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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189422
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】工業用有害生物防除組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 47/44 20060101AFI20221215BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20221215BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221215BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221215BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20221215BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221215BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20221215BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A01N47/44
A01P3/00
C09J11/06
C09J201/00
C09D5/14
C09D7/63
C09D201/00
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097985
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】大力 啓司
(72)【発明者】
【氏名】濱川 陽
(72)【発明者】
【氏名】山口 友紀
【テーマコード(参考)】
4F100
4H011
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AH03B
4F100AH04B
4F100AH05B
4F100AK01B
4F100AL05B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA12B
4F100CB00B
4F100EH46B
4F100EJ86B
4F100GB90
4F100JC00B
4H011AA02
4H011BB11
4H011DA15
4H011DA16
4J038JB20
4J040HC16
(57)【要約】
【課題】広範囲の有害生物に対して防除効果を示し、業務で若しくは民生において使用でき、また変色などによる工業製品の外観を損なわない、工業用の、有害生物防除組成物を提供する。
【解決手段】イミノクタジンアルキルベンゼンスルホン酸塩、イミノクタジン酢酸塩などのグアニジン化合物と、樹脂および添加剤を含有する接着剤、塗料などとを、混ぜ合わせて有害生物防除組成物を得、この有害生物防除組成物を基材に塗布し、有害生物防除性に優れる成形体を得る。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアニジン化合物を含有する工業用有害生物防除組成物。
【請求項2】
グアニジン化合物がイミノクタジン化合物である、請求項1に記載の工業用有害生物防除組成物。
【請求項3】
イミノクタジン化合物が、塩酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩および酢酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一つの塩である、請求項2に記載の工業用有害生物防除組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかひとつに記載の工業用有害生物防除組成物と樹脂とを含有する、樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂組成物を含有する、成形体。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかひとつに記載の工業用有害生物防除組成物若しくは請求項4に記載の樹脂組成物を含有する、被覆用組成物。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかひとつに記載の工業用有害生物防除組成物若しくは請求項4に記載の樹脂組成物を含有する、接着剤用組成物。
【請求項8】
請求項1~3のいずれかひとつに記載の工業用有害生物防除組成物若しくは請求項4に記載の樹脂組成物を含有する、塗料用組成物。
【請求項9】
基材と、
その上に積層された請求項7に記載の接着剤用組成物からなる層と
を有する、成形体。
【請求項10】
基材と、
その上に積層された請求項8に記載の塗料用組成物からなる層と
を有する、成形体。
【請求項11】
基材と、
その上に被覆された請求項6に記載の被覆用組成物からなる層と
を有する、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害生物防除組成物に関する。より詳細に、本発明は、広範囲の有害生物に対して防除効果を示し、農業若しくは医療を除く、業務で若しくは民生において使用でき、また変色などによる工業製品の外観を損なわない、工業用の、有害生物防除組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油、金属加工油などの工業油剤; 澱粉糊、にかわ、塗工紙、紙用塗工液、塗料、接着剤、補修剤、コーキング材、シーリング材、合成ゴムラテックス、印刷インキ、有機素材フィルム、プラスチック製品、セメント混和剤などの各種工業製品; 工業用の循環冷却水、紙パルプ工業における抄紙工程水などの産業用水;などには、有害生物の繁殖の抑制、有害生物の除去などのために、工業用防腐剤または工業用殺菌剤が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよびポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩を有効成分として含有する、工業用殺菌組成物を開示している。
【0004】
特許文献2は、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩,ポリヘキサメチレンビグアニジン酢酸塩の1種又は2種と2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1.3-ジオールとを相乗効果を奏する割合で有効成分として含有することを特徴とする工業用殺菌・防腐剤を開示している。
【0005】
特許文献3は、新規なグアニジン化合物を開示している。引用文献3は、このグアニジン化合物が工業用殺菌剤として用いることができ、このグアニジン化合物に組み合わせてイミノクタジン酢酸塩などの他の殺菌剤成分を混合して使用できると、教示している。
【0006】
特許文献4は、防菌防黴性グアニジン化合物の全炭素数9以上の親油性基を有する酸の付加塩を含有してなる工業用保存剤を開示している。そして、特許文献4は、防菌防黴性グアニジン化合物として、グアザチン(1,1’-イミノジ(オクタメチレン)ジグアニジン〕、1,8-ジグアニジノオクタン、1,12-ジグアニジノドデカン、8-グアニジノオクチル-3-グアニジノプロピルエーテル、ドデシルグアニジン、グアザチン3酢酸塩、ドデシルグアニジン塩酸塩などを開示している。
【0007】
特許文献5は、3-ヨード-2-プロピニル-n-ブチルカルバメート、アルキルナフタレンスルホン酸塩およびノニオン系界面活性剤を含有する、カビ類の防除、特に木材に繁殖するカビ菌の防除に有効な、水性懸濁状組成物を開示している。特許文献5は、この組成物に、ドデシルグアニジン塩酸塩、ドデシルグアニジン酢酸塩、イミノクタジン酢酸塩等のグアニジン化合物などの成分を共存させることができると述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-175809号公報
【特許文献2】特開2000-53511号公報
【特許文献3】WO 2006/118283 A1
【特許文献4】特開昭62-039503号公報
【特許文献5】WO 2013/146724 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、広範囲の有害生物に対して防除効果を示し、農業若しくは医療を除く、業務で若しくは民生において使用でき、また変色などによる工業製品等の外観を損なわない、工業用の、有害生物防除組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために検討した結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
【0011】
〔1〕 グアニジン化合物を含有する工業用有害生物防除組成物。
〔2〕 グアニジン化合物がイミノクタジン化合物である、〔1〕に記載の工業用有害生物防除組成物。
〔3〕 イミノクタジン化合物が、塩酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩および酢酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一つの塩である、〔2〕に記載の工業用有害生物防除組成物。
〔4〕 〔1〕~〔3〕のいずれかひとつに記載の工業用有害生物防除組成物と樹脂とを含有する、樹脂組成物。
【0012】
〔5〕 〔4〕に記載の樹脂組成物を含有する、成形体。
【0013】
〔6〕 〔1〕~〔3〕のいずれかひとつに記載の工業用有害生物防除組成物若しくは〔4〕に記載の樹脂組成物を含有する、被覆用組成物。
〔7〕 〔1〕~〔3〕のいずれかひとつに記載の工業用有害生物防除組成物若しくは〔4〕に記載の樹脂組成物を含有する、接着剤組成物。
〔8〕 〔1〕~〔3〕のいずれかひとつに記載の工業用有害生物防除組成物若しくは〔4〕に記載の樹脂組成物を含有する、塗料組成物。
【0014】
〔9〕 基材と、 その上に被覆された請求項7に記載の接着剤組成物からなる層と
を有する、成形体。
〔10〕 基材と、 その上に被覆された請求項8に記載の塗料組成物からなる層と
を有する、成形体。
〔11〕 基材と、 その上に被覆された請求項6に記載の被覆用組成物からなる層と
を有する、成形体。
【発明の効果】
【0015】
本発明の工業用有害生物防除組成物は、広範囲の有害生物に対して防除効果を示す。本発明の工業用有害生物防除組成物は、皮膚刺激性などが低いので、農業若しくは医療を除く、業務で若しくは民生において使用できる。本発明の工業用有害生物防除組成物は、変色などの外観の経日変化が生じない各種工業製品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の工業用有害生物防除組成物は、グアニジン化合物を含有するものである。ここで、「工業用」とは、農医薬用を除く、業務用または民生用ということである。有害生物としては、細菌、卵菌、変形菌、真菌(カビ、酵母など)、藻などを挙げることができる。有害生物防除性は、有害生物の繁殖を防ぐ効果および/または有害生物を取り除く効果を有するということである。本発明の工業用有害生物防除組成物は、工業用で特に問題となるアルタナリア属菌にも効果がある。
【0017】
本発明に用いられるグアニジン化合物としては、例えば、ポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)及びその塩(例えば、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩)、クロルヘキシジン及びその塩(例えば、グルコン酸クロルヘキシジン等)、シアノグアニジン、1,1’-(アンモニウムジイルジオクタン-8,1-ジイル)ジグアニジニウム=トリアセタート、塩酸グアニジン、イミノクタジン化合物などを挙げることができる。これらのうち、イミノクタジン化合物が好ましい。
【0018】
イミノクタジン化合物としては、例えば、イミノクタジン、イミノクタジン塩酸塩、イミノクタジンアルキルベンゼンスルホン酸塩、またはイミノクタジン酢酸塩などを挙げることができる。アルキルベンゼンスルホン酸塩の中にはアルベシル酸塩と表記されるドデシルベンゼンスルホン酸塩が含まれる。これらのうち、イミノクタジンアルベシル酸塩またはイミノクタジン酢酸塩が好ましい。
【0019】
イミノクタジンは、1,1’-[イミノジ(オクタメチレン)]ジグアニジンとも表記される。
イミノクタジンアルベシル酸塩は、1,1’―イミニオジ(オクタメチレン)ジグアニジウム=トリス(ドデシルベンゼンスルホネート)とも表記され、一般的に、下記の構造式で表わされる。

【0020】
イミノクタジン酢酸塩は、1,1’―イミニオジ(オクタメチレン)ジグアニジウム=トリアセテートとも表記され、一般的に、下記の構造式で表わされる。

【0021】
本発明の工業用有害生物防除組成物に含有するグアニジン化合物の量は、用途に応じて適宜設定することができ、例えば、工業用有害生物防除組成物100質量部に対して、好ましくは0.0001~1.0質量部、より好ましくは0.0005~0.5質量部、さらに好ましくは0.001~0.3重量部である。
【0022】
本発明の工業用有害生物防除組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、グアニジン化合物を分散又は溶解させることができるものが好ましい。溶媒の具体例としては、例えば、水; ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、2-エチルヘキシルグリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系の溶媒; 蟻酸、酢酸、乳酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸等の有機酸類; メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n-ブタノール等のアルコール類; エタノールアミン、ジメチルアミン、ピリジン等のアミン類; ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類; アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類; ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類; エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のヒドロキシエーテル類; 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類; ヘキサン、ベンゼン、キシレン、トルエン等の炭化水素類; ジクロロメタン、四塩化炭素、クロロホルム、チリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類; アセトニトリル; 鉱油、合成炭化水素油、合成エステル油、天然油脂、天然油脂誘導体、エーテル油、シリコン油、フッ素油等を挙げることができる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて、用いることができる。
【0023】
本発明の工業用有害生物防除組成物に含有する溶媒の量は、用途に応じて適宜設定することができ、例えば、工業用有害生物防除組成物100質量部に対して、好ましくは5~90質量部、より好ましくは10~70質量部、さらに好ましくは30~60重量部である。
【0024】
本発明の工業用有害生物防除組成物は、グアニジン化合物以外の、抗微生物性を有する成分をさらに含有することができる。抗微生物性を有する成分としては、抗菌成分、殺菌成分、抗ウイルス成分、防黴成分、防腐成分、防藻成分などを挙げることができる。これらは1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
本発明の工業用有害生物防除組成物は、その目的および用途に応じて、他の成分をさらに含有することができる。他の成分としては、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、染料/顔料、離型剤、遮熱剤、分散剤、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、粘度調整剤、金属封鎖剤、摩擦調整剤、フィラー、ラック貝殻虫の殻などを挙げることができる。これらは1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明の工業用有害生物防除組成物は、その目的および用途に応じて、製剤化することができる。製剤の剤型としては、例えば、水懸濁剤、油剤などを含む液剤、ペースト剤、粉剤、粒剤、マイクロカプセルなどを挙げることができる。
【0027】
液体状の本発明の工業用有害生物防除組成物は、他の材料に、添加、混合、塗布、噴霧、含浸などをさせることができる。固体状の本発明の工業用有害生物防除組成物は、他の材料に、添加、混合、散布、付着などをさせることができる。このようにすることによって、他の材料に、有害生物防除性を付与することができる。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、本発明の工業用有害生物防除組成物と樹脂とを含有するものである。
樹脂は、樹脂組成物の用途、求められる性能等に応じて、適宜選択することができる。本発明における樹脂は、広義の樹脂であり、狭義の樹脂以外に、エラストマー、ゴムなどを包含する。本発明における樹脂は、熱可塑性の樹脂であっても、熱硬化性の樹脂であっても、光硬化性の樹脂であってもよい。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリロニトリル共重合体、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル-スチレン-N-置換マレイミド三元共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂、スチレン-無水マレイン酸-N-置換マレイミド共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体およびその水添物、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体およびその水添物、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテル、シクロオレフィンポリマー、液晶ポリエステル樹脂、液晶ポリマー、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリビニルピロリドン、天然ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリサルファイドなどを挙げることができる。
【0030】
熱硬化性樹脂は、加熱することによって、重合反応若しくは架橋反応が進行して、硬化するものである。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド、ジアリルフタレート樹脂などを挙げることができる。熱可塑性樹脂に、加硫剤、硬化剤または架橋剤を配合してなるものであってもよい。
【0031】
光硬化性樹脂は、紫外線などの光を照射することによって、重合反応若しくは架橋反応が進行して、硬化するものである。例えば、光ラジカル発生剤、光カチオン発生剤、光酸発生剤、光塩基発生剤などの光開始剤を所望のモノマーまたはオリゴマーに配合してなるものである。光硬化性樹脂に用い得るモノマーまたはオリゴマーは特に制限されず、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物; キシリレンビスオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンなどのオキセタン化合物; シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのビニルエーテルモノマーなどを挙げることができる。
【0032】
その他の樹脂として、シリコーン、アクリルシリコーン、変性シリコーン、漆、膠、石油樹脂、水添石油樹脂; 米・小麦・トウモロコシ・ジャガイモ、サツマイモ、タピオカなどの澱粉およびその他の天然物またはそれらなどを原料とした生分解性プラスチックなどを挙げることができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物に含有する樹脂の量は、用途に応じて適宜設定することができ、例えば、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは5~99重量部、より好ましくは30~95重量部、さらに好ましくは50~90重量部である。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、本発明の工業用有害生物防除組成物と樹脂と必要に応じて公知の樹脂用添加剤とを、公知の方法で混ぜわせることによって得ることができる。樹脂用添加剤としては、酸化防止剤、熱劣化防止剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、蛍光体、フィラー、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、可塑剤、乾燥促進剤、界面活性剤、消泡剤、皮張り防止剤、低温造膜剤、造膜助剤、増粘剤、レベリング剤、分散剤、沈降防止剤、硬化剤、硬化助剤、凍結防止剤などを挙げることができる。
【0035】
本発明の工業用有害生物防除組成物と樹脂と必要に応じて用いる公知の樹脂用添加剤との混合は、例えば、ニーダールーダー、単軸または多軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの公知の混合装置または混練装置を使用して行なうことができる。硬化前の液状の熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂は、タンクブレンドによって、本発明の工業用有害生物防除組成物と必要に応じて公知の樹脂用添加剤とを混ぜ合わせることができる。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、公知の成形法によって所望の形状にすることができる。また、液体状の本発明の樹脂組成物は、他の材料に、添加、塗布、噴霧、含浸させることができる。固体状の本発明の樹脂組成物は、他の材料に、混合、付着させることができる。
【0037】
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を含有するものである。本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を公知の成形法によって所望の形状にすることによって得ることができる。成形法としては、押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、キャスト成形法、積層成形法、積層造形法、粉体成形法などを挙げることができる。
【0038】
本発明の被覆用組成物は、本発明の工業用有害生物防除組成物若しくは本発明の樹脂組成物を含有するものである。液体状の本発明の被覆用組成物は、基材の上に、刷毛塗り、ロールコート、バーコート、スプレーコートなどの塗布法によって、載せて、次いで、乾燥させ、必要に応じて硬化させることによって、基材を被覆することができる。固体状の本発明の被覆用組成物は、基材の上に、粉散布、シート掛け、フィルム掛けなどによって、載せて、圧着、融着若しくは接着することによって、基材を被覆することができる。
【0039】
本発明の接着剤用組成物または塗料用組成物は、本発明の工業用有害生物防除組成物若しくは本発明の樹脂組成物を含有するものである。本発明の接着剤用組成物または塗料用組成物は、接着剤若しくは塗料に適する特性を具備する。特性としては、流動性、粘着性、塗布性、成膜性、耐ブリスタ性、密着性、接着性、封止性、装飾性などを挙げることができる。このような特性は、使用する樹脂の種類や量、溶媒の種類や量、添加剤の種類や量などを、適宜、選定することによって、実現できる。
【0040】
本発明の工業用有害生物防除組成物、樹脂組成物、被覆用組成物、接着剤用組成物、または塗料用組成物は、種々の用途に、利用することができる。例えば、浴室の内装材、フロアマット、壁用シート、壁紙、障子紙、床材、手すり材、天井材、不燃木材、シーリング剤、コーキング剤、封止剤、接着剤(アクリル系、オレフィン系、ウレタン系、エポキシ系、天然系)、塗料(油性塗料、酒精塗料、NAD塗料、電着塗料、粉体塗料、セルロース塗料、合成樹脂塗料、水性塗料、漆系塗料、ゴム系塗料、ウレタン系塗料、シリコーン系塗料など)、 集成材、化粧合板およびその他の木質材、合成木材、疑似木材、再生木材、断熱材、遮熱材、石膏ボード、その他の建材; フィルム、シート; 樹脂系サイディング、窯業系サイディング、タイル、ひさし材、屋根材、外壁材等の建築物の外装材; 澱粉糊、紙用塗工液、塗料、接着剤、補修剤、セラミック材料、セメント混和剤、金属加工油などを挙げることができる。
【0041】
合成樹脂塗料としては、フェノール樹脂塗料、フタル酸樹脂塗料(例えば、アルキド樹脂塗料など)、マレイン酸樹脂塗料、尿素樹脂塗料、メラミン樹脂塗料、ビニル樹脂塗料(例えば、酢酸ビニル樹脂塗料、塩化ビニル樹脂塗料、スチレン樹脂塗料、アクリル酸樹脂塗料、ポリビニルブチラール樹脂塗料など)、エポキシ樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、フラン樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、ニトロセルロース樹脂塗料、アミノ樹脂塗料、フッ素樹脂塗料などを挙げることができる。
【0042】
水性塗料としては、水性ペイント、エマルション油ペイント、乳化重合塗料(例えば、酢酸ビニル樹脂乳化重合塗料、塩化ビニリデン塩化ビニル共重合体乳化重合塗料、アクリル酸樹脂乳化重合塗料、スチレン樹脂乳化重合塗料、合成ゴムラテックス塗料など)などを挙げることができる。
【0043】
本発明の別の態様の成形体は、基材と、その上に積層された本発明の樹脂組成物、接着剤用組成物または塗料用組成物からなる層とを有するものである。
本発明に用い得る基材は、特に限定されない。基材としては、例えば、建築物全般、建築資材、金属、ゴム、木質材、プラスチック製品、繊維、布、紙、セラミクス、コンクリート、ブロック、レンガなどを挙げることができる。本発明の樹脂組成物、接着剤用組成物または塗料用組成物からなる層は、色調が経日変化し難いので外観を損なわず、且つ優れた有害生物防除性を示す。基材への積層は、公知の方法で行うことができる。例えば、多色押出成形法、被覆押出成形法、接着法、融着法、塗布法、噴霧法、粉体成形法、インモールド成形法、フィルムインサート成形法などを挙げることができる。
【0044】
本発明の実施形態を以下の実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、これら実施例によって制限されるものでない。
【0045】
<耐光性評価試験>
1) 10cm間隔で配置した3本のブラックライト(東芝製、蛍光ランプ FL20S・BLB)の10cm下に、塗工紙を、置いて、72時間または96時間、照射した。照射前および照射後に、日本電色工業社製の分光式色彩計 SE2000 を用いて、塗工紙の、L*値、a*値およびb*値を、測定した。照射前の塗工紙のL*値、a*値およびb*値と照射後の塗工紙のL*値、a*値およびb*値とから、色空間における両者間のユークリッド距離を算出し、それを色差ΔELとした。
2) 10cm間隔で配置した3本のブラックライト(東芝製、蛍光ランプ FL20S・BLB)の10cm下に、塗工紙を、置いて、72時間、照射した。次いで1本の殺菌灯(東芝製、殺菌ランプGL15)の13cm下に、塗工紙を、置いて、24時間、照射した。照射前および照射後に、日本電色工業社製の分光式色彩計 SE2000 を用いて、塗工紙の、L*値、a*値およびb*値を、測定した。照射前の塗工紙のL*値、a*値およびb*値と照射後の塗工紙のL*値、a*値およびb*値とから、色空間における両者間のユークリッド距離を算出し、それを色差ΔELとした。
【0046】
<耐熱性評価試験>
100℃に設定された恒温器内に塗工紙を入れ、72時間または96時間、放置した。高温度放置前および高温度放置後に、日本電色工業社製の分光式色彩計 SE2000 を用いて、塗工紙の、L*値、a*値およびb*値を、測定した。高温度放置前の塗工紙のL*値、a*値およびb*値と高温度放置後の塗工紙のL*値、a*値およびb*値とから、色空間における両者間のユークリッド距離を算出し、それを色差ΔETとした。
【0047】
(実施例1)
イミノクタジン酢酸塩 40% 製剤(日本曹達(株)製、「ベフラン原体40」)に水を加えて撹拌した。これを、壁紙施工用のでん粉系接着剤に添加し、水で濃度調整しながら撹拌して、接着剤100部、イミノクタジン酢酸塩0.1部、および水77.8部を含む接着剤用組成物を得た。接着剤用組成物を、ろ紙に500g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙aを得た。ブラックライト96時間照射における色差ΔELは2.0で、100℃96時間放置における色差ΔETは1.0であった。
【0048】
(実施例2)
イミノクタジンアルベシル酸塩 30% エマルション(日本曹達(株)製、「ベルクートフロアブル」)を、壁紙施工用のでん粉系接着剤に添加し、水で濃度調整しながら撹拌して、接着剤100部、イミノクタジンアルベシル酸塩0.1部、および水77.8部を含む接着剤用組成物を得、ろ紙に500g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙bを得た。ブラックライト96時間照射における色差ΔELは2.0で、100℃96時間放置における色差ΔETは0.2であった。
【0049】
(実施例3)
イミノクタジンアルベシル酸塩 30% エマルション(日本曹達(株)製、「ベルクートフロアブル」)を、アクリル樹脂エマルジョン塗料(白色)に添加し、水で濃度調整しながら撹拌して、塗料100部、イミノクタジンアルベシル酸塩0.1部、および水15部を含む塗料用組成物を得た。塗料用組成物を、ろ紙に260g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙cを得た。ブラックライト96時間照射における色差ΔELは0.6で、100℃96時間放置における色差ΔETは0.3で、ブラックライト72時間照射次いで殺菌灯24時間照射における色差ΔELは1.1であった。
【0050】
(実施例4)
イミノクタジンアルベシル酸塩 30% エマルション(日本曹達(株)製、「ベルクートフロアブル」)を、アクリル樹脂エマルジョン塗料(透明)に添加し、撹拌して、塗料100部、およびイミノクタジンアルベシル酸塩0.1部を含む塗料用組成物を得た。塗料用組成物を、ろ紙に350g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙dを得た。ブラックライト72時間照射における色差ΔELは0.1で、100℃96時間放置における色差ΔETは2.2であった。
【0051】
(比較例1)
2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン(略名:TCMSP)に水を加えて撹拌した。これを、壁紙施工用のでん粉系接着剤に添加し、水で濃度調整しながら撹拌して、接着剤100部、TCMSP0.1部、および水77.8部を含む接着剤用組成物を得た。接着剤用組成物を、ろ紙に500g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙eを得た。100℃96時間放置における色差ΔETは9.8であった。
【0052】
(比較例2)
2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(略名:OIT)に水を加えて撹拌した。これを、壁紙施工用のでん粉系接着剤に添加し、水で濃度調整しながら撹拌して、接着剤100部、OIT0.1部、および水77.8部を含む接着剤用組成物を得た。接着剤用組成物を、ろ紙に500g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙fを得た。100℃96時間放置における色差ΔETは3.6であった。
【0053】
(比較例3)
ジンクピリチオンに水を加えて撹拌した。これを、壁紙施工用のでん粉系接着剤に添加し、水で濃度調整しながら撹拌して、接着剤100部、ジンクピリチオン0.1部、および水77.8部を含む接着剤用組成物を得た。接着剤用組成物を、ろ紙に500g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙gを得た。ブラックライト96時間照射における色差ΔELは15.8であった。
【0054】
(比較例4)
カルベンダジンに水を加えて撹拌した。これを、壁紙施工用のでん粉系接着剤に添加し、水で濃度調整しながら撹拌して、接着剤100部、カルベンダジン0.1部、および水77.8部を含む接着剤用組成物を得た。接着剤用組成物を、ろ紙に500g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙hを得た。100℃96時間放置における色差ΔETは4.2であった。
【0055】
(比較例5)
3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(略名:IPBC) 20% 製剤に水を加えて撹拌した。これを、壁紙施工用のでん粉系接着剤に添加し、水で濃度調整しながら撹拌して、接着剤100部、IPBC0.1部、および水77.8部を含む接着剤用組成物を得た。接着剤用組成物を、ろ紙に500g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙iを得た。ブラックライト96時間照射における色差ΔELは10.0であった。
【0056】
(比較例6)
IPBC20%製剤を、アクリル樹脂エマルジョン塗料(白色)に添加し、水で濃度調整しながら撹拌して、塗料100部、IPBC0.1部、および水15部を含む塗料用組成物を得た。塗料用組成物を、ろ紙に260g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙jを得た。ブラックライト72時間照射次いで殺菌灯24時間照射における色差ΔELは5.2であった。
【0057】
(比較例7)
OITを、アクリル樹脂エマルジョン塗料(透明)に添加し、撹拌して、塗料100部およびOIT0.1部を含む塗料用組成物を得た。塗料用組成物を、ろ紙に350g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙kを得た。ブラックライト72時間照射における色差ΔELは4.3であった。
【0058】
(比較例8)
OITをジンクピリチオンに変更した以外は、比較例7と同じ方法で、塗料100部およびジンクピリチオン0.1部を含む塗料用組成物を得た。塗料用組成物を、ろ紙に350g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙lを得た。ブラックライト72時間照射における色差ΔELは4.3であった。
【0059】
(比較例9)
OITをカルベンダジンに変更した以外は、比較例7と同じ方法で、塗料100部およびカルベンダジン0.1部を含む塗料用組成物を得た。塗料用組成物を、ろ紙に350g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙mを得た。100℃72時間放置における色差ΔETは4.5であった。
【0060】
(比較例10)
OITをIPBC20%製剤に変更した以外は、比較例7と同じ方法で、塗料100部およびIPBC0.1部を含む塗料用組成物を得た。塗料用組成物を、ろ紙に350g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙nを得た。ブラックライト72時間照射における色差ΔELは4.0であった。
【0061】
上記の結果から明らかなように、本発明の組成物を塗布した紙は、いずれも、色の経日変化が小さい。
【0062】
<塗料防カビ試験>
JIS Z 2911を参考にして、次のように行った。
黴(Alternaria alternata)を培養した斜面培地に界面活性剤液を加えて胞子懸濁液を得た。寒天培地の中央に試験片1枚を置き、これに胞子懸濁液を滴下した。蓋をして14日間培養した。その後、黴の発生状態を観察した。
【0063】
(実施例5)
イミノクタジンアルベシル酸塩 30% エマルション(日本曹達(株)製、「ベルクートフロアブル」)を、アクリル樹脂エマルジョン塗料(白色)に添加し、撹拌して、塗料100部、およびイミノクタジンアルベシル酸塩0.3部を含む塗料用組成物を得た。塗料用組成物を、ろ紙に200g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙oを得た。塗工紙oを40mm角に切り取り、小片を得た。小片を、40℃の水に24時間浸漬し、次いで風乾して、試験片を得た。塗料防カビ試験において、試験片に黴の発生はほぼ認められなかった。
【0064】
(比較例11)
カルベンダジン 30% 製剤(日本曹達(株)製、「バイオカット-BM30」)を、アクリル樹脂エマルジョン塗料(白色)に添加し、撹拌して、塗料100部、およびカルベンダジン0.3部を含む塗料用組成物を得た。塗料用組成物を、ろ紙に200g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙pを得た。塗工紙pを40mm角に切り取り、試験片を得た。塗料防カビ試験において、試験片の2/3以上の面積で黴が発生した。
【0065】
(比較例12)
アクリル樹脂エマルジョン塗料(白色)を、ろ紙に200g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙qを得た。塗工紙qを40mm角に切り取り、試験片を得た。塗料防カビ試験において、試験片の2/3以上の面積で黴が発生した。
【0066】
<澱粉糊防カビ試験>
JIS A 6922を参考にして、次のように行った。
黴(Alternaria alternata)を培養した斜面培地に界面活性剤液を加えて胞子懸濁液を得た。寒天培地に胞子懸濁液0.1mlを均一に接種した。寒天培地の中央に試験片1枚を置き、胞子懸濁液0.05mlを滴下した。蓋をして14日間培養した。その後、黴の発生状態を観察した。
【0067】
(実施例6)
イミノクタジン酢酸塩 40% 製剤(日本曹達(株)製、「ベフラン原体40」)に水を加えて撹拌した。これを、壁紙施工用のでん粉系接着剤に添加し、水で濃度調整しながら撹拌して、接着剤100部、イミノクタジン酢酸塩0.0066部、および水78部を含む接着剤用組成物を得た。接着剤用組成物を、ろ紙の両面に75g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙rを得た。塗工紙rを直径30mmに切り取り、試験片を得た。澱粉糊防カビ試験において、試験片に菌糸の生育は認められなかった。
【0068】
(比較例13)
OITを、壁紙施工用のでん粉系接着剤に添加し、水で濃度調整しながら撹拌して、接着剤100部、OIT0.04部、および水80部を含む接着剤用組成物を得た。接着剤用組成物を、ろ紙の両面に75g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙sを得た。塗工紙sを直径30mmに切り取り、試験片を得た。澱粉糊防カビ試験において、試験片に菌糸の生育が認められた。
【0069】
(比較例14)
IPBC20%製剤を、壁紙施工用のでん粉系接着剤に添加し、水で濃度調整しながら撹拌して、接着剤100部、IPBC0.02部、および水80部を含む接着剤用組成物を得た。接着剤用組成物を、ろ紙の両面に75g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙tを得た。塗工紙tを直径30mmに切り取り、試験片を得た。澱粉糊防カビ試験において、試験片に菌糸の生育が認められた。
【0070】
(比較例15)
壁紙施工用のでん粉系接着剤を水で希釈し、接着剤100部、および水78部を含む接着剤用組成物を得た。接着剤用組成物を、ろ紙の両面に75g/m2にて塗布し、室温にて乾燥させて、塗工紙uを得た。塗工紙uを直径30mmに切り取り、試験片を得た。澱粉糊防カビ試験において、試験片に菌糸の生育が認められた。
【0071】
上記の結果から明らかなように、本発明の組成物を塗布した紙は、有害生物防除性に優れている。