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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189508
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】濾材及び濾材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/01 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
B01D29/04 510Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098123
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】394019738
【氏名又は名称】株式会社杉原工業
(74)【代理人】
【識別番号】100122622
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徳久
(72)【発明者】
【氏名】杉原 満
(72)【発明者】
【氏名】林 二一
(72)【発明者】
【氏名】河嶋 武彦
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116BB01
4D116BC01
4D116BC25
4D116BC27
4D116BC45
4D116BC48
4D116DD06
4D116FF20B
4D116GG02
4D116KK04
4D116QB50
4D116VV12
4D116ZZ01
(57)【要約】
【課題】従来の濾材を用いる場合に比べて安定した固液分離を行いうる濾材を提供する。
【解決手段】本明細書で開示する濾材は、固液混合原料から液体を分離する濾材である。濾材は、固液混合原料が接触する側の表面と、表面の反対側の裏面とを有する面状の濾材本体を備える。濾材本体には多数個の脱液用加工部が形成されている。多数個の脱液用加工部のそれぞれは、2本の剪断部に挟まれている。2本の剪断部は、表面と裏面の間で濾材本体が剪断されている部分である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固液混合原料から液体を分離する濾材であって、
前記固液混合原料が接触する側の表面と、前記表面の反対側の裏面とを有する面状の濾材本体を備え、
前記濾材本体には多数個の脱液用加工部が形成されており、
前記多数個の脱液用加工部のそれぞれは、2本の剪断部に挟まれており、
前記2本の剪断部は、前記表面と前記裏面の間で前記濾材本体が剪断されている部分である、濾材。
【請求項2】
前記固液混合原料は前記表面上を所定の搬送方向に搬送され、
前記2本の剪断部は、前記搬送方向に沿って形成される、請求項1に記載の濾材。
【請求項3】
前記多数個の脱液用加工部は前記濾材本体と面一に形成されている、請求項1又は2に記載の濾材。
【請求項4】
前記多数個の脱液用加工部のそれぞれの表面は前記濾材本体の前記表面よりも凹んでおり、前記多数個の脱液用加工部のそれぞれの裏面は前記濾材本体の前記裏面よりも突出している、請求項1又は2に記載の濾材。
【請求項5】
前記多数個の脱液用加工部は千鳥配列で形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の濾材。
【請求項6】
前記濾材本体が円筒形状に形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の濾材。
【請求項7】
固液混合原料から液体を分離する濾材の製造方法であって、
前記固液混合原料が接触する側の表面と、前記表面の反対側の裏面とを有する面状の濾材本体の多数箇所を厚み方向にプレスして打ち抜くことによって、多数個の脱液用加工部を形成する加工工程を備え、
前記多数個の脱液用加工部のそれぞれは、2本の剪断部に挟まれており、
前記2本の剪断部は、前記プレスによって、前記表面と前記裏面の間で前記濾材本体が剪断されている部分である、濾材の製造方法。
【請求項8】
前記固液混合原料は前記表面上を所定の搬送方向に搬送され、
前記2本の剪断部は、前記搬送方向に沿って形成される、請求項7に記載の濾材の製造方法。
【請求項9】
前記加工工程の後で、前記多数個の脱液用加工部を、前記加工工程におけるプレス方向とは反対方向にプレスすることによって、前記多数個の脱液用加工部を押し戻す押し戻し工程をさらに備える、請求項7又は8に記載の濾材の製造方法。
【請求項10】
前記押し戻し工程後の前記多数個の脱液用加工部は前記濾材本体と面一に形成される、請求項9に記載の濾材の製造方法。
【請求項11】
前記加工工程では、前記濾材本体の前記多数箇所を前記表面から前記裏面に向かってプレスして打ち抜くことによって、前記多数個の脱液用加工部が形成され、
前記多数個の脱液用加工部のそれぞれの表面は前記濾材本体の前記表面よりも凹んでおり、前記多数個の脱液用加工部のそれぞれの裏面は前記濾材本体の前記裏面よりも突出している、請求項7から9のいずれか一項に記載の濾材の製造方法。
【請求項12】
前記加工工程では、前記濾材本体のうち、千鳥配列された前記多数箇所を前記厚み方向にプレスして打ち抜くことによって、前記多数個の脱液用加工部を千鳥配列で形成する、請求項7から11のいずれか一項に記載の濾材の製造方法。
【請求項13】
前記多数個の脱液用加工部が形成された後の前記濾材本体を円筒形状に形成する形成工程をさらに備える、請求項7から12のいずれか一項に記載の濾材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、例えば汚泥等のように、液体と固形物が混合された状態の固液混合原料から液体・固体を分離するために用いられる濾材と、その濾材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スクリュー脱液機が開示されている。この種のスクリュー脱液機では、使用時にバレル(濾過筒)内周面を覆う濾材が配置される。濾材には、例えば、多数個の細孔が形成された濾布、多数個のスリットが形成された金属板等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-212697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多数個の細孔が形成された濾布、多数個のスリットが形成された金属板などを濾材として使用する場合、濾過対象の固液混合原料が非常に微細な固体を含む場合などには、非常に微細な固体の一部が液体とともに濾材の細孔(又はスリット)を通過して排出されてしまう場合がある。その場合、固液分離が十分に行えないおそれがある。
【0005】
本明細書では、従来の濾材を用いる場合に比べて、安定して固液分離を行い得る濾材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する濾材は、固液混合原料から液体を分離する濾材である。前記濾材は、前記固液混合原料が接触する側の表面と、前記表面の反対側の裏面とを有する面状の濾材本体を備える。前記濾材本体には多数個の脱液用加工部が形成されている。前記多数個の脱液用加工部のそれぞれは、2本の剪断部に挟まれている。前記2本の剪断部は、前記表面と前記裏面の間で前記濾材本体が剪断されている部分である。
【0007】
上記の濾材を用いて固液混合原料の濾過を行う場合、濾材本体の表面側に接するように固液混合原料を配置する。固液混合原料が濾材本体の表面に接触することに伴って、固液混合原料の液体が、脱液用加工部を挟む2本の剪断部を介して裏面側に排出される。剪断部は、表面と裏面の間で濾材本体が剪断されている部分である。そのため、この濾材では、多数の細孔又はスリットが形成された従来の濾材とは異なり、濾材本体の長手方向及び幅方向に隙間がほぼ存在しない。そのため、上記の濾材の表面側に投入された固液混合原料に含まれる液体は、剪断部が形成する極めて微小な間隙を介して裏面側に排出される。すなわち、剪断部は、固液混合原料が微細な粒子状の固体を含む場合であっても、そのような固体を通過させずに捕捉し得る。上記の濾材によると、固液混合原料が微細な粒子状の固体を含む場合であっても、安定して固液分離を行い得る。
【0008】
前記固液混合原料は前記表面上を所定の搬送方向に搬送されてもよい。前記2本の剪断部は、前記搬送方向に沿って形成されてもよい。
【0009】
この構成によると、固液混合原料が搬送方向に沿って搬送されることに伴って、固液混合原料に含まれる液体が、脱液用加工部を挟む2本の剪断部を介して裏面側に排出される。固液混合原料を搬送方向に沿って搬送しながら安定して固液分離を行い得る。
【0010】
前記多数個の脱液用加工部は前記濾材本体と面一に形成されていてもよい。
【0011】
この構成によると、脱液用加工部の両側には、濾材本体の厚み方向に沿って開口する縦向きの空洞(縦孔)が存在しない。濾材に設けられる間隙は、剪断部が形成する極めて微小な間隙のみである。そのため、濾材に投入される固液混合原料に含まれる固体が極めて微細な粒子状であっても、剪断部を通過することなく捕捉され得る。この構成によると、固液混合原料が極めて微細な粒子状の固体を含む場合であっても、固液分離を十分に行い得る。
【0012】
前記多数個の脱液用加工部のそれぞれの表面は前記濾材本体の前記表面よりも凹んでいてもよい。前記多数個の脱液用加工部のそれぞれの裏面は前記濾材本体の前記裏面よりも突出していてもよい。
【0013】
この構成によると、脱液用加工部の両側には、濾材本体の厚み方向に沿って開口する縦向きの空洞(縦孔)が形成され得る。脱液用加工部の両側に縦孔が形成される場合、固液混合原料に含まれる液体は、剪断部の間隙及び縦孔を通じて排出される。濾材に投入される固液混合原料に含まれる固体が比較的大きい粒子状である場合、固体が剪断部及び縦孔を通過することなく捕捉され得る。この構成によると、固液混合原料が比較的大きい粒子状の固体を含む場合であっても、固液分離を十分に行い得る。
【0014】
前記多数個の脱液用加工部は千鳥配列で形成されていてもよい。
【0015】
この構成によると、多数個の脱液用加工部が並列配置で形成される場合に比べて、固液混合原料と脱液用加工部が接する範囲が広く、液抜き性が高い。また、固液混合原料を濾過面に押し付けて液体を圧搾する場合における強度も高い。
【0016】
前記濾材本体が円筒形状に形成されていてもよい。
【0017】
この構成によると、濾材を、例えば、スクリュー式又は螺旋体式の脱液機のバレルの内周面に配置されるバレル用濾材のように、固液混合原料を濾過面に押し付けて液体を圧搾する際の濾材として使用することができる。
【0018】
本明細書で開示する濾材の製造方法は、固液混合原料から液体を分離する濾材の製造方法である。この製造方法は、前記固液混合原料が接触する側の表面と、前記表面の反対側の裏面とを有する面状の濾材本体の多数箇所を厚み方向にプレスして打ち抜くことによって、多数個の脱液用加工部を形成する加工工程を備える。前記多数個の脱液用加工部のそれぞれは、2本の剪断部に挟まれている。前記2本の剪断部は、前記プレスによって、前記表面と前記裏面の間で前記濾材本体が剪断されている部分である。
【0019】
この方法によると、本明細書が開示する上述の濾材を形成することができる。プレス加工で濾材本体を打ち抜くことで、脱液用加工部と剪断部を形成することができる。そのため、金属板をレーザーカット(又はワイヤーカット)してスリットを形成していた従来の濾材の製造方法と比べて、加工時間及び加工コストが大幅に少なく済む。
【0020】
そして、上記の方法で形成される多数個の脱液用加工部を挟む剪断部は、表面と裏面の間で濾材本体が剪断されている部分である。そのため、濾材本体の幅方向及び長さ方向に隙間がほぼ存在しない濾材を形成することができる。従って、固液混合原料が微細な粒子状の固体を含む場合であっても、固液分離を十分に行い得る濾材を製造することができる。
【0021】
前記固液混合原料は前記表面上を所定の搬送方向に搬送されてもよい。前記2本の剪断部は、前記搬送方向に沿って形成されてもよい。
【0022】
この方法によって製造される濾材によると、固液混合原料が搬送方向に沿って搬送されることに伴って、固液混合原料に含まれる液体が、脱液用加工部を挟む2本の剪断部を介して裏面側に排出される。固液混合原料を搬送方向に沿って搬送しながら安定して固液分離を行い得る。
【0023】
前記加工工程の後で、前記多数個の脱液用加工部を、前記加工方向におけるプレス方向とは反対方向にプレスすることによって、前記多数個の脱液用加工部を押し戻す押し戻し工程をさらに備えてもよい。
【0024】
この方法によると、加工工程におけるプレスによって、脱液用加工部の両側に、濾材本体の厚み方向に沿って開口する縦向きの空洞(縦孔)が形成された場合であっても、押し戻し工程において反対方向にプレスされることで、縦孔の開口幅を所望値に調整することができる。また、押し戻し工程でのプレス量を調整することで、縦孔を無くすこともできる。濾過対象の原料の特性に応じて、縦孔の有無及び縦孔を設ける場合の開口幅を調整することができる。
【0025】
前記押し戻し工程後の前記多数個の脱液用加工部は前記濾材本体と面一に形成されてもよい。
【0026】
この方法によると、多数個の脱液用加工部が濾材本体と面一に形成された濾材を製造することができる。製造される濾材の脱液用加工部の両側には、濾材本体の厚み方向に沿って開口する縦向きの空洞(縦孔)が存在しない。固液混合原料が極めて微細な粒子状の固体を含む場合であっても、固液分離を十分に行い得る濾材を製造することができる。
【0027】
前記加工工程では、前記濾材本体の前記多数箇所を前記表面から前記裏面に向かってプレスして打ち抜くことによって、前記多数個の脱液用加工部が形成されてもよい。前記多数個の脱液用加工部のそれぞれの表面は前記濾材本体の前記表面よりも凹んでおり、前記多数個の脱液用加工部のそれぞれの裏面は前記濾材本体の前記裏面よりも突出していてもよい。
【0028】
この方法によると、脱液用加工部の表面が濾材本体の表面よりも凹んでおり、脱液用加工部の裏面が濾材本体の裏面よりも突出した濾材を製造することができる。また、脱液用加工部の変形量によっては、脱液用加工部の両側に、濾材本体の厚み方向に沿って開口する縦向きの空洞(縦孔)が設けられた形成された濾材も製造し得る。固液混合原料に含まれる液体は、剪断部の厚み方向に形成される縦孔を通じて排出されるため、濾材に投入される固液混合原料に含まれる固体がやや大きい粒子状である場合、固体が剪断部及び縦孔を通過することなく捕捉され得る。固液混合原料がやや大きい粒子状の固体を含む場合であっても、固液分離を十分に行い得る濾材を製造することができる。
【0029】
前記加工工程では、前記濾材本体のうち、千鳥配列された前記多数箇所を厚み方向にプレスして打ち抜くことによって、前記多数個の脱液用加工部を千鳥配列で形成してもよい。
【0030】
この方法によると、多数個の脱液用加工部が並列配置で形成される場合に比べて液抜き性が高く、固液混合原料を濾過面に押し付けて液体を圧搾する場合における強度も高い濾材を製造することができる。
【0031】
前記多数個の脱液用加工部が形成された後の前記濾材本体を円筒形状に形成する形成工程をさらに備えてもよい。
【0032】
この方法によると、例えば、スクリュー式又は螺旋体式の脱液機のバレルの内周面に配置されるバレル用濾材のように、固液混合原料を濾過面に押し付けて液体を圧搾する際の濾材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1実施例の濾材を示す平面図。
図2図1の濾材の正面図。
図3図1の濾材のIII-III断面図。
図4図1の濾材をスクリュー脱液機のバレルに使用する場合の例を示す概要斜視図。
図5】第2実施例の濾材を示す平面図。
図6図5の濾材の正面図。
図7図5の濾材のVII-VII断面を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1実施例)
図1図3を参照して、第1実施例の濾材2について説明する。図1図3に示す本実施例の濾材2は、例えば汚泥などの固液混合原料から液体と固体を分離するために用いられる濾材であり、所定の方向に搬送される固液混合原料から液体と固体を分離する濾材である。以下では、固液混合原料のことを単に「原料」と呼ぶ場合がある。
【0035】
本実施例の濾材2は、全体が板状に形成された本体4を備える。本体4は、濾過の対象である原料が接触する側の面(即ち濾過面)である表面6と、表面6の反対側の面である裏面8とを有する。本体4は、例えばステンレス、鉄、アルミ等の金属によって形成されている。
【0036】
本体4には、多数個の脱液用加工部10が形成されている。多数個の脱液用加工部10は、濾材2の長手方向(図中のX軸方向)に沿って相互に平行に形成されている。濾材2の長手方向は濾過の対象である原料の搬送方向と同方向である。図1に示すように、多数個の脱液用加工部10は、千鳥配列で形成されている。
【0037】
各脱液用加工部10の幅方向(図中のY軸方向)の両端は、2本の剪断部20によって挟まれている。本実施例では、2本の剪断部20は原料の搬送方向であるX軸方向に沿って形成されている。本実施例では、2本の剪断部20は相互に平行な直線状に形成されている。図3に示すように、各剪断部20は、表面6と裏面8の間で本体4が剪断されている部分である。図1図3に示すように、剪断部20は、本体4の幅方向及び長手方向(図中のX軸方向及びY軸方向)に隙間がほぼ存在しない。本体4には、剪断部20によって本体4が剪断されて形成されるきわめて微小な間隙のみが存在する。剪断部20の間隙の幅は例えば10μm~100μm程度である。従来の濾材が備えるスリット(レーザーカット又はワイヤーカットで形成されるスリット)の幅は、最も細いものでも0.3mm程度であるため、本実施例の剪断部20の間隙の幅は従来よりも大幅に狭いと言える。
【0038】
後で説明するように、剪断部20及び脱液用加工部10は、プレス加工で本体4の多数箇所(すなわち脱液用加工部10相当部分)を打ち抜くことによって形成される。すなわち、脱液用加工部10は、プレス加工の際に押圧される押圧箇所である。脱液用加工部10の長手方向両端は剪断されていない。脱液用加工部10の長手方向の両端は本体4と接合されている。
【0039】
図2図3に示すように、本実施例では、多数個の脱液用加工部10は、いずれも、本体4と面一に形成されている。後で説明するように、プレス加工によって脱液用加工部10と剪断部20を形成した後、脱液用加工部10を反対側からプレス加工して押し戻すことによって、脱液用加工部10を本体4と面一に形成している。
【0040】
(濾材2の製造方法)
本実施例の濾材2の製造方法を説明する。まず、板状に形成された金属製の本体4を準備する。
【0041】
次に、多数個の脱液用加工部10を形成するための加工工程を行う。加工工程では、本体4の多数箇所(即ち、多数個の脱液用加工部10に相当する部分)を、厚み方向(Z軸方向)にプレスして打ち抜く。プレスされる箇所は千鳥配列で並んでいる。プレスは表面6側から裏面8側に向けて行われる。他の例ではプレスが裏面8側から表面6側に向けて行われてもよい。プレスで打ち抜かれることにより、本体4には多数個の脱液用加工部10が千鳥配列で形成される。この際、本体4のうち、押圧される部分(脱液用加工部10)の幅方向両側が表面6から裏面8に亘って剪断され、2本の剪断部20が形成される。長手方向両端は剪断されず、本体4と接合された状態で維持される。この時点では、形成された脱液用加工部10はプレス方向に凹んでおり、その幅方向両側には、本体4の厚み方向に沿って開口する縦向きの空洞(縦孔)が存在する。
【0042】
次に、押し戻し工程を行う。押し戻し工程では、形成された多数個の脱液用加工部10を上記の加工工程のプレスとは反対方向にプレスすることによって、多数個の脱液用加工部10を押し戻す。すなわち、多数個の脱液用加工部10を裏面8側から表面6側に向けて押し戻す。プレスで押し戻されることにより、多数個の脱液用加工部10は、本体4と面一に形成される(図2図3参照)。加工工程で形成された縦孔は消失する。脱液用加工部10の幅方向両側に形成された剪断部20は残る。完成した剪断部20は、本体4の長手方向及び幅方向には隙間がほぼ存在しない。以上の各工程を実行することによって本実施例の濾材2が得られる。
【0043】
以上、本実施例の濾材2の構成と製造方法を説明した。本実施例の濾材2を用いて原料の濾過(脱液と呼んでもよい)を行う場合、本体4の表面6側に接するように原料を投入する。原料が本体4の表面6に接触することで、原料に含まれる液体が脱液用加工部10を挟む2本の剪断部20を介して裏面8側に排出される。上記の通り、本実施例の濾材2の剪断部20は、表面6と裏面8の間で本体4が剪断された部分である。そのため、本実施例の濾材2では、多数の細孔又はスリットが形成された従来の濾材とは異なり、本体4の長手方向及び幅方向に隙間がほぼ存在しない。本体4の表面6側に投入された原料に含まれる液体は、剪断部20が形成する極めて微小な間隙を介して裏面8側に排出される。すなわち、剪断部20は、原料が微細な粒子状の固体を含む場合であっても、そのような固体を通過させずに捕捉することができる。本実施例の濾材2によると、原料が微細な粒子状の固体を含む場合であっても、安定して固液分離を行うことができる。
【0044】
また、本実施例の濾材2では、本体4の表面6側に投入された原料は、表面6上を所定の搬送方向に沿って搬送されながら固液分離される。各剪断部20は搬送方向に沿って形成されている。本実施例の濾材2では、原料を搬送しながら安定して固液分離を行うことができる。
【0045】
また、各剪断部20の間隙が極めて微小であるうえ、表面6と裏面8の間で本体4が剪断されて形成されているため、剪断部20の間隙の目詰まりも起こりにくい。
【0046】
また、多数個の脱液用加工部10は本体4と面一に形成されている(図2図3参照)。即ち、脱液用加工部10の両側には、本体4の厚み方向(図中のZ軸方向)に沿って開口する縦向きの空洞(縦孔)が存在しない。濾材2に設けられる間隙は、剪断部20が形成する極めて微小な間隙のみである。そのため、濾材2に投入される原料に含まれる固体が極めて微細な粒子状(例えば直径0.1mm程度の粒子状)であっても、剪断部20を通過することなく捕捉することができる。原料が極めて微細な粒子状の固体を含む場合であっても、固液分離を十分に行い得る。
【0047】
また、脱液用加工部10は千鳥配列で形成されている(図1参照)。そのため、多数個の脱液用加工部10が並列配置で形成される場合に比べて、原料と脱液用加工部10が接する範囲が広い。搬送方向に沿って原料が搬送される間、原料は常時いずれかの脱液用加工部10と接する。そのため、脱液用加工部10が並列配置で形成される場合に比べて、液抜き性が高い。また、原料を濾過面に押し付けて液体を圧搾する場合における強度も高い。
【0048】
本実施例の製造方法で濾材2を製造する場合、プレス加工を行って本体4を打ち抜くことで、脱液用加工部10と剪断部20を形成することができる。そのため、金属板をレーザーカット(又はワイヤーカット)してスリットを形成していた従来の濾材の製造方法と比べて、加工時間及び加工コストが大幅に少なく済む。
【0049】
また、プレス加工で本体4を打ち抜くことで各剪断部20を形成するため、形成される各剪断部20の間隙の長さ及び幅にバラツキが生じにくい。従って、本実施例の製造方法で形成した濾材2によると、細孔の径にバラツキが多い従来の濾布等と比較して固液分離を安定して行うことができる。
【0050】
(濾材2の代表的な使用例)
図4を参照して、本実施例の濾材2の代表的な使用例を説明する。本実施例の濾材2は、原料を濾過面である表面6に押し付けて、原料から液体を圧搾する際の濾材として使用される場合において、上述の作用効果をとくに発揮することができる。例えば、図4に示すように、濾材2は、円筒形に形成して、スクリュー式又は螺旋体式の脱液機のバレル70の内周面に配置される濾材2として用いることができる。この種の脱液機は、円筒状のバレル(濾過筒)70と、バレル70内に配置された螺旋体80(又はスクリュー体)と、螺旋体80を回転させてバレル70内(正確にはバレル70内の螺旋体80のピッチ間)に投入された原料を螺旋体80の出口側端部74に向かって送り出す搬送機構(図示しない)を有している。
【0051】
バレル70は、剛性を有するパンチングメタル等の多孔板によって円筒状に形成された筒状部材である。バレル70は、第1バレル部材70aと、第2バレル部材70bとに分割可能である。第1バレル部材70a、第2バレル部材70bは、それぞれ、バレル70の軸心に沿ってバレル70を半分に分割した形状を備える。第1バレル部材70aと第2バレル部材70bとを組み合わせることにより、円筒状のバレル70(図4参照)が形成される。バレル70のうちの一方の端部は、原料が投入される入口側端部72であり、他方の端部は、原料の搬送方向先方であり、脱液後のケークが排出される出口側端部74である。
【0052】
螺旋体80は、バレル70と同心状に配置された回転軸82の外面表面に固定されたスクリュー螺旋部材84を有する。スクリュー螺旋部材84は、ピッチ間隔が、出口側に向けて狭くなるように形成されている。本実施例では、スクリュー螺旋部材84は、断面四角形の金属材(金属棒)をコイル状に巻いて成形された部材である。他の例では、スクリュー螺旋部材84は、断面円形の金属材をコイル状に巻いて成形された部材であってもよいし、断面が四角形以外の多角形(例えば、三角形、六角形等)の金属棒をコイル状に巻いて成形された部材であってもよい。
【0053】
図4に示すように、本実施例の濾材2をこの種の脱液機のためのバレル70に使用する場合、濾材2を、図1のX軸方向が軸方向になるように円筒形状に変形させる(形成工程)。この際、原料が接触する表面6が内周面、裏面8が外周面になるように成形する。円筒形状に変形された濾材2は、バレル70の内周面に配置される(図4参照)。この際、各剪断部20は長手方向(即ち原料の搬送方向)に沿って配置される。
【0054】
本実施例の濾材2を備えた脱液機で原料の脱液を行う場合、スクリュー螺旋部材84のピッチ間に原料が投入される。スクリュー螺旋部材84が回転することにより、投入された原料は出口側端部74に向かって送られる。この際、出口側端部74に向かうに従って、スクリュー螺旋部材84のピッチ間隔(即ち原料の通路)が徐々に狭くなるため、原料は、濾材2を有するバレル70の内周面と回転軸82とで圧搾脱液される。この結果、固液混合原料から液体が分離される。分離された液体は、濾材2の剪断部20が形成する極めて微小な間隙を通過するとともに、バレル70に形成された多数個の脱液孔から排出される。液体が除去された後の原料(即ち脱液後の固形物。「ケーク」とも呼ばれる)は、出口側端部74から外部に排出される。
【0055】
(第2実施例)
図5図7を参照して、第2実施例の濾材102について説明する。本実施例の濾材102も、その基本的な構成は第1実施例の濾材2と共通する。図5図7では、第1実施例と同様の構成は図1図3と同じ符号を用いて示し、詳しい説明を省略する。
【0056】
本実施例の濾材102は、脱液用加工部10の形状において第1実施例とは異なる。本実施例では、多数個の脱液用加工部10のそれぞれの表面16は本体4の表面6よりも凹んでおり、多数個の脱液用加工部10のそれぞれの裏面18は本体4の裏面8から突出している。図6図7に示すように、本実施例では、脱液用加工部10の両側には、本体4の厚み方向に沿って開口する縦向きの空洞である縦孔30が形成される。縦孔30の開口幅(Z軸方向における幅)は、濾過対象の原料に応じて異なる。縦孔30の開口幅は例えば100μm~0.5mmの範囲内の任意の値である。縦孔30の開口幅はこれ以外の値であってもよい。一方、図5に示すように、本実施例でも、剪断部20は、本体4の幅方向及び長手方向(図中のX軸方向及びY軸方向)に隙間がほぼ存在しない。本実施例の脱液用加工部10は、両側開口のルーバー状に形成されていると言ってもよい。
【0057】
また、本実施例の濾材102も、第1実施例の濾材2と同様に、円筒形に形成したうえで、スクリュー式又は螺旋体式の脱液機のバレル70の内周面に配置される濾材として用いることができる(図4参照)。
【0058】
続いて、本実施例の濾材102の製造方法を説明する。本実施例では、加工工程の実行後、押し戻し工程が行われない点が第1実施例とは異なる。本実施例では、板状に形成された金属製の本体4に対し、多数個の脱液用加工部10を形成するための加工工程を行う。加工工程では、本体4の多数箇所(即ち、多数個の脱液用加工部10に相当する部分)を、厚み方向(Z軸方向)にプレスして打ち抜く。これにより多数個の脱液用加工部10が形成される。この際、本体4のうちの脱液用加工部10の幅方向両側が表面6から裏面8に亘って剪断され、2本の剪断部20が形成される。脱液用加工部10の表面16は本体4の表面6よりも凹んでおり、脱液用加工部10の裏面18は本体4の裏面8から突出している。脱液用加工部10の幅方向両側には、本体4の厚み方向に沿って開口する縦孔30が存在する。加工工程におけるプレス量を調整することにより、縦孔30の開口幅を所望の値に調整することができる。そして、本実施例では加工工程の実行後に押し戻し工程が行われない。加工工程が完了することによって本実施例の濾材102が得られる。
【0059】
本実施例の濾材102の構成と製造方法について説明した。本実施例の濾材102も、基本的には第1実施例の濾材2と同様の作用効果を発揮する。さらに、本実施例の濾材102では、脱液用加工部10の両側に縦孔30が形成される。そのため、原料に含まれる液体は、剪断部20の間隙及び縦孔を通じて排出される。濾材2に投入される原料に含まれる固体がやや大きい粒子状(例えば、0.5mm~1mm程度の粒子状)である場合、固体が剪断部20及び縦孔30を通過することなく捕捉され得る。本実施例の濾材102によると、原料がやや大きい粒子状の固体を含む場合であっても、固液分離を十分に行うことができる。また、縦孔30から効率よく液体を排出することができるため、固液分離を効率よく行うことができる。
【0060】
本実施例の濾材102の製造方法によると、プレス量を調整することで縦孔30の開口幅を所望の値に調整することができる。従って、対象の原料の特性に応じて縦孔30の開口幅を簡易に調節することができる。
【0061】
以上、本明細書で開示する技術の実施例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を含んでもよい。
【0062】
(変形例1)上記の各実施例では、濾材2、102は、円筒形に形成したうえで、スクリュー式又は螺旋体式の脱液機のバレル70の内周面に配置される濾材として用いられる。これに限られず、濾材2、102は、板状のまま使用されてもよいし、円筒形以外の形状に変形させて使用されてもよい。
【0063】
(変形例2)上記の各実施例では、多数個の脱液用加工部10は千鳥配列で形成されている(図1図5参照)。これに限られず、多数個の脱液用加工部10が並列配置で形成されていてもよい。
【0064】
(変形例3)第2実施例の製造方法において、加工工程の後に押し戻し工程を行ってもよい。すなわち、加工工程において本体4をプレスして剪断することで、多数個の脱液用加工部10と剪断部20と縦孔30を形成した後で、押し戻し工程で脱液用加工部10を反対側からプレスして、縦孔30の開口幅を所望の値に調整するようにしてもよい。
【0065】
(変形例3a)上記の変形例3において、押し戻し工程で脱液用加工部10を反対側からプレスすることで、縦孔30を無くしてもよい。その場合、脱液用加工部10の表面16は本体4の表面6よりも凹んでおり、裏面18は本体4の裏面8から突出しているが、縦孔30は形成されない。この場合の表面16の凹み量及び裏面18の突出量は、本体4の厚みよりも小さい。縦孔30を無くすか形成するかは濾過対象の原料の特性に応じて切り替えてもよい。
【0066】
(変形例4)第2実施例では、脱液用加工部10の表面16は本体4の表面6よりも凹んでおり、脱液用加工部10の裏面18は本体4の裏面8から突出している。変形例では、これとは逆に、脱液用加工部10の表面16は本体4の表面6よりも突出し、脱液用加工部10の裏面18は本体4の裏面8から凹んでいてもよい。さらに他の変形例では、多数個の脱液用加工部10のうちの一部と他の一部との突出方向が異なっていてもよい。
【0067】
(変形例5)上記の各実施例では、2本の剪断部20は相互に平行な直線状に形成されている(図1図5参照)。これに限られず、変形例では、2本の剪断部20は屈曲した線状、曲線状等、任意の形状に形成されてもよい。さらに他の変形例では、2本の剪断部20が非対称に形成されていてもよい。
【0068】
(変形例6)上記の各実施例では、濾材2、102は、搬送方向に搬送される原料から液体を分離する。これに限られず、濾材2、102は、表面6側に投入された原料が搬送されない場合であっても、原料から液体を分離可能であってもよい。例えば、濾材2、102は、表面6側に投入された原料に対して、表面6に向かう方向に圧力を加えることで(いわゆる加圧濾過によって)原料から液体を分離する濾材であってもよい。本変形例において、各剪断部20は任意の方向に沿って形成されていてもよい。例えば、各剪断部20がランダムな向きに形成されていてもよい。
【0069】
(変形例7)さらに、上記各実施例の濾材2、102において、各剪断部20が任意の方向に沿って形成されていてもよい。例えば、上記の各剪断部20がランダムな向きに形成されていてもよい。
【0070】
また、本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0071】
2:濾材
4:本体
6:本体の表面
8:本体の裏面
10:脱液用加工部
16:脱液用加工部の表面
18:脱液用加工部の裏面
20:剪断部
30:縦孔
70:バレル
70a:第1バレル部材
70b:第2バレル部材
72:入口側端部
74:出口側端部
80:螺旋体
82:回転軸
84:スクリュー螺旋部材
102:濾材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7