(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189459
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】戸パネルの吊持構造
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
E05D15/06 122
E05D15/06 118
E05D15/06 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098043
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】390021153
【氏名又は名称】株式会社SKB
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】赤木 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】坂田 奈々
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034CA04
2E034DA01
2E034DA05
(57)【要約】
【課題】より簡便に戸パネルを適正姿勢に吊り込むことができる戸パネルの吊持構造を提供する。
【解決手段】本発明の戸パネルの吊持構造では、ランナー軸7の軸下部には捕捉ユニット12で捕捉される球軸8が設けられている。捕捉ユニット12は、戸パネル1に装着される捕捉ケース15と、上下揺動できるロックアーム22と、同アーム22を付勢するロックばね23とを備える。捕捉ケース15の上端には、ランナー軸7の球軸8を受止めるソケット部21が形成されている。ランナー軸7は、球軸8の上半部分がソケット部21で受止められた係合状態となり、ソケット部21を介して捕捉ユニット12を捕捉する吊持姿勢と、球軸8とソケット部21との間の係合状態が解除される開放姿勢との間で、ソケット部21に対して左右方向に相対的にスライド移動可能に構成されており、吊持姿勢に変位したランナー軸7がロックアーム22で保持されるようになっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口枠(2)の上部に設置されて左右方向に走るガイドレール(3)と、ガイドレール(3)で開閉案内されるランナー(4)と、戸パネル(1)の上部に固定されてランナー(4)のランナー軸(7)で吊持される捕捉ユニット(12)とを備える戸パネルの吊持構造であって、
ランナー軸(7)の軸下部に捕捉ユニット(12)で捕捉される球軸(8)が設けられており、
捕捉ユニット(12)は、戸パネル(1)に装着される捕捉ケース(15)と、遊端部が上方に位置するロック待機位置と、遊端部が下方に位置するロック解除位置との間で、揺動軸(30)まわりに上下揺動できるロックアーム(22)と、ロックアーム(22)をロック待機位置に向かって押上げ付勢するロックばね(23)とを備えており、
捕捉ケース(15)の上端には、ランナー軸(7)の球軸(8)の上半部分を上方から受止めるソケット部(21)が形成されており、
ランナー軸(7)は、球軸(8)の上半部分がソケット部(21)で受止められた係合状態となり、ソケット部(21)を介して捕捉ユニット(12)を捕捉する吊持姿勢と、球軸(8)とソケット部(21)との間の係合状態が解除される開放姿勢との間で、ソケット部(21)に対して左右方向に相対的にスライド移動可能に構成されており、
ロックアーム(22)の遊端上面には、ランナー軸(7)を吊持姿勢に保持するためのロック部(32)が形成されており、
ロック待機位置にあるロックアーム(22)を球軸(8)の下方に位置させた状態で戸パネル(1)を押上げ操作することで、ロックばね(23)の付勢力に抗してロックアーム(22)が下方揺動され、その後、ランナー軸(7)がソケット部(21)に向かってスライド移動して吊持姿勢に変位するとともに、当該吊持姿勢がロックばね(23)で押上げ付勢されるロックアーム(22)のロック部(32)によって保持されることで、戸パネル(1)がランナー(4)に吊持されるように構成されていることを特徴とする戸パネルの吊持構造。
【請求項2】
捕捉ユニット(12)内において、ソケット部(21)、ロックアーム(22)、および揺動軸(30)が左右方向に記載順に並設されており、
ロックアーム(22)の遊端上面のロック部(32)よりも上側の左右方向の揺動軸(30)側に、戸パネル(1)の押上げ操作時に球軸(8)の下面で受止められる受動部(33)が形成されている、請求項1記載の戸パネルの吊持構造。
【請求項3】
ロックアーム(22)の上部にロック解除部(36)が設けられており、
ロックアーム(22)が、ランナー軸(7)の吊持姿勢を保持するロック位置にあるとき、ロック解除部(36)が、捕捉ケース(15)の上開口から上方に突出している請求項1又は2記載の戸パネルの吊持構造。
【請求項4】
球軸(8)が半球状に形成されて、その下面にロックアーム(22)の受動部(33)に接当する平坦な操作面(19)が設けられており、
ソケット部(21)が、球軸(8)の周面に密着する部分凹球面で形成されており、
ロック部(32)が、球軸(8)の操作面(19)を受止める規制面(34)と、球軸(8)の周面下部に密着する部分凹球面状のロック壁(35)とで形成されている請求項2記載の戸パネルの吊持構造。
【請求項5】
ソケット部(21)の下側に、ランナー軸(7)のソケット部(21)へのスライド移動後に、球軸(8)の操作面(19)で受止められるストッパー部(28)が形成されている請求項4記載の戸パネルの吊持構造。
【請求項6】
捕捉ケース(15)の上開口に、ランナー軸(7)の丸軸部(7a)を受入れる軸溝(24)と、球軸(8)の出入りを許す球軸穴(25)とが形成されている請求項1から5のいずれかひとつに記載の戸パネルの吊持構造。
【請求項7】
ロックアーム(22)をロック待機位置に位置保持するためのストッパー(55)を備え、
ストッパー(55)が、ロックアーム(22)のアーム端(22a)と、ソケット部(21)に連続する縦壁(21a)とで構成されている請求項1から6のいずれかひとつに記載の戸パネルの吊持構造。
【請求項8】
戸パネル(1)にユニットケース(13)が埋設固定されており、このユニットケース(13)に設けた昇降凹部(14)で捕捉ケース(15)が上下動のみ自在に支持されており、
ユニットケース(13)と捕捉ケース(15)との間に、戸パネル(1)の上下高さを調整する上下調整構造が設けられている請求項1から7のいずれかひとつに記載の戸パネルの吊持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊車型のランナーで支持される戸パネルの吊持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の吊持構造は、例えば特許文献1の引戸吊下げ装置に開示されている。特許文献1の引戸吊下げ装置は、戸パネル(引戸)の上面の左右に装着される一対のハンガー連結具と、ガイドレールで開閉案内されるランナー(ハングローラ)と、ランナーの下面に設けられる連結用螺子軸などで構成される。ハンガー連結具は、戸パネルの上面に埋設固定される円筒状の筐体と、筐体の内部に配置されて、拡開揺動可能に支持される左右一対の内螺子部材と、内螺子部材を互いに接近する向きに揺動付勢するスプリングなどで構成される。一対の内螺子部材の対向面には、連結用螺子軸と噛合う内螺子面が形成されている。
【0003】
特許文献1において、戸パネルをランナーに吊込む場合には、起立支持した戸パネルのハンガー連結具を、ランナーの連結用螺子軸の下方に位置させた状態で、戸パネルをガイドレールの側へ向かって押上げ操作する。このとき、一対の内螺子部材は連結用螺子軸に押されてハ字状に拡開揺動したのち、内螺子部材の内螺子面が連結用螺子軸に噛合って、戸パネルがランナーで吊持状に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の引戸吊下げ装置においては、戸パネル側のハンガー連結具を、ランナー側の連結用螺子軸の下方に位置させた状態で、戸パネルをガイドレールの側へ向かって押上げ操作することで、内螺子部材をランナーの連結用螺子軸に噛合わせて、戸パネルを吊持状に支持することができる。しかし、ランナー側の連結用螺子軸と、ハンガー連結具側の内螺子部材の上下方向の噛合位置は、戸パネルの押上げ量によって異なり必ずしも一定とはならないため、吊持した状態における戸パネルの高さにばらつきが生じる。また、戸パネルの左右が一対のランナーで吊持される場合に、戸パネルの左右の高さ位置にズレが生じやすい。このように、従来の引戸吊下げ装置では、戸パネルを適正姿勢に吊り込むことは容易ではなく、その点に改良の余地があった。
【0006】
本発明は、以上のような従来の吊持構造の抱える問題を解決するためになされたものであり、より簡便に戸パネルを適正姿勢に吊り込むことができる戸パネルの吊持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る戸パネルの吊持構造は、開口枠2の上部に設置されて左右方向に走るガイドレール3と、ガイドレール3で開閉案内されるランナー4と、戸パネル1の上部に固定されてランナー4のランナー軸7で吊持される捕捉ユニット12とを備える。ランナー軸7の軸下部に捕捉ユニット12で捕捉される球軸8が設けられている。捕捉ユニット12は、戸パネル1に装着される捕捉ケース15と、遊端部が上方に位置するロック待機位置と、遊端部が下方に位置するロック解除位置との間で、揺動軸30まわりに上下揺動できるロックアーム22と、ロックアーム22をロック待機位置に向かって押上げ付勢するロックばね23とを備える。捕捉ケース15の上端には、ランナー軸7の球軸8の上半部分を上方から受止めるソケット部21が形成されている。ランナー軸7は、球軸8の上半部分がソケット部21で受止められた係合状態となり、ソケット部21を介して捕捉ユニット12を捕捉する吊持姿勢と、球軸8とソケット部21との間の係合状態が解除される開放姿勢との間で、ソケット部21に対して左右方向に相対的にスライド移動可能に構成されている。ロックアーム22の遊端上面には、ランナー軸7を吊持姿勢に保持するためのロック部32が形成されている。そして、ロック待機位置にあるロックアーム22を球軸8の下方に位置させた状態で戸パネル1を押上げ操作することで、ロックばね23の付勢力に抗してロックアーム22が下方揺動され、その後、ランナー軸7がソケット部21に向かって移動して吊持姿勢に変位するとともに、当該吊持姿勢がロックばね23で押上げ付勢されるロックアーム22のロック部32によって保持されることで、戸パネル1がランナー4に吊持されるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
捕捉ユニット12内において、ソケット部21、ロックアーム22、および揺動軸30が左右方向に記載順に並設されており、ロックアーム22の遊端上面のロック部32よりも上側の左右方向の揺動軸30側に、戸パネル1の押上げ操作時に球軸8の下面で受止められる受動部33が形成されている。
【0009】
ロックアーム22の上部にロック解除部36が設けられており、ロックアーム22が、ランナー軸7の吊持姿勢を保持するロック位置にあるとき、ロック解除部36が、捕捉ケース15の上開口から上方に突出している。
【0010】
球軸8が半球状に形成されて、その下面にロックアーム22の受動部33に接当する平坦な操作面19が設けられている。ソケット部21が、球軸8の周面に密着する部分凹球面で形成されている。ロック部32が、球軸8の操作面19で受止められる規制面34と、球軸8の周面下部に密着する部分凹球面状のロック壁35とで形成されている。
【0011】
ソケット部21の下側に、球軸8の操作面19で受止められるストッパー部28が形成されており、ストッパー部28が球軸8の操作面19で受止められることで、ソケット部21に向かったランナー軸7の移動後の当該ランナー軸7に対するソケット部21の浮き上がりが規制されるようになっている。
【0012】
捕捉ケース15の上開口に、ランナー軸7の丸軸部7aを受入れる軸溝24と、球軸8の出入りを許す球軸穴25とが形成されている。
【0013】
ロックアーム22をロック待機位置に位置保持するためのストッパー55を備える。ストッパー55は、ロックアーム22のアーム端22aと、ソケット部21に連続する縦壁21aとで構成されている。
【0014】
戸パネル1にユニットケース13が埋設固定されて、ユニットケース13に設けた昇降凹部14で捕捉ケース15が上下動のみ自在に支持されている。ユニットケース13と捕捉ケース15の間に、戸パネル1の上下高さを調整する上下調整構造が設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吊持構造においては、ランナー軸7の軸下部に捕捉ユニット12で捕捉される球軸8を設けるとともに、捕捉ユニット12をランナー軸7の球軸8の上半部分を上方から受止めるソケット部21を備える捕捉ケース15と、ロック待機位置とロック解除位置との間で揺動軸30まわりに上下揺動できるロックアーム22と、ロックアーム22をロック待機位置に向かって押上げ付勢するロックばね23とを備えるものとし、そのうえでロック待機位置にあるロックアーム22を球軸8の下方に位置させた状態で戸パネル1を押上げ操作することで、ロックばね23の付勢力に抗してロックアーム22が下方揺動され、その後、ランナー軸7が吊持姿勢に変位するとともに、当該吊持姿勢がロックばね23で押上げ付勢されるロックアーム22のロック部32によって保持されることで、戸パネル1がランナー4に吊持されるように構成した。以上のような構成からなる吊持構造によれば、戸パネル1を押上げ操作するだけで、戸パネル1に固定した捕捉ユニット12をランナー4のランナー軸7に吊持させることができるので、簡便に戸パネル1を吊り込むことができる。また、ランナー軸7で吊持された戸パネル1の高さ位置は、球軸8の高さ位置に基づいて一義的に決定されるので、戸パネル1の押上げ操作量に違いがあったとしても、ランナー軸7で吊持されたときの戸パネル1のランナー4に対する吊持高さは常に一定にできる。また、戸パネル1が左右一対のランナー4のランナー軸7と捕捉ユニット12で吊持される場合には、戸パネル1の左右の高さ位置を揃えて、戸パネル1を水平に吊持することが容易であり、より簡便に戸パネル1を適正姿勢に吊り込むことができる。
【0016】
ロックアーム22の遊端上面のロック部32よりも上側の左右方向の揺動軸30側に、戸パネル1の押上げ操作時に球軸8の下面で受止められる受動部33を形成する。これによれば、ロック待機位置にあるロックアーム22の受動部33を球軸8の下方に位置させた状態で戸パネル1を押上げ操作すると、ロックアーム22は揺動軸30を中心にして遊端が下がるロック解除位置に向かって揺動し、同時に受動部33は傾斜姿勢へと変位する。このように受動部33が傾斜姿勢に変位すると、球軸8に対して揺動軸30から離れて、ソケット部21に向かう横方向の分力を作用させることができるので、かかる分力によりランナー4を左右方向に移動させて、ランナー軸7をソケット部21側へスライド移動させて、ランナー軸7を吊持姿勢とすることができ、加えて、当該吊持姿勢となったランナー軸7をロック部32によって保持することができる。以上より、戸パネル1を押上げ操作するだけで、ランナー軸7を吊持姿勢に自動的に変位させることができるので、ランナー4やランナー軸7のスライド変位は不要であり、より少ない手間で戸パネル1を適正姿勢に吊り込むことができる。
【0017】
ロックアーム22の上部にロック解除部36を設けて、ロックアーム22がロック位置にあるときのロック解除部36を、捕捉ケース15の上開口から上方に突出させていると、戸パネル1の重量を支えた状態で、捕捉ケース15の上方に突出するロック解除部36を押下げ操作することで、戸パネル1とランナー軸7の連結状態を解除して、戸パネル1をランナー軸7から分離することができる。したがって、戸パネル1の分離操作を容易に進めることができる。また、戸パネル1とランナー軸7の連結状態を解除したのちは、戸パネル1を支えた状態でゆっくりと床面に降ろせばよいので、たとえ重量が大きな戸パネル1であっても、単独の作業者で戸パネル1をランナー4から安全かつ簡便に取外すことができる。
【0018】
球軸8が半球状に形成され、その下面にロックアーム22の受動部33に接当する平坦な操作面19が設けられていると、球軸8が円球状に形成されている場合に比べて、操作面19の面積を大きくすることができるので、ロックアーム22の受動部33の位置と操作面19の位置に多少のずれがあったとしても、受動部33を操作面19により確実にあてがって、戸パネル1の吊込み作業を確実かつ容易に行うことができる。ソケット部21が、球軸8の周面に密着する部分凹球面で形成されており、ロック部32が、球軸8の操作面19を受止める規制面34と、球軸8の周面下部に密着する部分凹球面状のロック壁35とで形成されていると、球軸8を規制面34とロック部32とで確実に保持することができるので、ランナー軸7が不用意に吊持姿勢から開放姿勢に変位することを防ぐことができる。
【0019】
ソケット部21の下側に、ランナー軸7のソケット部21へのスライド移動後に、球軸8の操作面19で受止められるストッパー部28が形成されている構成を採ることができる。これによれば、ストッパー部28が球軸8の操作面19で受止められることで、ソケット部21へのスライド移動後のランナー軸7に対するソケット部21の上方への移動限界が規制されるので、戸パネル1が不必要に押上げ操作されることを防ぐことができる。したがって、戸パネル1の吊込み作業をより簡便に、しかもより迅速に行うことができる。
【0020】
捕捉ケース15の上開口に、ランナー軸7の丸軸部7aを受入れる軸溝24と、球軸8の出入りを許す球軸穴25とが形成されていると、戸パネル1を吊り込む際に、球軸8と球軸穴25が互いに案内しあう状態で、受動部33を操作面19に的確にあてがうことができる。また、球軸8がソケット部21とロック部32でロック保持された状態では、ランナー軸7の丸軸部7aを軸溝24で受止めて、ランナー軸7が前後に傾動することを規制することができる。
【0021】
ロックアーム22をロック待機位置に位置保持するストッパー55が、ロックアーム22のアーム端22aと、ソケット部21に連続する縦壁21aとで構成されていると、互いに接当し、あるいは互いに係合しあう一対の部材を別途設けてストッパー55を構成する場合に比べて、構造を簡素化して捕捉ユニット12のコスト削減に寄与できる。
【0022】
戸パネル1に埋設固定したユニットケース13の昇降凹部14で捕捉ケース15を上下動のみ自在に支持し、ユニットケース13と捕捉ケース15の間に、戸パネル1の上下高さを調整する上下調整構造を設ける。このように上下調整構造が設けられていると、戸パネル1の吊持高さを調整することができるので、ガイドレール3と戸パネル1との間の隙間調整、或いは床面と戸パネル1との間の隙間調整を、必要に応じて簡便にしかも的確に行うことができる。
【0023】
上下調整構造は、前後一対のスライド板38と、スライド板38を連結する連結ブロック39と、捕捉ケース15とスライド板38に形成されるカムピン40および傾斜カム41と、連結ブロック39およびスライド板38を左右に移動操作する調整機構42で構成する。これによれば、連結ブロック39およびスライド板38を調整機構42で移動操作することにより、カムピン40と傾斜カム41の係合高さを調整して、捕捉ケース15のユニットケース13に対する高さを変化させ、戸パネル1の吊持高さを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る戸パネルの吊持構造を示す縦断正面図であり、ランナー軸が吊持姿勢にある状態を示している。
【
図2】戸パネルおよびガイドレールを示す正面図である。
【
図5】球軸がソケット部とロック部でロック保持された状態の縦断面図である。
【
図7】ソケット部と縦壁とストッパー部を示す縦断正面図である。
【
図11】(a)~(c)は戸パネルの吊込み動作を示す説明図である。
【
図12】戸パネルがランナー軸から分離された状態を示す動作説明図である。
【
図13】戸パネルの吊持構造の別の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1から
図12に、本発明に係る戸パネルの吊持構造の実施形態を示す。
図2に示すように、本実施形態においては、戸パネルの吊持構造をウォークインクローゼットや室内に面して設けた収納室の出入口を1枚構造の戸パネル1で開閉する「引戸」に適用した例を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図2および
図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0026】
図2において、出入口に設けた開口枠2の上部には、左右方向に走って戸パネル1を開閉案内するガイドレール3が固定されており、その内部に戸パネル1を吊持する左右一対のランナー4が配置されている。ランナー4はランナーボディ5と、ランナーボディ5の前後面の左右に配置される4個のローラー6と、ランナーボディ5で支持されるランナー軸7などを備える。ランナー軸7は丸軸部7aと、丸軸部7aの上端に形成されたフランジ部7bと、丸軸部7aの下端に形成された半球状の球軸8とを一体に備えており、丸軸部7aとフランジ部7bとが、ランナーボディ5によって回転は自在に、しかし上下動は不能に支持されている。
図3に示すように、ランナーボディ5は前ボディ5aと後ボディ5bとに分割形成されており、前後のボディ5a・5bの接合面に丸軸部7aとフランジ部7bとを受入れる軸凹部9が凹み形成されている。
図2において符号1aは取手、10は床面に固定した振止めピンを示す。
【0027】
戸パネル1の上部左右には、各ランナー軸7で吊持される捕捉ユニット12が埋設固定されている。
図1に示すように、捕捉ユニット12は、戸パネル1に埋設固定される左右横長のユニットケース13と、ユニットケース13の昇降凹部14で上下動のみ自在に支持される左右横長の捕捉ケース15と、捕捉ケース15に隣接する状態で配置される上下調整構造などを備える。ユニットケース13は、プラスチック成型品からなる上ケース13aと下ケース13bとに分割形成されており、両ケース13a・13bが戸パネル1に凹み形成されたケース凹部17に嵌込まれて、両側端から戸パネル1にねじ込んだ縦ケースねじ18で締結固定されている。この状態のユニットケース13の上面は、戸パネル1の上面と面一になっている。半球状の球軸8の下面には平坦な操作面19が形成されており、戸パネル1を吊込むとき、操作面19が後述するロックアーム22を押し下げ操作する。なお、
図1等には、戸パネル1の左側に位置するランナー4と捕捉ユニット12が示されており、これらを使って吊持構造を説明するが、戸パネル1の右側に位置するランナー4と捕捉ユニット12も同様の構成であることを念のため補足する。また、ランナー4のランナー軸7の長さ寸法などの各部品の寸法は、左右で同一に設定されていることも念のため補足する。
【0028】
図4に示すように、捕捉ケース15はプラスチック成型品からなる前ケース15aと後ケース15bとに分割形成されており、両ケース15a・15bの間に、ランナー軸7の球軸8を捕捉するソケット部21、ロックアーム22、およびロックアーム22を押し上げ付勢するロックばね23が組付けられている。
図7に示すように、ソケット部21は球軸8の周面の概ね左半部に密着する部分凹球面状に形成されており、捕捉ケース15の内面上部の左端に設けられている。ソケット部21の下側には、球軸8の操作面19で受止められるストッパー部28が形成されている。ロックアーム22を収容する捕捉ケース15の上開口には、ランナー軸7の丸軸部7aを受入れる軸溝24と、球軸8の出入りを許す球軸穴25とが形成されている(
図6参照)。また、前後ケース15a・15bの接合部の下部には、圧縮コイルばねからなるロックばね23を収容するばね受穴26が形成されている。前後ケース15a・15bは、前ケース15aにねじ込まれる4個の横ケースねじ27で一体化されている。
【0029】
図4において、プラスチック成型品からなる左右横長のロックアーム22の右端の前後には揺動軸30が一体に形成されており、この揺動軸30を前後ケース15a・15bに形成した支持穴31で軸支することにより、ロックアーム22は、上方のロック待機位置(
図11(a)に示す状態)と下方のロック解除位置(
図12に示す状態)との間で、上下揺動可能に支持されている。ロックアーム22の遊端上面には、ランナー軸7を後述する吊持姿勢に保持するためのロック部32と、戸パネル1の押上げ操作時に球軸8の下面で受止められる受動部33が形成されている。受動部33は、ロック部32より上側に形成されるとともに、当該ロック部32よりも揺動軸30側(右側)に形成されており、これら受動部33とロック部32により、ロックアーム22の遊端上面は、左方向に向かって下り階段状とされている。なお、捕捉ケース15内におけるソケット部21、ロックアーム22、および揺動軸30の三者を正面から見たとき、これらは左側から右側に向かってソケット部21、ロックアーム22、および揺動軸30の記載順に並設されている(
図1等参照)。
【0030】
図5に示すようにロック部32は、球軸8の操作面19に密着する平坦な規制面34と、球軸8の周面下部に密着する部分凹球面状のロック壁35とで形成されている。ロックアーム22の上面の中途部には、ロック解除部36が突設されており(
図1参照)、ロックアーム22がロック位置(
図1に示す状態)にあるときのロック解除部36は、捕捉ケース15の上開口から上方に突出しており、ロックアーム22がロック待機位置にあるときのロック解除部36は、捕捉ケース15の上開口からさらに上方に突出している。ロック待機位置にあるときのロックアーム22は、捕捉ケース15とロックアーム22の間に設けたストッパー55で上方への揺動が規制される。本実施形態においては、ロックばね23により押し上げ付勢されたロックアーム22のアーム端22aがソケット部21に連続する縦壁21aに接当することにより、ロックアーム22がロック待機位置に位置保持されるようになっている。つまり、ストッパー55は、ロックアーム22のアーム端22aと、ソケット部21に連続する縦壁21aとによって構成されている。
【0031】
以上のような構成からなる吊持構造において、ランナー軸7は、球軸8の上半部分がソケット部21で受止められた係合状態となり、ソケット部21を介して捕捉ユニット12を捕捉する吊持姿勢(
図1)と、球軸8とソケット部21との間の係合状態が解除される開放姿勢(
図11(b))との間で、ソケット部21に対して左右方向に相対的にスライド移動可能に構成されている。
【0032】
図4、
図8、
図9、および
図10において上下調整構造は、捕捉ケース15の前後面と昇降凹部14の間に配置される前後一対のスライド板38・38と、両スライド板38の右端の間に配置されて、両スライド板38を同行移動可能に連結する連結ブロック39と、捕捉ケース15の前後面と両スライド板38に形成されるカムピン40および傾斜カム41と、ユニットケース13と連結ブロック39の間に設けられて、連結ブロック39および両スライド板38を左右に移動操作する調整機構42とを備えている。この実施形態では、ステンレス薄板で形成した各スライド板38に右上がりの傾斜カム41を形成し、捕捉ケース15の前後面にカムピン40を突設した。連結ブロック39は直方体状のプラスチック成型品からなり、その前後面に縦長の連結リブ43が突設され、ブロック中央に後述する調整ねじ軸47を係合するための係合穴44が、上向きに開口する状態で形成されている。また、スライド板38の右端寄りには連結リブ43と係合する係合溝45が形成されている。
【0033】
図1において調整機構42は、連結ブロック39に連結される調整ねじ軸47と、ユニットケース13で回転のみ自在に支持されて調整ねじ軸47に噛合う調整ナット48と、ユニットケース13に組まれて調整ナット48を回転操作する一対の傘歯車49・50と、操作側の傘歯車49と一体に設けられて、ユニットケース13の上面に突出する調整軸51とを備えている。この実施形態では調整ナット48と従動側の傘歯車50を一体に形成して、調整ナット48および傘歯車50を上下ケース13a・13bの間に形成したナット凹部52に収容している。調整ねじ軸47は六角ボルト状に形成されており、その操作頭部が連結ブロック39の係合穴44に回動不能に係合されている。操作側の傘歯車49と一体に形成した調整軸51は六角軸状に形成されており、その突出基端の対向辺部が前後一対の弾性壁53で挟み保持されている(
図9参照)。弾性壁53は上ケース13aの一部で構成されており、調整軸51が自由に回動するのを規制し、さらに調整回動された調整軸51の対向辺部を受止める節度体として機能している。
【0034】
以上のように構成した吊持構造における戸パネル1の吊り込み方法について、
図11(a)~(c)および
図1を参照して説明する。なお、
図11および
図1においては、戸パネル1の左側に設置された捕捉ユニット12の左側のランナー4のランナー軸7に対する吊り込み方法について説明するが、戸パネル1の右側に設置された捕捉ユニット12とランナー4においても同様である。
【0035】
まず、
図11(a)に示すように、戸パネル1を起立させて、ロックアーム22の受動部33をランナー軸7の真下に位置させる。このとき、ロックアーム22はロック待機位置にあり、捕捉ケース15の上開口から大きく突出しているので、受動部33に連続する垂直の壁を目印にして、戸パネル1の位置を調整すると、受動部33を球軸8の操作面19のほぼ真下に位置させることができる。次に、戸パネル1をガイドレール3に向かって押上げ操作すると、操作面19が受動部33に接触して、戸パネル1と共にランナー4は上昇する。
図11(b)に示すように、ランナー4のローラー6がガイドレール3の上壁で受け止められた状態から、さらに戸パネル1を押上げ操作すると、操作面19に受け止められた受動部33が、該操作面19に対して相対的に下方に変位し、結果としてロックアーム22はロックばね23の付勢力に抗しながら、揺動軸30を中心にして反時計回転方向へ傾動される。そして、受動部33がソケット部21の側へ向かって下り傾斜するまでロックアーム22が傾動すると、球軸8の操作面19に白抜き矢印で示すようなソケット部21の側へ向う横向き(左方向)の分力が作用するため、ランナー4は白抜き矢印の向き(左方向)に横移動し、これにより、
図11(c)に示すように、ランナー軸7は、球軸穴25を介してソケット部21の軸溝24に進入するようにスライド移動する。また、
図11(c)のように、ランナー軸7がソケット部21に向かってスライド移動した状態では、ストッパー部28が球軸8の操作面19で受止められることで、ソケット部21および戸パネル1の上方への移動限界が規制される。
【0036】
図11(c)に示すように、ランナー軸7をソケット部21へスライド移動させた状態から、戸パネル1の押上げ力を開放すると、戸パネル1は自重で降下するので、
図1に示すように球軸8の上半部分がソケット部21で受止められた係合状態となり、ランナー軸7は、ソケット部21を介して捕捉ユニット12を捕捉する吊持姿勢となる。戸パネル1が自重で降下する際には、球軸8に右向きの分力が作用するが、当該分力は、ロックばね23で押上げ付勢されるロックアーム22のロック部32(ロック壁35)によって受け止められるため、ランナー軸7が右方向のソケット部21から抜け外れる方向にスライド移動することはなく、ランナー軸7はロックアーム22により吊持姿勢に保持される。また、ランナー軸7の丸軸部7aが軸溝24で受止められるので、ランナー軸7が前後に傾動することが規制される。このように本実施形態の吊持構造では、ロックアーム22の受動部33を球軸8の下方に位置させた状態で、戸パネル1を押上げ操作するだけで、ランナー軸7がソケット部21に向かってスライド移動し、次いで戸パネル1の押上げ力を開放することでランナー軸7を吊持姿勢とすることができる。また、当該吊持姿勢は、ロックばね23で押上げ付勢されて、ロック位置にあるロックアーム22のロック部32によって保持される。
【0037】
上記の手順で左右のランナー4のランナー軸7に戸パネル1を吊持させた状態では、左右の球軸8による戸パネル1の吊持高さが同じになるので、戸パネル1を水平に吊持することができる。つまり、左右の捕捉ユニット12のソケット部21を球軸8に連結するだけで、戸パネル1を正しく水平に吊持でき、戸パネル1を吊込んだのちに高さ調整(戸パネル1を水平姿勢とするための高さ調整)を行う必要はない。また、ランナー4で吊持された戸パネル1とガイドレール3の隙間が、いたずらに大きくなることもない。但し、床面と戸パネル1の隙間、或いは戸パネル1とガイドレール3の隙間が大きい場合などには、先の戸パネル1の上下高さを調整する上下調整機構の操作要素である調整軸51をスパナなどで回転操作することで、先の隙間を容易に調整して適正化することができる。
【0038】
ランナー4や捕捉ユニット12のメンテナンスを行う必要があるときは、ドライバーなどの工具をロックアーム22のロック解除部36とガイドレール3の間に差込み、
図12に示すようにロックアーム22をロック解除位置まで押下げ操作して、ロック部32を球軸8から分離させるだけでよい。このときのソケット部21には戸パネル1の重量が作用しているので、ソケット部21は球軸8の周面に沿って滑り落ちようとする。したがって、戸パネル1の下隅を床面にゆっくりと降ろすだけで、ソケット部21を球軸8から分離させて、捕捉ユニット12とランナー4の連結状態を解除できる。
【0039】
上記のように、本実施形態に係る吊持構造によれば、戸パネル1を押上げ操作するだけで、戸パネル1をランナー4のランナー軸7に吊持させることができるので、簡便に戸パネル1を吊り込むことができる。また、ランナー軸7で吊持された戸パネル1の高さ位置は、球軸8の高さ位置に基づいて一義的に決定されるため、左右のランナー4のランナー軸7の長さ寸法を同一寸法に設定することで、戸パネル1の左右の高さ位置を揃えて、戸パネル1を水平に吊持することができ、より簡便に戸パネル1を適正姿勢に吊り込むことができる。
【0040】
ロックアーム22の遊端上面のロック部32よりも上側の左右方向の揺動軸30側に、戸パネル1の押上げ操作時に球軸8の下面で受止められる受動部33を形成したので、ロック待機位置にあるロックアーム22の受動部33を球軸8の下方に位置させた状態で戸パネル1を押上げ操作したとき、ロックアーム22を遊端が下がるロック解除位置に向かって揺動させ、同時に受動部33を傾斜姿勢へと変位させることができる。このように受動部33が傾斜姿勢に変位すると、球軸8に対して揺動軸30から離れて、ソケット部21に向かう横方向の分力を作用させることができるので、かかる分力によりランナー4を左右方向に移動させて、ランナー軸7をソケット部21側へスライド移動させて、ランナー軸7を吊持姿勢とすることができ、加えて、当該吊持姿勢となったランナー軸7をロック部32によって保持することができる。以上より、本実施形態に係る戸パネルの吊持構造によれば、戸パネル1を押上げ操作するだけで、ランナー軸7を吊持姿勢に自動的に変位させることができるので、ランナー4やランナー軸7のスライド変位は不要であり、より少ない手間で戸パネル1を適正姿勢に吊り込むことができる。
【0041】
ロックアーム22がロック位置にあるときのロック解除部36を、捕捉ケース15の上開口から上方に突出させたので、戸パネル1の重量を支えた状態で、当該ロック解除部36を押下げ操作することで、戸パネル1とランナー軸7の連結状態を解除して、戸パネル1をランナー軸7から分離することができる。したがって、戸パネル1の分離操作を容易に進めることができる。また、戸パネル1とランナー軸7の連結状態を解除したのちは、戸パネル1を支えた状態でゆっくりと床面に降ろせばよいので、たとえ重量が大きな戸パネル1であっても、単独の作業者で戸パネル1をランナー4から安全かつ簡便に取外すことができる。
【0042】
球軸8を半球状に形成し、その下面にロックアーム22の受動部33に接当する平坦な操作面19を設けたので、球軸8が円球状に形成されている場合に比べて、操作面19の面積を大きくすることができる。これによれば、ロックアーム22の受動部33の位置と操作面19の位置に多少のずれがあったとしても、受動部33を操作面19により確実にあてがうことができるので、戸パネル1の吊込み作業を確実かつ容易に行うことができる。ソケット部21を球軸8の周面に密着する部分凹球面で形成し、ロック部32を球軸8の操作面19を受止める規制面34と、球軸8の周面下部に密着する部分凹球面状のロック壁35とで形成したので、球軸8を規制面34とロック部32とで確実に保持することができる。したがって、ランナー軸7が不用意に吊持姿勢から開放姿勢に変位することを防ぐことができる。
【0043】
ソケット部21の下側に、ランナー軸7のソケット部21へのスライド移動後に、球軸8の操作面19で受止められるストッパー部28を形成したので、ソケット部21へのスライド移動後のランナー軸7に対するソケット部21の上方への移動限界を規制することができる。したがって、戸パネル1が不必要に押上げ操作されることを防いで、戸パネル1の吊込み作業をより簡便に、しかもより迅速に行うことができる。
【0044】
捕捉ケース15の上開口に、ランナー軸7の丸軸部7aを受入れる軸溝24と、球軸8の出入りを許す球軸穴25とを形成したので、戸パネル1を吊り込む際に、球軸8と球軸穴25が互いに案内しあう状態で、受動部33を操作面19に的確にあてがうことができる。また、球軸8がソケット部21とロック部32でロック保持された状態では、ランナー軸7の丸軸部7aを軸溝24で受止めて、ランナー軸7が前後に傾動することを規制することができる。
【0045】
ロックアーム22をロック待機位置に位置保持するストッパー55を、ロックアーム22のアーム端22aと、ソケット部21に連続する縦壁21aとで構成したので、互いに接当し、あるいは互いに係合しあう一対の部材を別途設けてストッパー55を構成する場合に比べて、構造を簡素化して捕捉ユニット12のコスト削減に寄与できる。
【0046】
戸パネル1に埋設固定したユニットケース13の昇降凹部14で捕捉ケース15を上下動のみ自在に支持し、ユニットケース13と捕捉ケース15の間に、戸パネル1の上下高さを調整する上下調整構造を設けたので、ガイドレール3と戸パネル1との間の隙間調整、或いは床面と戸パネル1との間の隙間調整を、必要に応じて簡便にしかも的確に行うことができる。
【0047】
調整機構42を、調整ねじ軸47と、同軸47に噛合う調整ナット48と、調整ナット48を回転操作する一対の傘歯車49・50と、ユニットケース13の上面に突出する調整軸51とで構成したので、戸パネル1をランナー4で吊持した状態のまま、調整軸51を回転操作することで、戸パネル1の吊持高さを容易に調整することができる。また、調整軸51の回転動作を一対の傘歯車49・50で動作変換し、傘歯車50および調整ナット48を回転操作して、調整ねじ軸47を横移動させるので、戸パネル1に作用する外力や衝撃力によって調整ねじ軸47が横移動することを防ぎ、戸パネル1の開閉に伴って吊持高さが変化することを防ぐことができる。
【0048】
六角軸状に形成した調整軸51の突出基端を、ユニットケース13に設けた一対の弾性壁53で挟み保持させたので、調整軸51を回転操作するとき、弾性壁53が弾性変形することで調整軸51の回転動作を許し、回転調整したのちの調整軸51の対向辺部を一対の弾性壁53で挟み保持して、調整軸51の回動を規制することができる。したがって、戸パネル1に作用する外力や衝撃力によって調整軸51が回動変位するのを防止して、戸パネル1の開閉に伴って吊持高さが変化するのをさらに確実に防止することができる。
【0049】
ユニットケース13を、上ケース13aと下ケース13bに分割形成して、両ケース13a・13bの両端を縦ケースねじ18で戸パネル1に締結固定して、上ケース13aと下ケース13bの接合面の間に、調整ねじ軸47と、調整ナット48と、一対の傘歯車49・50と、連結ブロック39とを配置したので、調整軸51で操作される傘歯車49から調整ねじ軸47に至る可動部品を上ケース13aと下ケース13bの間に収容して、可動部品に対する異物の噛込みや塵埃の付着を防止することができ、調整機構42による戸パネル1の高さ調整を常に安定した状態で行うことができる。また、傘歯車49から調整ねじ軸47に至る可動部品のユニットケース13に対する組付けを迅速かつ簡便に行うことができる。
【0050】
図13は戸パネルの吊持構造の別の実施形態を示す。
図13の吊持構造では、戸パネル1を左右一対のランナー4で吊持するが、戸パネル1の閉じ端側のランナー4のランナー軸7で戸パネル1に埋設した捕捉ケース15を吊持する。また、戸パネル1の開放端側は従来公知の吊持構造で吊持しており、ランナー4のランナー軸7に組付けられたランナー台58を、戸パネル1に固定したランナーホルダー59に装着して、戸パネル1を吊持するようにした。ランナーホルダー59は、戸パネル1の開放端側の上隅に埋設固定してあり、ランナー台58はランナーホルダー59に対して横向きにスライド係合することで装着され、両者の間に設けたロック構造で固定保持される。捕捉ケース15と戸パネル1の閉じ端の間には、戸パネル1を閉じ位置でロック保持するロッド61が設けてあり、ガイドレール3の閉じ端にはロッド61が係脱するロッド受(図示していない)が固定してある。戸パネル1を閉じた状態で、ロッド61を図示していないロッド操作具で上下操作することにより、ロッド61をロッド受に対して係脱させることができる。他の構造は先の実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0051】
戸パネル1を吊り込む場合には、戸パネル1を起立させて、戸パネル1の開放端を持ち上げ支持した状態で、開放端側のランナー4のランナー軸7に組付けたランナー台58をランナーホルダー59に係合装着する。次に、戸パネル1を振止めピン10で振止め支持したのち、捕捉ケース15を戸パネル1の閉じ端側のランナー軸7の真下に位置させ、最後に戸パネル1をガイドレール3に向かって押上げ操作することにより、球軸8をソケット部21とロックアーム22のロック部32でロック保持する。
【0052】
以上のように別の実施形態に係る吊持構造では、戸パネル1の上面一側に設けた捕捉ユニット12を片方のランナー軸7の球軸8で吊持し、他方のランナー軸7に組付けたランナー台58を戸パネル1に設けたランナーホルダー59に装着して、戸パネル1を吊持するようにした。このように本発明の吊持構造は、従来公知の吊持構造と併用して戸パネル1を支持する形態で実施することがある。
【0053】
上記以外に、球軸8は半球状である必要はなく、円球状に形成してあってもよく、さらに楕円球面状に形成してあってもよい。ストッパー55は、ロックアーム22のアーム端22aと、ソケット部21に連続する縦壁21aに形成した横方向の段部で構成することができる。捕捉ケース15に傾斜カム41を形成し、スライド板38にカムピン40を設けてもよい。調整軸51は、調整ねじ軸47と直交する状態で戸パネル1の前面および後面に露出させてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 戸パネル
3 ガイドレール
4 ランナー
7 ランナー軸
8 球軸
12 捕捉ユニット
13 ユニットケース
14 昇降凹部
15 捕捉ケース
19 操作面
21 ソケット部
22 ロックアーム
23 ロックばね
28 ストッパー部
32 ロック部
33 受動部
34 規制面
35 ロック壁
36 ロック解除部
38 スライド板
39 連結ブロック
40 カムピン
41 傾斜カム
42 調整機構
47 調整ねじ軸
48 調整ナット
49・50 傘歯車
51 調整軸