡といったように複数段階のレベルで表し、各レベルの災害の発生を予測する形態としてもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、対象とする建設物の階数を数値情報として適用する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、建設物の階数を属性情報として適用する形態としてもよい。建設物の階数を数値情報として適用する場合は、上の階数ほど、即ち階数の数値が大きいほど墜落の可能性が高まる等といった使い方となる。これに対し、建設物の階数を属性情報として適用する場合は、1階の場合は挟まれ災害が発生しやすい等といった使い方となり、数値の大きさではなく、その階であること自体を問題とする場合となる。
【0109】
また、上記実施形態では、文書情報の形態素解析を行うことで当該文書情報から単語を抽出する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、Sentencepiece(https://qiita.com/taku910/items/7e52f1e58d0ea6e7859c)を適用して文書情報から単語を抽出する形態としてもよい。
【0110】
また、上記実施形態において、例えば、取得部11A、導出部11B、提示部11C、変換部11D、及び学習用情報取得部11Eの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0111】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0112】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0113】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0114】
1 災害発生予測システム
10 災害発生予測装置
11 CPU
11A 取得部
11B 導出部
11C 提示部
11D 変換部
11D1 抽出部
11D2 数値化部
11E 学習用情報取得部
12 メモリ
13 記憶部
13A 学習プログラム
13B 災害発生予測プログラム
13C 災害発生予測モデル
14 入力部
15 表示部
15C 入力領域
15G 終了ボタン
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
90 情報蓄積装置
92 記憶部
92A 学習用情報データベース
92B 運用用情報データベース
92C 運用用文書情報データベース