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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189557
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】軟弱岩盤評価方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/04 20060101AFI20221215BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
E02D1/04
G01N3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098203
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】田屋 裕司
(72)【発明者】
【氏名】濱田 純次
【テーマコード(参考)】
2D043
2G061
【Fターム(参考)】
2D043AC01
2D043BA07
2D043BB09
2G061AA02
2G061AA11
2G061AB03
2G061BA04
2G061CA06
2G061CB02
2G061EA01
2G061EA03
2G061EC02
(57)【要約】
【課題】オールコアボーリングによって軟弱岩盤から採取したボーリングコアを用いて、軟弱岩盤の粘着力及び内部摩擦角を求める。
【解決手段】軟弱岩盤評価方法は、岩盤を掘削し、硬質部の周りに軟質層を備えた円柱状のボーリングコアを採取する工程と、前記ボーリングコアを切断し端面が平坦な円柱状の供試体を形成する工程と、一面せん断試験によって端面から供試体にせん断力を掛けて測定したせん断破壊荷重、供試体の直径、軟質層の厚さ及び供試体の長さから、硬質部の粘着力cを算定する工程と、一軸圧縮試験によって端面から供試体に圧縮力を掛けて測定した圧縮破壊荷重、供試体の直径、軟質層の厚さ及び供試体の長さから、硬質部の一軸圧縮強度を算定する工程と、粘着力及び一軸圧縮強度から、硬質部の内部摩擦角φを算定する工程と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤を掘削し、硬質部の周りに軟質層を備えた円柱状のボーリングコアを採取する工程と、
前記ボーリングコアを切断し端面が平坦な円柱状の供試体を形成する工程と、
一面せん断試験によって前記端面から前記供試体にせん断力を掛けて測定したせん断破壊荷重、前記供試体の直径、前記軟質層の厚さ及び前記供試体の長さから、前記硬質部の粘着力を算定する工程と、
一軸圧縮試験によって前記端面から供試体に圧縮力を掛けて測定した圧縮破壊荷重、前記供試体の直径、前記軟質層の厚さ及び前記供試体の長さから、前記硬質部の一軸圧縮強度を算定する工程と、
前記粘着力及び前記一軸圧縮強度から、前記硬質部の内部摩擦角を算定する工程と、
を備えた軟弱岩盤評価方法。
【請求項2】
前記供試体に生じる垂直応力を横軸とし、せん断応力を縦軸とする座標系に、
前記一軸圧縮強度を示す応力円を描画し、
前記粘着力を示す点を描画し、
前記粘着力を示す点から前記応力円に接線を描画し、
前記接線の傾きから、前記岩盤の内部摩擦角を算出する、請求項1に記載の軟弱岩盤評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱岩盤評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ボーリングによって採取した土質試料から複数個の供試体を作成する土質試験用供試体作製方法が示されている。この方法によって作成された供試体には三軸圧縮試験を実施し、拘束応力と圧縮応力とを測定して、モールの応力円を作成する。そして、複数のモールの応力円に共通する接線を定めることにより、土質強度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-91124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、D級岩盤のような軟弱岩盤を掘削してボーリングコアを採取すると、ボーリングコアビット及び掘削水との摩擦により、ボーリングコアの周面には、大きな乱れが生じて軟質層が形成される。これは岩盤等級等の判断のために最初に行われるオールコアボーリングで顕著である。
【0005】
上記特許文献1に記載されたような三軸圧縮試験では、一般的に、ボーリングコアを円筒容器に入れた状態で水圧を作用させ、岩盤の粘着力及び内部摩擦角を求める。しかしながら、上記のような軟弱岩盤のボーリングコアを試験する場合、軟質な部分と硬質な部分が合成された強度を測定して、岩盤の粘着力及び内部摩擦角を求めることになる。このため、本来の軟弱岩盤の粘着力及び内部摩擦角を正確に求めることは難しい。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、オールコアボーリングによって軟弱岩盤から採取したボーリングコアを用いて、軟弱岩盤の粘着力及び内部摩擦角を求めることができる岩盤評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の軟弱岩盤評価方法は、岩盤を掘削し、硬質部の周りに軟質層を備えた円柱状のボーリングコアを採取する工程と、前記ボーリングコアを切断し端面が平坦な円柱状の供試体を形成する工程と、一面せん断試験によって前記端面から前記供試体にせん断力を掛けて測定したせん断破壊荷重、前記供試体の直径、前記軟質層の厚さ及び前記供試体の長さから、前記硬質部の粘着力を算定する工程と、一軸圧縮試験によって前記端面から供試体に圧縮力を掛けて測定した圧縮破壊荷重、前記供試体の直径、前記軟質層の厚さ及び前記供試体の長さから、前記硬質部の一軸圧縮強度を算定する工程と、前記粘着力及び前記一軸圧縮強度から、前記硬質部の内部摩擦角を算定する工程と、を備える。
【0008】
請求項1の軟弱岩盤評価方法では、軟弱岩盤から、硬質部の周りに軟質層を備えたボーリングコアを採取する。そして、採取したボーリングコアを切断して端面が平坦な円柱状の供試体を形成する。このため、供試体の端面には硬質部が露出する。そして、この供試体に、一面せん断試験及び一軸圧縮試験を実施する。
【0009】
粘着力を測定する一面せん断試験では、供試体の端面からせん断力を掛けるため、軟質層の影響を受けずに、硬質部へせん断力を作用させられる。また、一軸圧縮強度を測定する一軸圧縮試験では、供試体の端面から圧縮力を掛けるため、軟質層の影響を受けずに、硬質部へ圧縮力を作用させられる。これにより、軟質層の影響を除外した、硬質部のみの粘着力及び一軸圧縮強度を測定できる。
【0010】
また、この軟弱岩盤評価方法では、測定された粘着力及び一軸圧縮強度から、硬質部の内部摩擦角を算出する。すなわち、軟弱岩盤から採取したボーリングコアを用いて、軟弱岩盤の粘着力及び内部摩擦角を求めることができる。
【0011】
請求項2の軟弱岩盤評価方法は、請求項1に記載の軟弱岩盤評価方法において、前記供試体に生じる垂直応力を横軸とし、せん断応力を縦軸とする座標系に、前記一軸圧縮強度を示す応力円を描画し、前記粘着力を示す点を描画し、前記粘着力を示す点から前記応力円に接線を描画し、前記接線の傾きから、前記岩盤の内部摩擦角を算出する。
【0012】
請求項2の岩盤評価方法では、供試体に生じる垂直応力を横軸とし、せん断応力を縦軸とする座標系に描いた一軸圧縮強度を示す応力円と、粘着力を示す点と、粘着力を示す点を通る応力円の接線と、から、幾何学的に岩盤の内部摩擦角を算出することができる。このため、内部摩擦角の算出が容易である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、オールコアボーリングによって軟弱岩盤から採取したボーリングコアを用いて、軟弱岩盤の粘着力及び内部摩擦角を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)は本発明の実施形態に係る軟弱岩盤評価方法を実施する供試体を示す断面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図であり、(C)はボーリングコアを切断して供試体を形成した状態を示す側面図である。
図2】(A)は供試体の外周面に定規としての縫い針を押し当てようとしている状態を示す断面図であり、(B)は縫い針を軟質層へ貫入させている状態を示す断面図である。
図3】(A)は供試体に一面せん断試験を実施している状態を示す断面図であり、(B)は供試体に一軸圧縮試験を実施している状態を示す断面図である。
図4】供試体に生じる垂直応力を横軸とし、せん断応力を縦軸とする座標系に、一面せん断試験及び一軸圧縮試験の試験結果を描画したグラフである。
図5】(A)は、供試体に比較例である圧裂引張試験を実施している状態を示す断面図であり、(B)は軟質層が形成されていない供試体に圧裂引張試験を実施した場合の試験結果を描画したグラフである。
図6】(A)は、供試体に比較例である一面せん断試験を実施している状態を示す断面図であり、(B)は軟質層が形成されていない供試体に一面せん断試験を実施した場合の試験結果を描画したグラフである。
図7】(A)は、供試体に比較例である三軸圧縮試験を実施している状態を示す断面図であり、(B)は軟質層が形成されていない供試体に三軸圧縮試験を実施した場合の試験結果を描画したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る軟弱岩盤評価方法について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0016】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0017】
図1及び2において矢印X、Yで示す方向は後述する供試体20の端面に沿う方向であり、互いに直交している。また、図1、2及び3において矢印Zで示す方向は供試体20の軸方向に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0018】
<軟弱岩盤評価方法>
オールコアボーリングによってD級岩盤などの軟弱岩盤を掘削してボーリングコアを採取すると、ボーリングコアビット及び掘削水との摩擦により、ボーリングコアの周面には、大きな乱れが生じて軟質層が形成される。このような軟質層は、本来のD級岩盤より強度が弱い。
【0019】
このため、通常、D級岩盤の粘着力及び内部摩擦角を求めるために、オールコアボーリングによって採取されたボーリングコアを用いることは、実施されていない。
【0020】
本発明の実施形態に係る軟弱岩盤評価方法は、D級岩盤などの軟弱岩盤をオールコアボーリングによって採取し、採取されたボーリングコアを用いて、軟弱岩盤の粘着力及び内部摩擦角を求める方法である。
【0021】
(供試体)
図1(A)、(B)には、軟弱岩盤評価に用いられる供試体20が示されている。供試体20は、軟弱岩盤を掘削して採取された円柱状のボーリングコア10を、図1(C)に示すように、ボーリングコア10の軸方向と交わる方向に切断して形成された試験体である。ボーリングコア10の切断には、電動カッター等が用いられる。
【0022】
図1(A)、(B)に示すように、供試体20は、硬質部22と軟質層24とを備えている。硬質部22は、採取された軟弱岩盤の本来の強度を備えた部分である。軟質層24は、ボーリングコアビット及び掘削水との摩擦によりボーリングコアの周面が乱されて形成された部分である。軟質層24は、硬質部22より例えば人工的な風化が進行し、また、水分を多く含んでいる。
【0023】
供試体20は、ボーリングコア10を切断して形成されているため、供試体20の上下の端面には、硬質部22が露出している。すなわち、軟質層24は、円柱状の硬質部22の径方向の外側を取り囲んで形成されている一方、軟質層24は、円柱状の硬質部22の軸方向の端面には形成されていない。
【0024】
なお、硬質部22における「硬質」とは、軟質層24と比較して硬質であることを示しており、岩盤自体の硬度や強度を示すものではない。
【0025】
(軟質層の厚みの測定)
軟質層24の厚み(供試体20の径方向に沿う寸法)は、図2(A)、(B)に示すように、定規としての縫い針30を供試体20の外周面に垂直に押し当てて、供試体20の内部へ貫入させることで測定する。
【0026】
定規として縫い針30を用いる場合は、糸通し32の部分を供試体20の内部へ貫入させる。糸通しの部分は、針の先端と比較して尖鋭ではないため、軟質層24へ貫入する一方、硬質部22へ貫入し難い。このため、縫い針30を供試体20の外周面へ押し付けて、貫入が止まったときの貫入深さを、軟質層24の厚みと判断できる。なお、貫入深さを計測するため、縫い針30の外周面には、5[mm]程度毎に目盛りを形成しておくことが好適である。目盛りの間隔は、1[mm]程度毎でもよい。
【0027】
定規としては、必ずしも縫い針を用いる必要はなく、所定の力で供試体20の外周面へ押し付けた際に、軟質層24に貫入し、硬質部22へ貫入しない針状のものであれば、どのようなものを用いてもよい。
【0028】
なお、所定の力で定規が硬質部22へ貫入しないことは、供試体20の軸方向の端面に露出した硬質部22へ定規を押し付けて確認することができる。「所定の力」とは、手指で載荷可能な程度の力である。
【0029】
軟質層24の厚みは、供試体20の軸方向の複数箇所、例えば3~4箇所において測定することが好ましい。そして、これらの測定値の平均値を、図1(A)、(B)に示す軟質層24の厚みd[m]とする。
【0030】
(一面せん断試験)
供試体20には、図3(A)に示すように、一面せん断試験を実施する。一面せん断試験は、一面せん断試験用型枠40に供試体20をはめ込み、水平荷重を掛けて実施する。
【0031】
一面せん断試験用型枠40は、下枠42及び上枠44を備えている。下枠42は、供試体20の外周面を覆う被覆部42Aと、供試体20の一方の端面が接する押し当て部42Bと、を含んで構成されている。押し当て部42Bは、供試体20の一方の端面の下半分と接する。また、押し当て部42Bは、供試体20における硬質部22と接する。
【0032】
上枠44は、供試体20の外周面を覆う保持部44Aと、供試体20の他方の端面が接する押し当て部44Bと、を含んで構成されている。押し当て部44Bは、供試体20の他方の端面の上半分と接する。また、押し当て部44Bは、供試体20における硬質部22と接する。
【0033】
上枠44は、下枠42に対して、供試体20の軸方向(Z方向)に沿って相対移動可能とされている。上枠44の押し当て部44Bに、下枠42の押し当て部42Bを固定した状態で水平荷重が作用すると、供試体20には、水平荷重が、軸方向に沿うせん断力として作用する。
【0034】
ここで、供試体20の直径をD[m]、軸方向の長さをL[m]、軟質層24の厚みを上述した値を用いて厚みd[m]、せん断破壊荷重(供試体20の破壊時に作用させた荷重)をP[kN]とすると、硬質部22の粘着力c[kN/m2]は、次の(1)式で近似される。
【0035】
c=P/[(D-2×d)×L] ・・・(1)
【0036】
この(1)式を導出するにあたって、軟質層24に生じる応力は、硬質部22に生じる応力と比較して無視できる程度に小さく、軟質層24に作用する荷重も、硬質部22に作用する荷重と比較して無視できる程度に小さい。なお、一例として、供試体20の直径Dは0.05[m]、軸方向の長さLは0.1[m]等とすることができる。
【0037】
(一軸圧縮試験)
また、供試体20には、図3(B)に示すように、一軸圧縮試験を実施する。一軸圧縮試験は、加圧盤50によって、供試体20へ、軸方向に沿う鉛直荷重を掛けて実施する。
【0038】
供試体20の直径をD[m]、軟質層24の厚みを上述した値を用いて厚みd[m]、圧縮破壊荷重(供試体20の破壊時に作用させた荷重)をP[kN]とすると、硬質部22の一軸圧縮強度S[kN/m2]は、次の(2)式で近似される。
【0039】
=P/[{(D/2)-d}×π] ・・・(2)
【0040】
なお、一軸圧縮試験を実施する場合、軸方向の長さL[m]は、直径D[m]の2倍の大きさとする。この(2)式を導出するにあたって、軟質層24は変形係数が小さく比較的自由に変形できる。このため、軟質層24に作用する荷重は、硬質部22に作用する荷重と比較して無視できる程度に小さい。
【0041】
(応力状態)
図4には、供試体20に生じる垂直応力σ[kN/m2]を横軸とし、せん断応力τ[kN/m2]を縦軸とする座標系が示されている。上述した一面せん断試験においては、供試体20に生じる垂直応力は0[kN/m2]であり、せん断応力は(1)式で算出された粘着力c[kN/m2]となる。このため、一面せん断試験の試験結果は、この座標系に点N1として描画できる。
【0042】
また、上述した一軸圧縮試験においては、供試体20に生じる周方向応力が0[kN/m2]の状態で、垂直応力が(2)式で算出されたS[kN/m2]となる。また、一軸圧縮試験においては、供試体20の外周面に拘束圧を作用させていない。
【0043】
このため、供試体20に生じる垂直応力σ[kN/m2]とせん断応力τ[kN/m2]との関係を示す応力円は、座標軸の原点Оと、横軸上の垂直応力S[kN/m2]を示す点N2とを結ぶ直線を直径とする応力円N3で示される。ここで、点N1から応力円N3へ接線N4を描画する。この接線N4の傾きは、硬質部22の内部摩擦角φを示している。
【0044】
このように、本実施形態における軟弱岩盤評価方法では、オールコアボーリングによって採取されたボーリングコア10から、供試体20を作成し、一面せん断試験及び一軸圧縮試験を実施することで、硬質部22、すなわち軟弱岩盤の粘着力c[kN/m2]及び内部摩擦角φを求めることができる。
【0045】
<作用及び効果>
以上説明したように、本発明の実施形態に係る軟弱岩盤評価方法では、軟弱岩盤から、硬質部の周りに軟質層を備えたボーリングコア10を採取する(図1(C)参照)。そして、採取したボーリングコア10を切断して、端面が平坦な円柱状の供試体20を形成する。供試体20の端面には硬質部22が露出する。そして、この供試体20に、一面せん断試験及び一軸圧縮試験を実施する。
【0046】
具体的には、粘着力c[kN/m2]を測定する一面せん断試験では、図3(A)に示すように、供試体20の端面からせん断力を掛けるため、軟質層24の影響を受けずに、硬質部22へせん断力を作用させられる。
【0047】
また、一軸圧縮強度S[kN/m2]を測定する一軸圧縮試験では、図3(B)に示すように、供試体20の端面から圧縮力を掛けるため、軟質層24の影響を受けずに、硬質部22へ圧縮力を作用させられる。
【0048】
これにより、軟質層24の影響を除外した、硬質部22のみの粘着力c[kN/m2]及び一軸圧縮強度S[kN/m2]を測定できる。
【0049】
また、この軟弱岩盤評価方法では、測定された粘着力c[kN/m2]及び一軸圧縮強度S[kN/m2]から、硬質部22の内部摩擦角φを算出する。具体的には、図4に示すように、供試体20に生じる垂直応力σ[kN/m2]を横軸とし、せん断応力τ[kN/m2]を縦軸とする座標系に描いた一軸圧縮強度を示す応力円N3と、粘着力c[kN/m2]を示す点N1と、粘着力c[kN/m2]を示す点N1を通る応力円N3の接線N4と、から、幾何学的に岩盤の内部摩擦角φを算出することができる。このため、内部摩擦角φの算出が容易である。
【0050】
このように、この軟弱岩盤評価方法では、軟弱岩盤から採取したボーリングコア10を用いて、軟弱岩盤の粘着力c[kN/m2]及び内部摩擦角φを求めることができる。
【0051】
なお、本実施形態においては、軟弱岩盤としてD級岩盤の粘着力c[kN/m2]及び内部摩擦角φを求めている。
【0052】
また、本実施形態においては、座標系に描画した粘着力c[kN/m2]を示す点N1と、粘着力c[kN/m2]を示す点N1を通る応力円N3の接線N4と、から、幾何学的に岩盤の内部摩擦角φを算出しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば応力円N3及び接線N4示す数式を用いて、計算により岩盤の内部摩擦角φを算出してもよい。
【0053】
<比較例>(比較例1)
図5(A)には、供試体20に圧裂引張試験を実施している状態が示されている。圧裂引張試験においては、加圧盤100を用いて、供試体20の端面ではなく、外周面に荷重P[kN]を掛けて押圧する。また、圧裂引張試験においては、加圧盤100と供試体20とが「線接触」した状態で加圧することで、供試体20の内部に、加圧方向と交わる方向の引張力を作用させる。
【0054】
しかしながら、供試体20の外周部には軟質層24が形成されているため、この軟質層24が変形して、加圧盤100と供試体20とが「面接触」する。このため、圧裂引張試験は適切な荷重条件で実施することが難しい。
【0055】
なお、仮に外周部に軟質層24が形成されていない供試体に圧裂引張試験を実施した場合、図5(B)に示すように、圧裂引張試験によって測定された引張強度S[kN/m2]を示す点N100から、一軸圧縮試験によって得られた円N3へ接線N102を描画する。この接線N102の傾きにより、供試体の内部摩擦角φを求めることができる。
【0056】
(比較例2)
図6(A)には、供試体20に一面せん断試験を実施している状態が示されている。この一面せん断試験においては、図3(A)を用いて説明した一面せん断試験とは異なり、水平荷重P[kN]のほか、上枠44から供試体20の外周面へ拘束圧σ[kN/m2]を掛ける。
【0057】
しかしながら、供試体20の外周部には軟質層24が形成されているため、この軟質層24が変形する。このため、供試体20の外周面には十分な拘束圧を作用させることが難しい。すなわち、この一面せん断試験は適切な荷重条件で実施することが難しい。
【0058】
なお、仮に外周部に軟質層24が形成されていない供試体に一面せん断試験を実施した場合、拘束圧σ1[kN/m2]を変えて一面せん断試験を複数回実施することにより、図6(B)に示すように、垂直応力σ[kN/m2]を横軸とし、せん断応力τ[kN/m2]を縦軸とする座標系には、複数の点(例えば点N103、N104、N105)を描画できる。
【0059】
これらの点を通る直線N106の傾きにより、供試体の内部摩擦角φを求めることができる。また、直線N106と縦軸との交点を供試体の粘着力c[kN/m2]として求めることができる。
【0060】
(比較例3)
図7(A)には、供試体20に三軸圧縮試験を実施している状態が示されている。三軸圧縮試験においては、加圧盤50によって、供試体20へ鉛直荷重P[kN]を掛けるほか、供試体20の外周面に、拘束圧σ[kN/m2]を掛ける。
【0061】
しかしながら、供試体20の外周部には軟質層24が形成されているため、硬質部22だけでなく軟質層24を含んだ強度が発現する。このため、硬質部22のみの粘着力c[kN/m2]及び内部摩擦角φを求めることができない。
【0062】
なお、仮に外周部に軟質層24が形成されていない供試体に三軸圧縮試験を実施した場合、図7(B)に示すように、供試体20に生じる垂直応力σ[kN/m2]とせん断応力τ[kN/m2]との関係を示す応力円は、横軸上の拘束圧σを示す点N107と、垂直応力S[kN/m2]を示す点108とを結ぶ直線を直径とする円N109で示される。
【0063】
そして、拘束圧σ[kN/m2]を変えて三軸圧縮試験を複数回実施することにより、複数の応力円(例えばN110、N111)を描画できる。これらの円に共通の接線N112を描画する。この接線N112の傾きにより、供試体の内部摩擦角φを求めることができる。また、直線N112と縦軸との交点を供試体の粘着力c[kN/m2]として求めることができる。
【符号の説明】
【0064】
10 ボーリングコア
20 供試体
22 硬質部
24 軟質層
N3 応力円
N4 接線
φ 内部摩擦角
c 粘着力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7