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  • 特開-木材保護塗料及び建築外装用部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189494
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】木材保護塗料及び建築外装用部材
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/06 20060101AFI20221215BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20221215BHJP
   B27K 3/50 20060101ALI20221215BHJP
   B27K 5/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C09D175/06
C09D7/48
B27K3/50 C
B27K5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098098
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】勝野 聖世
(72)【発明者】
【氏名】服部 絵美
(72)【発明者】
【氏名】広田 正之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭一
【テーマコード(参考)】
2B230
4J038
【Fターム(参考)】
2B230AA11
2B230BA01
2B230CB01
2B230CC06
2B230EA11
2B230EB03
2B230EB04
4J038DG121
4J038DG271
4J038KA12
4J038MA06
4J038MA09
4J038NA01
4J038NA03
4J038PA18
4J038PB05
4J038PC06
(57)【要約】
【課題】塗膜の光透過性が高く、木材の耐候性を向上させることができる木材保護塗料及び建築外装用部材を提供すること。
【解決手段】木材保護塗料は、A剤と、B剤とを含む。 前記A剤は、(a1)ポリカーボネートジオール、(a2)紫外線吸収剤、及び(a3)光安定化剤を含む。前記B剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート、又は、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を含む。前記木材保護塗料により形成された厚さ0.15mmの塗膜の波長650~750nmでの光透過率は19%以上である。波長400nmでの光透過率は80%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材保護塗料であって、
A剤と、B剤とを含み、
前記A剤は、(a1)ポリカーボネートジオール、(a2)紫外線吸収剤、及び(a3)光安定化剤を含み、
前記B剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート、又は、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を含み、
前記木材保護塗料により形成された厚さ0.15mmの塗膜の波長650~750nmでの光透過率が19%以上であり、波長400nmでの光透過率が80%以下である、
木材保護塗料。
【請求項2】
請求項1に記載の木材保護塗料であって、
前記ヘキサメチレンジイソシアネート、又は、前記ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体はイソシアヌレート型である、
木材保護塗料。
【請求項3】
木材と、
前記木材に形成された塗膜と、
を備える建築外装用部材であって、
前記塗膜は、(c1)ポリカーボネートジオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート誘導体との反応生成物、(c2)紫外線吸収剤、及び(c3)光安定化剤を含み、
厚さ0.15mmの前記塗膜の波長650~750nmでの光透過率が19%以上であり、波長400nmでの光透過率が80%以下である、
建築外装用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は木材保護塗料及び建築外装用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に木材保護塗料が開示されている。木材保護塗料は木材に塗布される。木材保護塗料は、木材の耐候性を向上させることを目的とする。耐候性とは、例えば、光を長時間照射しても木材の色調変化が生じにくい特性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-108461号公報
【特許文献2】特開2019-069538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の木材保護塗料では、塗膜の上から木目を視認できるほどに塗膜の光透過性を高めた場合、木材の耐候性が低下してしまう。本開示の1つの局面では、塗膜の光透過性が高く、木材の耐候性を向上させることができる木材保護塗料及び建築外装用部材を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの局面は木材保護塗料である。木材保護塗料は、A剤と、B剤とを含む。 前記A剤は、(a1)ポリカーボネートジオール、(a2)紫外線吸収剤、及び(a3)光安定化剤を含む。前記B剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート、又は、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を含む。前記木材保護塗料により形成された厚さ0.15mmの塗膜の波長650~750nmでの光透過率は19%以上であり、波長400nmでの光透過率は80%以下である。
【0006】
本開示の1つの局面である木材保護塗料を木材に塗布し、塗膜を形成することができる。塗膜の光透過性が高いので、塗膜の上から木材の木目を視認することが容易である。また、木材の色調変化を抑制することができる。
【0007】
本開示の別の局面は、木材と、前記木材に形成された塗膜と、を備える建築外装用部材である。前記塗膜は、(c1)ポリカーボネートジオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート誘導体との反応生成物、(c2)紫外線吸収剤、及び(c3)光安定化剤を含む。厚さ0.15mmの前記塗膜の波長650~750nmでの光透過率は19%以上であり、波長400nmでの光透過率は80%以下である。
【0008】
本開示の別の局面である建築外装用部材が備える塗膜は、光透過性が高い。そのため、塗膜の上から木材の木目を視認することが容易である。また、木材の色調変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは、ビュレット型のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体の化学式を表す説明図であり、図1Bは、イソシアヌレート型のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体の化学式を表す説明図であり、図1Cは、アダクト型のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体の化学式を表す説明図であり、図1Dは、2官能型のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体の化学式を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
1.木材保護塗料
(1-1)木材保護塗料の用途
木材保護塗料は、例えば、木材の保護のために用いられる。木材保護塗料は、例えば、木材の表面に塗布される。木材保護塗料は、下塗り塗料であってもよいし、上塗り塗料であってもよい。
【0011】
下塗り塗料とは、木材の表面に直接塗布される塗料である。上塗り塗料とは、木材の表面に既に形成された塗膜の上に塗布される塗料である。木材の表面に既に形成された塗膜は、例えば、下塗り塗料を塗布することで形成された塗膜である。
【0012】
下塗り塗料は、木材と塗膜との密着性を高めること、及び、木材の変色を防止する効果を奏する。上塗り塗料は、美観を高めること、及び、木材の変色を防止する効果を奏する。下塗り塗料と上塗り塗料とは、同じ塗料であってもよいし、異なる塗料であってもよい。
【0013】
木材保護塗料が下塗り塗料である場合、木材保護塗料の塗膜の厚さは10μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上100μm以下であることが一層好ましい。木材保護塗料が上塗り塗料である場合、木材保護塗料の塗膜の厚さは5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることが一層好ましい。塗膜の厚さの測定方法は、マイクロメータを使用する測定方法である。
上塗り塗料と下塗り塗料とがそれぞれ本開示の木材保護塗料である場合、下塗り塗料のB剤におけるヘキサメチレンジイソシアネート、又は、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体は、ビュレット型であり、上塗り塗料のB剤におけるヘキサメチレンジイソシアネート、又は、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体は、イソシアヌレート型であることが好ましい。
上記のようにヘキサメチレンジイソシアネート、又は、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を選択した場合、下塗り塗料の塗膜の木材への密着性が一層向上する。また、上塗り塗料の塗膜の耐候性が一層向上し、その結果、下塗り塗料の塗膜及び上塗り塗料の塗膜が木材の表面から一層剥がれ難くなり、木材の耐候性が一層向上する。
【0014】
(1-2)A剤とB剤
木材保護塗料は、A剤とB剤とを含む。B剤は、例えば、硬化剤である。A剤とB剤とは、使用しないときは分離されている。使用するとき、A剤とB剤とは混合される。A剤とB剤とを混合して得られた液を、以下では混合液とする。混合液、又は混合液を希釈した液を木材に塗布することができる。
【0015】
木材保護塗料は、A剤及びB剤に加えて、他の剤を含んでいてもよい。他の剤として、例えば、希釈用シンナー等が挙げられる。希釈用シンナーは、例えば、混合液を希釈することができる。希釈用シンナーは、例えば、A剤又はB剤に含まれる溶媒と同一の溶媒である。
【0016】
(1-3)A剤
A剤は、(a1)ポリカーボネートジオール、(a2)紫外線吸収剤、及び(a3)光安定化剤を含む。ポリカーボネートジオールは、ジオールと、カーボネート化剤との反応によって得られる。ジオールとして、例えば、直鎖ジオール、分岐ジオール、環状ジオール等が挙げられる。直鎖ジオール及び分岐ジオールは脂肪族ジオールである。
【0017】
直鎖ジオールとして、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-ドデカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール等が挙げられる。
【0018】
分岐ジオールとして、例えば、2-メチル-1、8-オクタンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチルー1、5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0019】
環状ジオールとして、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、1,4-シクロヘキサンジオール等が挙げられる。ポリカーボネートジオールの原料であるジオールは、上述したジオールのうちの1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0020】
ポリカーボネートジオールの原料であるジオールは、上述したジオールのうち、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、及び3-メチル-1,5-ペンタンジオールから成る群から選択された1種以上であることが好ましい。
【0021】
ポリカーボネートジオールの原料であるジオールは、1,4-ブタンジオールと、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオールから成る群から選択される1種以上との組み合わせであることが好ましく、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとを共重合させることがさらに好ましい。
【0022】
カーボネート化剤として、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキレンカーボネート等が挙げられる。ジアルキルカーボネートとして、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。ジアリールカーボネートとして、例えば、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0023】
アルキレンカーボネートとして、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、1,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート等が挙げられる。カーボネート化剤は、上述したカーボネート化剤ののうちの1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0024】
ポリカーボネートジオールとして、脂肪族のポリカーボネートジオールが好ましく、非晶性脂肪族のポリカーボネートジオールが一層好ましい。ポリカーボネートジオールの市販品として、例えば、バーノック(DIC製)、デュラノール(旭化成製)、ニッポラン(東ソー製)等が挙げられる。
【0025】
紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、酸化鉄、酸化チタン等が挙げられる。
【0026】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、例えば、2-(2‘-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2‘-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5‘-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3‘,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2‘-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2‘-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6’-tert-ブチル-4‘-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール、2-(2H-ベンソトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2,2‘-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-tert-ブチル-4-メチルフェノール等が挙げられる。
【0027】
トリアジン系紫外線吸収剤として、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイロキシ)エトキシ]フェノール、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシロキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0028】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、例えば、[2-ヒドロキシ-4-(オクチロキシ)フェニル](フェニル)メタノン等が挙げられる。
紫外線吸収剤として、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。特に、2-(4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニル、ベンゼンプロパン酸・3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ・C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステル、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシロキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジンが好ましい。
【0029】
2-(4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニル、及びベンゼンプロパン酸・3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ・C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステルは無色透明である。そのため、これらをA剤が含む場合、木材保護塗料を木材に塗付したときの外観変化を抑制できる。
【0030】
光安定化剤として、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤として、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル) ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル) セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル) セバケート、ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カルボネート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート等が挙げられる。
【0031】
ヒンダードアミン系光安定剤のうち、セバケートヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。セバケートヒンダードアミン系光安定剤として、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート等が挙げられる。
【0032】
A剤は、紫外線吸収剤及び光安定化剤を含む。A剤が紫外線吸収剤及び光安定化剤を含むことにより、木材保護塗料を木質材料に塗布した場合に、木質材料の外観の変化を抑制することができる。外観の要素として、例えば、木目や色調等が含まれる。
【0033】
混合液に含まれる、ポリカーボネートジオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート誘導体との合計質量を100質量部とする。混合液に含まれる、紫外線吸収剤及び光安定剤の合計質量をX質量部とする。Xの値は、木材保護塗料が下塗り塗料である場合よりも、木材保護塗料が上塗り塗料である場合の方が大きいことが好ましい。
【0034】
木材保護塗料が下塗り塗料である場合、Xの値は、1以上10以下であることが好ましく、2以上8以下であることが一層好ましい。木材保護塗料が上塗り塗料である場合、Xの値は、3以上20以下であることが好ましく、5以上10以下であることが一層好ましい。
【0035】
木材保護塗料が上塗り塗料である場合、A剤は艶消し剤を含んでいてもよい。艶消し剤として、例えば、シリカ系艶消し剤、合成樹脂系艶消し剤等が挙げられる。シリカ系艶消し剤として、例えば、微粉末シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。合成樹脂系艶消し剤として、例えば、ウレタンビーズ、アクリルビーズ等が挙げられる。艶消し剤の光屈折率は、例えば、3未満である。
【0036】
艶消し剤の平均粒子径は0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である場合、塗膜の光沢を抑制する効果が一層高い。
シリカ系艶消し剤の添加量は、ポリカーボネートジオールに対して10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。シリカ系艶消し剤の含有量が30質量%以下である場合、塗膜の光透過性が低下し難い。
【0037】
(1-4)B剤
B剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート、又は、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を含む。ヘキサメチレンジイソシアネートとして、例えば、アダクト型、イソシアヌレート型、ビュレット型、2官能型等が挙げられる。ヘキサメチレンジイソシアネートとして、イソシアヌレート型、ビュレット型が好ましく、イソシアヌレート型が一層好ましい。
【0038】
ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体とは、複数のヘキサメチレンジイソシアネートが化学結合した化合物である。ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体として、例えば、アダクト型、イソシアヌレート型、ビュレット型、2官能型等が挙げられる。ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体として、イソシアヌレート型、ビュレット型が好ましく、イソシアヌレート型が一層好ましい。
【0039】
アダクト型のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体と、イソシアヌレート型のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体と、ビュレット型のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体と、2官能型のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体とを図1A図1Dに示す。図1A図1DにおけるRは、ヘキサメチレン基である。
【0040】
ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体の市販品として、例えば、コロネート(東ソー製)、スミジュール、ディスモジュール(住化バイエルウレタン製)、デュラネート(旭化成製)等が挙げられる。
【0041】
混合液に含まれる、ヘキサメチレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート誘導体のNCOのモル数をMNCOとする。また、混合液に含まれる、ポリカーボネートジオールのOH基のモル数をMOHとする。MNCO/MOHの値は、0.5以上、1.5以下であることが好ましく、0.8以上、1.2以下であることが一層好ましい。
【0042】
A剤が、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとを共重合させたポリカーボネートジオールを含むとともに、B剤は、イソシアヌレート型のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を含むことが好ましい。この場合、木材表面に木材保護塗料を塗付して形成された塗膜の柔軟性と硬度のバランスとが良好になる。その結果、塗膜の耐久性が優れる。
【0043】
B剤は、例えば、硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤として、通常用いられるものを用いることができる。硬化促進剤として、例えば、アミン類、金属触媒等が挙げられる。アミン類として、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、その他のトリアミン、環状アミン、ジメチルエタノールアミン、エーテルアミン等が挙げられる。
【0044】
金属触媒として、例えば、酢酸カリウム、2-エチルへキサン酸カリウム、酢酸カルシウム、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、ビスマスネオデカノエート、ビスマスオキシカーボネート、ビスマス2-エチルヘキサノエート、オクチル酸亜鉛、亜鉛ネオデカノエート、ホスフィン、ホスホリン等が挙げられる。
【0045】
(1-5)塗膜の光透過率
木材保護塗料を塗布することで形成された厚さ0.15mmの塗膜の波長650~750nmでの光透過率は19%以上である。波長650~750nmでの光透過率は40%以上であることが好ましい。波長650~750nmでの光透過率が19%以上であることにより、塗膜の上から木材の木目を視認することが容易になる。
また、木材保護塗料を塗布することで形成された厚さ0.15mmの塗膜の波長400nmでの光透過率は80%以下である。波長400nmでの光透過率が80%以下であることにより、木材保護塗料を木材に塗付したときの外観変化を抑制することができる。
【0046】
光透過率の測定方法は以下のとおりである。基材の上にバーコータにより混合液を塗布し、厚さ0.15mmの塗膜を形成する。基材はPP板である。塗膜を形成する部分の大きさは、幅20mm、長さ40mmである。紫外・可視分光光度計(株式会社島津製作所、型番UV-2100)の積分球の前に測定試料を置き、光透過率を測定する。測定時の分解能は5nm刻みとする。
【0047】
塗膜が薄いほど、塗膜の光透過性は高くなる。混合液における高屈折率顔料の濃度が低いほど、塗膜の光透過性は高くなる。木材保護塗料が下塗り塗料である場合、混合液における高屈折率顔料の濃度は、10質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることが一層好ましい。
【0048】
木材保護塗料が上塗り塗料である場合、混合液における高屈折率顔料の濃度は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが一層好ましい。ポリカーボネートジオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート誘導体とを反応硬化させた化合物の光屈折率は1前後である。高屈折率顔料とは、光屈折率が3以上である顔料である。
【0049】
(1-6)その他の成分
木材保護塗料が上塗り塗料又は下塗り塗料である場合、A剤及びB剤のうちの一方又は両方は、必要に応じて有機溶剤を含んでいてもよい。有機材料の含有量は、例えば、0質量%以上25質量%以下である。
【0050】
有機溶剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート、又はヘキサメチレンジイソシアネート誘導体と化学反応しないことが好ましい。有機溶剤として、例えば、炭化水素、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0051】
炭化水素として、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0052】
木材保護塗料が上塗り塗料又は下塗り塗料である場合、A剤及びB剤のうちの一方又は両方は、光透過性を過度に低下させない範囲で、着色顔料を含んでいてもよい。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、キナクリドン、フタロシアニン銅等が挙げられる。
【0053】
木材保護塗料が下塗り塗料である場合、A剤及びB剤のうちの一方又は両方は、防藻防黴剤を含むことが好ましい。下塗り塗料が防藻防黴剤を含む場合、木材を屋外で使用したときでも、木材の表面に黒カビが発生することを抑制できる。
【0054】
(1-7)木材保護塗料が奏する効果
木材保護塗料を木材に塗布し、塗膜を形成することができる。塗膜の光透過性が高いので、塗膜の上から木材の木目を視認することが容易である。また、木材の色調変化を抑制することができる。
【0055】
2.建築外装用部材
(2-1)木材
建築外装用部材は木材を備える。木材の樹種は限定されない。木材の樹種として、例えば、イタヤカエデ、カバ、ブナ、ミズナラ、ケヤキ、アピトン、タモ、シオジ、ニレ、ヒノキ、ヒバ、カラマツ、アカマツ、クロマツ、ベイヒ、ダフリカ、カラマツ、サザンパイン、ベイマツ、ホワイトサイプレスパイン、ウエスタンラーチ、ツガ、アラスカイエローシダー、ベニマツ、ラジアータパイン、ベイツガ、モミ、トドマツ、エゾマツ、ベイモミ、スプルース、ロッジポールパイン、ポンデローサパイン、オウシュウアカマツ、ジャックパイン、ラワン、スギ、ベイスギ等が挙げられる。
【0056】
密度が小さく寸法変化が大きいスギ、ベイスギ等は、本来は、屋外で使用することに適さない。しかしながら、例えば、本開示の木材保護塗料を塗付し、塗膜を形成した場合、屋外で使用しても寸法変化を抑制することができる。
【0057】
各樹種の密度は以下のとおりである。かっこの中の数値は密度を表す。密度の単位はKg/mである。スギ(340)、モミ(345)、トドマツ(385)、ヒバ(408)、ヒノキ(425)、アカマツ(420)、エゾマツ(430)、カヤ(445)、カラマツ(480)、クロマツ(507)、キリ(275)、サワグルミ(300)、カツラ(448)、ミズナラ(530)、クリ(555)、ブナ(580)イタヤカエデ(600)、ケヤキ(755)、レッドウッド(340)、オウシュウアカマツ(420)、ラジアータパイン(435)、ダグラスファー(490)、バルサ(97)、ローズウッド(618)。
【0058】
木材の材種は限定されない。木材の材種として、例えば、製材、合板、単板積層材(LVL)、集成材、直交板(CLT)等が挙げられる。
(2-2)塗膜
建築外装用部材は塗膜を備える。塗膜は木材に形成されている。塗膜は、(c1)ポリカーボネートジオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート誘導体との反応生成物、(c2)紫外線吸収剤、及び(c3)光安定化剤を含む。
【0059】
ポリカーボネートジオール、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体、紫外線吸収剤、及び光安定化剤は、「1.木材保護塗料」の項で説明したものである。塗膜の一部又は全部は、例えば、本開示の木材保護塗料を塗布することで形成される。
【0060】
厚さ0.15mmの塗膜の波長650~750nmでの光透過率は19%以上である。波長650~750nmでの光透過率は40%以上であることが好ましい。波長650~750nmでの光透過率が19%以上であることにより、塗膜の上から木材の木目を視認することが容易になる。波長400nmでの光透過率が80%以下であることにより、木材保護塗料を木材に塗付したときの外観変化を抑制できる。
【0061】
塗膜は1層であってもよいし、2層以上であってもよい。例えば、塗膜は、下塗り塗料を塗布して形成された塗膜と、上塗り塗料を塗布して形成された塗膜とを含む。
(2-3)建築外装用部材が奏する効果
建築外装用部材が備える塗膜は、光透過性が高い。そのため、塗膜の上から木材の木目を視認することが容易である。また、木材の色調変化を抑制することができる。
【0062】
3.実施例
(3-1)木材保護塗料の製造
表1に示す配合により、実施例1~6及び比較例1~4の木材保護塗料を製造した。
【0063】
【表1】
【0064】
各実施例及び各比較例の木材保護塗料には、上塗り塗料と下塗り塗料とがある。上塗り塗料及び下塗り塗料は、それぞれ、A剤とB剤とを含む。表1に記載の配合量の単位は質量部である。表1に記載の組成は不揮発分である。上塗り塗料及び下塗り塗料のA剤及びB剤は、不揮発分に加えて溶媒を含む。溶媒は、80質量%の酢酸エチルと20質量%の酢酸ブチルとの混合溶媒である。溶媒の量は、上塗り塗料の場合は150質量部であり、下塗り塗料の場合は70質量部である。
【0065】
表1におけるポリカーボネートジオール1は、以下の原料から合成したものである。
エチレンカーボネート:18質量部
1,5-ペンタンジオール:10質量部
1,6-ヘキサンジオール:12質量部
表1におけるポリカーボネートジオール2は、以下の原料から合成したものである。
【0066】
エチレンカーボネート:10質量部
1,4-ブタンジオール:10質量部
1,6-ヘキサンジオール:1質量部
表1におけるヘキサメチレンジイソシアネート誘導体(ビウレット型)は、図1Aに示すものである。表1におけるヘキサメチレンジイソシアネート誘導体(イソシアヌレート型)は、図1Bに示すものである。
【0067】
表1における紫外線吸収剤は、BASF製のTinuvinであった。この紫外線吸収剤は、2-[4-([ 2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと、2-[4-([ 2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンとを、質量比が1:1となるように混合したものである。
【0068】
表1における光安定化剤は、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートである。
(3-2)建築外装用部材の製造
木材として、スギ製材を用意した。木材の寸法は、厚さ10mm、幅70mm、長さ145mmであった。各実施例及び各比較例の木材保護塗料を使用し、以下の方法で建築外装用部材を製造した。
【0069】
下塗り塗料のA剤とB剤とを混合し、混合液を調製した。混合液は、A剤の主成分を100質量部含み、B剤のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を50質量部含んでいた。A剤の主成分とは、ポリカーボネートジオール1、ポリカーボネートジオール2、ポリエーテルポリオール、又はアルキッド樹脂である。
【0070】
次に、混合液を酢酸エチルで希釈した。酢酸エチルは希釈用シンナーに対応する。次に、希釈後の混合液を木材に塗布した。塗布の方法は2回塗りとした。下塗り塗料の塗布量は表1に示す値であった。
【0071】
次に、上塗り塗料のA剤とB剤とを混合し、混合液を調製した。混合液は、A剤の主成分を100質量部含み、B剤のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体を50質量部含んでいた。A剤の主成分とは、ポリカーボネートジオール1、ポリカーボネートジオール2、又はアルキッド樹脂である。
【0072】
次に、混合液を酢酸ブチルで希釈した。酢酸ブチルは希釈用シンナーに対応する。次に、希釈後の混合液を、下塗り塗料の塗膜の上に塗布した。塗布の方法は1回塗りとした。上塗り塗料の塗布量は表1に示す値であった。
【0073】
下塗り塗料の塗膜の厚さと、上塗り塗料の塗膜の厚さとの合計値は、各実施例及び各比較例において0.15mmであった。
(3-3)木材保護塗料及び建築外装用部材の評価
塗膜の上から木材の木目を観察した。以下の基準で木目の視認性を評価した。木目の視認性は、塗膜の光透過性が高いほど良好である。
【0074】
〇:木目を視認できる。
×:木目を視認できない。
木目の視認性の評価結果は表1に示すとおりであった。
【0075】
キセノン促進耐候性試験を行った。試験条件は以下のとおりであった。波長300~400nmの光を、建築外装用部材に3000時間照射した。光の照射強度は120W/mであった。光の照射の前後に、目視で建築外装用部材を観察した。以下の基準で耐候性を評価した。
【0076】
◎:光の照射前後で、ほとんど差がない。
〇:光の照射前後で差はある。しかしながら、光の照射後の試験体を単独で観察するだけでは、変色を認識できない。
【0077】
△:光の照射前後で大きな差がある。塗膜には異常がない。
×:光の照射前後で大きな差がある。塗膜に膨れ、剥がれ、亀裂等の異常が生じている。
耐候性の評価結果は表1に示すとおりであった。
【0078】
各実施例及び各比較例について、波長300~800nmの範囲での塗膜の光透過率を測定した。測定結果を表2及び表3に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
4.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0082】
(4-1)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0083】
(4-2)上述した建築外装用部材の他、当該建築外装用部材を構成要素とするシステム、建築外装用部材の製造方法、木材保護塗料の製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
図1