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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189475
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電源装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20221215BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H02M3/28 H
G03G21/00 398
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098068
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 佑介
【テーマコード(参考)】
2H270
5H730
【Fターム(参考)】
2H270KA46
2H270MG01
2H270MG02
5H730AS01
5H730BB23
5H730BB43
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE59
5H730FD01
5H730FF01
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】出力電圧を変更することができる電源装置において、出力電圧のリプルの発生と消費電力とを低減させること。
【解決手段】制御部は、出力電圧を大きくする場合、目標電圧が第1閾値よりも低い状態ではデューティーD1の制御信号を出力し、目標電圧が第1閾値以上の状態に切り替わるとデューティーD1よりも大きいデューティーD2の制御信号を出力し、出力電圧を小さくする場合、目標電圧が第2閾値以上の状態ではデューティーD2の制御信号を出力し、目標電圧が第2閾値よりも低い状態に切り替わるとデューティーD1の制御信号を出力し、第1閾値と第2閾値とは異なる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次巻線と2次巻線とを有するトランスと、
前記1次巻線に直列に接続され、入力された制御信号に応じてオン又はオフするスイッチング素子と、
所定のデューティーの前記制御信号を前記スイッチング素子に出力する制御手段と、
前記トランスの2次側から出力された出力電圧が目標電圧に近づくように、前記スイッチング素子への前記制御信号の入力を停止させる停止手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記目標電圧を切り替えることにより前記出力電圧を変更することが可能な電源装置であって、
前記制御手段は、
前記出力電圧を大きくする場合、前記目標電圧が第1閾値よりも低い状態では第1デューティーの前記制御信号を出力し、前記目標電圧が前記第1閾値以上の状態に切り替わると前記第1デューティーよりも大きい第2デューティーの前記制御信号を出力し、
前記出力電圧を小さくする場合、前記目標電圧が第2閾値以上の状態では前記第2デューティーの前記制御信号を出力し、前記目標電圧が前記第2閾値よりも低い状態に切り替わると前記第1デューティーの前記制御信号を出力し、
前記第1閾値と前記第2閾値とは異なることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第1閾値は、前記出力電圧のリプルが許容可能な最大のリプルとなるような前記第2デューティーで前記スイッチング素子をオン又はオフしたときの電圧であることを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記出力電圧が供給される負荷に流れる電流を検知する検知手段を備え、
前記制御手段は、前記検知手段による検知結果に基づいて、前記第1閾値及び/又は前記第2閾値を異ならせることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記出力電圧を小さくする場合において、前記検知手段により検知した電流が所定値以下である場合に前記デューティーを切り替えるための閾値を、前記検知手段により検知した電流が前記所定値よりも大きい場合に前記デューティーを切り替えるための前記第2閾値よりも大きい第3閾値に設定することを特徴とする請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記出力電圧を大きくする場合において、前記検知手段により検知した電流が所定値以下である場合に前記デューティーを切り替えるための閾値を、前記検知手段により検知した電流が前記所定値よりも大きい場合に前記デューティーを切り替えるための前記第1閾値よりも大きい第4閾値に設定することを特徴とする請求項4に記載の電源装置。
【請求項7】
前記出力電圧と前記デューティーとを関連付けた情報を記憶した記憶部を備え、
前記記憶部には、前記負荷に流れる電流に応じた前記情報が複数記憶されていることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項8】
前記第2デューティーに応じて出力される前記出力電圧の最大値は、前記第1デューティーに応じて出力される前記出力電圧の最大値よりも大きいことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項9】
前記第2デューティーに応じて所定の出力電圧が出力されたときのリプルは、前記第1デューティーに応じて前記所定の出力電圧と略同じ出力電圧が出力されたときのリプルよりも大きいことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項10】
1次巻線と2次巻線とを有するトランスと、
前記1次巻線に直列に接続され、入力された制御信号に応じてオン又はオフするスイッチング素子と、
所定の周波数の前記制御信号を前記スイッチング素子に出力する制御手段と、
前記トランスの2次側から出力された出力電圧が目標電圧に近づくように、前記スイッチング素子への前記制御信号の入力を停止させる停止手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記目標電圧を切り替えることにより前記出力電圧を変更することが可能な電源装置であって、
前記制御手段は、
前記出力電圧を大きくする場合、前記目標電圧が第1閾値よりも低い状態では第1周波数の前記制御信号を出力し、前記目標電圧が前記第1閾値以上の状態に切り替わると前記第1周波数よりも大きい第2周波数の制御信号を出力し、
前記出力電圧を小さくする場合、前記目標電圧が第2閾値以上の状態では前記第2周波数の前記制御信号を出力し、前記目標電圧が前記第2閾値よりも低い状態に切り替わると前記第1周波数の前記制御信号を出力し、
前記第1閾値と前記第2閾値とは異なることを特徴とする電源装置。
【請求項11】
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも大きいことを特徴とする請求項10に記載の電源装置。
【請求項12】
前記第1閾値は、前記出力電圧のリプルが許容可能な最大のリプルとなるような前記第2周波数で前記スイッチング素子をオン又はオフしたときの電圧であることを特徴とする請求項11に記載の電源装置。
【請求項13】
前記出力電圧が供給される負荷に流れる電流を検知する検知手段を備え、
前記制御手段は、前記検知手段による検知結果に基づいて、前記第1閾値及び/又は前記第2閾値を異ならせることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の電源装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記出力電圧を小さくする場合において、前記検知手段により検知した電流が所定値以下である場合に前記周波数を切り替えるための閾値を、前記検知手段により検知した電流が前記所定値よりも大きい場合に前記周波数を切り替えるための前記第2閾値よりも大きい第3閾値に設定することを特徴とする請求項13に記載の電源装置。
【請求項15】
前記制御手段は、前記出力電圧を大きくする場合において、前記検知手段により検知した電流が所定値以下である場合に前記周波数を切り替えるための閾値を、前記検知手段により検知した電流が前記所定値よりも大きい場合に前記周波数を切り替えるための前記第1閾値よりも大きい第4閾値に設定することを特徴とする請求項13に記載の電源装置。
【請求項16】
前記出力電圧と前記周波数とを関連付けた情報を記憶した記憶部を備え、
前記記憶部には、前記負荷に流れる電流に応じた前記情報が複数記憶されていることを特徴とする請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項17】
前記第2周波数に応じて出力される前記出力電圧の最大値は、前記第1周波数に応じて出力される前記出力電圧の最大値よりも大きいことを特徴とする請求項10から請求項16のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項18】
前記第2周波数に応じて所定の出力電圧が出力されたときのリプルは、前記第1周波数に応じて前記所定の出力電圧と略同じ出力電圧が出力されたときのリプルよりも大きいことを特徴とする請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項19】
記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の電源装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及び画像形成装置に関し、例えば、複写機又はプリンタなどの電子写真方式又は静電記録方式の画像形成装置における高電圧電源の制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスと、駆動パルス信号によりオン又はオフされるスイッチング素子と、を備える高電圧電源が提案されている。高電圧電源に関しては、トランスの出力電圧、駆動パルス信号の周波数、駆動パルス信号のデューティー、を関連付けて制御する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-048694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の回路では、出力電圧の範囲に応じて駆動パルス信号のデューティーを選択していた。そのため、定められた出力電圧の範囲を超えると、駆動パルス信号のデューティーが切り替えられる。すなわち、出力電圧を変更するとき、定められた出力電圧の範囲を超えると、駆動パルス信号の周波数やデューティーを切り替える必要がある。このため、これらを切り替えたときに、出力電圧にリプルが生じたり、駆動パルス信号によりオン又はオフされるスイッチング素子、例えば電界効果トランジスタの電力が増大したりするおそれがある。そのため、高電圧電源が画像形成装置に搭載される場合、1つのジョブの中で出力電圧を変更するときには、駆動パルス信号のデューティーが切り替えられることを避ける方が望ましい場合もある。
【0005】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、出力電圧を変更することができる電源装置において、出力電圧のリプルの発生と消費電力とを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
(1)1次巻線と2次巻線とを有するトランスと、前記1次巻線に直列に接続され、入力された制御信号に応じてオン又はオフするスイッチング素子と、所定のデューティーの前記制御信号を前記スイッチング素子に出力する制御手段と、前記トランスの2次側から出力された出力電圧が目標電圧に近づくように、前記スイッチング素子への前記制御信号の入力を停止させる停止手段と、を備え、前記制御手段は、前記目標電圧を切り替えることにより前記出力電圧を変更することが可能な電源装置であって、前記制御手段は、前記出力電圧を大きくする場合、前記目標電圧が第1閾値よりも低い状態では第1デューティーの前記制御信号を出力し、前記目標電圧が前記第1閾値以上の状態に切り替わると前記第1デューティーよりも大きい第2デューティーの前記制御信号を出力し、前記出力電圧を小さくする場合、前記目標電圧が第2閾値以上の状態では前記第2デューティーの前記制御信号を出力し、前記目標電圧が前記第2閾値よりも低い状態に切り替わると前記第1デューティーの前記制御信号を出力し、前記第1閾値と前記第2閾値とは異なることを特徴とする電源装置。
(2)1次巻線と2次巻線とを有するトランスと、前記1次巻線に直列に接続され、入力された制御信号に応じてオン又はオフするスイッチング素子と、所定の周波数の前記制御信号を前記スイッチング素子に出力する制御手段と、前記トランスの2次側から出力された出力電圧が目標電圧に近づくように、前記スイッチング素子への前記制御信号の入力を停止させる停止手段と、を備え、前記制御手段は、前記目標電圧を切り替えることにより前記出力電圧を変更することが可能な電源装置であって、前記制御手段は、前記出力電圧を大きくする場合、前記目標電圧が第1閾値よりも低い状態では第1周波数の前記制御信号を出力し、前記目標電圧が前記第1閾値以上の状態に切り替わると前記第1周波数よりも大きい第2周波数の制御信号を出力し、前記出力電圧を小さくする場合、前記目標電圧が第2閾値以上の状態では前記第2周波数の前記制御信号を出力し、前記目標電圧が前記第2閾値よりも低い状態に切り替わると前記第1周波数の前記制御信号を出力し、前記第1閾値と前記第2閾値とは異なることを特徴とする電源装置。
(3)記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、前記(1)又は前記(2)に記載の電源装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、出力電圧を変更することができる電源装置において、出力電圧のリプルの発生と消費電力とを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1、2の画像形成装置の構成図
図2】実施例1の高電圧電源ユニットの回路例、トランスの出力特性を示す図
図3】実施例1の高電圧電源ユニットの出力特性を示す図
図4】実施例1の高電圧電源ユニットの出力電圧の可変方法を示す図
図5】実施例1の高電圧電源ユニットの出力電圧の可変方法を示す図
図6】実施例2の高電圧電源ユニットの回路例を示す図
図7】実施例2の高電圧電源ユニットの出力電圧の可変方法を示す図
図8】実施例2の高電圧電源ユニットの出力電圧の可変方法を示す図
図9】実施例2の高電圧電源ユニットの出力電圧の可変方法を示す図
図10】実施例2の高電圧電源ユニットの出力電圧の可変方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により図面を参照しながら詳しく説明する。
【実施例0010】
実施例1では、電圧を大きくするシーケンス時の出力電圧の閾値Vth1と、電圧を小さくするシーケンス時の出力電圧の閾値Vth2とを異なる値に設定する。これにより、初期の出力電圧に応じて、それぞれ最適な駆動信号(後述するS202)のデューティーおよび周波数を選択する方法について説明する。
【0011】
[画像形成装置の構成]
図1は、中間転写ベルトを採用したタンデム方式(4ドラム系)の画像形成装置を示す構成図である。画像形成装置1の各構成は以下のとおりである。給紙カセット2は、記録媒体であるシートPを収納するカセットである。制御手段である画像形成制御部(以下、制御部という)3は、画像形成装置1の画像形成動作を制御する。給紙ローラ4は、給紙カセット2からシートPを給紙するローラであり、搬送ローラ5は、給紙されたシートPを搬送するローラである。像担持体である感光ドラム8Y、8M、8C、8Kは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の現像剤を担持する。なお、符号の添え字Y、M、C、Kは各色を表しており、特定の色の部材について説明する場合を除き、添え字を省略する。
【0012】
帯電ローラ9は、感光ドラム8を一様に所定の電位に帯電するためのローラである。光学ユニット10は、帯電ローラ9によって帯電された感光ドラム8上に、各色の画像データに対応したレーザビームを照射し、静電潜像を形成する。現像器11は、感光ドラム8上に形成された静電潜像を可視化し、トナー像を形成する。現像ローラ12は、現像器11内の現像剤を感光ドラム8と対向する部分に送り出すためのローラである。現像規制部材である現像ブレード13は、現像ローラ12上のトナーを薄層状に規制するための部材である。供給ローラ14は、現像ローラ12にトナーを供給するためのローラである。また、供給ローラ14に印加する電圧を切り替える(変更する)ことで、過度に供給されたトナーを剥ぎ取る機能も有している。帯電ローラ9に印加される電圧は帯電電圧、現像ローラ12に印加される電圧は現像ローラ電圧、現像ブレード13に印加される電圧は現像ブレード電圧、供給ローラ14に印加される電圧は供給ローラ電圧、という。
【0013】
1次転写ローラ16は、感光ドラム8上に形成したトナー像を転写する(以下、1次転写という)ためのローラである。中間転写ベルト17は、1次転写されたトナー像を担持するベルトである。駆動ローラ18は、中間転写ベルト17を駆動する。2次転写ローラ19は、中間転写ベルト17上に転写されたトナー像をシートPに転写する(以下、2次転写という)ためのローラであり、2次転写対向ローラ20は、2次転写ローラ19に対向するローラである。定着ユニット21は、シートPを搬送させながらシートPに転写された未定着のトナー像を溶融し定着させる。排出ローラ22は、定着ユニット21によって定着が行われたシートPをトレイ23に排出する。
【0014】
次に、画像形成装置1の画像形成動作について説明する。ホストコンピュータ(不図示)等から制御部3に印刷命令や画像情報等を含んだ印刷データが入力されると、画像形成装置1は印刷動作を開始し、シートPは給紙ローラ4によって給紙カセット2から給紙され搬送路に送り出される。シートPが給紙される動作と共に、感光ドラム8は帯電ローラ9によって一定の電位に帯電される。入力された印刷データにあわせて、光学ユニット10は帯電された感光ドラム8の表面をレーザビームによって露光走査して静電潜像を形成する。形成された静電潜像を可視化するために現像器11と現像ローラ12と現像ブレード13と供給ローラ14によって現像が行われる。感光ドラム8の表面に形成された静電潜像は、現像器11によりそれぞれの色でトナー像として現像される。感光ドラム8は中間転写ベルト17と接触しており、中間転写ベルト17の回転と同期して回転する。現像された各色のトナー像は、1次転写ローラ16Y、16M、16C、16Kにより中間転写ベルト17上に順次多重転写され、カラーのトナー像となる。そして、2次転写ローラ19及び2次転写対向ローラ20によりシートP上にカラーのトナー像が2次転写される。シートPに転写されたトナー像は定着ローラ等から構成される定着ユニット21によって定着される。定着されたシートPは排出ローラ22によってトレイ23に排出され、画像形成動作が終了する。なお、シートPに画像を形成する際に寄与する部材は画像形成手段として機能する。
【0015】
[電源装置]
図2(a)は、実施例1の電源装置である高電圧電源ユニット200の回路の一例を示す図である。高電圧電源ユニット200は、トランス201、Nch型の電界効果トランジスタ(以下、FETとする)203、コンパレータ204、電解コンデンサ205、セラミックコンデンサ206、ダイオード207、固定抵抗208~211を備えている。トランス201は1次巻線201aと2次巻線201bとを有している。V1は入力電圧、V2は基準電圧を示す。
【0016】
次に、図2(a)を用いて、高電圧電源ユニット200の動作について説明する。トランス201の1次巻線201aにはスイッチング素子であるFET203が直列に接続されている。制御信号である駆動信号S202は制御部3から送られるパルス信号であり、トランス201をFET203により駆動するために、FET203のゲート端子に入力される。駆動信号S202がFET203のゲート端子に入力されると、FET203は、駆動信号S202のデューティー及び周波数に応じて、オン又はオフ(以下、オン/オフと表記する)を繰り返すスイッチング動作を行う。FET203をオン/オフすることで、電解コンデンサ205両端の直流電圧が、トランス201の1次巻線201aへパルス状の波形として印加される。これにより、トランス201の2次巻線201b、セラミックコンデンサ206、ダイオード207により、マイナス電圧が生成される。すなわち、トランス201の2次側から、昇圧された同一周期のパルス状の電圧が出力される。トランス201の2次側から出力されたパルス状の電圧は、ダイオード207、セラミックコンデンサ206から構成される整流平滑回路により整流、平滑される。そして、高電圧電源ユニット200の出力電圧である高電圧の直流電圧VA(以下、単に、出力電圧ともいう)がセラミックコンデンサ206の両端に現れる。
【0017】
抵抗208は安定した出力電圧を得るためのブリーダ抵抗である。入力信号S201は、制御部3から送られる、直流電圧VAを調整するための信号であり、直流電圧VAに対応した直流電圧であり、以下、目標電圧信号S201という。コンパレータ204の-端子(反転入力端子)には、目標電圧信号S201が入力される。コンパレータ204の+端子(非反転入力端子)には、直流電圧VAが抵抗209、基準電圧V2、抵抗210及び抵抗211、で分圧された電圧(以下、フィードバック電圧という)が入力される。コンパレータ204の出力端子は、FET203のゲート端子に接続されている。出力電圧が絶対値で増加し、コンパレータ204の+端子に入力される電圧が、-端子に入力される目標電圧より小さくなると、コンパレータ204の出力端子の電圧がローレベルになり、FET203のゲート電圧は0Vになる。
【0018】
このように、コンパレータ204の+端子の電圧が-端子の目標電圧より小さい所定の期間において、駆動信号S202の出力が停止された状態を「駆動信号S202が間引かれている状態」という。駆動信号S202が間引かれると、トランス201の駆動が止まるため出力電圧が絶対値で低下する。このように、コンパレータ204は、フィードバック電圧(+端子)が目標電圧信号S201(-端子)よりも低い場合には、駆動信号S202にかかわらずFET203によるトランス201の駆動を停止させる。その後、コンパレータ204のフィードバック電圧(+端子)が目標電圧信号S201(-端子)より大きくなると、FET203は駆動信号S202によるオン/オフ(スイッチング動作)を再開し、出力電圧は絶対値で再び増加する。このような動作を繰り返すことによって出力電圧は目標電圧に維持される。コンパレータ204は、トランス201の2次側から出力された出力電圧が目標電圧を超えた場合に、FET203への駆動信号S202の入力を停止させる停止手段として機能する。
【0019】
図2(a)の高電圧電源ユニット200は、このような回路動作であるため、必然的に出力電圧(直流電圧VA)にリプルが発生しやすい。さらに、出力電圧のリプルは目標となる出力電圧(上述した目標電圧、以下、目標出力電圧という)と相関がある。図2(b)は高電圧電源ユニット200の出力特性を示している。図2(b)は、横軸に駆動信号S202のオンデューティー(Duty)を示し、縦軸に高電圧電源ユニット200の出力電圧(-)を示す。なお、駆動信号S202のデューティーはオフデューティであってもよく、この場合逆の相関となる。ここで、図2(b)に示すように、高電圧電源ユニット200の出力特性は、駆動信号S202のオンデューティーが大きくなるほど、マイナスの出力電圧が大きくなる、言い換えれば直流電圧VAの絶対値が大きくなる。f1、R、Lmax、V(a)、V(b)については後述する。
【0020】
[高電圧電源ユニット200の出力波形]
図3(a)(b)は、高電圧電源ユニット200の出力波形を示している。高電圧電源ユニット200は、目標出力電圧を切り替えることにより直流電圧VAを変更することが可能である。図3(a)に目標出力電圧がV(a)のときの各波形を示し、(b)に目標出力電圧がV(b)のときの各波形を示す。また、目標出力電圧V(a)と目標出力電圧V(b)との関係は次の式(1)の関係とする。
|V(b)|<|V(a)|・・・(1)
図3(a)、(b)には、横軸を時間として、(i)に駆動信号S202の波形を示し、(ii)に高電圧電源ユニット200の出力電圧(直流電圧VA)を示す。なお、(ii)には目標出力電圧(V(a)又はV(b))を破線で示す。
【0021】
図2(b)に示した出力特性から、駆動信号S202の周波数fをf1、オンデューティーをDとした場合、高電圧電源ユニット200の最大出力電圧はVLmaxとなる。ここで、図2(b)では、負荷インピーダンスをRとし、L値がLmaxのトランス201を用いている。目標出力電圧が最大出力電圧VLmaxに近い目標出力電圧V(a)の場合、図3(a)の波形が示すように、駆動信号S202の間引きが少ないため出力電圧のリプルは少ない。一方、目標出力電圧V(a)よりも低い目標出力電圧V(b)の場合、図3(b)の波形が示すように、駆動信号S202の間引きが図3(a)に比べて多くなり、出力電圧のリプルが大きくなる。
【0022】
すなわち、出力電圧のリプルを抑制するためには、駆動信号S202の周波数f及びオンデューティーDを調整し、高電圧電源ユニット200の出力電圧と目標出力電圧との差を小さくすればよい。理想的には、出力電圧と目標出力電圧とを等しくして、駆動信号S202が全く間引かれない状態で駆動するのがよい。
【0023】
[帯電電圧生成用の場合]
次に、高電圧電源ユニット200を帯電電圧に適用したときのシーケンスについて説明する。出力電圧が帯電電圧として用いられる場合、帯電電圧は通常、固定の電圧として出力される。しかし、連続プリント中に発生する、例えば温度上昇による画像の濃度変化等に追従するために、プリント枚数や温度などの複数の条件に応じて出力電圧を変化させていく場合がある。しかしながら連続プリントを行う1つのジョブの中で、出力電圧を印加した状態で駆動信号S202のオンデューティーを切り替えると、次のような課題が発生する。すなわち、切り替えた際に出力電圧にリプルが生じたり、駆動信号S202によりオンオフされるFET203の消費電力が増大したりする。そのため、1つのジョブの中で駆動信号S202のデューティーを変化させることは避けた方が望ましい。このため、制御部3は、出力電圧のリプルが、後述する許容出力リプルYよりも小さい範囲では、デューティーを切り替えることなく1つのデューティーを用いて出力電圧を変更する。なお上述した通り、1つのデューティーを用いて出力電圧を変更するには、コンパレータ204による駆動信号S202の間引き量を調整することによって行う。これにより出力電圧を目標電圧に近づけることができる。
【0024】
図4(a)(b)(c)に、横軸に出力電圧(-)、縦軸に出力電圧のリプル、との関係を示した図を示す。所定の出力電圧で駆動信号S202のオンデューティーを切り替えたときの動作について説明する。ここで、デューティーを設定するための出力電圧の閾値を閾値Vth1とする。一例として、初期の出力電圧(以下、初期出力電圧という)Vi1を-990V、初期出力電圧Vi2を-1010V、閾値Vth1を-1000V、とする。駆動信号S202のデューティーがD1のときの特性を破線、D2のときの特性を実線で、それぞれ示す。
【0025】
第1デューティーであるデューティーD1のときの出力電圧の限界は出力電圧V(D1)である。一方、第2デューティーであるデューティーD2のときの出力電圧の限界は出力電圧V(D2)となり、それぞれのデューティーはD1<D2の関係となる。デューティーD2に応じて出力される出力電圧の最大値(V(D2))の絶対値は、デューティーD1に応じて出力される出力電圧の最大値(V(D1))の絶対値よりも大きい。一例として、出力電圧V(D1)は-1050V、出力電圧V(D2)は-1200V、とする。デューティーD1、D2は、いずれも、出力電圧が(絶対値で)大きくなるほど、リプルも小さくなる。また、デューティーD2に応じて所定の出力電圧(例えば-1000V)が出力されたときのリプル(図4(a)のY)は、デューティーD1に応じて所定の出力電圧と略同じ出力電圧が出力されたときのリプルY1よりも大きい(Y>Y1)。
【0026】
(出力電圧を初期出力電圧よりも大きくする場合)
図4(a)を用いて、初期出力電圧Vi1が-990Vで出力電圧を(絶対値で)大きくするシーケンスについて説明する。許容できる出力電圧のリプル(以下、許容出力リプルという)をYとし、点線で示す。出力電圧のリプルが許容出力電圧リプルYよりも大きくなると出力電圧が安定せず、画像不良が発生するおそれがある。閾値Vth1は、出力電圧のリプルが許容可能な最大のリプル、すなわち許容出力電圧リプルYとなるような駆動信号S202のデューティーD2でFET203をオン又はオフしたときの出力電圧となっている。そのため、初期出力電圧Vi1が-990Vのときには、発生するリプルが許容出力電圧リプルYを超えてしまうため、駆動信号S202のデューティーをD2で駆動させることはできない。閾値Vth1(-1000V)よりも初期出力電圧Vi1(-990V)が小さいため、駆動信号S202のデューティーはD1で駆動させる。この場合、発生するリプルは許容出力電圧リプルY以下となる。ここから目標電圧信号S201を変化させて(切り替えて)、出力電圧を大きくしていき、駆動信号S202のデューティーD1の出力電圧の限界である出力電圧V(D1)(-1050V)まで変化させることができる。
【0027】
すなわち、出力電圧を初期出力電圧Vi1から大きくする場合、発生するリプルは許容出力電圧リプルY以下を維持するため、制御部3は、デューティーD1のままで、-990Vから-1050Vまでの範囲で変化させることができる。なお、初期の出力電圧が閾値Vth1以上(閾値以上)で、出力電圧を大きくしていく場合には、デューティーD2のままで出力電圧を大きくしていくこととなる。図4(a)の閾値Vth1は、初期の出力電圧に応じた初期のデューティーを設定するための閾値ともいえる。
【0028】
(出力電圧を初期出力電圧よりも小さくする場合)
次に、図4(b)を用いて、初期出力電圧Vi2が-1010Vで出力電圧を(絶対値で)小さくするシーケンスについて説明する。初期出力電圧Vi2(-1010V)は閾値Vth1(-1000V)よりも大きいため、まず、駆動信号S202のデューティーはD2で駆動させる。ここから目標電圧信号S201を変化させて、出力電圧を小さくしていき、駆動信号S202のデューティーD2の許容出力電圧リプルYとなる出力電圧-1000Vまで変更可能とすることができる。ところが、制御部3は、出力電圧を変更する際に、出力電圧が閾値Vth1よりも低くなる場合には、デューティーD2のままでは発生するリプルが許容出力電圧リプルYを超えてしまうため、閾値Vth1でデューティーをデューティーD1に切り替える。
【0029】
そうすると、図4(b)では、デューティーD2で出力電圧を変更することができる範囲を、初期出力電圧Vi2(-1010V)から許容出力電圧リプルYまでのわずか10Vとすることしかできない。すなわち、出力電圧の可変範囲がわずか10Vである。そこで、出力電圧を小さくするシーケンスでは、閾値Vth1よりも(絶対値が)大きい閾値Vth2(Vth2>Vth1)を境として駆動信号S202のデューティーを切り替える。すなわち、制御部3は、出力電圧を初期の出力電圧よりも大きくする場合と、出力電圧を初期の出力電圧よりも小さくする場合とで、所定の閾値を異ならせる。図4(c)を用いて、実施例1における初期出力電圧Vi2が-1010Vで出力電圧を小さくするシーケンスについて説明する。図4(c)では、駆動信号S202のデューティーD1の出力電圧の限界である出力電圧V(D1)(-1050V)を閾値Vth2とする。
【0030】
初期出力電圧Vi2(-1010V)は閾値Vth2(-1050V)よりも小さいため(Vi2<Vth2(=V(D1)))、駆動信号S202のデューティーはD1で駆動させる。ここから目標電圧信号S201を変化させて、出力電圧を小さくしていき、駆動信号S202のデューティーD1の許容出力電圧リプルYとなる出力電圧VY(D1)まで変化させることができる。このとき、出力電圧を変更することができる範囲は、初期出力電圧Vi2と出力電圧VY(D1)との差分であり図4(b)の例の10Vよりも大きい(|Vi2|-|VY(D1)|>|Vi2|-|Vth1|)。
【0031】
このように、出力電圧を小さくするシーケンスでは、出力電圧を大きくするシーケンスのときの出力電圧の第1閾値である閾値Vth1とは異なる、第2閾値である閾値Vth2(>Vth1)を用いてデューティーを切り替える。これにより、初期の出力電圧と閾値Vth2とに応じてデューティーを設定することで、図4(b)では10Vの範囲内でしか出力電圧を変更できなかったところ、図4(c)では、次のようになる。すなわち、デューティーを切り替えることなく1つのデューティーで出力電圧を大きく変更することができる。なお、初期の出力電圧が閾値Vth2よりも大きく、出力電圧を小さくしていく場合には、まず、デューティーD2で動作させ、閾値Vth2でデューティーD2からデューティーD1に切り替えて出力電圧を小さくしていくこととなる。
【0032】
以上、説明したように、電圧を大きくするシーケンス時の閾値Vth1と、電圧を小さくするシーケンス時の閾値Vth2と、を異なる値に設定する。これにより、初期の出力電圧に応じて、出力電圧を大きくするシーケンスと出力電圧を小さくするシーケンスにおいて、それぞれ最適な駆動信号S202のデューティーを選択することができる。
【0033】
[周波数の切り替えについて]
また、周波数を切り替えたときも、デューティーを切り替えたときの動作と同様の動作となる。図5(a)(b)(c)に、横軸に出力電圧(-)、縦軸に出力電圧のリプル、との関係を示した図を示す。所定の出力電圧で駆動信号S202の周波数を切り替えたときの動作について説明する。
【0034】
第1周波数である周波数f1のときの出力電圧の限界は出力電圧V(f1)である。一方、第2周波数である周波数f2のときの出力電圧の限界は出力電圧V(f2)となり、それぞれの周波数はf1<f2の関係となる。周波数f2に応じて出力される出力電圧の最大値(V(f2))の絶対値は、周波数f1に応じて出力される出力電圧の最大値(V(f1))の絶対値よりも大きい。一例として、出力電圧V(f1)は-1050V、出力電圧V(f2)は-1200V、とする。周波数f1、f2は、いずれも、出力電圧が(絶対値で)大きくなるほど、リプルも小さくなる。また、周波数f2に応じて所定の出力電圧(例えば-1000V)が出力されたときのリプル(図5(a)のYf)は、周波数f1に応じて所定の出力電圧と略同じ出力電圧が出力されたときのリプルYf1よりも大きい(Yf>Yf1)。
【0035】
図5(b)(c)に示すように、周波数を切り替えたときは、デューティーを切り替えたときと同様に、電圧を大きくするシーケンス時の閾値Vth1と、電圧を小さくするシーケンス時の閾値Vth2と、を異なる値に設定する。これにより、初期の出力電圧に応じて、出力電圧を大きくするシーケンスと出力電圧を小さくするシーケンスにおいて、それぞれ最適な駆動信号S202の周波数を選択することができる。
【0036】
また、実施例1では帯電電圧を例に記載したが、帯電電圧に限定されるものではない。また、実施例1の高電圧電源ユニット200を適用可能な画像形成装置1も図1に示した構成に限定されない。さらに、FET203に駆動信号を出力する制御手段は制御部3でなくてもよく、制御部3とは別に高電圧電源ユニット200が有する制御手段であってもよい。
以上、実施例1によれば、出力電圧を変更することができる電源装置において、出力電圧のリプルの発生と消費電力とを低減させることができる。
【実施例0037】
実施例1では、出力電圧(直流電圧VA)の負荷によらず、初期出力電圧から出力電圧を大きくする、又は、出力電圧を小さくする、シーケンスかどうかに応じて、駆動信号S202のデューティーを切り替えるための出力電圧の閾値を設定している。これらは、画像形成装置1の負荷が影響しないことが前提である。例えば、帯電処理であれば感光ドラム8、転写処理であれば1次転写ローラ16等、の負荷が決まっている。しかしながら、部品バラつきや環境温度・湿度、用紙(シートP)の吸湿状態等によって、負荷の抵抗値は変化するため、このような負荷の抵抗値のばらつきを考慮した設計が必要である。そこで、実施例2では、第1閾値及び/又は第2閾値を切り替える構成である。すなわち、負荷電流検知回路を用いて負荷電流をモニタし、出力電圧の閾値を変えることで、駆動信号S202を適切な駆動条件に設定する方法について説明する。
【0038】
[電源装置]
図6は実施例2の電源装置である高電圧電源ユニット500の回路の一例を示す。同じ符号、及びトランス201やコンパレータ204の動作、画像形成装置1については実施例1と同様であるため、説明を省略し、負荷に流れる電流を検知する検知手段である負荷電流検知回路501について説明する。実施例2では、制御部3は、負荷電流検知回路501による検知結果に基づいて、第2閾値を異ならせる。負荷電流検知回路501は、オペアンプ504、抵抗505~508、を有している。
【0039】
トランス201の2次側に流れる電流は、高電圧電源ユニット500から画像形成装置1の負荷に供給され、オペアンプ504のGND(不図示)から抵抗508、抵抗507を通り、トランス201に戻る。したがって、抵抗507の両端の電圧差から負荷電流を算出できる。オペアンプ504の-端子は、オペアンプ504の+端子と同電圧になる。オペアンプ504の+端子は、基準電圧V2、抵抗505、抵抗506で決まるため、既知である。負荷電流検知回路501は電流検知信号S203を出力し、電流検知信号S203は、制御部3のADポートへと入力される。したがって、制御部3は、既知の電圧と抵抗507の両端の電圧差とから負荷電流を算出することができる。
【0040】
ところで、実施例1で説明したように、トランス201をFET203のスイッチング動作によって駆動させることにより生成された出力電圧である直流電圧VAは、抵抗209、抵抗208、負荷へと、供給される。したがって、負荷電流が増減すると、トランス201から供給される電力が増減するようにコンパレータ204によって制御され、コンパレータ204による駆動信号S202の間引きが増減する。負荷電流によってコンパレータ204による間引きが増減するため、大きく負荷電流が変わると、出力電圧と出力電圧のリプルとの関係も変わる。例えば、帯電電圧を印加する感光ドラム8の場合、初期は感光ドラム8表面に形成された膜厚が厚いため負荷電流が大きいが、使用が進み感光ドラム8表面が削れてくると膜厚が薄くなり負荷電流が小さくなる。なお、これらの電流は、画像形成プロセスの前(例えば、画像形成装置の起動時など)に算出することが可能である。
【0041】
[負荷電流とリプルの関係]
次に図7(a)(b)を用いて出力電圧を下げるシーケンスについて説明する。図7(a)に負荷電流が大きいとき、図7(b)に負荷電流が小さいときの出力電圧(-)とリプルの関係を、実施例1と同様にデューティーD1(破線)のときとデューティーD2(実線)のときについてそれぞれ示す。なお、図7のグラフは図4と同様のグラフである。負荷電流検知回路501により検知した負荷電流が大きいときは、図7(a)に示したように、デューティーD1で所定の出力電圧Vαを出力したときのリプルはYaになる。負荷電流検知回路501により検知した負荷電流が小さいときは、図7(b)に示したように、デューティーD1で所定の出力電圧Vαを出力したときのリプルはYbになる。このように、同じデューティー、同じ出力電圧としたときに、負荷電流が大きいほうが出力電圧のリプルは小さくなる(Ya<Yb)。
【0042】
[初期出力電圧から出力電圧を下げる場合]
次に、初期出力電圧Vi3から出力電圧を下げるシーケンスについて説明する。負荷電流が大きいときの出力電圧を大きくするシーケンスにおける閾値をVth1、出力電圧を小さくするシーケンスにおける閾値をVth2、とする。また、負荷電流が小さいときの出力電圧を大きくするシーケンスにおける閾値をVth3、出力電圧を小さくするシーケンスにおける閾値をVth4、とする。図8でも同様とする。例として、初期出力電圧Vi3は-1100V、閾値Vth1は-1000V、閾値Vth2(|Vth2|>|Vth1|)は-1050V、とする。また、閾値Vth3は-1075V(|Vth3|>|Vth2|)、閾値Vth4は-1175V(|Vth4|>|Vth3|)、とする。なお、以下の説明で、負荷電流が大きいとは、例えば負荷電流が所定値よりも大きい場合をいい、負荷電流が小さいとは、例えば負荷電流が所定値以下の場合をいう。
【0043】
(負荷電流が大きいとき)
負荷電流が大きいときは、図7(a)に示したように、初期出力電圧Vi3(-1100V)は閾値Vth2(-1050V)よりも絶対値が大きいため、デューティーD2で動作させる。ここから目標電圧信号S201を変化させて、出力電圧を小さくしていき、閾値Vth2でデューティーD2からデューティーD1に切り替えて、出力電圧を小さくしていく。なお、閾値Vth2でデューティーを切り替えずにデューティーD2のままで出力電圧を小さくしていってもよい。この場合は、駆動信号S202のデューティーD2の許容出力電圧リプルYとなる出力電圧VY(D2)まで変化させることができる。なお、初期の出力電圧が閾値Vth2よりも小さく、出力電圧を小さくしていく場合には、デューティーD1で動作させ、そのまま出力電圧を小さくしていくこととなる。
【0044】
(負荷電流が小さいとき)
負荷電流が小さいときは、図7(b)に示したような特性になる。具体的には、負荷電流が小さいときは、駆動信号S202のデューティーをD2としたときに許容出力電圧リプルYとなる出力電圧は例えば-1075Vである。初期出力電圧Vi3は閾値Vth2(-1050V)よりも大きいため、デューティーD2で動作させると、デューティーD2の許容出力電圧リプルYとなる-1075V(=Vth3)までは、25Vしか変化させることができない。すなわち、負荷電流が小さいとき、デューティーをD2とすると、出力電圧の可変範囲がわずか25Vである。そこで、実施例2では、負荷電流が小さいときは、図7(b)に示したように、閾値Vth4(-1175V)を境に、デューティーを切り替える。すなわち、初期出力電圧Vi3(-1100V)は閾値Vth4(-1175V)よりも小さいため、デューティーD1で動作させる。これにより、負荷電流が小さいときのデューティーD1の許容出力電圧リプルYとなる電圧VY(D1)までの大きな電圧可変をすることができる。このとき、出力電圧を変更することができる範囲は、初期出力電圧Vi3と出力電圧VY(D1)との差分であり25Vよりも大きい(|Vi3|-|VY(D1)|>|Vi3|-|Vth3|)。なお、初期の出力電圧が閾値Vth4よりも大きく、出力電圧を小さくしていく場合には、まず、デューティーD2で動作させ、閾値Vth4でデューティーD2からデューティーD1に切り替えて出力電圧を小さくしていくこととなる。
【0045】
以上のように、制御部3は、出力電圧を初期の出力電圧よりも小さくする場合において、負荷電流検知回路501の検知結果に基づき次のような制御を行う。すなわち、制御部3は、負荷電流検知回路501により検知した電流が所定値以下である場合にデューティーを切り替えるための閾値を、第3閾値である閾値Vth4に設定する。ここで、閾値Vth4は、負荷電流検知回路501により検知した電流が所定値よりも大きい場合にデューティーを切り替えるための第2閾値である閾値Vth2よりも大きい。
【0046】
[初期出力電圧から出力電圧を上げる場合]
次に、図8(a)(b)で出力電圧を上げるシーケンスについて説明する。図8(a)に負荷電流が大きいとき、図8(b)に負荷電流が小さいときの出力電圧とリプルの関係を、実施例1と同様にデューティーD1(破線)のときとデューティーD2(実線)のときについてそれぞれ示す。次に、初期出力電圧Vi4から出力電圧を上げるシーケンスについて説明する。例として、初期出力電圧Vi4は-1025Vとする。
【0047】
(負荷電流が大きいとき)
負荷電流が大きいときは、図8(a)に示したように、初期出力電圧Vi4(-1025V)は閾値Vth1(-1000V)よりも大きいため、デューティーD2で動作させる。ここから目標電圧信号S201を変化させて、出力電圧を大きくしていき、駆動信号S202のデューティーD2の出力能力限界となる出力電圧まで変化させることができる。なお、初期の出力電圧が閾値Vth1よりも小さく、出力電圧を大きくしていく場合には、まず、デューティーD1で動作させ、閾値Vth1でデューティーD1からデューティーD2に切り替えて出力電圧を小さくしていくこととなる。また、デューティーD1のまま出力電圧を大きくしても、発生するリプルは許容出力電圧リプルY以下を維持するため、デューティーD2に切り替えなくてもよい。
【0048】
(負荷電流が小さいとき)
負荷電流が小さいときは、図8(b)に示したような特性になる。初期出力電圧Vi4が閾値Vth1(-1000V)よりも大きいため、デューティーD2で動作させると、出力電圧のリプルがデューティーD2の許容出力電圧リプルYを超えた状態になってしまい、画像不良が発生するおそれがある。そこで、実施例2では、負荷電流が小さいときは、図8(b)に示したように、閾値Vth3(-1075V)(>Vth1)を境に、デューティーを切り替える。すなわち、初期出力電圧Vi4(-1025V)は閾値Vth3(-1075V)よりも小さいため、デューティーD1で動作させる。そして、出力電圧を上げていき、閾値Vth3となったらデューティーD1からデューティーD2に切り替えてデューティーD2の出力限界電圧まで出力電圧を変化させることができる。なお、閾値Vth3でデューティーを切り替えずにデューティーD1のままで負荷電流が小さいときのデューティーD1の出力限界電圧まで変化させてもよく、大きな範囲で電圧を変更することができる。
【0049】
以上のように、制御部3は、出力電圧を初期の出力電圧よりも大きくする場合において、負荷電流検知回路501の検知結果に基づき次のような制御を行う。すなわち、制御部3は、負荷電流検知回路501により検知した電流が所定値以下である場合にデューティーを切り替えるための閾値を、第4閾値である閾値Vth3に設定する。ここで、閾値Vth3は、負荷電流検知回路501により検知した電流が所定値よりも大きい場合にデューティーを切り替えるための第1閾値である閾値Vth1よりも大きい。
【0050】
以上、説明したように、初期出力電圧から出力電圧を大きくする、又は、小さくするシーケンス、に加えて、負荷電流に応じて駆動信号S202のデューティーを切り替えるための閾値を変える。これにより、負荷電流が大きく変わった場合でも、それぞれ最適な駆動信号S202のデューティーを設定することが可能である。
【0051】
[周波数の切り替えについて]
また、周波数を切り替えたときも、デューティーを切り替えたときの動作と同様の動作となる。図9(a)(b)、図10(a)(b)に、横軸に出力電圧(-)、縦軸に出力電圧のリプル、との関係を示した図を示す。
【0052】
[初期出力電圧から出力電圧を下げる場合]
次に、初期出力電圧Vi3から出力電圧を下げるシーケンスについて図9(a)(b)を用いて説明する。図9(a)に負荷電流が大きいとき、図9(b)に負荷電流が小さいときの出力電圧(-)とリプルの関係を、周波数f1(破線)のときと周波数f2(実線)のときについてそれぞれ示す。
【0053】
(負荷電流が大きいとき)
負荷電流が大きいときは、図9(a)に示したように、初期出力電圧Vi3(-1100V)は閾値Vth2(-1050V)よりも絶対値が大きいため、周波数f2で動作させる。ここから目標電圧信号S201を変化させて、出力電圧を小さくしていき、閾値Vth2で周波数f2から周波数f1に切り替えて、出力電圧を小さくしていく。なお、閾値Vth2で周波数を切り替えずに周波数f2のままで出力電圧を小さくしていってもよい。この場合は、駆動信号S202の周波数f2の許容出力電圧リプルYfとなる出力電圧VY(f2)まで変化させることができる。なお、初期の出力電圧が閾値Vth2よりも小さく、出力電圧を小さくしていく場合には、周波数f1で動作させ、そのまま出力電圧を小さくしていくこととなる。
【0054】
(負荷電流が小さいとき)
負荷電流が小さいときは、図9(b)に示したような特性になる。具体的には、負荷電流が小さいときは、駆動信号S202の周波数をf2としたときに許容出力電圧リプルYfとなる出力電圧は例えば-1075Vである。初期出力電圧Vi3は閾値Vth2(-1050V)よりも大きいため、周波数f2で動作させると、周波数f2の許容出力電圧リプルYfとなる-1075V(=Vth3)までは、25Vしか変化させることができない。すなわち、負荷電流が小さいとき、周波数をf2とすると、出力電圧の可変範囲がわずか25Vである。そこで、負荷電流が小さいときは、図9(b)に示したように、閾値Vth4(-1175V)を境に、周波数を切り替える。すなわち、初期出力電圧Vi3(-1100V)は閾値Vth4(-1175V)よりも小さいため、周波数f1で動作させる。これにより、負荷電流が小さいときの周波数f1の許容出力電圧リプルYfとなる電圧VY(f1)までの大きな電圧可変をすることができる。このとき、出力電圧を変更することができる範囲は、初期出力電圧Vi3と出力電圧VY(f1)との差分であり25Vよりも大きい(|Vi3|-|VY(f1)|>|Vi3|-|Vth3|)。なお、初期の出力電圧が閾値Vth4よりも大きく、出力電圧を小さくしていく場合には、まず、周波数f2で動作させ、閾値Vth4で周波数f2から周波数f1に切り替えて出力電圧を小さくしていくこととなる。
【0055】
以上のように、制御部3は、出力電圧を初期の出力電圧よりも小さくする場合において、負荷電流検知回路501の検知結果に基づき次のような制御を行う。すなわち、制御部3は、負荷電流検知回路501により検知した電流が所定値以下である場合に周波数を切り替えるための閾値を、第3閾値である閾値Vth4に設定する。ここで、閾値Vth4は、負荷電流検知回路501により検知した電流が所定値よりも大きい場合に周波数を切り替えるための第2閾値である閾値Vth2よりも大きい。なお、図9中、Yfa、Yfbは、図7のYa、Ybに対応しており、説明を省略する。
【0056】
[初期出力電圧から出力電圧を上げる場合]
次に、図10(a)(b)で出力電圧を上げるシーケンスについて説明する。図10(a)に負荷電流が大きいとき、図10(b)に負荷電流が小さいときの出力電圧とリプルの関係を、周波数f1(破線)のときと周波数f2(実線)のときについてそれぞれ示す。次に、初期出力電圧Vi4から出力電圧を上げるシーケンスについて説明する。例として、初期出力電圧Vi4は-1025Vとする。
【0057】
(負荷電流が大きいとき)
負荷電流が大きいときは、図10(a)に示したように、初期出力電圧Vi4(-1025V)は閾値Vth1(-1000V)よりも大きいため、周波数f2で動作させる。ここから目標電圧信号S201を変化させて、出力電圧を大きくしていき、駆動信号S202の周波数f2の出力能力限界となる出力電圧まで変化させることができる。なお、初期の出力電圧が閾値Vth1よりも小さく、出力電圧を大きくしていく場合には、まず、周波数f1で動作させ、閾値Vth1で周波数f1から周波数f2に切り替えて出力電圧を小さくしていくこととなる。また、周波数f1のまま出力電圧を大きくしても、発生するリプルは許容出力電圧リプルYf以下を維持するため、周波数f2に切り替えなくてもよい。
【0058】
(負荷電流が小さいとき)
負荷電流が小さいときは、図10(b)に示したような特性になる。初期出力電圧Vi4が閾値Vth1(-1000V)よりも大きいため、周波数f2で動作させると、出力電圧のリプルが周波数f2の許容出力電圧リプルYfを超えた状態になってしまい、画像不良が発生するおそれがある。そこで、負荷電流が小さいときは、図10(b)に示したように、閾値Vth3(-1075V)(>Vth1)を境に、周波数を切り替える。すなわち、初期出力電圧Vi4(-1025V)は閾値Vth3(-1075V)よりも小さいため、周波数f1で動作させる。そして、出力電圧を上げていき、閾値Vth3となったら周波数f1から周波数f2に切り替えて周波数f2の出力限界電圧まで出力電圧を変化させることができる。なお、閾値Vth3で周波数を切り替えずに周波数f1のままで負荷電流が小さいときの周波数f1の出力限界電圧まで変化させてもよく、大きな範囲で電圧を変更することができる。
【0059】
以上のように、制御部3は、出力電圧を初期の出力電圧よりも大きくする場合において、負荷電流検知回路501の検知結果に基づき次のような制御を行う。すなわち、制御部3は、負荷電流検知回路501により検知した電流が所定値以下である場合に周波数を切り替えるための閾値を、第4閾値である閾値Vth3に設定する。ここで、閾値Vth3は、負荷電流検知回路501により検知した電流が所定値よりも大きい場合に周波数を切り替えるための第1閾値である閾値Vth1よりも大きい。
【0060】
以上、説明したように、初期出力電圧から出力電圧を大きくする、又は、小さくするシーケンス、に加えて、負荷電流に応じて駆動信号S202の周波数を切り替えるための閾値を変える。これにより、負荷電流が大きく変わった場合でも、それぞれ最適な駆動信号S202の周波数を設定することが可能である。
【0061】
また、図6に示すように、制御部3と通信信号S204により通信可能な記憶部である不揮発性メモリ510を使用してもよい。高電圧電源ユニット500に用いられる基板ごとにトランス201のL値のばらつきなどを考慮し、ユニット毎に駆動信号S202のデューティーおよび周波数を調整できる。その方法として、高電圧電源ユニット500の出力特性を製造ラインであらかじめ測定し、不揮発性メモリ510に記憶しておく方法が知られている。このように、高電圧電源ユニット500は、出力電圧とデューティーおよび周波数とを関連付けた情報や、出力電力を上げるときと下げるときの閾値の情報を記憶した記憶部を備えていてもよい。また、記憶部には、負荷に流れる電流に応じて、出力電圧とデューティーおよび周波数とを関連付けた情報や閾値の情報が、複数記憶されていてもよい。このように、高電圧電源ユニット500の負荷電流毎の出力特性をあらかじめ測定し、記憶部に記憶しておくことにより、トランス201のL値バラつきにかかわらず、出力電圧を任意の値に制御することができる。
【0062】
以上、実施例2によれば、出力電圧を変更することができる電源装置において、出力電圧のリプルの発生と消費電力とを低減させることができる。
【符号の説明】
【0063】
3 制御部
201 トランス
203 電界効果トランジスタ
204 コンパレータ
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