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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189497
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】アラーム管理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
A61B5/00 102E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098107
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 亮介
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】田島 有美
(72)【発明者】
【氏名】礒田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 咲由美
(72)【発明者】
【氏名】本城 友基
(72)【発明者】
【氏名】宗片 大地
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XA04
4C117XB03
4C117XB04
4C117XE15
4C117XE16
4C117XE17
4C117XE20
4C117XE23
4C117XE37
4C117XE64
4C117XG01
4C117XG03
4C117XG17
4C117XG19
4C117XJ13
4C117XJ46
4C117XJ47
4C117XJ52
4C117XL01
4C117XL03
4C117XQ20
(57)【要約】
【課題】アラーム閾値を設定するためのより好ましい指標を提示し得るアラーム管理装置を提供すること。
【解決手段】アラーム管理装置は、アラーム発生時間を記憶する記憶部と、アラーム解析のための時間範囲をユーザー操作に基づいて任意に設定可能な時間範囲設定部と、任意に設定された時間範囲内のアラーム発生時間に基づいて、任意に設定された時間範囲内のアラーム発生状況を算出する算出部と、算出部によって算出されたアラーム発生状況を表示する表示部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラーム発生時間を記憶する記憶部と、
アラーム解析のための時間範囲をユーザー操作に基づいて任意に設定可能な時間範囲設定部と、
任意に設定された前記時間範囲内の前記アラーム発生時間に基づいて、任意に設定された前記時間範囲内のアラーム発生状況を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記アラーム発生状況を表示する表示部と、
を備えるアラーム管理装置。
【請求項2】
前記アラーム発生状況は、前記時間範囲内においてアラームが発生した割合である、
請求項1に記載のアラーム管理装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記アラーム発生時間に加えて、生体情報モニターにより取得された生体情報を記憶し、
前記記憶部に記憶された前記生体情報のトレンドグラフを作成し、当該トレンドグラフを前記表示部に表示させるトレンドグラフ作成部を、さらに備え、
前記時間範囲設定部により設定された前記時間範囲は、前記トレンドグラフと同一画面上に表示される、
請求項1又は2に記載のアラーム管理装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記アラーム発生時間に加えて、生体情報モニターにより取得された生体情報及びアラーム閾値を記憶し、
前記記憶部に記憶された前記生体情報と前記アラーム閾値を用いて、前記生体情報及び前記アラーム閾値のトレンドグラフを作成し、当該トレンドグラフを前記表示部に表示させるトレンドグラフ作成部を、さらに備え、
前記時間範囲設定部により設定された前記時間範囲は、前記トレンドグラフと同一画面上に表示される、
請求項1又は2に記載のアラーム管理装置。
【請求項5】
前記算出部が用いる前記アラーム発生状況のサンプリング間隔は、前記トレンドグラフを構成する要素点の間隔よりも小さい、
請求項3又は4に記載のアラーム管理装置。
【請求項6】
前記算出部が算出する前記アラーム発生状況には、アラームが連続して発生した割合であるアラーム連続率が含まれ、
前記表示部は、前記アラーム連続率を表示する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のアラーム管理装置。
【請求項7】
前記算出部が算出する前記アラーム発生状況には、前記アラーム発生時において前記生体情報が前記アラーム閾値をどの程度超えていたかを示す数値が含まれ、
前記表示部は、前記アラーム割合に加えて、前記数値を表示する、
請求項1から6のいずれか一項に記載のアラーム管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報モニターのアラームを管理するアラーム管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報モニターは、生体情報(例えば、心電図、血圧および酸素飽和度など)の計測値及び波形を、表示部に一括表示することができる。生体情報モニターの例としては、病室などのベッドサイドに設定して使用されるベッドサイドモニター及びスタッフステーション(ナースステーションとも呼ばれている)などに設定して使用されるセントラルモニターなどがある。
【0003】
生体情報モニターにより表示された計測値及び波形を見ることで、医療従事者(医師及び看護師など)は、患者の容体を把握することができる。また、生体情報モニターは一般的に、計測値の異常などが生じたときにアラーム音などにより異常を通知するアラーム機能を有するため、医療従事者は、非常時に適切な措置を迅速にとることができる。
【0004】
このようなアラーム機能を備えた生体情報モニターは、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、生体情報モニターのアラーム機能に加えて、そのアラームを発生させるための閾値の設定方法について記載されている。
【0005】
また従来の生体情報モニターは、一般的に、いつアラームが出力されたかを記録して表示するアラーム履歴表示機能を有する。
【0006】
さらに、病院などの複数の生体情報モニターを運用する医療機関においては、各生体情報モニターで取得された生体情報や、各生体情報モニターのアラーム履歴情報を格納するための上位装置(上位サーバーと言ってもよい)が設けられている。上位装置は、アラーム発生件数などを集計する。医療スタッフは、上位装置で集計されたアラーム発生件数(鳴動件数)などに基づいて、アラーム閾値の変更などを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-070257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、生体情報モニターのアラーム閾値が不適切である場合には、アラームが無駄に鳴ったり、逆にアラームが鳴るべきであるにも関わらず鳴らないといった事態が生じる。具体的には、アラーム閾値の絶対値が小さすぎる場合にはアラームの無駄な鳴動が増加し、逆にアラーム閾値の絶対値が大きすぎる場合には必要なアラームの鳴動が抑制されてしまう。
【0009】
上述したように、医療スタッフが、上位装置で集計されたアラーム発生件数などに基づいて、アラーム閾値の変更などを行えば、アラーム閾値を適切化することができる。
【0010】
しかしながら、アラーム鳴動によって医療スタッフが感じる煩わしさは、アラーム発生件数だけで表現できるものではない。つまり、従来の上位装置でもアラームの発生回数やアラーム発生時間の集計は行っていたが、それらは単に表形式で集計・記録されたものであり、アラーム閾値を設定するための指標としては、不十分であった。
【0011】
特に、アラーム閾値の設定が不適切であるために生じる、無駄な鳴動、医療スタッフが消音しても繰り返される鳴動に対しては、医療スタッフのストレスの原因となり得るため、鳴動状況のより詳細な把握と閾値設定は重要であると考えられる。
【0012】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、アラーム閾値を設定するためのより好ましい指標を提示し得るアラーム管理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のアラーム管理装置の一つの態様は、
アラーム発生時間情報を記憶する記憶部と、
アラーム解析のための時間範囲をユーザー操作に基づいて任意に設定可能な時間範囲設定部と、
任意に設定された前記時間範囲内のアラーム発生時間に基づいて、任意に設定された前記時間範囲内のアラーム発生状況を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記アラーム発生状況を表示する表示部と、
を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アラーム閾値を設定するためのより好ましい指標を提示することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態のアラーム管理装置が適用される生体情報モニタリングシステムの概略構成を示す図
図2】生体情報モニターの構成例を示すブロック図
図3】上位システムの構成を示すブロック図
図4】実施の形態の表示画像の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態のアラーム管理装置が適用される生体情報モニタリングシステム10の概略構成を示す図である。生体情報モニタリングシステム10においては、複数の生体情報モニター100-1~100-nが上位システム200に接続されている。複数の生体情報モニター100-1~100-nは、ベッドサイドモニター又はセントラルモニターである。
【0018】
上位システム200は、サーバー210と、表示部220とを有する。サーバー210は、本実施の形態のアラーム管理装置として機能する。なお、サーバー210は、図示しない電子カルテシステムのサーバーなどに接続される。
【0019】
図2は、生体情報モニター100-1~100-nの構成例を示すブロック図である。
【0020】
生体情報モニター100は、コネクタ部110を介して、心電図を検出するための心電電極111、血圧を検出するための血圧測定用カフ112、体温を検出するための体温センサ113、SpO2を検出するためのSpO2センサ114、及び心拍出量を検出するための心拍出量センサ115などの生体情報検出部が接続されている。コネクタ部110は、生体情報検出部と計測処理部104との間のインターフェースとして機能する。
【0021】
計測処理部104は、記憶部105に記憶されたプログラムを実行することで、所定の計測処理を実行する。この計測処理によって、計測処理部104は、コネクタ部110に接続された生体情報検出部(心電電極111、血圧測定用カフ112、体温センサ113、SpO2センサ114及び心拍出量センサ115)を用いて患者の生体情報を計測する。なお、上記生体情報検出部を用いた各種生体情報の計測方法については従来周知のものを適用可能であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0022】
また、計測処理部104は、過去に計測した生体情報を記憶部105に記憶させる動作、及び、記憶部105に記憶されている生体情報を読み出す動作を行うことができるようになっている。さらに、計測処理部104によって得られた生体情報は、表示制御部102を介して表示部101に計測値又は波形の形式で表示される。
【0023】
表示部101は、例えばタッチパネル付き液晶表示器であり、生体情報を表示する表示機能を有するだけでなく、ユーザーによる入力操作を受け付ける入力部としての機能も有する。具体的には、ユーザーによる表示部101のタッチ操作によって、表示制御部102による表示部101の表示や計測処理部104の処理が変更される。
【0024】
また、生体情報モニター100は、表示部101にアラームを設定するためのアラーム設定画像を表示できるようになっており、ユーザーは、このアラーム設定画像を見ながら表示部101のタッチ操作を行うことにより、アラーム閾値を入力できるようになっている。アラーム閾値は、ユーザーによって生体情報の種類毎に設定される。表示部101を介して入力されたアラーム閾値は、記憶部105に記憶される。なお、本実施の形態では、表示部101からアラーム閾値を入力する構成となっているが、例えばキーボードやマウス、専用のボタンなどを使ってアラーム閾値を入力する構成を採用してもよく、要は、ユーザー操作に応じたアラーム閾値を設定可能な操作部を設ければよい。
【0025】
計測処理部104は、アラーム制御部としての機能をも有し、計測された生体情報と、アラーム閾値とを比較し、比較結果に基づいてアラーム出力を制御する。具体的には、生体情報をアラーム閾値を用いて閾値判定し、判定の結果に応じてアラーム出力部103の出力を制御する。アラーム出力部103は、生体情報がアラーム閾値を超えた場合にアラーム音を出力したり(つまり鳴動したり)、発光部(図示せず)を発光させる。
【0026】
また、生体情報モニター100は、記憶部105に記憶された生体情報、アラーム閾値及びアラーム発生時間情報を、インターフェース107を介して上位システム200のサーバー210に出力する。なお、アラーム発生時間情報とは、少なくともアラームが発生した時刻を含む情報である。
【0027】
図3は、上位システム200の構成を示すブロック図である。上位システム200のサーバー210は、インターフェース211、記憶部212、トレンドグラフ作成部213、時間範囲設定部214、算出部215及び表示制御部216を有する。
【0028】
記憶部212は、生体情報モニター100-1~100-nから送られた生体情報、アラーム閾値及びアラーム発生時間情報を記憶する。記憶部212は、生体情報モニター100-1~100-nの記憶部105よりもはるかに大きな記憶容量を有し、生体情報モニター100-1~100-nで記憶する生体情報、アラーム閾値及びアラーム発生時間情報よりもはるかに長い期間の生体情報、アラーム閾値及びアラーム発生時間情報を記録できるようになっている。例えば、生体情報モニター100-1~100-nは3日分の生体情報を記憶できるのに対して、サーバー210は30日分の生体情報を記憶できる。
【0029】
時間範囲設定部214は、アラーム解析の時間範囲をユーザー操作に応じて任意に設定可能な構成となっている。本実施の形態の場合、時間範囲設定部214は、マウス214aに接続されており、ユーザーによるマウス214aの操作に応じた時間範囲を設定する。時間範囲設定部214によって設定された時間範囲は算出部215に出力される。
【0030】
算出部215は、時間範囲設定部214によって設定された時間範囲内における、アラーム発生時間情報を記憶部212から読み出し、設定された時間範囲内におけるアラーム発生状況を算出する。本実施の形態の算出部215は、アラーム発生状況として、アラーム割合(設定された時間範囲内でアラームが発生していた割合)を算出する。
【0031】
なお、算出部215が算出するアラーム発生状況は、アラーム割合に限らない。例えば、設定された時間範囲内におけるアラーム発生件数やアラーム発生分布などであってもよい。
【0032】
トレンドグラフ作成部213は、記憶部212に記憶された生体情報とアラーム閾値を用いて、生体情報及びアラーム閾値のトレンドグラフを作成する。
【0033】
表示制御部216には、記憶部212に記憶された生体情報及びアラーム閾値、時間範囲設定部214により設定された時間範囲、算出部215により算出されたアラーム発生状況(本実施の形態の場合には、アラーム割合)、及び、トレンドグラフ作成部213により作成されたトレンドグラフが入力される。表示制御部216は、これらを所定のレイアウトで表示部220に表示させる。
【0034】
図4は、表示部220に表示される表示画像の例である。
【0035】
表示画像には、患者情報エリア300、データエリア400及びグラフエリア500が含まれる。
【0036】
患者情報エリア300には、患者IDや患者名などが表示される。データエリア400には、各生体情報の計測値などが表示される。
【0037】
グラフエリア500には、生体情報のトレンドグラフ、アラーム閾値、及び、アラーム発生区間などが表示される。図4の例では、グラフエリア500に、過去3日間の情報が表示されている。図4の例では、生体情報のトレンドグラフとして、心拍数(HR)のトレンドグラフ501、SpO2のトレンドグラフ502及び動脈圧(ART:Arterial Pressure)のトレンドグラフ503が表示されている。
【0038】
また、図4の例では、アラーム閾値として、心拍数(HR)のアラーム閾値511、SpO2のアラーム閾値512及び動脈圧(ART)のアラーム閾値513が表示されている。
【0039】
また、図4の例では、図の網掛けで示した区間が、アラーム発生区間として表示されている。例えば、VF、VT、Tachy、Asystole、Brady、PacerNot Captureの時間軸方向に示された網掛け区間は不整脈によりアラームが発生した区間である。また、心拍数(HR)の時間方向に示された網掛け区間は、心拍数のトレンドグラフ501がアラーム閾値511を超えたことによりアラームが発生した区間である。また、SpO2の時間方向に示された網掛け区間は、SpO2のトレンドグラフ502がアラーム閾値512を超えたことによりアラームが発生した区間である。また、動脈圧(ART)の時間方向に示された網掛け区間は、動脈圧のトレンドグラフ503がアラーム閾値513を超えたことによりアラームが発生した区間である。
【0040】
これらに加えて、本実施の形態においては、時間範囲設定部214によって設定された時間範囲601、602が表示される。図4の例では、心拍数(HR)のトレンドグラフ501及びアラーム閾値511の表示領域に時間範囲601が表示されており、VFの時間方向に時間範囲602が表示されている。
【0041】
ユーザーは、マウス214aを操作することで、時間範囲601、602の幅や位置を任意に変更することができる。つまり、ユーザーは、トレンドグラフとアラーム閾値との関係を見ながら、アラーム発生状況(実施の形態の場合には、アラーム割合)を算出するための時間範囲601、602を自由に設定することができる。
【0042】
時間範囲601、602の近傍には、算出部215により算出されたアラーム割合が表示される。
【0043】
なお、図4では、心拍数(HR)及び不整脈においてアラーム解析のための時間範囲601、602が設定されている例が示されているが、アラーム解析のため時間範囲はSpO2において設定されてもよいし、動脈圧(ART)において設定されてもよい。
【0044】
また、いずれか1つの生体情報で設定された時間範囲を他の生体情報でも共通に用いてもよい。例えば、心拍数(HR)においてアラーム解析の時間範囲601が設定された場合、その時間範囲601で心拍数(HR)に加えて、SpO2、動脈圧(ART)、不整脈のアラーム割合も算出して、それらを表示してもよい。このようにすることで、例えば関連の深い生体情報間で共通の時間範囲を指定し、それらの生体情報のいずれでもアラーム割合が高かった場合には、医療スタッフは確かに患者に異常があったことを確認できるようになる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、アラーム管理装置(上位システム200)は、アラーム発生時間情報を記憶する記憶部212と、アラーム解析のための時間範囲601、602をユーザー操作に基づいて任意に設定可能な時間範囲設定部214と、任意に設定された時間範囲601、602内のアラーム発生時間に基づいて、任意に設定された時間範囲601、602内のアラーム発生状況を算出する算出部215と、算出部215によって算出されたアラーム発生状況を表示する表示部220と、を有する。
【0046】
これにより、アラーム閾値を設定するためのより好ましい指標を提示することができるようになる。
【0047】
従来は、例えば決まった時間(例えば午前1時から午前2時まで、午前2時から午前3時まで、……などの1時間ごと)のアラーム発生回数をカウントしていたが、本実施の形態では、アラーム発生状況を算出する時間範囲をユーザーが自由に設定できるようになっている。これにより、例えば午前2時30分から午前3時30分の間の時間範囲のアラーム発生状況も算出でき、さらには午前2時30分から午前2時50分の間の時間範囲のアラーム発生状況も算出できるようになる。
【0048】
本実施の形態では、従来のようなアラーム発生件数だけの情報と比較して、アラーム発生時間とアラーム閾値の関連をアラーム割合に数値化しているので、医療スタッフが体感しているアラーム状況により近い指標を提示できる。
【0049】
具体的には、本実施の形態の構成によれば、アラーム閾値の変更による影響(アラームが増えたのか減ったのか)を、アラーム割合の上下といった明確な数値で、しかも短時間で評価できるので、アラーム管理に直接的に役立つ。また、アラーム閾値の設定時に参考になる値を提示できる。さらに、複数患者を含めてフロア全体でのアラーム発生状況把握にも応用できる。
【0050】
また、本実施の形態では、アラーム管理装置(上位システム200)は、記憶部212に記憶された生体情報とアラーム閾値を用いて、生体情報及びアラーム閾値のトレンドグラフ501、502、503及び511、512、513を作成し、当該トレンドグラフ501、502、503及び511、512、513を表示部220に表示させるトレンドグラフ作成部213を、さらに有し、時間範囲設定部214により設定された時間範囲601は、トレンドグラフ501、502、503及び511、512、513と同一画面上に表示される。
【0051】
これにより、ユーザーは、生体情報及びアラーム閾値のトレンドグラフ501、502、503及び511、512、513を見ながら、適切な位置にアラーム解析のための時間範囲601を設定することができるようになる。なお、アラーム閾値のトレンドグラフ502を作成及び表示せずに、生体情報のトレンドグラフ501を作成及び表示してもよい。このような場合でも、ユーザーは、生体情報のトレンドグラフ501、502、503を見ながら、適切な位置にアラーム解析のための時間範囲601を設定することができる。ただし、実施の形態のように、アラーム閾値のトレンドグラフ511、512、513も表示した方がより適切な位置にアラーム解析のための時間範囲601を設定することができると考えられる。
【0052】
また、本実施の形態では、算出部215が用いるアラーム発生状況のサンプリング間隔は、トレンドグラフを構成する要素点の間隔よりも小さくされている。つまり、トレンドグラフは、生体情報のサンプリングデータに対して平均化処理や間引き処理を行うことで時間方向に圧縮されたものであり、その要素点(つまりグラフを構成する点)は元々のサンプリングデータ(算出部215が用いるアラーム発生状況のサンプリング間隔)よりも粗い。
【0053】
これにより、算出部215によって算出され、表示部220に表示されるアラーム発生状況(実施の形態の場合には、アラーム割合)は、実際のアラーム発生をトレンドグラフよりも正確に反映したものとなる。
【0054】
具体的に説明すると、トレンドグラフ作成部213により作成されるトレンドグラフ501、502、503及び511、512、513は、例えば1分間隔のサンプリングにより作成される。これに対して、記憶部212に記憶され算出部215で用いられるアラーム発生時間情報のデータは、例えば1秒間隔のサンプリングデータである。
【0055】
よって、算出部215では、トレンドグラフ501、502、503及び511、512、513で表示されているものよりも、正確なアラーム発生状況を算出できる。つまり、ユーザーは、トレンドグラフでは見えなかったアラーム発生状況を把握できるようになる。例えば、トレンドグラフだと、生体情報が1回だけアラーム閾値を超えているように見えても、実際のアラーム発生回数は複数の場合があるが、このような場合でも、算出部215はこれを反映したアラーム発生状況を算出し、表示部220に表示させることができる。
【0056】
例えば、アラームの鳴動がうるさかった時間帯に時間範囲601を設定すれば、算出部215によって、その時間範囲601でのトレンドグラフには現れないようなアラーム発生までをも含めた詳細なアラーム発生状況(実施の形態の場合には、アラーム割合)が算出され、それが表示部220に表示されるので、医療スタッフはその時間範囲601でのアラーム鳴動の状況をより詳しく把握できる。因みに、実際上、生体情報モニター100には、アラーム音中断ボタン(アラームサイレンスボタン)が設けられているので、アラーム音中断ボタンが操作された場合には、アラームが継続して発生していたとしてもアラーム音の鳴動は一時的に中断された状態(消音状態)となる。
【0057】
また、本実施の形態では、算出部215は、アラーム発生状況として、アラーム割合に加えて、アラームが連続して発生した割合であるアラーム連続率を算出し、表示部220は、アラーム割合に加えて、アラーム連続率を表示する。
【0058】
このようにすれば、アラーム連続率が高ければ、一旦発生したアラームを誰も止めずに(アラーム音中断ボタンを操作せずに)放置されていた可能性が高いと推定できるようになる。
【0059】
また、本実施の形態では、算出部215は、アラーム発生状況として、アラーム割合に加えて、アラーム発生時において生体情報がアラーム閾値をどの程度超えていたかを示す数値を算出し、表示部220は、アラーム割合に加えて、前記数値を表示する。
【0060】
このようにすれば、生体情報とアラーム閾値との差が小さければ、医療スタッフが何度もアラームを止めに行っていた(アラーム音中断ボタンを操作した)可能性があることを推定できるようになる。これはアラームが無駄に鳴っていた可能性を示す。よって、生体情報がアラーム閾値をどの程度超えていたかを示す数値を算出して表示することで、医療スタッフは、この数値を指標として、消音作業(アラーム音中断ボタンの操作)を繰り返しても何度も鳴動するようなアラームを発生させない、つまりアラームが無駄に鳴らないようにするためのアラーム閾値を設定することができるようになる。
【0061】
具体的には、アラーム割合が同じ10%でもアラーム発生回数とアラーム閾値をどれだけ超えたのかを同時に考慮することで、アラームの連続鳴動が、そのアラームが放置された状況下での連続鳴動によるものか、医療スタッフが頻繁に止めていた(アラーム音中断ボタンを操作していた)可能性がある連続鳴動によるものなのかが推定できるようになる。これはアラームが放置され必要な措置が成されなかったのか、無駄なアラームに医療スタッフが忙殺されていた可能性があるのか、医療スタッフの対応状況の推定に繋がる。この結果、アラーム閾値が、医療スタッフが頻繁にアラームを止めに(アラーム音中断ボタンを操作しに)行かなければならない好ましくない値であることを把握できる表示を行うことが可能となる。
【0062】
例えば、ある時間範囲内のアラーム割合が16.6%であり、連続率が5%、アラーム閾値との差が10%である場合には、アラーム閾値付近を生体情報が上下に変動していたと推定できる。一方、アラーム割合が80%であり、連続率70%の場合には、アラーム音の鳴動が放置されていたと推定できる。本実施の形態の構成を用いれば、画面上で時間範囲を設定するだけで、このような推定を容易に行うことができる。
【0063】
このように本実施の形態の構成によれば、従来のようなアラーム発生件数だけでは推定しにくい、アラーム鳴動状況やアラーム鳴動時の医療スタッフの対応までをも容易に推定できるようになる。
【0064】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0065】
上述の実施の形態では、本発明によるアラーム管理装置の機能を、上位システム200に設けた場合について述べたが、本発明によるアラーム管理装置の機能を、生体情報モニター100に設けてもよい。ただし、この場合、生体情報モニター100の記憶部105の容量はサーバー210の容量よりも小さいので、直近の比較的短い時間範囲が設定され、その時間範囲内のアラーム解析を行うようになる。
【0066】
本発明によるアラーム管理装置の機能を生体情報モニター100に搭載した場合には、アラーム発生状況をアラーム閾値を設定するための指標として用いることができる。例えば、患者の容態を考慮するとアラーム割合として20%が好ましい場合には、ユーザーは、表示されているアラーム割合が20%になるようにアラーム閾値を設定すればよい。
【0067】
上述の実施の形態では、アラーム割合を%で算出して表示する場合について述べたが、アラーム割合は、これに限らず、単純化した指数やランクなどの指標であってもよい。
【0068】
上述の実施の形態に加えて、サーバー210の記憶部212に記憶されている、過去の大量の生体情報を利用して、所望のアラームの発生を実現するためにはどの程度のアラーム閾値にすればよいかを計算して提示してもよい。
【0069】
本発明のアラーム管理装置の機能は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などにより実現することができる。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働してアラーム管理装置の各要素の動作を集中制御する。
【0070】
上述の実施の形態では、時間範囲601、602をマウス214aを用いて設定する場合について述べたが、時間範囲601、602の設定の方法はこれに限らない。例えばキーボード(図示せず)を用いて設定してもよいし、表示部220がタッチパネルにより構成されている場合には表示部220をタッチ操作することにより設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、アラーム閾値を設定するための指標を提示するアラーム管理装置に適用できる。
【符号の説明】
【0072】
10 生体情報モニタリングシステム
100(100-1~100-n) 生体情報モニター
101、220 表示部
102、216 表示制御部
103 アラーム出力部
104 計測処理部
105、212 記憶部
200 上位システム
210 サーバー
213 トレンドグラフ作成部
214 時間範囲設定部
215 算出部
300 患者情報エリア
400 データエリア
500 グラフエリア
501、502、503、511、512、513 トレンドグラフ
601、602 時間範囲
図1
図2
図3
図4