(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189510
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電池ケース
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20221215BHJP
【FI】
H01M50/262 M
H01M50/262 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098125
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内海 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】熊坂 悠也
(72)【発明者】
【氏名】長田 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 裕
(72)【発明者】
【氏名】東 裕子
(72)【発明者】
【氏名】藤原 伸得
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA02
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040CC28
5H040CC34
5H040JJ03
5H040LL01
(57)【要約】
【課題】電池スタックの積層方向における電池パックの体格を小型化可能にする電池ケースを提供する。
【解決手段】電池ケース100は、電池スタック20を収納する筐体110と、筐体110の内側に筐体110と一体的に鋳造された突き当て壁120とを備える。筐体110に収納された電池スタック20からの荷重は突き当て壁120が受ける。さらに、電池ケース100は、突き当て壁120に鋳ぐるみされた、突き当て壁120よりも高剛性な材料でできた補強部品130を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に加圧された電池スタックを収納する電池ケースであって、
前記電池スタックを収納する筐体と、
前記筐体の内側に前記筐体と一体的に鋳造され、前記筐体に収納された前記電池スタックからの荷重を受ける突き当て壁と、
前記突き当て壁に鋳ぐるみされた前記突き当て壁よりも高剛性な材料でできた補強部品と、を備える
ことを特徴とする電池ケース。
【請求項2】
請求項1に記載の電池ケースにおいて、
前記補強部品の側端は前記突き当て壁が接続されている前記筐体の側壁まで延びている
ことを特徴とする電池ケース。
【請求項3】
請求項2に記載の電池ケースにおいて、
前記補強部品は前記側端にフランジを備え、前記フランジは前記側壁内に埋設されている
ことを特徴とする電池ケース。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電池ケースにおいて、
前記補強部品の下端は前記突き当て壁が接続されている前記筐体の底板まで延びている
ことを特徴とする電池ケース。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池ケースにおいて、
前記補強部品は前記電池ケースに別部品を取り付けるためのネジ穴を備える
ことを特徴とする電池ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックを構成する電池ケースに関し、特に、積層方向に加圧された電池スタックを収納する電池ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンドプレートの外側面に形成された開口部に把持部材の少なくとも一部を挿入しつつ、電池スタックを把持部材で挟持して収容ケース内に搬送し、その後に把持部材をスタック側開口部から抜き取るようにした電池スタックの搭載方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術は、電池パックの小型化を一つの目的としているが、電池スタックの積層方向における体格の小型化において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、電池スタックの積層方向における電池パックの体格を小型化可能にする電池ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のケースは、積層方向に加圧された電池スタックを収納する筐体と、筐体の内側に筐体と一体的に鋳造された突き当て壁と、突き当て壁に鋳ぐるみされた補強部品とを備える。筐体に収納された電池スタックからの荷重は突き当て壁が受ける。補強部品は突き当て壁よりも高剛性な材料でできている。
【0007】
本発明のケースにおいて、補強部品の側端は突き当て壁が接続されている筐体の側壁まで延びていてもよい。この場合、補強部品は側端にフランジを備え、フランジは側壁内に埋設されていてもよい。また、補強部品の下端は突き当て壁が接続されている筐体の底板まで延びていてもよい。さらに、補強部品は電池ケースに別部品を取り付けるためのネジ穴を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電池ケースでは、筐体に収納された電池スタックからの荷重を受ける突き当て壁に、突き当て壁よりも高剛性な材料でできた補強部品が鋳ぐるみされている。突き当て壁に加わる荷重は補強部品によって受けられるので、突き当て壁と補強部品との剛性の差の分だけ突き当て壁の壁厚を薄くすることができる。これにより、電池スタックの積層方向における電池パックの体格を小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電池ケースの構成を示す縦断面図と横断面図である。
【
図2】
図1に示す電池ケースを用いた電池パックの構成を示す縦断面図と横断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る電池ケースの構成を示す縦断面図と横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、本発明に必ずしも必須のものではない。
【0011】
1.第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る電池ケース100の構成を示す縦断面図と横断面図である。横断面図は、縦断面図におけるA-A線での断面図であり、縦断面図は、横断面図におけるB-B線での断面図である。
【0012】
電池ケース100はバスタブ型の形状を有する筐体110と、その内側に設けられた一対の突き当て壁(バルクヘッドともいう)120とを備える。突き当て壁120は、左右の両端を筐体110の側壁116に接続され、下端を筐体110の底板112に接続されている。電池ケース100は、軽金属、具体的にはアルミを材料とする鋳造品、より詳しくはダイカスト製品である。筐体110と突き当て壁120とは、ダイカストによって一体的に鋳造されている。
【0013】
突き当て壁120には補強部品130が埋め込まれている。補強部品130は板形状を有する中実の金属部品である。補強部品130は突き当て壁120よりも高剛性の材料、例えば鉄やSUS等の金属材料でつくられている。コスト的には補強部品130の材料は鉄系の材料であることが好ましい。補強部品130を突き当て壁120に埋め込む方法としては鋳ぐるみが用いられる。すなわち、予め用意された補強部品130の周りに、筐体110や突き当て壁120の材料である溶融した軽金属を注ぐことで、補強部品130が突き当て壁120に一体化された鋳造品が成形される。
【0014】
横断面図に示すように、補強部品130の両方の側端130cは筐体110の側壁116まで延びている。補強部品130は側端130cにフランジ132を備えている。フランジ132は側壁116内に埋設されている。これにより、突き当て壁120と側壁116との間で高い剛性が確保される。また、補強部品130の側端130cは部分的に側壁116の表面に露出している。補強部品130の側壁116の表面に露出した部分には、縦断面図に示すようにネジ穴134が設けられいる。ネジ穴134は、電池ケース100に別部品をボルトで締結するために用いられる。ネジ穴134は補強部品130に形成されているので、剛性の高い補強部品130に別部品を直接締結することができる。
【0015】
また、縦断面図に示すように、補強部品130の下端130bは筐体110の底板112まで延びている。これにより、突き当て壁120と底板112との間の剛性が確保される。図示は省略するが、筐体110の底板112に別部品を締結する場合には、補強部品130の下端130bを部分的に底板112の表面に露出させてもよい。つまり、剛性の高い補強部品130に別部品を直接締結できるようにしてもよい。なお、縦断面図では補強部品130の上端130aは突き当て壁120の上面に露出しているが、上端130aの一部が露出しているのでもよいし、上端130aは露出していなくてもよい。
【0016】
上述のような補強部品130が設けられることで、突き当て壁120の剛性は向上する。補強部品130が設けられない場合と比較した場合、同じ剛性を得るために必要とされる突き当て壁120の壁厚は薄くてすむ。
【0017】
図2は、本発明の第1実施形態に係る電池パック10の構成を示す縦断面図と横断面図である。横断面図は、縦断面図におけるA-A線での断面図であり、縦断面図は、横断面図におけるB-B線での断面図である。
【0018】
電池パック10は、例えば、BEV、PHEV、及びHEVを含む電動車の電源として用いられる。電動車の床下や座席の下などに1又は複数の電池パック10が搭載される。電池パック10は、上述の電池ケース100の中に電池スタック20を収納して構成される。
【0019】
電池スタック20は多数の電池セル22が積層されて構成されている。電池セル22は、充放電可能な二次電池、例えば、リチウムイオン二次電池である。
図2の各断面図では、左右方向が電池スタック20における電池セル22の積層方向となる。電池スタック20は、電池セル22の積層方向の両端に一対のエンドプレート24を備える。
【0020】
電池スタック20は電池セル22の積層方向に加圧され、高い圧縮力を付与して長さを短縮した状態で電池ケース100内に搬送される。このため、電池ケース100内に搭載されたとき、電池スタック20はその長さ方向、すなわち、電池セル22の積層方向に伸長しようとする。しかし、電池スタック20の長さ方向への伸長は、エンドプレート24が突き当て壁120に当たることによって阻まれる。つまり、電池スタック20はその長さ方向に位置する一対の突き当て壁120によって拘束される。
【0021】
本実施形態に係る電池ケース100では、筐体110に収納された電池スタック20からの荷重を受ける突き当て壁120に、突き当て壁120よりも高剛性な材料でできた補強部品130が設けられている。このため、突き当て壁120に加わる荷重は剛性の高い補強部品130によって受けられ、電池スタック20からの荷重による突き当て壁120の撓みは抑えられる。また、補強部品130が設けられたことで、電池スタック20の積層方向とは垂直な方向からの荷重に対する突き当て壁120の座屈も抑えられる。
【0022】
さらに、本実施形態に係る電池ケース100では、突き当て壁120が補強部品130で補強されたことで、突き当て壁120と補強部品130との剛性の差の分だけ突き当て壁120の壁厚を薄くすることができる。つまり、補強部品130を備えることで、補強部品130を備えない場合よりも、突き当て壁120の壁厚を薄くすることができる。これにより、電池スタック20の積層方向における電池パック10の体格を小型化することが可能となる。
【0023】
2.第2実施形態
図3は、本発明の第2実施形態に係る電池ケース100の構成を示す縦断面図と横断面図である。横断面図は、縦断面図におけるA-A線での断面図であり、縦断面図は、横断面図におけるB-B線での断面図である。
【0024】
第1実施形態では厚みのある板で補強部品130がつくられていたが、燃費の観点からは、電池ケース100を構成する部品は軽量であるほど好ましい。そこで、第2実施形態では、板金で形成された補強部品140が用いられる。板金の材料は、突き当て壁120を形成する軽金属よりも剛性の高い鉄やSUS等の金属材料である。補強部品140は鋳ぐるみによって突き当て壁120と一体化されている。
【0025】
図3の縦断面図に示すように、補強部品140は波型に形成されている。この波型の形状により、補強部品140には十分な断面2次モーメントが確保されている。補強部品140による断面2次モーメントの確保により、電池スタックの積層方向からの荷重に対する突き当て壁120の撓みや、電池スタックの積層方向とは垂直な方向からの荷重に対する突き当て壁120の座屈は抑えられる。このような補強部品140を備えることで、補強部品140を備えない場合よりも、突き当て壁120の壁厚を薄くすることができる。これにより、電池スタックの積層方向における電池パックの体格を小型化することが可能となる。
【0026】
3.その他実施形態
上述の実施形態では、1対の突き当て壁120の両方に補強部品130(或いは140)が設けられている。しかし、片方の突き当て壁120のみに補強部品130(或いは140)を設けてもよい。また、一方の突き当て壁120には補強部品130を設け、もう一方の突き当て壁120には補強部品140を設ける等、左右の突き当て壁120で補強部品の形状や材質を異ならせてもよい。
【0027】
また、上述の実施形態では、筐体110の内部に1対の突き当て壁120が設けられている。しかし、突き当て壁120を1つのみ設けて筐体110の前端或いは後端の壁と突き当て壁120との間に電池スタック20を収納するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 電池パック
20 電池スタック
22 電池セル
24 エンドプレート
100 電池ケース
110 筐体
120 突き当て壁
130 補強部品
132 フランジ
134 ネジ穴
140 補強部品