(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189553
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】光デバイス及び光通信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20221215BHJP
H04B 10/40 20130101ALI20221215BHJP
【FI】
G02F1/035
H04B10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098198
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA03
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA21
2K102DA05
2K102DB04
2K102DB05
2K102DC04
2K102DC08
2K102DD05
2K102EA03
2K102EA12
2K102EA21
2K102EB20
5K102AD15
5K102AH02
5K102AH14
5K102PB11
5K102PH02
5K102PH31
(57)【要約】
【課題】電界の印加効率の向上を図る光デバイス等を提供することを目的とする。
【解決手段】光デバイスは、光導波路と、前記光導波路上に積層されたバッファ層と、前記光導波路の近傍の部位に積層された前記バッファ層表面に配置され、前記光導波路に電気信号を印加する電極と、を有する。更に、光デバイスは、前記バッファ層に形成され、当該バッファ層表面から前記光導波路近傍まで延び、前記電極の一部が充填されるスリットを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路と、
前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記光導波路の近傍の部位に積層された前記バッファ層表面に配置され、前記光導波路に電気信号を印加する電極と、
前記バッファ層に形成され、当該バッファ層表面から前記光導波路近傍まで延び、前記電極の一部が充填されるスリットと、
を有することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記スリットは、
前記電極が配置された前記バッファ層表面から鉛直方向に延びることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記スリットは、
前記電極が配置された前記バッファ層表面から前記光導波路の側面部に向かって斜めに延びることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記光導波路は、
コア及びスラブを有するリブ型導波路であり、
前記スリットは、
前記電極が配置された前記バッファ層表面から前記リブ型導波路のコアの側面部付近に延びることを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の光デバイス。
【請求項5】
前記光導波路は、
チャネル導波路であり、
前記スリットは、
前記電極が配置された前記バッファ層表面から前記チャネル導波路の側面部付近に延びることを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の光デバイス。
【請求項6】
前記スリットは、
前記バッファ層表面の内、前記電極が配置される配置面内に形成されることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記電極は、
前記光導波路の一方の側面の部位に積層された前記バッファ層の配置面に配置された信号電極と、
前記光導波路の他方の側面の部位に積層された前記バッファ層の配置面に配置された接地電極と、を有し、
前記スリットは、
前記信号電極から前記光導波路付近に延びるように前記バッファ層内に形成され、当該信号電極の一部が充填されることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記スリットは、
前記信号電極が配置される前記配置面から前記光導波路付近まで延びる第1のスリットと、
前記接地電極が配置される前記配置面から前記光導波路付近まで延びる第2のスリットと、を有し、
前記第1のスリットは、
前記第2のスリットよりも前記光導波路に近づける構造にしたことを特徴とする請求項7に記載の光デバイス。
【請求項9】
電気信号に対する信号処理を実行するプロセッサと、
光を発生させる光源と、
前記プロセッサから出力される電気信号を用いて、前記光源から発生する光を変調する光デバイスと、を有し、
前記光デバイスは、
光導波路と、
前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記光導波路の近傍の部位に積層された前記バッファ層表面に配置され、前記光導波路に電気信号を印加する電極と、
前記バッファ層に形成され、当該バッファ層表面から前記光導波路近傍まで延び、前記電極の一部が充填されるスリットと、
を有することを特徴とする光通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス及び光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光変調器は、例えば、基板上に設けられた光導波路及び、その近傍に設けられた変調部で構成される。変調部は、信号電極と、接地電極とを有し、信号電極に電圧を与えると、光導波路内に電界が発生し、それによって光導波路の屈折率が変化し、光の位相が変化する。光導波路はマッハツェンダ干渉計を構成し、光導波路間の光の位相の差により光出力が変化する。
【0003】
光変調器では、例えば、4チャネルのマッハツェンダ変調器が集積されている。各マッハツェンダ干渉計には、RF変調部とDC変調部とがある。RF変調部の電極には、例えば、数10GHzの帯域を有する高周波信号を入力し、高速変調を行う。また、DC変調部の電極には、バイアス電圧を印加し、電気信号のON/OFFが光信号のON/OFFに対応するようにバイアス電圧を調整する。
【0004】
光変調器の光導波路は、例えば、マッハツェンダ干渉計を構成し、平行に配置された複数の光導波路間の光の位相差により、例えば、XY偏波多重されるIQ信号を出力する。そして、4チャネルの出力を2チャネルずつ合波して2つのIQ信号とし、その一つを偏波回転して偏波ビームコンバイナで偏波多重化して出力することになる。
【0005】
一方、光導波路は、例えば、チタン等の金属を基板表面から拡散することにより、信号電極と重ならない位置に形成される拡散光導波路がある。しかしながら、この拡散光導波路は光の閉じ込めが小さいため、電界の印加効率が悪く、そのため、駆動電圧が高くなる。そこで、LN(Lithium Niobate:ニオブ酸リチウム)結晶の薄膜を用いた光導波路が信号電極と重ならない位置に形成される薄膜光導波路がある。薄膜光導波路は、金属を拡散させる拡散光導波路よりも光の閉じ込めを強くすることができ、電界の印加効率を改善し、駆動電圧を低減できる。
【0006】
光変調器は、RF変調部と、DC変調部とを有する。
図9は、光変調器のDC変調部200の一例を示す略断面図である。
図9に示すDC変調部200は、Si(シリコン)等の支持基板201と、支持基板201上に積層された中間層202とを有する。更に、DC変調部200は、中間層202上に積層された薄膜LN基板203と、薄膜LN基板203上に積層されたSiO
2のバッファ層204とを有する。
【0007】
薄膜LN基板203には、上方へ突起する凸形状の薄膜光導波路207が形成される。そして、薄膜LN基板203及び薄膜光導波路207は、バッファ層204によって被覆され、バッファ層204の表面にコプレーナ(CPW:Coplanar Waveguide)構造の信号電極205及び一対の接地電極206が配置される。つまり、バッファ層204上には、信号電極205と、信号電極205を挟む一対の接地電極206とが配置されている。尚、バッファ層204は、薄膜光導波路207を伝搬する光が信号電極205及び接地電極206で吸収されるのを防止できる。
【0008】
信号電極205と接地電極206との間に位置する薄膜LN基板203には、凸形状の薄膜光導波路207が形成されている。凸形状の薄膜光導波路207は、側面部207Aと、平坦面207Bとを有する。更に、信号電極205と接地電極206との間に位置するバッファ層204にも、凸形状の薄膜光導波路207全体を被覆する段差部204Aがある。
【0009】
このような薄膜光導波路207によれば、信号電極205に電気信号の駆動電圧を印加して電界を発生させ、薄膜光導波路207の屈折率を変化させることにより、薄膜光導波路207を伝搬する光を変調することができる。尚、RF変調部も、信号電極205に駆動電圧の代わりに高周波信号を印加する点で異なるものの、DC変調部200とほぼ同一の構造であり、その構成及び動作の説明については省略する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-279865号公報
【特許文献2】特開2020-181070号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0146190号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
光変調器の薄膜光導波路207では、バッファ層204がクラッドとなるため、薄膜光導波路207を伝搬する光のモードフィールドがバッファ層204内にまで入り込むことになる。従って、薄膜光導波路207の光が信号電極205や接地電極206で吸収されるのを防ぐために、バッファ層204の厚さを厚くする必要がある。しかしながら、バッファ層204の厚さを厚くした場合には、薄膜光導波路207に印加される電界が小さくなるため、電界の印加効率が低下してしまう。
【0012】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、電界の印加効率の向上を図る光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願が開示する光デバイスは、1つの態様において、光導波路と、前記光導波路上に積層されたバッファ層と、前記光導波路の近傍の部位に積層された前記バッファ層表面に配置され、前記光導波路に電気信号を印加する電極と、を有する。更に、光デバイスは、前記バッファ層に形成され、当該バッファ層表面から前記光導波路近傍まで延び、前記電極の一部が充填されるスリットを有する。
【発明の効果】
【0014】
本願が開示する光デバイス等の1つの態様によれば、電界の印加効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例1の光通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施例1の光変調器の構成の一例を示す平面模式図である。
【
図3】
図3は、実施例1の光変調器の第1のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【
図4】
図4は、実施例2の光変調器の第1のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【
図5】
図5は、実施例3の光変調器の第1のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【
図6】
図6は、実施例4の光変調器の第1のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【
図7】
図7は、実施例5の光変調器の第1のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【
図8】
図8は、実施例6の光変調器の第1のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【
図9】
図9は、光変調器のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願が開示する光デバイス等の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【実施例0017】
図1は、実施例1の光通信装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す光通信装置1は、出力側の光ファイバ2A(2)及び入力側の光ファイバ2B(2)と接続する。光通信装置1は、DSP(Digital Signal Processor)3と、光源4と、光変調器5と、光受信器6とを有する。DSP3は、デジタル信号処理を実行する電気部品である。DSP3は、例えば、送信データの符号化等の処理を実行し、送信データを含む電気信号を生成し、生成した電気信号を光変調器5に出力する。また、DSP3は、受信データを含む電気信号を光受信器6から取得し、取得した電気信号の復号等の処理を実行して受信データを得る。
【0018】
光源4は、例えば、レーザダイオード等を備え、所定の波長の光を発生させて光変調器5及び光受信器6へ供給する。光変調器5は、DSP3から出力される電気信号によって、光源4から供給される光を変調し、得られた光送信信号を光ファイバ2Aに出力する光デバイスである。光変調器5は、例えば、LN(Lithium Niobate:ニオブ酸リチウム)光導波路と変調部とを備えるLN光変調器等の光デバイスである。LN光導波路は、LN結晶の基板で形成される。光変調器5は、光源4から供給される光がLN光導波路を伝搬する際に、この光を変調部へ入力される電気信号によって変調することで、光送信信号を生成する。
【0019】
光受信器6は、光ファイバ2Bから光信号を受信し、光源4から供給される光を用いて受信光信号を復調する。そして、光受信器6は、復調した受信光信号を電気信号に変換し、変換後の電気信号をDSP3に出力する。
【0020】
図2は、実施例1の光変調器5の構成の一例を示す平面模式図である。
図2に示す光変調器5は、入力側に光源4からの光ファイバ4Aを接続し、出力側に送信信号送出用の光ファイバ2Aを接続する。光変調器5は、第1の光入力部11と、RF(Radio Frequency)変調部12と、DC(Direct Current)変調部13と、第1の光出力部14とを有する。第1の光入力部11は、第1の光導波路11Aと、第1の導波路接合部11Bとを有する。第1の光導波路11Aは、光ファイバ4Aと接続する1本の光導波路と、1本の光導波路から分岐する2本の光導波路と、各2本の光導波路を分岐する4本の光導波路と、各4本の光導波路を分岐する8本の光導波路とを有する。第1の導波路接合部11Bは、第1の光導波路11A内の8本の光導波路とLN光導波路21内の8本のLN光導波路21との間を接合する。
【0021】
RF変調部12は、LN光導波路21と、電極部22と、RF終端器23とを有する。RF変調部12は、第1の光導波路11Aから供給される光がLN光導波路21を伝搬する際に、この光を電極部22の信号電極22Aから印加される電界によって変調する。LN光導波路21は、例えば、薄膜LN基板53を用いて形成される光導波路であり、入力側から分岐を繰り返し、複数の平行な8本のLN光導波路を有する。LN光導波路21を伝搬して変調された光は、DC変調部13内の第1のDC変調部32へ出力される。薄膜LN基板53は、結晶のX軸の方向にDC電圧を印加した場合に屈折率が高くなるXカット基板である。
【0022】
電極部22内の信号電極22Aは、LN光導波路21に重ならない位置に設けられ、DSP3から出力される電気信号に応じてLN光導波路21へ電界を印加する。電極部22内の信号電極22Aの終端は、RF終端器23に接続されている。RF終端器23は、信号電極22Aの終端に接続され、信号電極22Aによって伝送される信号の不要な反射を防止する。
【0023】
DC変調部13は、RF変調部12のLN光導波路21と接合するLN光導波路31と、第1のDC変調部32と、第2のDC変調部33とを有する。第1のDC変調部32は、4個の子側MZ(Mach-Zehnder)である。第2のDC変調部33は、2個の親側MZである。第1のDC変調部32は、LN光導波路31と、電極部22とを有する。
【0024】
LN光導波路31は、8本のLN光導波路と、8本のLN光導波路の内、2本のLN光導波路と合流する4本のLN光導波路とを有する。8本のLN光導波路31は、2本のLN光導波路毎に第1のDC変調部32を配置している。第1のDC変調部32は、LN光導波路31上の信号電極22Aにバイアス電圧を印加することで、電気信号のON/OFFが光信号のON/OFFに対応するようにバイアス電圧を調整して、同相軸成分のI信号若しくは直交軸成分のQ信号を出力する。LN光導波路31内の4本のLN光導波路は、2本のLN光導波路毎に第2のDC変調部33を配置している。第2のDC変調部33は、LN光導波路31上の信号電極22Aにバイアス電圧を印加することで、電気信号のON/OFFが光信号のON/OFFに対応するようにバイアス電圧を調整してI信号若しくはQ信号を出力する。
【0025】
第1の光出力部14は、第2の導波路接合部41と、第2の光導波路42と、PR(Polarization Rotator)43と、PBC(Polarization Beam Combiner:偏波ビームコンバイナ)44とを有する。第2の導波路接合部41は、DC変調部13内のLN光導波路31と第2の光導波路42との間を接合する。第2の光導波路42は、第2の導波路接合部41に接続する4本の光導波路と、4本の光導波路の内、2本の光導波路と合流する2本の光導波路とを有する。
【0026】
PR43は、一方の第2のDC変調部33から入力したI信号若しくはQ信号を90度回転して90度回転後の垂直偏波の光信号を得る。そして、PR43は、垂直偏波の光信号をPBC44に入力する。PBC44は、PR43からの垂直偏波の光信号と、他方の第2のDC変調部33から入力した水平偏波の光信号とを合波して偏波多重信号を出力する。
【0027】
次に、実施例1の光変調器5の構成について、具体的に説明する。
図3は、実施例1の光変調器5の第1のDC変調部32の一例を示す略断面図である。尚、第1のDC変調部32と第2のDC変調部33とは同一の構成であるため、第2のDC変調部33の構成及び動作の説明については同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
図3に示す第1のDC変調部32は、支持基板51と、支持基板51上に積層された中間層52とを有する。更に、第1のDC変調部32は、中間層52に積層された、薄膜基板である薄膜LN基板53と、薄膜LN基板53上に積層されたバッファ層54と、バッファ層54上に配置された電極部22とを有する。電極部22は、信号電極22A及び一対の接地電極22Bを有する。
【0028】
薄膜LN基板53には、上方へ突起する突条の薄膜光導波路60が形成される。薄膜光導波路60は、DC変調部13のLN光導波路31である。そして、薄膜LN基板53及び薄膜光導波路60がバッファ層54によって被覆されている。バッファ層54は、薄膜光導波路60を伝搬する光が電極部22で吸収されるのを防ぐために設けられる。バッファ層54には、当該バッファ層表面54Cから薄膜光導波路60近傍まで延びるスリット70(70A)が形成される。スリット70Aは、電極部22が配置されたバッファ層54の配置面54Cから当該バッファ層54の表面に対して鉛直に延びる。尚、バッファ層54の配置面54Cから鉛直方向に延びるスリット70Aは、例えば、エッチング等で形成したり、スパッタによりボイドとして形成したりするものとする。
【0029】
信号電極22Aと接地電極22Bとの間に位置する薄膜LN基板53には、凸形状の薄膜光導波路60が形成されている。薄膜光導波路60は、薄膜LN基板53の所定箇所に設けられた突条のリブ型の光導波路である。凸形状の薄膜光導波路60は、平坦面60Aと、側面部60Bとを有する。更に、信号電極22Aと接地電極22Bとの間に位置するバッファ層54にも、凸形状の薄膜光導波路60全体を被覆する段差部54Bがある。薄膜光導波路60の側面部60Bを被覆する段差部54Bは、接地電極22Bと信号電極22Aとの間を離間している。
【0030】
電極部22は、薄膜光導波路60の近傍の部位に積層されたバッファ層表面の配置面54Cに配置され、スリット70A内に電極の一部221が充填され、薄膜光導波路60に駆動電圧を印加する。バッファ層54の配置面54Cに配置された信号電極22Aは、電極の一部221をスリット70Aに充填し、電極の一部221の先端を薄膜光導波路60の側面部60Bに近づける。バッファ層54の配置面54Cに配置された接地電極22Bは、電極の一部221をスリット70Aに充填し、電極の一部221の先端を薄膜光導波路60の側面部60Bに近づける。
【0031】
中間層52とバッファ層54との間には、厚さが0.5~3μmの薄膜LN基板53が挟まれており、薄膜LN基板53には、上方へ突起する凸形状の薄膜光導波路60が形成されている。薄膜光導波路60となる突起の幅は、例えば、1~8μm程度である。薄膜LN基板53及び薄膜光導波路60は、バッファ層54によって被覆されている。
【0032】
また、信号電極22Aは、高周波損失の小さい、接地電極22Bと異なる材料であることが望ましい。
【0033】
信号電極22Aは、例えば、金や銅等の金属材料からなり、幅が2~10μm、厚みが1~20μmの電極である。接地電極22Bは、例えば、金や銅等の金属材料からなり、厚みが1μm以上の電極である。DSP3から出力される電気信号に応じた駆動電圧が信号電極22Aによって伝送されることにより、信号電極22Aから接地電極22Bへ向かう方向の電界が発生し、この電界が薄膜光導波路60に印加される。その結果、薄膜光導波路60への電界印加に応じて薄膜光導波路60の屈折率が変化し、薄膜光導波路60を伝搬する光を変調することが可能となる。
【0034】
実施例1の第1のDC変調部32では、バッファ層54に形成され、当該バッファ層54表面から薄膜光導波路60近傍まで延び、電極の一部が充填されるスリット70Aを有する。第1のDC変調部32では、スリット70A内に接地電極22Bの電極の一部221及び信号電極22Aの電極の一部221を配置している。第1のDC変調部32では、接地電極22Bと薄膜光導波路60との間の距離や、信号電極22Aと薄膜光導波路60との間の距離を近くしたので、薄膜光導波路60に印加される電界が強くなる。その結果、バッファ層54の厚さが厚くした場合でも、電界の印加効率の改善を図ることで、駆動電圧の低下を図ることができる。
【0035】
図3では、第1のDC変調部32を例示したが、第2のDC変調部33でも同一の構成である。第2のDC変調部33では、バッファ層54に形成され、当該バッファ層54表面から薄膜光導波路60近傍まで延び、電極の一部が充填されるスリット70Aを有する。第2のDC変調部33では、スリット70A内に接地電極22Bの電極の一部221及び信号電極22Aの電極の一部221を配置している。第2のDC変調部33では、接地電極22Bと薄膜光導波路60との間の距離や、信号電極22Aと薄膜光導波路60との間の距離を近くしたので、薄膜光導波路60に印加される電界が強くなる。その結果、バッファ層54の厚さが厚くした場合でも、電界の印加効率の改善を図ることで、駆動電圧の低下を図ることができる。
【0036】
また、RF変調部12も第1のDC変調部32とほぼ同一の構成である。第1のDC変調部32とRF変調部12とが異なるところは、駆動電圧の代わりに高周波信号を信号電極22Aに印加する点である。従って、その重複する構成及び動作の説明については省略する。尚、薄膜光導波路60は、RF変調部12のLN光導波路21に相当する。RF変調部12では、バッファ層54に形成され、当該バッファ層54表面から薄膜光導波路60近傍まで延び、電極の一部が充填されるスリット70Aを有する。RF変調部12では、スリット70A内に接地電極22Bの電極の一部221及び信号電極22Aの電極の一部221を配置している。RF変調部12では、接地電極22Bと薄膜光導波路60との間の距離や、信号電極22Aと薄膜光導波路60との間の距離を近くしたので、薄膜光導波路60に印加される電界が強くなる。その結果、バッファ層54の厚さが厚くした場合でも、電界の印加効率の改善を図ることで、駆動電圧の低下を図ることができる。
【0037】
しかも、光変調器5は、Xカットの薄膜LN基板53を用いて形成したリブ型の薄膜光導波路60を有するので、薄膜光導波路60に水平方向の電界を印加して変調し易くなる。
【0038】
実施例1の第1のDC変調部32では、バッファ層54の配置面54Aに対して鉛直する方向にスリット70Aを配置する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、その実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。
電極部22は、薄膜光導波路60の近傍の部位に積層されたバッファ層54表面の配置面54Cに配置され、配置面54Cからスリット70A内に電極の一部221が充填され、薄膜光導波路60に駆動電圧を印加する。バッファ層54の配置面54Cに配置された信号電極22Aは、電極の一部221をスリット70Bに充填し、電極の一部221の先端を薄膜光導波路60の側面部60Bに近づける。バッファ層54の配置面54Cに配置された接地電極22Bは、電極の一部221をスリット70Bに充填し、電極の一部221の先端を薄膜光導波路60の側面部60Bに近づける。
実施例2の第1のDC変調部32では、薄膜光導波路60の側面部60B付近に斜めに延びるスリット70B内に接地電極22Bの電極の一部221及び信号電極22Aの電極の一部221を配置している。第1のDC変調部32では、実施例1に比較して、接地電極22Bと薄膜光導波路60との間の距離や、信号電極22Aと薄膜光導波路60との間の距離を近くしたので、薄膜光導波路60に印加される電界が強くなる。その結果、バッファ層54の厚さが厚くした場合でも、電界の印加効率の改善を図ることで、駆動電圧の低下を図ることができる。
第2のDC変調部33では、薄膜光導波路60の側面部60B付近に斜めに延びるスリット70B内に接地電極22Bの電極の一部221及び信号電極22Aの電極の一部221を配置している。第2のDC変調部33では、実施例1に比較して、接地電極22Bと薄膜光導波路60との間の距離や、信号電極22Aと薄膜光導波路60との間の距離を近くしたので、薄膜光導波路60に印加される電界が強くなる。その結果、バッファ層54の厚さが厚くした場合でも、電界の印加効率の改善を図ることで、駆動電圧の低下を図ることができる。
RF変調部12では、薄膜光導波路60の側面部60B付近に斜めに延びるスリット70B内に接地電極22Bの電極の一部221及び信号電極22Aの電極の一部221を配置している。RF変調部12では、実施例1に比較して、接地電極22Bと薄膜光導波路60との間の距離や、信号電極22Aと薄膜光導波路60との間の距離を近くしたので、薄膜光導波路60に印加される電界が強くなる。その結果、バッファ層54の厚さが厚くした場合でも、電界の印加効率の改善を図ることで、駆動電圧の低下を図ることができる。
尚、第1のDC変調部32では、配置面54Aから薄膜光導波路60の側面部60Bに向かって斜めに延びるスリット70Bをバッファ層54内に形成する場合を例示した。しかしながら、例えば、薄膜LN基板53上にバッファ層54を積層する際に薄膜光導波路60とバッファ層54との間に生じる亀裂をスリット70Bとしても良い。
また、実施例2の第1のDC変調部32では、薄膜光導波路60としてリブ型光導波路を例示したが、これに限定されるものではなく、その実施の形態につき、実施例3として以下に説明する。