(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189503
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/291 20210101AFI20221215BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20221215BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20221215BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20221215BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20221215BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20221215BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/209
H01M10/613
H01M50/204 401H
H01M10/647
H01M50/293
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098115
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 遵吉
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄太郎
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK02
5H040AA28
5H040AS04
5H040AT02
5H040AT03
5H040AY03
5H040CC23
(57)【要約】
【課題】大型化を回避しつつ、発熱した蓄電セルからの熱伝導の影響を受ける蓄電セルの個数を限定可能な蓄電モジュールを提供すること。
【解決手段】電池パック1は、一方向に沿って並ぶように配置された複数の蓄電セル100と、前記複数の蓄電セルを収容するケース200と、互いに隣接する一対の蓄電セル間を仕切る複数の仕切部材300と、を備える。前記複数の仕切部材の各仕切部材300は、当該仕切部材に接する蓄電セル100を当該仕切部材300から離間する方向に付勢する付勢部320を有する。各前記仕切部材300は、所定温度で溶融する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に沿って並ぶように配置された複数の蓄電セルと、
前記複数の蓄電セルを収容するケースと、
互いに隣接する一対の蓄電セル間を仕切る複数の仕切部材と、を備え、
前記複数の仕切部材の各仕切部材は、当該仕切部材に接する蓄電セルを当該仕切部材から離間する方向に付勢する付勢部を有し、
各前記仕切部材は、所定温度で溶融する、蓄電モジュール。
【請求項2】
各前記仕切部材は、前記ケースに固定されており、互いに隣接する一対の蓄電セル間を仕切る仕切壁をさらに有し、
前記付勢部は、前記一方向に弾性変形可能な弾性材料からなり、前記一方向に圧縮された状態で前記仕切壁と前記蓄電セルとの間に配置されている、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
各前記仕切部材は、前記一方向おける前記仕切壁の表面に設けられており、前記ケースに固定されたリブをさらに有する、請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記ケースは、
前記複数の蓄電セルの下方に配置された底壁と、
前記一方向及び上下方向の双方と直交する方向における前記複数の蓄電セルの両側に配置された一対の側壁と、を有し、
前記リブは、
前記付勢部と前記底壁との間に配置された下方リブと、
前記付勢部と前記側壁との間に配置された側方リブと、を有する、請求項3に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記一方向に前記蓄電セルを挟む位置に配置された一対の前記リブ間距離は、前記一方向における各前記蓄電セルの寸法に等しい、請求項3又は4に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、国際公開第2020/137062号には、複数の電池セルと、互いに隣接する電池セル間に配置されたセパレータと、を備える電源装置が開示されている。セパレータは、断熱シートと、断熱シートよりも高い形状安定性を有する成形部材と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際公開第2020/137062号に記載される電源装置では、セル間の断熱性を確保するためには、断熱シートの厚みを増大させることが必要となる。断熱シートの厚みが増大することにより、装置全体が大型化する。
【0005】
本開示の目的は、大型化を回避しつつ、発熱した蓄電セルからの熱伝導の影響を受ける蓄電セルの個数を限定可能な蓄電モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に従った蓄電モジュールは、一方向に沿って並ぶように配置された複数の蓄電セルと、前記複数の蓄電セルを収容するケースと、互いに隣接する一対の蓄電セル間を仕切る複数の仕切部材と、を備え、前記複数の仕切部材の各仕切部材は、当該仕切部材に接する蓄電セルを当該仕切部材から離間する方向に付勢する付勢部を有し、各前記仕切部材は、所定温度で溶融する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、大型化を回避しつつ、発熱した蓄電セルからの熱伝導の影響を受ける蓄電セルの個数を限定可能な蓄電モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態の蓄電モジュールの一部を概略的に示す平面図である。
【
図2】
図1におけるII-II線での断面図である。
【
図3】特定の蓄電セルが高温になった状態を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態の蓄電モジュールの一部を概略的に示す平面図である。この蓄電モジュール1は、例えば、車両に搭載される。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態の蓄電モジュール1は、複数の蓄電セル100と、ケース200と、複数の仕切部材300と、を備えている。
【0012】
複数の蓄電セル100は、一方向(
図1における左右方向)に並ぶように配置されている。複数の蓄電セル100は、5以上の蓄電セル100を含んでいる。各蓄電セル100は、直方体形状に形成されている。各蓄電セル100は、扁平に形成されている。
【0013】
ケース200は、複数の蓄電セル100を収容している。ケース200は、樹脂又は金属によって形成されている。
図2に示されるように、ケース200は、ケース本体201と、蓋部250と、を有している。なお、
図1では、蓋部250の図示は省略されている。
【0014】
図1及び
図2に示されるように、ケース本体201は、上方に開口する形状を有している。ケース本体201は、底壁210と、一対の側壁220と、を有している。
【0015】
底壁210は、各蓄電セル100の下方に配置されている。底壁210は、各蓄電セル100を支持している。
【0016】
一対の側壁220は、一方向及び上下方向の双方と直交する直交方向(
図1における上下方向)における複数の蓄電セル100の両側に配置されている。
図2に示されるように、各側壁220は、直交方向(
図2における左右方向)における底壁210の縁部から起立する形状を有している。
【0017】
蓋部250は、ケース本体201の開口を閉塞している。蓋部250は、一対の側壁220の上端部に接続されている。
【0018】
各仕切部材300は、互いに隣接する一対の蓄電セル100間を仕切っている。複数の仕切部材300は、4以上の仕切部材300を含んでいる。各仕切部材300は、熱可塑性樹脂からなる。各仕切部材300は、所定温度で溶融する。所定温度は、過充電等に起因して蓄電セル100が発熱したときの温度に設定される。各仕切部材300は、仕切壁310と、付勢部320と、リブ330と、を有している。
【0019】
仕切壁310は、互いに隣接する一対の蓄電セル100間を仕切っている。仕切壁310は、ケース200に固定されている。より詳細には、仕切壁310の下端部は、底壁210に固定されており、仕切壁310の側端部は、側壁220に固定されている。仕切壁310は、平板状に形成されている。
【0020】
付勢部320は、当該付勢部320を含む仕切部材300に接する蓄電セル100を当該仕切部材300から離間する方向に付勢している。付勢部320は、一方向おける仕切壁310の表面に取り付けられている。付勢部320は、一方向に弾性変形可能な弾性材料からなる。付勢部320は、少なくとも前記所定温度で溶融する材料であれば、仕切壁310を形成する材料とは異なる材料(例えば、前記所定温度よりも少し低い温度で溶融する材料)で形成されてもよい。付勢部320は、一方向に圧縮された状態で仕切壁310と蓄電セル100との間に配置されている。
図2に示されるように、付勢部320は、矩形状に形成されている。
【0021】
リブ330は、仕切壁310に設けられている。より詳細には、リブ330は、仕切壁310のうち一方向に蓄電セル100と対向する表面の縁部に固定されている。リブ330は、ケース200の内面に固定されている。
図1に示されるように、一方向に蓄電セル100を挟む位置に配置された一対のリブ330間距離は、一方向における各蓄電セル100の寸法に等しい。このため、各蓄電セル100の一対の仕切部材300間への挿入時に蓄電セル100がリブ330によって有効にガイドされる。リブ330は、仕切壁310を形成する材料と同じ材料で形成されてもよい。
【0022】
図2に示されるように、リブ330は、下方リブ331と、側方リブ332と、上方リブ333と、を有している。
【0023】
下方リブ331は、付勢部320と底壁210との間に配置されている。下方リブ331は、仕切壁310及び底壁210に固定されている。下方リブ331は、直交方向に延びる形状を有している。
【0024】
側方リブ332は、付勢部320と側壁220との間に配置されている。側方リブ332は、仕切壁310及び側壁220に固定されている。側方リブ332は、上下方向に延びる形状を有している。
図1及び
図2に示されるように、直交方向に互いに対向する一対の側方リブ332間の長さは、直交方向における蓄電セル100の長さよりも小さい。
【0025】
上方リブ333は、付勢部320と蓋部250との間に位置されている。上方リブ333は、仕切壁310及び蓋部250に固定されている。上方リブ333は、直交方向に延びる形状を有している。
【0026】
次に、
図3を参照しながら、以上に説明した蓄電モジュール1において、複数の蓄電セル100のうちの特定の蓄電セル100(以下、「トリガーセル101」と表記する。)が発熱した場合について説明する。
【0027】
過充電等に起因してトリガーセル101が所定温度まで発熱すると、トリガーセル101に接している一対の仕切部材300(仕切壁310、付勢部320及びリブ330)が溶融する。これにより、一方向におけるトリガーセル101の両側に空間が形成される。
【0028】
そうすると、複数の蓄電セル100のうちトリガーセル101に隣接する蓄電セル100(以下、「隣接セル102」と表記する。)は、
図3において矢印で示されるように、当該隣接セル102に接する付勢部320によってトリガーセル101に近づく方向に付勢される。なお、このとき付勢部320に作用する反力は、ケース200に固定された仕切壁310及びリブ330によって受けられる。
【0029】
これにより、複数の蓄電セル100のうち隣接セル102を基準としてトリガーセル101の位置する側と反対側に配置された蓄電セル100(以下、「第2隣接セル103」と表記する。)と隣接セル102との間の距離Dが大きくなる。すなわち、隣接セル102と第2隣接セル103との間に空気層(断熱層)が形成される。なお、複数の蓄電セル100が一方向における両側から拘束されている場合においても、第2隣接セル103から当該第2隣接セル103と隣接セル102との間の仕切壁310に作用する拘束荷重は、仕切壁310及びリブ330によって受けられる。このため、第2隣接セル103が隣接セル102に近づくことが防止される。
【0030】
以上のように、この蓄電モジュール1では、装置全体の大型化を回避しつつ、発熱した蓄電セル100(トリガーセル101)からの熱伝導の影響を受ける蓄電セル100の個数を限定することが可能となる。
【0031】
なお、以上に説明した上記実施形態では、付勢部320が一方向おける仕切壁310の表面に取り付けられている例を説明したが、付勢部320は、一方向における蓄電セル100の側面に接着等によって取り付けられてもよい。
【0032】
また、仕切部材300の溶融後、トリガーセル101及び隣接セル102間の距離や隣接セル102及び第2隣接セル103間の距離が変化するため、互いに隣接する一対の蓄電セル100の外部端子同士を接続するバスバーは、一方向に伸縮可能であることが好ましい。
【0033】
また、仕切部材300は、ケース200に固定されていなくてもよい。すなわち、仕切部材300は、ケース200に対して一方向に相対移動可能であってもよい。
【0034】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0035】
上記実施形態における蓄電モジュールは、一方向に沿って並ぶように配置された複数の蓄電セルと、前記複数の蓄電セルを収容するケースと、互いに隣接する一対の蓄電セル間を仕切る複数の仕切部材と、を備え、前記複数の仕切部材の各仕切部材は、当該仕切部材に接する蓄電セルを当該仕切部材から離間する方向に付勢する付勢部を有し、各前記仕切部材は、所定温度で溶融する。
【0036】
この蓄電モジュールでは、複数の蓄電セルのうちの特定の蓄電セルが過充電等に起因して所定温度まで発熱すると、当該特定の蓄電セルに接している一対の仕切部材が溶融する。これにより、一方向における特定の蓄電セルの両側に空間が形成される。そうすると、複数の蓄電セルのうち前記特定の蓄電セルに隣接する蓄電セルである隣接セルは、当該隣接セルに接する付勢部によって前記特定の蓄電セルに近づく方向に付勢される。これにより、複数の蓄電セルのうち隣接セルを基準として特定の蓄電セルの位置する側と反対側に配置された蓄電セルである第2隣接セルと隣接セルとの間の距離が大きくなる。すなわち、隣接セルと第2隣接セルとの間に空気層(断熱層)が形成される。よって、この蓄電モジュールでは、装置全体の大型化を回避しつつ発熱した蓄電セルからの熱伝導の影響を受ける蓄電セルの個数を限定することが可能となる。
【0037】
また、各前記仕切部材は、前記ケースに固定されており、互いに隣接する一対の蓄電セル間を仕切る仕切壁をさらに有し、前記付勢部は、前記一方向に弾性変形可能な弾性材料からなり、前記一方向に圧縮された状態で前記仕切壁と前記蓄電セルとの間に配置されていることが好ましい。
【0038】
このようにすれば、付勢部が弾性復帰する際に当該付勢部に蓄電セルから作用する反力が仕切壁で受けられるため、蓄電セルがケースに対して有効に相対変位する。
【0039】
この場合において、各前記仕切部材は、前記一方向おける前記仕切壁の表面に設けられており、前記ケースに固定されたリブをさらに有することが好ましい。
【0040】
このようにすれば、仕切壁及びリブによって付勢部に作用する反力がより確実に受けられる。
【0041】
また、前記ケースは、前記複数の蓄電セルの下方に配置された底壁と、前記一方向及び上下方向の双方と直交する方向における前記複数の蓄電セルの両側に配置された一対の側壁と、を有し、前記リブは、前記付勢部と前記底壁との間に配置された下方リブと、前記付勢部と前記側壁との間に配置された側方リブと、を有することが好ましい。
【0042】
また、前記一方向に前記蓄電セルを挟む位置に配置された一対の前記リブ間距離は、前記一方向における各前記蓄電セルの寸法に等しいことが好ましい。
【0043】
このようにすれば、各蓄電セルの一対の仕切部材間への挿入時に蓄電セルがリブによって有効にガイドされる。
【0044】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 蓄電モジュール、100 蓄電セル、200 ケース、201 ケース本体、210 底壁、220 側壁、250 蓋部、300 仕切部材、310 仕切壁、320 付勢部、330 リブ、331 下方リブ、332 側方リブ、333 上方リブ。