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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189421
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】面状ヒーター
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
H05B3/20 326A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097984
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】521255314
【氏名又は名称】株式会社オーティーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正美
【テーマコード(参考)】
3K034
【Fターム(参考)】
3K034BB05
3K034BB14
3K034GA13
3K034JA10
(57)【要約】
【課題】ファインセラミックスをヒーター部に設けることなく、より簡便にかつ安価に高温度での使用が可能となる面状ヒーターを提供する。
【解決手段】本発明の一観点に係る面状ヒーターは、薄膜状発熱体と、薄膜状発熱体を挟み込む上部結晶化ガラス板及び下部結晶化ガラス板を有するヒーター部と、ヒーター部を支える金属ケースを有する。また、上部結晶化ガラス板及び下部結晶化ガラス板は、その熱膨張率の差を調整するために弾性を備えた複数の爪部材により固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜状発熱体と、前記薄膜状発熱体を挟み込む上部結晶化ガラス板及び下部結晶化ガラス板と、を有するヒーター部と、前記ヒーター部を支える金属ケースを有する面状ヒーター。
【請求項2】
前記薄膜状発熱体、前記上部結晶化ガラス板及び前記下部結晶化ガラス板は、弾性を備えた複数の爪部材により固定されている請求項1記載の面状ヒーター。
【請求項3】
前記下部結晶化ガラス板は、複数に分割されている請求項1記載の面状ヒーター。
【請求項4】
前記上部結晶化ガラス板及び前記下部結晶化ガラス板の耐熱温度が800℃以上で、前記ヒーター部のW密度が2.0W/cm以上である請求項1記載の面状ヒーター。
【請求項5】
前記ヒーター部を支持する金属ケースを備える請求項1記載の面状ヒーター。
【請求項6】
前記上部結晶化ガラス板及び前記下部結晶化ガラス板の少なくともいずれかは、再結晶化ガラスである請求項1記載の面状ヒーター。
【請求項7】
前記金属ケースは、
前記下部結晶化ガラス板の縁周部において前記下部結晶化ガラス板を接触支持する第一接触部、前記下部結晶化ガラス板の中央部において下部空間を形成する第一板状部、を有する第一のケースと、
前記第一のケースの前記第一板状部の縁周部において前記第一のケースに接触支持する第二接触部、前記第一のケースの前記第一板状部の中央部において下部空間を形成する第二板状部、を有する第二のケースと、を有する請求項5記載の面状ヒーター。
【請求項8】
爪部材は、前記金属ケースに固定されている請求項5記載の面状ヒーター。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状ヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品の加熱プロセスにおいては、面状ヒーターが使用されている。従来、この面状ヒーターは、絶縁材の耐熱温度と電気絶縁性に支配されており、代表的な絶縁材としてはマイカ(雲母)が使用されていた。
【0003】
しかしながら、マイカでは耐熱温度が600℃以下で、そのヒーターの使用温度は300℃程度が限界であり、更なる高温での使用には課題があった。
【0004】
一方で、ファインセラミックスを絶縁材として用いる技術が、例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-79504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1で示されるようなセラミックスは非常に高価であり、特殊なプロセス以外に利用することは容易ではないといった課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、ファインセラミックスをヒーター部に設けることなく、より簡便にかつ安価に高温度での使用が可能となる面状ヒーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る面状ヒーターは、薄膜状発熱体と、薄膜状発熱体を挟み込む上部結晶化ガラス板及び下部結晶化ガラス板と、を有するヒーター部と、を有するものである。
【0009】
また、本観点において、限定されるわけではないが、薄膜状発熱体、上部結晶化ガラス板及び下部結晶化ガラス板は、その熱膨張率の差を調整するために弾性を備えた複数の爪部材により固定されていることが好ましい。
【0010】
また、本観点において、限定されるわけではないが、下部結晶化ガラス板は、複数に分割されていることが好ましい。
【0011】
また、本観点において、限定されるわけではないが、上部結晶化ガラス板及び下部結晶化ガラス板は耐熱温度が950℃で、ヒーター部のW密度は3.0W/cm以上であることが好ましい。
【0012】
また、本観点において、限定されるわけではないが、ヒーター部を支持する金属ケースを備えることが好ましい。
【0013】
また、本観点において、限定されるわけではないが、上部結晶化ガラス板及び下部結晶化ガラス板の少なくともいずれかは、再結晶化ガラスであることが好ましい。
【0014】
また、本観点において、限定されるわけではないが、金属ケースを備えており、この金属ケースは、下部結晶化ガラス板の縁周部において下部結晶化ガラス板を接触支持する第一接触部、下部結晶化ガラス板の中央部において下部空間を形成する第一板状部、を有する第一のケースと、第一のケースの第一板状部の縁周部において第一のケースに接触支持する第二接触部、第一のケースの第一板状部の中央部において下部空間を形成する第二板状部、を有する第二のケースと、を有することが好ましい。
【0015】
また、本観点において、限定されるわけではないが、爪部は、上記の金属ケースに固定されていることが好ましい。
【0016】
また、本観点において、限定されるわけではないが、上部結晶化ガラス板と下部結晶化ガラス板の間には、薄膜状発熱体の位置変動防止機構を備えていることが好ましい。この位置変動防止機構は、具体的には、上部結晶化ガラス板及び下部結晶化ガラス板の少なくともいずれかに形成された穴と、この穴に嵌め合わされるピンとを有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上、本発明によって、ファインセラミックスをヒーター部に設けることなく、より簡便にかつ安価に高温度での使用が可能となる面状ヒーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る面状ヒーターの斜視図である。
図2】実施形態に係る面状ヒーターの上面図である。
図3】実施形態に係る面状ヒーターの側面図である。
図4】実施形態に係る面状ヒーターの断面図である。
図5】実施形態に係る面状ヒーターのヒーター部の分解斜視図である。
図6】実施形態に係る面状ヒーターのヒーター部の断面構造のイメージ図である。
図7】実施形態に係る面状ヒーターの薄膜状発熱体の上面図である。
図8】実施形態に係る面状ヒーターのヒーター部における下部結晶化ガラス板の分割の状態を示す図である。
図9】実施形態に係る面状ヒーターのヒーター部における下部結晶化ガラス板の一部分の断面を示す図である。
図10】実施形態に係る下部結晶化ガラス板の穴及びピンによる薄膜状発熱体の固定のイメージを示す図である。
図11】実施形態に係る面状ヒーターにおける爪部材の概略を示す図である。
図12】実施形態に係る面状ヒーターの背面からの斜視図である。
図13】実施形態に係るヒーター部を支える金属ケースの斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、また以下に示す実施形態、実施例において記載される具体的な例示についても適宜変更及び調整が可能であり、これらに限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る面状ヒーター(以下「本ヒーター」という。)1の斜視図であり、図2は、本ヒーター1の上面図であり、図3は、本ヒーター1の一側面図である。また、図4は、本ヒーター1の一断面図である。
【0021】
また、これらの図で示すように、本ヒーター1は、ヒーター部2と、ヒーター部2を支持する金属ケース3と、を有する。
【0022】
また、図5は、本ヒーター1のヒーター部2の分解斜視図であり、図6は、本ヒーター1のヒーター部2の断面構造のイメージについて示しておく。これらの図で示すように、ヒーター部2は、薄膜状発熱体21と、薄膜状発熱体21を挟み込む上部結晶化ガラス板22及び下部結晶化ガラス板23と、を有する。
【0023】
本ヒーター1は、この構成によって、ファインセラミックスを用いなくとも、より簡便にかつ安価に高温度での使用が可能となる。特に、本ヒーター1は、シリコンウェハ等の半導体基板を加熱するのに好適に用いられるものであり、800℃、より好ましくは950℃の耐熱温度、2.0W/cm以上、より好ましくは3.0W/cm以上の密度を実現することが可能となる。この効果を発揮する具体的な構成及びその機序については以下具体的に説明していく。
【0024】
まず、本ヒーター1のヒーター部2は、平面状の載置面221を備えており、この載置面に加熱対象物を設置し、薄膜状発熱体21を通電加熱することで上部結晶化ガラス板22を加熱し、加熱対象物を加熱することが可能となる。なお、後述するが載置面221は、上部結晶化ガラス板22の一方の面である。
【0025】
本ヒーター1のヒーター部2の形状は、平面状の載置面を備えている限りにおいて限定されるわけではないが、温度の均一性を確保するために、上面から見た場合において、四角形や六角形等の多角形状であってもよいが、円形状であることが好ましい。円形状の場合、多角形の場合に必然的に設けられる角部が無いため温度の均一性を確保しやすいといった利点がある。もちろん、多角形の場合は、本ヒーター1の設置領域が限られているとした場合でも、設置面積を広く確保することができるといった利点がある。なお、このヒーター部2の形状を構成するため、薄膜状発熱体21の外郭、上部結晶化ガラス板22及び下部ガラス板23の形状がこの形状となっている。
【0026】
本ヒーター1のヒーター部2は、上記の通り、薄膜状発熱体21を有する。薄膜状発熱体21とは、文字通り薄膜状の発熱体であって、発熱し、その発熱量を制御することにより載置面の温度を制御することが可能となる。発熱体としては、この機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、導電性の物質を備え、この導電性の物質に通電することにより、その電気的抵抗により発熱することができるものであることが好ましい。図7に、薄膜状発熱体21の形状の一例についての上面図を示しておく。
【0027】
また、薄膜状発熱体21としては、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば銅、ニクロム、白金等の金属、又は、カーボン、炭化ケイ素、二ケイ化モリブデン等のセラミック等を用いることができる。
【0028】
そして、薄膜状発熱体21は、薄膜状かつ平面的に形成され、この平面において偏りが少なくなるよう配置される。本図の例では、金属の発熱体を、蛇行させながら多重の同心円形状となるよう全体に巻き回されている例を示している。なお本図の例では、一方の端点211から他方の端点212に電気を流すことで、この配線の抵抗による発熱を促すことができる。
【0029】
また、薄膜状発熱体21の厚さは、特に制限されるものではない。ただし、発熱体21の厚さが厚くなるとその温度の不均一性が生じるおそれがあるため、可能な限り薄いものであることが好ましく、少なくとも1cm以下であることが好ましく、より好ましくは5mm以下である。
【0030】
また、本ヒーター1のヒーター部2には、上記の通り、上部結晶化ガラス板22と、下部結晶化ガラス板23を備えており、これらが一対の結晶化ガラス板として上記薄膜状発熱体21を挟み込む構成となっている。
【0031】
上部結晶化ガラス板22は、文字通り、結晶化ガラスによって構成される板状の部材である。上部結晶化ガラス板22は、上記の記載の通り、薄膜状発熱体21が発熱した場合、この薄膜状発熱体21の発する熱を伝達および拡散し、載置面221に載置された加熱対象物に熱を与えることができるようになる。本ヒーター1は、この載置面を構成する部材に結晶化ガラスを用いることで、600℃以上の熱に対しても耐熱衝撃性に優れ、特に高温であっても絶縁性も維持することが可能である。結晶化ガラスとは、結晶を析出させることにより製造されたガラスであり、限定されるわけではないが、一度通常のガラスを作成し、その後ガラスを再加熱して結晶を析出させた再結晶化ガラスであることは好ましい一例である。
【0032】
また、本ヒーター1の上部結晶化ガラス板22は、600℃以上の高温においても絶縁性を確保する観点から、ナトリウム等の金属イオンの含有量を一定量以下にしたものであることが好ましい。高温になるとガラス中のこれら金属イオンの移動が活発化し、絶縁性能が急激に低下するため、金属イオンの含有量を一定量以下、可能な限り少なくしておく、最も好ましくはナトリウム等の金属イオンを含ませないことで高温においても絶縁性能を維持することが可能となる。
【0033】
また、本ヒーター1の上部結晶化ガラス板22は、上記の通り、薄膜状発熱体21に接するようこの上部に配置される接触面222と、加熱対象物を設置するための載置面221を有する平板となっている。これにより、薄膜状発熱体21及び加熱対象物との接触を確保することが可能となる。
【0034】
また、本ヒーター1の上部結晶化ガラス板22の厚さは、薄膜状発熱体21から供給される熱を面状均一に確保するためにある程度の厚さがあることが好ましい一方、熱の損失を抑えるため可能な限り薄くしておくことが好ましいため、これらのバランスを考慮して定められる。この厚さについては用いる材質等によって大きく異なるが、例えば5mm以上3cm以下であることが好ましい。
【0035】
また、本ヒーター1のヒーター部2には、上記と同様、下部結晶化ガラス板23が設けられている。下部結晶化ガラス板23の材質、形状及びその厚さ等については、上記上部結晶化ガラス板22とほぼ同様のものを採用することができるため、同一の部分においてはその説明は省略し、異なる点を中心に言及する。なお上部結晶化ガラス板22と同様、下部結晶化ガラス板23も再結晶化ガラスであることが好ましい。
【0036】
本ヒーター1のヒーター部2における下部結晶化ガラス板23は、上記の記載から明らかなように、薄膜状発熱体21を支持するための部材であり、薄膜状発熱体21の下にもこの耐熱性の結晶化ガラスを用いることで、耐熱性を確保することが可能となる。
【0037】
ところで、下部結晶化ガラス板23は、複数に分割されている点が上部結晶化ガラス板22と大きく異なる。下部結晶化ガラス板23の分割の状態について図8に示しておく。本ヒーター1では、下部結晶化ガラス板23を複数、より具体的には中心近傍の円部分231と、この中心円を覆う中空円部分232に分割されており、更にこの中空円部分232は、同じ形状となるよう更に二つの扇形部分2321、2322に分割されている。このようにすることで、急激な温度差が生じた場合であっても、下部結晶化ガラス板23の熱膨張及び熱収縮による破損を防ぐことが可能となる。なお、これら分割された部分については、それぞれが後述の金属ケースにより支持されていることが好ましいが、例えば中心近傍の円部分231については構造上支持しにくい位置にある。そのため、図9で示す断面のように、円部分232の側面に階段状の段差を設ける一方、下部結晶化ガラス板23の他の部分(例えば扇形部分2321,2322)にもこれに対応した階段状の段差を設け、これらを組み合わせることで、脱落を防ぐことが可能となる。すなわち、下部結晶化ガラス板23を複数に分割し、そのそれぞれに段差を設けて組み合わせることで膨張及び収縮に十分に対応しつつこれらの脱落を防ぐことが可能となる。
【0038】
なお、下部結晶化ガラス板23には、支持する薄膜状発熱体21に通電するための接続部材25を挿入及び固定するための貫通孔233が設けられている。この貫通孔に導電性の接続部材25を挿入し、薄膜状発熱体21に接続することで、安定的な電気的接続を確保することができる。
【0039】
また、上記の図から明らかであるが、上部結晶化ガラス板22、下部結晶化ガラス板23には、これら共通に貫通する貫通孔224、234が複数配置されており、この部分には上記の薄膜発熱体21も重畳しないように配置されている。この貫通孔224、234を配置することで、貫通孔224、234に作動ピンを摺動可能に挿入することが可能となり、更に、本ヒーター1の下部に作動ピンを上下動させるためのアクチュエータ(図示省略)を配置し、作動ピンを載置面状に配置される加熱対象物を載置面から少し持ち上げることが可能となる。これにより、加熱対象物を容易に取り外すことが可能となる。
【0040】
また、下部結晶化ガラス板23には、凹部である穴235が複数設けられており、この穴225、235にピンPが嵌め合わされることで、薄膜状発熱体21の膨張及び収縮による移動を制限することが可能である。この場合のイメージ図を図10に示す。本図のように、上部結晶化ガラス板22及び下部結晶化ガラス板23のそれぞれに穴225、235を設けることでピンを挿入して動かないようにすることができ、これを薄膜状発熱体21の折り返し部分に複数箇所配置することで、薄膜状発熱体21が熱膨張及び熱収縮したとしても大きな薄膜状発熱体21の移動を抑えることができる。すなわち、穴225、235とピンPが組み合わされることで薄膜状発熱体21の位置変動防止機構となる。なお、この穴225、235については、上部及び下部の結晶化ガラス板の一方にのみ形成されていてもよいが、両方の結晶化ガラス板に設けられることで上下の結晶化ガラス板自体もずれないよう保持することが可能となる。なお、上部結晶化ガラス板22に形成される穴225と下部結晶化ガラス板23に形成される穴235は、ピンPの径に合わせて形成されるものであるが、上部結晶化ガラス板22に形成される穴225の方が下部結晶化ガラス板23に形成される穴235よりも大きく形成されていることが好ましい。このようにすることで、下部結晶化ガラス板23に対してピンPがずれにくくなる一方、上部結晶化ガラス板22と下部結晶化ガラス板23の間にずれる方向の力が働いたとしても隙間に余裕ができ、ピンPに対しせん断する方向の力を伝えにくくすることが可能となる。
【0041】
また、本ヒーター1のヒーター部2において、薄膜状発熱体21、上部結晶化ガラス板22及び下部結晶化ガラス板23は、弾性を備えた複数の爪部材24により固定されていることが好ましい。まず、これらについては配置関係を安定的に維持するために爪部材24によって固定することが必要である一方、薄膜状発熱体21は熱により膨張するものであり、また上部結晶化ガラス板22及び下部結晶化ガラス板23も薄膜状発熱体21程ではないが熱によって膨張する。そのため、殆ど弾性変形しない爪部材によって固定してしまうと爪部材が破損し、結局この配置関係を維持することは困難となる。そこで、弾性を備えた複数の爪部材24により固定することで、この熱膨張に対しても安定的に対応することが可能となるといった利点がある。なおこの「弾性を備え」させるためには、弾性を備えた材料を用いることが好ましく、具体的には金属であることが好ましい。金属で形成することにより、適度な硬度と、薄膜状発熱体21、上部結晶化ガラス板22、下部結晶化ガラス板23の変形に十分に対応することが可能となる。この爪部材の一つの例に関する斜視図を図11に示しておく。
【0042】
なお、爪部材24の折れ曲り部分241は、上部結晶化ガラス板22の角部面取り寸法よりも小さな曲率で折り曲げられていることが好ましい。このようにすることで、上部結晶化ガラス板22の角部が爪部材24に接触するおそれが極めて低くなり、この接触による結晶化ガラス板のひび割れを抑えることが可能となる。
【0043】
また、本ヒーター1は、上記のヒーター部2のほか、金属ケース3を備えている。金属ケース3は、このヒーター部2を安定的に支持するために用いられるものであり、この限りにおいて限定されるわけではないが、下部結晶化ガラス板23の縁周部において下部結晶化ガラス板23を接触支持する第一接触部311、下部結晶化ガラス板23の中央部において下部空間を形成する第一板状部312、を有する第一のケース31と、第一のケース31の第一板状部312の縁周部において第一のケース31に接触支持する第二接触部321、第一のケース31の第一板状部312の中央部において下部空間を形成する第二板状部322、を有する第二のケース32と、を有するものであることが好ましい。本ヒーターの背面の斜視図を図12に示す。本図は、後述の反射板33を省略した状態の図である。なお、反射板33を含めた本ヒーター2の断面は上記図4で示したとおりである。
【0044】
まず、金属ケース3では、上記の通り、第一のケース31と第二のケース32とを有している。第一のケース31及び第二のケース32は、ヒーター部2を支持することはもちろんであるが、それぞれ下部結晶化ガラス板23の下に空間を形成するために用いられるものである。金属ケース3では、下部結晶化ガラス板23の下に第一のケース31、第二のケース32を段階的に設けることで温度差の急激な変化を防止することにより安定的な動作を可能とする。
【0045】
金属ケース3の第一のケース31は、上記の通り、下部結晶化ガラス板23の縁周部において下部結晶化ガラス板23を接触支持する第一接触部311と、下部結晶化ガラス板23の中央部において下部空間を形成する第一板状部312、を有する。これにより第一の空間を形成する。なお、第一接触部311は、第一板状部312から略垂直に立ち上がるよう接続されている。図13に、第一のケース31の概略斜視図を示しておく。
【0046】
そして、更に金属ケース3では、第二のケース32を設けている。第二のケース32は、第一のケース31の第一板状部312の縁周部において第一のケース31に接触支持する第二接触部321、第一のケース31の第一板状部312の中央部において下部空間を形成する第二板状部322を有する。これにより第二の空間を形成し、外部への温度の伝わりを和らげることが可能となる。
【0047】
なお、金属ケース3では、更に、爪部材24を含むヒーター部2の側面全体を覆う反射板33を備えていることが好ましい。この反射板33を設けることで、側面から熱が放出され逃げてしまうことを防止できるといった利点がある。
【0048】
また、この爪部材24は、上記の通り、金属ケース3に固定されていることが好ましい。より具体的に説明すると、この爪部材24は、第一のケース31に接続されていることが好ましい。このようにすることで確実にヒーター部2を固定しつつ金属ケース3に対しても安定的に固定することが可能となる。なおこの接続については螺子留め等で可能である。
【0049】
以上、本ヒーター1は、ファインセラミックスをヒーター部に設けることなく、より簡便にかつ安価に高温度での使用が可能となる面状ヒーターとなる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は面状ヒーターとして産業上の利用可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13