(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189495
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】基板洗浄装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
H01L21/304 644C
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098099
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】篠原 智之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 吉文
(72)【発明者】
【氏名】沖田 展彬
(72)【発明者】
【氏名】篠原 敬
(72)【発明者】
【氏名】石井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】中村 一樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 拓馬
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA14
5F157AA16
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157AC23
5F157BA02
5F157BA03
5F157BA13
5F157BA14
5F157BA31
5F157BA41
5F157BB23
5F157BB24
5F157BB37
5F157BB45
5F157CB16
5F157DB02
5F157DC51
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】大型化が防止されつつ効率的に基板を洗浄可能な基板洗浄装置を提供する。
【解決手段】基板洗浄装置は、基板保持部、第1の洗浄具、第2の洗浄具および第3の洗浄具を含む。基板保持部は、円形状の基板Wを水平姿勢で保持する。第1の洗浄具は、平面視において、基板Wの外縁の点P1を通るように基板Wの上方で走査されることにより基板Wの上面を洗浄する。第2の洗浄具は、平面視において、基板Wの外縁の点P2に接触することにより基板Wの外周端部を洗浄する。点P1と点P2とを通る仮想的な直線L1と、基板Wの中心P0を通りかつ直線L1に平行な仮想的な直線L2とが定義される。第3の洗浄具は、基板Wの下方でかつ直線L2を挟んで第1の洗浄具および第2の洗浄具と反対の領域に配置され、基板Wの下面を洗浄する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形状の基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、
平面視において、前記基板の外縁の第1の点を通るように前記基板の上方で走査されることにより前記基板の上面を洗浄する第1の洗浄具と、
平面視において、前記基板の外縁の第2の点に接触することにより前記基板の外周端部を洗浄する第2の洗浄具と、
前記基板の下面を洗浄する第3の洗浄具とを備え、
前記第1の点と前記第2の点とを通る仮想的な第1の直線と、前記基板の中心を通りかつ前記第1の直線に平行な仮想的な第2の直線とが定義され、
前記第3の洗浄具は、前記基板の下方でかつ前記第2の直線を挟んで前記第1の洗浄具および前記第2の洗浄具と反対の領域に配置される、基板洗浄装置。
【請求項2】
平面視において前記基板の中心から前記第3の洗浄具の幾何学的中心に向かって延びる仮想的な第3の直線と、平面視において前記第3の直線が通る前記基板の外縁の第3の点がさらに定義され、
前記基板の中心が前記第1の点、前記第2の点および前記第3の点を頂点とする三角形の領域内に位置するように前記第1の洗浄具、前記第2の洗浄具および前記第3の洗浄具が配置される、請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
平面視において前記基板の中心から前記第1の点に向かって延びる仮想的な第4の直線と、平面視において前記基板の中心から前記第2の点に向かって延びる仮想的な第5の直線とがさらに定義され、
前記第3の直線と前記第4の直線との間の第1の角度、前記第4の直線と前記第5の直線との間の第2の角度、および前記第5の直線と前記第3の直線との間の第3の角度の各々が80度以上である、請求項2記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記第1の角度、前記第2の角度および前記第3の角度の各々が90度以上である、請求項3記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記第1の角度は、前記第2の角度よりも大きい、請求項3または4記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記第3の角度は、前記第2の角度よりも大きい、請求項3~5のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記第1の洗浄具は、平面視において、前記基板の中心から前記第1の点に向かって走査されることにより前記基板の上面を洗浄する、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
前記基板保持部および前記第3の洗浄具の各々は、円形の外形を有し、
前記第3の洗浄具の直径は、前記基板保持部の直径よりも大きい、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
前記第3の洗浄具は、円形の外形を有し、
前記第3の洗浄具の直径は、前記基板の直径の1/3よりも大きい、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を洗浄する基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等の各種基板に種々の処理を行うために、基板処理装置が用いられている。基板を洗浄するためには、基板洗浄装置が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された基板洗浄装置は、ウエハの裏面周縁部を保持する2つの吸着パッド、ウエハの裏面中央部を保持するスピンチャック、およびウエハの裏面を洗浄するブラシを備える。2つの吸着パッドがウエハを保持するとともに横方向に移動する。この状態で、ウエハの裏面中央部がブラシで洗浄される。その後、スピンチャックが吸着パッドからウエハを受け取り、スピンチャックがウエハの裏面中央部を保持しつつ回転する。この状態で、ウエハの裏面周縁部がブラシで洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の基板洗浄装置において、基板の裏面だけでなく、基板の表面を洗浄する場合には、基板の表面を洗浄するための別の洗浄装置に基板を搬送する必要がある。この場合、スループットが低下するとともに、基板洗浄のためのシステム全体のフットプリントが増加する。そのため、大型化が防止されつつ効率的に基板を洗浄可能な基板洗浄装置が望まれる。
【0006】
本発明の目的は、大型化が防止されつつ効率的に基板を洗浄可能な基板洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る基板洗浄装置は、円形状の基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、平面視において、基板の外縁の第1の点を通るように基板の上方で走査されることにより基板の上面を洗浄する第1の洗浄具と、平面視において、基板の外縁の第2の点に接触することにより基板の外周端部を洗浄する第2の洗浄具と、基板の下面を洗浄する第3の洗浄具とを備え、第1の点と第2の点とを通る仮想的な第1の直線と、基板の中心を通りかつ第1の直線に平行な仮想的な第2の直線とが定義され、第3の洗浄具は、基板の下方でかつ第2の直線を挟んで第1の洗浄具および第2の洗浄具と反対の領域に配置される。
【0008】
この基板洗浄装置においては、基板の洗浄時に、第1の洗浄具、第2の洗浄具および第3の洗浄具が比較的大きく離間して配置される。そのため、基板の上面、外周端部および下面をそれぞれ第1の洗浄具、第2の洗浄具および第3の洗浄具により同時に洗浄した場合でも、いずれかの洗浄具から発生した汚染物質が他の洗浄具に付着することがほとんどない。したがって、基板の複数の部分をそれぞれ洗浄する複数の装置を設ける必要がなく、複数の装置間で基板を移動させる必要もない。その結果、基板洗浄装置の大型化を防止しつつ基板を効率的に洗浄することができる。
【0009】
(2)平面視において基板の中心から第3の洗浄具の幾何学的中心に向かって延びる仮想的な第3の直線と、平面視において第3の直線が通る基板の外縁の第3の点がさらに定義され、基板の中心が第1の点、第2の点および第3の点を頂点とする三角形状の領域内に位置するように第1の洗浄具、第2の洗浄具および第3の洗浄具が配置されてもよい。この場合、基板の洗浄時に、第1の洗浄具、第2の洗浄具および第3の洗浄具が大きく離間する。これにより、いずれかの洗浄具から発生した汚染物質が他の洗浄具に付着することを防止することができる。
【0010】
(3)平面視において基板の中心から第1の点に向かって延びる仮想的な第4の直線と、平面視において基板の中心から第2の点に向かって延びる仮想的な第5の直線とがさらに定義され、第3の直線と第4の直線との間の第1の角度、第4の直線と第5の直線との間の第2の角度、および第5の直線と第3の直線との間の第3の角度の各々が80度以上であってもよい。この場合、基板の洗浄時に、第1の洗浄具、第2の洗浄具および第3の洗浄具がより大きく離間する。これにより、いずれかの洗浄具から発生した汚染物質が他の洗浄具に付着することがより確実に防止される。
【0011】
(4)第1の角度、第2の角度および第3の角度の各々が90度以上であってもよい。この場合、基板の洗浄時に、第1の洗浄具、第2の洗浄具および第3の洗浄具がさらに大きく離間する。これにより、いずれかの洗浄具から発生した汚染物質が他の洗浄具に付着することがさらに確実に防止される。
【0012】
(5)第1の角度は、第2の角度よりも大きくてもよい。この場合、基板の洗浄時に、第1の洗浄具と第3の洗浄具とが比較的大きく離間するので、第3の洗浄具が比較的大型である場合でも、第1の洗浄具および第3の洗浄具の一方から発生した汚染物質が他方に付着することがない。そのため、基板の下面を第3の洗浄具により効率よく洗浄することができる。
【0013】
(6)第3の角度は、第2の角度よりも大きくてもよい。この場合、基板の洗浄時に、第2の洗浄具と第3の洗浄具とが比較的大きく離間するので、第3の洗浄具が比較的大型である場合でも、第2の洗浄具および第3の洗浄具の一方から発生した汚染物質が他方に付着することがない。そのため、基板の下面を第3の洗浄具により効率よく洗浄することができる。
【0014】
(7)第1の洗浄具は、平面視において、基板の中心から第1の点に向かって走査されることにより基板の上面を洗浄してもよい。この場合、第1の洗浄具から発生した汚染物質が第2の洗浄具または第3の洗浄具に付着することがほとんどない。同様に、第2の洗浄具または第3の洗浄具から発生した汚染物質が第1の洗浄具に付着することがほとんどない。そのため、簡単な構成で基板の上面を第1の洗浄具により効率よく洗浄することができる。
【0015】
(8)基板保持部および第3の洗浄具の各々は、円形の外形を有し、第3の洗浄具の直径は、基板保持部の直径よりも大きくてもよい。この場合、基板の下面を比較的大型の第3の洗浄具により効率よく洗浄することができる。
【0016】
(9)第3の洗浄具は、円形の外形を有し、第3の洗浄具の直径は、基板の直径の1/3よりも大きくてもよい。この場合、基板の下面を比較的大型の第3の洗浄具により効率よく洗浄することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板洗浄装置の大型化を防止しつつ効率的に基板を洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る基板洗浄装置の模式的平面図である。
【
図2】
図1の基板洗浄装置の内部構成を示す外観斜視図である。
【
図3】
図1の基板洗浄装置の制御系統の構成を示すブロック図である。
【
図5】洗浄具のより好ましい位置関係を示す平面図である。
【
図6】洗浄具のさらに好ましい位置関係を示す平面図である。
【
図7】
図1の基板洗浄装置の概略動作を説明するための模式図である。
【
図8】
図1の基板洗浄装置の概略動作を説明するための模式図である。
【
図9】
図1の基板洗浄装置の概略動作を説明するための模式図である。
【
図10】
図1の基板洗浄装置の概略動作を説明するための模式図である。
【
図11】
図1の基板洗浄装置の概略動作を説明するための模式図である。
【
図12】
図1の基板洗浄装置の概略動作を説明するための模式図である。
【
図13】
図1の基板洗浄装置の概略動作を説明するための模式図である。
【
図14】
図1の基板洗浄装置の概略動作を説明するための模式図である。
【
図15】
図1の基板洗浄装置の概略動作を説明するための模式図である。
【
図16】
図1の基板洗浄装置の概略動作を説明するための模式図である。
【
図17】
図1の基板洗浄装置の概略動作を説明するための模式図である。
【
図18】
図1の基板洗浄装置の概略動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る基板洗浄装置について図面を用いて説明する。以下の説明において、基板とは、半導体基板、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。また、本実施の形態で用いられる基板は、少なくとも一部が円形の外周部を有する。例えば、位置決め用のノッチを除く外周部が円形を有する。
【0020】
(1)基板処理装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る基板洗浄装置の模式的平面図である。
図2は、
図1の基板洗浄装置1の内部構成を示す外観斜視図である。本実施の形態に係る基板洗浄装置1においては、位置関係を明確にするために互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を定義する。
図1および
図2以降の所定の図では、X方向、Y方向およびZ方向が適宜矢印で示される。X方向およびY方向は水平面内で互いに直交し、Z方向は鉛直方向に相当する。
【0021】
図1に示すように、基板洗浄装置1は、上側保持装置10A,10B、下側保持装置20、台座装置30、受渡装置40、下面洗浄装置50、カップ装置60、上面洗浄装置70、端部洗浄装置80および開閉装置90を備える。これらの構成要素は、ユニット筐体2内に設けられる。
図2では、ユニット筐体2が点線で示される。
【0022】
ユニット筐体2は、矩形の底面部2aと、底面部2aの4辺から上方に延びる4つの側壁部2b,2c,2d,2eとを有する。側壁部2b,2cが互いに対向し、側壁部2d,2eが互いに対向する。側壁部2bの中央部には、矩形の開口が形成されている。この開口は、基板Wの搬入搬出口2xであり、ユニット筐体2に対する基板Wの搬入時および搬出時に用いられる。
図2では、搬入搬出口2xが太い点線で示される。以下の説明においては、Y方向のうちユニット筐体2の内部から搬入搬出口2xを通してユニット筐体2の外方に向く方向(側壁部2cから側壁部2bを向く方向)を前方と呼び、その逆の方向(側壁部2bから側壁部2cを向く方向)を後方と呼ぶ。
【0023】
側壁部2bにおける搬入搬出口2xの形成部分およびその近傍の領域には、開閉装置90が設けられている。開閉装置90は、搬入搬出口2xを開閉可能に構成されたシャッタ91と、シャッタ91を駆動するシャッタ駆動部92とを含む。
図2では、シャッタ91が太い二点鎖線で示される。シャッタ駆動部92は、基板洗浄装置1に対する基板Wの搬入時および搬出時に搬入搬出口2xを開放するようにシャッタ91を駆動する。また、シャッタ駆動部92は、基板洗浄装置1における基板Wの洗浄時に搬入搬出口2xを閉塞するようにシャッタ91を駆動する。
【0024】
底面部2aの中央部には、台座装置30が設けられている。台座装置30は、リニアガイド31、可動台座32および台座駆動部33を含む。リニアガイド31は、2本のレールを含み、平面視で側壁部2bの近傍から側壁部2cの近傍までY方向に延びるように設けられている。可動台座32は、リニアガイド31の2本のレール上でY方向に移動可能に設けられている。台座駆動部33は、例えばパルスモータを含み、リニアガイド31上で可動台座32をY方向に移動させる。
【0025】
可動台座32上には、下側保持装置20および下面洗浄装置50がY方向に並ぶように設けられている。下側保持装置20は、吸着保持部21および吸着保持駆動部22を含む。吸着保持部21は、いわゆるスピンチャックであり、基板Wの下面を吸着保持可能な円形の吸着面を有し、上下方向に延びる軸(Z方向の軸)の周りで回転可能に構成される。以下の説明では、吸着保持部21により基板Wが吸着保持される際に、基板Wの下面のうち吸着保持部21の吸着面が吸着すべき領域を下面中央領域と呼ぶ。一方、基板Wの下面のうち下面中央領域を取り囲む領域を下面外側領域と呼ぶ。
【0026】
吸着保持駆動部22は、モータを含む。吸着保持駆動部22のモータは、回転軸が上方に向かって突出するように可動台座32上に設けられている。吸着保持部21は、吸着保持駆動部22の回転軸の上端部に取り付けられる。また、吸着保持駆動部22の回転軸には、吸着保持部21において基板Wを吸着保持するための吸引経路が形成されている。その吸引経路は、図示しない吸気装置に接続されている。吸着保持駆動部22は、吸着保持部21を上記の回転軸の周りで回転させる。
【0027】
可動台座32上には、下側保持装置20の近傍にさらに受渡装置40が設けられている。受渡装置40は、複数(本例では3本)の支持ピン41、ピン連結部材42およびピン昇降駆動部43を含む。ピン連結部材42は、平面視で吸着保持部21を取り囲むように形成され、複数の支持ピン41を連結する。複数の支持ピン41は、ピン連結部材42により互いに連結された状態で、ピン連結部材42から一定長さ上方に延びる。ピン昇降駆動部43は、可動台座32上でピン連結部材42を昇降させる。これにより、複数の支持ピン41が吸着保持部21に対して相対的に昇降する。
【0028】
下面洗浄装置50は、下面ブラシ51、2つの液ノズル52、気体噴出部53、昇降支持部54、移動支持部55、下面ブラシ回転駆動部55a、下面ブラシ昇降駆動部55bおよび下面ブラシ移動駆動部55cを含む。移動支持部55は、可動台座32上の一定領域内で下側保持装置20に対してY方向に移動可能に設けられている。
図2に示すように、移動支持部55上に、昇降支持部54が昇降可能に設けられている。昇降支持部54は、吸着保持部21から遠ざかる方向(本例では後方)において斜め下方に傾斜する上面54uを有する。
【0029】
図1に示すように、下面ブラシ51は、平面視において円形の外形を有し、本実施の形態においては比較的大型に形成される。具体的には、下面ブラシ51の直径は、吸着保持部21の吸着面の直径よりも大きく、例えば吸着保持部21の吸着面の直径の1.3倍である。また、下面ブラシ51の直径は、基板Wの直径の1/3よりも大きくかつ1/2よりも小さい。なお、基板Wの直径は、例えば300mmである。
【0030】
下面ブラシ51は、基板Wの下面に接触可能な洗浄面を有する。また、下面ブラシ51は、洗浄面が上方を向くようにかつ洗浄面が当該洗浄面の中心を通って上下方向に延びる軸の周りで回転可能となるように、昇降支持部54の上面54uに取り付けられている。
【0031】
2つの液ノズル52の各々は、下面ブラシ51の近傍に位置しかつ液体吐出口が上方を向くように、昇降支持部54の上面54u上に取り付けられている。液ノズル52には、下面洗浄液供給部56(
図3)が接続されている。下面洗浄液供給部56は、液ノズル52に洗浄液を供給する。液ノズル52は、下面ブラシ51による基板Wの洗浄時に、下面洗浄液供給部56から供給される洗浄液を基板Wの下面に吐出する。本実施の形態では、液ノズル52に供給される洗浄液として純水が用いられる。
【0032】
気体噴出部53は、一方向に延びる気体噴出口を有するスリット状の気体噴射ノズルである。気体噴出部53は、平面視で下面ブラシ51と吸着保持部21との間に位置しかつ気体噴射口が上方を向くように、昇降支持部54の上面54uに取り付けられている。気体噴出部53には、噴出気体供給部57(
図3)が接続されている。噴出気体供給部57は、気体噴出部53に気体を供給する。本実施の形態では、気体噴出部53に供給される気体として窒素ガス等の不活性ガスが用いられる。気体噴出部53は、下面ブラシ51による基板Wの洗浄時および後述する基板Wの下面の乾燥時に、噴出気体供給部57から供給される気体を基板Wの下面に噴射する。この場合、下面ブラシ51と吸着保持部21との間に、X方向に延びる帯状の気体カーテンが形成される。
【0033】
下面ブラシ回転駆動部55aは、モータを含み、下面ブラシ51による基板Wの洗浄時に下面ブラシ51を回転させる。下面ブラシ昇降駆動部55bは、ステッピングモータまたはエアシリンダを含み、移動支持部55に対して昇降支持部54を昇降させる。下面ブラシ移動駆動部55cは、モータを含み、可動台座32上で移動支持部55をY方向に移動させる。ここで、可動台座32における下側保持装置20の位置は固定されている。そのため、下面ブラシ移動駆動部55cによる移動支持部55のY方向の移動時には、移動支持部55が下側保持装置20に対して相対的に移動する。以下の説明では、可動台座32上で下側保持装置20に最も近づくときの下面洗浄装置50の位置を接近位置と呼び、可動台座32上で下側保持装置20から最も離れたときの下面洗浄装置50の位置を離間位置と呼ぶ。
【0034】
底面部2aの中央部には、さらにカップ装置60が設けられている。カップ装置60は、カップ61およびカップ駆動部62を含む。カップ61は、平面視で下側保持装置20および台座装置30を取り囲むようにかつ昇降可能に設けられている。
図2においては、カップ61が点線で示される。カップ駆動部62は、下面ブラシ51が基板Wの下面におけるどの部分を洗浄するのかに応じてカップ61を下カップ位置と上カップ位置との間で移動させる。下カップ位置はカップ61の上端部が吸着保持部21により吸着保持される基板Wよりも下方にある高さ位置である。また、上カップ位置はカップ61の上端部が吸着保持部21よりも上方にある高さ位置である。
【0035】
カップ61よりも上方の高さ位置には、平面視で台座装置30を挟んで対向するように一対の上側保持装置10A,10Bが設けられている。上側保持装置10Aは、下チャック11A、上チャック12A、下チャック駆動部13Aおよび上チャック駆動部14Aを含む。上側保持装置10Bは、下チャック11B、上チャック12B、下チャック駆動部13Bおよび上チャック駆動部14Bを含む。
【0036】
下チャック11A,11Bは、平面視で吸着保持部21の中心を通ってY方向(前後方向)に延びる鉛直面に関して対称に配置され、共通の水平面内でX方向に移動可能に設けられている。下チャック11A,11Bの各々は、基板Wの下面周縁部を基板Wの下方から支持可能な2本の支持片を有する。下チャック駆動部13A,13Bは、下チャック11A,11Bが互いに近づくように、または下チャック11A,11Bが互いに遠ざかるように、下チャック11A,11Bを移動させる。
【0037】
上チャック12A,12Bは、下チャック11A,11Bと同様に、平面視で吸着保持部21の中心を通ってY方向(前後方向)に延びる鉛直面に関して対称に配置され、共通の水平面内でX方向に移動可能に設けられている。上チャック12A,12Bの各々は、基板Wの外周端部の2つの部分に当接して基板Wの外周端部を保持可能に構成された2本の保持片を有する。上チャック駆動部14A,14Bは、上チャック12A,12Bが互いに近づくように、または上チャック12A,12Bが互いに遠ざかるように、上チャック12A,12Bを移動させる。
【0038】
図1に示すように、カップ61の一側方においては、平面視で上側保持装置10Bの近傍に位置するように、上面洗浄装置70が設けられている。上面洗浄装置70は、回転支持軸71、アーム72、スプレーノズル73および上面洗浄駆動部74を含む。
【0039】
回転支持軸71は、底面部2a上で、上下方向に延びるようにかつ昇降可能かつ回転可能に上面洗浄駆動部74により支持される。アーム72は、
図2に示すように、上側保持装置10Bよりも上方の位置で、回転支持軸71の上端部から水平方向に延びるように設けられている。アーム72の先端部には、スプレーノズル73が取り付けられている。
【0040】
スプレーノズル73には、上面洗浄流体供給部75(
図3)が接続される。上面洗浄流体供給部75は、スプレーノズル73に洗浄液および気体を供給する。本実施の形態では、スプレーノズル73に供給される洗浄液として純水が用いられ、スプレーノズル73に供給される気体として窒素ガス等の不活性ガスが用いられる。スプレーノズル73は、基板Wの上面の洗浄時に、上面洗浄流体供給部75から供給される洗浄液と気体とを混合して混合流体を生成し、生成された混合流体を下方に噴射する。
【0041】
上面洗浄駆動部74は、1または複数のパルスモータおよびエアシリンダ等を含み、回転支持軸71を昇降させるとともに、回転支持軸71を回転させる。上記の構成によれば、吸着保持部21により吸着保持されて回転される基板Wの上面上で、スプレーノズル73を円弧状に移動させることにより、基板Wの上面全体を洗浄することができる。
【0042】
図1に示すように、カップ61の他側方においては、平面視で上側保持装置10Aの近傍に位置するように、端部洗浄装置80が設けられている。端部洗浄装置80は、回転支持軸81、アーム82、ベベルブラシ83およびベベルブラシ駆動部84を含む。
【0043】
回転支持軸81は、底面部2a上で、上下方向に延びるようにかつ昇降可能かつ回転可能にベベルブラシ駆動部84により支持される。アーム82は、
図2に示すように、上側保持装置10Aよりも上方の位置で、回転支持軸81の上端部から水平方向に延びるように設けられている。アーム82の先端部には、下方に向かって突出するようにかつ上下方向の軸の周りで回転可能となるようにベベルブラシ83が設けられている。
【0044】
ベベルブラシ83は、上半部が逆円錐台形状を有するとともに下半部が円錐台形状を有する。このベベルブラシ83によれば、外周面の上下方向における中央部分で基板Wの外周端部を洗浄することができる。
【0045】
ベベルブラシ駆動部84は、1または複数のパルスモータおよびエアシリンダ等を含み、回転支持軸81を昇降させるとともに、回転支持軸81を回転させる。上記の構成によれば、吸着保持部21により吸着保持されて回転される基板Wの外周端部にベベルブラシ83の外周面の中央部分を接触させることにより、基板Wの外周端部全体を洗浄することができる。
【0046】
ここで、ベベルブラシ駆動部84は、さらにアーム82に内蔵されるモータを含む。そのモータは、アーム82の先端部に設けられるベベルブラシ83を上下方向の軸の周りで回転させる。したがって、基板Wの外周端部の洗浄時に、ベベルブラシ83が回転することにより、基板Wの外周端部におけるベベルブラシ83の洗浄力が向上する。
【0047】
図3は、
図1の基板洗浄装置1の制御系統の構成を示すブロック図である。
図3の制御部9は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)および記憶装置を含む。RAMは、CPUの作業領域として用いられる。ROMは、システムプログラムを記憶する。記憶装置は、制御プログラムを記憶する。CPUが記憶装置に記憶された基板洗浄プログラムをRAM上で実行することにより基板洗浄装置1の各部の動作が制御される。
【0048】
図3に示すように、制御部9は、主として、基板洗浄装置1に搬入される基板Wを受け取り、吸着保持部21の上方の位置で保持するために、下チャック駆動部13A,13Bおよび上チャック駆動部14A,14Bを制御する。また、制御部9は、主として、吸着保持部21により基板Wを吸着保持するとともに吸着保持された基板Wを回転させるために、吸着保持駆動部22を制御する。
【0049】
また、制御部9は、主として、上側保持装置10A,10Bにより保持される基板Wに対して可動台座32を移動させるために、台座駆動部33を制御する。また、制御部9は、上側保持装置10A,10Bにより保持される基板Wの高さ位置と、吸着保持部21により保持される基板Wの高さ位置との間で基板Wを移動させるために、ピン昇降駆動部43を制御する。
【0050】
また、制御部9は、基板Wの下面を洗浄するために、下面ブラシ回転駆動部55a、下面ブラシ昇降駆動部55b、下面ブラシ移動駆動部55c、下面洗浄液供給部56および噴出気体供給部57を制御する。また、制御部9は、吸着保持部21により吸着保持された基板Wの洗浄時に基板Wから飛散する洗浄液をカップ61で受け止めるために、カップ駆動部62を制御する。
【0051】
また、制御部9は、吸着保持部21により吸着保持された基板Wの上面を洗浄するために、上面洗浄駆動部74および上面洗浄流体供給部75を制御する。また、制御部9は、吸着保持部21により吸着保持された基板Wの外周端部を洗浄するために、ベベルブラシ駆動部84を制御する。さらに、制御部9は、基板洗浄装置1における基板Wの搬入時および搬出時にユニット筐体2の搬入搬出口2xを開閉するために、シャッタ駆動部92を制御する。
【0052】
(2)洗浄具の位置関係
本実施の形態では、同一のユニット筐体2内で、スプレーノズル73による基板Wの上面の洗浄と、ベベルブラシ83による基板Wの外周端部の洗浄と、下面ブラシ51による基板Wの下面外側領域の洗浄とが同時に行われる。以下の説明では、スプレーノズル73、ベベルブラシ83および下面ブラシ51の各々を洗浄具と呼ぶ。
【0053】
複数の洗浄具の配置によっては、いずれかの洗浄具から発生した汚染物質が他の洗浄具に付着することがある。この場合、洗浄具から基板Wに汚染物質が付着することにより、基板Wの洗浄効率が低下する。そこで、各洗浄具は、互いへの干渉の影響が小さくなるように配置される。
【0054】
図4は、洗浄具の位置関係を示す平面図である。
図4の一点鎖線に示すように、スプレーノズル73は、基板Wの上面の洗浄時に、
図1の上面洗浄駆動部74により基板Wの中心P0の上方に移動される。その後、
図4の太い矢印で示すように、スプレーノズル73は、混合流体を噴射しつつ、円の軌道に沿って基板Wの外方に走査される。このとき、平面視において、スプレーノズル73の外縁と接する基板Wの外縁の点をP1と呼ぶ。
【0055】
ベベルブラシ83は、基板Wの外周端部の洗浄時に、
図1のベベルブラシ駆動部84により基板Wの外周端部に接触される。平面視において、ベベルブラシ83と接する基板Wの外縁の点をP2と呼ぶ。ここで、点P1と点P2を通る仮想的な直線をL1とする。また、基板Wの中心P0を通りかつ直線L1に平行な仮想的な直線をL2とする。
【0056】
下面ブラシ51は、基板Wの下面外側領域の洗浄時に、
図1の台座駆動部33により基板Wの下方でかつ直線L2を挟んでスプレーノズル73およびベベルブラシ83と反対の領域に配置される。なお、
図4に示すように、本実施の形態では、下面ブラシ51は、その一部が基板Wから外方にはみ出すように配置されるが、実施の形態はこれに限定されない。下面ブラシ51は、その外縁が基板Wの外縁と重なるように配置されてもよい。
【0057】
図4の洗浄具の配置によれば、基板Wの洗浄時に、スプレーノズル73、ベベルブラシ83および下面ブラシ51が比較的大きく離間する。そのため、基板Wの上面、外周端部および下面をそれぞれスプレーノズル73、ベベルブラシ83および下面ブラシ51により同時に洗浄した場合でも、いずれかの洗浄具から発生した汚染物質が他の洗浄具に付着することがほとんどない。
【0058】
図5は、洗浄具のより好ましい位置関係を示す平面図である。
図5に示すように、平面視において、基板Wの中心P0から下面ブラシ51の幾何学的中心に向かって延びる仮想的な直線(半直線)をL3とする。また、平面視において、直線L3が通る基板Wの外縁の点をP3とする。この場合、点P1、点P2および点P3を頂点とする三角形状の領域Rが形成される。
【0059】
スプレーノズル73、ベベルブラシ83および下面ブラシ51は、基板Wの中心P0が領域R内に位置するように配置されることが好ましい。この場合、基板洗浄装置1の洗浄時に、スプレーノズル73、ベベルブラシ83および下面ブラシ51が大きく離間する。そのため、いずれかの洗浄具から発生した汚染物質が他の洗浄具に付着することを防止することができる。
【0060】
図6は、洗浄具のさらに好ましい位置関係を示す平面図である。
図6に示すように、平面視において、基板Wの中心から点P1に向かって延びる仮想的な直線(半直線)をL4とし、基板Wの中心から点P2に向かって延びる仮想的な直線(半直線)をL5とする。また、直線L3と直線L4との間の角度をθ1とし、直線L4と直線L5との間の角度をθ2とし、直線L5と直線L3との間の角度をθ3とする。なお、角度θ1と角度θ2と角度θ3との和は360度である。
【0061】
角度θ1,θ2,θ3の各々は、80度以上であることが好ましい。この場合、基板Wの洗浄時に、スプレーノズル73、ベベルブラシ83および下面ブラシ51がより大きく離間する。これにより、いずれかの洗浄具から発生した汚染物質が他の洗浄具に付着することがより確実に防止される。
【0062】
また、角度θ1,θ2,θ3の各々は、90度以上であることがより好ましい。この場合、スプレーノズル73、ベベルブラシ83および下面ブラシ51がさらに大きく離間する。これにより、いずれかの洗浄具から発生した汚染物質が他の洗浄具に付着することがさらに確実に防止される。
【0063】
角度θ1は、角度θ2よりも大きいことが好ましい。この場合、スプレーノズル73と下面ブラシ51とが比較的大きく離間するので、下面ブラシ51が比較的大型である場合でも、スプレーノズル73および下面ブラシ51の一方から発生した汚染物質が他方に付着することがない。そのため、基板Wの下面を比較的大型の下面ブラシ51により効率よく洗浄することができる。
【0064】
角度θ3は、角度θ2よりも大きいことがさらに好ましい。この場合、ベベルブラシ83と下面ブラシ51とが比較的大きく離間するので、下面ブラシ51が比較的大型である場合でも、ベベルブラシ83および下面ブラシ51の一方から発生した汚染物質が他方に付着することがない。そのため、基板Wの下面を比較的大型の下面ブラシ51により効率よく洗浄することができる。
【0065】
(3)基板洗浄装置の概略動作
図7~
図18は、
図1の基板洗浄装置1の概略動作を説明するための模式図である。
図7~
図18の各々においては、上段に基板洗浄装置1の平面図が示される。また、中段にY方向に沿って見た下側保持装置20およびその周辺部の側面図が示され、下段にX方向に沿って見た下側保持装置20およびその周辺部の側面図が示される。中段の側面図は
図1のA-A線側面図に対応し、下段の側面図は
図1のB-B線側面図に対応する。なお、基板洗浄装置1における各構成要素の形状および動作状態の理解を容易にするために、上段の平面図と中段および下段の側面図との間では、一部の構成要素の拡縮率が異なる。また、
図7~
図18では、カップ61が二点鎖線で示されるとともに、基板Wの外形が太い一点鎖線で示される。
【0066】
基板洗浄装置1に基板Wが搬入される前の初期状態においては、開閉装置90のシャッタ91が搬入搬出口2xを閉塞している。また、
図1に示されるように、下チャック11A,11Bは、互いの距離が基板Wの直径よりも十分に大きくなる状態で維持されている。また、上チャック12A,12Bも、互いの距離が基板Wの直径よりも十分に大きくなる状態で維持されている。また、台座装置30の可動台座32は、平面視で吸着保持部21の中心がカップ61の中心に位置するように配置されている。可動台座32上で下面洗浄装置50は、接近位置に配置されている。下面洗浄装置50の昇降支持部54は、下面ブラシ51の洗浄面(上端部)が吸着保持部21よりも下方の位置にある。
【0067】
また、受渡装置40においては、複数の支持ピン41が吸着保持部21よりも下方に位置する状態にある。さらに、カップ装置60においては、カップ61は下カップ位置にある。以下の説明では、平面視におけるカップ61の中心位置を平面基準位置rpと呼ぶ。また、平面視で吸着保持部21の中心が平面基準位置rpにあるときの底面部2a上の可動台座32の位置を第1の水平位置と呼ぶ。
【0068】
基板洗浄装置1のユニット筐体2内に基板Wが搬入される。具体的には、基板Wの搬入の直前にシャッタ91が搬入搬出口2xを開放する。その後、
図7に太い実線の矢印a1で示すように、図示しない基板搬送ロボットのハンド(基板保持部)RHが搬入搬出口2xを通してユニット筐体2内の略中央の位置に基板Wを搬入する。このとき、ハンドRHにより保持される基板Wは、
図7に示すように、下チャック11Aおよび上チャック12Aと下チャック11Bおよび上チャック12Bとの間に位置する。
【0069】
次に、
図8に太い実線の矢印a2で示すように、下チャック11A,11Bの複数の支持片が基板Wの下面周縁部の下方に位置するように、下チャック11A,11Bが互いに近づく。この状態で、ハンドRHが下降し、搬入搬出口2xから退出する。それにより、ハンドRHに保持された基板Wの下面周縁部の複数の部分が、下チャック11A,11Bの複数の支持片により支持される。ハンドRHの退出後、シャッタ91は搬入搬出口2xを閉塞する。
【0070】
次に、
図9に太い実線の矢印a3で示すように、上チャック12A,12Bの複数の保持片が基板Wの外周端部に当接するように、上チャック12A,12Bが互いに近づく。上チャック12A,12Bの複数の保持片が基板Wの外周端部の複数の部分に当接することにより、下チャック11A,11Bにより支持された基板Wが上チャック12A,12Bによりさらに保持される。また、
図9に太い実線の矢印a4で示すように、吸着保持部21が平面基準位置rpから所定距離ずれるとともに下面ブラシ51の中心が平面基準位置rpに位置するように、可動台座32が第1の水平位置から前方に移動する。このとき、底面部2a上に位置する可動台座32の位置を第2の水平位置と呼ぶ。
【0071】
次に、
図10に太い実線の矢印a5で示すように、下面ブラシ51の洗浄面が基板Wの下面中央領域に接触するように、昇降支持部54が上昇する。また、
図10に太い実線の矢印a6で示すように、下面ブラシ51が上下方向の軸の周りで回転(自転)する。それにより、基板Wの下面中央領域に付着する汚染物質が下面ブラシ51により物理的に剥離される。
【0072】
図10の下段には、下面ブラシ51が基板Wの下面に接触する部分の拡大側面図が吹き出し内に示される。その吹き出し内に示されるように、下面ブラシ51が基板Wに接触する状態で、液ノズル52および気体噴出部53は、基板Wの下面に近接する位置に保持される。このとき、液ノズル52は、白抜きの矢印a51で示すように、下面ブラシ51の近傍の位置で基板Wの下面に向かって洗浄液を吐出する。これにより、液ノズル52から基板Wの下面に供給された洗浄液が下面ブラシ51と基板Wとの接触部に導かれることにより、下面ブラシ51により基板Wの裏面から除去された汚染物質が洗浄液により洗い流される。このように、下面洗浄装置50においては、液ノズル52が下面ブラシ51とともに昇降支持部54に取り付けられている。それにより、下面ブラシ51による基板Wの下面の洗浄部分に効率よく洗浄液を供給することができる。したがって、洗浄液の消費量が低減されるとともに洗浄液の過剰な飛散が抑制される。
【0073】
ここで、昇降支持部54の上面54uは、吸着保持部21から遠ざかる方向において斜め下方に傾斜している。この場合、基板Wの下面から汚染物質を含む洗浄液が昇降支持部54上に落下する場合に、上面54uによって受け止められた洗浄液が吸着保持部21から遠ざかる方向に導かれる。
【0074】
また、下面ブラシ51による基板Wの下面の洗浄時には、気体噴出部53が、
図10の吹き出し内に白抜きの矢印a52で示すように、下面ブラシ51と吸着保持部21との間の位置で基板Wの下面に向かって気体を噴射する。本実施の形態においては、気体噴出部53は、気体噴射口がX方向に延びるように昇降支持部54上に取り付けられている。この場合、気体噴出部53から基板Wの下面に気体が噴射される際には、下面ブラシ51と吸着保持部21との間でX方向に延びる帯状の気体カーテンが形成される。それにより、下面ブラシ51による基板Wの下面の洗浄時に、汚染物質を含む洗浄液が吸着保持部21に向かって飛散することが防止される。したがって、下面ブラシ51による基板Wの下面の洗浄時に、汚染物質を含む洗浄液が吸着保持部21に付着することが防止され、吸着保持部21の吸着面が清浄に保たれる。
【0075】
なお、
図10の例においては、気体噴出部53は、白抜きの矢印a52で示すように、気体噴出部53から下面ブラシ51に向かって斜め上方に気体を噴射するが、本発明はこれに限定されない。気体噴出部53は、気体噴出部53から基板Wの下面に向かってZ方向に沿うように気体を噴射してもよい。
【0076】
次に、
図10の状態で、基板Wの下面中央領域の洗浄が完了すると、下面ブラシ51の回転が停止され、下面ブラシ51の洗浄面が基板Wから所定距離離間するように、昇降支持部54が下降する。また、液ノズル52から基板Wへの洗浄液の吐出が停止される。このとき、気体噴出部53から基板Wへの気体の噴射は継続される。
【0077】
その後、
図11に太い実線の矢印a7で示すように、吸着保持部21が平面基準位置rpに位置するように、可動台座32が後方に移動する。すなわち、可動台座32は、第2の水平位置から第1の水平位置に移動する。このとき、気体噴出部53から基板Wへの気体の噴射が継続されることにより、基板Wの下面中央領域が気体カーテンにより順次乾燥される。
【0078】
次に、
図12に太い実線の矢印a8で示すように、下面ブラシ51の洗浄面が吸着保持部21の吸着面(上端部)よりも下方に位置するように、昇降支持部54が下降する。また、
図12に太い実線の矢印a9で示すように、上チャック12A,12Bの複数の保持片が基板Wの外周端部から離間するように、上チャック12A,12Bが互いに遠ざかる。このとき、基板Wは、下チャック11A,11Bにより支持された状態となる。
【0079】
その後、
図12に太い実線の矢印a10で示すように、複数の支持ピン41の上端部が下チャック11A,11Bよりもわずかに上方に位置するように、ピン連結部材42が上昇する。それにより、下チャック11A,11Bにより支持された基板Wが、複数の支持ピン41により受け取られる。
【0080】
次に、
図13に太い実線の矢印a11で示すように、下チャック11A,11Bが互いに遠ざかる。このとき、下チャック11A,11Bは、平面視で複数の支持ピン41により支持される基板Wに重ならない位置まで移動する。それにより、上側保持装置10A,10Bは、ともに初期状態に戻る。
【0081】
次に、
図14に太い実線の矢印a12で示すように、複数の支持ピン41の上端部が吸着保持部21よりも下方に位置するように、ピン連結部材42が下降する。それにより、複数の支持ピン41上に支持された基板Wが、吸着保持部21により受け取られる。この状態で、吸着保持部21は、基板Wの下面中央領域を吸着保持する。ピン連結部材42の下降と同時かまたはピン連結部材42の下降完了後、
図14に太い実線の矢印a13で示すように、カップ61が下カップ位置から上カップ位置まで上昇する。
【0082】
次に、
図15に太い実線の矢印a14で示すように、吸着保持部21が上下方向の軸(吸着保持駆動部22の回転軸の軸心)の周りで回転する。それにより、吸着保持部21に吸着保持された基板Wが水平姿勢で回転する。
【0083】
次に、上面洗浄装置70の回転支持軸71が回転し、下降する。それにより、
図15に太い実線の矢印a15で示すように、スプレーノズル73が基板Wの中心の上方の位置まで移動し、スプレーノズル73と基板Wとの間の距離が予め定められた距離となるように下降する。この状態で、スプレーノズル73は、基板Wの上面に洗浄液と気体との混合流体を噴射する。また、回転支持軸71が回転する。それにより、
図15に太い実線の矢印a16で示すように、スプレーノズル73が回転する基板Wの中心から外方(
図4の点P1)に向かって移動する。基板Wの上面全体に混合流体が噴射されることにより、基板Wの上面全体が洗浄される。
【0084】
また、スプレーノズル73による基板Wの上面の洗浄時には、端部洗浄装置80の回転支持軸81も回転し、下降する。それにより、
図15に太い実線の矢印a17で示すように、ベベルブラシ83が基板Wの外周端部の上方の位置まで移動する。また、ベベルブラシ83の外周面の中央部分が基板Wの外周端部(
図4の点P2)に接触するように下降する。この状態で、ベベルブラシ83が上下方向の軸の周りで回転(自転)する。それにより、基板Wの外周端部に付着する汚染物質がベベルブラシ83により物理的に剥離される。基板Wの外周端部から剥離された汚染物質は、スプレーノズル73から基板Wに噴射される混合流体の洗浄液により洗い流される。
【0085】
さらに、スプレーノズル73による基板Wの上面の洗浄時には、下面ブラシ51の洗浄面が基板Wの下面外側領域に接触するように、昇降支持部54が上昇する。このとき、下面ブラシ51は、平面視において、
図4の直線L2を挟んでスプレーノズル73およびベベルブラシ83と反対の領域に位置する。また、
図15に太い実線の矢印a18で示すように、下面ブラシ51が上下方向の軸の周りで回転(自転)する。さらに、液ノズル52は基板Wの下面に向かって洗浄液を吐出し、気体噴出部53は基板Wの下面に向かって気体を噴射する。これにより、吸着保持部21により吸着保持されて回転される基板Wの下面外側領域を全体に渡って下面ブラシ51により洗浄することができる。
【0086】
下面ブラシ51の回転方向は、吸着保持部21の回転方向とは逆であってもよい。この場合、基板Wの下面外側領域を効率よく洗浄することができる。本実施の形態では、平面視において、吸着保持部21の回転方向は時計回りであり、下面ブラシ51の回転方向は反時計回りである。また、下面ブラシ51が比較的大型でない場合、
図15に太い実線の矢印a19で示すように、移動支持部55が可動台座32上で接近位置と離間位置との間を進退動作されてもよい。この場合でも、吸着保持部21により吸着保持されて回転される基板Wの下面外側領域を全体に渡って下面ブラシ51により洗浄することができる。
【0087】
次に、基板Wの上面、外周端部および下面外側領域の洗浄が完了すると、スプレーノズル73から基板Wへの混合流体の噴射が停止される。また、
図16に太い実線の矢印a20で示すように、スプレーノズル73がカップ61の一側方の位置(初期状態の位置)まで移動する。また、
図16に太い実線の矢印a21で示すように、ベベルブラシ83がカップ61の他側方の位置(初期状態の位置)まで移動する。さらに、下面ブラシ51の回転が停止され、下面ブラシ51の洗浄面が基板Wから所定距離離間するように、昇降支持部54が下降する。また、液ノズル52から基板Wへの洗浄液の吐出、および気体噴出部53から基板Wへの気体の噴射が停止される。この状態で、吸着保持部21が高速で回転することにより、基板Wに付着する洗浄液が振り切られ、基板Wの全体が乾燥する。
【0088】
次に、
図17に太い実線の矢印a22で示すように、カップ61が上カップ位置から下カップ位置まで下降する。また、新たな基板Wがユニット筐体2内に搬入されることに備えて、
図17に太い実線の矢印a23で示すように、新たな基板Wを支持可能な位置まで下チャック11A,11Bが互いに近づく。
【0089】
最後に、基板洗浄装置1のユニット筐体2内から基板Wが搬出される。具体的には、基板Wの搬出の直前にシャッタ91が搬入搬出口2xを開放する。その後、
図18に太い実線の矢印a24で示すように、図示しない基板搬送ロボットのハンド(基板保持部)RHが搬入搬出口2xを通してユニット筐体2内に進入する。続いて、ハンドRHは、吸着保持部21上の基板Wを受け取り、搬入搬出口2xから退出する。ハンドRHの退出後、シャッタ91は搬入搬出口2xを閉塞する。
【0090】
(4)効果
本実施の形態に係る基板洗浄装置1においては、基板Wの洗浄時にスプレーノズル73、ベベルブラシ83および下面ブラシ51が比較的大きく離間して配置される。そのため、基板Wの上面、外周端部および下面をそれぞれスプレーノズル73、ベベルブラシ83および下面ブラシ51により同時に洗浄した場合でも、いずれかの洗浄具から発生した汚染物質が他の洗浄具に付着することがほとんどない。したがって、基板Wの複数の部分をそれぞれ洗浄する複数の装置を設ける必要がなく、複数の装置間で基板Wを移動させる必要もない。その結果、基板洗浄装置1の大型化を防止しつつ基板Wを効率的に洗浄することができる。
【0091】
また、スプレーノズル73は、平面視において、基板Wの中心から点P1に向かって走査されることにより基板Wの上面を洗浄する。この場合、スプレーノズル73から発生した汚染物質がベベルブラシ83または下面ブラシ51に付着することがほとんどない。同様に、ベベルブラシ83または下面ブラシ51から発生した汚染物質がスプレーノズル73に付着することがほとんどない。そのため、簡単な構成で基板Wの上面をスプレーノズル73により効率よく洗浄することができる。さらに、下面ブラシ51は比較的大型を有するので、基板Wの下面を効率よく洗浄することができる。
【0092】
(5)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、上側保持装置10A,10Bにおいて基板Wの下面中央領域の洗浄が実行された後に、下側保持装置20において基板Wの下面外側領域の洗浄が実行されるが、実施の形態はこれに限定されない。下側保持装置20において基板Wの下面外側領域の洗浄が実行された後に、上側保持装置10A,10Bにおいて基板Wの下面中央領域の洗浄が実行されてもよい。また、基板Wの下面中央領域の洗浄が実行されなくてもよい。この場合、基板洗浄装置1は、上側保持装置10A,10Bおよび受渡装置40を含まない。
【0093】
(b)上記実施の形態において、スプレーノズル73は、平面視において、基板Wの中心P0から点P1に向かって走査されることにより基板Wの上面を洗浄するが、実施の形態はこれに限定されない。スプレーノズル73は、平面視において、点P1から基板Wの中心P0に向かって走査されることにより基板Wの上面を洗浄してもよい。また、基板Wの上面は混合流体を噴射するスプレーノズル73を用いて洗浄されるが、実施の形態はこれに限定されない。基板Wの上面は、ブラシを用いて洗浄されてもよいし、リンス液を吐出するリンスノズルを用いて洗浄されてもよい。
【0094】
(c)上記実施の形態において、基板洗浄装置1は制御部9を含むが、実施の形態はこれに限定されない。基板洗浄装置1が外部の情報処理装置により制御可能に構成されている場合には、基板洗浄装置1は制御部9を含まなくてもよい。
【0095】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0096】
上記実施の形態においては、基板Wが基板の例であり、吸着保持部21が基板保持部の例であり、点P1~P3がそれぞれ第1~第3の点の例であり、スプレーノズル73、ベベルブラシ83および下面ブラシ51がそれぞれ第1~第3の洗浄具の例であり、直線L1~L5がそれぞれ第1~第5の直線の例であり、角度θ1~θ3がそれぞれ第1~第3の角度の例であり、基板洗浄装置が基板洗浄装置1の例である。
【符号の説明】
【0097】
1…基板洗浄装置,2…ユニット筐体,2a…底面部,2b~2e…側壁部,2x…搬入搬出口,9…制御部,10A,10B…上側保持装置,11A,11B…下チャック,12A,12B…上チャック,13A,13B…下チャック駆動部,14A,14B…上チャック駆動部,20…下側保持装置,21…吸着保持部,22…吸着保持駆動部,30…台座装置,31…リニアガイド,32…可動台座,33…台座駆動部,40…受渡装置,41…支持ピン,42…ピン連結部材,43…ピン昇降駆動部,50…下面洗浄装置,51…下面ブラシ,52…液ノズル,53…気体噴出部,54…昇降支持部,54u…上面,55…移動支持部,55a…下面ブラシ回転駆動部,55b…下面ブラシ昇降駆動部,55c…下面ブラシ移動駆動部,56…下面洗浄液供給部,57…噴出気体供給部,60…カップ装置,61…カップ,62…カップ駆動部,70…上面洗浄装置,71,81…回転支持軸,72,82…アーム,73…スプレーノズル,74…上面洗浄駆動部,75…上面洗浄流体供給部,80…端部洗浄装置,83…ベベルブラシ,84…ベベルブラシ駆動部,90…開閉装置,91…シャッタ,92…シャッタ駆動部,L1~L5…直線,P0…中心,P1~P3…点,R…領域,rp…平面基準位置,W…基板