(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189504
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】積層シート及び肌意匠シート製造方法
(51)【国際特許分類】
A45D 44/22 20060101AFI20221215BHJP
A45D 44/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A45D44/22 Z
A45D44/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098116
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝
(57)【要約】
【課題】ユーザが所望する意匠をオンデマンド印刷して肌意匠シートを製造する。
【解決手段】積層シートは、帯状の剥離シートと、前記剥離シート上に設けられた第1粘着層と、前記粘着層上に設けられた伸縮性シートと、を備える。前記剥離シートの剛軟度は、150mg以上2500mg以下である。前記剥離シートは紙を含み、厚みが130μm以上210μm以下であってもよい。また、前記剥離シートの前記第1粘着層が設けられている側の表面には、複数の凹部が形成されており、前記凹部の深さは1μm以上17μm以下であってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の剥離シートと、
前記剥離シート上に設けられた第1粘着層と、
前記第1粘着層上に設けられた伸縮性シートと、
を備え、
前記剥離シートの剛軟度が150mg以上2500mg以下であることを特徴とする積層シート。
【請求項2】
前記剥離シートは紙を含み、厚みが130μm以上210μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記剥離シートの前記第1粘着層が設けられている側の表面には、複数の凹部が形成されており、前記凹部の深さは1μm以上17μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記伸縮性シートの厚みが10μm以上35μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の積層シート。
【請求項5】
前記第1粘着層は肌貼付用であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の積層シート。
【請求項6】
前記剥離シートの長手方向に沿って所定間隔を空けて複数の前記第1粘着層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の積層シート。
【請求項7】
前記伸縮性シートを覆うように前記剥離シート上に設けられた保護フィルムをさらに備え、
前記保護フィルムと前記剥離シートとの間に第2粘着層が設けられており、前記保護フィルムと前記伸縮性シートとの間には前記第2粘着層が設けられていないことを特徴とする請求項6に記載の積層シート。
【請求項8】
請求項7に記載の前記積層シートの長手方向の一端部における前記保護フィルムを剥離し、前記伸縮性シートの表面を露出する工程と、
熱転写プリンタを用いて、前記伸縮性シート上に画像を形成する工程と、
前記画像上に保護層を転写して、前記第1粘着層、前記伸縮性シート及び前記保護層を含む肌意匠シートを作製する工程と、
前記積層シートから、前記肌意匠シートを含む領域を切り出す工程と、
を備える肌意匠シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層シート及び肌意匠シート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肌に貼り付けて使用するタトゥーシールや肌隠蔽シート等の肌意匠シートが知られている。タトゥーシールは、様々な絵柄が印刷されたものが、バラエティストア、スポーツや音楽のイベント会場、アミューズメントパーク等で販売されており、雰囲気の盛り上げに使用されている。
【0003】
肌隠蔽シートは、基材に予めスクリーン印刷等で所定の色を着色したシートであり、肌の傷やシミ等の変色部の隠蔽に使用されている。使用者は、自分の肌の色に合ったものを選んで使用する。例えば、肌隠蔽シートは、剥離シート、粘着層、伸縮性基材、カバーシートが順に積層されたものであり、剥離シートを剥離して粘着層を肌に貼り付け、その後カバーシートを剥がすという手順で使用者の肌に貼り付けられる。
【0004】
使用者は、販売されている複数色の肌隠蔽シートから、自身の地肌の色に近いものを選択する。しかし、販売されている肌隠蔽シートの色は限られており、肌隠蔽シートと地肌との色差が気になり、不満を抱くことがあった。
【0005】
使用者の地肌に合わせた色をオンデマンド印刷して肌隠蔽シートを作製することが考えられる。印刷には、色再現性及び階調性に優れた、昇華型の熱転写プリンタが好適である。しかし、従来の熱転写プリンタは、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)等の剛性の高い基材を用いた被転写体に画像を形成するものであり、肌隠蔽シートのような伸縮性のあるものに画像を形成することを想定して設計されていない。そのため、熱転写プリンタを用いた肌隠蔽シートのオンデマンド印刷は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、ユーザが所望する意匠をオンデマンド印刷した肌意匠シートの製造に用いられる積層シート、及び肌意匠シート製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の積層シートは、帯状の剥離シートと、前記剥離シート上に設けられた第1粘着層と、前記第1粘着層上に設けられた伸縮性シートと、を備え、前記剥離シートの剛軟度が150mg以上2500mg以下であることを特徴とするものである。
【0009】
本開示の肌意匠シート製造方法は、積層シートの長手方向の一端部における保護フィルムを剥離し、伸縮性シートの表面を露出する工程と、熱転写プリンタを用いて、前記伸縮性シート上に画像を形成する工程と、前記画像上に保護層を転写して、第1粘着層、前記伸縮性シート及び前記保護層を含む肌意匠シートを作製する工程と、前記積層シートから、前記肌意匠シートを含む領域を切り出す工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ユーザが所望する意匠をオンデマンド印刷して肌意匠シートを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2aは積層シートの断面図であり、
図2bは積層シートの平面図である。
【
図3】
図3aは積層シートの断面図であり、
図3bは積層シートの平面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る肌意匠シート製造システムの概略構成図である。
【
図7】
図7aは撮影画像を示す図であり、
図7bはシミュレーション画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1aは、本開示の実施の形態に係る肌意匠シートの製造に用いられる積層シート20の断面図である。積層シート20は、長尺帯状であり、順に積層された剥離シート21、粘着層22(第1粘着層)及び伸縮性シート23を有する。
【0013】
剥離シート
剥離シート21は、シリコン離型処理等を施した離型紙等を用いることができる。剥離シートの厚みは130μm以上210μm以下程度が好ましい。
【0014】
剥離シートの剛軟度は150mg以上2500mg以下が好ましく、280mg以上2100mg以下がさらに好ましい。剛軟度を150mg以上とすることで、後述するプリンタ4での画像形成処理の際にジャム発生を抑制できる。剛軟度を2500mg以下とすることで、後述するプリンタ4のカッター38(
図8参照)を用いて、剥離シートを容易に切断することができる。
【0015】
剥離シートの表面(粘着層が設けられる側の面)には、複数の凹部(ディンプル)が設けられていることが好ましい。凹部の平面形状は、直径2mm以上3mm以下程度の略円形である。剥離シートの表面における凹部占有率は3%以上20%以下程度である。凹部の底部は湾曲状であり、最深部の深さは1μm以上17μm以下程度である。剥離シートの表面にこのような凹部を形成することで、剥離シートと粘着層との剥離力を好適な値にできる。また、後述するプリンタを用いた積層シートへの画像形成処理において、適切な印圧を与え、ゆず肌の発生を抑制できる。
【0016】
粘着層
粘着層22には、皮膚にかぶれや炎症を生じさせにくいウレタン系、アクリル系の粘着剤を用いることが好ましい。また、皮膚との密着性を確保するため、ジェルタイプの粘着剤であることが好ましい。粘着層の厚みは例えば15μm以上25μm以下である。
【0017】
伸縮性シート
伸縮性シート23は、例えばウレタンシートを用いることができる。伸縮性シートは、貼り付けた際の皮膚の伸縮に追従するために、60%程度の伸張性があることが好ましい。また、皮膚からの汗の水蒸気を透過させるために、1000g/(m2・24hr)以上の透湿性を有することが好ましい。
【0018】
また、伸縮性シートは、貼り付けの際に皺が生じないようにし、かつ作業性を良くするために、厚さが5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。また、貼り付け時の違和感を抑えるため、伸縮性シートの厚さは35μm以下であることが好ましい。
【0019】
このような剥離シート21、粘着層22及び伸縮性シート23が順に積層された積層シート20の取り扱いを容易にするために、
図1bに示すように、伸縮性シート23上に工程フィルム40を設けておいてもよい。工程フィルム40には、厚みが30μm以上60μm以下程度のLDPEフィルム等を用いることができる。
【0020】
図2a、
図2bに示すように、積層シート20の粘着層22及び伸縮性シート23を、公知の切断装置を用いて、肌意匠シートの製品形態の形状に加工する。
図2aは、
図2bのIIa-IIa線断面図である。例えば、
図2a、
図2bに示すように、粘着層22及び伸縮性シート23を平面視円形に加工する。円形の粘着層22及び伸縮性シート23が長手方向に所定間隔を空けて形成される。長手方向に配置される円形の粘着層22及び伸縮性シート23は、1列であってもよいし、複数列であってもよい。
図2a、
図2bは2列の例を示している。
【0021】
工程フィルム40が設けられている場合は、積層シート20を切断装置にセットする際に伸縮性シート23から剥離される。
【0022】
粘着層22及び伸縮性シート23を製品形態に加工した後、
図3a、
図3bに示すように、積層シート20上に長尺帯状の保護フィルム24を貼り付ける。保護フィルム24は、一方の面に弱粘着層25(第2粘着層)が設けられている。弱粘着層25は、粘着層22及び伸縮性シート23に接触しない位置に設けられる。例えば、
図3aに示す例では、保護フィルム24の一方の面に3本のライン状の弱粘着層25が設けられ、伸縮性シート23(及び粘着層22)よりも幅方向(短手方向)の外側と、伸縮性シート23,23の間の3箇所で剥離シート21の表面に付着する。
【0023】
保護フィルム24には、厚みが30μm以上60μm以下程度のLDPEフィルムやPPフィルム等を用いることができる。弱粘着層25にはアクリル系やウレタン系の弱粘着剤等を用いることができる。
【0024】
次に、公知の切断装置を用いて、
図4に示すように、保護フィルム24に、幅方向に延在する複数のハーフカット26を所定間隔で形成する。ハーフカット26は、伸縮性シート23の間の位置に形成する。例えば、長手方向に隣接する伸縮性シート23,23の間の位置にハーフカット26を形成する。
【0025】
保護フィルム24にハーフカット26が形成された積層シート20をロール状に巻き取り、積層シートロールを作製する。積層シートロールは後述するプリンタ4(
図5、
図8参照)にセットされる。
【0026】
図5は本開示の実施の形態に係る肌意匠シート製造システムの概略構成図である。
図5に示すように、肌意匠シート製造システムは、撮影装置1、演算制御装置2、表示装置3及びプリンタ4を備え、ユーザPの肌に貼り付けることで、シミや傷等の変色部を隠蔽する肌意匠シート5を製造するものである。
【0027】
撮影装置1は、デジタルカメラ等を用いることができ、ユーザPを撮影する。撮影装置1には、撮像機器以外に、照明機器や背景機材等、ユーザPの肌の色を適切に撮影するための機材を含む。撮影装置1は、証明写真撮影ボックスのようなものでもよい。以下の実施形態では、撮影装置1がユーザPの顔を撮影するものとして説明する。ユーザが予め地肌に化粧を施している場合、撮影した顔画像における地肌とは、地肌に化粧を施した状態を指す。撮影装置1は、ユーザPの顔画像を演算制御装置2へ送信する。
【0028】
演算制御装置2は、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータであり、CPUが、メモリに格納されている肌意匠シート製造プログラムを実行することで、
図6に示すように、画像受信部201、解析部202、肌意匠シートデータ生成部203、シミュレーション画像生成部205、表示処理部206及びプリント制御部207の機能が実現される。システム毎にCPUやメモリ内に全てのプログラムを格納せず、サーバと各システムのCPUをネットワークでリンクして、プログラムを実行し、サーバ側でユーザP情報、撮影画像、出力画像等のデータ登録管理を行ってもよい。
【0029】
画像受信部201は、撮影装置1から、ユーザPの顔画像を受信する。
【0030】
解析部202は、顔画像を解析し、シミや傷等の変色部を特定し、(変色部以外の)地肌の色相や、変色部の色相を解析する。
【0031】
肌意匠シートデータ生成部203は、地肌・変色部の色相の解析結果に基づいて、変色部の隠蔽に適した肌意匠シートのデータ(設計データ)を生成する。肌意匠シートのデータは、色情報を含む。肌意匠シートの色は、流行やユーザPの年齢を考慮して決定してもよい。
【0032】
シミュレーション画像生成部205は、ユーザPの顔に、肌意匠シートのデータに基づく肌意匠シートを貼り付けた場合のシミュレーション画像を生成する。例えば、ユーザPの顔画像に対し、変色部の位置に基づいて肌意匠シートの画像を合成して、シミュレーション画像を生成する。
【0033】
表示処理部206は、ユーザPの顔画像及びシミュレーション画像を表示装置3に表示する。例えば、
図7aに示すようなユーザPの顔画像や、
図7bに示すようなシミュレーション画像が表示装置3に表示される。ユーザPは、表示装置3に表示された、顔にある変色部Sが隠蔽されたシミュレーション画像を確認すると、図示しない操作部を操作して、肌意匠シートの作製開始を指示する。
【0034】
ユーザPが、シミュレーション画像を確認しながら操作部を操作して、肌意匠シートの色や濃度を調整できるようにしてもよい。調整結果が肌意匠シートのデータに反映される。
【0035】
プリント制御部207は、作製開始の指示を受け付けると、肌意匠シートのデータをプリンタ4へ転送する。プリンタ4は、肌意匠シートのデータに基づいてプリント処理を行い、肌意匠シート5を出力する。
【0036】
図8はプリンタ4の概略構成図であり、
図9はプリンタ4で使用される熱転写シート10の平面図である。
【0037】
熱転写シート10は供給部33に巻き付けられており、供給部33から繰り出され、サーマルヘッド31を通って、回収部34に巻き取られて回収されるようになっている。
【0038】
熱転写シート10は、基材シート(図示略)の一方の面に、回収部34側から、転写型の受容層11、イエロー染料層12、マゼンタ染料層13、シアン染料層14、及び保護層15が面順次に形成される。受容層11は、熱転写シート10から移行してくる染料を受容する層であり、透明である。イエロー染料層12、マゼンタ染料層13、シアン染料層14は、バインダ樹脂及び昇華性染料を含有する。受容層11、イエロー染料層12、マゼンタ染料層13、シアン染料層14には公知の材料を用いることができる。
【0039】
保護層15には、透明な樹脂材料を用いることができる。また、保護層15は、肌に貼り付けた際のテカリを抑制するため、表面反射率が低いマット状のものであることが好ましい。ここで、マット状とは、光沢度が40%以下の状態をいう。光沢度は、グロスメータを用いて測定時入射角45°で計測した値である。
【0040】
積層シート20は、積層シートロール36から繰り出される。積層シートロール36は上述の手法で作製されたものであり、図示しない巻軸部品に取り付けられており、巻軸部品を回転(正転/逆転)させると、積層シートロール36が回転し、積層シート20の繰り出しや巻取りが行われる。積層シート20は、剥離シート21の剛軟度が150mg以上あり、かつ伸縮性シート23上に保護フィルム24が設けられているため、剛性が高く、プリンタ4内で安定した搬送性が確保される。
【0041】
プリンタ4において、熱転写シート10を挟んでサーマルヘッド31と反対側には、回転自在なプラテンロール32が設けられている。サーマルヘッド31及びプラテンロール32は、積層シート20及び熱転写シート10を挟み込み、熱転写シート10を加熱する。
【0042】
サーマルヘッド31よりも積層シート20の搬送方向の下流側には、搬送ガイド35が設けられている。搬送ガイド35よりも積層シート20の搬送方向の下流側、かつプリンタ4の排出口(図示略)の近傍にカッター38が設けられている。
【0043】
積層シート20の伸縮性シート23上に所望の色の画像を形成するにあたり、保護フィルム24を剥離する必要がある。そのため、画像形成前に、
図10aに示すように、積層シート20の先端部をプリンタ4の排出口からプリンタ4の外部に排出し、その状態で積層シート20の搬送を一時停止する。
【0044】
図10bに示すように、作業者が、積層シート20の先端部の保護フィルム24を剥離し、ハーフカット26に沿って切断する。
【0045】
作業者は、保護フィルム24を剥離し、積層シート20の先端部の剥離シート21及び伸縮性シート23を露出させると、プリンタ4のボタン等を操作し、画像形成処理の開始指示を与える。画像形成処理の開始指示に伴い、プリンタ4は、積層シートロール36を逆転して積層シート20を巻き取る。
図10cに示すように、積層シート20の先端部はプリンタ4内へ巻き戻される。
【0046】
表面が露出された伸縮性シート23がサーマルヘッド31まで到達すると、サーマルヘッド31は、転写型の受容層11を加熱して、
図11a、
図11bに示すように、積層シート20の伸縮性シート23上に受容層11を転写する。受容層11は、伸縮性シート23の形状に合わせて転写される。
【0047】
次に、サーマルヘッド31は、肌意匠シートのデータに基づいて、イエロー染料層12、マゼンタ染料層13及びシアン染料層14を順に加熱し、受像シート20上の受容層11に染料を移行して、肌意匠シート画像Gを形成する。
【0048】
続いて、熱転写シート10の保護層15を加熱し、
図12a、
図12bに示すように、肌意匠シート画像Gが形成された受容層11上に保護層15を転写する。これにより、剥離シート21上に、粘着層22、伸縮性シート23、肌意匠シート画像Gが形成された受容層11、及び保護層15が順に積層された肌意匠シート5が形成される。
【0049】
その後、カッター38が剥離シート21の先端部を幅方向に切断し、積層シート20から肌意匠シート5が設けられた領域を切り出し、プリンタ4から排出する。カッター38は剥離シート21部分を切断すればよく、粘着層22に刃が触れないため、使用に伴う切断性能の低下を抑制できる。また、剥離シート21の剛軟度が2500mg以下であるため、カッター38による剥離シート21の切断が容易である。
【0050】
次に、
図13a、
図13bに示すような、一方の面に弱粘着層28(第3粘着層)が設けられたカバーシート27を準備する。弱粘着層28はカバーシート27の中央部に帯状に塗布され、その幅は、肌意匠シート5のサイズ(直径)と同程度、又は僅かに大きい。カバーシート27の端部には弱粘着層28は設けられない。
【0051】
図14a、
図14bに示すように、肌意匠シート5(保護層15)の上面に弱粘着層28を接触させてカバーシート27を貼り付ける。
【0052】
肌意匠シート5を利用する際、ユーザは、弱粘着層28が設けられていないカバーシート27の端部をつまみ、
図15に示すように、カバーシート27と共に肌意匠シート5を剥離シート21から剥がす。剥離シート21の表面は凹部が設けられており、粘着層22と剥離シート21との剥離力よりも、弱粘着層28と保護層15との剥離力が高いため、カバーシート27と共に肌意匠シート5を剥離シート21から剥離することができる。
【0053】
図16に示すように、ユーザは、肌意匠シート5が肌の変色部Sを覆うように位置合わせし、粘着層22を用いて肌意匠シート5を肌に貼り付ける。そして、弱粘着層28及びカバーシート27を肌意匠シート5から剥がす。弱粘着層28と保護層15との剥離力よりも、粘着層22と肌との剥離力が高い。また、弱粘着層28と保護層15との剥離力よりも、保護層15と受容層11との剥離力や受容層11と伸縮性シート23との剥離力が高い。そのため、弱粘着層28及びカバーシート27を肌意匠シート5から剥離することができる。
【0054】
このように、本実施形態によれば、ユーザPを撮影した撮影画像から肌意匠シート5をオンデマンドに作製するため、肌意匠シート5の色がユーザPの地肌の色に合ったものとなり、肌意匠シート5を肌に貼り付けた際の違和感を抑制し、自然な仕上がりとなる。
【0055】
また、積層シート20をプリンタ4内で安定して搬送することができ、ジャムの発生を抑制できる。
【0056】
上述したように、積層シート20は、先端部がプリンタ4の外部に一旦排出され、保護フィルム24の剥離後にサーマルヘッド31の位置まで巻き戻される。そのため、
図17に示すように、搬送ガイド35には、表面が露出した伸縮性シート23に接触しないようにリブ35aを設けることが好ましい。例えば、積層シート20の搬送方向に沿って延在する複数のリブ35aが設けられる。
【0057】
積層シート20がサーマルヘッド31の位置まで巻き戻される際、表面が露出した伸縮性シート23は、リブ35a、35a間を通過する。
【0058】
プリンタ4内の搬送ガイド35やガイドローラ(図示略)は非粘着性部材を使用することが好ましい。
【0059】
積層シート20に事前に受容層を設ける場合、伸縮性シート23上に受容層用塗工液を塗布、乾燥する工程で、溶剤によって伸縮性シート23が溶融破損したり、変性・変形したりするおそれがある。そのため、本実施形態では、積層シート20上に熱転写シート10から受容層11を転写することで、伸縮性シート23の特性劣化を抑制する。
【0060】
上記実施形態において、プリンタ4で使用される熱転写シート10に設けられる転写型の受容層11は、白色受容層であってもよい。白色受容層は、酸化チタン等の白色顔料を含むプライマー層と透明受容層とを積層したものである。白色受容層を用いることで、変色部Sからの反射光を抑制し、変色部Sの隠蔽性を高め、所望の肌の色の再現度を向上させることができる。透明受容層に光を散乱させる粒子を含有させてもよい。
【0061】
上記実施形態において、肌意匠シート製造システムの撮影装置1が撮影する部位は顔以外であってもよい。
【0062】
上記実施形態では、撮影装置1がユーザPを撮影して顔画像を生成する例について説明したが、ユーザPが顔画像データを事前に準備し、スマートフォン等の携帯端末やUSBメモリ等の可搬記憶媒体に格納しておき、顔画像データを演算制御装置2に入力するようにしてもよい。
【実施例0063】
次に実施例を挙げて本開示を更に具体的に説明するが、本開示は、これら実施例に限定されるものではない。
【0064】
(積層シートの作製)
以下の剥離シート1~5を準備した。
・剥離シート1:日東電工株式会社製 厚み160μm
・剥離シート2:住友加工紙株式会社製 SLB-110WT 厚み170μm
・剥離シート3:日東電工株式会社製 厚み160μm
・剥離シート4:リンテック株式会社製 TL-250S 厚み376μm
・剥離シート5:新タック化成株式会社製 厚み100μm
【0065】
剥離シート1~5のいずれかを使用し、剥離シート上に粘着剤としてアクリル系の弱粘着剤を塗布して厚み20μmの粘着層を形成し、粘着層上にウレタンフィルム(伸縮性シート)を貼り合わせて、剥離シート、粘着層、伸縮性シートが順に積層された実施例1~5、比較例1~3の積層シートを作製した。実施例1~5、比較例1~3の積層シートに使用した剥離シートの種類、及びウレタンフィルムの厚みは表1に示す通りである。
【0066】
剥離シート1~5の表面に形成されている凹部の深さを表面粗さ測定機(サーフコム1400G、株式会社東京精密製)で測定した。剥離シートをそれぞれサイズ10mm×10mmにカットし、表面粗さ測定機を用いて、剥離シートのTD方向にて、2回測定し、2回の測定の平均値を測定結果とした。測定結果を表1に示す。
【0067】
剥離シート1~5の剛軟度をJIS L 1085記載の方法にて測定した。測定機には、株式会社東洋精機製作所製のガーレー柔軟度試験機を用いた。測定結果を表1に示す。
【0068】
(肌意匠シートの作製)
実施例1~5、比較例1~3の積層シートのウレタンフィルム及び粘着層を、平面視形状が直径15mmの円形となるように加工した。加工後の積層シートを熱転写プリンタ(DS620、大日本印刷株式会社製)にセットし、円形のウレタンフィルム上に受容層を転写し、転写した受容層に画像形成(R,G,B=127/255,127/255,127/255)を行って肌意匠シートを作製し、熱転写プリンタのカッターで剥離シートを切断して、肌意匠シート部分を切り出した。
【0069】
<<搬送性評価>>
熱転写プリンタ内で搬送される積層シートを観察し、下記の評価基準に基づいて搬送性評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
「評価基準」
A:ジャムが発生しなかった
B:ジャムが発生した
【0071】
<<切断性評価>>
熱転写プリンタのカッターによる剥離シート切断箇所を観察し、下記の評価基準に基づいて切断性評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
「評価基準」
A:切断できた
B:切断できずにつながった部分があった
【0073】
<<印画性評価>>
作製された肌意匠シートの色味を観察し、下記の評価基準に基づいて評価した。結果を表1に示す。
【0074】
「評価基準」
A:色むらがなく均一に仕上がった
B:ゆず肌が発生した
【0075】