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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189509
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ペットカメラ用の電源ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
H02G3/04 062
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098124
(22)【出願日】2021-06-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 宏之
(72)【発明者】
【氏名】西脇 大貴
(72)【発明者】
【氏名】黒木 研一
(72)【発明者】
【氏名】青木 正和
(72)【発明者】
【氏名】片山 彰
(72)【発明者】
【氏名】押方 勇介
(72)【発明者】
【氏名】川添 久美子
【テーマコード(参考)】
5G357
【Fターム(参考)】
5G357DB01
5G357DD01
5G357DD05
5G357DE08
(57)【要約】
【課題】ペットの安全性とペットカメラの転倒防止構造を働かせながら撮影の持続性を確保できる。
【解決手段】ペットカメラ用の電源ケーブルは、設置面に吸着する吸盤ユニットを有して側方からの外力による転倒を抑制するペットカメラに用いられる。電源ケーブルは、導体が絶縁材で被覆された外周形状が円形の電線と、可撓性を有し内外周形状が円形に形成され内径側に電線を挿通するチューブと、弾性線材を螺旋状に巻いて内外周形状が円形に形成され外径側が第1間隙を有してチューブの内径側に挿通されるとともに内径側に第2間隙を有して電線を挿通するコイルスプリングと、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に載置されて側方からの外力による転倒を抑制するペットカメラに接続されるペットカメラ用の電源ケーブルであって、
導体が絶縁材で被覆された外周形状が円形あるいは平形の電線と、
可撓性を有し、内外周形状が円形に形成され、内径側に前記電線を挿通するチューブと、
弾性線材を螺旋状に巻いて内外周形状が円形に形成され、外径側が第1間隙を有して前記チューブの内径側に挿通されるとともに、内径側に第2間隙を有して前記電線を挿通するコイルスプリングと、を備える、
ペットカメラ用の電源ケーブル。
【請求項2】
前記チューブの肉厚は、0.5~2.0mmである、
請求項1に記載のペットカメラ用の電源ケーブル。
【請求項3】
前記第1間隙は、前記チューブが半径方向内側に潰れて長円となった変形状で前記コイルスプリングを前記長円の長軸方向の一端側に移動させる距離である、
請求項1または2に記載のペットカメラ用の電源ケーブル。
【請求項4】
前記コイルスプリングの隣接する線材同士は、前記チューブを貫通したペットの歯の侵入を抑制する所定の距離に設定される、
請求項1に記載のペットカメラ用の電源ケーブル。
【請求項5】
前記第2間隙は、前記チューブを貫通したペットの歯が、前記コイルスプリングの内径側に届いたときに前記電線が前記コイルスプリングの半径方向の一端側に移動する距離である、
請求項1~4のうちいずれか一項に記載のペットカメラ用の電源ケーブル。
【請求項6】
前記チューブは、透明材料により形成される、
請求項5に記載のペットカメラ用の電源ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ペットカメラ用の電源ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内に置かれるペット撮影用のネットワークカメラ装置が知られている(例えば特許文献1参照)。このネットワークカメラ装置は、ペットに水を飲ませる水入れ容器と、ペットにえさを食べさせる餌入れ容器と、ペットを撮影してペット画像を取得するためのカメラ部と、ネットワークに接続して、クライアントへのペット画像の送信を含むデータ通信を行うためのネットワーク部と、装置各部を制御する制御部と、少なくともカメラ部を水入れ容器または/および餌入れ容器から、上方に所定の距離隔たる態様で、保持する保持部とを備えてなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-223033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来から知られているACアダプタに使用されている電源ケーブルを上述のペット撮影用のネットワークカメラ装置(以下、単にペットカメラと称す)に使用した場合、屋内にいる猫や犬等のペットが歩いたり飛んだりして移動したり、あるいは近くで遊んだりする際に、いたずらで電線を噛むことがある。よって、ペットカメラでは、ペットが電線を噛むことで断線し、ペットを撮像し続けることができない可能性や、ペットの感電、感電に伴う漏電によって火災につながる可能性がある。これに対し、噛まれても電線を守るものとして、フレキシブル金属管(例えばケーシングチューブ)等を利用したものもあるが、これは固くて強固であるがゆえに、自在に曲がらないため、電線の配線処理が思うようにできない。これに加え、フレキシブル金属管等で保護された電線は、その固さによりペットカメラが持ち上がってしまい、ペットカメラが外力による転倒を抑制する機構を有する場合には、転倒防止機能が働かなくなることが懸念される。また、ペットカメラには、樹脂やゴムチューブだけの保護カバーが付けられた電線もあり、配線処理のしにくさや、ペットカメラの持ち上がりは抑制できるものの、強度が低く、かつ脆いために、電線の保護は十分ではなかった。
【0005】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、ペットの安全性とペットカメラの転倒防止構造を働かせながら撮影の持続性を確保できるペットカメラ用の電源ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、設置面に載置されて側方からの外力による転倒を抑制するペットカメラに接続されるペットカメラ用の電源ケーブルであって、導体が絶縁材で被覆された外周形状が円形の電線と、可撓性を有し、内外周形状が円形に形成され、内径側に前記電線を挿通するチューブと、弾性線材を螺旋状に巻いて内外周形状が円形に形成され、外径側が第1間隙を有して前記チューブの内径側に挿通されるとともに、内径側に第2間隙を有して前記電線を挿通するコイルスプリングと、を備える、ペットカメラ用の電源ケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ペットカメラ用の電源ケーブルにおいて、ペットの安全性とペットカメラの転倒防止構造を働かせながら撮影の持続性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るペットカメラ用の電源ケーブルが接続されたペットカメラを前面側より見た外観斜視図
図2】ペットカメラ用の電源ケーブルが接続されるペットカメラの要部側断面図
図3図1に示したペットカメラを背面側より見た外観斜視図
図4】電源ケーブルの平面図
図5】ケーブル本体の要部拡大斜視図
図6A】ケーブル本体を長手方向に直交する面で切断した断面図
図6B】ペットによる噛みつき動作時の、ケーブル本体を長手方向に直交する面で切断した断面図
図7】ペットによる噛みつき動作を(A)~(E)の損傷の大きくなる順で表した説明図
図8】ケーシングチューブを利用した従来の電源ケーブルに接続されたペットカメラの要部側断面図
図9】ペットカメラ用の電源ケーブルに接続されたペットカメラの要部側断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るペットカメラ用の電源ケーブルを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0010】
図1は、実施の形態1に係るペットカメラ用の電源ケーブル13が接続されたペットカメラ11を前面側より見た外観斜視図である。実施の形態1に係るペットカメラ用の電源ケーブル(以下、単に電源ケーブルとも称す)13は、例えば屋内カメラであるペットカメラ11に対する給電用として好適に用いられる。なお、電源ケーブル13の使用対象はペットカメラ11に限定されない。すなわち、電源ケーブル13は、犬あるいは猫等のペットが接触する可能性のある空間に設置された全ての電気製品を使用対象に含めることができる。
【0011】
電源ケーブル13の説明に先立ち、電源ケーブル13の接続先の電気製品の一例として用いられるペットカメラ11についてその概略の構成を説明する。
【0012】
ペットカメラ11は、上部キャビネット15の下に、円筒状のベースキャビネット17を有する。上部キャビネット15は、レンズ19を備えた撮像部21を有する。レンズ19は、撮像筐体23の円筒面25に配置される。撮像部21は、撮像開口部27の大きさに応じた角度だけチルト機構(不図示)によりチルト回転される。
【0013】
上部キャビネット15の上部側面には、複数のペット検知センサ29が設けられる。複数のペット検知センサ29(例えば赤外線センサ)のそれぞれは、上部キャビネット15の内方に設けられた制御部(不図示)に接続され、検知された熱源位置をペットの位置として制御部に出力する。制御部は、入力されたペットの位置に基づいて、撮像部21の撮像領域内にペットが位置するようにチルトモータ(不図示)またはパンモータ31(図2参照)を駆動させ、上部キャビネット15をパン回転させ、撮像部21をチルト回転させる。
【0014】
図2は、ペットカメラ用の電源ケーブル13が接続されるペットカメラ11の要部側断面図である。このペットカメラ11は、設置面33(図8参照)に載置されるとともに、この設置面33に吸着する吸盤ユニット35を有し、側方からの外力による転倒を抑制する転倒防止機能(転倒防止構造)を備える。ベースキャビネット17は、内方に吸盤ユニット35を有する。ペットカメラ11では、ベースキャビネット17が吸盤ユニット35を介して、例えばタンス37(図8参照)、本棚あるいはテーブル天板等の平面の設置面33に設置される。吸盤ユニット35に備えられる吸盤39は、内部空間41が、上部開口部43の外周部と、下部開口部45の外周部とで開口する。ペットカメラ11は、ユーザにより設置面33に設置されると、吸盤ユニット35の上部開口部43の外周部がペットカメラ11内に搭載されている機構系(図示略)の荷重を支持しているモータホルダ47により塞がれる。モータホルダ47には、例えばパンモータ31を含むペットカメラ11の機構部(図示略、上述参照)の荷重が加わる。なお、ペットカメラ11の転倒防止構造(上述参照)は、上部開口部43および下部開口部45を有する吸盤39が、上部開口部43の外周部が機構部(図示略、上述参照)によって、さらに、下部開口部45の外周部が設置面33で密閉されることで機能することになる。
【0015】
ペットカメラ11は、設置面33への設置状態において、ユーザにより垂直方向へ持ち上げられると、吸盤39の上部開口部43を塞いでいたモータホルダ47が上昇する。すると、吸盤39の内部空間41は、上部開口部43が開放され、吸盤39の内部空間41が密閉空間でなくなる。よって、ペットカメラ11は、容易な持ち上げが可能となる。
【0016】
一方、ペットカメラ11は、ペットがすり寄るあるいは接触した際に、側方から上部キャビネット15に外力を受ける。この際、吸盤ユニット35に載置されたモータホルダ47は、垂直方向に持ち上がらずに斜めに傾く。ペットカメラ11は、モータホルダ47が傾くと、吸盤39の下部開口部45の外周部が設置面33から剥がされるように弾性変形する。この弾性変形は、吸盤39における内部空間41の容積を増加する変形となる。これにより、下部開口部45の外周部および上部開口部43の外周部が閉塞された吸盤39は、内部空間41が大気圧と比較してより負圧になり、設置面33への吸着状態を維持できる。その結果、ペットカメラ11は、側方の外力を受けても、転倒を抑制することができる。
【0017】
図3は、図1に示したペットカメラ11を背面側より見た外観斜視図である。転倒防止機能を備えるペットカメラ11は、外部からの給電を行うための電源ケーブル13が接続可能となっている。ベースキャビネット17の円周方向の一部には、電源ケーブル13の一方の端末を接続するための凹部49が形成される。電源ケーブル13は、一方の端末にDCジャック51が取り付けられる。DCジャック51は、上部キャビネット15の下部に配置されているDCジャック挿入口53(図2参照)に、凹部49から挿入されてペットカメラ11に接続される。これにより、電源ケーブル13とペットカメラ11との電気的な導通が可能となるため、電源ケーブル13を介してペットカメラ11に電源が供給される。
【0018】
図4は、電源ケーブル13の平面図である。電源ケーブル13は、ケーブル本体55の一方の端末に上述のDCジャック51が取り付けられる。DCジャック51は、絶縁樹脂により一体成形されるジャックハウジング57を有する。ジャックハウジング57は、先端に、電気接触部となるジャック59を突出させる。このジャック59が、DCジャック挿入口53に挿入されることにより、ペットカメラ11は、電源ケーブル13を介した給電が可能となる。
【0019】
ジャックハウジング57では、ジャック59の突出方向と直交する方向に、軸状の電線導出部61が形成される。ジャック59と接続された電線63(図5参照)は、この電線導出部61からジャックハウジング57の外側へ導出される。ジャックハウジング57から導出された電線63は、ジャックハウジング57からの導出部分が、ジャックハウジング57と一体に成形されたブーツ部65により覆われる。ブーツ部65は、ジャックハウジング57の電線導出部61とほぼ同一外径の筒状部から電線導出方向に向かって小径となるテーパ形状で形成される。ブーツ部65は、複数の周溝が多段状に設けられることにより、屈曲性を有しながら、電線導出部61の引っ張り強度、屈曲強度を高めている。
【0020】
ケーブル本体55の他方の端末には、AC/DC変換部(例えばACアダプタ67)が接続される。ACアダプタ67は、絶縁樹脂からなる直方体のアダプタハウジング69を有する。アダプタハウジング69は、内部に変換回路(不図示)を収容する。ケーブル本体55の電線63は、このアダプタハウジング69の変換回路における2次電源回路に接続される。
【0021】
電線63は、アダプタハウジング69の近傍においても、アダプタハウジング69に一体に固定される上述と同様のブーツ部65により覆われる。アダプタハウジング69は、電線63が接続される面と直交する1つの面に、変換回路の1次回路に接続される一対のプラグ端子71が相互に平行となって突出して設けられる。ACアダプタ67は、例えば家庭の商用電源が供給されるコンセントに、このプラグ端子71が挿入される。
【0022】
コンセントにプラグ端子71が挿入された電源ケーブル13は、プラグ端子71から入力されるAC電源が、変換回路でDC電源に変換されてジャック59よりペットカメラ11へ給電される。
【0023】
なお、電源ケーブル13は、実施の形態1において、2次電源用のケーブルとして説明するが、電源ケーブル13は、DCジャック51やACアダプタ67を備えず、ケーブル本体55の両端に他の形式のコネクタが接続されてもよい。また、電源ケーブル13は、上述した2次電源用の他、電線63の仕様を適宜変更することにより、1次電源用としても採用が可能となる。
【0024】
図5は、ケーブル本体55の要部拡大斜視図である。図6Aは、ケーブル本体55を長手方向に直交する面で切断した断面図である。図6Bは、ペットによる噛みつき動作時の、ケーブル本体55を長手方向に直交する面で切断した断面図である。電源ケーブル13のケーブル本体55は、電線63と、チューブ73と、コイルスプリング75と、により構成される。
【0025】
電線63は、導体77が絶縁材79で被覆されて円形の外周形状で形成される。なお、電線63は、導体77が絶縁材79で被覆されていれば、円形以外の外周形状で形成されてもよい。例えば、電線63は、導体77が絶縁材79で被覆されて平形の外周形状で形成されてもよい。電線63は、単芯、多芯であってよい。導体77は、単線、平行線、撚り線であってよい。導体77の材質は、銅、アルミ等であってよい。絶縁材79は、表面の滑性が良好なフッ素樹脂の他、塩ビ(つまりポリ塩化ビニール。以下同様。)、ポリウレタン、ポリエチレン、発泡ポリエチレン等であってよい。実施の形態1において、電線63は、2本の導体77を有する。なお、電線63は、導体77のそれぞれが内部被覆で覆われ、その外周が絶縁材79により一括して覆われてもよい。また、電線63は、絶縁材79の外周がさらに外被により覆われてもよい。
【0026】
チューブ73は、可撓性を有し、内外周形状が円形に形成され、内径側に電線63を挿通する。可撓性を有するチューブ73には、特に軟質チューブが好適に用いられる。軟質チューブの素材としては、例えば軟質ビニール(塩ビ等)、ゴム、シリコンゴム等を挙げることができる。
【0027】
実施の形態1において、チューブ73は、肉厚が、例えば0.5~2.0mmに設定される。なお、チューブ73の肉厚は、これに限定されない。
【0028】
また、実施の形態1において、チューブ73は、軟質ビニール等の透明材料により形成される。この透明材料は、内側に通されるコイルスプリング75が視認できるものであればよい。なお、チューブ73は、透明材料により形成されなくてもよい。
【0029】
コイルスプリング75は、弾性線材81を螺旋状に巻いて内外周形状が円形に形成される。コイルスプリング75は、外径側が第1間隙S1(図6A参照)を有して、チューブ73の内径側に挿通される。また、コイルスプリング75は、内径側に第2間隙S2(図6参照)を有して、電線63を挿通する。弾性線材81の材質は、ばね鋼材、リン青銅、ステンレスの他、硬質樹脂等であってもよい。一例として、コイルスプリング75は、線径をφ0.3~2.0mm、外径をφ4~10mmで構成することができる。なお、コイルスプリング75の線径、外径は、これに限定されない。
【0030】
実施の形態1において、コイルスプリング75は、隣接する線材同士が、チューブ73を貫通したペットの歯83の侵入(図6B参照)を抑制する距離に設定されている。なお、隣接する弾性線材同士は、相互に接触してもよい。一例として、コイルスプリング75は、弾性線材同士の平均隙間を0~5.0mm、より好ましくは0~1.0mmとすることができる。
【0031】
ケーブル本体55は、電線63、コイルスプリング75、チューブ73を、中心側からこの順で同心円として配置される。なお、ケーブル本体55は、実際には、チューブ73の内側で、重力等により、コイルスプリング75、電線63が偏芯した位置となる。電線63の外径はD1である。コイルスプリング75は、内径がB2、外径がD2である。チューブ73は、内径がB3、外径がD3である。
【0032】
チューブ73の内径側とコイルスプリング75の外径側との間には、チューブ73の内径B3からコイルスプリング75の外径D2を減じた第1間隙S1が設けられる。電線63の外径側とコイルスプリング75の内径側との間には、コイルスプリング75の内径B2から電線63の外径D1を減じた第2間隙S2が設けられる。
【0033】
電源ケーブル13のケーブル本体55の第1間隙S1は、チューブ73が半径方向内側に潰れて長円となった変形状でコイルスプリング75を長円の長軸方向に移動させることができるのに十分な距離で設定される。
【0034】
また、電源ケーブル13のケーブル本体55の第2間隙S2は、チューブ73を貫通したペットの歯83が、コイルスプリング75の内径側に届いたときに電線63が半径方向に移動することができるのに十分な距離で設定される。
【0035】
電源ケーブル13のケーブル本体55は、コイルスプリング75の両端が、ブーツ部65のテーパ先端の外径側を内径側に挿入して、DCジャック51とACアダプタ67との間に渡って設けられる。また、電源ケーブル13は、チューブ73の両端が、ブーツ部65のテーパ先端を内径側に挿入したコイルスプリング75の外径側を覆って、DCジャック51とACアダプタ67との間に渡って設けられる。なお、チューブ73は、その両端がブーツ部65に挿入されない程度の長さで形成されても構わない。
【0036】
次に、上記したペットカメラ用の電源ケーブル13の作用を説明する。
【0037】
実施の形態1に係るペットカメラ用の電源ケーブル13は、設置面33に載置されて側方からの外力による転倒を抑制するペットカメラ11に用いられる。電源ケーブル13は、導体77が絶縁材79で被覆された外周形状が円形あるいは平形の電線63と、可撓性を有し、内外周形状が円形に形成され、内径側に電線63を挿通するチューブ73と、弾性線材81を螺旋状に巻いて内外周形状が円形に形成され、外径側が第1間隙S1を有してチューブ73の内径側に挿通されるとともに、内径側に第2間隙S2を有して電線63を挿通するコイルスプリング75と、を備える。
【0038】
実施の形態1に係るペットカメラ用の電源ケーブル13では、接続されるペットカメラ11が、設置面33に吸着する吸盤ユニット35を有する。吸盤ユニット35は、ペットにより側方からの外力をペットカメラ11が受けると、設置面33に吸着してペットカメラ11の転倒を抑制することができる。
【0039】
このペットカメラ11に接続される電源ケーブル13は、電線63と、チューブ73と、コイルスプリング75と、第1間隙S1と、第2間隙S2と、により構成される。電線63は、導体77が絶縁材79で被覆されていて、外周形状が円形あるいは平形に形成される。
【0040】
電源ケーブル13の最外装材となるチューブ73は、可撓性を有し、内外周形状が円形に形成される。すなわち、チューブ73は、円筒の内径側に電線63を挿通する。
【0041】
コイルスプリング75は、電線63とチューブ73との間に配置される。すなわち、コイルスプリング75は、外径側が第1間隙S1を有してチューブ73の内径側に挿通されて、内径側に第2間隙S2を有して電線63を挿通する。
【0042】
従って、チューブ73、コイルスプリング75、電線63は、同心円で配置が可能となる。実際には、重力の作用により、チューブ73の内径側にコイルスプリング75が接し、コイルスプリング75の内径側に電線63が接するように偏芯することがある。つまり、電源ケーブル13は、コイルスプリング75とチューブ73とにより電線63が二重に覆われて保護されている。
【0043】
チューブ73の内径側とコイルスプリング75の外径側との間には、環状となる第1間隙S1が設けられる。チューブ73の内径側に挿通されたコイルスプリング75は、チューブ73の内径側に当たるまで、この第1間隙S1の距離だけ、半径方向への移動が自在に可能となる。
【0044】
また、コイルスプリング75の内径側と電線63の外径側との間にも、環状となる第2間隙S2が設けられる。コイルスプリング75の内径側に挿通された電線63は、コイルスプリング75の内径側に当たるまで、この第2間隙S2の距離だけ、半径方向への移動が自在に可能となっている。
【0045】
図7は、ペットによる噛みつき動作を(A)~(E)の損傷の大きくなる順で表した説明図である。この電源ケーブル13では、最外装材のチューブ73が外径側からペットにより噛まれると(図7(A)参照)、軟質材からなるチューブ73の外周形状が潰れて長円や楕円に変形する。長円や楕円に変形したチューブ73の内径側には、コイルスプリング75が退避できる(ずれたり逃げたりする)退避空間(すなわち、第1間隙S1)が長円や楕円の長軸方向に拡大する。
【0046】
ペットが、チューブ73をさらに噛むと、歯83の先端がチューブ73を貫通する(図7(B)参照)。チューブ73を貫通した歯83がコイルスプリング75の外径側に当たると、チューブ73よりも硬質な円形の外周形状を有するコイルスプリング75は、歯83に対して表面が滑る(図7(C)参照)。つまり、歯83からコイルスプリング75が拡大した第1間隙S1でずれたり逃げたりする。電源ケーブル13は、チューブ73に軟質材を採用し、チューブ内径よりもスプリング外径を、第1間隙S1を設けて十分に小さくしていることで、スプリングが逃げるスペースが拡大する。また、噛まれたときにチューブ73も伸びるので、さらにコイルスプリング75は拡大した第1間隙S1で逃げることができるようになる(図7(D)参照)。
【0047】
ペットが、より強く、かつ深く噛んだ場合には、チューブ73を貫通した歯83が、コイルスプリング75の隣接する弾性線材同士の間に入るが(図7(E)参照)、コイルスプリング75の内径よりも電線63の外径を、第2間隙S2を設けて十分に小さくしていることで、歯83から電線63が第2間隙S2の中でずれたり逃げたりして絶縁材79の破れや貫通が抑制される。
【0048】
例えば家庭で飼われているペットは、犬あるいは猫のように10kg以下の小型の種類が多く、小型の犬あるいは猫の犬歯の根元のサイズはφ(つまり直径)が2~10mm程度であり、先端がとがった形状になっている。このため、図6Bに示すように、ペットの歯83がチューブ73を貫通した後さらに噛むことで、チューブ73が伸びながら歯が深く刺さるときにコイルスプリング75が歯83に対して逃げるようにチューブ73内で移動するためには、例えばS1の2倍長(つまり、2×S1)が0.3mm以上であることが望ましい。
【0049】
これらの作用より、電源ケーブル13は、樹脂やゴムチューブだけの保護カバーが付けられた電線63に比べ、電線63を傷つきにくくでき、電線63を十分に保護できる。これにより、ペットカメラ用の電源ケーブルでは、ペットが電線63を噛むことで断線し、ペットを撮像し続けることができなくなることを抑制できる。同時に、ペットの感電や、感電に伴う漏電によって火災につながる事態も抑制できる。
【0050】
また、ペットカメラ用の電源ケーブルは、チューブ73が可撓性を有する例えば軟質チューブであり、コイルスプリング75が弾性線材81を巻いて形成されるので、屈曲時の弾性復元力を抑えながら、大きな曲率で(すなわち、小さな曲率半径で)容易に屈曲が可能となる。
【0051】
これにより、電源ケーブル13は、フレキシブル金属管(ケーシングチューブ)等を利用した従来の電源ケーブルに比べ、柔らかく、曲げやすくなるので、電線63の配線処理が容易となる。
【0052】
図8は、ケーシングチューブ85を利用した従来の電源ケーブル87に接続されたペットカメラ11の要部側断面図である。フレキシブル金属管(例えばケーシングチューブ)等を利用した従来の電源ケーブル87は、固く、腰が強いため、曲げにくく、曲率半径R1が大きくなりやすい。従来の電源ケーブル87は、電線63の配線処理時に、大きな曲率半径の屈曲部89を無理に小さく曲げると、それにより生じた弾性復元力によってペットカメラ11を傾かせてしまう場合がある。ペットカメラ11は、このような傾きが生じると、モータホルダ47が浮いて吸盤ユニット35の上部開口部43を開放させてしまい、転倒防止機能が正常に働かなくなることが懸念される。
【0053】
また、ケーシングチューブ85は、鉄管の場合、チューブ73が破れると、ペットがエッジで口の中をケガする可能性がある。また、ペットの歯83は、人に比べると先が尖っていて、金属製の硬いケーシングチューブ85を噛むことで、先端に荷重が集中すると、傷んだり、折れたりする可能性がある。
【0054】
図9は、ペットカメラ用の電源ケーブルに接続されたペットカメラ11の要部側断面図である。これに対し、ペットカメラ用の電源ケーブルは、従来の電源ケーブル87よりも柔軟性が高く、曲げやすく、曲率半径R2が従来の電源ケーブル87よりも容易に小さくなる(R1>R2)。また、屈曲部89に生じる直線に戻ろうとする弾性復元力が小さい。このため、電源ケーブル13は、屈曲部89に生じた弾性復元力によりペットカメラ11が傾かず、吸盤ユニット35を開放してしまうことがないので、転倒防止機能の発現に支障を生じさせることがない。その結果、ペットカメラ用の電源ケーブルによれば、吸盤ユニット35を閉鎖状態に維持して、ペットカメラ11の転倒防止機能を確実に発揮させることができる。
【0055】
これに加え、ケーシングチューブ85と異なり、電源ケーブル13のコイルスプリング75は、丸い弾性線材81を螺旋巻きするので、エッジがなく、チューブ73が破れても、ペットがエッジで口の中をケガすることがない。また、コイルスプリング75は、金属製の硬いケーシングチューブ85と異なり、噛むことによっても、弾性線材81が滑るので、歯83の先端に荷重が集中せず、ペットの歯83が傷んだり、折れたりすることを抑制できる。その結果、ペットカメラ用の電源ケーブルは、硬い金属を直接噛ませる構造に比べ、ペットの歯83を守ることもできる。
【0056】
また、ペットカメラ用の電源ケーブルでは、チューブ73の肉厚が、0.5~2.0mmである。
【0057】
このペットカメラ用の電源ケーブルでは、軟質チューブからなるチューブ73の肉厚が、0.5~2.0mmの範囲で設定される。チューブ73は、例えば肉厚が0.5mm以下になると、ペットが、噛んだ際の破れが生じやすくなる。一方、チューブ73は、例えば肉厚が2.0mm以上になると、強度は増すが硬く、腰がつよくなり、曲げにくくなる。そのため、屈曲部89に生じた弾性復元力によりペットカメラ11が傾きやすくなる。ペットカメラ用の電源ケーブルでは、軟質チューブからなるチューブ73の肉厚を、0.5~2.0mmの範囲で設定することにより、ペットが噛んだ際の損傷を抑えながら、ペットカメラ11の転倒防止機能をより確実に発揮させることができるようになる。
【0058】
また、ペットカメラ用の電源ケーブルにおいて、第1間隙S1は、チューブ73が半径方向内側に潰れて長円となった変形状でコイルスプリング75を長円の長軸方向の一端側に移動させることができる距離である。
【0059】
このペットカメラ用の電源ケーブルでは、チューブ73が半径方向内側に潰れて長円となった変形状で、コイルスプリング75を長円の長軸方向に移動させる距離で第1間隙S1が設定されている。これにより、チューブ73が外径側からペットにより噛まれた際に、コイルスプリング75が退避できる(ずれたり逃げたりする)退避空間がより確実に確保可能となる。
【0060】
また、ペットカメラ用の電源ケーブルは、コイルスプリング75の隣接する線材同士が、チューブ73を貫通したペットの歯83の侵入を抑制する所定の距離に設定される。
【0061】
このペットカメラ用の電源ケーブルでは、コイルスプリング75の隣接する線材同士が、ペットの歯83の侵入を抑制する距離に設定される。これにより、チューブ73を貫通したペットの歯83が、コイルスプリング75の内径側に侵入しにくくなり、電線63をより傷つきにくくすることができる。
【0062】
また、ペットカメラ用の電源ケーブルにおいて、第2間隙S2は、チューブ73を貫通したペットの歯83が、コイルスプリング75の内径側に届いたときに電線63がコイルスプリング75の半径方向の一端側に移動することができる距離である。
【0063】
このペットカメラ用の電源ケーブルでは、ペットの歯83が、コイルスプリング75の内径側に届いたときに電線63が半径方向に移動する距離で第2間隙S2が設定されている。これにより、ペットが、より強く、かつ深く噛んだ場合には、チューブ73を貫通した歯83が、コイルスプリング75の隣接する弾性線材同士の間に入るが、歯83から電線63が第2間隙S2の中でずれたり逃げたりして絶縁材79の破れや貫通がより確実に抑制可能となる。
【0064】
また、ペットカメラ用の電源ケーブルは、チューブ73が、透明材料により形成される。
【0065】
このペットカメラ用の電源ケーブルでは、透明材料が、可視光の透過性を有する軟質材料となる。すなわち、チューブ73の外径側からコイルスプリング75が視認可能となる。ペットがチューブ73を噛むことにより、チューブ73に損傷の痕(例えば白濁部)が残ると、その部分での光透過性が変化し、痕のない部分に比べてコイルスプリング75の視認性が低下する。
【0066】
これにより、ユーザは、ペットの噛み痕があることを容易に見つけることができるようになる。さらに、噛み痕に相当するコイルスプリング75の部分に、塑性変形(弾性線材同士の開きや間隔のバラツキ)が生じていれば、損傷が大きく、交換の必要があることにも気づくことができる。その結果、ペットの安全性と撮影の持続性を長期に渡って確保することができるようになる。
【0067】
従って、実施の形態1に係るペットカメラ用の電源ケーブル13によれば、ペットの安全性とペットカメラ11の転倒防止構造を働かせながら撮影の持続性を確保することができる。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示は、ペットの安全性とペットカメラの転倒防止構造を働かせながら撮影の持続性を確保できるペットカメラ用の電源ケーブルとして有用である。
【符号の説明】
【0070】
11 ペットカメラ
13 電源ケーブル
33 設置面
35 吸盤ユニット
63 電線
73 チューブ
75 コイルスプリング
77 導体
79 絶縁材
81 弾性線材
83 歯
S1 第1間隙
S2 第2間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9