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特開2022-189550電動格納ユニットを備えた車両用視認装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189550
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電動格納ユニットを備えた車両用視認装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/074 20060101AFI20221215BHJP
   B60R 1/06 20060101ALI20221215BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20221215BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20221215BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B60R1/074
B60R1/06 D
F16H57/04 Q
F16H1/16 Z
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098192
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000147660
【氏名又は名称】株式会社ペンストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 寛
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雅之
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴行
【テーマコード(参考)】
3D053
3J009
3J063
5H607
【Fターム(参考)】
3D053FF27
3D053GG06
3D053GG12
3D053KK02
3D053LL08
3D053LL33
3D053LL39
3J009DA15
3J009EA05
3J009EA19
3J009EA23
3J009EA32
3J009EB21
3J009FA03
3J063AA01
3J063AB03
3J063AC01
3J063BB11
3J063CA01
3J063CD01
3J063XD02
3J063XD15
3J063XD62
3J063XD73
5H607AA12
5H607BB01
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD15
5H607EE32
5H607EE36
(57)【要約】
【課題】電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、電動格納ユニットの電動モータの回転力を伝達するウォームの下部先端部とケースの軸受け部との間のグリースが、ウォームの回転により径外方側に飛散しても、減少することがなく、ウォームの下部先端部とケースの軸受け部の間の焼き付きがなく、電動格納ユニットが故障しないようにできる車両用視認装置を提供する。
【解決手段】ウォーム収納空間27の下部には、スリ鉢形状の軸受け部28を設けている。このスリ鉢形状の軸受け部28は、中央底部にウォーム72の下部先端部72eの端面を当接支持する平坦な受け面28aを設けて、その外周縁にグリースを溜めることができるグリース溜まり面28bを設けている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側方に設置されて、展開位置と折畳位置との間を回動するように構成された電動格納ユニットを備えた車両用視認装置であって、
前記電動格納ユニットは、ケースの内部に設置されて、回転力を発生する電動モータと、
前記電動モータのモータ軸に固定され、該電動モータの回転力を伝達するウォームと、
前記ウォームの周囲で、ケース側に設けられたウォーム収容空間と、を備えており、
前記ウォーム収容空間の下部に、スリ鉢形状の軸受け部を形成して、
前記ウォームの下部先端部を、該スリ鉢形状の軸受け部に当接支持させた
ことを特徴とする電動格納ユニットを備えた車両用視認装置。
【請求項2】
前記スリ鉢形状の軸受け部の中央底部に、平坦な受け面を形成して、
該受け面で、前記ウォームの下部先端部を当接支持して、該受け面の外周縁にグリースが溜まるグリース溜まり面を形成した
ことを特徴とする請求項1記載の電動格納ユニットを備えた車両用視認装置。
【請求項3】
前記ウォームの下部に、ギアを設けない平滑軸部を設けて、
該平滑軸部の位置に対応した位置に、前記スリ鉢形状の軸受け部のスリ鉢状傾斜面を形成した
ことを特徴とする請求項1又は2記載の電動格納ユニットを備えた車両用視認装置。
【請求項4】
前記ウォームの下部先端部に、内部にグリースが溜まるグリース溜まり穴を形成した
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の電動格納ユニットを備えた車両用視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のサイドミラーのような電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、電動格納ユニットの電動モータで駆動されるウォームの摩擦抵抗を低減する車両用視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のサイドミラーのように、車両の側方に設置された車両用視認装置においては、不使用時等に、電動格納ユニットを使って回動して、車両側方で折畳まれるように構成することが知られている。
【0003】
この電動格納ユニットは、内部に設けた電動モータの回転力を、駆動機構を使って、具体的には、モータ軸に設けたウォームと、ウォームホイールと、ドライブウォームと、車体側のシャフトに固定したサンギアと、を使って、車両側のシャフト回りを回動するように構成されている。
【0004】
ところで、これら駆動機構のウォームとモータ軸とは、電動モータの正転駆動と逆転駆動を円滑に切換えられるように、ウォームの中心穴とモータ軸との間で、径方向に一定の隙を設けている。
【0005】
このため、ウォームの下部先端部をケース側の軸支部でしっかりと軸支すると、ウォームの下部先端部とケースの軸支部との間で異音が生じる可能性がある。
【0006】
そこで、下記特許文献1の電動格納ユニットでは、ウォームの(下部)先端部80aとケースの軸受凹部93との間に、隙間g3を形成して、ウォームの(下部)先端部80aを、ケースの軸受凹部93で緩やかに軸支するものが提案されている。
【0007】
このように、ウォームの(下部)先端部80aを、ケースの軸受凹部93に緩やかに軸支させることで、ウォームの下部先端部の外周面とケースの軸受凹部の内周面との間で、接触が生じないため、異音の発生を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6604733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、この駆動機構のウォームは、電動モータの回転力をウォームホイールに伝達するように構成されているため、ケースとの間において、回転摩擦が生じる。このため、前述の特許文献1では、ケースの軸受凹部93の内部にグリースを充填して、ウォームの(下部)先端部80aとの摩擦抵抗を低減するように構成されている(段落番号[0021]参照)。
【0010】
確かに、ケースの軸受凹部93にグリースを充填することで、その軸受凹部93に収容されるウォームの(下部)先端部80aには、グリースが供給されるが、ウォーム80が電動モータの回転を受けて回転すると、そのグリースがウォーム80によって径外方側に飛散する。
【0011】
このとき、この特許文献1の構造の場合、ケースの軸受凹部93とウォーム収容空間113の底部113bの間に、段部があるため、一旦、ウォーム80の径外方側であるウォーム収容空間113の底部113b側にグリースが飛散すると、グリースの粘性が高いことも相俟って、ケースの軸受凹部93内に、グリースが戻ることが困難となる。
【0012】
このように、ケースの軸受凹部93にグリースが戻ることが困難であると、ケースの軸受凹部93内のグリースが減少して、最悪の場合、ウォームの下部先端部とケースとの間で焼き付きが生じ、ウォームが回転しなくなり、電動格納ユニットが故障してしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、電動格納ユニットの電動モータの回転力を伝達するウォームの下部先端部とケースの軸受け部との間のグリースが、ウォームの回転により径外方側に飛散しても、減少することがなく、ウォームの下部先端部とケースの軸受け部の間の焼き付きがなく、電動格納ユニットが故障しないようにできる車両用視認装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
その目的を達成するために、この発明では、車両の側方に設置されて、電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、電動モータの回転力を伝達するウォームと、該ウォームの周囲に設けられるケース側のウォーム収容空間とを備え、該ウォーム収容空間の下部にスリ鉢形状の軸受け部に形成して、前記ウォームの下部先端部を該スリ鉢形状の軸受け部に当接支持させたことを特徴とするものである。
【0015】
具体的に、第1の発明では、車両の側方に設置されて、展開位置と折畳位置との間を回動するように構成された電動格納ユニットを備えた車両用視認装置であって、前記電動格納ユニットは、ケースの内部に設置されて、回転力を発生する電動モータと、前記電動モータのモータ軸に固定され、該電動モータの回転力を伝達するウォームと、前記ウォームの周囲で、ケース側に設けられたウォーム収容空間と、を備えており、前記ウォーム収容空間の下部に、スリ鉢形状の軸受け部を形成して、前記ウォームの下部先端部を、該スリ鉢形状の軸受け部に当接支持させたことを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、ウォーム収容空間の下部に、スリ鉢形状の軸受け部を形成し、そのスリ鉢形状の軸受け部に、ウォームの下部先端部を当接支持させることで、グリースがウォームの回転によって径外方側に飛散したとしても、ウォーム収容空間の下部に形成したスリ鉢形状の軸受け部によって、グリースがウォームの下部先端部の方に戻ってくることになる。
【0017】
このため、ウォームの回転によってグリースが径外方側に飛散しても、スリ鉢形状の軸受け部によって、ウォームの下部先端部のグリースが少なくなることを防ぐことができる。
【0018】
なお、スリ鉢形状の軸受け部は、その中心側にグリースが戻りやすい形状であれば、どのような傾斜面であっても良い。また、球面状に湾曲した面であっても良い。
【0019】
また、このスリ鉢形状の軸受け部は、ウォームの下部先端部の端面を当接支持すればよく、必ずしもウォームの下部先端部の外周面を支持する必要はない。
【0020】
第2の発明では、前記スリ鉢形状の軸受け部の中央底部に、平坦な受け面を形成して、該受け面で、前記ウォームの下部先端部を当接支持して、該受け面の外周縁にグリースが溜まるグリース溜まり面を形成したことを特徴とするものである。
【0021】
この構成によれば、ウォームの下部先端部を当接支持する平坦な受け面の外周縁に、グリース溜まり面を形成したことで、このグリース溜まり面に、グリースが確実に位置することなる。
【0022】
このため、ウォームの下部先端部とスリ鉢形状の軸受け部との間に、大量のグリースを存在させることができ、グリース切れを確実に防ぐことができる。
【0023】
よって、より確実にウォームの下部先端部とケースの軸受け部との間の焼き付きを防ぐことができ、電動格納ユニットが故障しないようにすることができる。
【0024】
第3の発明では、前記ウォームの下部に、ギアを設けない平滑軸部を設けて、該平滑軸部の位置に対応した位置に、前記スリ鉢形状の軸受け部のスリ鉢状傾斜面を形成したことを特徴とするものである。
【0025】
この構成によれば、ウォームの平滑軸部に対応した位置に、軸受け部のスリ鉢状傾斜面が形成されるため、ウォームのギア径を考慮することなく、スリ鉢状傾斜面の設計自由度を高めることができる。
【0026】
このため、ウォームの回転数や回転頻度、またグリースの種類や粘性等によって、スリ鉢状傾斜面の傾斜角度や大きさ等を自由に決めることができる。
【0027】
よって、どのような電動格納ユニットに対しても、ウォームの下部先端部とケースの軸受け部との間の焼き付きを防ぐことができ、確実に電動格納ユニットの故障を防ぐことができる。
【0028】
第4の発明では、前記ウォームの下部先端部に、内部にグリースが溜まるグリース溜まり穴を形成したことを特徴とするものである。
【0029】
この構成によれば、ウォームの下部先端部に、グリース溜まり穴を形成したことで、ウォームの下部先端部とケースの軸受け部との間に、グリース溜まり穴から、グリースを供給することができる。
【0030】
このため、スリ鉢形状の軸受け部に加えて、グリース溜まり穴からもグリースが供給されることになるため、確実にウォームの下部先端部とケースの軸受け部との間にグリースを供給することができ、ウォームの下部先端部とケースの軸受け部との間の焼き付きを確実に防ぐことができる。
【0031】
よって、より確実にウォームの下部先端部とケースの軸受け部との間の焼き付きを防ぐことができ、電動格納ユニットの故障を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0032】
以上、説明したように、本発明によれば、ウォームの回転によってグリースが径外方側に飛散した場合でも、スリ鉢形状の軸受け部によって、ウォームの下部先端部のグリースが少なくなることを防ぐことができる。
【0033】
よって、電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、電動格納ユニットの電動モータの回転力を伝達するウォームの下部先端部とケースの軸受け部との間のグリースが、ウォームの回転により径外方側に飛散しても、減少することがなく、ウォームの下部先端部とケースの軸受け部の間の焼き付きがなく、電動格納ユニットが故障しないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態1に係る電動格納ユニットを備えた車両用視認装置の展開状態と折畳状態を説明する全体平面図である。
図2】実施形態1に係る車両用視認装置に内蔵された電動格納ユニットの平面図である。
図3】実施形態1に係る車両用視認装置に内蔵された電動格納ユニットの後面図である。
図4】実施形態1に係る車両用視認装置に内蔵された電動格納ユニットの分解斜視図である。
図5図2のX-X線矢視断面図である。
図6】カバーを取り除いた状態の電動格納ユニットの平面図である。
図7】電動格納ユニットの駆動機構を説明する斜視図である。
図8図5のA部詳細図である。
図9図5のY-Y線に対応する矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0036】
(実施形態1)
まず、図1乃至図4を使って、本実施形態1の電動格納ユニットを備えた車両用視認装置の構造について説明する。なお、各図に示す各矢印の方向によって各方角を示す。
【0037】
本実施形態の車両用視認装置1は、例えば、図1に示すような車両のサイドドア2に立設されるサイドミラー装置1であり、このサイドミラー装置1は、車両から車両側方(右側)に突出するように設けられている。このサイドミラー装置1は、鏡面3を設けたサイドミラー本体4と、ミラーベース5と、を備えており、ミラーベース5を、固定ボルト6によってサイドドア2に固設することで、サイドドア2に立設している。なお、図示しないが、車両の反対側のサイドドアにも、同様に車両から車両側方(左側)に突出するようにサイドミラー装置1を立設している。
【0038】
また、サイドミラー本体4は、このサイドミラー本体4の内部に内蔵した電動格納ユニットUを介してミラーベース5に設置されており、この電動格納ユニットUの作動によって、実線で示した展開状態と、一点鎖線で示した折畳状態の間を回動するように構成している。
【0039】
図2は、前述の電動格納ユニットUを上方から見た平面図で、図3は、その電動格納ユニットUを車両後方からから見た後面図で、図4は、その電動格納ユニットUを分解した斜視図ある。
【0040】
前述の電動格納ユニットUは、ミラーベース5に固定されるシャフト10と、そのシャフト10回りで回動するケース20と、そのケース20の上部でケース20の内部空間を覆うカバー30と、ケース20内部でその内部空間を上下に仕切るホルダー40と、を備えている。
【0041】
前述のシャフト10は、下部に、ミラーベース5にボルト締結される締結固定部11を設けており、中間部に、ケース20等を支持する支持受け部12を設けており、その上部に上方に伸びてケース20等の回転中心となるシャフト本体部13を設けている。
【0042】
前述のケース20は、異形の箱型形状で内部が空洞となった上方が開放したケース本体21と、そのケース本体21の下部前方と下部後方と下部側方にそれぞれ設けた3つの下部ケーシング固定部22…と、ケース本体21の車両側方の上部位置と下部位置に設けた2つの側部ケーシング固定部23,23と、ケース本体21の上部の周囲に設けた複数のカバー係止部24…とを、備えている。
【0043】
前述のカバー30は、前記ケース20の上方に位置する略蓋状のカバー本体31と、そのカバー本体21の車両内方側でシャフト10上端を支持する円形開口状のシャフト受け部32と、そのカバー本体30の車両側方側(右側)で電源ハーネス(図示せず)を接続する接続口33と、そのカバー本体30の周囲で前記ケース20のカバー係止部24…に係合する複数のケース係合部34…とを、備えている。
【0044】
前述のホルダー40は、ケース20の内部空間に設置されて、電動モータMを包囲して保持する略矩形形状のモータ保持部41と、ケース20の内部空間を上下に仕切る水平方向延びる平板状の仕切り部42とを、備えている。また、このホルダー40には、電動モータMの回転駆動状態を制御する回路基板Bを支持する基板支持部43が設けられている。また、前記仕切り部42にはシャフト10の上端を保持する円形開口状のシャフト保持部44を設けている。そして、このホルダー40は、その周縁で3本のスクリュー部材45…によって上方からケース20に対して固定されている。
【0045】
一方、前述のシャフト10には、支持受け部12の上方に、下から順に、プレートシャフト51、シャフトワッシャー52、そして、プレートケース53が組み付けられている。このうち、前述のプレートシャフト51がシャフト10の支持受け部12に固定されて、前述のプレートケース53がケース20の底面に固定されて、これらプレートシャフト51とプレートケース53で、ケース20、すなわち電動格納ユニットUの回動範囲を規定するように構成されている。また、前述のシャフトワッシャー52によって、ケース20とシャフト10の間の摩擦抵抗を低減するようにしている。
【0046】
さらに、前述のシャフト10には、ケース20に組み込んだ後に、下から順に、ケースワッシャー61、サンギア62、アッパークラッチ63、スプリング64、スプリングストッパー65が組み付けられている。前述のケースワッシャー61は、サンギア62とケース20との間に位置して、サンギア62とケース20との間の摩擦抵抗を低減するようにしている。
【0047】
前述のサンギア62は、後述するドライブウォーム71と噛合して電動モータMからの回転駆動力を受けて、シャフト10回りにケース20が回動するように構成している。もっとも、このサンギア62は、シャフト10に固定されておらず、シャフト10に対して遊嵌状態とされている。
【0048】
前述のアッパークラッチ63は、サンギア62の内周に設けた複数のクラッチ突起62a…と嵌合する複数のクラッチ受け部63a…を下面部に設けており、内周面にシャフト10のシャフト本体部13に設けた複数の凹状溝部13a…に嵌合する複数の凸条部63b…を設けている。
【0049】
前述のスプリング64は、螺旋形状のコイルスプリング部材で構成されており、下方のアッパークラッチ63に対して下方へ付勢力を付与するようにしている。
【0050】
前述のスプリングストッパー65は、内周に設けた係合部65aを、シャフト10のシャフト本体13に形成した環状の係止凹部13bに嵌め込むことで、シャフト本体13に固定されており、シャフト本体13からスプリング64が抜け落ちるのを防止している。
【0051】
そして、このように、アッパークラッチ63とスプリング64とスプリングストッパー65が構成されることで、アッパークラッチ63には、サンギア62を下方に押し込む力が付与されて、サンギア62がアッパークラッチ63を介してシャフト10と一体的になるように固定されている。
【0052】
このようにして、電動格納ユニットUのクラッチ機構が構成されている。そして、このようにクラッチ機構が構成されているため、通常時には、サンギア62とシャフト10が一体となって、電動モータMからの回転駆動力をサンギア62が受けると、ケース20等がシャフト10回りに回動して、ドアミラー本体4が展開状態と折畳状態との間を回動するものの、サイドミラー本体4が衝撃等を受けた異常時には、サンギア62のクラッチ突起62aがアッパークラッチ63を押し上げて、クラッチが解除されるため、サンギア62とシャフト10が分離して、ケース20等がシャフト10回りを回動して、ドアミラー本体4が回動することになる。
【0053】
このように、サイドミラー本体4が衝撃等を受けた異常時には、サンギア62とシャフト10を分離させることができるため、電動モータMや後述する駆動機構Kの故障や破損を防止することができる。
【0054】
次に、図5乃至図7を使って、本実施形態1の電動格納ユニットUの駆動機構Kの構造について説明する。
【0055】
図5に示すように、ホルダー40のモータ保持部41に保持された電動モータMは、モータ軸Maが下方に延びるように配置されている。このモータ軸Maには、円筒状のウォーム72が嵌め込まれており、このウォーム72に対して、図7に示すように円板状のウォームホイール73が噛合している。そして、このウォームホイール73の同軸上に前述のドライブウォーム71が設けられており、このウォームホイール73と一体的に回転するように構成されている。そして、このドライブウォーム71が前述のサンギア62と噛合するように構成されている。
【0056】
すなわち、図6に示すように、駆動機構Kは、上下方向に延びる電動モータMのモータ軸Maの回転駆動力を、水平方向且つ斜め前方向きに配置したドライブウォーム71の軸を介して、サンギア62に伝達するように構成しているのである。
【0057】
そして、このドライブウォーム71の軸は、両端の軸部71a,71aが共にケース20に設けた軸受部25,25で軸支されており、両持ち支持でケース20に強固に支持されている。
【0058】
このように、電動格納ユニットUの駆動機構Kが構成されているため、電動モータMの回転方向に応じて、サンギア62回りにドライブウォーム71等が回動し、ケース20が回動する。そして、このようにケース20が回動することにより、ケース20に固定されたサイドミラー本体4が、展開状態の位置と折畳状態の位置との間を回動するのである。
【0059】
次に、図8図9を使って、本実施形態1の電動モータMのモータ軸Maとウォーム72とその周辺構造について、詳細に説明する。
【0060】
前述のように、電動モータMのモータ軸Maは、下方に延びるように配置されている。そして、そのモータ軸Maに円筒状のウォーム72が嵌め込まれている。このウォーム72には、軸方向に延びる中心穴72aが形成されており、図示しないが、モータ軸Maとの間で径方向に一定の隙を形成している。このようにモータ軸Maとの間に隙を設けることで、電動モータMの正転駆動と逆転駆動が円滑に切換えられるようしている。
【0061】
また、ウォーム72は、上部に円筒部72bを設け、中間部に螺旋状のギア部72cを設け、下部に平滑軸部72dを設けている。このうち、螺旋状のギア部72cで、前述のウォームホイール73と噛合するように構成している。
【0062】
さらに、ウォーム72の下部先端部72eには、前述の中心穴72aと連通して、内部にグリースを溜めることができるグリース溜まり穴72fを形成している。
【0063】
また、ウォーム72の周囲のケース20側には、円筒状のウォーム筒部26を設けて、そのウォーム筒部26の内部をウォーム収納空間27として形成している。このウォーム収納空間27は、上下方向に延びるように形成されており、上部において、前述のホルダー40に設けたモータ円筒部46を嵌め込むように構成することで、電動モータMやウォーム72の位置決めを行うようにしている。
【0064】
さらに、ウォーム収納空間27の下部には、スリ鉢形状の軸受け部28を設けている。このスリ鉢形状の軸受け部28は、中央底部にウォーム72の下部先端部72eの端面を当接支持する平坦な受け面28aを設けて、その外周縁にグリースを溜めることができるグリース溜まり面28bを設けている。
【0065】
また、このグリース溜まり面28bの外周側には、スリ鉢状傾斜面28cを設けている。このスリ鉢状傾斜面28cは、傾斜角度θを約60°にしている。なお、この傾斜角度θの設定によって、グリースの戻り量や戻り速度を調整することができる。そして、このスリ鉢状傾斜面28cは、ウォーム72の平滑軸部72dの高さ位置hに対応した位置(範囲)に形成している。このため、ウォーム72のギア部72cのギア径を考慮することなく、スリ鉢状傾斜面28cの設計自由度を高めることができる。
【0066】
このように構成されるスリ鉢形状の軸受け部28には、グリースが充填されている。このグリースは、ケース20側のスリ鉢形状の軸受け部28とウォーム72の下部先端部72eとの間の摩擦抵抗を低減するために、充填されている。
【0067】
もっとも、ウォーム72が電動モータMからの回転駆動で回転すると、このグリースがウォーム72の回転によって径外方側に飛散することになる。
【0068】
このとき、グリースは、ウォーム筒部26等の内周面に付着するが、ウォーム収納空間27の下部にスリ鉢形状の軸受け部28が設けられているため、下方に垂れ落ちたグリースが、スリ鉢状傾斜面28cに案内されて、グリース溜まり面28bに戻ることなる。
【0069】
このように、スリ鉢形状の軸受け部28がウォーム収納空間27の下部に設けられていることで、径外方側に飛散したグリースが、確実に、グリース溜まり面28bに戻ることになり、スリ鉢形状の軸受け部28とウォーム72の下部先端部72eとの間のグリースがなくなって、両者の間で焼き付きが生じる、ということを防ぐことができる。
【0070】
以上のように、本実施形態では、車両の側方に設置されて、展開位置と折畳位置との間を回動するように構成された電動格納ユニットUを備えたサイドミラー装置1であって、その電動格納ユニットUは、ケース20の内部に設置されて、回転力を発生する電動モータMと、その電動モータMのモータ軸Maに固定され、その電動モータMの回転力を伝達するウォーム72と、そのウォーム72の周囲で、ケース20側に設けられたウォーム収容空間27と、を備えており、そのウォーム収容空間27の下部に、スリ鉢形状の軸受け部28を形成して、そのウォーム72の下部先端部72eを、スリ鉢形状の軸受け部28に当接支持させている。
【0071】
これにより、グリースがウォーム72の回転によって径外方側に飛散したとしても、ウォーム収容空間27の下部に形成したスリ鉢形状の軸受け部28によって、グリースがウォーム72の下部先端部72eの方に戻ってくることになる。
【0072】
このため、ウォーム72の回転によってグリースが径外方側に飛散しても、スリ鉢形状の軸受け部28によって、ウォーム72の下部先端部72eのグリースが少なくなることを防ぐことができる。
【0073】
よって、電動格納ユニットUを備えたサイドミラー装置1において、電動格納ユニットUの電動モータMの回転力を伝達するウォーム72の下部先端部72eとケース20の軸受け部28との間のグリースが、ウォーム72の回転により径外方側に飛散しても、減少することがなく、ウォーム72の下部先端部72eとケース20の軸受け部28の間の焼き付きがなく、電動格納ユニットUが故障しないようにできる。
【0074】
また、本実施形態では、スリ鉢形状の軸受け部28の中央底部に、平坦な受け面28aを形成して、その受け面28aで、ウォーム72の下部先端部72eを当接支持して、その受け面28aの外周縁にグリースが溜まるグリース溜まり面28bを形成している。
【0075】
これにより、このグリース溜まり面28bに、グリースが確実に位置することなる。
【0076】
このため、ウォーム72の下部先端部72eとスリ鉢形状の軸受け部28との間に、大量のグリースを存在させることができ、グリース切れを確実に防ぐことができる。
【0077】
よって、より確実にウォーム72の下部先端部72eとケース20の軸受け部28との間の焼き付きを防ぐことができ、電動格納ユニットUが故障しないようにすることができる。
【0078】
また、本実施形態では、ウォーム72の下部に、ギアを設けない平滑軸部72dを設けて、その平滑軸部72dの高さ位置hに対応した位置(範囲)に、スリ鉢形状の軸受け部28のスリ鉢状傾斜面28cを形成している。
【0079】
これにより、ウォーム72のギア径を考慮することなく、スリ鉢状傾斜面28cの設計自由度を高めることができる。
【0080】
このため、ウォーム72の回転数や回転頻度、またグリースの種類や粘性等によって、スリ鉢状傾斜面28cの傾斜角度や大きさ等を自由に決めることができる。
【0081】
よって、どのような電動格納ユニットUに対しても、ウォーム72の下部先端部72eとケース20の軸受け部28との間の焼き付きを防ぐことができ、確実に電動格納ユニットUの故障を防ぐことができる。
【0082】
また、本実施形態では、ウォーム72の下部先端部72eに、内部にグリースが溜まるグリース溜まり穴72fを形成している。
【0083】
これにより、ウォーム72の下部先端部72eとケース20の軸受け部28との間に、グリース溜まり穴72fから、グリースを供給することができる。
【0084】
このため、スリ鉢形状の軸受け部28に加えて、グリース溜まり穴72fからもグリースが供給されることになるため、確実にウォーム72の下部先端部72eとケース20の軸受け部28との間にグリースを供給することができ、ウォーム72の下部先端部72eとケース20の軸受け部28との間の焼き付きを確実に防ぐことができる。
【0085】
よって、より確実にウォーム72の下部先端部72eとケース20の軸受け部28との間の焼き付きを防ぐことができ、電動格納ユニットUの故障を確実に防ぐことができる。
【0086】
(その他の実施形態)
次に、その他の実施形態について説明する。
【0087】
まず、前述の実施形態1では、スリ鉢形状の軸受け部28を、傾斜角度θが約60°であるスリ鉢状傾斜面28cを備えたもので構成したが、本願発明は、この構造に限定されず、その中心側にグリースが戻りやすい形状であれば、どのような形状であっても良い。例えば、傾斜角度が約30°程度の緩やかな傾斜のものであっても良い。また、凹形状の半球形状など球面状に湾曲した面形状であっても良い。
【0088】
また、スリ鉢形状の軸受け部の軸受け部も、ウォームの下部先端部の端面を当接支持すればよく、必ずしもウォームの下部先端部の外周面を支持する必要はない。
【0089】
さらに、車両用視認装置の視認構造についても、前述の実施形態1のミラーに限定されず、車両後方を確認できるものであれば、カメラ等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本発明は、電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において有用である。
【符号の説明】
【0091】
1…サイドミラー装置(車両用視認装置)
U…電動格納ユニット
M…電動モータ
Ma…モータ軸
20…ケース
27…ウォーム収納空間
28…スリ鉢形状の軸受け部
72…ウォーム
72e…ウォームの下部先端部
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図9