(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189542
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】導電性ローラを備えた転写体のクリーニング装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20221215BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G03G21/00 310
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098176
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】池浦 俊
(72)【発明者】
【氏名】三宅 弘二
(72)【発明者】
【氏名】堀 悟
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 研介
【テーマコード(参考)】
2H134
2H200
【Fターム(参考)】
2H134GA06
2H134HA03
2H134HA12
2H134HA17
2H134HB01
2H134HD01
2H134KB02
2H134KB06
2H134KB09
2H134KD02
2H134KH04
2H200FA01
2H200GA23
2H200JC04
2H200JC12
2H200MA01
2H200MB01
2H200NA01
2H200PA02
2H200PA11
2H200PA14
2H200PB27
2H200PB28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】転写されなかった現像剤が残存している。
【解決手段】例示的な画像形成装置は、転写位置にトナー像を搬送する搬送面を有し、転写位置においてトナー像が搬送面から転写された後にクリーニング経路において残存する現像剤を搬送する搬送面を有する転写体と、クリーニング経路に沿って転写体を回転可能に支持する懸架ローラと、転写体の搬送面に接触する剛体である導電性ローラを有するクリーニング装置と、を備え、導電性ローラは、転写体の搬送面に残存する現像剤から粒子を集める極性のバイアス電位を受け、導電性ローラは、転写体との接触点において転写体が移動する方向の逆方向に回転し、導電性ローラの接触点における周速が転写体が移動する速度より大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写位置にトナー像を搬送する搬送面を有し、前記転写位置において前記トナー像が前記搬送面から転写された後にクリーニング経路において残存する現像剤を搬送する前記搬送面を有する転写体と、
前記クリーニング経路に沿って前記転写体を回転可能に支持する懸架ローラと、
前記転写体の前記搬送面に接触する剛体である導電性ローラを有するクリーニング装置と、
を備え、
前記導電性ローラは、前記転写体の前記搬送面に残存する現像剤から粒子を集める極性のバイアス電位を受け、
前記導電性ローラは、前記転写体との接触点において前記転写体が移動する方向の逆方向に回転し、前記導電性ローラの前記接触点における周速が前記転写体が移動する速度より大きい、
画像形成装置。
【請求項2】
前記クリーニング装置は、前記搬送面の反対側から前記導電性ローラを支持する支持部材を備える、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記クリーニング経路において前記転写体を曲げると共に前記転写体を介して前記導電性ローラに当接するように配置されている、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記クリーニング装置は、前記クリーニング経路における前記懸架ローラよりも重力方向上側に配置される、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記クリーニング装置は、前記クリーニング経路における前記懸架ローラよりも重力方向下側に配置される、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記導電性ローラよりも前記転写体の前記クリーニング経路の下流側において前記転写体に接触する第2導電性ローラを備え、
前記第2導電性ローラは、前記搬送面に残存する現像剤の第2粒子を集める第2極性の第2バイアス電位を受け、
前記第2バイアス電位の前記第2極性は、前記バイアス電位の前記極性とは逆の極性である、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2導電性ローラは、剛体であり、
前記第2導電性ローラは、前記転写体との接触点において前記転写体が移動する方向の逆方向に回転し、前記第2導電性ローラの前記接触点における周速が前記転写体が移動する速度より大きい、
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記導電性ローラは、前記クリーニング経路における前記懸架ローラよりも上流側に配置されており、
前記第2導電性ローラは、前記クリーニング経路における前記懸架ローラよりも下流側に配置されている、
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記クリーニング経路における前記導電性ローラよりも上流側に、前記転写体に接触する補助清掃部材を備える、
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記導電性ローラ及び前記懸架ローラは、互いに異なる方向から前記転写体に押し当てられており、
前記導電性ローラ及び前記懸架ローラのそれぞれは、前記転写体との間に前記転写体が巻き付けられる巻き付け領域を形成する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記導電性ローラと前記支持部材が前記転写体に対しオフセットした配置とされている、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記クリーニング装置の複数の部品の抵抗を合成して得られるシステム抵抗に印加される電圧と、前記システム抵抗を流れる電流の値を用いて抵抗値を測定するシステム抵抗測定部を備える、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記システム抵抗測定部は、前記抵抗値から前記画像形成装置の内部の温度及び湿度の少なくともいずれかを推定する、
請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
印刷媒体を前記転写体に向かって搬送する印刷媒体搬送装置と、
前記転写体から前記印刷媒体に転写されたトナー像を前記印刷媒体に定着する定着装置と、
前記システム抵抗測定部によって測定された抵抗値に応じて、前記印刷媒体搬送装置及び前記定着装置の少なくともいずれかを制御する制御部と、を備える、
請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項15】
転写位置にトナー像を搬送する搬送面を有し、前記転写位置において前記トナー像が前記搬送面から転写された後にクリーニング経路において残存する現像剤を搬送する前記搬送面を有する転写体と、
前記クリーニング経路に沿って前記転写体を回転可能に支持する懸架ローラと、
前記転写体の前記搬送面に接触する剛体である導電性ローラと、
を備え、
前記導電性ローラは、前記転写体との接触点において前記転写体が移動する方向の逆方向に回転し、前記導電性ローラの前記接触点における周速が前記転写体が移動する速度より大きい、
転写装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
画像形成装置は、搬送された印刷媒体に、画像形成されたトナー像を転写する転写装置を備える。転写装置は、トナー像を担持する転写体と、転写体を懸架する複数の懸架ローラと、転写体が担持するトナー像を印刷媒体に転写する二次転写ローラとを備える。転写装置は、更に、転写体に残った残トナーをクリーニングする転写体のクリーニング装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図1】本明細書に開示された種々の例を実現させるために用いることができる例示的な画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】画像形成装置の例示的なクリーニング装置を示す概略構成図である。
【
図3】導電性ローラと支持部材とのニップ部の例を模式的に示す図である。
【
図4】印加バイアス電位とクリーニング後のトナー濃度との関係の例を示すグラフである。
【
図5】導電性ローラ及び転写体の速度比と、クリーニング後のトナー濃度との関係の例を示すグラフである。
【
図6】変形例に係るクリーニング装置を模式的に示す図である。
【
図7】変形例に係るクリーニング装置を模式的に示す図である。
【
図8】変形例に係るクリーニング装置を模式的に示す図である。
【
図9】変形例に係るクリーニング装置を模式的に示す図である。
【
図10】変形例に係る転写装置を模式的に示す図である。
【
図11】変形例に係る転写装置を模式的に示す図である。
【
図12】変形例に係る転写装置を模式的に示す図である。
【
図13】画像形成装置における走行枚数とブラシローラの摩耗量との関係の例を示すグラフである。
【
図14】画像形成装置における走行枚数と導電性ローラの摩耗量との関係の例を示すグラフである。
【
図15】画像形成装置における走行枚数とシステム抵抗との関係の例を示すグラフである。
【
図16】導電性ローラ及び転写体の速度比と、転写位置へのキャリアの侵入量との関係の例を示すグラフである。
【
図17】画像形成装置における走行枚数とクリーニング効率との関係の例を示すグラフである。
【
図18】変形例に係る転写装置を模式的に示す図である。
【
図19】変形例に係るクリーニング装置を模式的に示す図である。
【
図20】変形例に係るクリーニング装置を模式的に示す図である。
【
図21】変形例に係るクリーニング装置を模式的に示す図である。
【
図22】変形例に係るクリーニング装置を模式的に示す図である。
【
図23】懸架ローラ、導電性ローラ及び第2導電性ローラの配置例を模式的に示す図である。
【
図24】変形例に係るクリーニング装置を模式的に示す図である。
【
図25】変形例に係るクリーニング装置を模式的に示す図である。
【
図26】環境検知センサ、及び画像形成装置の温湿度測定装置のそれぞれによって測定された温度及び相対湿度の関係を模式的に示すグラフである。
【
図27】クリーニング装置に対する印加電圧の設定方法の工程の例を示すフローチャートである。
【
図28】クリーニング装置に対する印加電圧の設定方法の工程の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0003】
以下では、図面を参照しながら画像形成装置及び転写装置の種々の例について例示する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、例を一層明瞭に示すために、簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。まず、例示的な画像形成装置について説明する。
【0004】
例示的な画像形成装置は、一例として、転写装置を備える。転写装置は、トナー像を搬送する転写体と、転写体を懸架する懸架ローラと、転写体が担持するトナー像を印刷媒体に転写する二次転写ローラと、転写体の残トナーを電気的に除去するクリーニング装置とを備える。一例として、クリーニング装置は、剛体の導電性ローラを備える。「クリーニング経路」とは、トナー像の搬送経路における転写位置よりも下流側の経路を示している。「クリーニング経路」において転写体の搬送面には、例えば、転写されなかった現像剤が残存している。一例として、「クリーニング経路」は、転写体における二次転写領域と一次転写領域との間の転写体の経路であってもよい。
【0005】
例示的な導電性ローラは転写体との接触点において転写体が移動する方向の逆方向に回転する。例えば、導電性ローラにより、転写体からキャリアを確実且つ効率よく除去することができる。これにより、キャリアが転写ニップ部に侵入する可能性を低減でき、キャリアの侵入に伴う転写体の摩耗、及び画質の低下を抑制することができる。例えば、導電性ローラの転写体への接触点における導電性ローラの周速は、転写体が移動する速度より大きい。この例によれば、導電性ローラによって転写体のキャリアをより確実に除去することができる。
【0006】
図1は、一例としての画像形成装置1を示している。
図1に示されるように、例示的な画像形成装置1は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色を用いてカラー画像を形成する。画像形成装置1は、例えば、印刷媒体搬送装置10と、現像装置20Y,20M,20C,20Kと、転写装置30と、感光体40Y,40M,40C,40Kと、定着装置50とを備える。
【0007】
現像装置20Y,20M,20C,20Kは、例えば、色ごとに設けられる。現像装置20Y,20M,20C,20Kのそれぞれは、トナー像を感光体40Y,40M,40C,40Kに担持させる現像ローラ21を備える。現像装置20Y,20M,20C,20Kでは、例えば、トナーとキャリアが所定の混合比となるように調整され、トナー及びキャリアが混合撹拌されて均一に分散される。現像装置20Y,20M,20C,20Kのそれぞれには、例えば、トナータンク25Y,25M,25C,25Kが対向する。トナータンク25Y,25M,25C,25Kのそれぞれの内部には、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのそれぞれのトナーが収容されている。感光体40Y,40M,40C,40Kのそれぞれは、一例として、有機感光体(OPC:Organic Photoconductor)である。感光体40Y,40M,40C,40Kは、転写体31に沿って並ぶように配置される。感光体40Y,40M,40C,40Kのそれぞれには、現像装置20Y,20M,20C,20K、露光ユニット41、帯電装置42及びクリーニング装置43が対向している。
【0008】
例示的な印刷媒体搬送装置10は印刷媒体Pを搬送する。印刷媒体搬送装置10は、一例として、画像が形成される印刷媒体Pを搬送経路R1に沿って搬送するピックアップローラ11と、搬送経路R1におけるピックアップローラ11の下流側に設けられるレジストレーションローラ12とを備える。印刷媒体Pは、トレイTに積層されて収容されており、ピックアップローラ11によってピックアップされて搬送される。印刷媒体Pの搬送経路におけるレジストレーションローラ12よりも下流側には、印刷媒体Pにトナー像が転写される二次転写領域R2が設けられる。
【0009】
転写装置30は、転写体31と、懸架ローラ32a,32b,32cと、駆動ローラ32dと、一次転写ローラ33Y,33M,33C,33Kと、二次転写ローラ34とを備える。一次転写ローラ33Y,33M,33C,33Kは、感光体40Y,40M,40C,40Kのそれぞれから転写体31にトナー像を一次転写する。二次転写ローラ34は、二次転写領域R2に搬送された印刷媒体Pに転写体31からトナー像を二次転写する。
【0010】
転写体31は、例えば、懸架ローラ32a,32b,32c及び駆動ローラ32dによって懸架されている中間転写体である。転写体31は、例えば、懸架ローラ32a,32b,32c及び駆動ローラ32dによって循環移動する無端ベルト(転写ベルト)である。駆動ローラ32dは、懸架ローラ32a,32b,32cと共に転写体31を懸架するバックアップローラである。
【0011】
一次転写ローラ33Y,33M,33C,33Kは、例えば、転写体31の内周側から感光体40Y,40M,40C,40Kを押圧する。駆動ローラ32dは、転写体31の内周側から二次転写ローラ34を押圧する。一次転写ローラ33Y,33M,33C,33Kは、例えば、色ごとに設けられる。一次転写ローラ33Y,33M,33C,33Kのそれぞれは、感光体40Y,40M,40C,40Kのそれぞれと共に転写体31を挟持する。二次転写ローラ34は、駆動ローラ32dと共に転写体31を挟持する。二次転写ローラ34は、画像形成装置1による印刷中に印刷媒体Pにトナー像を転写し、当該印刷の印刷速度に応じて回転する。以上、転写装置30について説明した。しかしながら、転写装置の構成は、上記の各例に限られない。転写装置30の種々の例については後に詳述する。
【0012】
定着装置50は、例えば、転写体31から印刷媒体Pに二次転写されたトナー像を印刷媒体Pに定着する。定着装置50は、一例として、印刷媒体Pを加熱すると共に印刷媒体Pにトナー像を定着する加熱ローラ51と、加熱ローラ51を加圧する加圧ローラ52とを備える。加熱ローラ51と加圧ローラ52の間には、印刷媒体Pの定着領域である定着ニップ領域53が設けられている。定着ニップ領域53を印刷媒体Pが通過することにより、トナー像が印刷媒体Pに溶融定着される。定着ニップ領域53を通過した印刷媒体Pは、例えば、排出ローラ45,46によって画像形成装置1の外部に排出される。
【0013】
一例としての画像形成装置1は、現像装置20Y,20M,20C,20Kのそれぞれ、感光体40Y,40M,40C,40Kのそれぞれ、帯電装置42及びクリーニング装置43を一体として備えるプロセスカートリッジ2と、プロセスカートリッジ2が着脱されるハウジング3とを備える。プロセスカートリッジ2は、ハウジング3の扉を開けてハウジング3に対して挿抜されることにより、ハウジング3に対して着脱自在とされている。
【0014】
次に、転写装置30の種々の例について説明する。
【0015】
図1に示されるように、転写体31は、例えば、転写位置(一例として二次転写領域R2)にトナー像を搬送する搬送面31bを有する。転写体31は、当該転写位置においてトナー像が転写された後にクリーニング経路31cにおいて残存する現像剤を搬送する搬送面31bを有する。懸架ローラ32aは、クリーニング経路31cに沿って転写体31を回転可能に支持する。
【0016】
図2は、例示的なクリーニング装置70を示す図である。
図2に示されるように、クリーニング装置70は、転写体31の搬送面31bに接触する剛体である導電性ローラ71を有する。一例として、クリーニング装置70は、クリーニング経路31cにおける懸架ローラ32aよりも重力方向下側に配置される。クリーニング装置70は、クリーニング経路31cにおける懸架ローラ32bよりも重力方向上側に配置される。転写装置30において、例えば、懸架ローラ32aは転写体31にテンションを付与するテンションローラであり、懸架ローラ32bはアイドルローラである。
【0017】
導電性ローラ71は、例えば、クリーニング経路31cにおける懸架ローラ32a及び懸架ローラ32bの間に配置される。導電性ローラ71は、剛体である。導電性ローラ71は、例えば、金属製である。一例として、導電性ローラ71は、転写体31を曲げるように配置されている。例えば、導電性ローラ71は転写体31が巻き付けられる巻き付け領域71dを有する。これにより、転写体31の導電性ローラ71への巻き付け量を確保することが可能となる。
【0018】
導電性ローラ71は、転写体31に接触する円周面71bを有する。導電性ローラ71は、転写体31の搬送面31bに残存する粒子を集めることが可能な極性のバイアス電位を受ける。一例として、導電性ローラ71は、搬送面31bに残存する現像剤からキャリアを集めるためにトナーと同極性のバイアス電位を受ける。導電性ローラ71は、例えば、転写体31の搬送面31bから粒子(一例としてキャリア)を除去するクリーニングローラである。導電性ローラ71は、転写体31との接触点71cにおいて転写体31が移動する方向の逆方向に回転する。導電性ローラ71の接触点71cにおける周速は転写体31が移動する速度より大きい。実施例として、転写体31が移動する速度をVa、導電性ローラ71の接触点71cにおける周速の絶対値をVb、としたときに、下記の式(1)を満たしてもよい。
1.0<Vb/Va≦2.0 ・・・(1)
【0019】
例示的なクリーニング装置70は、導電性ローラ71の円周面71bに接触するスクレーパ72を備える。スクレーパ72は、回転する導電性ローラ71の円周面71bに接触することにより、円周面71bに残存する現像剤を掻き落とす。例えば、クリーニング装置70は、搬送面31bの反対側から導電性ローラ71を支持する支持部材73を備える。支持部材73は、例えば、搬送面31bの反対側から導電性ローラ71を支持するバックアップローラである。バックアップローラである支持部材73は、例えば、金属ローラである。支持部材73は、弾性を有していてもよい。また、支持部材73は、発泡ローラ、ゴムローラ、又は金属の表面にゴム層を有するローラであってもよい。例えば、導電性ローラ71の直径は、支持部材73の直径よりも大きい。一例として、導電性ローラ71の直径は12mmであり、支持部材73の直径は10mmである。
【0020】
一例として、支持部材73は、クリーニング経路31cにおいて転写体31を曲げると共に転写体31を介して導電性ローラ71に当接する。導電性ローラ71は、懸架ローラ32aから延びる転写体31が接触する接点71fを有する。導電性ローラ71と支持部材73は転写体31に対しオフセットした配置とされている。すなわち、支持部材73が導電性ローラ71を押圧する部分の中心の位置は、転写体31における接点71fよりも下流側の部分である。なお、支持部材73が導電性ローラ71を押圧する部分の中心の位置は、転写体31における接点71fよりも上流側の部分であってもよい。
【0021】
図3は、導電性ローラ71及び支持部材73を示す模式図である。
図2及び
図3に示されるように、導電性ローラ71と支持部材73との間におけるニップ量dは、例えば、導電性ローラ71と支持部材73とにより転写体31を変位させる量である。具体的には、ニップ量dは、導電性ローラ71が無い状態で支持部材73が転写体31に接する場合における、転写体31の位置を示す仮想線Lから、導電性ローラ71を転写体31の内側に食い込ませたときにおける接点71fまでの距離を示している。導電性ローラ71の中心O1、及び支持部材73の中心O2を結ぶ中心線Cと、接点71fにおける法線Vとの成す角度をθとすると、角度θは、仮想線Lに対する導電性ローラ71と支持部材73との配置のオフセット量を示す。ニップ量dが大きくなるほど、法線Vに対する中心線Cの傾きが大きくなり、オフセット量を示す角度θが増大する。
【0022】
図4は、上記の実施例に係る導電性ローラ71及び支持部材73を備えたクリーニング装置70と比較例1~3のクリーニング装置における印加バイアス電位(V)とクリーニング後のトナー濃度との関係の例を示すグラフである。
比較例1に係るクリーニング装置は、巻き付け領域71dを有しておらず且つ前述した式(1)を満たさない例を示している。
比較例2に係るクリーニング装置は、巻き付け領域71dを有しており且つ前述した式(1)を満たさない例を示している。
比較例3に係るクリーニング装置は、巻き付け領域71dを有しておらず且つ前述した式(1)を満たす例を示している。
図4に示されるように、巻き付け領域71dを有しており且つ前述した式(1)を満たす実施例のクリーニング装置70では、比較例1~3のクリーニング装置よりも、クリーニング後の搬送面31bに残存したトナーのトナー濃度を低減させることができる。より広い印加バイアス電位の範囲において目標値(
図4において点線で示す目標値)よりもトナー濃度を減らすことができる。このように、実施例に係るクリーニング装置70では、比較例1~3よりも高いクリーニング性能を得られることが分かる。
【0023】
図5は、バイアス電位が印加されない場合におけるクリーニング性能の例を示すグラフである。
図5は、前述したVa及びVbの比と、搬送面31bに残存するトナーのトナー濃度との関係の例を示すグラフである。
図5に示されるように、Vb/Vaの値が1.0以上であって且つ導電性ローラ71と支持部材73との間におけるニップ量dが0.5mm以上であるときに、バイアス電位が印加されなくても高いクリーニング性能を維持することができる。
【0024】
図6は、変形例に係るクリーニング装置70Aを模式的に示す図である。
図6に示されるように、クリーニング装置70Aは、導電性ローラ71と、支持部材73と、導電性ローラ71にバイアス電位を印加する電源72Aとを備える。例えば、支持部材73は、電気的にグランド接続されている。なお、導電性ローラ71がグランド接続され、支持部材73に(例えば正負それぞれの)バイアス電位が印加されてもよい。
【0025】
電源72Aは、導電性ローラ71に電気的に接続されている。例えば、導電性ローラ71は、電源72Aから粒子(一例としてキャリア)を集める極性のバイアス電位を受ける。電源72Aは、導電性ローラ71に印加するバイアス電位が切り替え可能とされていてもよい。例えば、電源72Aが印加するバイアス電位の切り替えにより、導電性ローラ71は、上記の極性とは逆の第2極性を有する第2バイアス電位を受けてもよい。第2バイアス電位は、第2粒子(一例としてトナー)を集める。
【0026】
図7は、変形例に係るクリーニング装置70Bを模式的に示す図である。
図7に示されるように、クリーニング装置70Bは、導電性ローラ71と、支持部材73と、電源72Aと、転写体31の搬送面31bとは反対側の面に接触する支持部材72bとを備える。例えば、支持部材72bはグランド接続されている。クリーニング装置70Bにおいて、支持部材73はクリーニング経路31cにおける導電性ローラ71よりも下流側に配置されている。
【0027】
図7の例において、導電性ローラ71は支持部材73とは接点を有しない。クリーニング装置70Bでは、支持部材73とは別体とされた支持部材72bが転写体31を介して導電性ローラ71に接触している。なお、支持部材72bの形状は、棒状(バータイプ)であってもよいし、ロール状(ロールタイプ)であってもよいし、ブラシ状(ブラシタイプ)であってもよい。支持部材72bの材料は、ゴムを含んでいてもよいし、発泡スポンジを含んでいてもよい。このように、支持部材72bの形状及び材料は特に限定されない。
【0028】
図8は、変形例に係るクリーニング装置70Cを模式的に示す図である。
図8に示されるように、クリーニング装置70Cは、導電性ローラ71と、支持部材73と、懸架ローラ32aに接触する荷電部材74と、導電性ローラ71にバイアス電位を印加する電源72Cと、荷電部材74にバイアス電位を印加する電源74Cとを備える。一例として、荷電部材74は荷電ブラシである。例えば、懸架ローラ32a及び支持部材73はグランド接続されている。
【0029】
荷電部材74は、懸架ローラ32a上の転写体31における搬送面31bから物理的に現像剤を掻き落とすと共に現像剤の粒子(一例としてキャリア)を電気的に搬送面31bから吸着する。一例として、電源74Cは荷電部材74を介して懸架ローラ32aにトナーと同一の極性(同極性)のバイアス電位を印加する。電源72Cは導電性ローラ71にトナーと逆の極性(逆極性)のバイアス電位を印加する。
【0030】
荷電部材74は、棒状であってもよいし、ブラシ状であってもよい。この荷電部材74では、搬送面31bのトナーを荷電することができ、搬送面31bにおけるトナーの蓄積を抑制できる。荷電部材74はバーブラシであってもよい。この場合、導電性ローラ71に移動するトナーの量をバーブラシによって調整できるという利点がある。
【0031】
図9は、変形例に係るクリーニング装置70Dを模式的に示す図である。
図9に示されるように、クリーニング装置70Dは、導電性ローラ71と、支持部材73と、電源72Aと、クリーニング経路31cにおける懸架ローラ32bよりも下流側に位置する導電体72Dとを備える。一例として、導電体72Dはバーブラシである。導電体72Dの形状及び材料は、例えば、前述した支持部材72bの形状及び材料と同一であってもよい。導電体72Dは、例えば、導電性ローラ71及び支持部材73によって除去しきれなかったトナーを一時的に保持する。これにより、転写体31の搬送面31b上への現像剤の蓄積をより確実に抑制できる。
【0032】
図10は、更なる変形例に係るクリーニング装置80を模式的に示す図である。
図10に示されるように、クリーニング装置80は、導電性ローラ71と、導電性ローラ71よりも転写体31のクリーニング経路31cの下流側において転写体31に接触する第2導電性ローラ81とを備える。例えば、導電性ローラ71は、搬送面31bに残存する現像剤の粒子(一例としてキャリア)を集めるための正極性のバイアス電位を受ける。第2導電性ローラ81は、搬送面31bに残存する現像剤の第2粒子(一例としてトナー)を集めるための逆極性(第2極性)の第2バイアス電位を受ける。
【0033】
導電性ローラ71は剛体(一例として金属ローラ)である。クリーニング装置80は、クリーニング装置70と同様、スクレーパ72を備え、スクレーパ72は導電性ローラ71の円周面71bに接触する。第2導電性ローラ81は、例えば、ブラシローラであってもよい。導電性ローラ71は、クリーニング経路31cにおける懸架ローラ32aよりも上流側に配置されている。第2導電性ローラ81は、クリーニング経路31cにおける導電性ローラ71よりも下流側に配置されている。クリーニング装置80は、第2導電性ローラ81に接触するローラ83を備えていてもよい。クリーニング装置80は、ローラ83の外周面に接触するスクレーパ84を備えていてもよい。クリーニング装置80は、クリーニング経路31cにおける導電性ローラ71よりも上流側に、転写体31に接触する補助清掃部材85を備えていてもよい。補助清掃部材85は、一例として、スポンジローラである。
【0034】
図11は、変形例に係るクリーニング装置80Aを模式的に示す図である。
図11に示されるように、クリーニング装置80Aは、導電性ローラ71と、第2導電性ローラ82とを備える。
【0035】
第2導電性ローラ82は、例えば、剛体である。第2導電性ローラ82が剛体である場合、第2導電性ローラ82は、転写体31との接触点82bにおいて転写体31が移動する方向の逆方向に回転する。第2導電性ローラ82の接触点82bにおける周速の絶対値は、例えば、転写体31が移動する速度より大きい。クリーニング装置80Aは、第2導電性ローラ82の外周面に接触するスクレーパ82Aを備えていてもよい。
【0036】
図12は、変形例に係るクリーニング装置80Bを模式的に示す図である。
図12に示されるクリーニング装置80Bでは、クリーニング経路31cにおける懸架ローラ32aよりも下流側に導電性ローラ71及び第2導電性ローラ82が配置されている。このように、導電性ローラ71、第2導電性ローラ82及び補助清掃部材85は、クリーニング経路31cにおける任意の位置に配置することが可能である。
【0037】
図13は、
図10に示されるクリーニング装置80において、導電性ローラ71に代えてブラシローラを備える場合(比較例)における当該ブラシローラの摩耗量を模式的に示すグラフである。
図14は、
図10に示されるクリーニング装置80における導電性ローラ71の摩耗量を模式的に示すグラフである。
図13及び
図14では、クリーニング装置80を備えた画像形成装置1における印刷媒体Pの印刷枚数(走行枚数)と摩耗量との関係を示している。
【0038】
図13に示されるように、導電性ローラ71に代えてブラシローラを備える場合、走行枚数の増大に伴って当該ブラシローラの摩耗量が徐々に増加した。これに対し、
図14に示されるように、導電性ローラ71を備えるクリーニング装置80の場合には、最初に導電性ローラ71の摩耗が発生する。しかしながら、最初に摩耗が発生した後には走行枚数が増大しても導電性ローラ71への摩耗量が増加することはなく、導電性ローラ71の摩耗量は一定となった。このように、導電性ローラ71を備えるクリーニング装置80の場合、摩耗量に関して安定した特性を得られることが分かった。
【0039】
図15は、
図10に示されるクリーニング装置80において、導電性ローラ71を備える場合、及び、導電性ローラ71に代えてブラシローラを備える場合(比較例)におけるシステム抵抗の推移の例を示すグラフである。システム抵抗は、例えば、クリーニング装置の複数の部品の抵抗を合成して得られる抵抗を示している。なお、システム抵抗の具体例については後に詳述する。
図15は、走行枚数とシステム抵抗との関係を示している。
図15に示されるように、導電性ローラ71に代えてブラシローラを備える場合、走行枚数の増大に伴ってシステム抵抗が徐々に増加した。これに対し、導電性ローラ71を備えるクリーニング装置80の場合には、走行枚数が増大してもシステム抵抗が増加することはなかった。このように、導電性ローラ71を備えるクリーニング装置80の場合、経時的に安定したシステム抵抗を得られることが分かった。
【0040】
図10に示されるクリーニング装置80を備える転写装置30(画像形成装置1)において、例えば、導電性ローラ71は、転写体31の搬送面31bに滑らかに接触する円周面71bを有する剛体である。導電性ローラ71は、転写体31との接触点71cにおいて転写体31が移動する方向の逆方向に回転する。導電性ローラ71の接触点71cにおける周速は転写体31が移動する速度より大きい。転写体31が移動する速度をVa、導電性ローラ71の接触点71cにおける周速の絶対値をVb、としてVb/Vaと転写位置へのキャリアの侵入量との関係を測定した。
【0041】
図16は、上記の測定の結果を示すグラフである。
図16に示されるように、Vb/Vaが1.0未満である(転写体31が移動する速度Vaよりも導電性ローラ71の周速の絶対値Vbの方が小さい)場合には、転写位置に多くのキャリアが侵入し転写位置におけるニップ位置に傷が発生しうることが分かった。これに対し、Vb/Vaが1.0以上(導電性ローラ71の周速の絶対値Vbが転写体31が移動する速度Va以上)である場合には、転写位置へのキャリアの侵入を顕著に低減させることができ、転写位置におけるニップ位置への傷の発生を抑えられることが分かった。従って、導電性ローラ71の周速の絶対値Vbが転写体31が移動する速度Va以上である場合、傷の発生を抑制して画像形成装置1の長寿命化を実現させることができる。
【0042】
図17は、導電性ローラ71を有するクリーニング装置80を備えた転写装置30(画像形成装置1)のクリーニング経路31cにおけるクリーニング効率と走行枚数との関係を示すグラフである。
図17に示されるように、転写体31の搬送面31bに滑らかに接触する円周面71bを有する剛体の導電性ローラ71を備える場合、走行枚数が増大しても高いクリーニング効率を維持できることが分かった。具体的には、導電性ローラ71を備える場合、走行枚数が1000(k枚)以下であるときには95%というクリーニング効率の目標値を常に上回ることが分かった。
【0043】
図18は、更なる変形例に係る転写装置30Bを模式的に示す図である。
図18に示されるように、転写装置30Bは、前述した転写装置30と同様、転写体31と、懸架ローラ32a,32b,32cと、駆動ローラ32dと、転写体31を介して感光体40に当接する一次転写ローラ33とを備える。例えば、感光体40は、イエローのトナー像を転写体31に転写する感光体40Yと、マゼンタのトナー像を転写体31に転写する感光体40Mと、シアンのトナー像を転写体31に転写する感光体40Cと、ブラックのトナー像を転写体31に転写する感光体40Kとを含む。
【0044】
例示的な転写装置30Bは、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナーを用いるカラーモードと、ブラックのトナーのみを用いるモノクロモードとが切り替えられる。例えば、カラーモードでは、感光体40Y、感光体40M、感光体40C及び感光体40Kのそれぞれに転写体31を介して一次転写ローラ33が接触する。これに対し、モノクロモードでは、感光体40Kに転写体31を介して一次転写ローラ33が接触すると共に、感光体40Y、感光体40M及び感光体40Cから転写体31が離間する。このとき、例えば、アイドルローラである懸架ローラ32b及び一次転写ローラ33が感光体40Y,40M,40Cに対して離間するように移動する。カラーモードからモノクロモードに切り替わって懸架ローラ32b及び一次転写ローラ33が移動するときに、懸架ローラ32aと懸架ローラ32bの間に転写体31の弛みが生じることがある。
【0045】
図19に示されるように、転写装置30Bは、懸架ローラ32aと懸架ローラ32bの間において転写体31に押し当てられる導電性ローラ71を有するクリーニング装置90を備える。このように懸架ローラ32a及び導電性ローラ71のそれぞれが互いに異なる方向から転写体31に押し当てられることにより、前述した転写体31の弛みを抑制することができる。
【0046】
クリーニング装置90では、例えば、導電性ローラ71及び懸架ローラ32aが互いに異なる方向から押し当てられる。導電性ローラ71は転写体31との間に転写体31が巻き付けられる巻き付け領域71dを有し、懸架ローラ32aは転写体31との間に転写体31が巻き付けられる巻き付け領域32fを有する。懸架ローラ32aは転写体31の搬送面31bとは反対側の面に押し当てられ、導電性ローラ71は搬送面31bに押し当てられる。懸架ローラ32aが転写体31の巻き付け領域32fを有し、且つ導電性ローラ71が転写体31の巻き付け領域71dを有する。
【0047】
以上の構成により、カラーモードからモノクロモードに切り替わって懸架ローラ32b及び一次転写ローラ33が感光体40から離間しても転写体31の弛みを抑制することができる。更に、導電性ローラ71を備える場合には、導電性ローラ71に代えてブレードを備える場合と比較して、駆動トルクを高めることができるので、転写体31の速度変動を抑制して転写体31の移動を安定させることができる。
【0048】
図20は、変形例に係るクリーニング装置90Aを模式的に示す図である。クリーニング装置90Aでは、クリーニング経路31cにおける懸架ローラ32aよりも上流側に配置された導電性ローラ71と、クリーニング経路31cにおける懸架ローラ32aよりも下流側に配置された第2導電性ローラ92とを備える。導電性ローラ71及び第2導電性ローラ92は、懸架ローラ32aに当接している。第2導電性ローラ92は、例えば、導電性ローラ71と同様、剛体であって転写体31に接触する円周面92bを有する。例えば、導電性ローラ71及び第2導電性ローラ92の双方が剛体からなる金属ローラであってもよい。この場合、ブラシローラを用いた場合と比較してコストを低減させることができる。
【0049】
例えば、懸架ローラ32aはグランド接続されている。クリーニング装置90Aは、導電性ローラ71の円周面71bに接触する導電性のスクレーパ72と、スクレーパ72にバイアス電位を印加する電源72Aと、第2導電性ローラ92の円周面92bに接触する導電性のスクレーパ93と、スクレーパ93に第2バイアス電位を供給する電源93Aとを備える。第2バイアス電位は、上記のバイアス電位とは逆の極性を有する電位である。第2導電性ローラ92は、転写体31の搬送面31bに押し当てられており、転写体31との間に転写体31が巻き付けられる巻き付け領域92dを有する。
【0050】
図21は、変形例に係るクリーニング装置90Bを模式的に示す図である。クリーニング装置90Bは、クリーニング装置90Aと同様、導電性ローラ71と、第2導電性ローラ92と、スクレーパ72と、電源72Aと、スクレーパ93と、電源93Aとを備える。クリーニング装置90Bは、更に、転写体31を介して導電性ローラ71に接触するバーブラシ94と、転写体31を介して第2導電性ローラ92に接触する第2バーブラシ95とを備える。バーブラシ94及び第2バーブラシ95のそれぞれは、例えば、グランド接続されている。
【0051】
図22は、変形例に係るクリーニング装置90Cを模式的に示す図である。クリーニング装置90Cは、バーブラシ94及び第2バーブラシ95に代えて、フォームローラ96及び第2フォームローラ97を備える。クリーニング装置90Cは、転写体31を介して71に接触するフォームローラ96と、転写体31を介して第2導電性ローラ92に接触する第2フォームローラ97とを備える。フォームローラ96及び第2フォームローラ97のそれぞれは、例えば、グランド接続されている。
【0052】
図23に例示されるように、クリーニング装置90A,90B,90Cでは、クリーニング経路31cにおける懸架ローラ32aの上流側に導電性ローラ71が設けられ、クリーニング経路31cにおける懸架ローラ32aの下流側に第2導電性ローラ92が設けられる。導電性ローラ71が転写体31との間に巻き付け領域71dを形成すると共に、第2導電性ローラ92が転写体31との間に巻き付け領域92dを形成する。従って、モノクロモードに切り替わった場合等における転写体31の弛みをより確実に抑制することができる。
【0053】
図24は、更なる変形例に係るクリーニング装置100を模式的に示す図である。クリーニング装置100は、クリーニング経路31cにおける懸架ローラ32aの上流側に配置された導電性ローラ71と、クリーニング経路31cにおける懸架ローラ32aと懸架ローラ32bの間に配置された第2導電性ローラ92とを備える。クリーニング装置100は、導電性ローラ71の円周面71bに接触する導電性のスクレーパ72と、スクレーパ72にトナーと同極性のバイアス電位を印加する電源72Aと、第2導電性ローラ92の円周面92bに接触する導電性のスクレーパ93と、スクレーパ93にトナーと逆極性の第2バイアス電位を印加する電源93Aとを備える。クリーニング装置100は、更に、転写体31を介して導電性ローラ71に接触する第3ローラ101と、転写体31を介して第2導電性ローラ92に接触する第4ローラ102とを備える。第3ローラ101及び第4ローラ102は、例えば、弾性体によって構成されている。
【0054】
クリーニング装置100において、例えば、導電性ローラ71は第1クリーニングローラとして機能し、第2導電性ローラ92は第2クリーニングローラとして機能する。クリーニング装置100は、例えば、システム抵抗に印加される電圧と、システム抵抗を流れる電流の値を用いて抵抗値(システム抵抗値)を測定するシステム抵抗測定部105を有する。システム抵抗は、一例として、1つの電気系統(電源からグランドまで)における全ての抵抗を合成した抵抗を示している。具体例として、システム抵抗は、スクレーパ72の抵抗、導電性ローラ71の抵抗、転写体31の抵抗、及び第3ローラ101の抵抗を合成して得られる全抵抗のことである。また、システム抵抗は、スクレーパ93の抵抗、第2導電性ローラ92の抵抗、転写体31の抵抗、及び第4ローラ102の抵抗を合成して得られる全抵抗のことである。
【0055】
例えば、電源72A,93Aには、電圧計及び電流計が内蔵されている。例えば、電源72Aからスクレーパ72を介して導電性ローラ71に負電圧が印加されると、当該負電圧の印加によってグランドから第3ローラ101、転写体31、導電性ローラ71及びスクレーパ72を通って電源72Aに電流が流れる。一例として、システム抵抗測定部105は、電源72Aに内蔵された電圧計及び電流計から電圧及び電流値を取得し、グランドから電源72Aまでの電気抵抗をシステム抵抗値として測定する。例えば、電源93Aからスクレーパ93を介して第2導電性ローラ92に正電圧が印加されると、当該正電圧の印加によって電源93Aからスクレーパ93、第2導電性ローラ92、転写体31及び第4ローラ102を通ってグランドに電流が流れる。例えば、システム抵抗測定部105は、電源93Aに内蔵された電圧計及び電流計から電圧及び電流値を取得し、電源93Aからグランドまでの電気抵抗をシステム抵抗値として測定する。
【0056】
例えば、システム抵抗測定部105は、当該システム抵抗値から画像形成装置1の内部の温度及び湿度の少なくともいずれか(一例として温湿度)を推定する。例えば、ゴム製の第3ローラ101及び第4ローラ102の抵抗値は、温湿度等の環境変化によって変動しやすい。従って、前述したようにシステム抵抗測定部105がシステム抵抗を流れる電圧及び電流値を取得し、取得した電圧及び電流値からシステム抵抗値を測定することによって、画像形成装置1の内部の温湿度(又はその変化量)を推定できる。例えば、「画像形成装置の内部」とは、画像形成装置1のハウジング3の内部を示しており、具体例として、画像形成装置1の内部における転写装置が配置された箇所を示している。
【0057】
導電性ローラ71は、表面が円周面71bとされた剛体であるため、トナーによる汚染及び摩耗の影響を受けにくい。すなわち、導電性ローラ71は硬く導電性ローラ71の形状が確定されており、更に導電性ローラ71の円周面71bのトナーがスクレーパ72によって除去されるため、経時的な汚染及び摩耗が生じにくい。導電性ローラ71に代えて従来のブラシを用いる場合には、ブラシに対するトナー汚染又は摩耗が生じやすく、トナー汚染又は摩耗による抵抗値の変化が大きかった。よって、従来のブラシを用いてシステム抵抗値を測定する場合には、トナー汚染等によるブラシの抵抗値の変動が大きいことにより、システム抵抗値から画像形成装置の内部の温湿度を高精度に推定できなかった。これに対し、表面が円周面71bとされた剛体である導電性ローラ71を用いる場合には、導電性ローラ71の円周面71bにトナー汚染又は摩耗が生じにくいので、トナー汚染又は摩耗によるシステム抵抗値の変化が小さい。よって、導電性ローラ71を用いてシステム抵抗値を測定する場合には、システム抵抗値から画像形成装置1の内部(以下では、機内と称することがある)の温湿度を高精度に推定できる。第2導電性ローラ92についても同様である。
【0058】
図25は、変形例に係るクリーニング装置100Aを模式的に示す図である。
図25に示されるように、クリーニング装置100Aは、導電性ローラ71、スクレーパ72、電源72A及び第3ローラ101の位置がクリーニング装置100とは異なっている。クリーニング装置100Aでは、導電性ローラ71、スクレーパ72、電源72A及び第3ローラ101がクリーニング経路31cにおける懸架ローラ32aの下流側に配置されている。
【0059】
クリーニング装置100,100Aにおいて、例えば、システム抵抗測定部105は、抵抗値から画像形成装置1の内部の温度及び湿度の少なくともいずれかを推定する。この場合、画像形成装置1の機内の温湿度を推定するため抵抗値の変動が少ない金属ローラを用いるので、温湿度を高精度に推定できる。
【0060】
図26は、画像形成装置1の外気の温湿度を検知する環境検知センサによって測定された温湿度、一般の温湿度測定装置を用いて、それぞれ二次転写ローラ34付近、感光体40付近、及びクリーニング装置70付近において実測した温湿度の関係を示している。画像形成装置1の環境検知センサは、例えば、画像形成装置1の外気の温湿度を検知可能な位置に配置される。「外気の温湿度を検知可能な位置」は、例えば、画像形成装置1の画像形成を行う位置以外の位置(画像形成に問題のない位置)を示している。「画像形成を行う位置」は、一例として、現像装置20Y,20M,20C、20Kの配置箇所、又は転写装置30の配置箇所を示している。
図26に示されるように、画像形成装置1の環境検知センサによって測定された温湿度は、上記の温湿度測定装置によって測定された温湿度と乖離している。一例として、画像形成装置1の環境検知センサによって測定された温度(外気)と、上記の温湿度測定装置によって測定された温度(内気)との差が10℃以上となることがある。
【0061】
従って、画像形成装置1の機内に配置されたクリーニング装置100、100Aのシステム抵抗測定部105が温湿度を推定する場合、画像形成装置1の機内の温度をより正確に推定することができる。
図1に示されるように、画像形成装置1は、印刷媒体搬送装置10と、定着装置50と、システム抵抗測定部105によって測定された抵抗値に応じて、印刷媒体搬送装置10及び定着装置50の少なくともいずれかを制御する制御部110とを備えてもよい。
【0062】
制御部110は、システム抵抗測定部105によって推定された画像形成装置1の機内の環境に基づいて、現像装置20Y,20M,20C,20Kによる現像、帯電装置42による帯電、一次転写ローラ33による転写に用いられるバイアス電位、又は、二次転写ローラ34による転写に用いられるバイアス電位を制御してもよい。制御部110は、システム抵抗測定部105によって推定された画像形成装置1の機内の環境に基づいて、印刷媒体搬送装置10による印刷媒体Pの通紙、及び定着装置50による定着の条件を制御してもよい。
【0063】
更に、制御部110は、クリーニング装置100の導電性ローラ71及び第2導電性ローラ92、一次転写ローラ33、並びに、二次転写ローラ34へのバイアス電位の印加電圧を制御してもよい。
図27は、導電性ローラ71、第2導電性ローラ92、一次転写ローラ33及び二次転写ローラ34への印加電圧を制御部110が決定するシーケンスの例を示すフローチャートである。
【0064】
図27に示されるように、制御部110は、導電性ローラ71及び第2導電性ローラ92のそれぞれに電圧を印加する(ステップS1)。そして、制御部110は、一次転写ローラ33及び二次転写ローラ34に電圧を印加する(ステップS2)。次に、制御部110は、導電性ローラ71及び第2導電性ローラ92のそれぞれから抵抗値を算出し(ステップS3)、一次転写ローラ33及び二次転写ローラ34のそれぞれから抵抗値を算出する(ステップS4)。
【0065】
制御部110は、導電性ローラ71及び第2導電性ローラ92のそれぞれから抵抗値を算出した後に画像形成装置1の機内の環境(例えば温湿度)を推定する(ステップS5)。制御部110は、一次転写ローラ33及び二次転写ローラ34のそれぞれから抵抗値を算出した後には、当該抵抗値と画像形成装置1の環境を検出する環境検知センサの環境センサ値とから転写ローラ印加基準バイアスを算出する(ステップS6)。
【0066】
制御部110は、測定した機内の環境と転写ローラ印加基準バイアスとから一次転写ローラ33及び二次転写ローラ34への転写バイアスを補正し(ステップS7)、一次転写ローラ33及び二次転写ローラ34への印加電圧を決定する(ステップS8)。また、制御部110は、測定した機内の環境から導電性ローラ71及び第2導電性ローラ92への印加電圧を決定する(ステップS9)。以上の工程を経て印加電圧決定の一連のフローが終了する。
【0067】
図28は、導電性ローラ71、第2導電性ローラ92、一次転写ローラ33及び二次転写ローラ34への印加電圧を制御部110が決定する変形例のシーケンスを示すフローチャートである。
図28におけるシーケンスは、
図27におけるシーケンスよりも簡略化されている。
図28におけるステップS11~S15の内容は、例えば、
図27におけるステップS1~S5の内容と同一である。
【0068】
制御部110は、ステップS15において画像形成装置1の機内の環境を測定した後に、測定した機内の環境から一次転写ローラ33及び二次転写ローラ34への印加電圧を決定する(ステップS16)。そして、制御部110は、測定した機内の環境から導電性ローラ71及び第2導電性ローラ92への印加電圧を決定して(ステップS17)、一連のフローが完了する。
【0069】
以上、本明細書において画像形成装置、転写装置及びクリーニング装置の種々の例について説明した。しかしながら、本明細書に記載の全ての側面、利点、及び特徴は、必ずしも、いずれかひとつの特定の例、実施形態又は実施例により達成される又は含まれるわけではないと理解されるべきである。実際、本明細書において様々な例を記載し示したが、他の例についても配置、及び詳細を変更することができることは明らかである。ここに請求される保護主題の精神、及び範囲に包含される全ての変更、及び変形が請求される。