(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189522
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ゴム組成物および架橋ゴム成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20221215BHJP
C08K 5/47 20060101ALI20221215BHJP
A63B 37/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/47
A63B37/00 662
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098143
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】唯岡 弘
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
(72)【発明者】
【氏名】重光 貴裕
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC001
4J002AC041
4J002EG046
4J002EK037
4J002EV348
4J002FD147
4J002FD156
4J002FD158
4J002GC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】柔軟性が良好であり、かつ、反発性能に優れた架橋ゴム成形体が得られるゴム組成物を提供する。
【解決手段】ゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および、(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩を含有し、前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩が、式(1)で表される化合物であり、かつチオカルボニル基を構成する硫黄原子S
2のMulliken電荷が-0.190以上であることを特徴とする。
[式(1)中、R
1~R
4は電子吸引性基またはH原子。nは1~4の整数。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および、(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩を含有し、
前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩が、式(1)で表される化合物であり、かつ、チオカルボニル基を構成する硫黄原子S
2のMulliken電荷が-0.190以上であることを特徴とするゴム組成物。
【化1】
[式(1)中、R
1~R
4は、同一または異なって、電子吸引性基または水素原子を表す。S
1およびS
2は、硫黄原子を表す。Xはカチオン成分を表す。nは、1~4の整数である。なお、nが2以上の場合、同一のベンゼン環に結合するR
1~R
4は、少なくとも一つが電子吸引性基である。]
【請求項2】
前記R1~R4で表される電子吸引性基が、ハロゲン基、パーフルオロアルキル基、および、ペンタフルオロスルファニル基よりなる群から選択されるものである請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩が、式(2)で表される化合物である請求項1または2に記載のゴム組成物。
【化2】
[式(2)中、R
1は、電子吸引性基を表す。S
1およびS
2は、硫黄原子を表す。Xはカチオン成分を表す。nは、1~4の整数である。]
【請求項4】
前記Xが、2価の金属イオンである請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩の含有量が、前記(a)基材ゴム100質量部に対して0.01質量部~20質量部である請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記(b)共架橋剤の含有量が、前記(a)基材ゴム100質量部に対して15質量部~50質量部である請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物から形成されたことを特徴とする架橋ゴム成形体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物から形成された構成部材を有することを特徴とするゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物に関し、特に反発性に優れた架橋ゴム成形体を得られるゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールのドライバーショットでの飛距離を伸ばす方法として、例えば、反発性の高いコアを用いる方法がある。コアの反発性を高めることで、ゴルフボールの初速が高まり、ゴルフボールの飛距離が大きくなる。ここで、一般的に、ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤および架橋開始剤が配合される。また、ゴム組成物に、さらに加硫促進剤を配合することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、不飽和重合体、架橋剤、および、有機硫黄化合物の非金属塩であるペプタイザ、ならびに、2-メルカプトベンゾチアゾールおよび2-メルカプトベンゾチアゾールの塩より成る群から選ばれる促進剤を含む組成物を含んでいるゴルフボールが記載されている(特許文献1(請求項1、7、11)参照)。
【0004】
また、特許文献2には、不飽和ポリマー、架橋剤、素練り促進剤、および、加硫促進剤を含み、加硫促進剤が2-メルカプトベンゾチアゾールおよび2-メルカプトベンゾチアゾールの塩からなる群から選ばれる組成物を含有するゴルフボールが記載されている(特許文献2(請求項1、25)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-000647号公報
【特許文献2】特開2005-000657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
反発性を高めたゴム組成物が種々提案されているが、反発性能の改善の余地が残されていた。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、柔軟性が良好であり、かつ、反発性能に優れた架橋ゴム成形体が得られるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することができた本発明のゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および、(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩を含有し、前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩が、式(1)で表される化合物であり、かつ、チオカルボニル基を構成する硫黄原子S2のMulliken電荷が-0.190以上であることを特徴とする。
【0008】
【化1】
[式(1)中、R
1~R
4は、同一または異なって、電子吸引性基または水素原子を表す。S
1およびS
2は、硫黄原子を表す。Xはカチオン成分を表す。nは、1~4の整数である。なお、nが2以上の場合、同一のベンゼン環に結合するR
1~R
4は、少なくとも一つが電子吸引性基である。]
【発明の効果】
【0009】
本発明のゴム組成物を用いれば、柔軟性が良好であり、かつ、反発性能に優れた架橋ゴム成形体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】架橋ゴム組成物の反発係数と圧縮変形量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および、(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩を含有し、前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩が、後述する式(1)で表される化合物であり、かつ、チオカルボニル基を構成する硫黄原子S2のMulliken電荷が-0.190以上であることを特徴とする。
【0012】
(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩
本発明で使用する(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩について説明する。前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩は、式(1)で表される化合物であり、かつ、チオカルボニル基を構成する硫黄原子S2のMulliken電荷が-0.190以上である。前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ゴム組成物に前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩を配合することで、架橋反応を促進し架橋を密に形成させることができ、柔軟性を損なうことなく反発性を向上させることができる。
【0013】
【化2】
[式(1)中、R
1~R
4は、同一または異なって、電子吸引性基または水素原子を表す。S
1およびS
2は、硫黄原子を表す。Xはカチオン成分を表す。nは、1~4の整数である。なお、nが2以上の場合、同一のベンゼン環に結合するR
1~R
4は、少なくとも一つが電子吸引性基である。]
【0014】
チオカルボニル基(>C=S)を構成する硫黄原子S2のMulliken電荷は、-0.190以上、好ましくは-0.185以上、より好ましくは-0.180以上であり、0以下が好ましく、より好ましくは-0.01以下、さらに好ましくは-0.05以下である。前記Mulliken電荷が-0.190以上であれば高反発性が発現する。前記硫黄原子のMulliken電荷は、置換基の種類や位置によって制御できる。また、ベンゼン環上の水素を複数の電子吸引性基で置換することでも、チオカルボニル基の硫黄上の電荷を大きくすることかできる。なお、式(1)において、nが2以上である場合、複数存在する硫黄原子S2は、少なくとも一つの硫黄原子S2のMulliken電荷が上記範囲内であればよく、全ての硫黄原子S2のMulliken電荷が上記範囲内であることが好ましい。
【0015】
前記チオカルボニル基を構成する硫黄原子S2のMulliken電荷は、Gaussian09(Gaussian社製、量子化学計算プログラム)を用いて、汎関数:B3LYP、基底関数:6-31G(d)の条件で、構造最適化計算および振動数計算を実施し、得られた最適化構造中のチオカルボニル基を構成する硫黄原子S2のMulliken電荷を求めた。
【0016】
前記R1~R4で表される電子吸引性基は、結合している炭素原子から電子を引き付ける力が水素原子よりも大きい置換基である。前記R1で表される電子吸引性基としては、ハロゲン基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ペンタフルオロスルファニル基(-SF5)、ニトロ基(-NO2)、シアノ基(-CN)、カルボキシ基(-COOH)、アルデヒド基(-CHO)、スルファニル基(-SH)、スルホン酸基(-SO3H)、アルキルスルホニル基、アルコキシスルホニル基、パーフルオロアルキルスルホニル基等が挙げられる。
【0017】
前記ハロゲン基としては、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)等が挙げられる。
前記パーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基(-CF3)、ペンタフルオロエチル基(-C2F5)、ヘプタフルオロプロピル基(-C3F7)等が挙げられる。
前記ハロゲン化アルキル基としては、トリクロロメチル基(-CCl3)、モノクロロメチル基(-CH2Cl)等が挙げられる。
前記アルキルカルボニル基としては、アセチル基(-COCH3)、プロピオニル基(-COC2H5)等が挙げられる。
前記アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基(-COOCH3)、エトキシカルボニル基(-COOC2H5)等が挙げられる。
前記アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基(-SO2CH3)、エチルスルホニル基(-SO2C2H5)等が挙げられる。
前記アルコキシスルホニル基としては、メトキシスルホニル基(-SO2OCH3)、エトキシスルホニル基(-SO2OC2H5)等が挙げられる。
前記パーフルオロアルキルスルホニル基としては、トリフルオロメチルスルホニル基(-SO2CF3)、ペンタフルオロエチルスルホニル基(-SO2C2F5)等が挙げられる。
【0018】
前記R1~R4で表される電子吸引性基としては、ハロゲン基、パーフルオロアルキル基、および、ペンタフルオロスルファニル基よりなる群から選択されるものが好ましい。
【0019】
前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩は、式(2)で表される化合物が好ましい。前記R1で表される電子吸引性基の位置が5位であれば、チオカルボニル基への電子的効果が他の置換位置よりも大きくなる。
【0020】
【化3】
[式(2)中、R
1は、電子吸引性基を表す。S
1およびS
2は、硫黄原子を表す。Xはカチオン成分を表す。nは、1~4の整数である。]
【0021】
前記式(2)中のR1で表される電子吸引性基としては、前記式(1)中のR1で表される電子吸引性基が挙げられる。前記式(2)中のR1で表される電子吸引性基としては、ハロゲン基、パーフルオロアルキル基、および、ペンタフルオロスルファニル基よりなる群から選択される1種が好ましい。
【0022】
前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩を構成するベンゾチアゾール誘導体としては、式(2-1)~式(2-12)で表される化合物が特に好ましい。
【0023】
【0024】
前記式(1)または式(2)中のXで表されるカチオン成分としては、金属イオン;有機アンモニウムイオン、有機ホスホニウムイオン等の有機カチオン等が挙げられる。
【0025】
前記金属イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀などの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなどの2価の金属イオン;アルミニウム、鉄などの3価の金属イオン;錫、ジルコニウム、チタンなどのその他のイオンが挙げられる。前記カチオン成分としては、2価の金属イオンが好ましく、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンがより好ましい。
【0026】
前記有機アンモニウムイオンとしては、例えば、ステアリルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオンなどの1級アンモニウムイオン、ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン、オクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオンなどの2級アンモニウムイオン;トリオクチルアンモニウムイオンなどの3級アンモニウムイオン;ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0027】
有機ホスホニウムイオンとしては、例えば、テトラエチルホスホニウム、トリエチルベンジルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリメチルデシルホスホニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、トリメチルヘキサデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルオクタデシルホスホニウム、トリオクチルエチルホスフォニウムなどが挙げられる。
【0028】
前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩の含有量は、前記(a)基材ゴム100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、20質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の含有量が0.01質量部以上であれば反発性がより向上し、20質量部以下であれば柔軟性がより良好となる。
【0029】
以下、ゴム組成物に用いられる他の原料について説明する。
【0030】
(a)基材ゴム
前記(a)基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができる。前記合成ゴムとしては、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンポリブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴム;エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムなどの非ジエン系ゴムが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記(a)基材ゴムは、天然ゴムおよび/またはジエン系ゴムを含有することが好ましい。前記(a)基材ゴム中の天然ゴムおよび/またはジエン系ゴムの合計含有量は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。前記(a)基材ゴムが、天然ゴムおよび/またはジエン系ゴムのみを含有することも好ましい。
【0032】
前記(a)基材ゴムは、ポリブタジエンゴムを含有することが好ましい。特に、反発に有利なシス-1,4-結合を、40質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上有するハイシスポリブタジエンが好適である。前記(a)基材ゴム中のハイシスポリブタジエンの含有量は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上である。
【0033】
前記ハイシスポリブタジエンは、1,2-ビニル結合の含有量が2.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.7質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が多すぎると反発性が低下する場合がある。
【0034】
前記ハイシスポリブタジエンは、希土類元素系触媒で合成されたものが好適であり、特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、1,4-シス結合が高含量、1,2-ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましい。
【0035】
前記ハイシスポリブタジエンとしては、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.6以上であり、6.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.4以下である。ハイシスポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)が小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下するおそれがある。なお、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC-8120GPC」)により、検知器として示差屈折計を用いて、カラム:GMHHXL(東ソー社製)、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフランの条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した値である。
【0036】
前記ハイシスポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上であり、140以下が好ましく、より好ましくは120以下、さらに好ましくは100以下、最も好ましくは80以下である。なお、本発明でいうムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
【0037】
(b)共架橋剤
前記(b)共架橋剤は、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有する。前記(b)共架橋剤としては、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩が好ましい。前記(b)共架橋剤として使用されるα,β-不飽和カルボン酸の炭素数は、3~8が好ましく、より好ましくは3~6、さらに好ましくは3または4である。なお、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0038】
炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等を挙げることができる。前記ゴム組成物が、共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸のみを含有する場合、ゴム組成物は、必須成分として、(e)金属化合物をさらに含有する。ゴム組成物中で炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を金属化合物で中和することにより、共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を使用する場合と実質的に同様の効果が得られるからである。
【0039】
炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの一価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオン;アルミニウムなどの三価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオンが好ましい。炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の二価の金属塩を用いることにより、ゴム分子間に金属架橋が生じやすくなるからである。特に、二価の金属塩としては、得られるゴルフボールの反発性が高くなるということから、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の亜鉛塩が好ましく、より好ましくはアクリル酸亜鉛である。なお、共架橋剤として、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とその金属塩とを併用する場合においては、任意成分として、(e)金属化合物を用いてもよい。
【0040】
前記金属が二価または三価の金属である場合、(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩は、カルボン酸成分として、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸以外の他のカルボン酸を含有してもよい。前記他のカルボン酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の飽和カルボン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。
【0041】
(b)共架橋剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましく、27質量部以上が特に好ましく、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、35質量部以下がさらに好ましい。(b)共架橋剤の含有量が15質量部以上であれば、少量の(c)架橋開始剤でゴム組成物から形成される部材を適当な硬さとすることができ、架橋ゴム成形体の反発性がより向上する。一方、(b)共架橋剤の含有量が50質量部以下であれば、ゴム組成物から形成される部材が硬くなり過ぎない。
【0042】
(c)架橋開始剤
前記(c)架橋開始剤は、(a)基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。(c)架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。前記有機過酸化物は、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
【0043】
前記(c)架橋開始剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.7質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.5質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下、特に好ましくは0.9質量部以下である。含有量が0.2質量部以上であれば、ゴム組成物から形成される架橋ゴム成形体が柔らかくなり過ぎず、反発性が良好となり、5.0質量部以下であれば、ゴム組成物から形成される架橋ゴム成形体が適切な硬さとなり、反発性および耐久性が良好となる。
【0044】
(e)金属化合物
本発明に用いられるゴム組成物が、共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸のみを含有する場合、ゴム組成物は、(e)金属化合物をさらに含有することが好ましい。前記(e)金属化合物としては、ゴム組成物中において(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を中和することができるものであれば、特に限定されない。前記(e)金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。前記(e)金属化合物として好ましいのは、二価金属化合物であり、より好ましくは亜鉛化合物である。二価金属化合物は、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸と反応して、金属架橋を形成するからである。また、亜鉛化合物を用いることにより、反発性の高い架橋ゴム成形体が得られる。(e)金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。(e)金属化合物の含有量は、所望とする(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および(d)不飽和脂肪族カルボン酸の中和度に応じて、適宜調整すればよい。
【0045】
(f)有機硫黄化合物
前記ゴム組成物は、さらに(f)有機硫黄化合物を含有してもよい。前記(f)有機硫黄化合物には、前記(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩は含まれない。(f)有機硫黄化合物としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類、ポリスルフィド類、チウラム類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類、チアゾール類およびこれらの金属塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を挙げることができる。(f)有機硫黄化合物としては、チオール基(-SH)を有する有機硫黄化合物、または、その金属塩が好ましく、チオフェノール類、チオナフトール類、または、これらの金属塩が好ましい。
【0046】
チオール類としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類が挙げられる。前記チオフェノール類としては、例えば、チオフェノール;4-フルオロチオフェノール、2,5-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,4,5-トリフルオロチオフェノール、2,4,5,6-テトラフルオロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノールなどのフルオロ基で置換されたチオフェノール類;2-クロロチオフェノール、4-クロロチオフェノール、2,4-ジクロロチオフェノール、2,5-ジクロロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、2,4,5,6-テトラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールなどのクロロ基で置換されたチオフェノール類;4-ブロモチオフェノール、2,5-ジブロモチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,4,5-トリブロモチオフェノール、2,4,5,6-テトラブロモチオフェノール、ペンタブロモチオフェノールなどのブロモ基で置換されたチオフェノール類;4-ヨードチオフェノール、2,5-ジヨードチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリヨードチオフェノール、2,4,5,6-テトラヨードチオフェノール、ペンタヨードチオフェノールなどのヨード基で置換されたチオフェノール類;または、これらの金属塩が挙げられる。金属塩としては、亜鉛塩が好ましい。
【0047】
前記チオナフトール類(ナフタレンチオール類)としては、2-チオナフトール、1-チオナフトール、1-クロロ-2-チオナフトール、2-クロロ-1-チオナフトール、1-ブロモ-2-チオナフトール、2-ブロモ-1-チオナフトール、1-フルオロ-2-チオナフトール、2-フルオロ-1-チオナフトール、1-シアノ-2-チオナフトール、2-シアノ-1-チオナフトール、1-アセチル-2-チオナフトール、2-アセチル-1-チオナフトール、またはこれらの金属塩を挙げることができ、2-チオナフトール、1-チオナフトール、またはこれらの金属塩が好ましい。金属塩としては、好ましくは2価の金属塩、より好ましくは亜鉛塩である。金属塩の具体例としては、例えば、1-チオナフトールの亜鉛塩、2-チオナフトールの亜鉛塩が挙げられる。
【0048】
ポリスルフィド類とは、ポリスルフィド結合を有する有機硫黄化合物であり、例えば、ジスルフィド類、トリスルフィド類、テトラスルフィド類が挙げられる。前記ポリスルフィド類としては、ジフェニルポリスルフィド類が好ましい。
【0049】
ジフェニルポリスルフィド類としては、ジフェニルジスルフィドの他;ビス(4-フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタヨードフェニル)ジスルフィド等のハロゲン基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド等のアルキル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;などが挙げられる。
【0050】
チウラム類としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラムモノスルフィド類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムテトラスルフィド類が挙げられる。チオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンチオカルボン酸が挙げられる。ジチオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンジチオカルボン酸が挙げられる。スルフェンアミド類としては、例えば、N-シクロへキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。
【0051】
(f)前記有機硫黄化合物は、単独もしくは二種以上を混合して使用することができる。(f)有機硫黄化合物としては、チオフェノール類および/またはその金属塩、チオナフトール類および/またはその金属塩、ジフェニルジスルフィド類、チウラムジスルフィド類が好ましく、より好ましくは2,4-ジクロロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール、1-チオナフトール、2-チオナフトール、ジフェニルジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。
【0052】
(f)有機硫黄化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.0質量部以下である。(e)有機硫黄化合物の含有量が、0.05質量部未満では、(e)有機硫黄化合物を添加した効果が得られず、架橋ゴム成形体の反発性が向上しないおそれがある。また、(e)有機硫黄化合物の含有量が、5.0質量部を超えると、得られる架橋ゴム成形体の圧縮変形量が大きくなって、反発性が低下するおそれがある。
【0053】
(g)カルボン酸および/またはその塩
前記ゴム組成物は(g)カルボン酸および/またはその塩を含有してもよい。前記(g)カルボン酸および/またはその塩を含有することで、得られる架橋ゴム成形体の硬度分布を制御できる。前記(g)カルボン酸および/またはその塩としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸および芳香族カルボン酸塩が挙げられる。前記(g)カルボン酸および/または塩は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。なお、(g)カルボン酸および/またはその塩には、前記(b)共架橋剤として使用する炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は含まない。
【0054】
前記脂肪族カルボン酸は、飽和脂肪族カルボン酸(以下、「飽和脂肪酸」と称する場合がある。)、不飽和脂肪族カルボン酸(以下、「不飽和脂肪酸」と称する場合がある。)のいずれであっても良い。また、脂肪族カルボン酸は、分岐構造や環状構造を有していてもよい。前記飽和脂肪酸の炭素数は、6以上が好ましく、24以下が好ましく、より好ましくは18以下、さらに好ましくは13以下である。前記不飽和脂肪酸の炭素数は、6以上が好ましく、より好ましくは7以上、さらに好ましくは8以上であり、24以下が好ましく、より好ましくは18以下、さらに好ましくは13以下である。
【0055】
前記芳香族カルボン酸としては、分子中にベンゼン環を有するもの、分子中に複素芳香環を有するものが挙げられる。前記芳香族カルボン酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ベンゼン環を有するカルボン酸としては、例えば、ベンゼン環にカルボキシル基が直接結合した芳香族カルボン酸、ベンゼン環に脂肪族カルボン酸が結合した芳香族-脂肪族カルボン酸、縮合ベンゼン環にカルボキシル基が直接結合した多核芳香族カルボン酸、縮合ベンゼン環に脂肪族カルボン酸が結合した多核芳香族-脂肪族カルボン酸などが挙げられる。前記複素芳香環を有するカルボン酸としては、例えば、複素芳香環に直接カルボキシル基が結合したものが挙げられる。
【0056】
脂肪族カルボン酸塩または芳香族カルボン酸塩としては、上述した脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の塩を用いることできる。これらの塩のカチオン成分としては、例えば、金属イオン、アンモニウムイオン、および、有機陽イオンを挙げることができる。前記カチオン成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。金属イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀などの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなどの2価の金属イオン;アルミニウム、鉄などの3価の金属イオン;錫、ジルコニウム、チタンなどのその他のイオンが挙げられる。これらの中でも、金属イオンとしては、2価の金属イオンが好ましく、より好ましくはマグネシウム、亜鉛、カルシウムである。
【0057】
前記有機陽イオンとは、炭素鎖を有する陽イオンである。前記有機陽イオンとしては、特に限定されず、例えば、有機アンモニウムイオンが挙げられる。前記有機アンモニウムイオンとしては、例えば、ステアリルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオンなどの1級アンモニウムイオン、ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン、オクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオンなどの2級アンモニウムイオン;トリオクチルアンモニウムイオンなどの3級アンモニウムイオン;ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオンなどが挙げられる。これらの有機陽イオンは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記脂肪族カルボン酸および/またはその塩としては、飽和脂肪酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩が挙げられる。前記飽和脂肪酸および/またはその塩が好ましく、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、または、これらのカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩が好ましい。前記不飽和脂肪酸および/またはその塩としては、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸もしくはアラキドン酸、または、これらのカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩が好ましい。
【0059】
前記芳香族カルボン酸および/またはその塩としては、特に、安息香酸、ブチル安息香酸、アニス酸(メトキシ安息香酸)、ジメトキシ安息香酸、トリメトキシ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸、クロロ安息香酸、ジクロロ安息香酸、トリクロロ安息香酸、アセトキシ安息香酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、フランカルボン酸もしくはテノイル酸、または、これらのカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩が好ましい。
【0060】
前記(g)カルボン酸および/またはその塩の含有量は、例えば、(a)基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であって、30質量部以下が好ましく、より好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以下である。
【0061】
(他の成分)
前記ゴム組成物は、必要に応じて、顔料、重量調整などのための充填剤、老化防止剤、しゃく解剤、軟化剤などの添加剤を含有してもよい。また、ゴム組成物は、ゴルフボールのコアや、コア作製時に発生した端材を粉砕したゴム粉末を含有してもよい。
【0062】
ゴム組成物に配合される顔料としては、例えば、白色顔料、青色顔料、紫色顔料などを挙げることができる。前記白色顔料としては、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンの種類は、特に限定されないが、隠蔽性が良好であるという理由から、ルチル型を用いることが好ましい。また、酸化チタンの含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上であって、8質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下である。
【0063】
ゴム組成物が白色顔料と青色顔料とを含有することも好ましい態様である。青色顔料は、白色を鮮やかに見せるために配合され、例えば、群青、コバルト青、フタロシアニンブルーなどを挙げることができる。また、前記紫色顔料としては、例えば、アントラキノンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、メチルバイオレットなどを挙げることができる。
【0064】
ゴム組成物に用いる充填剤としては、得られる架橋ゴム成形体の質量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。
【0065】
前記老化防止剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0066】
ゴム組成物の調製
本発明で使用するゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、(d)ベンゾチアゾール誘導体の塩、および、必要に応じてその他の添加剤などを混合して、混練することにより得られる。混練の方法は、特に限定されず、例えば、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行えばよい。
【0067】
[架橋ゴム成形体]
本発明の架橋ゴム成形体は、前記ゴム組成物から形成されたことを特徴とする。前記架橋ゴム成形体は、混練後のゴム組成物を金型内で成形することにより得ることができる。成形温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、250℃以下が好ましい。また、成形時の圧力は、2.9MPa~11.8MPaが好ましい。成形時間は、10分間~60分間が好ましい。
【0068】
前記架橋ゴム成形体の用途としては、ゴルフボール、テニスボール、グリップなどのスポーツ用品;ホース、ベルト、マットなどの工業用品;靴底、タイヤ、樹脂添加物、防振ゴム、防舷材などが挙げられる。前記ゴルフボールとしては、前記ゴム組成物から形成された構成部材を有するものが挙げられる。
【実施例0069】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0070】
[評価方法]
(1)圧縮変形量(mm)
球状成形体に初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向に球状成形体が縮む量)を測定した。
【0071】
(2)反発係数
各球状成形体に198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の円筒物および球状成形体の速度を測定し、それぞれの速度および質量から各球状成形体の反発係数を算出した。測定は各球状成形体について12個ずつ行って、その平均値を各球状成形体の反発係数とした。
【0072】
[ベンゾチアゾール誘導体の塩の準備]
ベンゾチアゾール誘導体の塩は、市販のベンゾチアゾール誘導体を用い、特開昭50-012081号公報に記載の2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩の製造方法を参考に合成した。具体的には、ベンゾチアゾール誘導体を、酸の存在下において、不活性有機溶媒中で、当量の金属酸化物または金属水酸化物と反応させた。
ベンゾチアゾール誘導体は、下記のものを使用した。
5Me-MBT:Cool pharm LtD.製、5-メチル-2-メルカプトベンゾチアゾール
4Me-MBT:Fluorochem Ltd.社製、4-メチル-2-メルカプトベンゾチアゾール
5Cl-MBT:東京化成工業社製、5-クロロ-2-メルカプトベンゾチアゾール
5F-MBT:Combi-Blocks社製、5-フルオロ-2-メルカプトベンゾチアゾール
5CF3-MBT:AA Blocks社製、5-トリフルオロメチル-2-メルカプトベンゾチアゾール
5Br-MBT:アルドリッチ社製、5-ブロモ-2-メルカプトベンゾチアゾール
【0073】
[球状成形体の作製]
表1に示す配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより、直径40.86mmの球状成形体を得た。
【0074】
【表1】
BR:JSR社製、「BR730」(ハイシスポリブタジエンゴム(シス-1,4-結合含有量=96質量%、1,2-ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML
1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3))
ZN-DA90S:日触テクノファインケミカル社製、アクリル酸亜鉛(ステアリン酸亜鉛を10質量%含有)
ZnO:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」(酸化亜鉛)
PBDS:川口化学工業社製、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド
Zn(MBT)
2:富士フイルム和光純薬社製、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩
Zn(5Me-MBT)
2:5-メチル-2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩
Zn(4Me-MBT)
2:4-メチル-2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩
Zn(5Cl-MBT)
2:5-クロロ-2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩
Zn(5F-MBT)
2:5-フルオロ-2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩
Zn(5CF
3-MBT)
2:5-トリフルオロメチル-2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩
Zn(5Br-MBT)
2:5-ブロモ-2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩
DCP:日油社製、「パークミル(登録商標)D」(ジクミルパーオキサイド)
【0075】
表1に、各球状成形体の圧縮変形量および反発係数を示した。また、
図1に各球状成形体の圧縮変形量と反発係数との関係を示した。
図1に示すように、ゴム組成物が含有する原材料が同一である場合、共架橋剤の含有量が多いほど反発性能が高くなり、かつ、圧縮変形量が小さくなる傾向がある。そのため、同一の原材料から作製された球状成形体のプロットをつないだ直線が、グラフの右上に位置しているものほど、柔軟性が高く、かつ、反発性能に優れているといえる。
【0076】
球状成形体No.1~8は、式(1)で表される化合物であり、かつ、式(1)中の硫黄原子S2のMulliken電荷がいずれも-0.190以上であるベンゾチアゾール誘導体の塩を含有するゴム組成物から形成されている。これらの球状形成体は、他の球状成形体No.9~16よりも、柔軟性が高く、かつ、反発性能に優れている。
本発明のゴム組成物を用いれば、反発性能に優れた架橋ゴム成形体が得られる。よって、本発明のゴム組成物は、ゴルフボール、テニスボール、グリップなどのスポーツ用品;ホース、ベルト、マットなどの工業用品;靴底、タイヤ、樹脂添加物、防振ゴム、防舷材などに利用できる。