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特開2022-189551電動格納ユニットを備えた車両用視認装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189551
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電動格納ユニットを備えた車両用視認装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/074 20060101AFI20221215BHJP
   B60R 1/06 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B60R1/074
B60R1/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098194
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000147660
【氏名又は名称】株式会社ペンストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 寛
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雅之
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴行
【テーマコード(参考)】
3D053
【Fターム(参考)】
3D053GG06
3D053GG12
3D053HH55
3D053KK02
3D053LL08
3D053LL33
3D053LL39
(57)【要約】
【課題】電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、電動格納ユニットの電動モータを制御する回路基板に様々な方向から振動や衝撃が作用しても、回路基板の位置が変化しないようにして、電動モータが制御できなくなるという不具合を防止できる車両用視認装置を提供する。
【解決手段】ホルダー40の基板支持部43で回路基板Bの五方向の位置決めを行って、カバー30の位置決めリブ35で、回路基板Bの残りの一方向の位置決めを行うように構成している。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側方に設置されて、展開位置と折畳位置との間を回動するように構成された電動格納ユニットを備えた車両用視認装置であって、
前記電動格納ユニットは、ケース内部に設置されて回転力を発生する電動モータと、
該電動モータの回転駆動状態を制御する回路基板と、
前記ケースに固定されて、前記回路基板の五方向の位置を規定する位置決め部を備えたホルダーと、
前記ホルダーを覆うように組み付けられて、前記回路基板の残りの一方向の位置を規定する位置決め部を備えたカバーと、
を備えたことを特徴とする電動格納ユニットを備えた車両用視認装置。
【請求項2】
前記電動モータには、前記回路基板側に延びる平板状端子が設けられ、
前記回路基板には、該平板状端子に対して、一方向からスライド移動することで結合するモータ接続端子が設けられており、
前記ホルダーに備えた前記位置決め部には、前記回路基板を一方向にスライド移動させるスライドガイド部が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の電動格納ユニットを備えた車両用視認装置。
【請求項3】
前記回路基板に、電源ハーネスのコネクタが接続されるコネクタ接続端子を設けて、
前記ホルダーには、該コネクタ接続端子が設けられた回路基板の背面側に、該回路基板を当接支持する当接支持部を設けた
ことを特徴とする請求項1又は2記載の電動格納ユニットを備えた車両用視認装置。
【請求項4】
前記カバーに備えた前記位置決め部に、該カバーの組み付け時に、前記回路基板を規定された位置に導くガイド部を設けた
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の電動格納ユニットを備えた車両用視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のサイドミラーのような電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、電動格納ユニットの電動モータを制御する回路基板の位置決めを行う電動格納ユニットを備えた車両用視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のサイドミラーのように、車両の側方に設置された車両用視認装置においては、不使用時等に、電動格納ユニットを使って回動して、車両側方で折畳まれるように構成することが知られている。
【0003】
この電動格納ユニットは、内部に設けた電動モータの回転力を、駆動機構を使って、具体的には、モータ軸に設けたウォームと、ウォームホイールと、ドライブウォームと、車体側のシャフトに固定したサンギアと、を使って、車両側のシャフト回りを回動するように構成されている。
【0004】
ところで、電動格納ユニットには、電動モータの回転駆動状態を制御する回路基板が設けられており、この回路基板には、外部電源の供給を行う電源ハーネスのコネクタに接続されるコネクタ接続端子と、電動モータの端子に接続されるモータ接続端子とが設けられている。
【0005】
この回路基板の電動格納ユニット内での配置構造については、できるだけコンパクトに配置しつつも、組み付けやすさを考慮して、様々なものが提案されている。例えば、下記特許文献1には、2つの配置構造が開示されている。
【0006】
まず、1つ目が図10に開示された構造で、回路基板110を略ドーナツ形状に形成して、中心の丸穴114をシャフト112の頂部に差し込むようにして横置き配置したものである。また、2つ目が図7に開示された構造で、回路基板84を矩形形状に形成して、電動モータ76とシャフト24との間に差し込むようにして縦置き配置したものである。
【0007】
1つ目の構造によると、回路基板の組み付けは容易であるものの、コンパクトさに欠けてしまうという問題がある。一方、2つ目の構造によると、組み付け性はやや劣るものの、コンパクトさが高まり、この構造によると、電動格納ユニットを小型化できるという効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-190546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年、SUV(Sport Utility Vehicle)の増加に伴い、悪路走行を行う車両が増えており、車両用視認装置においても、様々な方向から入力される振動や衝撃に対して、耐振性が求められている。
【0010】
この点について、前述の回路基板の配置構造を見てみると、まず、1つ目の構造では、単に略ドーナツ形状の回路基板110を、シャフトの頂部に上方から差し込むように配置しているだけなので、差し込まれる方向である上方に対して、位置を固定しておらず、回路基板が上方に変位する可能性がある。この場合、最悪、モータ接続端子が電動モータの端子から外れてしまい、回路基板によって電動モータを制御できなくなる恐れがある。
【0011】
また、2つの目の構造でも、回路基板84の下端を、単にホルダー(プレートアウタ68)に設けた溝75aに差し込んでいるだけなので、回路基板84に倒れが生じた場合には、1つ目の構造と同様に、モータ接続端子が電動モータの端子から外れてしまい、回路基板によって電動モータを制御できなくなる恐れがある。
【0012】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、電動格納ユニットの電動モータを制御する回路基板に様々な方向から振動や衝撃が作用しても、回路基板の位置が変化しないようにして、電動モータが制御できなくなるという不具合を防止できる車両用視認装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その目的を達成するために、この発明では、車両の側方に設置されて、電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、電動モータの回転駆動状態を制御する回路基板を保持するホルダーに、該回路基板の五方向の位置を規定する位置決め部を設けて、前記ホルダーを覆うカバーに前記回路基板の残りの一方向の位置を規定する位置決め部を設けたことを特徴とするものである。
【0014】
具体的に、第1の発明では、車両の側方に設置されて、展開位置と折畳位置との間を回動するように構成された電動格納ユニットを備えた車両用視認装置であって、前記電動格納ユニットは、ケース内部に設置されて回転力を発生する電動モータと、該電動モータの回転駆動状態を制御する回路基板と、前記ケースに固定されて、前記回路基板の五方向の位置を規定する位置決め部を備えたホルダーと、前記ホルダーを覆うように組み付けられて、前記回路基板の残りの一方向の位置を規定する位置決め部を備えたカバーと、を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、ホルダーに、回路基板の五方向の位置決めを行う位置決め部を備えて、カバーに、回路基板の残りの一方向の位置を規定する位置決め部を備えたので、ホルダーに回路基板を組み付けた後に、カバーを組み付けると、回路基板の位置が、全六方向で確実に規定されることになる。
【0016】
このため、回路基板を、単に電動格納ユニット内に組み付けるだけで、別途、締結ネジ等の固定手段で固定しなくても、回路基板の全六方向の位置が固定(規定)されて、あらゆる方向の衝撃や荷重が回路基板に作用しても、回路基板の位置が変化することがない。
【0017】
なお、ホルダーに備えられた位置決め部は、五方向の位置を決める部位が別々に形成されていても良いし、一体的に形成されても良い。
【0018】
また、カバーに備えられた位置決め部は、ホルダーに備えられた位置決め部と異なり、部品間の成形誤差を考慮して、回路基板との間に隙が生じても良い。
【0019】
第2の発明では、前記電動モータには、回路基板側に延びる平板状端子が設けられ、前記回路基板には、該平板状端子に対して、一方向からスライド移動することで結合するモータ接続端子が設けられており、前記ホルダーに備えた前記位置決め部には、前記回路基板を一方向にスライド移動させるスライドガイド部が設けられていることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、電動モータの平板状端子に対して、回路基板のモータ接続端子を、一方向からスライド移動させることで結合するように構成しつつ、ホルダーの位置決め部には、回路基板を一方向にスライド移動させるスライドガイド部を設けたので、回路基板を、位置決め部のスライドガイド部に沿って一方向にスライド移動させるだけで、電動モータの平板状端子に回路基板のモータ接続端子を結合することができる。
【0021】
このため、回路基板を単にホルダーに組み付けるだけで、電動モータに対しても電気的に結合させることができるため、回路基板と電動モータの電気的な結合作業を、容易に行うことができる。
【0022】
よって、回路基板を、正確な位置に位置決め固定することができつつも、回路基板を電動モータに対して容易に結合することができる。
【0023】
第3の発明では、前記回路基板に、電源ハーネスのコネクタが接続されるコネクタ接続端子を設けて、前記ホルダーには、該コネクタ接続端子が設けられた回路基板の背面側に、該回路基板を当接支持する当接支持部を設けたことを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、コネクタ接続端子が設けられた回路基板の背面側に位置するホルダーに、回路基板を当接支持する当接支持部を設けたことで、回路基板のコネクタ接続端子に、電源ハーネスのコネクタを接続する際に、回路基板に押込み力が作用しても、当接支持部で回路基板が支持されるため、回路基板の押込み力による変位を抑えることができる。
【0025】
このため、回路基板は、電源ハーネスのコネクタを接続する作業を行っても、その位置を変えることなく、安定してその位置を維持することができる。
【0026】
よって、組み付け作業によって、回路基板が位置を変えることがないため、より確実に回路基板の位置が維持されて、電動モータが制御できなくなるという不具合を確実に防止できる。
【0027】
第4の発明では、前記カバーに備えた前記位置決め部に、該カバーの組み付け時に、前記回路基板を規定された位置に導く、ガイド部を設けたことを特徴とするものである。
【0028】
この構成によれば、カバーの組み付け時に、カバーの位置決め部に設けたガイド部によって、回路基板が、規定された位置に案内されるため、カバーの組み付け作業によって回路基板を正確な位置に案内することができる。
【0029】
このため、電動格納ユニットの組み立て作業で、最後に行われるカバーの組み付け作業で、回路基板の位置が確実に位置決めされるため、組み立て途中で回路基板の組み付け位置が正確でなくても、回路基板の全六方向の位置が、確実に規定されることになる。
【0030】
よって、より確実に、回路基板の位置が正確に規定されて、電動モータが制御できなくなるという不具合を防止することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上、説明したように、本発明によれば、回路基板を、単に電動格納ユニット内に組み付けるだけで、別途、締結ネジ等の固定手段で固定しなくても、回路基板の全六方向の位置が固定(規定)されて、あらゆる方向の衝撃や荷重が回路基板に作用しても、回路基板の位置が変化することがない。
【0032】
よって、電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、電動格納ユニットの電動モータを制御する回路基板に様々な方向から振動や衝撃が作用しても、回路基板の位置が変化しないようにして、電動モータが制御できなくなるという不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態1に係る電動格納ユニットを備えた車両用視認装置の展開状態と折畳状態を説明する全体平面図である。
図2】実施形態1に係る車両用視認装置に内蔵された電動格納ユニットの平面図である。
図3】実施形態1に係る車両用視認装置に内蔵された電動格納ユニットの後面図である。
図4】実施形態1に係る車両用視認装置に内蔵された電動格納ユニットの分解斜視図である。
図5図2のX-X線矢視断面図である。
図6】カバーとホルダーを取り除いた状態の電動格納ユニットの平面図である。
図7】電動格納ユニットの駆動機構を説明する斜視図である。
図8】カバーを取り除いた状態の電動格納ユニットの斜視図である。
図9図8の電動格納ユニットから回路基板を取り除いた斜視図である。
図10】カバーを取り除いた状態の電動格納ユニットの平面図である。
図11図10のY-Y線矢視断面図のうち、回路基板近傍を示した図である。
図12図10のZ-Z線矢視断面図のうち、回路基板近傍を示した図である。
図13】回路基板のモータ接続端子の平面詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0035】
(実施形態1)
まず、図1乃至図4を使って、本実施形態1の電動格納ユニットを備えた車両用視認装置の構造について説明する。なお、各図に示す各矢印の方向によって各方角を示す。
【0036】
本実施形態の車両用視認装置1は、例えば、図1に示すような車両のサイドドア2に立設されるサイドミラー装置1であり、このサイドミラー装置1は、車両から車両側方(右側)に突出するように設けられている。このサイドミラー装置1は、鏡面3を設けたサイドミラー本体4と、ミラーベース5と、を備えており、ミラーベース5を、固定ボルト6によってサイドドア2に固設することで、サイドドア2に立設している。なお、図示しないが、車両の反対側のサイドドアにも、同様に車両から車両側方(左側)に突出するようにサイドミラー装置1を立設している。
【0037】
また、サイドミラー本体4は、このサイドミラー本体4の内部に内蔵した電動格納ユニットUを介してミラーベース5に設置されており、この電動格納ユニットUの作動によって、実線で示した展開状態と、一点鎖線で示した折畳状態の間を回動するように構成している。
【0038】
図2は、前述の電動格納ユニットUを上方から見た平面図で、図3は、その電動格納ユニットUを車両後方からから見た後面図で、図4は、その電動格納ユニットUを分解した斜視図ある。
【0039】
前述の電動格納ユニットUは、ミラーベース5に固定されるシャフト10と、そのシャフト10回りで回動するケース20と、そのケース20の上部でケース20の内部空間を覆うカバー30と、ケース20内部でその内部空間を上下に仕切るホルダー40と、を備えている。
【0040】
前述のシャフト10は、下部に、ミラーベース5にボルト締結される締結固定部11を設けており、中間部に、ケース20等を支持する支持受け部12を設けており、その上部に上方に伸びてケース20等の回転中心となるシャフト本体部13を設けている。
【0041】
前述のケース20は、異形の箱型形状で内部が空洞となった上方が開放したケース本体21と、そのケース本体21の下部前方と下部後方と下部側方にそれぞれ設けた3つの下部ケーシング固定部22…と、ケース本体21の車両側方の上部位置と下部位置に設けた2つの側部ケーシング固定部23,23と、ケース本体21の上部の周囲に設けた複数のカバー係止部24…とを、備えている。
【0042】
前述のカバー30は、前記ケース20の上方に位置する略蓋状のカバー本体31と、そのカバー本体21の車両内方側でシャフト10上端を支持する円形開口状のシャフト受け部32と、そのカバー本体30の車両側方側(右側)で電源ハーネス(図示せず)を接続する接続口33と、そのカバー本体30の周囲で前記ケース20のカバー係止部24…に係合する複数のケース係合部34…とを、備えている。
【0043】
前述のホルダー40は、ケース20の内部空間に設置されて、電動モータMを包囲して保持する略矩形形状のモータ保持部41と、ケース20の内部空間を上下に仕切る水平方向延びる平板状の仕切り部42とを、備えている。また、このホルダー40には、電動モータMの回転駆動状態を制御する回路基板Bを支持する基板支持部43が設けられている。また、前記仕切り部42にはシャフト10の上端を保持する円形開口状のシャフト保持部44を設けている。そして、このホルダー40は、その周縁で3本のスクリュー部材45…によって上方からケース20に対して固定されている。
【0044】
一方、前述のシャフト10には、支持受け部12の上方に、下から順に、プレートシャフト51、シャフトワッシャー52、そして、プレートケース53が組み付けられている。このうち、前述のプレートシャフト51がシャフト10の支持受け部12に固定されて、前述のプレートケース53がケース20の底面に固定されて、これらプレートシャフト51とプレートケース53で、ケース20、すなわち電動格納ユニットUの回動範囲を規定するように構成されている。また、前述のシャフトワッシャー52によって、ケース20とシャフト10の間の摩擦抵抗を低減するようにしている。
【0045】
さらに、前述のシャフト10には、ケース20に組み込んだ後に、下から順に、ケースワッシャー61、サンギア62、アッパークラッチ63、スプリング64、スプリングストッパー65が組み付けられている。前述のケースワッシャー61は、サンギア62とケース20との間に位置して、サンギア62とケース20との間の摩擦抵抗を低減するようにしている。
【0046】
前述のサンギア62は、後述するドライブウォーム71と噛合して電動モータMからの回転駆動力を受けて、シャフト10回りにケース20が回動するように構成している。もっとも、このサンギア62は、シャフト10に固定されておらず、シャフト10に対して遊嵌状態とされている。
【0047】
前述のアッパークラッチ63は、サンギア62の内周に設けた複数のクラッチ突起62a…と嵌合する複数のクラッチ受け部63a…を下面部に設けており、内周面にシャフト10のシャフト本体部13に設けた複数の凹状溝部13a…に嵌合する複数の凸条部63b…を設けている。
【0048】
前述のスプリング64は、螺旋形状のコイルスプリング部材で構成されており、下方のアッパークラッチ63に対して下方へ付勢力を付与するようにしている。
【0049】
前述のスプリングストッパー65は、内周に設けた係合部65aを、シャフト10のシャフト本体13に形成した環状の係止凹部13bに嵌め込むことで、シャフト本体13に固定されており、シャフト本体13からスプリング64が抜け落ちるのを防止している。
【0050】
そして、このように、アッパークラッチ63とスプリング64とスプリングストッパー65が構成されることで、アッパークラッチ63には、サンギア62を下方に押し込む力が付与されて、サンギア62がアッパークラッチ63を介してシャフト10と一体的になるように固定されている。
【0051】
このようにして、電動格納ユニットUのクラッチ機構が構成されている。そして、このようにクラッチ機構が構成されているため、通常時には、サンギア62とシャフト10が一体となって、電動モータMからの回転駆動力をサンギア62が受けると、ケース20等がシャフト10回りに回動して、ドアミラー本体4が展開状態と折畳状態との間を回動するものの、サイドミラー本体4が衝撃等を受けた異常時には、サンギア62のクラッチ突起62aがアッパークラッチ63を押し上げて、クラッチが解除されるため、サンギア62とシャフト10が分離して、ケース20等がシャフト10回りを回動して、ドアミラー本体4が回動することになる。
【0052】
このように、サイドミラー本体4が衝撃等を受けた異常時には、サンギア62とシャフト10を分離させることができるため、電動モータMや後述する駆動機構Kの故障や破損を防止することができる。
【0053】
次に、図5乃至図7を使って、本実施形態1の電動格納ユニットUの駆動機構Kの構造について説明する。
【0054】
図5に示すように、ホルダー40のモータ保持部41に保持された電動モータMは、モータ軸Maが下方に延びるように配置されている。このモータ軸Maには、円筒状のウォーム72が嵌め込まれており、このウォーム72に対して、図7に示すように円板状のウォームホイール73が噛合している。そして、このウォームホイール73の同軸上に前述のドライブウォーム71が設けられており、このウォームホイール73と一体的に回転するように構成されている。そして、このドライブウォーム71が前述のサンギア62と噛合するように構成されている。
【0055】
すなわち、図6に示すように、駆動機構Kは、上下方向に延びる電動モータMのモータ軸Maの回転駆動力を、水平方向且つ斜め前方向きに配置したドライブウォーム71の軸を介して、サンギア62に伝達するように構成しているのである。
【0056】
そして、このドライブウォーム71の軸は、両端の軸部71a,71aが共にケース20に設けた軸受部25,25で軸支されており、両持ち支持でケース20に強固に支持されている。
【0057】
このように、電動格納ユニットUの駆動機構Kが構成されているため、電動モータMの回転方向に応じて、サンギア62回りにドライブウォーム71等が回動し、ケース20が回動する。そして、このようにケース20が回動することにより、ケース20に固定されたサイドミラー本体4が、展開状態の位置と折畳状態の位置との間を回動するのである。
【0058】
次に、図8乃至図13を使って、本実施形態1の回路基板Bの取付構造について、詳細に説明する。
【0059】
前述のように、回路基板Bは、ホルダー40に設けた基板支持部43によって支持されている。この基板支持部43は、モータ保持部41(図4参照)の上方位置に形成されており、回路基板Bの位置を規定する位置決め部も兼ねるように構成されている。
【0060】
この位置決め部としての基板支持部43について詳細に説明する。この基板支持部43は、図9に示すように、上方に延びる断面コ字状の外枠三方壁部43aと、その内方でやや低く上方に延びる断面略Y字状の一対の内側壁部43b、43bと、その内側壁部43bの1つと車両側方側に連なるように延びる延長壁部43cと、その延長壁部43cに車両前方側に連なるように延びる2つの当接支持部としての立設壁部43d、43dと、前記した外枠三方壁部43aのうち前方壁部43a1と後方壁部43a2の上端に設けた一対の鈎部43e、43eと、を備えている。そして、これら全ての壁部43a…等は、一体的に構成されている。
【0061】
そして、外枠三方壁部43aのうち車両内方側壁部43a3によって、回路基板Bの車両内方側の位置が規定されて、外枠三方壁部43の前方壁部43a1と後方壁部43a2によって、回路基板Bの車両後方側の位置と車両前方側の位置が規定されて、内側壁部43b、43bの上端によって、回路基板Bの下方の位置が規定されて、鈎部43e、43eの下端によって、回路基板Bの上方の位置が規定されるように構成されている。
【0062】
すなわち、この基板支持部43によって、回路基板Bの全六方向のうち、五方向の位置(車両内方側の位置、車両後方側の位置、車両前方側の位置、下方の位置、上方の位置)が規定されるのである。そして、この基板支持部43は、全ての壁部等43a…が一体的に構成されているため、回路基板Bの五方向の位置が、正確且つ確実に規定されるのである。
【0063】
そして、この基板支持部43は、回路基板Bを、車両側方側から車両内方側へ横向きで寝かせた状態で、図11に示すように、一対の鈎部43e、43eと一対の内側壁部43b、43bとの間に差し込んで組み付けられるように構成している。
【0064】
このように、回路基板Bを、締結部材等を用いることなく、単に車両側方側から差し込むだけで、ホルダー40に組み付けられるように構成しているため、簡単に、回路基板Bの組み付け作業を行うことができる。
【0065】
また、図9に示すように、延長壁部43cが、内側壁部43bと車両側方側に連なるように設けられ、また、外枠三方壁部43aの前方壁部43a1と後方壁部43a2が、車両側方側に延びるように設けられているため、回路基板Bを、基板支持部43に組み付ける際に、スライドさせる方向を案内することができ、回路基板Bの組み付け作業をより容易に行うことができる。
【0066】
また、回路基板Bには、電動モータMに設けた一対の平板状端子Mb、Mbと結合される一対のモータ接続端子Ba、Baを設けている。また、外部電源の供給を行う電源ハーネスのコネクタ(図示しない)に接続されるコネクタ接続端子Bbを設けている。なお、図示はしないが、回路基板Bの下面には、制御ユニット等の制御回路が形成されている。
【0067】
前述の一対のモータ接続端子Ba、Baは、図10に示すように、回路基板Bの車両側方側に設けられ、図12に示すように、下方に突出するように設けられている。そして、このモータ接続端子Ba、Baは、図13に示すように、車両内方側を開放した断面略U字状の金属端子部材Ba1、Ba1で形成されており、その内側で、電動モータMの平板状端子Mbを挟み込み結合できるように、付勢力を有する凸状受け部Ba2と凸状押圧部Ba3をそれぞれ備えている。
【0068】
また、前述のコネクタ接続端子Bbは、図10に示すように、回路基板Bの車両前方側に設けられ、上方に突出する矩形の樹脂部材で構成されている。そして、図示しない電源ハーネスのコネクタが上方から差し込まれるように上方に開口した差込口が形成されている。
【0069】
そして、前述の回路基板Bのモータ接続端子Ba、Baと、電動モータMの平板状端子Mb、Mbとの結合作業は、回路基板Bを基板支持部43に組み付け作業と同時に行われる。
【0070】
すなわち、回路基板Bのモータ接続端子Ba、Baが下方に突出し、電動モータMの平板状端子Mb、Mbが上方に突出しているため、回路基板Bを車両側方側からスライド移動させて、基板支持部43に組み付ける際に、モータ接続端子Ba、Baが車両内方側を開放した断面略U字状の金属端子部材Ba1、Ba1であるため、電動モータMの平板状端子Mb、Mbをモータ接続端子Ba、Baに挟み込んで、凸状受け部Ba2、Ba2と凸状押圧部Ba3、Ba3とで挟持して、回路基板Bのモータ接続端子Ba、Baを電動モータMの平板状端子Mb、Mbに結合する(図12図13は、結合状態)。
【0071】
このように、回路基板Bの基板支持部43への組み付け作業と同時に、回路基板Bのモータ接続端子Ba、Baと電動モータMの平板状端子Mb、Mbの結合作業をできるのは、前述のように、基板支持部43によって回路基板Bの五方向の位置が規定されて、電動モータMと回路基板Bの距離が一定となるためである。
【0072】
また、コネクタ接続端子Bbと電源ハーネスのコネクタの結合作業は、図示しないが、サイドミラー本体4内に電動格納ユニットUを組み付けた後に行われ、前述したカバー30の接続口33から電源ハーネスのコネクタを、上方から差し込み、下方に押し込むことで、コネクタ接続端子Bbに結合する。
【0073】
このとき、確実に結合させるために、電源ハーネスのコネクタを一定以上の力で上方から押し込むが、ホルダー40の基板支持部43には、前述した2つの立設壁部43d、43dを設けているため、この立設壁部43d、43dによって、回路基板Bのコネクタ接続端子Bbに作用する押し込み力を受けるため、回路基板Bの変位を防ぐことができる。
【0074】
このように、ホルダー40の基板支持部43は、回路基板Bを支持するにあたり、回路基板Bの五方向の位置を規定する位置決め機能を有すると共に、電動モータMとの結合作業や電源ハーネスの結合作業を、容易に行えるように構成している。
【0075】
また、図12に示すように、ホルダー40を覆うように位置するカバー30には、回路基板Bの位置を規定する位置決め部としての位置決めリブ35を設けている。この位置決めリブ35は、カバー30の内側に形成されて、点線で示す内壁ラインLよりもカバー30内方側に突出するように設けられている。
【0076】
この位置決めリブ35によって、回路基板Bの車両側方側の位置が規定される。すなわち、ホルダー40の基板支持部43で回路基板Bの五方向の位置決めを行って、カバー30の位置決めリブ35で、回路基板Bの残りの一方向の位置決めを行うように構成しているのである。
【0077】
なお、図12で示すように、位置決めリブ35と回路基板Bとの間にはわずかな隙Sを設けている。この隙Sは、部品の成形誤差を吸収するために設けたものであり、この隙Sがあることで、カバー30をケース20に組み付ける際に、位置決めリブ35が邪魔となって、カバー30が組み付けられないという不具合を防ぐことができる。
【0078】
また、この位置決めリブ35の下側には、傾斜した案内リブ36を連なるように設けている。この案内リブ36があることにより、回路基板Bをホルダー40に組み付けた後に、カバー30を組み付ける際、回路基板Bが基板支持部43に途中までしか差し込まれていない場合(車両内方側に位置決めされていない場合)に、案内リブ36が、回路基板Bを車両内方側に押し込んで、位置決めリブ35によって位置決めされる位置まで回路基板Bを案内することができる。
【0079】
よって、カバー30をケース20に組み付けることによって、回路基板Bが正確な位置に案内されて、回路基板Bの全六方向が位置決めされることになる。
【0080】
このように回路基板Bの六方向が全て位置決めされることにより、あらゆる方向から衝撃が作用したとしても、回路基板Bはその位置を変えることがなく、回路基板Bに結合された電動モータMや電源ハーネス(図示せず)との間の結合が外れることを防ぐことができる。
【0081】
以上のように、本実施形態では、車両の側方に設置されて、展開位置と折畳位置との間を回動するように構成された電動格納ユニットUを備えたサイドミラー装置1であって、その電動格納ユニットUは、ケース20内部に設置されて回転力を発生する電動モータMと、その電動モータMの回転駆動状態を制御する回路基板Bと、ケース20に固定されて、回路基板Bの五方向の位置を規定する基板支持部43を備えたホルダー40と、そのホルダー40を覆うように組み付けられて、回路基板Bの残りの一方向の位置を規定する位置決めリブ35を備えたカバー30と、を備えている。
【0082】
これにより、ホルダー40に回路基板Bを組み付けた後に、カバー30を組み付けると、回路基板Bの位置が、全六方向で確実に規定されることになる。
【0083】
このため、回路基板Bを、単に電動格納ユニットU内に組み付けるだけで、別途、締結ネジ等の固定手段で固定しなくても、回路基板の全六方向の位置が固定(規定)されて、あらゆる方向の衝撃や荷重が回路基板に作用しても、回路基板Bの位置が変化することがない。
【0084】
よって、電動格納ユニットUを備えたサイドミラー装置1において、電動格納ユニットUの電動モータMを制御する回路基板Bに様々な方向から振動や衝撃が作用しても、回路基板Bの位置が変化しないようにして、電動モータMが制御できなくなるという不具合を防止できる。
【0085】
また、本実施形態では、電動モータMには、回路基板B側に延びる平板状端子Mb、Mbが設けられ、回路基板Bには、その平板状端子Mb、Mbに対して、車両内方側にスライド移動することで結合するモータ接続端子Ba、Baが設けられており、ホルダー40の基板支持部43には、回路基板Bを車両内方側にスライド移動させる延長壁部43cと前方壁部43a1と後方壁部43a2と、が設けられている。
【0086】
これにより、回路基板Bを、基板支持部43の延長壁部43cと前方壁部43a1と後方壁部43a2とに沿って車両内方側にスライド移動させるだけで、電動モータMの平板状端子Mb、Mbに回路基板Bのモータ接続端子Ba、Baを結合することができる。
【0087】
このため、回路基板Bを単にホルダー40に組み付けるだけで、電動モータMに対しても電気的に結合させることができるため、回路基板Bと電動モータMの電気的な結合作業を、容易に行うことができる。
【0088】
よって、回路基板Bを、正確な位置に位置決め固定することができつつも、回路基板Bを電動モータMに対して容易に結合することができる。
【0089】
また、本実施形態では、回路基板Bに、電源ハーネスのコネクタ(図示せず)が接続されるコネクタ接続端子Bb、Bbを設けて、ホルダー40には、そのコネクタ接続端子Bb、Bbが設けられた回路基板Bの背面側に、回路基板Bを当接支持する立設壁部43d、43dを設けている。
【0090】
これにより、回路基板Bのコネクタ接続端子Bに、電源ハーネスのコネクタ(図示せず)を接続する際に、回路基板Bに押込み力が作用しても、立設壁部43d、43dで回路基板Bが支持されるため、回路基板Bの押込み力による変位を抑えることができる。
【0091】
このため、回路基板Bは、電源ハーネスのコネクタを接続する作業を行っても、その位置を変えることなく、安定してその位置を維持することができる。
【0092】
よって、組み付け作業によって、回路基板Bが位置を変えることがないため、より確実に回路基板Bの位置が維持されて、電動モータMが制御できなくなるという不具合を確実に防止できる。
【0093】
また、本実施形態では、カバー30の位置決めリブ35に、そのカバー30の組み付け時に、回路基板Bを規定された位置に導く、案内リブ36を設けている。
【0094】
これにより、カバー30の組み付け時に、カバー30の位置決めリブ35に設けた案内リブ36によって、回路基板Bが、規定された位置決め位置に案内されるため、カバー30の組み付け作業によって、回路基板Bを正確な位置に案内することができる。
【0095】
このため、電動格納ユニットUの組み立て作業で、最後に行われるカバー30の組み付け作業で、回路基板Bの位置が確実に位置決めされるため、組み立て作業の途中で、回路基板Bの組み付け位置が正確でなくても、回路基板Bの全六方向の位置が、確実に規定されることになる。
【0096】
よって、より確実に、回路基板Bの位置が正確に規定されて、電動モータMが制御できなくなるという不具合を防止することができる。
【0097】
(その他の実施形態)
次に、その他の実施形態について説明する。
【0098】
まず、前述の実施形態1では、ホルダー40の基板支持部43の一つで回路基板Bの五方向の位置を規定するように構成しているが、本発明は、これに限定されず、例えば、別々の部位で回路基板Bの五方向の位置を規定するように構成しても良い。
【0099】
また、実施形態1のカバー30の位置決めリブ35と回路基板Bの間には隙Sを設けているが、成形誤差を考慮しなくても良い場合は、隙をなくしても良い。また、回路基板Bが位置決めリブ35に当接する部分に、ゴム等の弾性部材を介在させて、成形誤差を吸収するように構成しても良い。
【0100】
さらに、車両用視認装置の視認構造についても、前述の実施形態1のミラーに限定されず、車両後方を確認できるものであれば、カメラ等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上説明したように、本発明は、電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において有用である。
【符号の説明】
【0102】
1…サイドミラー装置(車両用視認装置)
U…電動格納ユニット
M…電動モータ
B…回路基板
20…ケース
30…カバー
35…位置決めリブ(位置決め部)
40…ホルダー
43…基板支持部(位置決め部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13