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特開2022-189489膜カートリッジおよび膜カートリッジの製造方法
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  • 特開-膜カートリッジおよび膜カートリッジの製造方法 図1
  • 特開-膜カートリッジおよび膜カートリッジの製造方法 図2
  • 特開-膜カートリッジおよび膜カートリッジの製造方法 図3
  • 特開-膜カートリッジおよび膜カートリッジの製造方法 図4
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  • 特開-膜カートリッジおよび膜カートリッジの製造方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189489
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】膜カートリッジおよび膜カートリッジの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/08 20060101AFI20221215BHJP
   B29C 65/18 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B01D63/08
B29C65/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098088
(22)【出願日】2021-06-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.メールの送信日 令和2年10月19日 2.メールの送信日 令和2年11月 5日 3.メールの送信日 令和2年11月 9日 4.商談日 令和2年11月11日 5.商談日 令和2年11月30日 6.納品日 令和2年12月 8日 7.納品日 令和2年12月10日 8.商談日 令和2年12月19日 9.納品日 令和2年12月22日 10.納品日 令和3年 2月 5日 11.納品日 令和3年 2月10日 12.納品日 令和3年 2月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松崎 好男
(72)【発明者】
【氏名】新開 忠雄
【テーマコード(参考)】
4D006
4F211
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA48
4D006HA91
4D006HA93
4D006JA07A
4D006JA07C
4D006JB07
4D006JB09
4D006MA03
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC48
4D006PA01
4D006PB08
4F211AD08
4F211AD18
4F211AH03
4F211TA01
4F211TC16
4F211TD11
4F211TN07
4F211TQ01
(57)【要約】
【課題】支持板に微細構造が設けられておらず、かつ、ろ過膜が破損しにくい膜カートリッジおよび膜カートリッジの製造方法を実現する。
【解決手段】ろ過膜2と支持板3とを備え、支持板3に、基準面と、基準面から突出している第一接合部32と、基準面から引退している第二接合部33と、が設けられ、第二接合部33は、第一接合部32よりも支持板3の外縁35側に設けられ、ろ過膜2の外縁部分21の少なくとも一部分は、第二接合部33において支持板3と接合されており、ろ過膜2の外縁部分21よりも内側は、第一接合部32において支持板3と接合されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過膜と支持板とを備え、
前記支持板に、基準面と、前記基準面から突出している第一接合部と、前記基準面から引退している第二接合部と、が設けられ、
前記第二接合部は、前記第一接合部よりも前記支持板の外縁側に設けられ、
前記ろ過膜の外縁部分の少なくとも一部分は、前記第二接合部において前記支持板と接合されており、
前記ろ過膜の前記外縁部分よりも内側は、前記第一接合部において前記支持板と接合されている膜カートリッジ。
【請求項2】
前記第二接合部の前記支持板の前記外縁側の縁部は、前記支持板の前記外縁側に向けて凸の凸部分と、前記外縁側から凹の凹部分と、が交互に設けられている請求項1に記載の膜カートリッジ。
【請求項3】
前記ろ過膜の外縁部分は、前記第二接合部の前記凸部分と前記凹部分との間の領域において、前記支持板と接合されている請求項2に記載の膜カートリッジ。
【請求項4】
基準面と、前記基準面から突出している第一接合部と、前記基準面から引退している第二接合部と、を有する支持板に対してろ過膜が接合された膜カートリッジを製造する膜カートリッジの製造方法であって、
前記基準面と前記第一接合部とがあらかじめ設けられた接合前支持板の上に前記ろ過膜を配置する配置工程と、
前記接合前支持板の上に配置された前記ろ過膜の上から押圧部材を押し付けて、前記基準面の一部を引退させて前記第二接合部を形成するとともに、前記第一接合部および前記第二接合部において前記ろ過膜と前記支持板との接合を完成する接合工程と、を有し、
前記押圧部材において、前記第一接合部と対向する第一部位が、前記第二接合部を形成する第二部位よりも引退して設けられている膜カートリッジの製造方法。
【請求項5】
前記第二部位を基準とする前記第一部位の引退距離は、前記基準面からの前記第一接合部の高さよりも小さい請求項4に記載の膜カートリッジの製造方法。
【請求項6】
前記押圧部材が加熱されている請求項5に記載の膜カートリッジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜カートリッジおよび膜カートリッジの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道施設などにおいて用いられるろ過装置として、膜カートリッジを有する装置が汎用される。かかる膜カートリッジとしては、樹脂材料などにより構成される支持板に対して、不織布などにより構成されるろ過膜が接合された構造のものが代表的である。
【0003】
支持板に対してろ過膜を接合する方法として、溶着法および超音波法が例示される。たとえば特開2006-231139号公報(特許文献1)には、支持板の上に不織布を配置し、当該不織布の上から熱板を押し付けて、支持板と不織布とを溶着する技術が開示されている。また、特開2001-212436号公報(特許文献2)には、支持板の上に不織布を配置し、当該不織布の上から超音波ホーンを押し当てて、支持板と不織布とを接合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-231139号公報
【特許文献2】特開2001-212436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような溶着技術では、支持板の熱板を押し当てた部分が陥没し、当該陥没部分の周囲に隆起部分が形成されることがあった。この場合、膜カートリッジに使用時において隆起部分を支点とするろ過膜の振動が生じ、ろ過膜が破断しやすくなる場合があった。またこの現象を避けるため、特許文献2に開示されているように、支持板に突起などの微細構造をあらかじめ設けておくと、特に複雑な構造においては、成型時に樹脂材料が行きわたらず成型不良が発生して支持板の生産性が低下する場合があった。
【0006】
そこで、支持板に微細構造が設けられておらず、かつ、ろ過膜が破断しにくい膜カートリッジおよび膜カートリッジの製造方法を実現することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る膜カートリッジは、ろ過膜と支持板とを備え、前記支持板に、基準面と、前記基準面から突出している第一接合部と、前記基準面から引退している第二接合部と、が設けられ、前記第二接合部は、前記第一接合部よりも前記支持板の外縁側に設けられ、前記ろ過膜の外縁部分の少なくとも一部分は、前記第二接合部において前記支持板と接合されており、前記ろ過膜の前記外縁部分よりも内側は、前記第一接合部において前記支持板と接合されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る膜カートリッジの製造方法は、 基準面と、前記基準面から突出している第一接合部と、前記基準面から引退している第二接合部と、を有する支持板に対してろ過膜が接合された膜カートリッジを製造する膜カートリッジの製造方法であって、
前記基準面と前記第一接合部とがあらかじめ設けられた接合前支持板の上に前記ろ過膜を配置する配置工程と、前記接合前支持板の上に配置された前記ろ過膜の上から押圧部材を押し付けて、前記基準面の一部を引退させて前記第二接合部を形成するとともに、前記第一接合部および前記第二接合部において前記ろ過膜と前記支持板との接合を完成する接合工程と、を有し、前記押圧部材において、前記第一接合部と対向する第一部位が、前記第二接合部を形成する第二部位よりも引退して設けられていることを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、第一接合部において、陥没部分の周囲の隆起部分を支点とするろ過膜の振動が生じず、ろ過膜が破断しにくい膜カートリッジを実現できる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0011】
本発明に係る膜カートリッジは、一態様として、前記第二接合部の前記支持板の前記外縁側の縁部は、前記支持板の前記外縁側に向けて凸の凸部分と、前記外縁側から凹の凹部分と、が交互に設けられていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第二接合部が面方向にある程度の幅を有しているため、ろ過膜の外縁部分が第二接合部に当接する位置関係を実現するためのろ過膜と支持板との面方向の位置関係に許容範囲が生じる。そのため、ろ過膜の寸法のばらつきや、ろ過膜と支持板との面方向の位置関係のずれなどをある程度許容でき、ろ過膜と支持板との位置関係の調整に要する労力を低減しうる。
【0013】
本発明に係る膜カートリッジは、一態様として、前記ろ過膜の外縁部分は、前記第二接合部の前記凸部分と前記凹部分との間の領域において、前記支持板と接合されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、ろ過膜の外縁部分を支持板に固定しやすい。
【0015】
本発明に係る膜カートリッジの製造方法は、一態様として、前記第二部位を基準とする前記第一部位の引退距離は、前記第二接合部を基準とする前記第一接合部の高さよりも小さいことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第一接合部および第二接合部の双方において過不足ない接合が実現されやすい。
【0017】
本発明に係る膜カートリッジの製造方法は、一態様として、前記押圧部材が加熱されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、ろ過膜と支持板とを熱溶着でき、良好な水封を形成しうる。
【0019】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る膜カートリッジの斜視図である。
図2】実施形態に係る支持板の部分平面図である。
図3】実施形態に係る支持板の断面図(図2のIII-III線における断面図)である。
図4】実施形態に係る膜カートリッジに製造方法の配置工程を示す斜視図である。
図5】実施形態に係る膜カートリッジに製造方法の配置工程を示す断面図である。
図6】実施形態に係る膜カートリッジに製造方法の接合工程を示す断面図である。
【0021】
本発明に係る膜カートリッジおよび膜カートリッジの製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る膜カートリッジを、被処理水に浸漬して用いられる浸漬型膜ろ過装置に装着される膜カートリッジ1に適用した例について説明する。なお、図1~6において、説明のために各部材の寸法比率を変更して描写している場合があり、図示された各部材の寸法比率は必ずしも実施形態を反映しない。特に、突起部分および引退部分の構造を理解しやすくするため、突起方向および引退方向に強調した態様で図示している場合がある。本実施形態における各部の寸法について数値例の記載がある場合は、当該数値例に従って寸法が理解されるべきである。
【0022】
〔膜カートリッジの構成〕
本実施形態に係る膜カートリッジ1は、支持板3にろ過膜2が接合された構造を有する(図1)。ろ過膜2は、支持板3の両面に一枚ずつ接合されている。
【0023】
使用状態において、膜カートリッジ1は被処理水に浸漬されている。被処理水がろ過膜2を通過すると、被処理水中の固形物がろ過膜2の一次側に残り、固形物が取り除かれたろ液がろ過膜2の二次側に流入する。支持板3の中央部分(図1においてろ過膜2に覆われている部分)には、複数の溝(不図示)が設けられており、当該溝はノズル31に連通している。ろ過膜2の二次側に流入したろ液は、当該溝およびノズル31を通じて下流工程に流出する。
【0024】
図1に示すように、膜カートリッジ1は、幅Wおよび長さLに比べて厚さDが小さい板状の形状を有する。本実施形態では、膜カートリッジ1の幅Wは500mmであり、長さLは1560mmであり、厚さDは6mmである。なお、以下の説明において「面方向」について言及するときは、膜カートリッジ1の幅Wおよび長さLによって規定される面に沿う方向(図1のXY平面方向)、またはこれに対応する、ろ過膜2の延在方向をいうものとする。また、「面方向と交差する方向」は、膜カートリッジ1の厚さD方向(図1のZ軸方向)をいうものとする。
【0025】
ろ過膜2は、微細な孔が複数設けられたシート状の部材である。ろ過膜2を構成する材料は特に限定されないが、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどでありうる。なお、ろ過膜2が高分子材料によって構成される場合、塩素化などの化学修飾が加えられた材料が用いられてもよい。また、ろ過膜2に設けられる孔の大きさは、膜カートリッジ1を用いて除去したい固形物の大きさに応じて適宜選択されうるが、ろ過膜2の平均孔径は、たとえば0.01~0.4μmでありうる。
【0026】
支持板3は、ろ過膜2を接合可能に構成された板状の部材である。支持板3を構成する部材は特に限定されないが、たとえば、ABS樹脂などでありうる。支持板3には、ろ過された水を膜カートリッジ1の外に取り出すためのノズル31が設けられている。
【0027】
支持板3は、第一接合部32と、第一接合部32よりも外縁35側に設けられた第二接合部33と、を有する(図2図3)。第一接合部32および第二接合部33は、ろ過膜2を支持板3に接合する際に、ろ過膜2と接合される部位である。第一接合部32は、ろ過面(ろ過膜2が延在する面)から突出しており、第二接合部33はろ過面から引退している。なお、支持板3の両面に一枚ずつのろ過膜2が接合されることに対応して、第一接合部32および第二接合部33は、支持板3の両面に設けられている。
【0028】
第一接合部32は、支持板3上の基準面34に対して突出して、すなわち図1のZ軸に沿う方向に突出して、設けられている。本実施形態では、基準面34に対する第一接合部32の突出距離(高さ)は0.15mmであり、第一接合部32の幅は2.6mmである。なお、基準面34とは、支持板3の外枠部分に延在する面のうち、たとえば第一接合部32のような意図的に突出して設けられている部分以外の面をいう。また、第一接合部32は、支持板3の面方向の全周にわたって設けられている。
【0029】
第二接合部33は基準面34から引退して設けられている。本実施形態では、基準面34に対する第二接合部33の引退距離(深さ)は、ろ過膜2が存在する箇所で0.15mm、ろ過膜2が存在しない箇所で0.05mmであり、第二接合部33においてろ過膜2の上面とろ過膜2が存在しない箇所とが面一に構成されている。また、第二接合部33の幅は5mmである。したがって、第二接合部33のろ過膜2が存在する箇所を基準とする第一接合部32の突出距離(高さ)は0.30mmである。
【0030】
また、第二接合部33の、支持板3の外縁35側の縁部は、支持板3の外縁35側に向けて凸の凸部分33aと、外縁35側から凹の凹部分33bとが交互に設けられている(図2)。なお、図2では、第二接合部33の面方向に沿う形状がジグザグ状である例を示しているが、凸部分33aと凹部分33bとが交互に設けられていればよく、たとえば波状であってもよい。
【0031】
膜カートリッジ1において、ろ過膜2の外縁部分21は、第二接合部33の凸部分33aと凹部分33bとの間の領域において、支持板3と接合されている。ろ過膜2の外縁部分21が第二接合部33と接合されていることによって、膜カートリッジ1の使用中にろ過膜2の外縁部分21が水流などの応力を受けて運動することを防ぎうる。かかる運動は、ろ過膜2の破断、および、ろ過膜2と支持板3との接合の解除、の原因となりうるため、これを回避する必要がある。
【0032】
また、ろ過膜2の外縁部分21より内側の部分は、第一接合部32において支持板3と接合されている。第一接合部32が支持板3の面方向の全周にわたって設けられていることから、ろ過膜2と第一接合部32との接合により、支持板3の面方向の全周にわたって水封が形成される。この水封によって、ろ過膜2の一次側と二次側とが隔離される。水封を確実に形成する観点から、ろ過膜2と支持板3との接合は、熱融着または超音波融着によって行われることが好ましく、熱融着により行われることが特に好ましい。なお、第一接合部において陥没部分が無いことから、陥没部分の周囲の隆起部分を支点とするろ過膜の振動が生じず、ろ過膜2の破断を誘起しうる構造(たとえば隆起部分)を有さない膜カートリッジ1を実現できる。
【0033】
〔膜カートリッジの製造方法〕
次に、本実施形態に係る膜カートリッジ1の製造方法について説明する(図4図6)。本実施形態に係る膜カートリッジ1の製造方法は、配置工程と接合工程とを有する。以下では、ろ過膜2が接合されていない支持板3に、一枚目のろ過膜2を接合する場合を例として説明する。なお、支持板3の二つの面を区別するため、以下に説明する手順においてろ過膜2が接合される面を面3Aとする。
【0034】
(1)配置工程
配置工程は、基準面34と第一接合部32とがあらかじめ設けられた接合前支持板30の上にろ過膜2を配置する工程である(図4図5)。ここで用いる接合前支持板30と、上述の支持板3との違いは、接合前支持板30には第二接合部33が設けられておらず、第二接合部33が設けられる予定の空地が基準面34の一部として存在する点にある(図5)。接合前支持板30は、後述するように接合工程において第二接合部33が設けられて、支持板3になる。
【0035】
配置工程では、まず、接合前支持板30を架台5に載置する。このとき、接合後に支持板3の面3Aになる面である面30Aが上を向くようにする(図4)。
【0036】
次に、架台に載置された接合前支持板30(面30A)の上に、ろ過膜2を配置する。ここで、ろ過膜2と接合前支持板30との面方向の位置関係が、第二接合部33Aが設けられる予定の基準面34の一部にろ過膜2の外縁部分21が当接する位置関係になるようにする。
【0037】
(2)接合工程
接合工程は、接合前支持板30(面30A)の上に配置されたろ過膜2の上から押圧部材4を押し付けて、基準面34の一部を引退させて第二接合部33を形成するとともに、第一接合部32および第二接合部33においてろ過膜2と支持板3との接合を完成する工程である(図6)。本実施形態では、押圧部材4は設定温度170~190℃で加熱されており、したがって膜カートリッジ1においてろ過膜2と支持板3とは熱融着(接合の例)されている。なお、押圧部材4を加熱する手段は公知の手段であってよく、たとえば、押圧部材4の内部に電気ヒーターや蒸気配管などの公知の加熱手段が設けられうる。
【0038】
押圧部材4は、第一接合部32Aと対向する第一部位41と、第二接合部33Aが設けられる予定の空地(基準面34の一部)と対向する第二部位42とを有し、第一部位41は、第二部位42よりも引退して設けられている(図6)。より具体的には、第二部位42を基準とする第一部位41の引退距離は0.3mmであり、これは、接合前支持板30における基準面34からの第一接合部32の突出距離(高さ)である0.5mmより小さい。なお、第一接合部32Aが支持板3の面方向の全周にわたって設けられていることに対応して、第一部位41は、図6の下方から見た場合において閉曲線を形成する形状を有する。また、第二部位42は、第二接合部33Aをジグザグ状に形成することに対応して、ジグザグ状に設けられている。
【0039】
接合前支持板30(面30A)の上に配置されたろ過膜2の上から押圧部材4を押し付けると、まず、第一部位41によってろ過膜2が第一接合部32Aに押し付けられる。続いて、0.2mm分遅れて、第二部位42によってろ過膜2が第一接合部32Aより外側の基準面34に押し付けられて、基準面34の一部が引退して第二接合部33Aが形成される(図6)。これにより、第一接合部32Aを確実に形成することができる。また第二部位42は、面積が広いことから押し込みにくくブレーキの役割を果たし、過剰な押し付けを回避することができる。これによって、接合(溶着)時における第一接合部32Aの過度の変形が回避されうるので、かかる変形を起点として生じうるろ過膜2の破れや剥がれなどが生じにくい。
【0040】
本実施形態では、第二部位42がジグザグ状の形状で設けられていることによって、押圧部材4を接合前支持板30に押し付けるときにろ過膜2の外縁部分21が第二部位42に当接するような位置関係を実現しうるろ過膜2と接合前支持板30との面方向の位置関係に許容範囲が生じる。そのため、ろ過膜2の寸法のばらつきや、ろ過膜2と接合前支持板30との面方向の位置関係のずれなどをある程度許容できるので、配置工程におけるろ過膜2と接合前支持板30との位置関係の調整に過度の労力を要さない。
【0041】
なお、反対側の面に二枚目のろ過膜2を接合する方法は、上記の配置工程および接合工程と同様である。
【0042】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る膜カートリッジの製造方法のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0043】
上記の実施形態では、第二接合部33が凸部分33aおよび凹部分33bを有する構成を例として説明した。しかし、本発明に係る第二接合部の形状は上記の例に限定されず、たとえば帯状であってもよい。また、ろ過膜の外縁部分と第二接合部とを接合する部位は、第二接合部の範囲内である限りにおいて限定されない。
【0044】
上記の実施形態では、押圧部材4が、第二部位42を基準とする第一部位41の引退距離が、基準面34からの第一接合部32の高さよりも小さい構成を例として説明した。しかし、本発明に係る膜カートリッジの製造方法において、押圧部材の形状は特に限定されない。
【0045】
上記の実施形態では、押圧部材4が加熱されており、ろ過膜2と支持板3とが溶着される構成を例として説明した。しかし、本発明に係る膜カートリッジの製造方法において、ろ過膜と支持板とを接合する方法は特に限定されない。
【0046】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、たとえば浸漬型膜ろ過装置に装着される膜カートリッジを製造する方法として利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 :膜カートリッジ
2 :ろ過膜
21 :ろ過膜の外縁部分
3 :支持板
3A :(ろ過膜が配置される)面
30 :接合前支持板
30A :(ろ過膜が配置される)面
31 :ノズル
32 :第一接合部
32A :第一接合部(面3A側)
33 :第二接合部
33A :第二接合部(面3A側)
33a :凸部分
33b :凹部分
34 :基準面
35 :支持板の外縁
4 :押圧部材
41 :第一部位
42 :第二部位
5 :架台
図1
図2
図3
図4
図5
図6