(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189556
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】水素供給装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0438 20160101AFI20221215BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20221215BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20221215BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20221215BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20221215BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20221215BHJP
H01M 8/04955 20160101ALI20221215BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20221215BHJP
【FI】
H01M8/0438
H01M8/04746
H01M8/04225
H01M8/04228
H01M8/04302
H01M8/04303
H01M8/04955
H01M8/04313
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098202
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】齋木 厚志
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA58
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DA01
5H127DA11
5H127DB03
5H127DB45
5H127DC02
5H127DC69
5H127FF02
(57)【要約】
【課題】水素タンクから減圧弁及び水素供給部を介して燃料電池に水素ガスを供給する水素供給装置において、燃料電池内の水素ガスの圧力を目標圧力に保ちつつ、減圧弁の寿命低下を抑制する。
【解決手段】燃料電池FC内の水素ガスの圧力P1が目標圧力Ptより小さい所定圧力Pth1以下になると、インジェクタINJを作動させることにより燃料電池FCに水素ガスを供給し、燃料電池FC内の水素ガスの圧力P1が目標圧力Pt以上になると、インジェクタINJを停止させることにより燃料電池FCへの水素供給を止め、燃料電池FC内の水素ガスの圧力P1が所定圧力Pth1より大きく、かつ、目標圧力Ptより小さい場合、インジェクタINJの作動と停止を交互に繰り返す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素タンクから燃料電池に水素ガスを供給する水素供給装置であって、
前記燃料電池の入力段に設けられる水素供給部と、
前記水素供給部と前記水素タンクとの間に設けられる減圧弁と、
前記水素供給部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記燃料電池内の水素ガスの圧力が目標圧力より小さい第1の所定圧力以下になると、前記水素供給部を作動させることにより前記燃料電池に水素ガスを供給し、
前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記目標圧力以上になると、前記水素供給部を停止させることにより前記燃料電池への水素供給を止め、
前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記第1の所定圧力より大きく、かつ、前記目標圧力より小さい場合、前記水素供給部の作動と停止を交互に繰り返す
ことを特徴とする水素供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水素供給装置であって、
前記制御部は、
前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記第1の所定圧力より大きく、かつ、前記目標圧力より小さい場合において、前記水素供給部に供給される水素ガスの圧力が第2の所定圧力以下になると、または、前記水素供給部を作動させてから第1の所定時間が経過すると、または、前記燃料電池に供給される水素ガスの流量が第1の所定流量以下になると、前記水素供給部を停止させ、
前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記第1の所定圧力より大きく、かつ、前記目標圧力より小さい場合において、前記水素供給部に供給される水素ガスの圧力が前記第2の所定圧力より大きい第3の所定圧力以上になると、または、前記水素供給部を停止させてから第2の所定時間が経過すると、または、前記燃料電池に供給される水素ガスの流量が前記第1の所定流量より大きい第2の所定流量以上になると、前記水素供給部を作動させる
ことを特徴とする水素供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の水素供給装置であって、
前記制御部は、前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記第1の所定圧力より大きく、かつ、前記目標圧力より小さい場合において、前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記第1の所定圧力以下になってから第3の所定時間が経過すると、前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記目標圧力以上になるまで、前記水素供給装置を連続して作動させる
ことを特徴とする水素供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素タンクから減圧弁及び水素供給部を介して燃料電池に水素ガスを供給する水素供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素供給装置として、燃料電池内の水素ガスの圧力を目標圧力に保つために、燃料電池内の水素ガスの圧力が目標圧力より小さい所定圧力以下になると水素供給部を作動させることで燃料電池に水素ガスを供給し、燃料電池内の水素ガスの圧力が目標圧力以上になると水素供給部を停止させるものがある。なお、所定圧力は、水素供給部の耐久性低下と燃料電池の燃費悪化を抑制することが可能な周期で燃料電池に水素ガスが供給されるように予め決められているものとする。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
ところで、水素供給部の作動時間が長くなるほど、水素供給部と減圧弁との間の水素ガスの圧力が減少するため、減圧弁の開度が大きくなる。また、減圧弁の開度が大きくなるほど、減圧弁の寿命が低下する。
【0004】
そのため、上記水素供給装置では、燃料電池内の水素ガスの圧力が所定圧力以下になってから目標圧力以上になるまでの間において、水素供給部の作動時間が比較的長くなり、減圧弁の開度が比較的大きくなるおそれがあるため、減圧弁の寿命低下が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、水素タンクから減圧弁及び水素供給部を介して燃料電池に水素ガスを供給する水素供給装置において、燃料電池内の水素ガスの圧力を目標圧力に保ちつつ、減圧弁の寿命低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態である水素供給装置は、水素タンクから燃料電池に水素ガスを供給する水素供給装置であって、前記燃料電池の入力段に設けられる水素供給部と、前記水素供給部と前記水素タンクとの間に設けられる減圧弁と、前記水素供給部の動作を制御する制御部とを備える。
【0008】
前記制御部は、前記燃料電池内の水素ガスの圧力が目標圧力より小さい第1の所定圧力以下になると、前記水素供給部を作動させることにより前記燃料電池に水素ガスを供給し、前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記目標圧力以上になると、前記水素供給部を停止させることにより前記燃料電池への水素供給を止め、前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記第1の所定圧力より大きく、かつ、前記目標圧力より小さい場合、前記水素供給部の作動と停止を交互に繰り返す。
【0009】
このように、燃料電池内の水素ガスの圧力が第1の所定圧力以下になると水素供給部を作動させ、燃料電池内の水素ガスの圧力が目標圧力以上になると水素供給部を停止させる構成であるため、燃料電池内の水素ガスの圧力を目標圧力に保つことができる。
【0010】
また、燃料電池内の水素ガスの圧力が第1の所定圧力以下になってから目標圧力以上になるまでの間の一部の期間において水素供給部を停止させることができるため、水素供給部と減圧弁との間の水素ガスの圧力低下を抑えることができる。そのため、減圧弁の開度が大きくなることを抑制することができ、減圧弁の寿命低下を抑制することができる。
【0011】
また、前記制御部は、前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記第1の所定圧力より大きく、かつ、前記目標圧力より小さい場合において、前記水素供給部に供給される水素ガスの圧力が第2の所定圧力以下になると、または、前記水素供給部を作動させてから第1の所定時間が経過すると、または、前記燃料電池に供給される水素ガスの流量が第1の所定流量以下になると、前記水素供給部を停止させ、前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記第1の所定圧力より大きく、かつ、前記目標圧力より小さい場合において、前記水素供給部に供給される水素ガスの圧力が前記第2の所定圧力より大きい第3の所定圧力以上になると、または、前記水素供給部を停止させてから第2の所定時間が経過すると、または、前記燃料電池に供給される水素ガスの流量が前記第1の所定流量より大きい第2の所定流量以上になると、前記水素供給部を作動させるように構成してもよい。
【0012】
また、前記制御部は、前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記第1の所定圧力より大きく、かつ、前記目標圧力より小さい場合において、前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記第1の所定圧力以下になってから第3の所定時間が経過すると、前記燃料電池内の水素ガスの圧力が前記目標圧力以上になるまで、前記水素供給装置を連続して作動させるように構成してもよい。
【0013】
これにより、水素供給部、減圧弁、または制御部の不具合により、燃料電池内の水素ガスの圧力の単位時間あたりの増加幅が比較的小さくなってしまっても、燃料電池内の水素ガスの圧力が第1の所定圧力以下になってから目標圧力以上になるまでにかかる時間が比較的長くなることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水素タンクから減圧弁及び水素供給部を介して燃料電池に水素ガスを供給する水素供給装置において、燃料電池内の水素ガスの圧力を目標圧力に保ちつつ、減圧弁の寿命低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の水素供給装置を含む燃料電池システムの一例を示す図である。
【
図2】実施例1の制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図3】実施例2の制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図4】実施例3の制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図5】既存の水素供給装置における、インジェクタの状態、圧力P1、圧力P2、及び減圧弁の開度の変化例を示す図である。
【
図6】実施形態の水素供給装置における、インジェクタの状態、圧力P1、圧力P2、及び減圧弁の開度の変化例を示す図である。
【
図7】変形例の制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0017】
図1は、実施形態の水素供給装置を含む燃料電池システムの一例を示す図である。
【0018】
図1に示す燃料電池システム1は、フォークリフトなどの産業車両や自動車などの車両Veに搭載され、負荷Loなどに電力を供給する。なお、負荷Loは、走行用モータを駆動するインバータなどとする。
【0019】
また、燃料電池システム1は、燃料電池FCと、水素タンクHTと、減圧弁PVと、インジェクタINJ(電力供給部)と、エアコンプレッサACPと、DCDCコンバータCNVと、蓄電装置Bと、圧力センサSp1と、圧力センサSp2と、制御部2とを備える。なお、実施形態の水素供給装置は、インジェクタINJ、減圧弁PV、及び制御部2などにより構成されるものとする。
【0020】
燃料電池FCは、互いに直列接続される複数の燃料電池セルにより構成される燃料電池スタックであり、水素ガスに含まれる水素と酸化剤ガス(空気など)に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。
【0021】
水素タンクHTは、水素ガスの貯蔵容器である。
【0022】
減圧弁PVは、インジェクタINJと水素タンクHTとの間に設けられ、水素タンクHTから出力される水素ガスを減圧する。なお、インジェクタINJと減圧弁PVとの間の水素ガスの圧力が減少するほど、減圧弁PVの開度が大きくなり、水素タンクHTからインジェクタINJに供給される水素ガスの流量が大きくなるものとする。また、インジェクタINJと減圧弁PVとの間の水素ガスの圧力が増加するほど、減圧弁PVの開度が小さくなり、水素タンクHTからインジェクタINJに供給される水素ガスの流量が小さくなるものとする。すなわち、インジェクタINJと減圧弁PVとの間の水素ガスの圧力が所定圧力に保たれるように減圧弁PVの開度が自律的に変化する。
【0023】
インジェクタINJは、燃料電池FCの入力段に設けられ、制御部2により動作(作動または停止)が制御される。インジェクタINJが作動しているとき、減圧弁PVにより減圧された水素ガスが燃料電池FCに供給される。なお、インジェクタINJが作動することで燃料電池FCに水素ガスが供給されているとき、燃料電池FC内の水素ガスの圧力が徐々に増加する。また、インジェクタINJが停止することで燃料電池FCに水素ガスが供給されていないときで、かつ、発電により燃料電池FC内の水素ガスが消費されているとき、燃料電池FC内の水素ガスの圧力が減少する。
【0024】
エアコンプレッサACPは、酸化剤ガスを圧縮して燃料電池FCに供給する。
【0025】
DCDCコンバータCNVは、燃料電池FCから出力される電力をインジェクタINJやエアコンプレッサACPなどの補機及び蓄電装置Bに供給する。
【0026】
蓄電装置Bは、リチウムイオンキャパシタなどにより構成され、負荷Loや補機に電力を供給する。
【0027】
圧力センサSp1は、燃料電池FCとインジェクタINJとの間に接続され、燃料電池FCとインジェクタINJとの間の水素ガスの圧力P1、すなわち、燃料電池FC内の水素ガスの圧力P1を検出する。
【0028】
圧力センサSp2は、インジェクタINJと減圧弁PVとの間に接続され、インジェクタINJと減圧弁PVとの間の水素ガスの圧力P2、すなわち、インジェクタINJに供給される水素ガスの圧力P2を検出する。
【0029】
制御部2は、マイクロコンピュータなどにより構成される。
【0030】
また、制御部2は、燃料電池FCの発電制御時、蓄電装置Bの充電量に応じて、目標電力を変化させる。なお、充電量とは、蓄電装置Bの満充電容量に対する残容量の割合[%](充電率)、または、蓄電装置Bに電流が流れていないときの蓄電装置Bの電圧[V]とする。
【0031】
また、制御部2は、燃料電池FCの発電制御時、燃料電池FCの出力電力が目標電力になるように、インジェクタINJやエアコンプレッサACPなどの補機を駆動させる。例えば、制御部2は、燃料電池FCの発電制御時、燃料電池FC内の水素ガスの圧力が燃料電池FCの目標電力に対応する目標圧力になるように、インジェクタINJの動作を制御する。
【0032】
<実施例1>
図4は、インジェクタINJの動作制御時の制御部2の動作の一例を示すフローチャートである。なお、制御部2は、フローチャートの実行開始時、インジェクタINJを停止させているものとする。
【0033】
まず、制御部2は、圧力センサSp1により検出される圧力P1が所定圧力Pth1(第1の所定圧力)より大きい場合(ステップS11:No)、インジェクタINJを停止させることを継続し、圧力P1が所定圧力Pth1以下になると(ステップS11:Yes)、インジェクタINJを作動させる(ステップS12)。なお、所定圧力Pth1は、目標圧力Ptより小さい値とする。
【0034】
次に、制御部2は、圧力P1が所定圧力Pth1以下になった後において、圧力センサSp2により検出される圧力P2が所定圧力Pth2(第2の所定圧力)より大きい場合(ステップS13:No)、インジェクタINJを作動させることを継続し、圧力P2が所定圧力Pth2以下になると(ステップS13:Yes)、インジェクタINJを停止させる(ステップS14)。なお、所定圧力Pth2は、インジェクタINJが作動しているときの減圧弁PVの開度が100[%]であるときの圧力P2の最小値より大きく、かつ、インジェクタINJが作動しているときの減圧弁PVの開度が0[%]であるときの圧力P2より小さい値とする。
【0035】
次に、制御部2は、圧力P1が所定圧力Pth1以下になり、さらに、圧力P2が所定圧力Pth2以下になった後において、圧力P2が所定圧力Pth3より小さい場合(ステップS15:No)、インジェクタINJを停止させることを継続し、圧力P2が所定圧力Pth3以上になると(ステップS15:Yes)、インジェクタINJを作動させる(ステップS16)。なお、所定圧力Pth3は、所定圧力Pth2より大きく、かつ、インジェクタINJが作動しているときの減圧弁PVの開度が0[%]であるときの圧力P2より小さい値とする。
【0036】
次に、制御部2は、圧力P1が所定圧力Pth1以下になり、圧力P2が所定圧力Pth2以下になり、さらに、圧力P2が所定圧力Pth3以上になった後において、圧力P1が目標圧力Ptより小さい場合(ステップS17:No)、再度、ステップS13~S16の処理を実行することで圧力P1を徐々に増加させ、圧力P1が目標圧力Pt以上になると(ステップS17:Yes)、インジェクタINJを停止させて(ステップS18)、ステップS11に戻る。
【0037】
すなわち、制御部2は、所定圧力Pth1、Pth2を用いてインジェクタINJの動作を制御することにより、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから目標圧力Pt以上になるまでの間において、圧力P2が所定圧力Pth2と所定圧力Pth3との間で変動するように、インジェクタINJの作動と停止を交互に繰り返す。
【0038】
なお、所定圧力Pth2を大きくするほど、圧力P2の減少幅を小さくすることができるため、0[%]を基準とする減圧弁PVの開度の変位量を小さくすることができるが、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから目標圧力Pt以上になるまでの間の経過時間及びインジェクタINJの作動回数が増加する。そのため、所定圧力Pth2は、0[%]を基準とする減圧弁PVの開度の変位量と、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから目標圧力Pt以上になるまでの間の経過時間及びインジェクタINJの作動回数とを考慮して決められてもよい。
【0039】
<実施例2>
図3は、インジェクタINJの動作制御時の制御部2の動作の他の例を示すフローチャートである。なお、
図3に示すステップS11、S12、S14、S16~S18は、
図2に示すステップS11、S12、S14、S16~S18と同様であるため、その説明を省略する。
【0040】
制御部2は、圧力P1が所定圧力Pth1以下になった後において、インジェクタINJを作動させてから所定時間T1(第1の所定時間)が経過していない場合(ステップS13´:No)、インジェクタINJを作動させることを継続し、インジェクタINJを作動させてから所定時間T1が経過すると(ステップS13´:Yes)、インジェクタINJを停止させる(ステップS14)。なお、所定時間T1は、インジェクタINJが作動している場合において、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから圧力P2が所定圧力Pth2以下になるまでにかかる時間、または、インジェクタINJが作動している場合において、圧力P2が所定圧力Pth3以上になってから圧力P2が所定圧力Pth2以下になるまでにかかる時間とする。
【0041】
また、制御部2は、圧力P1が所定圧力Pth1以下になった後において、インジェクタINJを停止させてから所定時間T2(第2の所定時間)が経過していない場合(ステップS15´:No)、インジェクタINJを停止させることを継続し、インジェクタINJを停止させてから所定時間T2が経過すると(ステップS15´:Yes)、インジェクタINJを作動させる(ステップS16)。なお、所定時間T2は、インジェクタINJが停止している場合において、圧力P2が所定圧力Pth2から所定圧力Pth3に変化するまでにかかる時間とする。
【0042】
すなわち、制御部2は、所定時間T1、T2を用いてインジェクタINJの動作を制御することにより、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから目標圧力Pt以上になるまでの間において、圧力P2が所定圧力Pth2と所定圧力Pth3との間で変動するように、インジェクタINJの作動と停止を交互に繰り返す。
【0043】
<実施例3>
図4は、インジェクタINJの動作制御時の制御部2の動作のさらに他の例を示すフローチャートである。なお、
図4に示すステップS11、S12、S14、S16~S18は、
図2に示すステップS11、S12、S14、S16~S18と同様であるため、その説明を省略する。また、減圧弁PVから燃料電池FCに供給される水素ガスの流量F(単位時間あたりの水素ガスの量[m
3/s])を検出する流量センサが、燃料電池FCとインジェクタINJとの間、または、インジェクタINJと減圧弁PVとの間に設けられているものとする。
【0044】
制御部2は、圧力P1が所定圧力Pth1以下になった後において、流量Fが所定流量Fth1(第1の所定流量)より小さい場合(ステップS13´´:No)、インジェクタINJを作動させることを継続し、流量Fが所定流量Fth1以上になると(ステップS13´´:Yes)、インジェクタINJを停止させる(ステップS14)。なお、所定流量Fth1は、圧力P2が所定圧力Pth3になるときに減圧弁PVから燃料電池FCに供給される水素ガスの流量とする。
【0045】
また、制御部2は、圧力P1が所定圧力Pth1以下になった後において、流量Fが所定流量Fth2(第2の所定流量)より大きい場合(ステップS15´´:No)、インジェクタINJを停止させることを継続し、流量Fが所定流量Fth2以下になると(ステップS15´´:Yes)、インジェクタINJを作動させる(ステップS16)。なお、所定流量Fth2は、所定流量Fth1より小さい値であり、圧力P2が所定圧力Pth2になるときに減圧弁PVから燃料電池FCに供給される水素ガスの流量とする。
【0046】
すなわち、制御部2は、所定流量Fth1、Fth2を用いてインジェクタINJの動作を制御することにより、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから目標圧力Pt以上になるまでの間において、圧力P2が所定圧力Pth2と所定圧力Pth3との間で変動するように、インジェクタINJの作動と停止を交互に繰り返す。
【0047】
なお、
図2に示すステップS13及びステップS15、
図3に示すステップS13´及びステップS15´、並びに
図4に示すステップS13´´及びステップS15´´の各ステップを互いに入れ替えてもよい。例えば、
図2に示すステップS13のみを、
図3に示すステップS13´または
図4に示すステップS13´´と入れ替えてもよい。また、
図2に示すステップS15のみを、
図3に示すステップS15´または
図4に示すステップS15´´と入れ替えてもよい。また、
図3に示すステップS15´のみを、
図4に示すステップS15´´と入れ替えてもよい。また、
図4に示すステップS15´´のみを、
図3に示すステップS15´と入れ替えてもよい。
【0048】
ここで、
図5は、既存の水素供給装置における、インジェクタINJの状態、圧力P1、圧力P2、及び減圧弁PVの開度の変化例を示す図である。なお、
図5(a)に示す2次元座標の横軸は時間を示し、縦軸はインジェクタINJの状態(作動または停止)を示している。また、
図5(a)に示す実線は、時間経過に伴うインジェクタINJの状態の変化を示している。また、
図5(b)に示す2次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は圧力を示している。また、
図5(b)に示す実線は、時間経過に伴う圧力P1の変化を示している。また、
図5(c)に示す2次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は圧力を示している。また、
図5(c)に示す実線は、時間経過に伴う圧力P2の変化を示している。また、
図5(d)に示す2次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は減圧弁PVの開度(0[%]~100[%])を示している。また、
図5(d)に示す実線は、時間経過に伴う減圧弁PVの開度の変化を示している。
【0049】
まず、既存の水素供給装置は、
図5(b)に示すように、時刻t11において、圧力P1が所定圧力Pth1以下になると、
図5(a)に示すように、インジェクタINJを作動させる。すると、
図5(a)に示すように、インジェクタINJが作動している間(時刻t11から時刻t12までの間)、
図5(b)に示すように、圧力P1が目標圧力Ptまで増加するとともに、
図5(c)に示すように、圧力P2が圧力Pminまで減少するとともに、
図5(d)に示すように、減圧弁PVの開度が100[%]まで増加する。
【0050】
次に、既存の水素供給装置は、
図5(b)に示すように、時刻t12において、圧力P1が目標圧力Pt以上になると、
図5(a)に示すように、インジェクタINJを停止させる。すると、
図5(a)に示すように、インジェクタINJが停止している間(時刻t12以降)、
図5(b)に示すように、圧力P1が所定圧力Pth1まで減少するとともに、
図5(c)に示すように、圧力P2が圧力Pmaxまで増加するともに、
図5(d)に示すように、減圧弁PVの開度が0[%]まで減少する。
【0051】
また、
図6は、実施形態の水素供給装置における、インジェクタINJの状態、圧力P1、圧力P2、及び減圧弁PVの開度の変化例を示す図である。なお、
図6(a)に示す2次元座標の横軸は時間を示し、縦軸はインジェクタINJの状態(作動または停止)を示している。また、
図6(a)に示す実線は、時間経過に伴うインジェクタINJの状態の変化を示している。また、
図6(b)に示す2次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は圧力を示している。また、
図6(b)に示す実線は、時間経過に伴う圧力P1の変化を示している。また、
図6(c)に示す2次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は圧力を示している。また、
図6(c)に示す実線は、時間経過に伴う圧力P2の変化を示している。また、
図6(d)に示す2次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は減圧弁PVの開度(0[%]~100[%])を示している。また、
図6(d)に示す実線は、時間経過に伴う減圧弁PVの開度の変化を示している。
【0052】
まず、実施形態の水素供給装置(制御部2)は、
図6(b)に示すように、時刻t1において、圧力P1が所定圧力Pth1以下になると、
図6(a)に示すように、インジェクタINJを作動させる。すると、
図6(a)に示すように、インジェクタINJが作動している間(時刻t1から時刻t2までの間)、
図6(b)に示すように、圧力P1が増加するとともに、
図6(c)に示すように、圧力P2が所定圧力Pth2まで減少するとともに、
図6(d)に示すように、減圧弁PVの開度が開度Vo2まで増加する。なお、開度Vo2は、圧力P2が所定圧力Pth2であるときの減圧弁PVの開度であり、0[%]より大きく、かつ、100[%]より小さいものとする。
【0053】
次に、実施形態の水素供給装置(制御部2)は、
図6(c)に示すように、時刻t2において、圧力P2が所定圧力Pth2になると、
図6(a)に示すように、インジェクタINJを停止させる。すると、
図6(a)に示すように、インジェクタINJが停止している間(時刻t2から時刻t3までの間)、
図6(b)に示すように、圧力P1が減少するとともに、
図6(c)に示すように、圧力P2が所定圧力Pth3まで増加するとともに、
図6(d)に示すように、減圧弁PVの開度が開度Vo3まで減少する。なお、開度Vo3は、圧力P2が所定圧力Pth3であるときの減圧弁PVの開度であり、0[%]より大きく、かつ、開度Vo2より小さいものとする。すなわち、0[%]<開度Vo3<開度Vo2<100[%]とする。
【0054】
次に、実施形態の水素供給装置(制御部2)は、
図6(c)に示すように、時刻t3において、圧力P2が所定圧力Pth3になると、
図6(a)に示すように、インジェクタINJを作動させる。すると、
図6(a)に示すように、インジェクタINJが作動している間(時刻t3から時刻t4までの間)、
図6(b)に示すように、圧力P1が増加するとともに、
図6(c)に示すように、圧力P2が所定圧力Pth2まで減少するとともに、
図6(d)に示すように、減圧弁PVの開度が開度Vo2まで増加する。
【0055】
以降、実施形態の水素供給装置(制御部2)は、時刻t4~t9において、時刻t2、t3のときと同様に、インジェクタINJの作動と停止を繰り返す。そのため、圧力P2が所定圧力Pth2になった後に所定圧力Pth3になることが繰り返される。なお、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから目標圧力Pt以上になるまでの間において、インジェクタINJが作動しているときの圧力P1の増加幅は、インジェクタINJが停止しているときの圧力P1の減少幅より大きいものとする。そのため、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから目標圧力Pt以上になるまでの間において、インジェクタINJの作動と停止が交互に繰り返されると、圧力P1が徐々に増加する。
【0056】
そして、実施形態の水素供給装置(制御部2)は、
図6(b)に示すように、時刻t10において、圧力P1が目標圧力Pt以上になると、
図6(a)に示すように、インジェクタINJを停止させる。すると、
図6(a)に示すように、インジェクタINJが停止している間(時刻t10以降)、
図6(b)に示すように、圧力P1が減少するとともに、
図6(c)に示すように、圧力P2が圧力Pmaxまで増加するとともに、
図6(d)に示すように、減圧弁PVの開度が0[%]まで減少する。
【0057】
このように、既存の水素供給装置では、
図5(b)及び
図5(d)に示すように、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから目標圧力Pt以上になるまでの間において、減圧弁PVの開度が0[%]から100[%]に変化し、0[%]を基準とする減圧弁PVの開度の変位量が最大となるため、減圧弁PVの寿命低下が懸念される。
【0058】
一方、実施形態の水素供給装置では、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから目標圧力Pt以上になるまでの間において、圧力P2を所定圧力Pth2と所定圧力Pth3との間で変動させている。また、所定圧力Pth2及び所定圧力Pth3は、それぞれ、
図6(c)及び
図6(d)に示すように、減圧弁PVの開度が100[%]より小さい開度Vo2及び開度Vo3になるときの圧力P2である。そのため、
図6(d)に示すように、減圧弁PVの開度が0[%]から100[%]まで変化しないため、0[%]を基準とする減圧弁PVの開度の変位量が最大にならず、減圧弁PVの寿命低下を抑制することができる。すなわち、実施形態の水素供給装置では、燃料電池FC内の水素ガスの圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから目標圧力Pt以上になるまでの間の一部の期間において、インジェクタINJを停止させることができる。そのため、インジェクタINJと減圧弁PVとの間の水素ガスの圧力P2の低下を抑えることができるため、0[%]を基準とする減圧弁PVの開度の変位量が大きくなることを抑制することができ、減圧弁PVの寿命低下を抑制することができる。
【0059】
また、実施形態の水素供給装置では、燃料電池FC内の水素ガスの圧力P1が所定圧力Pth1以下になるとインジェクタINJを作動させ、圧力P1が目標圧力Pt以上になるとインジェクタINJを停止させる構成であるため、圧力P1を目標圧力Ptに保つことができる。
【0060】
また、既存の水素供給装置では、0[%]を基準とする減圧弁PVの開度の変位量が比較的大きくなるため、
図5(a)に示すように、インジェクタINJが作動状態から停止状態に移行するとき、減圧弁PVの応答遅れにより、
図5(c)及び
図5(d)に示す破線枠のように、圧力P2にサージ圧が生じて減圧弁PVの開度の変化に乱れが生じてしまう。
【0061】
一方、実施形態の水素供給装置では、0[%]を基準とする減圧弁PVの開度の変位量を抑えることができるため、減圧弁PVの応答遅れにより圧力P2に生じるサージ圧を抑えて減圧弁PVの開度の変化の乱れを抑えることができる。
【0062】
なお、本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0063】
<変形例>
図7は、インジェクタINJの動作制御時の制御部2の動作の他の例を示すフローチャートである。なお、
図7に示すステップS11~S18は、
図2に示すステップS11~S18と同様であるため、その説明を省略する。
【0064】
制御部2は、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから所定時間T3が経過していない場合(ステップS19:No)、ステップS13~S17を実行した後、圧力P1が目標圧力Pt以上になったか否かを判断する(ステップS17)。
【0065】
一方、制御部2は、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから所定時間T3が経過すると(ステップS19:Yes)、圧力P1が目標圧力Pt以上になったか否かを判断する(ステップS17)。
【0066】
なお、所定時間T3は、所定時間T1及び所定時間T2より長い任意の時間とする。
【0067】
すなわち、制御部2は、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから目標圧力Pt以上になるまでの間において、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから所定時間T3が経過することでタイムアウトすると、圧力P2が所定圧力Pth2と所定圧力Pth3との間で変動するようにインジェクタINJを動作させることを実行せず、圧力P1が目標圧力Pt以上になるまでインジェクタINJを連続して作動させる。
【0068】
これにより、インジェクタINJ、減圧弁PV、または制御部2の不具合により、圧力P1の単位時間あたりの増加幅が比較的小さくなってしまっても、圧力P1が所定圧力Pth1以下になってから目標圧力Pt以上になるまでにかかる時間が比較的長くなることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 燃料電池システム
2 制御部
ACP エアコンプレッサ
B 蓄電装置
CNV DCDCコンバータ
FC 燃料電池
HT 水素タンク
INJ インジェクタ
Lo 負荷
Sp1、Sp2 圧力センサ