(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189433
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】視標提示装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/032 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
A61B3/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098003
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳 英一
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316AB06
4C316AB08
4C316FA01
4C316FB11
4C316FB12
4C316FB16
4C316FY08
(57)【要約】
【課題】視標の背景色を、所望の色味に簡易に変更することができる視標提示装置を提供する。
【解決手段】視標提示装置10は、被検眼Eに対して、眼特性を検査するための視標を提示する視標表示部12aと、視標を表示する背景の色に関する色情報の指定を受け付ける操作部15と、操作部15で受け付けた色情報に基づき、視標の背景色を設定する制御部14と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に対して、眼特性を検査するための視標を提示する視標表示部と、
前記視標を表示する背景の色に関する色情報の指定を受け付ける入力部と、
前記入力部で受け付けた前記色情報に基づき、前記視標の背景色を設定する背景色設定部と、
を備えることを特徴とする視標提示装置。
【請求項2】
前記視標表示部は、少なくともRGBの3色を含む複数の画素を有し、各色の前記画素の階調を変化させることで前記視標のカラー表示が可能な電子表示デバイスを備え、
前記背景色設定部は、前記入力部で受け付けた前記色情報に基づき、前記背景に対応する各色の前記画素の階調を算出し、算出結果に基づき前記電子表示デバイスを制御して前記画素の階調を変化させることで、前記背景色を設定することを特徴とする請求項1に記載の視標提示装置。
【請求項3】
前記色情報ごとに、当該色情報と、各色の前記画素の階調とが対応づけられたテーブルが記憶されている記憶部を備え、前記背景色設定部は、前記入力部で受け付けた前記色情報に基づき、前記記憶部の前記テーブルから取得した各色の前記画素の階調に基づいて、前記背景に対応する各色の前記画素の階調を算出することを特徴とする請求項2に記載の視標提示装置。
【請求項4】
前記視標表示部は、前記背景を照明する光源を備え、
前記背景色設定部は、前記色情報に基づき、前記光源を制御して当該光源の色度を変化させることにより、前記背景色を設定することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の視標提示装置。
【請求項5】
前記色情報が、前記背景色の色温度及び前記色温度に対応する色名の何れかであり、前記入力部は、少なくとも2以上の前記色温度及び少なくとも2以上の前記色名を選択可能に構成されたことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の視標提示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視標提示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検眼の視機能を検査するために、被検眼に視力検査視標を提示する視標提示装置が知られている。このような視標提示装置として、従来は紙やパネルに印刷された視標をタングステンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、LED等の光源によって照明して提示するもの、光源によってスクリーンに視標を投影して提示するもの等が用いられているが、昨今はバックライトによって照明した液晶等の電子表示デバイスに視標を表示させるものが多く用いられている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これらの視標は、一般的には白地の背景に、黒い視標が表示されているが、タングステンやハロゲンランプを光源とする視標の背景は色温度が低く、背景が赤みを帯びた白に見える。これに対して電子表示デバイスの背景は、色温度が高く、背景が青白く見えるものが多い。また、蛍光灯にも、赤みを帯びた電球色から青白い昼光色まで、複数の色があり、照明される背景の色味が異なる。このため、光源の異なる複数種類の視標提示装置が混在する場合は、装置ごとに背景の色味が異なってしまい、被検者は違和感を覚える場合がある。
【0004】
特許文献1には、装置ごとの白地背景の輝度のばらつきを抑制するため、装置ごとに予め設定された所定の調整値に従って、ディスプレイの背景を照明するバックライトの光量を制御し、背景の輝度を切り替えることが開示されている。しかしながら、バックライトの光量を制御するだけでは、白地背景の色味のばらつきを解消することはできない。また、電子表示デバイスの場合は、RGBのいずれかの画素の輝度を下げれば色味を変化させることができるが、単に画素の輝度を下げただけでは、背景が暗くなってしまい、見た目や視力検査結果に影響してしまう。背景を暗くすることなく、色味を変化させるには、RGBの3色のバランスを考慮する必要があるため、目的の色味を再現するのは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、視標の背景色を、所望の色味に簡易に変更することができる視標提示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の視標提示装置は、被検眼に対して、眼特性を検査するための視標を提示する視標表示部と、前記視標を表示する背景の色に関する色情報の指定を受け付ける入力部と、前記入力部で受け付けた前記色情報に基づき、前記視標の背景色を設定する背景色設定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された視標提示装置では、視標の背景色を、所望の色味に簡易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る視標提示装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】視標表示部の画像表示領域に表示される背景と、視標の模式図である。
【
図3】操作部の模式図であり、(1)は第1実施形態の操作部の模式図を示し、(2)は変形例の操作部の模式図を示す。
【
図4】色情報ごとに、色情報と、RGBの各色の画素の階調とが対応づけられて設定されたテーブルの説明図であり、(1)は変換テーブルのテーブル構成を示し、(2)は階調値テーブルのテーブル構成を示す。
【
図5】第2実施形態に係る視標提示装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の視標提示装置の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、
図1~
図4に基づいて、第1実施形態に係る視標提示装置10の構成を説明する。
【0011】
第1実施形態に係る視標提示装置10は、被検眼Eの眼特性を検査するための視標を、白色の背景に表示して、被検眼Eに提示する装置であり、この背景の色(背景色)を、ユーザである検者等の指定に応じて設定可能となっている。
【0012】
ここで、「背景色を設定」とは、背景色である白色の色味を、ユーザの指定に応じて所望の色味に設定(変更)することである。「色味」とは、色の濃淡やずれの具合、微妙な色合いのことである。例えば「白色」では、「赤味を帯びた白色」、「青味を帯びた白色」など、光や色の混合状態で、色味が異なって見える。
【0013】
このため、視標提示装置や、視標提示手段を有する検眼装置等、被検眼Eに視標を提示可能な装置においては、視標を照明するバックライト等の光源の種類や、室内を照明する蛍光灯等の光により、視標の白色が機種ごとに異なる場合があり、異なる機種の視標提示装置が混在する場合に、被検者に違和感を与えることがある。この問題を解決すべく、第1実施形態に係る視標提示装置10は背景色を、所望の色味に設定可能としたものである。
【0014】
第1実施形態に係る視標提示装置10は、
図1に示すように、筐体11、視標提示光学系12、記憶部としてのメモリ13、及び背景色設定部としての制御部14を有する本体部1と、入力部としての操作部15と、本体部1が載置される検眼テーブル16と、を備えている。
【0015】
本体部1は、筐体11に、視標提示光学系12やメモリ13、制御部14等を内蔵し、検眼テーブル16等に据え置かれる。この筐体11の前面(被検者P側)には、被検者Pが視標を視認するための窓部11aが設けられている。
【0016】
視標提示光学系12は、視標表示部12aと、第1反射ミラー12bと、レンズ12cと、第2反射ミラー12dと、を備えている。
【0017】
第1実施形態では、視標表示部12aは、バックライト(光源)によって照明される白色の背景に、所定の視標を表示する液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)デバイスからなる。この視標表示部12aは、液晶ディスプレイの他、有機ELディスプレイ(OELD:organic electroluminescent display)等が好適に挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
視標は、検眼に用いられるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ランドルト環、スネレン視標、Eチャート等が好適に挙げられる。また、視標は、ひらがなやカタカナ等の文字、動物や指等の絵等からなる視標、十字視標等の両眼視機能検眼用の特定の図形や風景画や風景写真等からなる視標等、様々な視標とすることができる。
【0019】
視標提示光学系12は、視標表示部12aからの光束を第1反射ミラー12bによってレンズ12cに向けて反射し、このレンズ12cによって屈折して、被検眼Eからの遠用視検眼距離に視標の虚像iを結像する。そして、レンズ12cを透過した光束を第2反射ミラー12dによって反射することで、被検眼Eの前方の遠用視検眼距離に視標を提示する。被検者Pは、筐体11に設けられた窓部11aを介して視標を視認する。
【0020】
また、視標提示装置10は、
図1に仮想線で示すように、窓部11aと被検眼Eとの間に、被検眼Eの視機能を矯正するための検眼ユニット(レフラクターヘッド)17を備えてもよい。検眼ユニット17は、偏光フィルタ、球面レンズ、円柱レンズ、プリズム等の複数の光学部材を内蔵し、左右の被検眼Eに対応して設けられた検眼窓に、これらの光学部材を選択的に配置可能となっている。被検者Pは、この検眼ユニット17で被検眼Eの視機能が矯正された状態で、窓部11aを介して視標を視認することができる。
【0021】
電子表示デバイスからなる視標表示部12aは、R(赤)G(緑)B(青)の3色を含む複数の画素を有し、各色の画素の階調(階調値)を変更可能な階調変更機能を有している。そして、視標表示部12aは、制御部14の制御の下、各色の画素の階調を変更することで、視標の色を変更することが可能となっている。なお、画素の色がRGBの3色に限定されず、4色以上であってもよい。
【0022】
「階調」とは、色の濃度や明るさを段階的に示す段階数であり、第1実施形態では8ビット256階調(0~255)としているが、これに限定されない。視標表示部12aでは、
図2に示す画像表示領域100内の背景102の階調の初期値(default)が、最適な輝度値(例えば200Cd/m
2)となる白色とされ、R、G、B各色の画素の階調が同じ値になるように設定されている。例えば、階調値は、最大値255階調中98階調(R:98、G:98、B:98)に設定されている。そして、操作部15から入力された色情報に基づき、制御部14がRGBの各色の画素の階調を算出し、算出した階調に基づいて視標表示部12aは背景102のRGBの各画素の階調を変化させる。これにより、背景色が所望の色味の白色に設定される。
【0023】
一方、視標を形成する視標領域101の階調が、最も暗い(透過率が低い)状態(黒色)となる0階調(R:0、G:0、B:0)に設定されているが、視標領域101の階調を変更することで、背景102に対する視標のコントラストを変化させることができる。これにより、被検眼Eのコントラスト感度を測定するコントラスト検査等を行うことができる。
【0024】
メモリ13は、RAM、ROM、半導体メモリ、ハードディスクドライブ等の記憶媒体から構成される。メモリ13は、制御部14が処理を実行するためのプログラムや各種の情報等が予め記憶されるとともに、制御部14の処理によって得られた各種の情報等が記憶される。また、メモリ13には、背景色に関する色情報ごとに、この色情報と、RGBの各色の画素の階調とが対応づけられて設定されたテーブルが記憶されている。
【0025】
図4に、本実施形態で用いるテーブルの一例を示す。
図4の(1)は、変換テーブルT1の一例であり、各色の画素の階調を、初期値(default)から、色情報に対応する値に変換するための補正値が設定されたテーブルである。この変換テーブルT1に示されるように、第1実施形態では、色情報として色温度を用いている。変換テーブルT1には、2000Kから8000Kまで、1000K刻みで7つの色温度と、色温度ごとに、RGBの各色の輝度値の補正値が設定されている。これらの補正値は、色温度を7段階のいずれに変更しても、背景102の見かけの明るさ(輝度)が変化しないよう、RGBの各画素のバランスを考慮した値が設定されている。
【0026】
つまり、色味を変化させるだけであれば、R、G、B各画素の階調値を個々に変更することでも達成できる。例えば、赤みを帯びた白色の背景色とする場合は、前述の(R:98、G:98、B:98)に対して、(R:98、G:95、B90)のようにGやBの階調値を低くするだけでも可能であるが、略黒体放射軌跡に沿って色味をコントロールするのは困難であるうえ、背景の輝度が低下してしまい、検査結果に影響することがある。このため、RGBのバランスを考慮して、各々の階調値を調整し、見かけの明るさ(輝度)を低下させることなく、背景の色味を略黒体放射軌跡に沿って変える必要がある。これを実現するべく、本実施形態では、ユーザ等は、RGBの色ごとに、階調値の補正値を設定している。
【0027】
図4の(2)は、初期値(default)の階調が98であった時に、この初期値に対して、色温度ごとに、(1)の変換テーブルT1から取得したRGBの各色の画素の補正値を乗算して得た階調値を示したものである。例えば、色温度が2000Kの場合、変換テーブルT1から、補正値として、R=2.595、G=0.675、B=0.112が選択される。これらの補正値と、階調値の各初期値R=98、G=98、B=98とを乗算することで、補正後の階調値R=254、G=66、B=11が得られる。RGBの各画素の階調値の初期値(default)は、視標表示部12aである電子表示デバイスや視標提示光学系12の個体差を考慮して、電子表示デバイスが適切な輝度なるように、256階調中の最適な階調に調整された値が設定されている。また、初期値が決まっていれば、乗算した結果、
図4の(2)をテーブルとして記憶し、設定された色温度に対応する階調値を直接読み出すものでもよい。
【0028】
変換テーブルT1の補正値は、
図4に示す数値に限定されず、電子表示デバイスの種類に応じた分光特性値に基づく数値、又は個々の電子表示デバイスの分光特性値に基づく数値を設定することができる。
【0029】
変換テーブルT1の色温度及び各色の画素の補正値は、製造時等にメモリ13に変更不能に記憶されてもよいし、ユーザやメンテナンス業者等が、操作部15等から変更可能に記憶されてもよい。また、階調値テーブルT2の各値も、メモリ13に変更不能に記憶されてもよいし、変更可能に記憶されてもよい。変更可能な場合は、例えば、ユーザ等が階調値の初期値を変更すると、制御部14が、この変更後の初期値と変換テーブルの補正値に基づいて、色温度ごとに(又は操作部15で選択された色温度の)、各色の画素の輝度を再計算して、階調値テーブルT2に格納する構成とすることができる。
【0030】
制御部14は、CPU等のマイクロプロセッサ等から構成される。制御部14は、操作部15からの操作指示等の信号に従って、視標提示装置10全体の動作を制御するとともに、視標表示部12aへの視標の表示制御部、第1反射ミラー12bの駆動機構の駆動制御部、視標表示部12aの背景色を設定(変更)する背景色設定部等としても機能する。
【0031】
背景色設定部としての制御部14は、操作部15から色温度を取得し、取得した色温度に基づいてメモリ13に記憶されたテーブル(階調値テーブルT2)を検索し、色温度に対応するRGBの各色の画素の補正後の階調値を取得する。そして、取得した階調値に基づき、視標表示部12aを制御することで、視標表示部12aの画像表示領域100には、選択された色温度に対応する色味に調整された背景色で、背景102が表示される。
【0032】
操作部15は、ユーザである検者が操作するユーザインターフェイスであり、情報や操作指示の入力を行う入力部としての機能を備える。この操作部15は、本実施形態では、ユーザが視標提示装置10から離れた場所から遠隔操作可能なリモートコントローラからなる。操作部15を介して入力された情報や操作指示は、信号に変換されて制御部14に入力される。
【0033】
なお、操作部15はリモートコントローラに限定されず、リモートコントローラに代えて又は、リモートコントローラに加えて、筐体11に設けられたボタン、キー、コントロールレバーや、制御部14と通信可能なパーソナルコンピュータや携帯端末等の操作デバイス(マウス、キーボード、トラックパッド、ボタン、タッチパネル等)等を含んでいてもよい。また、操作部15は、音声に基づいて操作や入力を行うためのプロセッサ及びコンピュータプログラムを含んでもよい。
【0034】
本実施形態の操作部15の概略図を、
図3の(1)に示す。この図に示すように、操作部15は、入力した情報等が表示される表示部15aと、各種情報や操作指示を入力する各種操作ボタン15bと、色情報としての色温度を選択する色選択ボタン15cと、選択された色温度が表示される色表示部15dと、等を有する。表示部15a及び色表示部15dは、LED等の電子表示デバイスからなる。色選択ボタン15cは、色温度を高くするボタンと、色温度を低くするボタンとを有し、これらのボタンを押すたびに、色温度が高く又は低く切り替わって色表示部15dにデジタル表示される。選択された色温度に対応する信号が、操作部15から制御部14に入力される。この入力は、色温度を選択して所定時間(数秒)が経過したときに自動で行われてもよいし、色選択ボタン15cとは別個に決定ボタンを設け、この決定ボタンが押されたときに行われてもよい。
【0035】
なお、色表示部15dが電子表示デバイスに限定されることはなく、数字が印刷された部材が、色選択ボタン15cの操作に従って機械的に切り替わる構成でもよい。また、本実施形態では、色温度が2000Kから8000Kまで、1000K刻みで選択できる構成としているが、これに限定されることはなく、1K、10K、50K、100K,・・・のように、より細かい数値で色温度を選択できる構成としてもよい。この場合、ユーザ等は、選択できる色温度ごとに、変換テーブルT1や階調値テーブルT2の値を設定する。色表示部15dは、表示部15aに表示される構成であってもよいし、色選択ボタン15cは、各種操作ボタン15bの一部を使用するものであってもよい。この場合、ユーザ等がモード選択を切り替えることで、表示部15aに色表示部15dの内容が表示され、各種操作ボタン15bの一部ボタンの機能が色選択ボタン15cとして機能する。
【0036】
以下、上述のような構成の第1実施形態に係る視標提示装置10の動作(使用例)を説明する。第1実施形態の視標提示装置10において、視標が表示される背景102の背景色を所望の色味に設定するには、まず、検者は、操作部15の色選択ボタン15cを操作して、所望の色温度を選択する。
【0037】
例えば、本実施形態の視標提示装置10は、LCD等からなる視標表示部12aを備えていることから、バックライトにはLED等が使用され、画像表示領域100の背景色は、色温度が高く青白く見える。これに対して、タングステンランプやハロゲンランプ等からなる光源で視標を照明する視標提示装置は、光源の色温度が低いため、背景色が赤味を帯びて見える。また、視標表示部12aとして電子表示デバイスを用いている場合でも、LED、OELDのように種類が異なる場合、又は同じ種類であってもメーカや機種が異なる場合、背景色の色味が異なる場合がある。
【0038】
このように背景色の色味の異なる複数の装置を併用する場合等は、各装置の背景色の色味を合わせることが望ましい。例えば、本実施形態の視標提示装置10の背景色を、タングステンランプ等を用いた視標提示装置の背景色の色味に合わせるべく、ユーザは、操作部15を操作して、2000Kや3000Kの低い色温度を選択する。
【0039】
操作部15は、選択された色温度に対応する信号を生成して、制御部14へ向けて出力する。この信号の入力を受けた制御部14は、選択された色温度に基づき、階調値テーブルT2を検索して、色温度に対応するRGBの各色の画素の階調値を取得する。制御部14は、取得した階調値に基づいて、視標表示部12aを制御することで、視標表示部12aの画像表示領域100には、選択された色温度に対応する色味に調整された背景色で、背景102が表示されるものとなる。したがって、第1実施形態においては、視標の背景色を、所望の色味に簡易に変更することができる視標提示装置10を提供できる。この結果、複数の視標提示装置の背景色を、同じ色味又は近い色味に統一することができる。
【0040】
そして、背景色の設定が完了したら、所定の視標を視標提示装置10に表示させて、被検者Pの被検眼Eの眼特性を測定すべく、検者は操作部15の操作ボタン15bを操作する。この操作指示の信号を受けた視標提示装置10は、制御部14の制御の下、視標表示部12aの画像表示領域100に、予め設定された背景色で背景102を表示し、視標を表示する。これにより、被検者Pは、被検眼Eの眼特性を測定できる。そして、複数の視標提示装置の背景色の色味が同じであるため、複数の視標提示装置を用いて検査した場合でも、被検者Pが違和感を覚えることがなく、被検者Pが快適に検査を受けることができる。
【0041】
なお、ユーザによって選択された色情報や、対応する各色の画素の輝度値は、メモリ13に記憶しておけば、次回の検査からは制御部14は、メモリ13に記憶された各色の画素の階調値に基づいて、視標表示部12aを制御することができる。このため、検査のたびに検者が背景色を選択する必要がなく、効率的な測定が可能となる。
【0042】
また、第1実施形態では、視標表示部12aは、少なくともRGBの3色を含む複数の画素を有し、各色の画素の階調を変化させることで視標のカラー表示が可能な電子表示デバイスからなる。そして、背景色設定部としての機能を有する制御部14は、色情報に基づき、背景に対応する各色の画素の階調を算出し、算出結果に基づき電子表示デバイス(視標表示部12a)を制御して画素の階調を変化させることで、背景色を設定している。これにより、RGB等の各色の画素の輝度比率のバランスを考慮しつつ、各々の画素の階調を決定することができ、背景の見かけの明るさを低下させることなく、背景色を所望の色味に設定することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、色情報ごとに、当該色情報と、各色の画素の階調とが対応づけられたテーブル(変換テーブルT1、階調値テーブルT2)が記憶されている記憶部(メモリ13)を備えている。背景色設定部(制御部14)は、入力部(操作部15)で受け付けた色情報に基づいて、記憶部(メモリ13)のテーブルから取得した各色の画素の階調に基づいて、背景に対応する各色の画素の階調を算出している。この構成により、各画素の階調を、より適切かつ迅速に決定することができ、背景色の設定を、より適切かつ迅速に設定することができる。
【0044】
また、第1実施形態では、色情報が、背景色の色温度であり、入力部(操作部15)は、少なくとも2以上の色温度を選択可能に構成されている。この構成により、他の装置の背景色に応じて、又はユーザ等の好みに応じて、ユーザは視標提示装置10の背景色の色味を選択することができる。特に、第1実施形態では、7つの色温度の中から選択できるので、背景色の色味の選択肢が増え、背景色の色味の設定の自由度が高まり、他の装置の背景色やユーザ等の好みに応じて、より適切に背景色を設定することができる。また、装置の入れ替え等によって、他の装置の背景色の色味が変化しても、その色味に応じて、視標提示装置10の背景色の色味を、適切に変更することができる。
【0045】
なお、変形例として、色情報を、色名とすることもできる。光源等の光の色名(光源色)と、色名に対応する色温度は、下記表1に示すように、JIS規格(JIS Z 9112:2019)によって定められている。このため、操作部15から、色情報を色名で選択可能とすれば、その色名に対応する色温度に基づいて、背景色の色味を設定することができる。
【0046】
【0047】
図3の(2)に、色名で選択可能な変形例の操作部15の概略図を示す。この
図3の(2)に示すように、ユーザが色選択ボタン15cを操作することで、色表示部15dに、「温白色」等の色名が切り替わって表示される。選択された色名の情報は、信号となって操作部15から制御部14へと入力される。
【0048】
視標提示装置10では、例えば、色名ごとに、色名と、最適な色温度(例えば、表1に示す色温度の範囲の中央値、等)を対応づけたテーブルがメモリ13に予め記憶される。そして、操作部15から入力される色名に基づいて、制御部14は、テーブルから色温度を選択し、第1実施形態と同様に、変換テーブルT1及び階調値テーブルT2から、各色の画素の輝度値を取得し、取得した輝度値に基づいて、視標表示部12aを制御して、背景色を設定する。
【0049】
このように、色情報が、色名であっても、背景色の色味を適切に設定することができ、さらに、色温度で選択した場合に比べ、ユーザは、色名によって背景色をイメージし易くなり、より適切に背景色の色味を選択することができる。この色名も、少なくとも2以上、好ましくは、表1に示すように、5以上から選択できるようにすることで、色味の選択の自由度が向上し、背景色の色味をより適切に設定することができる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る視標提示装置10について、
図5を参照しながら説明する。
図5に示す第2実施形態に係る視標提示装置10は、検眼ユニット17と、近用検眼用の第2の視標表示部19をさらに備えたこと以外は、
図1等に示す第1実施形態の視標提示装置10と同様の基本構成を備えている。このため、以下では、第1実施形態とは同様の構成及び動作については詳細な説明を省略し、第1実施形態と異なる構成及び動作について主に説明する。
【0051】
図5に示す第2実施形態に係る視標提示装置10は、筐体11内に、視標提示光学系12、メモリ13、及び制御部14を内蔵した本体部1と、入力部としての操作部15と、検眼テーブル16(
図1参照)と、検眼ユニット17と、検眼ユニット17を支持する支持部18と、近用検眼用の第2の視標表示部19と、を備える。
【0052】
検眼ユニット17は、本体部1側に、水平方向に延在する近点棒17bが設けられている。この近点棒17bの先端もしくは途中の位置に、近用検眼用の第2の視標表示部19が、近用視検眼距離(例えば、被検眼Eから300~400mm)の位置に吊り下げられている。近点棒17bは、折り畳み可能であり、使用しない時には、近点棒17bと第2の視標表示部19とを垂直に収納することができる。
【0053】
また、検眼ユニット17は、本体部1側に、第2の視標表示部19を照明する光源17aを備えている。この光源17aは、例えば調色が可能なLEDを用いることができる。
【0054】
第2の視標表示部19には、近用検眼用の視標が表示される。この第2の視標表示部19は、板状部材や紙に視標が印刷されたものを用いているが、LCD等の電子表示デバイス等を用いることもできる。この第2の視標表示部19は、近点棒17bに沿って前後方向に移動可能であり、近用視検眼距離を任意に変更することができる。この第2の視標表示部19を用いて近用検眼を行うことで、加齢等による被検眼Eの調節力の変化等を検査することができる。
【0055】
そして、第2実施形態の視標提示装置10は、操作部15から入力される色情報(色温度、色名)に基づき、制御部14の制御の下、光源17aの色味を変更可能とすることで、この光源17aにより照明される第2の視標表示部19の背景色を、所望の色味に設定することが可能となっている。また、第1実施形態と同様に、制御部14の制御の下、本体部1の視標表示部12aの背景色を所望の色味に設定することもできる。すなわち、視標表示部12a及び第2の視標表示部19の何れか一方の背景色の色味に合わせて、他方の背景色の色味を変更することもできるし、これら以外の視標提示装置の背景色の色味に合わせて、双方の背景色の色味を変更することもできる。
【0056】
この第2の視標表示部19の背景色の色味を設定すべく、第2の実施形態では、例えば、色情報ごとに、色情報と、光源17aの発光色情報を対応づけたテーブルがメモリ13に予め記憶される。そして、操作部15から入力された色情報に基づいて、制御部14は、テーブルを検索し、対応する発光色情報を取得し、取得した発光色情報に基づいて、光源17aを発光させる。このように発光色が調整された光源17aからの光が照射されることで、第2の視標表示部19の背景色を、ユーザが設定した色情報(色温度、色名に対応する色温度)に設定することができる。なお、発光色情報としては、例えば、xy色度等の色度を用いることができる。例えば、xy色度図を用いて、このxy色度図上の略黒体放射軌跡と、選択された色温度に基づいて、色温度に対応するx、yの色度を取得することができる。
【0057】
以上説明したように、第2実施形態の視標提示装置10でも、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、第2実施形態の視標提示装置10は、被検眼Eに対して、眼特性を検査するための視標を提示する視標表示部12a及び第2の視標表示部19と、視標を表示する背景の色に関する色情報(例えば、色温度、色名)の指定を受け付ける入力部(操作部15)と、入力部で受け付けた色情報に基づき、視標の背景色を設定する背景色設定部(制御部14)と、を備える。このため、視標表示部12a及び/又は第2の視標表示部19の視標の背景色を、所望の色味に簡易に設定することができる。
【0058】
さらに、第2実施形態では、視標表示部(第2の視標表示部19)は、背景を照明する光源17aを備える。そして、背景色設定部(制御部14)は、入力部(操作部15)で受け付けた色情報に基づき、光源17aを制御して当該光源17aの色度を変化させることにより、背景色を設定することから、この光源17aからの光によって照明される視標の背景色を所望の色味に設定することができる。
【0059】
ところで、この第2実施形態の視標提示装置10は、本体部1に備えられた電子表示デバイスからなる視標表示部12aと、近用検眼用の第2の視標表示部19の2つの視標表示部を備え、これらの視標の背景色を所望の色味に設定可能としているが、この構成に限定されない。例えば、近用検眼用の第2の視標表示部19のみを備えた視標提示装置としてもよいし、この第2の視標表示部19と、遠用視検眼距離(例えば、5m)に配置した紙製の視標表示部、又はスクリーンに視標を投影する視標表示部を備えた視標提示装置とすることもできる。そして、これらの視標表示部を照明する光源の発光色を調整することで、視標が表示される背景色を所望の色味に変更可能な構成とすることもできる。
【0060】
以上、本発明の視標提示装置10を実施形態に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0061】
例えば、上記各実施形態の視標提示装置10では、変換テーブルT1と階調値テーブルT2がメモリ13に記憶されている。これらのテーブルは、視標提示装置10の製造時等に、視標提示装置10ごとに、備え付けられた電子表示デバイス、光源について、それぞれ分光特性値を測定し、得られた分光特性値に対応した適切な補正値や初期値を算出し、テーブルに設定するものとすれば、背景色の色味を、より高精度に再現することができる。
【0062】
また、上記各実施形態では、色情報と、RGBの各色の画素の階調とが対応づけられて設定されたテーブルとして、変換テーブルT1と階調値テーブルT2が用いられているが、これに限定されない。例えば、階調値テーブルT2のみが用いられてもよい。また、このようなテーブルを用いることなく、色温度等の色情報と、視標表示部12aや光源17aの種類や光学特性値等に基づいて、制御部14が各色の画素の階調を、所定の計算式を用いて算出する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0063】
10 視標提示装置
12a 視標表示部
13 メモリ(記憶部)
14 制御部(背景色設定部)
15 操作部(入力部)
17a 光源
102 背景
E 被検眼