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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189487
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電磁コイル
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
H02K3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098086
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】508264841
【氏名又は名称】有限会社 宮脇工房
(74)【代理人】
【識別番号】100127661
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】竹内 啓佐敏
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603BB01
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA05
5H603CC07
5H603CC14
5H603CC19
5H603CD21
5H603CD32
5H603CE01
5H603CE13
(57)【要約】
【課題】複数組み合わせることにより所定形状のコイルアセンブリーを構成することができ、且つ、従来よりもエネルギー利用効率が高い電磁コイルと提供する。
【解決手段】電磁コイル1は、磁石の移動方向ROTに直交すると共に互いに離間して配置された2つの有効コイル部20と有効コイル部の一方側に位置し2つの有効コイル部を接続する第1コイルエンド部30と有効コイル部20の他方側に位置する第2コイルエンド部40とを有し、2つの有効コイル部20の間の中点MDを含んで磁石の移動方向に直交する「中心線CL」を中心とした線対称の略ハニカム構造をなし、中心線CL付近において段差50が設けられている。有効コイル部20は複数の導電性基材62が束ねられてなるコイル用導線60によって構成されており、導電性基材62として用いられる線は銅を含む導電性の線であって該導電性基材の平均半径は120μm以下である。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械装置の磁石の移動方向に沿って配置され、導電性の部材が空芯領域を囲むようにして巻回されてなる電磁コイルであって、
平面視したときに、それぞれが前記磁石の移動方向に直交すると共に互いに離間して配置された2つの有効コイル部と、前記有効コイル部の長手方向の一方側に位置し前記2つの有効コイル部を接続する第1コイルエンド部と、前記有効コイル部の長手方向の他方側に位置する第2コイルエンド部とを有し、
前記2つの有効コイル部の間の中点を含んで前記磁石の移動方向に直交する「中心線」を中心とした線対称の略ハニカム構造をなし、
前記磁石の移動方向に垂直な方向であって前記有効コイル部が延びる方向に沿って視たときに、前記中心線付近において段差が設けられており、
少なくとも前記有効コイル部は複数の導電性基材が束ねられてなるコイル用導線によって構成されており、
前記導電性基材として用いられる線は銅を含む導電性の線であって該導電性基材の平均半径は120μm以下である、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁コイルにおいて、
前記導電性基材は裸導体線であり、
前記コイル用導線は複数の前記裸導体線が編組みされた編組線でなる、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電磁コイルにおいて、
前記2つの有効コイル部のうち、当該電気機械装置の前記磁石が配置される側に寄って配置される有効コイル部を第1有効コイル部とし、前記磁石が配置される側とは反対の側に寄って配置される有効コイル部を第2有効コイル部としたときに、
前記第1有効コイル部は、前記磁石に対向する磁石寄りの第1面F1及び該第1面F1とは反対側の第2面F2を有し、前記第2有効コイル部は前記磁石が配置される側の第3面F3及び該第3面F3とは反対側の第4面F4を有しており、
前記第1面F1と前記第3面F3との間の段差で定義される前記2つの有効コイル部間の段差は、前記第1面F1と前記第2面F2の間の寸法で定義される前記第1有効コイル部の厚み以上である、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の電磁コイルにおいて、
当該電磁コイルが円筒形状のコイルアセンブリーを構成するものであるとき、
前記有効コイル部の断面は略扇形となっており、
当該電気機械装置の回転軸AX1を中心とした内周側に配置される有効コイル部の径方向の厚みTiは、外周側に配置される有効コイル部の径方向の厚みToよりも大きくなっており、
該円筒形状のコイルアセンブリーの回転軸AX1が延びる方向に沿って視たときに、前記内周側に配置される有効コイル部及び前記外周側に配置される有効コイル部は、式「Pa・Pm=N」により得たNにより機械角2πをN等分した角度内に配置される、
ことを特徴とする電磁コイル。
但し、Paは電気機械装置が駆動されるときの相数であり、Pmは電気機械装置の磁極数であり、Pa,Pm,Nはそれぞれ自然数である。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の電磁コイルにおいて、
当該電磁コイルが平面形状のコイルアセンブリーを構成するものであるとき、
前記互いに離間した2つの有効コイル部の当該平面に垂直な方向のそれぞれの厚みは互いに凡そ等しくなっている、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の電磁コイルにおいて、
第1の相の電流が供給される「一の前記電磁コイル」の前記空芯領域に、第2の相の電流が供給される「他の前記電磁コイル」の前記有効コイル部が嵌め込められるように構成されている、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の電磁コイルにおいて、
前記有効コイル部を構成する前記コイル用導線は、複数の裸導体線が編組みされた編組線でなり、
前記第1コイルエンド部は、個体導電材でなる第1エンド部材によって構成されており、
前記第1エンド部材は、前記2つの有効コイル部をそれぞれ構成している一のコイル用導線及び他のコイル用導線のそれぞれの一端側と連結され、前記一のコイル用導線及び前記他のコイル用導線との間を電気的に接続しており、
前記第2コイルエンド部は、個体導電材でなる第2エンド部材によって構成されており、
前記第2エンド部材は、前記2つの有効コイル部をそれぞれ構成している前記一のコイル用導線及び前記他のコイル用導線のそれぞれの他端側と連結されている、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項8】
請求項7に記載の電磁コイルにおいて、
前記第2コイルエンド部には、前記第2エンド部材に連成又は連結された回路結線端子が配設されており、
前記電磁コイルは、前記回路結線端子以外の全域の表面において絶縁層が設けられている、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の電磁コイルにおいて、
前記個体導電材は少なくとも銅又は炭素を含む材料で構成され、
前記有効コイル部を構成する前記コイル用導線は少なくとも銅又は炭素を含む材料で構成された、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項10】
請求項7~9のいずれかに記載の電磁コイルにおいて、
前記コイル用導線の端部にはスペーサが装着され、前記コイル用導線の前記端部は前記第1エンド部材及び前記第2エンド部材と連結されていることを特徴とする電磁コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空芯形の電磁コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
コアレス電気機械装置に用いられる電磁コイルが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1にはコアレスモータの円筒形状のステータを構成するための電磁コイルが記載されている。この場合、電気機械装置の磁石(ここではロータ磁石)は回転軸(16)を中心とした円筒の周方向に沿って移動する。
【0003】
しかし、電磁コイルを複数組み合わせて円筒形状のコイルアセンブリーを構成することを具体的に検討してみると、特許文献1の図5に記載された六角形の電磁コイルでは、現実には円筒形状のコイルアセンブリーを構成することができない。なぜなら、特許文献1の図7の断面図VIIIに示されているように、内周側の巻線(30)の数と外周側の巻線(30)の数とが同じであり内周側の長さと外周側の長さとが同じであることから(換言すると断面形状が矩形となっていることから)このような電磁コイルを複数組み合わせたとしても円筒形状に構成することができない。仮に構成することができたとしても、合わせ目に隙間のない(エネルギー利用効率の高い)綺麗な円筒形状のコイルアセンブリーとは成らない。
【0004】
一方、特許文献1の図4に記載された菱形の電磁コイルによれば、特許文献1の図10に示す円筒形状のコイルアセンブリーを構成できる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-230484号公報
【特許文献2】国際公開第2018/139246号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、菱形の電磁コイルの各辺は電気機械装置の磁石の移動方向に対して斜めになるような配置関係となっていることから、菱形の電磁コイルにおいてはロータ磁石の移動方向に直交する辺が存在しない。
フレミングの左手の法則によれば、磁界B(ここではロータ磁石による磁界)の中で、コイル用導線にコイル電流Iを流すと、磁界B及びコイル電流Iにそれぞれ直角な方向にいわゆるローレンツ力fが発生するが、菱形の電磁コイルの場合にはコイル電流Iの流れる方向がロータ磁石の移動方向に対して斜めであるため(直角でないため)、ロータの回転力を生じさせるにあたってはローレンツ力fを凡そ20~30%ほどロスすることが判っている。このように、菱形の電磁コイルはエネルギー利用効率の高い電気機械装置を構成しづらい。
【0007】
一方、ロータ磁石の移動方向に直交する辺を有する電磁コイルも従来から提案されている(例えば同一発明者による特許文献2に記載された電磁コイルを参照)。
しかし、特許文献2の図2Cにもあるように、従来の電磁コイルは、長手方向の全体の長さ(CE1+VCP+CE2)に対してコイルエンドの長さ(CE1+CE2)の割合が比較的大きいことから更なる改善が期待されていた。
【0008】
そこで本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、複数組み合わせることにより所定形状のコイルアセンブリーを構成することができ、且つ、従来よりもエネルギー利用効率が高い電磁コイルと提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、電気機械装置の磁石の移動方向に沿って配置され、導電性の部材が空芯領域を囲むようにして巻回されてなるいわゆるコアレスタイプの電磁コイルが提供される。
この電磁コイルを平面視したときに、当該電磁コイルは、それぞれが磁石の移動方向に直交すると共に互いに離間して配置された2つの有効コイル部と、有効コイル部の長手方向の一方側に位置し2つの有効コイル部を接続する第1コイルエンド部と、有効コイル部の長手方向の他方側に位置する第2コイルエンド部とを有する。当該電磁コイルは、2つの有効コイル部の間の中点を含んで磁石の移動方向に直交する「中心線」を中心とした線対称の略ハニカム構造をなし、磁石の移動方向に垂直な方向であって有効コイル部が延びる方向に沿って視たときに、中心線付近において段差が設けられており、少なくとも有効コイル部は複数の導電性基材が束ねられてなるコイル用導線によって構成されている。導電性基材として用いられる線は銅を含む導電性の線であって該導電性基材の平均半径は120μm以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数組み合わせることにより所定形状のコイルアセンブリーを構成することができ、且つ、従来よりもエネルギー利用効率が高い電磁コイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る電磁コイル1及び当該電磁コイル1を複数組み合わせることにより構成されたコイルアセンブリー100を説明するために示す図である。
図2】実施形態1に係る電磁コイル1を説明するために示す図である。
図3】実施形態1に係る電磁コイル2の寸法・角度等を説明するために示す平面図である。
図4】電磁コイル1を複数組み合わせたときの斜視図である。
図5】実験例における実験構成を示す模式図である。
図6】実験例における実験結果を示す表である。
図7】従来の電磁コイル9と実施形態1に係る電磁コイル1との寸法を比較するために示す平面図である。
図8】実施形態2に係る電磁コイル2及び当該電磁コイル2を複数組み合わせることにより構成されたコイルアセンブリー200を説明するために示す図である。
図9】実施形態3に係る電磁コイル3及び当該電磁コイル3を複数組み合わせることにより構成されたコイルアセンブリー300を説明するために示す図である
図10】変形例1に係る電磁コイル4を説明するために示す図である。
図11】電磁コイル4を複数組み合わせることにより構成されたコイルアセンブリー400を説明するために示す斜視図である。
図12】コイル用導線60(編組線64)の準備について説明するために示す図である。
図13】変形例に係る電磁コイル4の製造工程(一部)を説明するために示す図である。
図14】変形例2に係る電磁コイル5を説明するために示す斜視図である。
図15】変形例3のスペーサ150について説明する図である。
図16】変形例4の肉盛り52について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電磁コイルの実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図に共通する符号については当該符号について既に説明した内容を他の図の説明においても援用できることから、他の図における説明を省略する。また、各図面は一例を示した模式図であり必ずしも実際の寸法、比率等を厳密に反映したものではない。
【0013】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る電磁コイル1の構成
(1)電磁コイル1及びコイルアセンブリー100の概要
実施形態1に係る電磁コイル1は、電気機械装置の磁石の移動方向に沿って配置されるもので、導電性の部材(詳細は後述)が空芯領域10を囲むようにして巻回されてなるいわゆる空芯形の電磁コイルである。
なお、ここでの「巻回」には、空芯領域10を完全に360度に渡って取り囲むように巻く場合の他、空芯領域10 の周りを1周するまでには至らない(360度には至らない)ものの空芯領域10を囲むような巻き方も含まれる。
【0014】
電磁コイル1は、いわゆる空芯形のコイルを用いるものであれば如何なる電気機械装置に対しても適用可能である。コアレスモーターは電気機械装置として好適な適用対象の1つである。
図1(a)は、コアレスモーターに用いられる集中巻きタイプの電磁コイルのコイルアセンブリー100の一例である。図において、コアレスモーターの回転軸AX1に平行な方向を「y方向」とし、回転軸AX1に垂直な方向を「x方向」とし、x方向及びy方向に垂直な方向を「z方向」とする。また、回転軸AX1を起点として回転軸AX1に垂直な方向を「径方向RD」とし、径方向に直交し回転軸AX1と平行な方向を「周方向CF」とする。図1(a)に示すように、コイルアセンブリー100は、複数の電磁コイル1(下付き文字のアルファベットはIndexを意味する)が互いに接するようにしてロータの永久磁石(図示を省略)の移動方向ROTに沿って列状に配置されている。このように電磁コイル1はいわゆるコアレスモーターに好適に適用することができる。
【0015】
図1(b)は電気機械装置として駆動される際にコイルアセンブリー100に供給される電流の相について説明するために示す断面図である。ハッチングを施した断面の有効コイル部21,22には「第1の相」の電流が供給されているものとしてあらわしている。図1(c)は複数の電磁コイル1a,1b,1cを互いに重ね合わせるときの様子を示す斜視図である。
図1(b)及び図1(c)に関する詳細な説明は後述する。
【0016】
(2)電磁コイル1の基本構造
図2は、実施形態1に係る電磁コイル1を説明するために示す図である。図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)におけるB-B切断図、図2(c)は、コイル用導線60の断面(図2(b)における破線で囲まれた円の中)を拡大した拡大断面図をそれぞれ示す。
【0017】
(2-1)図2(a)に示すように、電磁コイル1は、平面視したときに、それぞれが磁石の移動方向(実施形態1ではROTで示す方向)に直交すると共に互いに離間して配置された2つの有効コイル部20と、有効コイル部20の長手方向LDの一方側LD1に位置し2つの有効コイル部20を接続する第1コイルエンド部30と、有効コイル部20の長手方向LDの他方側LD2に位置する第2コイルエンド部40とを有している。有効コイル部20は長手方向LDに沿って直線的に延びている。
なお、「平面視」したときの平面図というのは、各有効コイル部20、第1コイルエンド部30及び第2コイルエンド部40(後述する)のそれぞれの法線方向に電磁コイルを視たときの様子を連続的に展開したときの様子を表す図をいうものとする《図2(a),図3図7図8(a),図9(a)等参照》。
【0018】
「有効コイル部」とは、電気的エネルギーと機械的エネルギーとの間のエネルギー変換を有効に行う部分である。典型的には、その長手方向LDが磁石の移動方向ROT(実施形態2,3)又はMOV(実施形態3)と直交するような位置関係で配置される部分である。「第1コイルエンド部30」,「第2コイルエンド部40」は、電気的エネルギーと機械的エネルギーとの間のエネルギー変換に直接的に寄与しない部分ということもできる。
【0019】
電磁コイル1は、平面視したときに、中心線CLを中心とした線対称の略ハニカム構造をなしている。
【0020】
電磁コイル1は6つの直線部(辺)を有する六角形をなしている。第1直線部11及び第2直線部12はそれぞれ有効コイル部を構成し、第3直線部13及び第4直線部14は第1コイルエンド部30を構成し、第5直線部15及び第6直線部16は第2コイルエンド部40を構成している。
【0021】
「略ハニカム構造」とは、有効コイル部20に平行な中心線CLを中心に線対称となっている六角形の構造をいうものとし、全体として概略六角形の構造をなしていれば足りる。例えば六角形の角の部分が多少曲線になっていてもよいし、六角形の辺の部分が完全なる直線でなくてもよい。また、第2コイルエンド部40が六角形の完全なる辺を構成していなくてもよく、実在しない辺も含めて全体として六角形を仮想できるものも含まれる(例えば、後述する図10に示す変形例1に係る電磁コイル4)。
【0022】
「中心線CL」は、2つの有効コイル部20(21,22)の間の中点MPを含んで磁石の移動方向ROTに直交する仮想線である。中心線CLは有効コイル部20の直線部と概ね平行である。中心線CLの一部に含まれる「中点MP」については、2つの有効コイル部21,22の間の凡その中点となっていれば足りる。
【0023】
(2-2)図2(b)に示すように、電磁コイル1を磁石の移動方向ROTに垂直な方向であって有効コイル部が延びる方向に沿って視たとき(回転軸AX1が延びる方向に沿って視たとき)、電磁コイル1は全体として回転軸AX1を中心とした円環を2π/N(後述)の角度内に収まるように分割した分割リング形状になっている。
【0024】
また、上記と同じ方向に沿って視たとき、電磁コイル1には中心線CL付近において段差50が設けられている。
このとき、2つの有効コイル部20のうち、当該電気機械装置の磁石が配置される側に寄って配置される有効コイル部を「第1有効コイル部21」とし、磁石が配置される側とは反対の側に寄って配置される有効コイル部を「第2有効コイル部22」と定義する。
第1有効コイル部21は、磁石に対向する磁石寄りの第1面F1及び該第1面F1とは反対側の第2面F2を有する。第2有効コイル部22は磁石が配置される側の第3面F3及び該第3面F3とは反対側の第4面F4を有する。
【0025】
この段差50については、図2(b)及び図9(b)(詳細は後述)に示すように、第1面F1と第3面F3との間の段差で定義される2つの有効コイル部20(21,22)間の段差G1が、第1面F1と第2面F2の間の寸法で定義される第1有効コイル部21の厚みT1以上となっている。つまり、段差G1の大きさは第1有効コイル部21の厚みT1と同じかそれよりも大きくなるように設定されている。
このように段差G1を設定することにより、複数の電磁コイル1のそれぞれの一部を重ね合わせるようにしながら、磁石に対向する第1面F1を同一面上に揃えるようにしてコイルアセンブリー100を構成することができる。
なお、第1有効コイル部21の厚みT1は、磁石に対向する磁石寄りの第1面F1に垂直な法線方向の第1有効コイル部21の厚みと言うこともでき、円筒形状のコイルアセンブリーを構成する電磁コイルの場合には第1有効コイル部21の「径方向の厚み」と言うこともできる。
【0026】
参考までに、図において、符号T2は第3面F3と第4面F4の間の寸法で定義される第2有効コイル部22の厚みを示し、符号G2は第4面F4と第2面F2との間の段差を示している。この部分についても、段差G2の大きさは第2有効コイル部22の厚みT2と同じかそれよりも大きくなるように設定されている。
【0027】
電磁コイル1を円筒形状のコイルアセンブリーの回転軸AX1が延びる方向に沿って視たときに、電磁コイル1は、内周側に配置される有効コイル部(実施形態1の例では第2有効コイル部22)及び外周側に配置される有効コイル部(実施形態1の例では第1有効コイル部21)が、式「Pa・Pm=N」により得たNにより機械角2πをN等分した角度(2π/N)内に配置されるものである。
但し、Paは電気機械装置が駆動されるときの相数であり、Pmは電気機械装置の磁極数であり、Pa,Pm,Nはそれぞれ自然数である。
【0028】
電磁コイル1は円筒形状のコイルアセンブリーを構成するものであるため、有効コイル部20(21,22)の断面(磁石の移動方向ROTを含む仮想平面で切断したときの断面)は略扇形となっている。「略扇形」というのは、円環を径方向に沿ってカットしたと想定した場合の分割リング形状をいうものとする。
有効コイル部20(21,22)の断面は、図2(b)及び図2(c)で示した角度θwの範囲内にコイル用導線60が収まるようフォーミングがなされている。このとき、図の上では確認しづらいが、電気機械装置の回転軸AX1を中心とした内周側に配置される有効コイル部20の径方向の厚みTi(実施形態1の例ではT2)は、外周側に配置される有効コイル部の径方向の厚みTo(実施形態1の例ではT1)よりも大きくなっている。つまりTo<Ti(実施形態1の例ではT1<T2)の関係となっている。
【0029】
以上のようにすることで、複数の電磁コイル1を組み合わせることにより円筒形状のコイルアセンブリー100を構成できるようになっている。
【0030】
(2-3)図2(c)に示すように、電磁コイル1において、少なくとも有効コイル部20(21,22)は複数の導電性基材62が束ねられてなるコイル用導線60によって構成されている。「複数の導電性基材62が束ねられてなる」は複数の導電性基材62が撚られた、又は/及び、編み込まれたと言い換えることもできる。導電性基材62として用いられる線は銅を含む導電性の線であって該導電性基材の平均半径は120μm以下である。
【0031】
なお、電磁コイル1は、上記したように円筒形状のコイルアセンブリーを構成するものでコイル用導線60の断面が略扇形であるため、コイル用導線60の外周に接する導電性基材62の線の本数《図2(c)の模式図では7本》は、コイル用導線60の内周に接する導電性基材62の線の本数(同模式図では5本)よりも多くなっている。
【0032】
また、導電性基材62としては裸導体線61が好ましく、コイル用導線60は複数の裸導体線61が編組みされた編組線64でなっていることが好ましい。
「裸導体線61」は、その周囲に絶縁材料が皮膜されておらず導電性の部材たる導体が剥き出しの状態となっている線をいうものとする。例えば、銅を主原料とした無垢の「裸銅線」の他、炭素を用いた「カーボン線」、裸銅線等にスズめっき・ニッケルめっき等が施された「めっき線」などが「裸導体線61」に含まれる。
【0033】
以上のようなコイル用導線60を有効コイル部20に導入することにより、渦電流の発生を低減することができ、結果としてエネルギー利用効率の高い電磁コイルを提供することができる。なお、これに関連した導電性基材62、線材の種類等の最適化に関する詳細は「2.実験例」で別途説明する。
【0034】
(3)電磁コイル1の構造の詳細
図3は実施形態1に係る電磁コイル2の寸法・角度等を説明するための平面図である。
【0035】
(3-1)面の連続性について
図3に示すように、電磁コイル1において、第1有効コイル部21(第1直線部11)の第1面F1と第1コイルエンド部30を構成する第3直線部13の磁石寄りの面とで連続的な同一面を形成している。同様に第2有効コイル部22(第2直線部12)の第3面F3と第1コイルエンド部30を構成する第4直線部14の磁石寄りの面とで連続的な同一面を形成している。
したがって、段差50は、第1コイルエンド部30の第3直線部13と第4直線部14とが合わさる角の部分付近にて形成されている。
【0036】
実施形態1に係る電磁コイル1では、各辺同士が閉じた六角形のコイルであることから、第2コイルエンド部40においても同様に段差50が設けられている。
すなわち、第1有効コイル部21(第1直線部11)の第1面F1と第2コイルエンド部40を構成する第5直線部15の磁石寄りの面とで連続的な同一面を形成し、第2有効コイル部22(第2直線部12)の第3面F3と第2コイルエンド部40を構成する第6直線部16の磁石寄りの面とで連続的な同一面を形成しており、第2コイルエンド部40の第5直線部15と第6直線部16とが合わさる角の部分付近にて同様に段差50が形成されている。
【0037】
続いて、電磁コイル1は、図1(c)の如く複数組み合わせることで所定形状のコイルアセンブリーを構成できるよう、例えば次に説明するような関係性を有している。
【0038】
(3-2)有効コイル部20の幅W1,W2と空芯領域10の幅AC
実施形態1に係る電磁コイル1は3相駆動をするための電磁コイル1である。このため、電磁コイル1の空芯領域10には2本の有効コイル部21がその幅ACの中に収まるようになっている(図3参照)。
一般化すると、第1有効コイル部21の幅をW1とし、第1有効コイル部21及び第2有効コイル部22の間隔(換言すると空芯領域10の幅)をACとし、当該電気機械装置が駆動されるときの相数をPaとしたときに、AC≧(Pa-1)×W1の関係を有している。すなわち、すなわち、空芯領域10には(相数-1)本の有効コイル部21がその幅ACの中に収まるように設定されている。
【0039】
(3-3)外周形状と内周形状の整合性
電磁コイル1が複数組み合わせられたときに整合するよう辺S1,S5,S4等を含む外周の形状と辺S2,S6,S3等を含む内周の形状とが所定の関係を有している。
第1有効コイル部21を構成する第1直線部11の外周辺S1の長さをL1oとし、第1直線部11の内周辺S2の長さをL1iとしたときに、L1o≦L1iの関係を有している。このとき外周辺S1と内周辺S2とは凡そ平行になっている。
また、外周辺S1と第3直線部13の外周辺S5との間でなす角をθ1とし、内周辺S2と第3直線部13の内周辺S6との間でなす角をθ2としたときに、θ1≦θ2の関係を有している。
また、必ずしも必須ではないが、第1コイルエンド部30を構成する第3直線部13の幅をW3とし、第4直線部14の内周側の長さをL4とし、当該電気機械装置が駆動されるときの相数をPaとしたときに、L4≧(Pa-1)×W3の関係を有している。また、第3直線部の外周辺S5と内周辺S6とは凡そ平行になるよう設定してもよい。
【0040】
図4は電磁コイル1を複数組み合わせたときの斜視図である。
例えば図4に示すように電磁コイル1aに電磁コイル1bを重ね合わせたとき、L1o≦L1iとなっていることから、電磁コイル1bの外周辺S1は、電磁コイル1aの第3直線部13や第5直線部15に干渉されることもなく電磁コイル1aの内周辺S2の長さL1iの内に収まる。また、電磁コイル1はθ1≦θ2となっていることから、電磁コイル1bのθ1を定義する角が、電磁コイル1aのθ2を定義する角に突き合わせることもできる。これらのことから、電磁コイル1bのS1は電磁コイル1aのS2に隙間なく合わせることができる。
【0041】
(3-4)電磁コイル1は、第1の相の電流が供給される「一の電磁コイル」の空芯領域に、第2の相の電流が供給される「他の電磁コイル」の有効コイル部が嵌め込められるように構成されている。
ここで、「第1の相」とは、電気機械装置が3相(U,V,W)の駆動電圧又は駆動電流によって励磁されて駆動されるもののとき、例えば仮にU相とすることができる。このとき「第2の相」としてV相を適用することもできるしW相を適用することもできる。
実施形態1に係る電磁コイル1は3相駆動をするための電磁コイル1である。このため、図1(b)に示すように、U相(第1の相)が供給される電磁コイル1a(一の電磁コイル)の空芯領域(有効コイル部21aと有効コイル部22aとに挟まれた領域)に、外側のレイヤーでは、V相(第2の相)の電流が供給される電磁コイル1bの有効コイル部21bや、W相(別の第2の相)の電流が供給される電磁コイル1cの有効コイル部21cが嵌め込まれるようになっている《図1(b)のほか図4も併せて参照》。また内側のレイヤーにおいても同様に、有効コイル部22y(V相)や有効コイル部22z(W相)が嵌め込まれるようになっている。
【0042】
2.実験例
発明者は、電気機械装置の磁石の移動に伴う渦電流の発生に関する実験を行い、渦電流
の発生を抑制するコイルについての新たな知見を得たので、以下に説明する。
【0043】
(1)実験構成
図5は、実験例における実験構成を示す模式図である。
電気機械装置の磁石の移動を模式的に再現するため、図5に示すように、振り子状の実験治具を構成した。具体的には、ロッド710の一端側710bに固定部材720を介して永久磁石MGa,MGbを配設し(符号730は永久磁石MGa,MGbのペアを示す)、ロッド710の他端側710aを回動軸AX2に固定した。ロッド710の他端側710aはベアリング軸に接続して低い摩擦係数の下で回動するようにした。
その上で、回動軸AX2の直下に試料(図においてSampleと記す)を配置するように構成した。試料は非磁性体からなる試料固定台740の上面に固定されるようにし、試料の上面の水準と振り子の先端に配設されている永久磁石ペア730との間に隙間Gを設定して、試料と永久磁石ペア730とが空間的に接触しないようにした。
【0044】
(2)試料・実験方法
(2-1)試料
試料(Sample)は基本的には電磁コイルを想定しているが、具体的には「導電性の部材(例えば導電性基材62,コイル用導線60、後述する第1エンド部材130及び第2エンド部材140)」の材料の諸候補を想定し、これらの試料(Sample)を実験に付するものとした。更に具体的には、図6(後述)で示す表の第2列に示すような諸材料を平面視で30mm×10mmの矩形の形に整形して、それぞれ試料として準備した。
【0045】
(2-2)実験方法
先ず、実験番号に対応した試料を試料固定台740に配置する。その際、どの実験番号の場合であっても隙間Gはが凡そ1mm程度となるように試料固定台740の位置を調整するものとする。
次いで、永久磁石ペア730の中心の高さが回動軸AX2の高さと一致するように(すなわちロッド710が水平となるように)永久磁石ペア730を図8の実線で描いた状態にまで持ち上げる。
次いで、振り子を開放する。
そうすると、永久磁石ペア730は、図8の矢印C0の方向に動き始め、試料(Sample)の直上を矢印C1方向,矢印C2方向と交互に動くようにして往復して振動することとなる。かかる振動は、振り子と空気との抵抗の他、主に永久磁石ペア730が試料の近傍を通過することに伴う渦電流の発生による損失によって、減衰し、やがて停止することとなる。実験データはこの往復振動を観測することによって得るものとする。観測内容は、振り子が往復した回数(振り子が停止するまでの回数。以下単に往復回数という)及び振動した時間(振り子が停止するまでの所要時間。以下単に振動時間という)とする。往復回数及び/又は振動時間が大である程、渦電流の発生による損失が少ないとの仮定の下、往復回数及び/又は振動時間が大である程、渦電流の発生が少ないであろうと判定することとした。なお、実験番号6,7の試料は導体線ではないが比較のためにこれらについても観測を行った。以上のような実験方法で、実験番号1~7までの実験を行った。
【0046】
(3)実験結果
図6は、実験例における実験結果を示す表である。
図6に示すように、導電性基材(導体部)の平均半径が100μm以下である実験番号2,4,5については、往復回数及び振動時間が比較的大であり、渦電流の発生が小さい。更に導電性基材(導体部)の平均半径が50μm以下であると更に渦電流の発生は小さくなる。また、複数の裸導体線が編組みされている編組線である実験番号4,5については、往復回数及び振動時間が比較的大であり、渦電流の発生が小さい。また、実験番号2のマグネットワイヤー(導電性基材たる導電部に予め絶縁皮膜が施されたもの)も、往復回数及び振動時間が比較的大であり、渦電流の発生が小さい。さらに、実験番号3のめっき銅線についても、往復回数及び振動時間が比較的大であり、渦電流の発生が小さい。
【0047】
(4)考察
(4-1)上記実験結果から、実施形態1に係る電磁コイル1を構成するに当たり、導電性基材62の平均半径は120μm以下であることが好しく、更には100μm以下であるとより好ましく、更には50μm以下であるとより一層好ましいことが明らかになった(実験番号2,4,5)。
(4-2)電磁コイル1を構成するに当たり、上記(1)の条件の下、コイル用導線60は複数の裸導体線61が編組みされている編組線64でなることがより好ましいことが明らかになった(実験番号4,5)。
(4-3)電磁コイル1を構成するに当たり、上記(1)の条件の下、コイル用導線60は導電性基材62に予め絶縁皮膜が施された「マグネットワイヤー」が用いられてなることがより好ましいことが明らかになった(実験番号2)。
(4-4)導電性基材62は銅線にニッケルめっきが施されたニッケルめっき線又は銅線にスズめっきが施されたスズめっき線であっても好適であることも明らかになった(実験番号3)。
以上より、上記(4-1)~(4-4)の何れか1つ又はそれらの組み合わせを充足する導電性基材62,コイル用導線60を採用することにより、渦電流の発生を低減することができることが実験により確認された。
【0048】
3.実施形態1に係る電磁コイル1の効果
実施形態1に係る電磁コイル1は、2つの有効コイル部20の間の中点MPを含んで磁石の移動方向ROTに直交する「中心線CL」を中心とした線対称の略ハニカム構造をなしており、また、中心線CL付近において段差50が設けられている。このような構成のため、段差50によって相対的に低くなった領域(実施形態1で具体的に言うと、内周側の有効コイル部22並びにこれと一体となった第1コイルエンド部30の第4直線部14及び第2コイルエンド部40の第6直線部16)に、隣接する他の電磁コイルの段差50によって相対的に高くなった領域(実施形態1で具体的に言うと、外周側の有効コイル部21並びにこれと一体となった第1コイルエンド部30の第3直線部13及び第2コイルエンド部40の第5直線部15)が整合することとなり、これらの電磁コイル1を複数個繰り返し隣接しながら組み合わせることができる。したがって、実施形態1では円筒形のコイルアセンブリー100を構成することができる。
【0049】
また、電磁コイル1では磁石の移動方向ROTに直交する配置関係の有効コイル部20が確保された構成となっている。このため、有効コイル部20のコイル用導線60に流れる駆動電流Iの方向は磁石による磁界B(磁力線)の方向に対して直交することとなり、従来(特許文献1)の菱形の電磁コイルに比べてより効率的に(直交するので100%寄与)ローレンツ力fを発生させてロータの回転力に寄与することができる。したがって、従来よりもエネルギー利用効率が高い電磁コイルとなる。
【0050】
また、電磁コイル1は、平面視したとき六角形の略ハニカム構造であるため、図7に示すように、全体の長さに対する有効コイル部20の長さを従来(特許文献2)の台形形状の電磁コイル9に比べ大きくすることができる。
図7は、従来の電磁コイル9と実施形態1に係る電磁コイル1との寸法を比較するために示す平面図である。図示のとおり、電磁コイル9における有効コイル部の長さの割合はVCP/(CE1+CE2+VCP)であり、電磁コイル1における有効コイル部20(21,22)の長さの割合はL1/(L2+L3)である。つまり、同じ長さの電磁コイルを提供しようとした場合に、従来の電磁コイル9に比べ、実施形態1に係る電磁コイル1の方が有効コイル部の長さの割合を大きく確保することができる。
このように実施形態1に係る電磁コイル1は、「有効コイル部」というエネルギー変換に直接的に寄与する部分を相対的に増やすことができる。また逆にエネルギー変換に直接的に寄与しないコイルエンド部を小さくし配線長を小さくすることができるため、電磁コイル全体としての抵抗値を下げることもできる。こうしたことから、従来よりもエネルギー利用効率が高い電磁コイルとなる。
【0051】
また、電磁コイル1において、有効コイル部20は複数の導電性基材62が束ねられてなるコイル用導線60によって構成されており、導電性基材62として用いられる線は銅を含む導電性の線であって該導電性基材の平均半径は120μm以下である。このような構成のため、渦電流の発生をより低減することができる。これは、[実験例]でも検証したように、磁石の移動による影響を受けやすい有効コイル部においては、例えば金属でなる個体導電材(例えば銅板など)を採用するのではなく、上記した素性のコイル用導線を採用することにより渦電流の発生を低減が期待できるからである。
このように、渦電流によるエネルギー損失を抑えることができる点からも、実施形態1に係る電磁コイル1は従来よりもエネルギー利用効率が高い電磁コイルとなる。
【0052】
さらに、実施形態1に係る電磁コイル1において、有効コイル部20(21,22)の断面は略扇形となっており、内周側に配置される有効コイル部の径方向の厚みTiは、外周側に配置される有効コイル部の径方向の厚みToよりも大きくなっており、空芯領域10の幅ACと有効コイル部20の幅W1とはAC≧(Pa-1)×W1の関係を有しており、内周側に配置される有効コイル部及び外周側に配置される有効コイル部が、式「Pa・Pm=N」により得たNにより機械角2πをN等分した角度(2π/N)内に配置されるものとなっている。したがって円筒形状のコイルアセンブリー100を構成することができる。また、実施形態1では相数Pa=3を適用できる構造となっていることから、3相駆動用の円筒形状(回転型)の電気機械装置に好適な電磁コイル1を提供することができる。
【0053】
[実施形態2]
図8は、実施形態2に係る電磁コイル2及び当該電磁コイル2を複数組み合わせることにより構成されたコイルアセンブリー200を説明するために示す図である。図8(a)は平面図、図8(b)は図8(a)におけるD-D切断図をそれぞれ示す。図8(c)は複数の電磁コイル2a,2b,2cを互いに重ね合わせるときの様子を示す斜視図である。図8(d)はコイルアセンブリー200の斜視図であり、図8(e)は電気機械装置として駆動される際にコイルアセンブリー200に供給される電流の相について説明するために示す断面図である。
【0054】
実施形態2に係る電磁コイル2は基本的には実施形態1に係る電磁コイル1と同様の構成を有するが、2相駆動される電気機械装置に用いられる電磁コイルである点が異なる。
【0055】
すなわち、実施形態2に係る電磁コイル2は、図8(a)で示すように、空芯領域10の幅ACが他の電磁コイル2の有効コイル部20が1本収まる幅となっている。
このような構成となっているため、図8(e)に示すように、A相(第1の相)が供給される電磁コイル2a(一の電磁コイル)の空芯領域(有効コイル部21aと有効コイル部22aとに挟まれた領域)に、外側のレイヤーでは、B相(第2の相)の電流が供給される電磁コイル2bの有効コイル部21bが嵌め込まれるようになっている《図8(c)も併せて参照》。また内側のレイヤーにおいても同様に、有効コイル部22z(B相)が嵌め込まれるようになっている。よって、実施形態2によれば、2相駆動用の円筒形状(回転型)の電気機械装置に好適な電磁コイル2を提供することができる。
【0056】
なお、実施形態2に係る電磁コイル2は2相駆動される電気機械装置に用いられる電磁コイルである点以外の構成においては、実施形態1に係る電磁コイル1と基本的に同様の構成を有する。そのため、実施形態1に係る電磁コイル1が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0057】
[実施形態3]
図9は、実施形態3に係る電磁コイル3及び当該電磁コイル3を複数組み合わせることにより構成されたコイルアセンブリー300を説明するために示す図である図9(a)は平面図、図9(b)は図9(a)におけるE-E切断図をそれぞれ示す。図9(c)はコイルアセンブリー300の斜視図であり、図9(d)は電気機械装置として駆動される際にコイルアセンブリー300に供給される電流の相について説明するために示す断面図である。
【0058】
実施形態3に係る電磁コイル3は基本的には実施形態2に係る電磁コイル2と同様の構成を有するが、直線的に移動するムーバー(図示を省略)等を備えたいわゆるリニア型の電気機械装置に用いられる電磁コイルである点、つまり平面形状のコイルアセンブリーを構成するものである点が異なる。
【0059】
上記した実施形態2に係る電磁コイル2は、回転軸AX1が延びる方向に沿って視たときに分割リング形状になっていた。一方、図9(b)に示すように、実施形態3に係る電磁コイル3は磁石の移動方向MOVに平行な方向に延びた直線的な形状になっている。第1有効コイル部21を構成する第1面F1や第2有効コイル部22を構成する第3面は、磁石の移動方向MOVに平行な略平面となっている。
【0060】
また、互いに離間した2つの有効コイル部20(21,22)の当該平面に垂直な方向のそれぞれの厚みT1,T2は互いに凡そ等しくなっている、
【0061】
上記のように構成されているため、電磁コイル3は、これを複数組み合わせることにより、磁石の移動方向MOVに沿って直線状に延びるリニア型のコイルアセンブリー300を平面上に構成することができるものとなっている《図9(c)参照》。
【0062】
なお、電磁コイル3は2相駆動用の電磁コイルであるため、図9(d)に示すように、A相(第1の相)が供給される電磁コイル3a(一の電磁コイル)の空芯領域(有効コイル部21aと有効コイル部22aとに挟まれた領域)に、磁石寄りレイヤーでは、B相(第2の相)の電流が供給される電磁コイル3bの有効コイル部21bが嵌め込まれるようになっている《図9(c)も併せて参照》。また磁石が配置される側とは反対側のレイヤーにおいても同様に、有効コイル部22z(B相)が嵌め込まれるようになっている。
【0063】
なお、ここでは2相駆動用の電磁コイルを例示して説明したが、実施形態3に係る電磁コイル3はこれに限定されるものではない。3相駆動用の電磁コイルとして構成することもできる。
【0064】
実施形態3に係る電磁コイル3はリニア型の電気機械装置に用いられる電磁コイルである点以外の構成においては、実施形態1に係る電磁コイル1及び実施形態2に係る電磁コイル2と基本的に同様の構成を有する。そのため、電磁コイル1及び電磁コイル2が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0065】
[適用例]
これまで説明してきた各実施形態で得られた電磁コイルは様々な製品分野に適用可能である。例えば、実施形態1に係る電磁コイル1及び実施形態2に係る電磁コイル2にあってはロータを備えたモータ、ロータを備えた発電機、ロータを備えたアクチュエータ等に適用することができる。また、実施形態3に係る電磁コイル3にあってはムーバーを備えたリニアモータ等に適用することができる。
【0066】
[変形例]
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0067】
1.コイルエンド部の個体導電材化(変形例1)
図10は、変形例1に係る電磁コイル4を説明するために示す図である。図10(a)は平面図、図8(b)は第2コイルエンド部40が配置された側から視たときの図、図10(c)は、有効コイル部20(21,21)を構成するコイル用導線60を図10(a)で示す矢印Hに沿って切断したときの断面図である。図11は、電磁コイル4を複数組み合わせることにより構成されたコイルアセンブリー400を説明するために示す斜視図である。図11は、電磁コイル4を複数組み合わせることにより構成されたコイルアセンブリー400を説明するために示す斜視図である。
【0068】
(1)変形例1に係る電磁コイル4の構成
各実施形態において、有効コイル部20(21,22)、第1コイルエンド部30及び第2コイルエンド部40は同一の部材(コイル用導線60)を用いて全体をフォーミングすることを想定して説明してきたが、本発明においてはこれに限定されるものではない。
例えば、図10(a)及び図10(b)に示すように、変形例1に係る電磁コイル4として、第1コイルエンド部30を個体導電材でなる第1エンド部材130によって構成し、第2コイルエンド部40を個体導電材でなる第2エンド部材140によって構成してもよい(変形例1)。
【0069】
(2)第1エンド部材130
第1エンド部材130は、個体導電材でなる。
「個体導電材」とは、「導電性の部材」のバリエーションの1つであり、ワイヤー(線材)を束ねたようなものではなく1個体となっている導電性の部材をいう。例えば、銅を含む金属でなり所定の形状に鋳造又は鍛造されたものであってもよい。銅板(銅を含む金属を圧延したもの)が所定の形状にプレスされたものであってもよい。個体導電材は少なくとも銅又は炭素を含む材料で構成されたものが好ましい。
【0070】
第1エンド部材130は、2つの有効コイル部21,22をそれぞれ構成している一のコイル用導線60及び他のコイル用導線60のそれぞれの一端側(LD1の側)と連結されており、一のコイル用導線60及び他のコイル用導線60との間を電気的に接続する。第1エンド部材130には、コイル用導線60,60の一端側60aを受容し嵌合することができるように開口部131が設けられている《併せて図13(b)参照》。
【0071】
(3)第2エンド部材140
第2エンド部材140は、上記したものと同様の個体導電材でなる。
第2エンド部材140は、2つの有効コイル部21,22をそれぞれ構成している一のコイル用導線60及び他のコイル用導線60のそれぞれの他端側(LD2の側)と連結されている。第2エンド部材140には、コイル用導線60,60の他端側60bを受容し嵌合することができるように開口部141が設けられている。また、第2エンド部材140には回路結線端子105が配設されている《併せて図13(b)参照》。
【0072】
(4)コイル用導線60
有効コイル部21,22を構成するコイル用導線60,60は複数の裸導体線61が編組みされた編組線64でなる。具体的には、例えば図10(c)に示すように、コイル用導線60,60は、裸導体線61が6本単位で撚られた撚線63を中間材とし、3セットの当該撚線63が編組みされた編組線64でなっている。
有効コイル部20(21,22)を構成するコイル用導線60は少なくとも銅又は炭素を含む材料で構成されている。
【0073】
(5)絶縁
編組線64の少なくとも表面において絶縁層106が設けられている。絶縁層106は、絶縁性の部材であれば如何なるものからなっていてもよい。例えば、少なくとも有効コイル部20における絶縁層は、導電性基材62の周囲に浸透した水溶性の材料が固化した絶縁層107で構成してもよい。この絶縁層107は、導電性基材62の周囲に形成された電着絶縁塗膜であることが好ましい。絶縁層107は、別言すると、導電性基材62に対し電着塗装して得られた「電着絶縁塗膜」である。絶縁層107としての電着絶縁塗膜は、導電性基材62を皮膜するものであり、絶縁材料からなり絶縁機能を有する。
なお、ここまでの(4)コイル用導線60及び(5)絶縁についての説明は各実施形態においても適用することができる。
【0074】
第2コイルエンド部40には、第2エンド部材140に連成又は連結された回路結線端子105が配設されており《図10(a)参照》、電磁コイル4は、回路結線端子105以外の全域の表面(回路結線端子105の部位を除く全ての領域の全表面)において絶縁層が設けられている。
【0075】
(6)電磁コイル4の製造方法
(6-1)編組線準備工程
図12は、コイル用導線60(編組線64)の準備について説明するために示す図である。図12(a)は撚線63や編組線64を長手方向に垂直な面で切断したときの断面図である。
編組線準備工程においては、まず、導電性基材62としての裸導体線61を6本単位で撚った撚線63を作成しこれを中間材とする《図12(a)(i)参照》。次いで、かかる撚線63を3セット寄せ集め、これらを互いに編み組して編組線64を作成する《図12(a)(ii)参照》。この段階で編組線64の周囲を外側から全体的に押圧するなどして軽くフォーミングを行ってもよい。こうして作成された編組線64は、図12(b)の斜視図で示すような所定の厚みを持った略板状のコイル用導線60として準備される。
【0076】
(6-2)編組線フォーミング工程
図13は、変形例に係る電磁コイル4の製造工程(一部)を説明するために示す図である。図13(a)は編組線フォーミング工程を説明するための斜視図である。
編組線フォーミング工程においては、まず、編組線64をカットするなどして所定の長さに調整する《図13(a)の左側の図参照》。次いで、編組線64の両端部である一端側60a及び他端側60bにおいて、所定の長さに渡って周囲を外側から潰すようにして編組線64の両端部の外径寸法を小さくする《図13(a)の右側の図参照》。これにより、編組線64の両端部が第1エンド部材130の開口部131及び第2エンド部材140の開口部141に挿入できるようにしておく。
【0077】
(6-3)エンド部材及びコイル用導線連結工程
図13(b)はエンド部材及びコイル用導線連結工程を説明するための斜視図である。
エンド部材及びコイル用導線連結工程においては、まず、第1エンド部材130にあっては編組線フォーミング工程で潰して外形寸法を小さくしておいたコイル用導線60,60(編組線64)の一端側60aを、第1エンド部材130の開口部131にそれぞれ挿入しコイル用導線と第1エンド部材とのオーバーラップ部に嵌め合わせる。第2エンド部材140にあっては、同様にコイル用導線60,60(編組線64)の他端側60bを、第2エンド部材140の開口部141からそれぞれ挿入しオーバーラップ部に嵌め合わせる。
次いで、嵌め合わせた第1エンド部材130とコイル用導線60,60との間、及び第2エンド部材140とコイル用導線60,60との間をそれぞれ強固に連結する。連結作業は、かしめ固定によって行ってもよい。かしめ固定は、例えば、第1エンド部材130のオーバーラップ部内に位置する所定部位に対して、圧着工具等を用いて第1エンド部材130の外側から圧力を掛け、第1エンド部材130のオーバーラップ部を塑性変形させる。すると、第1エンド部材130の開口部131の内部の壁がコイル用導線60,60の外周を強く押さえつけるようになる。これにより、第1エンド部材130はコイル用導線60,60に密着するようにして強固に固定されつつ電気的に接続される。なお、上記したかしめ固定を行った後にはんだ等の導電性を有する材料を用いて第1エンド部材130とコイル用導線60,60の間を接合・固定する処置を更に施してもよい。
【0078】
(6-4)絶縁層形成工程
絶縁層形成工程は、回路結線端子105以外の領域(部位)の、少なくとも表面に絶縁層106を設ける工程である。なお回路結線端子105の表面は予めマスキングを施しておくものとする。
【0079】
図示を省略するが、絶縁層形成工程としては、絶縁性を有する溶質を用いた水溶性の材料を少なくともコイル用導線60に浸透させる浸透ステップと、浸透した水溶性の材料を固化する固化ステップと、をこの順序で実施するのが好ましい。この場合、水溶性の材料は、絶縁性を有し且つ接着性を有するものを採用するのが好ましい。
なお、浸透ステップにおいては、上記水溶性の材料を第1エンド部材130及び第2エンド部材140(予めマスキングした部分は除く)の表面にも付着させる処理を併せて実施してもよい。
【0080】
絶縁層形成工程は、例えば次のように実施してもよい。すなわち、液槽・容器等(以下、単に液槽とする)の内側に熱硬化性樹脂の溶液を満たしたうえで、液槽の内側に、エンド部材及びコイル用導線連結工程を実施した(組み上げた)電磁コイルを投入する。こうすると、水溶性の材料がコイル用導線60を構成する複数の導電性基材62の間に浸透(浸入)する。この際、第1エンド部材130及び第2エンド部材140(マスキングした部分は除く)の表面においても水溶性の材料が付着する。このように導電性基材62等の周囲に水溶性の材料が付着した状態で、コイル用導線60、第1エンド部材130及び第2エンド部材140(被塗物)を液槽から引き上げる。そして、水溶性の材料が付着した被塗物に対して加熱することにより、被塗物の周囲に付着した水溶性の材料に由来する材料を固化させる。
【0081】
水溶性の材料の浸透及び固化は、いわゆる電着絶縁塗装によって行うことが好ましい。
【0082】
以上の工程を実施することにより、図13(c)に示す変形例1に係る電磁コイル4を得ることができる。なお、電磁コイル4は、導電性の部材が空芯領域10を囲むように約3/4周するいわゆる単巻きの電磁コイルである。
【0083】
なお、コイル用導線60の準備の仕方、エンド部材の連結の仕方、等については、同一発明者による先の出願である特願2020-147041も詳しい。このため、先の出願に記載された内容を本願に取り込んで本願における説明として援用することができる。
【0084】
(7)変形例1に係る電磁コイル4の効果
(7-1)電磁コイル4において、第1コイルエンド部30及び第2コイルエンド部40は、線材を用いた部材ではなく個体導電材でなる第1エンド部材130及び第2エンド部材140で構成されている。
このため、第1コイルエンド部30及び第2コイルエンド部40では、有効コイル部20の長手方向LDから鋭角に方向を変えながら空芯領域10周りを巻回することができる。その結果、コイルエンド部の長手方向LDの寸法をより小さくすることができる。そうすると、相対的に全体の長さに対する有効コイル部20の長さの割合を大きくすることができる。また逆に、エネルギー変換に直接的に寄与しないコイルエンド部を小さくし配線長を小さくすることができるため、電磁コイル全体としての抵抗値を下げることもできる。したがって、高トルクを引き出せ、且つ、エネルギー利用効率の高い電磁コイルとすることができる。
【0085】
また、同じ有効コイル部20の長さを確保することを想定した場合、線材を用いたコイルエンド部の場合に比べより小型のコイルアセンブリーを構成することができる。また、第1エンド部材130及び第2エンド部材140は個体導電材でなるため、つまり撚ったり/編み込みしたりしたものでもないため、線材を鋭角に曲げようとするときの断線・線径歪みの問題も生じない。さらには、電気機械装置の仕様上、立体的に複雑な形状、凹凸を有する形状などの電磁コイルを形成しなければならない場合においても、適宜の形状に形成した個体導電材を準備すればそのような要求仕様にも応え得る。
【0086】
2.コイルエンド部の個体導電材化(変形例2)
また、変形例1に係る電磁コイル4よりもコイルの巻回数を多くしてもよい(変形例2)。
図14は変形例2に係る電磁コイル5を説明するために示す斜視図である。図14(a)は電磁コイル5の分解図であり、図14(b)は電磁コイル5の組み立てが完了したときの図である。基本的な構成及び特徴が変形例1と同じ構成要素については、変形例1の説明における符号130台を230台に、符号140台を240台に置き換えながら、変形例1における当該構成要素の説明を援用するものとしここでの説明は省略する。
【0087】
変形例2に係る電磁コイル5は基本的には変形例1に係る電磁コイル4と同様の構成を有するがコイルの巻回回数において変形例1に係る電磁コイル4とは異なる。
すなわち、電磁コイル5は、図14に示すように、「導電性の部材」が左上の側より順次、第2エンド部材240、コイル用導線60、第1エンド部材230、コイル用導線60、第2エンド部材240、コイル用導線60、第1エンド部材230、コイル用導線60、第2エンド部材240と連結されながら、空芯領域10を取り囲むように約2回巻回している。
【0088】
変形例2に係る電磁コイル5によれば、巻回数をより増やした電磁コイルとなり更に高トルクな電気機械装置を構成できる。
【0089】
3.コイルエンド部の個体導電材化(変形例3)
図15は、変形例3のスペーサ150について説明する図である。図15(a)はスペーサ150を編組線64に装着する前の平面図を、図15(b)はその側面図をそれぞれ示す。図15(c)はスペーサ150を編組線64に装着したときの平面図を示す。
【0090】
変形例1に係る電磁コイル4や変形例2に係る電磁コイル5において、コイル用導線60の端部に金属などのスペーサ150を装着し、かかるスペーサ150を介して間接的にコイル用導線60の一端側60a,他端側60bが第1エンド部材130,230及び第2エンド部材140,240と連結され接続されるように構成してもよい(変形例3)。
【0091】
なお、変形例3に係る電磁コイル(図示を省略)の製造方法においては、新たにスペーサ装着ステップが必要となる。
すなわち、図15(a)及び図15(b)に示すように、編組線フォーミング工程を実施した後に、コイル用導線60の一端側60a及び他端側60bにスペーサ150を装着する。具体的にはコイル用導線60の一端側60a及び他端側60bにスペーサ150をそれぞれ挿入し、各スペーサ150の外部から圧着工具等を用いて圧力をかけて「かしめ」ることで固定する。また、「かしめ」に替えて又は「かしめ」に加えて、溶着による固定を行ってもよいし、導電性接着剤による固定を行ってもよい。いずれにせよ固定を行った後は図15(c)で示す状態となる。
【0092】
その後、上記した図13(b)及び図14(a)で示したエンド部材及びコイル用導線連結工程と同様にして、スペーサ150が装着されたコイル用導線60の端部を第1エンド部材の開口部及び第2エンド部材の開口部にそれぞれ挿入することにより、変形例3に係る電磁コイル(図示を省略)を得ることができる。
【0093】
コイル用導線60として例えば編組線64を採用したとき、編組線64の端部を直に第1エンド部材の開口部に挿入して嵌め合わせることも可能であるが、編組線64の端部に導電性基材62(線材)のほつれ、毛羽立ち等が生じることがある。一方で、変形例3のスペーサ150を導入することにより上記したようなほつれ、毛羽立ち等が無い状態で第1エンド部材及び第2エンド部材に対し連結し接続することができ、接続信頼性の一層高い電磁コイルとなる。
【0094】
4.段差50を緩和する肉盛り52(変形例4)
図16は、変形例4の肉盛り52について説明する図である。図16(a)は実施形態3の電磁コイル3を用いたコイルアセンブリー(一部)の図であり、図16(b)は図16(a)の矢印Jに沿って視たときの電磁コイル3b(一部)を示す図である。図16(c)は変形例としての電磁コイル3’を用いたコイルアセンブリー(一部)の図であり、図16(d)は図16(c)の矢印Kに沿って視たときの電磁コイル3b’(一部)を示す図である。
【0095】
上記した各実施形態及び各変形例における電磁コイルを平面視したとき、図16(a)に示すように、当該電磁コイルの第2有効コイル部と同一面(内側の段又は下の段)のうち、隣接する電磁コイルの第1有効コイル部と同一面(外側の段又は上の段)がオーバーラップしない領域RG1については、電気機械装置の磁石が配置される第1側の面に対して部分的に穴(窪み)が生じている。
【0096】
そこで、図16(c)及び図16(d)で示すように、領域RG1に対し段差50の傾斜を緩和するような肉盛り52を設けてもよい(変形例4)。
かかる領域RG1に肉盛り52を設けることにより、部分的な窪みが緩和され、電気機械装置の磁石が配置される第1側の面を全体的に滑らかな面とすることができる。なお、ここでは実施形態3の例を図示して説明しているが、他の実施形態についても同様に窪みに対して肉盛りを適用することができる。
【0097】
5.その他の変形
(1)上記した各実施形態及び各変形例では、コイル用導線60の例として複数の裸導体線61が編組みされた編組線64を取り上げて説明した。しかしながら本発明はこれに限定されるものではない。例えば、導電性基材62はエナメル線であり、コイル用導線60を複数のエナメル線が撚られた「リッツ線」で構成してもよい。
【0098】
(2)上記した各実施形態及び各変形例では、絶縁層106として、導電性基材62の周囲に浸透した水溶性の材料が固化した絶縁層107で構成したものを取り上げて説明した。しかしながら本発明はこれに限定されるものではない。例えば、絶縁層106が導電性基材の周囲に形成された絶縁塗布膜であってもよい。
【0099】
(3)上記した実施形態1、実施形態2及び各変形例で説明に用いた図面では、電気機械装置の磁石が円筒形状のコイルアセンブリー100,200の外側で移動する配置関係のいわゆるアウターロータ型の図を用いた。しかしながら本発明はこれに限定されるものではない。円筒形状のコイルアセンブリー100,200の内側に磁石が移動するいわゆるインターロータ型の電気機械装置においても適用することができる。同様に、実施形態3で説明したリニア型の電気機械装置に関しても、コイルアセンブリー300の図における上側で磁石(ムーバー)が移動するタイプに限らず、下側で磁石(ムーバー)が移動するタイプの電気機械装置においても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1,1a,1b,1c,2,2a,2b,2c,3,3a,3b,3c,4,5,9…電磁コイル、10…空芯領域、11…第1直線部、12…第2直線部、13…第3直線部、14…第4直線部、15…第5直線部、16…第6直線部、20…有効コイル部、21,21a,21b,21c…第1有効コイル部、22,22a,22y,22z…第2有効コイル部、30…第1コイルエンド部、40…第2コイルエンド部、50…段差、52…肉盛り、60…コイル用導線、60a…(コイル用導線の)一端側、60b…(コイル用導線の)他端側、61…裸導体線、62…導電性基材、63…撚線、64…編組線、100,200,300,400…コイルアセンブリー、105…回路結線端子、106…絶縁層、107…水溶性の材料が固化した絶縁層、130,230…第1エンド部材、131…(第1エンド部材の)開口部、140,240…第2エンド部材、141…(第2エンド部材の)開口部、150…スペーサ、710…ロッド、710a…他端側、710b…一端側、720…固定部材、730…永久磁石ペア、740…試料固定台


図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図16