(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189461
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】フルオレン化合物またはその塩ならびにその製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
C07D 251/18 20060101AFI20221215BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221215BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20221215BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20221215BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
C07D251/18 E CSP
C08L101/00
C08K5/3492
C08L77/00
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098045
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智也
(72)【発明者】
【氏名】廣田 真之
(72)【発明者】
【氏名】大内 祐輝
【テーマコード(参考)】
4H039
4J002
【Fターム(参考)】
4H039CA99
4H039CF10
4J002AA011
4J002BB001
4J002BC021
4J002BC031
4J002BD031
4J002BD101
4J002BD131
4J002BD141
4J002BD151
4J002BE021
4J002BG041
4J002BG051
4J002BG061
4J002BN141
4J002BN151
4J002BN161
4J002CB001
4J002CF001
4J002CF061
4J002CF071
4J002CG011
4J002CH061
4J002CH071
4J002CH091
4J002CL001
4J002CN031
4J002EU186
4J002FD206
4J002GT00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】樹脂の性質改善用添加剤として有用なフルオレン化合物又はその塩を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物とする。
[R
1は置換基を示し、kは0~8の整数を示し、R
2a、R
2b、R
2cおよびR
2dはそれぞれ独立して水素原子または置換基を示し、R
3aおよびR
3bはそれぞれ独立して水素原子または置換基を示し、R
4a、R
4b、R
4cおよびR
4dならびにR
5a、R
5b、R
5cおよびR
5dはそれぞれ独立して水素原子または置換基を示す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
(式中、R
1は置換基を示し、kは0~8の整数を示し、
R
2a、R
2b、R
2cおよびR
2dはそれぞれ独立して水素原子または置換基を示し、
R
3aおよびR
3bはそれぞれ独立して水素原子または置換基を示し、
R
4a、R
4b、R
4cおよびR
4dならびにR
5a、R
5b、R
5cおよびR
5dはそれぞれ独立して水素原子または置換基を示す。)
で表されるフルオレン化合物またはその塩。
【請求項2】
前記式(1)において、R2aおよびR2bが水素原子または炭化水素基であり、R2cおよびR2dが水素原子であり、
R3aおよびR3bが水素原子または炭化水素基であり、
R4a、R4b、R4cおよびR4dならびにR5a、R5b、R5cおよびR5dが水素原子または炭化水素基である請求項1記載のフルオレン化合物またはその塩。
【請求項3】
樹脂添加剤または樹脂原料である請求項1または2記載のフルオレン化合物またはその塩。
【請求項4】
結晶である請求項1~3のいずれか一項に記載のフルオレン化合物またはその塩。
【請求項5】
下記式(2)
【化2】
(式中、R
1およびkはそれぞれ前記式(1)に同じ。)
で表される化合物と、下記式(3a)で表される化合物および下記式(3b)で表される化合物またはこれらの塩
【化3】
(式中、R
2a、R
2b、R
2cおよびR
2d;R
3aおよびR
3b;R
4a、R
4b、R
4cおよびR
4dならびにR
5a、R
5b、R
5cおよびR
5dはそれぞれ前記式(1)に同じ。)
とを反応させる、請求項1~4のいずれか一項に記載のフルオレン化合物またはその塩の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のフルオレン化合物またはその塩と、樹脂とを含む樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂が、ポリアミド系樹脂を含む請求項6記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載のフルオレン化合物またはその塩と前記樹脂との質量割合が、前者/後者=0.1/99.9~30/70である請求項6または7記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載のフルオレン化合物またはその塩を樹脂に添加して、強度を向上する方法。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載のフルオレン化合物またはその塩を樹脂原料として含む樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン(または9H-フルオレン)骨格および1,3,5-トリアジン(またはs-トリアジン)骨格を有する化合物またはその塩ならびにその製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレン骨格を有する化合物は、光学的特性などの優れた性質を有しており、樹脂原料(重合成分またはモノマー成分)などとして様々な分野で利用されている。特開平5-31341号公報(特許文献1)および特開2008-81418号公報(特許文献2)には、ポリイミドやポリアミドの原料であるジアミン化合物として、フルオレン骨格を有する特定のアミン化合物について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-31341号公報
【特許文献2】特開2008-81418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の実施例では、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンを用いてポリイミドが調製されており、特許文献2の実施例では、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-2,7-ジメトキシフルオレンが調製されている。
【0005】
特許文献1~2では、9,9-ビスフェニルフルオレン骨格を有する特定のアミン化合物については具体的に開示されているものの、フルオレン(または9H-フルオレン)骨格および1,3,5-トリアジン(またはs-トリアジン)骨格を有する化合物については、何ら記載も示唆もされていない。
【0006】
従って、本発明の目的は、樹脂の性質を改善するための添加剤などとして有用な新規なフルオレン化合物またはその塩ならびにその製造方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の化学構造を有するフルオレン化合物が、樹脂添加剤(樹脂改質剤)などとして有用なことを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明のフルオレン化合物は下記式(1)で表され、本発明は下記式(1)で表されるフルオレン化合物の塩(または誘導体)も包含する。
【0009】
【0010】
(式中、R1は置換基を示し、kは0~8の整数を示し、
R2a、R2b、R2cおよびR2dはそれぞれ独立して水素原子または置換基を示し、
R3aおよびR3bはそれぞれ独立して水素原子または置換基を示し、
R4a、R4b、R4cおよびR4dならびにR5a、R5b、R5cおよびR5dはそれぞれ独立して水素原子または置換基を示す)。
【0011】
前記式(1)において、R2aおよびR2bが水素原子または炭化水素基であってもよく、R2cおよびR2dが水素原子であってもよく、
R3aおよびR3bが水素原子または炭化水素基であってもよく、
R4a、R4b、R4cおよびR4dならびにR5a、R5b、R5cおよびR5dが水素原子または炭化水素基であってもよい。
【0012】
前記フルオレン化合物またはその塩は、樹脂添加剤または樹脂原料であってもよい。また、前記フルオレン化合物またはその塩は、結晶の形態であってもよい。
【0013】
本発明は、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3a)で表される化合物および下記式(3b)で表される化合物またはその塩とを反応させる、前記フルオレン化合物またはその塩の製造方法を包含する。
【0014】
【0015】
(式中、R1およびkはそれぞれ前記式(1)に同じ)。
【0016】
【0017】
(式中、R2a、R2b、R2cおよびR2d;R3aおよびR3b;R4a、R4b、R4cおよびR4dならびにR5a、R5b、R5cおよびR5dはそれぞれ前記式(1)に同じ)。
【0018】
また、本発明は、前記フルオレン化合物またはその塩と、樹脂とを含む樹脂組成物も包含する。前記樹脂組成物における前記樹脂は、ポリアミド系樹脂を含んでいてもよい。前記樹脂組成物において、前記フルオレン化合物またはその塩と前記樹脂との質量割合は、前者/後者=0.1/99.9~30/70程度であってもよい。
【0019】
本発明は、前記フルオレン化合物またはその塩を前記樹脂に添加して、強度を向上する方法を包含する。
【0020】
さらに、本発明は、前記フルオレン化合物またはその塩を樹脂原料(または重合成分)として含む樹脂も包含する。
【0021】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC1、C6、C10などで示すことがある。例えば、炭素数が1のアルキル基は「C1アルキル」で示し、炭素数が6~10のアリール基は「C6-10アリール」で示す。
【発明の効果】
【0022】
本発明のフルオレン化合物またはその塩は、樹脂を改質するための添加剤などとして有用である。具体的には、樹脂に対する強度向上剤(機械的特性改善剤)などとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施例1で得られたTAZ-FLの
1H-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[フルオレン化合物またはその塩]
本発明の新規なフルオレン化合物は、下記式(1)で表される。
【0025】
【0026】
(式中、R1は置換基を示し、kは0~8の整数を示し、
R2a、R2b、R2cおよびR2dはそれぞれ独立して水素原子または置換基を示し、
R3aおよびR3bはそれぞれ独立して水素原子または置換基を示し、
R4a、R4b、R4cおよびR4dならびにR5a、R5b、R5cおよびR5dはそれぞれ独立して水素原子または置換基を示す)。
【0027】
前記式(1)において、基R1としては、反応に不活性な非反応性置換基であってもよく、例えば、シアノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;アルキル基、アリール基などの炭化水素基などが挙げられる。前記アリール基としては、フェニル基などのC6-10アリール基などが挙げられる。好ましい基R1としては、シアノ基、ハロゲン原子、またはアルキル基であり、特にアルキル基である。
【0028】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などのC1-12アルキル基、好ましくはC1-8アルキル基、特にメチル基などのC1-4アルキル基が挙げられる。
【0029】
なお、基R1の置換数kが複数(2以上)である場合、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環のうち、同一のベンゼン環に置換する2以上の基R1の種類は、同一または異なっていてもよく、異なるベンゼン環に置換する2以上の基R1の種類は同一または異なっていてもよい。また、基R1の結合位置(置換位置)は、フルオレン環の1~8位である限り特に制限されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2,7位などが挙げられる。
【0030】
好ましい置換数kは、例えば0~6程度の整数であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、0~4、0~3、0~2の整数であり、好ましくは0または1、特に0である。なお、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環において、基R1のそれぞれの置換数は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0031】
R2a、R2b、R2cおよびR2d(以下、R2a~R2dともいう)で表される置換基としては、反応に不活性な非反応性置換基であってもよく、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基などが挙げられる。
【0032】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基である。
【0033】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基が挙げられる。
【0034】
アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基が挙げられる。アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基(またはトリル基)、ジメチルフェニル基(またはキシリル基)などのモノないしトリC1-4アルキル-フェニル基が挙げられる。
【0035】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基が挙げられる。
【0036】
R2a~R2dで表される好ましい置換基としてはアルキル基が挙げられ、好ましいアルキル基としては、以下段階的に、C1-6アルキル基、C1-5アルキル基、C1-4アルキル基、C1-3アルキル基であり、さらに好ましくはC1-2アルキル基であり、特にメチル基である。
【0037】
好ましいR2a~R2dとしては水素原子または炭化水素基であり、より好ましくは水素原子またはアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。なお、少なくともR2cおよびR2dが水素原子であるのが好ましく、このような態様における好ましいR2aおよびR2bは水素原子または炭化水素基であり、さらに好ましくは水素原子またはアルキル基であり、特に水素原子(すなわち、R2a~R2dがいずれも水素原子)であるのが好ましい。
【0038】
また、R2a~R2dの種類は、それぞれ互いに異なっていてもよいが、R2aおよびR2bが同一であり、かつR2cおよびR2dが同一であるのが好ましい。
【0039】
R3aおよびR3bで表される置換基としては、反応に不活性な非反応性置換基であってもよく、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基などが挙げられる。これらの炭化水素基としては、前記R2a~R2dで表される置換基として例示した炭化水素基と同様の基が挙げられる。
【0040】
R3aおよびR3bで表される置換基のうち、好ましい置換基はアルキル基であり、好ましいアルキル基としては、以下段階的に、C1-6アルキル基、C1-5アルキル基、C1-4アルキル基、C1-3アルキル基であり、さらに好ましくはC1-2アルキル基であり、特にメチル基である。
【0041】
また、好ましいR3aおよびR3bとしては、水素原子またはアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子またはメチル基であり、特に水素原子が好ましい。
【0042】
R3aおよびR3bの種類は、それぞれ互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0043】
R4a、R4b、R4cおよびR4d(以下、R4a~R4dともいう)ならびにR5a、R5b、R5cおよびR5d(以下、R5a~R5dともいう)で表される置換基は、反応に不活性な非反応性置換基であってもよく、用途などに応じて、反応性置換基であってもよい。R4a~R4d、R5a~R5dで表される置換基としては、例えば、炭化水素基、メチロール基、アルコキシメチル基、塩素原子などのハロゲン原子、保護基などが挙げられる。
【0044】
前記炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などが挙げられる。
【0045】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基である。
【0046】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC3-10シクロアルキル基、好ましくはC3-8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5-6シクロアルキル基が挙げられる。
【0047】
アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基が挙げられる。アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基(またはトリル基)、ジメチルフェニル基(またはキシリル基)などのモノないしトリC1-4アルキル-フェニル基が挙げられる。
【0048】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基が挙げられる。
【0049】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基などのC2-6アルケニル基、好ましくはアリル基が挙げられる。
【0050】
前記アルコキシメチル基としては、例えば、メトキシメチル基などのC1-4アルコキシ-メチル基が挙げられる。
【0051】
前記保護基としては、アミノ基に対する慣用の保護基などが挙げられ、例えば、ベンジルオキシカルボニル基(Z基またはCbz基)、t-ブトキシカルボニル基(Boc基)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)などのウレタン型(またはカルバメート型)保護基;ホルミル基、フタロイル基(Pht基)、p-トルエンスルホニル基(トシル基またはTos基)、o-ニトロフェニルスルフェニル基(Nps基)などのアシル型保護基;トリフェニルメチル基(トリチル基またはTrt基)などのアルキル型保護基などが挙げられる。
【0052】
R4a~R4d、R5a~R5dで表される置換基のうち、炭化水素基、メチロール基が好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
【0053】
また、好ましいR4a~R4d、R5a~R5dとしては、水素原子、炭化水素基またはメチロール基であり、さらに好ましくは水素原子または炭化水素基であり、特に水素原子が好ましい。なかでも、R4a~R4dならびにR5a~R5dの全てが水素原子であるのが好ましい。
【0054】
なお、R4a~R4d、R5a~R5dの種類は、それぞれ互いに異なっていてもよいが、少なくともR4aおよびR4b、R4cおよびR4d、R5aおよびR5bならびにR5cおよびR5dが、それぞれ互いに同一であるのが好ましい。
【0055】
代表的な前記式(1)で表されるフルオレン化合物としては、例えば、式(1)において、R2a~R2dがいずれも水素原子、R3aおよびR3bが水素原子またはメチル基である化合物などが挙げられ、なかでも、R4a~R4dならびにR5a~R5dがいずれも水素原子である化合物、例えば、9,9-ビス[2-(4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン-2-イル)エチル]フルオレンなどが挙げられる。
【0056】
本発明は、前記式(1)で表されるフルオレン化合物の塩を包含する。なお、本明細書および特許請求の範囲において、塩には、前記式(1)で表されるフルオレン化合物と、酸成分などの他の成分とから誘導された誘導体(変性体、会合体または付加物)を含む意味に用い、例えば、前記式(1)で表されるフルオレン化合物と水素結合(または配位)可能な酸(または他の成分)との分子間化合物(または分子化合物)も含む。
【0057】
塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸塩;有機酸塩、具体的には、酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩などのカルボン酸塩や、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩など;またはこれらの複塩などが挙げられる。また、前記フルオレン化合物を含む分子間化合物としては、例えば、イソシアヌル酸(またはシアヌル酸)、ピクリン酸などとの水素結合などによる会合体などが挙げられる。
【0058】
[フルオレン化合物またはその塩の製造方法]
前記式(1)で表される化合物の製造方法は特に制限されないが、例えば、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3a)で表される化合物および式(3b)で表される化合物またはこれらの塩とを反応(マイケル付加反応)させることによって調製してもよい。
【0059】
【0060】
[式中、R1、k、R2a、R2b、R2cおよびR2d、R3aおよびR3b、R4a、R4b、R4cおよびR4dならびにR5a、R5b、R5cおよびR5dは、それぞれ好ましい態様を含めて前記式(1)に同じ]。
【0061】
前記式(2)で表される代表的な化合物としては、9H-フルオレンなどが挙げられる。なお、前記式(2)で表される化合物は市販品などが利用できる。
【0062】
前記式(3a)で表される化合物および式(3b)で表される化合物は、同一化合物であるのが好ましい。また、反応には前記式(3a)および(3b)で表される化合物の塩(誘導体)、例えば、前記式(1)で表されるフルオレン化合物の項の例示に対応する塩などを用いてもよいが、前記式(3a)および(3b)で表される化合物を用いるのが好ましい。なお、前記式(3a)および(3b)で表される化合物は、R2a、R2b、R2cおよびR2dの種類に応じて、E体またはZ体のいずれであってもよい。
【0063】
前記式(3a)および(3b)で表される化合物としては、例えば、前記式(1)で表される化合物として具体的に例示した化合物に対応する化合物などが挙げられ、代表的な化合物としては、R2a~R2dが水素原子、R3aおよびR3bが水素原子またはメチル基である化合物、具体的には、2-ビニル-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、2-イソプロペニル-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンなどの2-(C2-3アルケン-2-イル)-4,6-ジ(置換または無置換アミノ)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0064】
なお、前記式(3a)および(3b)で表される代表的な化合物は、市販品を利用してもよく、慣用の方法により調製してもよい。慣用の方法としては、特に制限されず、例えば、2-[2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンをエピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリン、硫化ナトリウムなどの重合防止剤、および水などの溶媒の存在下、80~120℃程度に加熱する方法、特開昭60-181076号公報、特開昭61-1673号公報などに記載の方法、またはこれらの方法に準じた方法などが挙げられる。
【0065】
反応において、前記式(2)で表される化合物の量と、前記式(3a)および(3b)で表される化合物またはその塩の合計量との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/2~1/10程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1/2.1~1/5、1/2.2~1/3、1/2.3~1/2.5である。
【0066】
反応は、通常、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、例えば、金属水酸化物、金属炭酸塩または炭酸水素塩、金属アルコキシドなどが挙げられる。
【0067】
金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物などが挙げられる。
【0068】
金属炭酸塩または炭酸水素塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩または炭酸水素塩などが挙げられる。
【0069】
金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドなどが挙げられる。
【0070】
これらの塩基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの塩基のうち、金属炭酸塩または炭酸水素塩が好ましく、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩がさらに好ましい。塩基の割合は、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば0.01~1モル程度であってもよく、好ましくは0.1~0.5モルである。
【0071】
反応は、相間移動触媒の存在下または非存在下で行ってもよい。相間移動触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリドなどのテトラアルキルアンモニウムハライドなどが挙げられる。これらの相間移動触媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの相間移動触媒のうち、TBABが好ましい。相間移動触媒の割合は、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば0.001~0.1モル程度であってもよく、好ましくは0.01~0.05モルである。
【0072】
反応は、反応に不活性な溶媒の非存在下または存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノールなどのアルコール類;環状エーテル、鎖状エーテルなどのエーテル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド類;脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの炭化水素類などが挙げられる。
【0073】
環状エーテルとしては、例えば、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル、グリコールエーテル類などが挙げられる。前記グリコールエーテル類としては、例えば、メチルセロソルブ、メチルカルビトールなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジメトキシエタンなどの(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0074】
脂肪族炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、ドデカンなどが挙げられる。脂環族炭化水素類としては、シクロヘキサンなどが挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0075】
これらの溶媒は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、水と、DMSOなどのスルホキシド類との混合溶媒が好ましい。なお、水は前述の塩基の水溶液の形態で添加してもよい。溶媒の使用量は反応の進行を妨げない限り特に制限されず、前記式(2)、(3a)および(3b)で表される化合物の総量100gに対して、例えば100~1000mL程度であってもよく、好ましくは500~700mLである。
【0076】
反応は、不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば50~200℃、好ましくは80~120℃である。反応時間は特に制限されず、例えば0.5~10時間程度であってもよい。
【0077】
反応終了後、必要に応じて、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、中和、洗浄、抽出、ろ過、デカンテーション、濃縮、脱水、乾燥、晶析、クロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
【0078】
[フルオレン化合物またはその塩の特性および用途]
(特性)
上述のようにして得られるフルオレン化合物またはその塩は、結晶または非晶の形態であってもよく、結晶の形態である場合、融点は、例えば200~400℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、250~350℃、280~320℃、290~310℃であり、さらに好ましくは295~300℃である。
【0079】
また、フルオレン化合物またはその塩の5%質量減少温度は、例えば250~450℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、300~400℃、340~380℃、350~370℃である。このように、フルオレン化合物は高い耐熱性を備えている。そのため、高温環境下であっても、樹脂添加剤などとして有効に利用できる。
【0080】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、融点および5%質量減少温度は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0081】
(樹脂添加剤)
前記式(1)で表されるフルオレン化合物またはその塩は、樹脂に添加して特性を改善するための樹脂添加剤、例えば、曲げ強さ、曲げ弾性率などの機械的特性を向上するための強度向上剤、耐熱性を向上するための耐熱性向上剤、流動性(または溶融流動性)を向上するための流動性改善剤などとして有効に利用できる。なお、前記フルオレン化合物またはその塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて添加することもできる。
【0082】
前記式(1)で表されるフルオレン化合物またはその塩と組み合わせて樹脂組成物を形成するための樹脂としては、硬化性樹脂(熱または光硬化性樹脂)であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。
【0083】
硬化性樹脂としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などのフェノール樹脂;ユリア樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂などのアミノ樹脂;フラン樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ジアリルフタレート樹脂;ビニルエステル樹脂(またはエポキシ(メタ)アクリレート樹脂);多官能(メタ)アクリレート系樹脂;ウレタン樹脂;ビスマレイミド系樹脂などのポリイミド樹脂;シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0084】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、具体的には、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などの鎖状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂など;スチレン系樹脂、具体的には、一般用ポリスチレン(GPPS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)などのポリスチレン(PS)、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)などのスチレン系共重合体、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、AXS樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS樹脂)などのゴム成分含有スチレン系樹脂またはゴムグラフトスチレン系共重合体など;(メタ)アクリル樹脂、具体的には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの(メタ)アクリル系単量体の単独または共重合体など;酢酸ビニル系樹脂、具体的には、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタールなど;塩化ビニル系樹脂、具体的には、塩化ビニル単独重合体(PVC)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体などの塩化ビニリデン樹脂など;フッ素樹脂、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)などの単独重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などの共重合体など;ポリエステル系樹脂、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステル(LCP)など;ポリカーボネート系樹脂(PC)、具体的には、ビスフェノールA型ポリカーボネート系樹脂などのビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂など;ポリアミド系樹脂(PA);ポリアセタール樹脂(POM);ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE);ポリエーテルケトン系樹脂、具体的には、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)など;フェノキシ樹脂;ポリケトン樹脂、具体的には、脂肪族ポリケトン樹脂など;ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS);ポリスルホン系樹脂、具体的には、ポリスルホン樹脂(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)など;セルロース誘導体、具体的には、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル、エチルセルロースなどのセルロースエーテルなど;熱可塑性ポリイミド樹脂、具体的には、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミドなど;ポリエーテルニトリル樹脂;熱可塑性エラストマー(TPE)、具体的には、ポリスチレン系TPE、ポリオレフィン系TPE(TPO)、塩素系TPE、フッ素系TPE、ポリウレタン系TPE(TPU)、ポリエステル系TPE(TPEE)、ポリアミド系TPE(TPA)などなどが挙げられる。
【0085】
これらの樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらの樹脂のうち、熱可塑性樹脂が好ましく、樹脂の特性を有効に向上できる点から、ポリアミド系樹脂が好ましい。
【0086】
ポリアミド系樹脂(PA)は、慣用のポリアミド系樹脂が使用でき、例えば、脂肪族モノマー、脂環族モノマーおよび/または芳香族モノマーなどで形成してもよい。
【0087】
脂肪族モノマーとしては、例えば、脂肪族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族アミノカルボン酸、ラクタムなどが挙げられる。
【0088】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2-メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどの直鎖状または分岐鎖状C2-20アルキレンジアミンなどが挙げられ、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C4-16アルキレンジアミン、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C6-12アルキレンジアミンである。
【0089】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、飽和脂肪族ジカルボン酸(直鎖状または分岐鎖状アルカンジカルボン酸)、不飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0090】
直鎖状または分岐鎖状アルカンジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸などの直鎖状または分岐鎖状C1-20アルカン-ジカルボン酸などが挙げられ、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C2-16アルカン-ジカルボン酸、さらに好ましくはアジピン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸などの直鎖状または分岐鎖状C4-12アルカン-ジカルボン酸である。
【0091】
不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2-10アルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0092】
脂肪族アミノカルボン酸としては、例えば、6-アミノヘキサン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸などのアミノC2-20アルキル-カルボン酸などが挙げられ、好ましくはアミノC3-16アルキル-カルボン酸、さらに好ましくはアミノC5-11アルキル-カルボン酸である。
【0093】
ラクタムとしては、前記脂肪族アミノカルボン酸に対応するラクタムであってもよく、例えば、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムなどの4~13員環のラクタムなどが挙げられ、好ましくは7~13員環のラクタムが挙げられる。
【0094】
脂環族モノマーは、脂環骨格(または脂肪族炭化水素環骨格)を有していればよく、例えば、脂環族ジアミン、脂環族ジカルボン酸、脂環族アミノカルボン酸などが挙げられる。
【0095】
脂環族ジアミンとしては、例えば、ジアミノシクロアルカン、ビス(アミノアルキル)シクロアルカン、ビス(アミノシクロヘキシル)アルカンなどが挙げられる。
【0096】
ジアミノシクロアルカンとしては、例えば、ジアミノシクロヘキサンなどのジアミノC5-10シクロアルカンなどが挙げられる。
【0097】
ビス(アミノアルキル)シクロアルカンとしては、例えば、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどのビス(アミノC1-4アルキル)C5-10シクロアルカンなどが挙げられる。
【0098】
ビス(アミノシクロヘキシル)アルカンとしては、例えば、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロヘキシル)C1-6アルカン;ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノ-モノないしトリC1-6アルキル-C5-10シクロアルキル)C1-6アルカンなどが挙げられる。
【0099】
脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸、架橋環式シクロアルカンジカルボン酸、シクロアルケンジカルボン酸、架橋環式シクロアルケンジカルボン酸などが挙げられる。
【0100】
シクロアルカンジカルボン酸としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0101】
架橋環式シクロアルカンジカルボン酸としては、例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などのビまたはトリシクロアルカンジカルボン酸などが挙げられる。
【0102】
シクロアルケンジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5-10シクロアルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0103】
架橋環式シクロアルケンジカルボン酸としては、例えば、ノルボルネンジカルボン酸などのビまたはトリシクロアルケンジカルボン酸などが挙げられる。
【0104】
脂環族アミノカルボン酸としては、例えば、アミノシクロアルカンカルボン酸などが挙げられ、具体的には、アミノシクロヘキサンカルボン酸などのアミノC5-10シクロアルカン-カルボン酸などが挙げられる。
【0105】
芳香族モノマーは、芳香環骨格を有していればよく、例えば、芳香族(または芳香脂肪族)ジアミン、芳香族(または芳香脂肪族)ジカルボン酸、芳香族(または芳香脂肪族)アミノカルボン酸などが例示できる。
【0106】
芳香族(または芳香脂肪族)ジアミンとしては、例えば、ジアミノアレーン、ビス(アミノアルキル)アレーンなどが挙げられる。ジアミノアレーンとしては、例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミンなどの、m-キシリレンジアミンなどのジアミノC6-14アレーンなどが挙げられ、ビス(アミノアルキル)アレーンとしては、例えば、m-キシリレンジアミンなどのビス(アミノC1-4アルキル)アレーンなどが挙げられる。
【0107】
芳香族(または芳香脂肪族)ジカルボン酸としては、例えば、ベンゼンジカルボン酸、アルキルベンゼンジカルボン酸、多環式アレーンジカルボン酸、ジアリールアルカンジカルボン酸、ジアリールケトンジカルボン酸、ジアリールエーテルジカルボン酸、ジアリールスルフィドジカルボン酸、ジアリールスルホンジカルボン酸などが挙げられる。
【0108】
ベンゼンジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。アルキルベンゼンジカルボン酸としては、例えば、4-メチルイソフタル酸、5-メチルイソフタル酸などのC1-4アルキル-ベンゼンジカルボン酸などが挙げられる。
【0109】
多環式アレーンジカルボン酸としては、例えば、縮合多環式アレーンジカルボン酸、環集合アレーンジカルボン酸などが挙げられる。
【0110】
縮合多環式アレーンジカルボン酸としては、例えば、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸;アントラセンジカルボン酸;フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10-24アレーン-ジカルボン酸が挙げられ、好ましくは縮合多環式C10-14アレーン-ジカルボン酸が挙げられる。
【0111】
環集合アレーンジカルボン酸としては、例えば、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸などのビC6-10アレーン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0112】
ジアリールアルカンジカルボン酸としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸などのジC6-10アリールC1-6アルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0113】
ジアリールケトンジカルボン酸としては、例えば、4.4’-ジフェニルケトンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)ケトン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0114】
ジアリールエーテルジカルボン酸としては、例えば、4.4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)エーテル-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0115】
ジアリールスルフィドジカルボン酸としては、例えば、4.4’-ジフェニルスルフィドジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)スルフィド-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0116】
ジアリールスルホンジカルボン酸としては、例えば、4.4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)スルホン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0117】
芳香族アミノカルボン酸としては、例えば、アミノアレーンカルボン酸などが挙げられる。アミノアレーンカルボン酸としては、例えば、アミノ安息香酸などのアミノC6-12アレーンカルボン酸などが挙げられる。
【0118】
ポリアミド系樹脂は、これらのモノマー成分を単独でまたは2種以上組み合わせて形成でき、例えば、ジアミン成分およびジカルボン酸成分の重合、アミノカルボン酸成分および/またはラクタム成分の重合、ジアミン成分およびジカルボン酸成分とアミノカルボン酸成分および/またはラクタム成分との重合などにより形成してもよい。また、ポリアミド系樹脂は、単一のモノマー(単一のジアミンおよびジカルボン酸、単一のアミノカルボン酸、または単一のラクタム)で形成されたホモポリアミドであってもよく、複数のモノマーが共重合したコポリアミドであってもよい。代表的なポリアミド系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド樹脂、脂環族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0119】
脂肪族ポリアミド樹脂は、脂肪族モノマー単位で形成されていればよく、例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とのホモポリアミド;ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族アミノカルボン酸および/または対応するラクタムのホモポリアミド;コポリアミド6/66、コポリアミド6/11、コポリアミド66/12などの複数の脂肪族モノマーの共重合体(コポリアミド)などが挙げられる。
【0120】
脂環族ポリアミド樹脂は、脂環族モノマー単位を有しており、脂肪族モノマーと脂環族モノマーとを組み合わせて形成されていてもよい。代表的な脂環族ポリアミド樹脂は、例えば、ジアミノメチルシクロヘキサンとアジピン酸との重合体などの脂環族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とのホモポリアミドなどが挙げられる。
【0121】
芳香族ポリアミド樹脂は、少なくとも芳香族モノマー単位を有していればよく、例えば、芳香族モノマーと、脂肪族および/または脂環族モノマーとから形成される半芳香族ポリアミド樹脂と、芳香族モノマーで形成され、脂肪族および脂環族モノマーを含まない全芳香族ポリアミド樹脂(アラミド樹脂)などが挙げられる。
【0122】
半芳香族ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミドMXD6(m-キシリレンジアミンとアジピン酸との重合体)などの芳香族(または芳香脂肪族)ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とのホモポリアミド;ポリアミド6T(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミド9T(ノナメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミド10T(デカメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミド12T(ドデカメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミドM5T(2-メチルペンタメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミドM8T(2-メチルオクタメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミド6I(ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との重合体)、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体などの脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とのホモポリアミド;コポリアミド6T/66、コポリアミド6T/M5T、コポリアミド6T/6I、コポリアミド6T/6I/6、コポリアミド6T/6I/66などの脂肪族ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸を少なくとも含む共重合体などが挙げられる。
【0123】
全芳香族ポリアミド樹脂(アラミド樹脂)としては、例えば、m-フェニレンジアミンとイソフタル酸との重合体、p-フェニレンジアミンとテレフタル酸との重合体などの芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とのホモポリアミドなどが挙げられる。
【0124】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、コポリアミドにおける「/」は、前後に記載されたモノマー(単位)を共重合成分(共重合単位)としてコポリアミドが形成されることを意味する。すなわち、コポリアミド6/66は、ポリアミド6を形成する単位と、ポリアミド66を形成する単位とを有する共重合体であることを意味する。
【0125】
ポリアミド系樹脂は、N-アルコキシメチル基を有するポリアミド、不飽和高級脂肪酸の二量体であるダイマー酸を重合成分とする重合脂肪酸系ポリアミド樹脂などであってもよい。また、ポリアミド系樹脂は、結晶性または非晶性であってもよく、透明性ポリアミド樹脂(非晶性透明ポリアミド樹脂)であってもよく、成形品の機械的特性の観点から、結晶性樹脂が好ましい。
【0126】
これらのポリアミド系樹脂は単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。これらのポリアミド系樹脂のうち、脂肪族ポリアミド樹脂が好ましく、なかでも、炭素数が4~12程度、好ましくは6~11、さらに好ましくは6~9、特に少なくとも6のアルキレン基を有する脂肪族モノマーを含む脂肪族ポリアミド樹脂が好ましい。代表的な好ましい脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とのホモポリアミドである。
【0127】
ポリアミド系樹脂の数平均分子量Mnは、例えば7000~1000000、好ましい範囲としては、以下段階的に、10000~100000、15000~50000、20000~30000である。分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)などの慣用の方法を利用して測定でき、ポリスチレン換算の分子量として評価してもよい。
【0128】
ポリアミド系樹脂の割合は、樹脂組成物中の樹脂全体に対して、例えば10~100質量%であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上であり、特に実質的に100質量%であるのが好ましい。
【0129】
樹脂組成物において、前記式(1)で表されるフルオレン化合物またはその塩と樹脂との割合は、例えば、前者/後者(質量比)=0.01/99.99~50/50程度の範囲から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.1/99.9~30/70、0.5/99.5~15/85、1/99~10/90、2/98~8/92、3/97~7/93、4/96~6/94である。なお、前記樹脂がポリアミド系樹脂を含む場合、前記式(1)で表されるフルオレン化合物またはその塩とポリアミド系樹脂との割合は、好ましい態様を含めて上記割合と同様である。前記式(1)で表されるフルオレン化合物またはその塩の割合が前記範囲の下限値以上であると機械的特性を有効に向上できる傾向があり、前記範囲の上限値以下であると機械的特性を有効に向上できる場合がある。また、前記式(1)で表されるフルオレン化合物またはその塩の割合が比較的少なくても、樹脂の特性を有効に改善できる。
【0130】
また、樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤、例えば、充填剤または補強剤、染顔料などの着色剤、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤、炭素材、硬化剤、硬化促進剤などを含んでいてもよい。前記安定剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。これらの添加剤の合計割合は、樹脂組成物全体に対して、例えば0~50質量%、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0131】
樹脂組成物は、フルオレン化合物またはその塩と、樹脂と、必要に応じて添加剤などの他の成分とを、乾式混合、溶融混練などの慣用の方法で混合することにより調製でき、樹脂組成物はペレットなどの形態であってもよい。
【0132】
樹脂組成物の曲げ弾性率は、前記式(1)で表されるフルオレン化合物またはその塩を添加しない樹脂単独(以下、単にブランクともいう)の曲げ弾性率を100としたとき、例えば101~150程度であってもよく、好ましくは102~130、さらに好ましくは103~110である。なお、ブランクの曲げ弾性率は、例えば1~10000MPa程度であってもよく、樹脂がポリアミド系樹脂を含む場合、例えば2000~4000MPa、好ましくは2500~3500MPa、さらに好ましくは2900~3000MPaである。
【0133】
樹脂組成物の曲げ強さは、ブランクの曲げ強さを100としたとき、例えば101~150程度であってもよく、好ましくは102~110、さらに好ましくは103~105である。なお、ブランクの曲げ強さは、例えば10~300MPa程度であってもよく、樹脂がポリアミド系樹脂を含む場合、例えば50~200MPa、好ましくは100~150MPa、さらに好ましくは110~120MPaである。
【0134】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、曲げ強さおよび曲げ弾性率は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0135】
樹脂組成物は機械的特性に優れるため、機械的特性に優れた成形体を形成できる。成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて選択でき、例えば、線状、糸状などの一次元的構造、フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造、ブロック状、棒状、管状またはチューブ状などの中空状などの三次元的構造などであってもよい。
【0136】
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などの慣用の成形法を利用して製造することができる。
【0137】
(樹脂原料)
前記式(1)で表されるフルオレン化合物またはその塩は、樹脂添加剤の他に、樹脂原料(重合成分またはモノマー成分、あるいは樹脂の前駆体)として有効に利用することもできる。前記式(1)で表されるフルオレン化合物またはその塩を樹脂原料とする樹脂は、硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよく、例えば、ホルムアルデヒド類などのアルデヒド成分との反応により調製するアミノ樹脂(またはグアナミン樹脂)、エピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンなどとの反応などにより調製するエポキシ樹脂(またはグリシジルアミン型エポキシ樹脂)、ジないしテトラカルボン酸類などのポリカルボン酸成分との反応により調製するポリイミド系樹脂やポリアミド系樹脂、ジイソシアネート成分などのポリイソシアネート成分などとの反応により調製するポリ尿素、ホスゲン類との反応などにより調製するポリイソシアネート、このポリイソシアネートとジオールなどのポリオール成分との反応により調製するウレタン樹脂などが挙げられる。
【0138】
このような前記式(1)で表されるフルオレン化合物またはその塩を原料として樹脂を調製すると、前記式(1)に由来する化学構造が導入されるためか、機械的特性、および耐熱性に優れた樹脂を調製できる。
【0139】
前記式(1)で表されるフルオレン化合物またはその塩を原料として調製された樹脂は、必要に応じて、前記(樹脂添加剤)の項に例示された、各種添加剤などを含む樹脂組成物を形成してもよい。これらの添加剤は単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。添加剤の割合は、樹脂組成物全体に対して、例えば0~50質量%、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0140】
また、前記式(1)で表されるフルオレン化合物またはその塩を原料として調製された樹脂を含む樹脂組成物は、機械的特性、および耐熱性に優れた成形体を調製でき、例えば、前記(樹脂添加剤)の項に例示された慣用の成形法などを利用して、前記(樹脂添加剤)の項に例示された形状などに成形してもよい
【実施例0141】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、評価方法の詳細などについて示す。
【0142】
[評価方法]
(1H-NMR)
核磁気共鳴装置(BRUKER社製「ULTRASHIELD300」)を用いて、1H-NMRスペクトルを測定した。
【0143】
(HPLC)
HPLC(高性能または高速液体クロマトグラフ)装置として(株)島津製作所製「LC-20A」を用い、カラムとして(株)島津製作所製「KINTEX XB-C18」を用いて、移動相:アセトニトリル/水(体積比)=50/50から95/5まで10分間かけて変化させ、その後95/5で5分保持の条件で測定した。
【0144】
(LCMS)
液体クロマトグラフィー質量分析装置(LCMS、(株)島津製作所製、「Ninetex XB-C18」)を用い、アセトニトリル/水(体積比)=50/50→80/20→95/5→50/50を溶出液として測定した。
【0145】
(融点)
示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製「DSC8500」)を使用して、窒素雰囲気下、温度50℃から昇温速度5℃/分の条件で測定し、融解に基づくピークのピークトップ温度を読み取り、融点とした。
【0146】
(5%質量減少温度)
熱重量測定装置(パーキンエルマー社製「TGA4000」)を使用して、窒素雰囲気下、温度50℃から昇温速度5℃/分の条件で、試料の質量が5質量%減少した温度を測定した。
【0147】
(曲げ試験)
ISO 178に準じて、曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。なお、測定は絶乾状態にて行った。
【0148】
[実施例1]フルオレン化合物の合成
(式(3-1):2-ビニル-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンの合成)
【0149】
【0150】
2L三口フラスコに2,4-ジアミノ-6-[2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン(182.6g,0.83mol)、エピクロルヒドリン(76.8g,0.83mol)、硫化ソーダ(硫化ナトリウム)9水和物(2.0g,0.01mol)、蒸留水(500g)を入れ、100℃に加熱した。4時間加熱還流の後、攪拌しながら室温まで冷却した。系中の固体をろ別し、蒸留水で洗浄した後、減圧乾燥を行って式(3-1)で表される目的化合物2-ビニル-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンを白色粉末(54.3g,収率47.8%,純度99.1%)で得た。1H-NMR、HPLCにより構造の同定と純度の測定を行った。
【0151】
1H-NMR(DMSO-d6,300MHz):δ(ppm) 5.63(dd,1H),6.25-6.44(m,2H),6.68(br,4H)。
【0152】
(式(1-1):9,9-ビス[2-(4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン-2-イル)エチル]フルオレン(以下、TAZ-FLともいう)の合成)
【0153】
【0154】
1L三口フラスコに式(2-1)で表される9H-フルオレン(26.3g,0.15mol)、式(3-1)で表される2-ビニル-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン(49.9g,0.36mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB,0.76g,0.0024mol)、ジメチルスルホキシド(DMSO,474g)を入れ、系中をアルゴンガスで置換し、105℃に加熱した。内温が105℃に達した後、40質量%炭酸カリウム水溶液(K
2CO
3aq,16.4g)を加え、さらに3時間加熱攪拌を行った。攪拌しながら室温まで冷却し、アセトン(553g)を加え一晩静置した。析出した白色結晶をろ別し、アセトン(276.5g)で二回洗浄した。得られた白色固体を真空乾燥し、式(1-1)で表されるTAZ-FLを白色粉末(50g,収率65%,純度98.1%)で得た。
1H-NMR、LCMSにより構造の同定と純度の測定を行った。
図1および以下に、実施例1で得られたTAZ-FLの
1H-NMRスペクトルを示す。また、得られたTAZ-FLの融点は297.9℃、5%質量減少温度は359.5℃であった。
【0155】
1H-NMR(DMSO-d6,300MHz):δ(ppm) 1.50-1.55(m,4H),2.32-2.37(m,4H),6.51(br,8H),7.36-7.39(m,4H),7.48-7.50(m,2H),7.85-7.87(m,2H)。
【0156】
[実施例2~3]樹脂組成物の調製
式(1-1)で表されるTAZ-FLと、樹脂(ポリアミド66(PA66)、旭化成(株)製「レオナ 1402S」)とを表1に示す質量割合で二軸押出機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Process11」)を用いて、温度300℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量約500g/hで混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製した。
【0157】
[比較例1]樹脂組成物の調製
式(1-1)で表されるTAZ-FLを用いることなく、PA66のみを用いたこと以外は実施例2と同様にしてペレット状の樹脂組成物を調製した。
【0158】
実施例2~3および比較例1で得られた各樹脂組成物を、それぞれ、温度300℃で射出成形して短冊状試験片を得た。得られた試験片を用いて、曲げ強さおよび曲げ弾性率を評価した。結果を表1に示す。
【0159】
【0160】
表1の結果から明らかなように、実施例の樹脂組成物では、比較例に比べて、曲げ強度および曲げ弾性率を向上できた。
本発明のフルオレン化合物またはその塩は、例えば、樹脂添加剤(または樹脂改質剤)、具体的には、強度向上剤、耐熱性向上剤、流動性改善剤などとして有効に利用できる。
また、本発明のフルオレン化合物またはその塩は、樹脂原料(重合成分またはモノマー成分、あるいは樹脂前駆体)として利用することもでき、例えば、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ尿素、ポリイソシアネート、ウレタン樹脂などの重合成分または前駆体などとして有効に利用できる。