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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189460
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20221215BHJP
   C08K 5/5377 20060101ALI20221215BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K5/5377
C08L77/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098044
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】谷本 裕亮
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF051
4J002CL011
4J002CL031
4J002CL051
4J002CL061
4J002EW126
4J002FD136
4J002GC00
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GN00
4J002GQ01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂を含む樹脂組成物であって、難燃剤をさらに含みながらも、樹脂由来の特性が十分に発揮された成形体を形成し得る樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂組成物は、テレフタル酸系モノマー由来の構成単位と、1,4-シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を含む、コポリエステル系樹脂Aおよび/またはポリアミド系樹脂を含み、かつ、式(1)で表される有機リン系化合物を含む。

式(1)中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アントリル基、または芳香族置換基を有しても良い炭素数1~4の分岐状または直鎖状のアルキル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分として、テレフタル酸系モノマー由来の構成単位と、1,4-シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位とを含む、コポリエステル系樹脂Aおよび/またはポリアミド系樹脂を含み、かつ、
式(1)で表される有機リン系化合物を含む、
樹脂組成物;
【化1】
式(1)中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アントリル基、または芳香族置換基を有しても良い炭素数1~4の分岐状または直鎖状のアルキル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。
【請求項2】
前記コポリエステル系樹脂Aが非晶性である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記コポリエステル系樹脂Aが、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール由来の構成単位をさらに含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリアミド系樹脂が、ポリカプラミドである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機リン系化合物の含有割合が、前記樹脂成分100重量部に対して、0.5重量部~20重量部である、請求項1から4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記有機リン系化合物とは別の難燃剤をさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載の樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂は、容器をはじめとした多種多様な用途に適用されている。一般に、これらの樹脂を含む樹脂組成物に関して、加工性(例えば、流動性)向上、成形体とした際の特性(例えば、剛性等の機械的特性、外観等)向上等を目的として、様々な検討が行われている。また、上記樹脂組成物に添加剤を加えるなどして、用途に応じた機能向上も図られている。そのような手段のひとつとして、難燃性を付加すべく難燃剤を添加する方法が知られている。しかしながら、難燃剤を加えると、用いる樹脂によっては、樹脂由来の特性が阻害され、所望の機械的特性、外観等を有する成形体が得られない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-83932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ポリエステル系樹脂(特にテレフタル酸系モノマー由来の構成単位と、1,4-シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を含む、コポリエステル系樹脂A)またはポリアミド系樹脂を含む樹脂組成物であって、難燃剤をさらに含みながらも、樹脂由来の特性が十分に発揮された成形体を形成し得る樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分としてテレフタル酸系モノマー由来の構成単位と、1,4-シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を含む、コポリエステル系樹脂Aおよび/またはポリアミド系樹脂を含み、かつ、式(1)で表される有機リン系化合物を含む。
【化1】
式(1)中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アントリル基、または芳香族置換基を有しても良い炭素数1~4の分岐状または直鎖状のアルキル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。
1つの実施形態においては、上記コポリエステル系樹脂Aが非晶性である。
1つの実施形態においては、上記コポリエステル系樹脂Aが、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール由来の構成単位をさらに含む。
1つの実施形態においては、上記ポリアミド系樹脂が、ポリカプラミドである。
1つの実施形態においては、上記有機リン系化合物の含有割合が、上記樹脂成分100重量部に対して、0.5重量部~20重量部である。
1つの実施形態においては、上記樹脂組成物は、上記有機リン系化合物とは別の難燃剤をさらに含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、テレフタル酸系モノマー由来の構成単位と、1,4-シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を含む、コポリエステル系樹脂Aまたはポリアミド系樹脂を含む樹脂組成物であって、難燃剤をさらに含みながらも、樹脂由来の特性(例えば、耐衝撃性、剛性、外観性)が十分に発揮された成形体を形成し得る樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として、テレフタル酸系モノマー由来の構成単位と、1,4-シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位とを含む、コポリエステル系樹脂A(以下、単にコポリエステル系樹脂Aともいう)および/またはポリアミド系樹脂を含み、かつ、式(1)で表される有機リン系化合物とを含む。
【化2】
式(1)中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アントリル基、または芳香族置換基を有しても良い炭素数1~4の分岐状または直鎖状のアルキル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。
【0008】
本発明においては、上記コポリエステル系樹脂Aまたはポリアミド系樹脂と、上記特定の有機リン系化合物とを組み合わせて用いることにより、当該有機リン系化合物由来の難燃性を有し、かつ、樹脂成分由来の特性が十分に発揮された成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。より詳細には、従来、樹脂組成物に難燃剤を添加すると、機械的強度が低下する、外観低下が生じる等の問題が生じていたが、本発明においては、上記特定の有機リン系化合物を用いることにより、ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂由来の機械的特性(特に、耐衝撃性、剛性)を所望の範囲で維持しつつ、有機リン系化合物由来の難燃性を付加することができる。また、本発明の樹脂組成物を用いれば、外観に優れる成形体を得ることができる。より詳細には、ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂と従来の難燃剤とを組み合わせた場合、難燃剤由来の外観不良(不透明化(特に、コポリエステル系樹脂Aを用いる場合)、点状、斑状等の色ムラ(特にポリアミド系樹脂を用いる場合))が生じる場合があるが、本発明においては、難燃剤としての機能を有し得る有機リン系化合物を含みながらも、外観に優れる成形体を得ることができる。
【0009】
また、本発明は、上記特定の有機リン系化合物を加えても、樹脂組成物の流動性が阻害されない点でも有利である。また、当該樹脂組成物の組成によっては、上記特定の有機リン系化合物の添加により、流動性の向上を図ることもできる。
【0010】
上記樹脂組成物(例えば、ポリアミド系樹脂を含む樹脂組成物)の275℃、5kgfにおけるメルトフローレートは、好ましくは100g/10min~1000g/10minであり、より好ましくは300g/10min~900g/10minであり、さらに好ましくは400g/10min~900g/10minである。このような範囲であれば、成形加工性に特に優れる樹脂組成物を得ることができる。
【0011】
上記樹脂組成物(例えば、コポリエステル系樹脂Aを含む樹脂組成物)の270℃、2.16kgfにおけるメルトフローレートは、好ましくは5g/10min~100g/10minであり、より好ましくは8g/10min~50g/10minである。このような範囲であれば、成形加工性に特に優れる樹脂組成物を得ることができる。
【0012】
A-1.樹脂成分
上記樹脂組成物中、樹脂成分の含有割合は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは55重量部以上であり、より好ましくは60重量部以上であり、さらに好ましくは80重量部以上である。樹脂成分の含有割合の上限は、樹脂組成物100重量部に対して、例えば、99重量部である。
【0013】
A-1-1.コポリエステル系樹脂A
コポリエステル系樹脂Aの含有割合は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは30重量部以上であり、より好ましくは55重量部以上であり、さらに好ましくは80重量部以上であり、さらに好ましくは90重量部以上である。ポリエステル系樹脂の含有割合の上限は、樹脂組成物100重量部に対して、例えば、99重量部である。
【0014】
コポリエステル系樹脂Aは、ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸系モノマーと、ジオール成分としての1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むモノマー組成物から得られた樹脂である。このような特定のコポリエステル系樹脂Aを用いることにより、機械的特性(特に、耐衝撃性、剛性)に優れる成形体を形成することが可能となる。また、流動性に優れる樹脂組成物を得ることができる。コポリエステル系樹脂は、非晶性であることが好ましい。本明細書において、結晶性または非晶性であるかはDSC測定により判断することができる。具体的には、以下の方法で判断することができる。樹脂試料を示差走査型熱量計(DSC)を用いてJIS K 7121に準拠して10℃/分の昇温速度で-100℃から300℃まで加熱溶融させ、300℃にて10分間に亘って保持し、次に、試料を10℃/分の降温速度で-100℃まで降温する。次に、試料を10℃/分の昇温速度にて-100℃から300℃まで加熱溶融させ、この二回目の昇温工程において、融解ピークを示さないものを非晶性とし、溶融ピークを示すものを結晶性とする。
【0015】
上記テレフタル酸系モノマーは、テレフタル酸またはテレフタル酸の誘導体であり得る。すなわち、コポリエステル系樹脂は、テレフタル酸由来の構成単位および/またはテレフタル酸の誘導体由来の構成単位を含み得る。
【0016】
テレフタル酸の誘導体としては、例えば、テレフタル酸のハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物、これらの混合物当該挙げられる。テレフタル酸の誘導体としては、例えば、テレフタル酸のジアルキルエステル、ジアリールエステル等が挙げられ、その具体例としては、ジメチルテレフタレート(DMT)、ジエチルテレフタレート等が挙げられる。
【0017】
上記コポリエステル系樹脂Aは、その他のモノマー由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。1つの実施形態においては、テレフタル酸系モノマー以外のジカルボン酸(その他のジカルボン酸)由来の構成単位をさらに含む。その他のジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、スチルベンジカルボン酸等が挙げられる。シクロヘキサンジカルボン酸としては、1,3-および/または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。コポリエステル系樹脂Aがその他のジカルボン酸由来の構成単位を含む場合、テレフタル酸系モノマー由来の構成単位の含有割合は、ジカルボン酸全量(テレフタル酸系モノマー由来の構成単位およびその他のジカルボン酸由来の構成単位の合計量)に対して、好ましくは40モル%以上であり、より好ましくは40モル%~90モル%であり、さらに好ましくは50モル%~85モル%である。
【0018】
上記コポリエステル系樹脂Aは、1,4-シクロヘキサンジメタノール以外のジオール(その他のジオール)由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。その他のジオールとしては、例えば、脂肪族または脂環式グリコール(好ましくは、炭素数2~20)が挙げられる。その他のジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタンジオール等が挙げられる。
【0019】
1つの実施形態において、上記コポリエステル系樹脂Aは、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール由来の構成単位をさらに含む。当該構成単位を含むコポリエステル系樹脂を用いれば、機械的特性により優れる成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。コポリエステル系樹脂Aが、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール(TMCD)由来の構成単位を含む場合、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)由来の構成単位の含有割合は、TMCD由来の構成単位およびCHDM由来の構成単位の合計に対して、好ましくは10モル%~90モル%であり、より好ましくは20モル%~85モル%であり、さらに好ましくは30モル%~80モル%である。また、TMCD由来の構成単位の含有割合は、TMCD由来の構成単位およびCHDM由来の構成単位の合計に対して、好ましくは10モル%~90モル%であり、より好ましくは15モル%~80モル%であり、さらに好ましくは20モル%~70モル%である。
【0020】
上記コポリエステル系樹脂Aは、任意の適切な方法により製造され得る。また、上記コポリエステル系樹脂は市販品を用いてもよい。コポリエステル系樹脂Aの市販品としては、例えば、イーストマンケミカル社製のTRITAN(登録商標、以下同様)が挙げられる。
【0021】
上記コポリエステル系樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは90℃~200℃であり、より好ましくは100℃~180℃であり、さらに好ましくは100℃~160℃であり、特に好ましくは100℃~140℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れる成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。
【0022】
上記コポリエステル系樹脂Aの荷重たわみ温度(ISO75準拠;0.45MPaの荷重)は、好ましくは60℃~150℃であり、より好ましくは90℃~150℃であり、さらに好ましくは95℃~120℃である。なお、TRITAN TX1001は99℃、TX2001は109℃である。上記コポリエステル系樹脂Aの荷重たわみ温度(ISO75準拠;1.80MPaの荷重)は、好ましくは60℃~150℃であり、より好ましくは90℃~120℃であり、さらに好ましくは80℃~100℃である。なお、TRITAN TX1001は85℃、TX2001は92℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れる成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
1つの実施形態においては、コポリエステル系樹脂Aを含む樹脂組成物は、樹脂成分として、結晶性ポリエステル系樹脂をさらに含む。上記結晶性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート等が挙げられる。なかでも好ましくは、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであり、より好ましくはポリブチレンテレフタレートである。結晶性ポリエステル系樹脂(好ましくは、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、より好ましくはポリブチレンテレフタレート)を含有させることにより、耐熱性に優れる成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。
【0024】
A-1-2.ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂の含有割合は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは30重量部以上であり、より好ましくは55重量部以上であり、さらに好ましくは80重量部以上である。ポリアミド系樹脂の含有割合の上限は、樹脂組成物100重量部に対して、例えば、99重量部である。
【0025】
ポリアミド系樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。例えば、ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド(半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド)等が用いられ得る。ポリアミド系樹脂の具体例としては、例えば、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)、エチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン26/66/610)、ポリヘキサメチレンシクロヘキシルアミド、ポリノナメチレンシクロヘキシルアミド等の脂肪族ポリアミド;ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(ナイロン6I/6T)、11-アミノウンデカンアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)等の脂肪族骨格を有する半芳香族ポリアミド;あるいはこれらのポリアミドをメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性した変性ポリアミドが挙げられる。なかでも好ましくは、ポリカプラミド(ナイロン6)である。
【0026】
上記ポリアミド系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは90℃~200℃であり、より好ましくは100℃~180℃であり、さらに好ましくは100℃~160℃であり、特に好ましくは100℃~140℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れる成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
A-1-3.その他の樹脂
上記樹脂組成物は、樹脂成分として、その他の樹脂をさらに含んでいてもよい。その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
【0028】
その他の樹脂の含有割合は、樹脂成分100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは40重量部以下であり、さらに好ましくは30重量部以下であり、さらに好ましくは20重量部以下であり、さらに好ましくは10重量部以下であり、特に好ましくは5重量部以下である。
【0029】
A-2.有機リン系化合物
上記のとおり、本発明で用いられる有機リン系化合物は、式(1)で表される有機リン系化合物である。
【化3】

式(1)中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アントリル基、または芳香族置換基を有しても良い炭素数1~4の分岐状または直鎖状のアルキル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。式(1)で表される有機リン系化合物は、例えば、特開2019-135286号公報、特開2020-83932号公報に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0030】
好ましくは、R、Rは同一または異なっていても良いフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ベンジル基、フェネチル基であり、より好ましくは、R、Rは同一または異なっていても良いフェニル基、ベンジル基である。また、好ましくは、R、R、R、Rは同一または異なっていても良い水素原子、メチル、エチル、各種プロピル、各種ブチル、フェニル基、各種トルイル基、ナフチル基、アントリル基であり、より好ましくは、R、R、R、Rは、同一または異なっていても良い水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基である。
【0031】
式(1)で表される有機リン系化合物の具体例としては、3,9-ビス(フェニルメチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2-メチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((3-メチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((4-メチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2,4-ジメチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2,6-ジメチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((3,5-ジメチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2,4,6-トリメチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2-sec-ブチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((4-sec-ブチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2,4-ジ-sec-ブチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2,6-ジ-sec-ブチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2,4,6-トリ-sec-ブチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2-tert-ブチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((4-tert-ブチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((4-ビフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((1-ナフチル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2-ナフチル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((1-アントリル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((2-アントリル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス((9-アントリル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(1-フェニルエチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-メチル-2-フェニルエチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(ジフェニルメチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(トリフェニルメチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-フェニルメチル-9-((2,6-ジメチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-フェニルメチル-9-((2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-フェニルメチル-9-(1-フェニルエチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-フェニルメチル-9-ジフェニルメチル-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-((2,6-ジメチルフェニル)メチル)-9-(1-フェニルエチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-((2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル)-9-(1-フェニルエチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-ジフェニルメチル-9-(1-フェニルエチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-ジフェニルメチル-9-((2,6-ジメチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3-ジフェニルメチル-9-((2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)メチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
【0032】
1つの実施形態においては、式(1)で表される有機リン系化合物として、3,9-ビス(フェニルメチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン;3,9-ビス(1-フェニルエチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン;3、9-ビス(2-フェニルエチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン;または、3,9-ビス(ジフェニルメチル)-3,9-ジオキソ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが用いられる。特に好ましくは、本発明の効果が顕著になるという観点から、2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9-ジベンジル-3,9-ジオキサイドである。
【0033】
式(1)で表される有機リン系化合物の有機純度は98%以上であり、好ましくは98.5%以上、特に好ましくは99.0%以上の純度である。有機純度の測定方法としては、例えば、HPLC装置としてWaters社製Separations Module 2690、検出器としてWaters社製Dual λ Absorbance Detector 2487(UV-264nm)、カラムとして東ソー社製TSKgel ODS-120T 2.0mm×150mm(5μm)を用い、溶離液に蒸留水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度40℃で0→12min:アセトニトリル50%、12→17min:アセトニトリル50→80%、17→27min:アセトニトリル80%、27→34min:アセトニトリル80→100%、34→60min:100%のグラジエントプログラムにて測定することができる。測定は、ペンタエリスリトールジホスホネート50±0.5mgをアセトニトリル25mlに溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、測定する。純度は面積%として算出する。
【0034】
式(1)で表される有機リン系化合物の含有割合は、樹脂成分100重量部に対して、好ましくは3重量部~20重量部であり、より好ましくは4重量部~15重量部であり、さらに好ましくは5重量部~10重量部である。このような範囲であれば、難燃性に優れ、かつ、機械的特性にも優れる成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。1つの実施形態においては、有機リン系化合物の添加量は、所望とする難燃性の度合い、外観(成形体の透明性)等のバランスにより適切な量とされ得る。
【0035】
A-3.その他の成分
上記樹脂組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、流動改質剤、メヤニ防止剤、熱安定剤、耐候剤等の安定剤、顔料、染料等の着色剤、滑剤、架橋剤、架橋助剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、溶剤等が挙げられる。また、タルク、硫酸マグネシウム繊維、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸アンモニウム塩、珪酸塩類、炭酸塩類、カーボンブラック等のフィラーを含んでいてもよい。
【0036】
1つの実施形態においては、上記樹脂組成物は、式(1)で表される有機リン系化合物とは別の難燃剤をさらに含む。本発明によれば、式(1)で表される有機リン系化合物を添加することにより、別の難燃剤のメリット(特に、難燃性、耐熱性)を損なうことなく、機械的強度の向上、外観の向上、流動性の向上等が実現され得る。別の難燃剤としては、式(1)で表される有機リン系化合物以外のリン系難燃剤、窒素系難燃剤、アンチモン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。式(1)で表される有機リン系化合物以外のリン系難燃剤としては、例えば、リン酸エステル系難燃剤、ポリリン酸メラミン系難燃剤、フォスファゼン系難燃剤、ホスフィン酸系難燃剤、赤リン系難燃剤等が挙げられる。中でも好ましくはホスフィン酸系難燃剤である。
【0037】
別の難燃剤を含む場合、別の難燃剤の含有割合は、式(1)で表される有機リン系化合物100重量部に対して、好ましくは2000重量部以下であり、より好ましくは1000重量部以下である。
【0038】
A-4.樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物は、任意の適切な方法により製造され得る。該製造方法としては、例えば、樹脂成分と、上記有機リン系化合物、必要に応じて用いられるその他の成分を含む樹脂組成物を溶融混練する方法(メルトブレンド法)が挙げられる。溶融混練の方法としては、例えば、単軸押出機、多軸押出機、タンデム式押出機、バンバリーミキサー等を用いた方法が挙げられる。溶融混練により、樹脂組成物を製造することにより、剛性に優れる成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。
【0039】
上記溶融混練における加工温度は、樹脂組成物に含有される樹脂が溶融し得る温度であることが好ましい。該温度は、例えば、150℃~330℃である。
【0040】
B.成形体
上記樹脂組成物を用いて形成された成形体が提供され得る。該成形体を成形する方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、異形押出成形法、発泡成形法、ラム押出成形法、固化押出法、パイプ成形法、チューブ成形法、異種成形体の被覆成形法、インジェクションブロー成形法、ダイレクトブロー成形法、Tダイシートまたはフィルム成形法、延伸成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、プレス成形法、回転成形法、真空成形法、圧空成形法、溶融紡糸等が挙げられる。
【0041】
上記成形体は、難燃性および機械的特性(特に、剛性)に優れる。また、本発明の樹脂組成物を用いれば、例えば、難燃剤由来の点状模様、斑模様等の発生が少なく、外観に優れた成形体を得ることができる。
【実施例0042】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。なお、部および%は特に断りのない限り重量基準に基づく。
【0043】
(1)比重
ISO1183に準拠し、樹脂試料片の比重を測定した。
【0044】
(2)メルトマスフローレート(MFR)
実施例および比較例で得た樹脂組成物について、ISO1133に準拠し、樹脂試料片のメルトマスフローレート(MFR)を測定し、流動性を評価した。樹脂組成物のMFR試験における試験条件は、温度:275℃、荷重:5kgf、または、温度:270℃、荷重2.16kgとした。
【0045】
(3)引張強度、破断伸び、降伏伸び
樹脂試料片について、ISO527に準拠し、測定を行った(測定温度:23℃、引張速度50mm/min)。
【0046】
(4)曲げ強度、弾性率
樹脂試料片について、ISO178に準拠し、測定を行った(測定温度:23℃)。
【0047】
(5)シャルピー衝撃強度
樹脂試料片について、ISO179に準拠し、測定を行った(測定温度:23℃)。
(測定条件)
振り子エネルギー:4J
衝撃速度 :2.9m/s(±5%)
ノッチ付
【0048】
(6)荷重たわみ温度
樹脂試料片について、ISO75に準拠し、測定を行った。荷重は、0.45MPaおよび/または1.80MPaとした。
【0049】
(7)難燃性
樹脂試料片について、UL94に準拠し、V試験を行った。判定がV-0、V-1、V-2のいずれの基準も満たすことが出来なかった場合を「not」とした。
【0050】
[実施例1-1]
非晶性コポリエステル系樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名「TRITAN TX1001」)95重量部と、有機リン系化合物(I)(帝人社製、商品名「FCX-210」、2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9-ジベンジル-3,9-ジオキサイド)5重量部とを、二軸押出機(東芝機械社製TEM18SS、スクリュ径18mm)を用いて、溶融温度280℃で溶融混練を行った。溶融物を二軸押出機からストランド状に押出して冷却固化した後、ペレット状に切断し樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、射出成形機(東洋機械金属社製:PLASTAR SI80-IV)を用いて、シリンダ温度270℃、金型温度60℃の条件で射出成形することによって樹脂試料片を作製した。樹脂試料片としては、上記(3)~(6)の試験用に、ISO規格タイプA1ダンベル型試験片を準備し、上記(7)の試験用に、短冊試験片(厚み:1.6mm、3.2mm)を準備した。
上記樹脂組成物を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例1-2]
非晶性コポリエステル系樹脂の配合量を97重量部とし、有機リン系化合物(I)の配合量を3重量部としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物および樹脂試料片を得た。上記樹脂組成物を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0052】
[実施例1-3]
非晶性コポリエステル系樹脂の配合量を99重量部とし、有機リン系化合物(I)の配合量を1重量部としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物および樹脂試料片を得た。上記樹脂組成物を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0053】
[実施例1-4]
非晶性コポリエステル系樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名「TRITAN TX1001」)95重量部に代えて、非晶性コポリエステル系樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名「TRITAN TX2001」)90重量部を用い、有機リン系化合物(I)の配合量を10重量部としたこと以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物および樹脂試料片を得た。上記樹脂組成物を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0054】
[比較例1]
有機リン系化合物(I)を配合しなかったこと以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物および樹脂試料片を得た。上記樹脂組成物を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1から明らかなように、本発明の樹脂組成物は、特定の有機リン系化合物を含むことにより、機械的特性と難燃性とが両立された成形体を形成し得る。
また、実施例1-1~1-4の樹脂組成物は、加工性に優れ、かつ、得られた成形体は外観に優れ、十分な透明性を有していた。
【0057】
[実施例2-1]
ポリアミド系樹脂95重量部と、有機リン系化合物(I)(帝人社製、商品名「FCX-210」、2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9-ジベンジル-3,9-ジオキサイド)5重量部と、難燃剤(II)(クラリアント社製OP1230、ジエチルホスフィン酸アルミニウム複合塩(平均粒子径20-40μm))15重量部を、二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS、スクリュ径26mm)を用いて、溶融温度240℃で溶融混練を行った。溶融物を二軸押出機からストランド状に押出して冷却固化した後、ペレット状に切断し樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、射出成形機(東洋機械金属社製:PLASTAR SI80-IV)を用いて、シリンダ温度240℃、金型温度75℃の条件で射出成形することによって樹脂試料片を作製した。樹脂試料片としては、上記(3)~(6)の試験用に、ISO規格タイプA1ダンベル型試験片を準備し、上記(7)の試験用に、短冊試験片(厚み:0.8mm、1.6mm、3.2mm)を準備した。
上記樹脂組成物を上記評価に供した。結果を表2に示す。
また、上記樹脂試料片の外観を目視にて確認したところ、色相が均一な優れた外観であった。
【0058】
[比較例2-1]
有機リン系化合物(I)および難燃剤(II)を配合しなかったこと以外は、実施例2-1と同様にして、樹脂組成物および樹脂試料片を得た。上記樹脂組成物を上記評価に供した。結果を表2に示す。
【0059】
[比較例2-2]
有機リン系化合物(I)を配合せず、ポリアミド系樹脂(リファインバース社製、商品名「RA6F1」)の配合量を80重量部とし、難燃剤(II)の配合量を20重量部としたこと以外は、実施例2-1と同様にして、樹脂組成物および樹脂試料片を得た。上記樹脂組成物を上記評価に供した。結果を表2に示す。また、得られた樹脂試料片の外観を目視にて確認したところ、斑状のムラ(白化)が見られた。
【0060】
【表2】
【0061】
表2から明らかなように、本発明の樹脂組成物は、特定の有機リン系化合物を含むことにより、機械的特性と難燃性とが両立された成形体を形成し得る。また、特定の有機リン系化合物を含むことにより、優れた難燃性を維持しつつも、流動性に優れる樹脂組成物を得ることができる。また、実施例2-1と比較例2-2との比較から明らかなように、特定の有機リン系化合物を添加することにより、別のリン系難燃剤を起因とした外観不良が解消される。
【0062】
[実施例3-1]
ポリアミド系樹脂80重量部と、有機リン系化合物(I)(帝人社製、商品名「FCX-210」、2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9-ジベンジル-3,9-ジオキサイド)5重量部と、難燃剤(III)(クラリアント社製、商品名「OP1312」、ジエチルホスフィン酸アルミニウム複合塩と窒素系難燃助剤の複合物)15重量部を、二軸押出機(東芝機械社製TEM18SS、スクリュ径18mm)を用いて、溶融温度240℃で溶融混練を行った。溶融物を二軸押出機からストランド状に押出して冷却固化した後、ペレット状に切断し樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、射出成形機(東洋機械金属社製:PLASTAR SI80-IV)を用いて、シリンダ温度240℃、金型温度75℃の条件で射出成形することによって樹脂試料片を作製した。
得られた樹脂試料片の外観を目視にて確認したところ、色相が均一な優れた外観であった。
【0063】
[実施例3-2]
ポリアミド系樹脂80重量部と、有機リン系化合物(I)(帝人社製、商品名「FCX-210」、2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9-ジベンジル-3,9-ジオキサイド)5重量部と、難燃剤(IV)(クラリアント社製、商品名「OP930」、ジエチルホスフィン酸アルミニウム複合塩(OP1230の微粒子タイプ平均粒子径3-5μm))15重量部を、二軸押出機(東芝機械社製TEM18SS、スクリュ径18mm)を用いて、溶融温度240℃で溶融混練を行った。溶融物を二軸押出機からストランド状に押出して冷却固化した後、ペレット状に切断し樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、射出成形機(東洋機械金属社製:PLASTAR SI80-IV)を用いて、シリンダ温度240℃、金型温度75℃の条件で射出成形することによって樹脂試料片を作製した。
得られた樹脂試料片の外観を目視にて確認したところ、色相が均一な優れた外観であった。
【0064】
[比較例3-1]
有機リン系化合物(I)を添加せず、難燃剤(III)の配合量を20重量部としたこと以外は、実施例3-1と同様にして、樹脂試料片を得た。得られた樹脂試料片の外観を目視にて確認したところ、金型起因の汚れが見られた。
【0065】
[比較例3-2]
有機リン系化合物(I)を添加せず、難燃剤(IV)の配合量を20重量部としたこと以外は、実施例3-2と同様にして、樹脂試料片を得た。得られた樹脂試料片の外観を目視にて確認したところ、成形品全体が白化していた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の樹脂組成物は、主にホース・チューブ、ベルト、電線、ケーブル、パイプ、履物、自動車部品、座席用シート、接着剤、シール材、食器、防振・防音部品、各種成形体の材料として好適に用いられ得る。