(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189567
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ガスカートリッジおよび水素炭酸水の製造装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/68 20060101AFI20221215BHJP
B01F 21/00 20220101ALI20221215BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20221215BHJP
【FI】
C02F1/68 520C
C02F1/68 510A
C02F1/68 510B
C02F1/68 520B
C02F1/68 530B
C02F1/68 530K
B01F1/00 C
B01F3/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098215
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】古谷 政博
(72)【発明者】
【氏名】水谷 大地
(72)【発明者】
【氏名】澤田 俊
(72)【発明者】
【氏名】牧平 尚久
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AA01
4G035AA06
4G035AB05
(57)【要約】
【課題】品質の安定した水素炭酸水を、取り扱いしやすい態様で提供するための手段を提供すること。
【解決手段】ガスカートリッジは、耐圧容器と、前記耐圧容器内に充填された液化ガスと、を含む。前記耐圧容器は、前記液化ガスを収容する内部空間を有するタンクと、前記タンクと前記耐圧容器の外部との間を封止する口部と、を備える。前記液化ガスは、液化炭酸ガスと、前記液化炭酸ガスの中に500wt.ppm以上4500wt.ppm以下の割合で溶存する水素と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧容器と、
前記耐圧容器内に充填された液化ガスと、
を含むガスカートリッジであって、
前記耐圧容器は、
前記液化ガスを収容する内部空間を有するタンクと、
前記タンクと前記耐圧容器の外部との間を封止する口部と、
を備え、
前記液化ガスは、
液化炭酸ガスと、
前記液化炭酸ガスの中に500wt.ppm以上4500wt.ppm以下の割合で溶存する水素と、を含む、
水素炭酸水製造のためのガスカートリッジ。
【請求項2】
前記耐圧容器内の圧力が7MPa以上11MPa以下である、請求項1に記載のガスカートリッジ。
【請求項3】
前記耐圧容器内に収容された前記液化ガスは、雰囲気温度25度において、二酸化炭素の分圧6MPaに対して、水素の分圧が1MPa以上5MPa以下である、請求項1または請求項2に記載のガスカートリッジ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガスカートリッジと、
前記ガスカートリッジの前記口部に接続するガス取り出し部と、
原料液体を収容するボトルを保持する保持部と、
を備える、水素炭酸水の製造装置であって、
前記ガス取り出し部は、
前記ガスカートリッジに充填された前記液化ガスの液相部と、前記ボトルとを連通する連通部を含む、
水素炭酸水の製造装置。
【請求項5】
前記連通部は、前記ボトルに収容された原料液体の液中に連通する、請求項4に記載の水素炭酸水の製造装置。
【請求項6】
前記連通部が、金属製または樹脂製の管状部材である、請求項4または請求項5に記載の水素炭酸水の製造装置。
【請求項7】
前記ボトルに収容された前記原料液体1Lに対する、前記液化ガスの注入量(25℃、1atmにおける、二酸化炭素と水素の混合ガスとしての体積)が3L~8Lである、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の水素炭酸水の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスカートリッジおよび水素炭酸水の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素と二酸化炭素とを含有する水が公知である。たとえば特許文献1には、水素と二酸化炭素との混合ガスを原料水にファインバブル分散処理する工程を含む、水素水の製造方法が記載されている。特許文献1の製造方法によれば、二酸化炭素を含有する水素水が製造できる。また特許文献2には、二酸化炭素を含有する水素水であって、水に対して0.2ppm~1.2ppmの水素を含有するとともに、1000ppm~3000ppmの二酸化炭素を含有するものが記載されている。
【0003】
一方で、粗製液化炭酸ガス中に、一酸化炭素、水素、窒素等が溶存することが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-188789号公報
【特許文献2】特開2019-48793号公報
【特許文献3】特開平11-209117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素と二酸化炭素とを含有する水(以下、水素炭酸水と称する)は、飲用、調理用、美容用等の用途も想定されており、業務用に限られず一般家庭での利用も想定される。このため、品質の安定した水素炭酸水を、取り扱いしやすい態様で提供できることが望まれる。本開示に係る発明の目的の1つは、品質の安定した水素炭酸水を、取り扱いしやすい態様で提供するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかるガスカートリッジは、耐圧容器と、前記耐圧容器内に充填された液化ガスと、を含む。前記耐圧容器は、前記液化ガスを収容する内部空間を有するタンクと、前記タンクと前記耐圧容器の外部との間を封止する口部と、を備える。前記液化ガスは、液化炭酸ガスと、前記液化炭酸ガスの中に500wt.ppm以上4500wt.ppm以下の割合で溶存する水素とを含む。
【発明の効果】
【0007】
上記本開示のガスカートリッジによれば、品質の安定した水素炭酸水を、取り扱いしやすい態様で提供するための手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示にかかるガスカートリッジの模式図である。
【
図2】
図2は、本開示にかかる水素炭酸水の製造装置の模式図である。
【
図3】
図3は、ガスカートリッジの製造工程を示す模式図である。
【
図4】
図4は、水素含有液化炭酸ガスの製造試験に用いた装置の模式図である。
【
図5】
図5は、液化炭酸ガスに対する充填時の水素ガス分圧(MPa)と、水素含有液化炭酸ガスを取り出して気化させた後の水素濃度(%)との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、ガスカートリッジの液相から取り出した水素・二酸化炭素混合ガスにおける水素濃度(%)の経時変化を示すグラフである。
【
図7】
図7は、ガスカートリッジの気相から取り出した水素・二酸化炭素混合ガスにおける水素濃度(%)の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
本開示のガスカートリッジは、耐圧容器と、前記耐圧容器内に充填された液化ガスと、を含む。前記耐圧容器は、前記液化ガスを収容する内部空間を有するタンクと、前記タンクと前記耐圧容器の外部との間を封止する口部と、を備える。前記液化ガスは、液化炭酸ガスと、前記液化炭酸ガスの中に500wt.ppm以上4500wt.ppm以下の割合で溶存する水素と、を含む。
なお、本明細書において「ガスカートリッジ」とは、水素炭酸水の製造装置に対して取り換え可能である、内部にガスが収容されるガス供給容器を意味する。本明細書でいう「ガスカートリッジ」は、市場においてカートリッジと称されるものに限定されず、シリンダーと称されるガス供給容器も含む。
【0010】
従来、水素炭酸水の製造において、水素容器と二酸化炭素容器とが別々に備えられており、それらの容器から供給された水素ガスと二酸化炭素ガスとをミキサで混合した上で、原料水に注入することが公知である(たとえば特許文献1、特許文献2)。しかしながら、水素容器と二酸化炭素容器とを別々に備え、さらにミキサ等を含む複雑な装置を一般家庭に設置し、使用することは現実的ではない。また、二酸化炭素と水素を気体の状態で混合した混合ガスは体積が大きく、コンパクトな形態で供給できないため、取り扱い性に劣る。
【0011】
そこで発明者らは、水素と二酸化炭素とが1つの容器に収容されたガスカートリッジを作り出すことを構想した。ここで、水素を含む液化炭酸ガスは公知である(たとえば特許文献3)。しかしながら、特許文献3に開示された液化ガスは、液化炭酸ガス中に不純物としての水素等を含むものである。特許文献3の発明では、液化炭酸ガス中に含有される水素は、液化炭酸ガス中で水に変換されて除去される。特許文献3では、水素が溶解した液化炭酸ガスを継続的に安定して取り出すことについては何ら検討されていない。
【0012】
発明者らは前記の構想に基づいて検討を進め、安定した品質の水素炭酸水を提供するためには、1つの容器から継続的に水素および二酸化炭素を取り出す場合であっても、水素と二酸化炭素との割合が一定の範囲に維持されねばならないという課題を見出した。そして、さらなる検討の結果、前記のガスカートリッジによれば、この課題を解決できることを見出した。
【0013】
本開示のガスカートリッジによれば、1つのガスカートリッジから継続的に内容物を取り出す場合であっても水素と二酸化炭素との含有割合が安定した、水素・二酸化炭素混合ガスを得ることができる。このため、取り扱いが容易で、例えば一般家庭における専門知識を持たないユーザであっても、簡単に水素炭酸水を作ることができる。また、水素を含有する液化炭酸ガスを収容するカートリッジが提供されるため、コンパクトで取り扱い性に優れる。
【0014】
前記のガスカートリッジにおいて、前記耐圧容器内の圧力が7MPa以上11MPa以下であるものとできる。タンク内の圧力がこの範囲であれば、水素炭酸水としての効果を得られる量の水素を、液化炭酸ガス中に安定して含有させることができる。
【0015】
前記のガスカートリッジにおいて、雰囲気温度25度において、二酸化炭素の分圧6MPaに対して、水素の分圧が1MPa以上5MPa以下であるものとできる。この範囲であれば、水素炭酸水としての効果を得られる量の水素を、液化炭酸ガス中に安定して含有させることができる。なお、この時、ガスカートリッジに収容された二酸化炭素の一部は液化しており、カートリッジ中では炭酸ガス(気体)と液化二酸化炭素(液体)の両方が存在している。
【0016】
本開示にかかる水素炭酸水の製造装置は、前記のガスカートリッジと、前記ガスカートリッジの前記口部に接続するガス取り出し部と、原料液体を収容するボトルを保持する保持部と、を備える。前記ガス取り出し部は、前記ガスカートリッジに充填された前記液化ガスの液相部と、前記ガスカートリッジの外部とを連通する連通部を含むものであってよい。水素が溶解した液化炭酸ガスの液相部からガスを取り出すことによって、継続的に、水素濃度が安定した水素炭酸水を得ることができる。
【0017】
前記製造装置において、前記連通部は、前記ボトルに収容された原料液体の液中に連通するものとできる。原料液体の液中に水素含有液化炭酸ガスを送入することによって、十分な量の水素を含有する炭酸水を安定に製造できる。
【0018】
前記製造装置において、前記連通部は、金属製または樹脂製の管状部材であるものとできる。この構成によれば、ガスカートリッジから常圧を超えるガスが取り出される場合であっても、安全かつ安定してガスを取り出すことができる。
【0019】
前記製造装置において、前記ボトルに収容された前記原料液体1Lに対する、前記液化ガスの注入量は3L~8Lとできる。なお、ここでいう3L~8Lとは、25℃、1atmにおいて、二酸化炭素と水素の混合ガスとして3L~8Lであることを意味している。この構成によれば、水素炭酸水としての効果が期待できるとともに、飲用に適したおいしい水素炭酸水が得られる。
【0020】
[実施の形態1]
(ガスカートリッジ)
図1は本開示にかかるガスカートリッジの概要図である。ガスカートリッジ1は、耐圧容器11と、耐圧容器内に充填された液化ガス51とを含む。耐圧容器11は、液化ガス51を収容する内部空間を有するタンク21と、タンク21と耐圧容器11の外部との間を開閉可能に封止する口部31と、を備える。
【0021】
ガスカートリッジ1に充填された液化ガス51は、液化炭酸ガス(以下、LCO2ということがある)中に水素が溶解した、水素含有LCO2である。LCO2中に溶存する水素の濃度は、500wt.ppm以上4500wt.ppm以下であるものとできる。LCO2中に溶存する水素の濃度が500wt.ppm以上であれば、水素と炭酸ガスとを含む水素炭酸水が得られ、水素炭酸水として実用的なものを得ることができる。LCO2中に溶存する水素の濃度が4500wt.ppm以下であれば、ガスカートリッジから水素ガスおよび炭酸ガスを取り出す際の、炭酸ガスに対する水素ガス濃度が約10vol.%/CO2bal.以下となり、水素濃度の高い水素炭酸水を得ることができる。
【0022】
また、LCO2中に溶存する水素の濃度は、869wt.ppm以上3596wt.ppm以下であれば好ましい。水素の濃度が869wt.ppm以上であれば、ガスカートリッジから水素ガスおよび炭酸ガスを取り出す際の、炭酸ガスに対する水素ガス濃度が約2.0vol.%/CO2bal.以上となり、水素炭酸水としての効果が得られやすくなる。水素の濃度が3596wt.ppm以下であれば、ガスカートリッジから水素ガスおよび炭酸ガスを取り出す際の、炭酸ガスに対する水素ガス濃度が約8.3vol.%/CO2bal.以下となり、安全上の問題なく取り扱うことができる、実用的なガスカートリッジが得られる。LCO2中に溶存する水素の濃度は、1068wt.ppm以上3596wt.ppm以下であればより好ましい。水素の濃度が1068wt.ppm以上であれば、ガスカートリッジから内容物(水素ガスおよび炭酸ガス)を取り出す際の炭酸ガスに対する水素ガス濃度が、2.5vol.%/CO2bal.以上となり、水素炭酸水として十分な水素濃度を有し、よりよい効果が期待できる。
【0023】
ガスカートリッジ1に収容される液化ガス51は、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)とからなることが好ましい。二酸化炭素と水素以外に、不可避的な不純物を含んでもよい。
【0024】
ガスカートリッジ1の具体的な形状は特に制限されない。一例としては、円筒形で中空のタンク21と、タンク21の長さ方向の一端に接続し、タンク21に対して小径である口部31とを含む、耐圧容器11を用いることができる。タンク21の素材は特に制限されず、アルミやステンレス等の金属や各種の合金からなるものを用いることができる。口部31は、水素炭酸水の製造装置([
図2])に固定されるように、外周面にねじ溝やリムが形成されていてもよい。口部31は樹脂や金属等の栓で封止されており、水素炭酸水の製造装置に取り付けた時に開封されるようになっていてもよい。また、カートリッジ1は、口部31に連結する、脱圧用ポート、異常時にガスを放出する安全弁等である圧力調整機構15を有する。
【0025】
ガスカートリッジ1の容量は特に制限されない。例えば、タンクの容量が5mL~1000mL程度であってよく、10mL~600mLであれば実用上より好ましい。一般家庭等での取り扱いやすさを考慮すると、100mL未満であることも好ましい。タンク内に収容される液化ガスの量は、例えば5g~800g程度(未開封時)であってよく、10g~600g程度であれば、実用上より好ましい。ガスカートリッジ1は、1回使い切りであってもよく、複数回に分けてガスを供給することが可能であってもよい。ガスカートリッジ1は、使い捨てであってもよく、液化ガスを再充填してリサイクル使用可能であってもよい。
【0026】
(水素炭酸水の製造装置)
図2は、本開示にかかる水素炭酸水の製造装置の模式図である。水素炭酸水の製造装置7は、本開示にかかるガスカートリッジ1から水素と二酸化炭素とを取り出し、原料液体に注入して水素炭酸水を作り出す装置である。製造装置7は、本体71と、ガス取出し部72と、原料液体(例えば水)を収容するボトル73を保持する保持部74と、を備える。ガス取出し部72は、連通部75を備える。連通部75は、ガスカートリッジ1に収容された液化ガス51の液相部分と、ボトル73の内部とを連通する。連通部75の先端には、ノズル76が備えられる。製造装置7は、液化ガス51の液相部分から水素含有LCO
2を取り出す構成とすることによって、1つのカートリッジから連続的にガスを取り出す場合であっても、混合ガス(水素と二酸化炭素の混合ガス)における水素濃度が安定するという効果が得られる。
【0027】
製造装置7の具体的な構成は限定されず、様々な構成でありえる。
図2の例では、口部31が鉛直下向きになるようにカートリッジ1が保持されるが、これに制限されない。例えば、カートリッジ1の口部31が上向きとなるよう保持され、連通部75がカートリッジ1の上方からカートリッジ1の内部の底面近くまで達するよう挿入される形態であってもよい。また、連通部75は、ガスカートリッジ1と一体化された第1部分と、第1部分と接続し、製造装置7に設けられた第2部分と、から構成されてもよい。
【0028】
また、製造装置7の構成は
図2の例に限定されず、原料液体を収容するタンクと、カートリッジ1から取り出された混合ガスと原料液体とが混合されるミキサと、を備えてもよい。この場合、ミキサで生成された混合ガスと原料液体の混合物(水素炭酸水)を取り出し口から取り出す構成としてもよい。原料液体は典型的には水であるが、水に限定されない。原料液体は、香料や甘味料その他の成分を含む水であってもよく、ジュースやアルコール飲料等でもよい。
【0029】
連通部75の具体的な構成は特に限定されない。例えば、液化ガス51の液相部に金属製または樹脂製の管状部材(チューブ)が挿入される形態であってもよい。また、連通部75に連続して、または連通部75の途中に、弁やニードルバルブ等の供給量調整部材が設けられていてもよい。
【0030】
(ガスカートリッジの製造方法)
図3は、本開示にかかるガスカートリッジを製造するための製造システムの一例を示す。
図3を参照して、製造システム61は、原料ガスの供給源として、液化炭酸ガスを収容する容器であるボンベ62および水素ガスを収容する容器であるボンベ63を含む。それぞれに、減圧弁81,82が備えられる。まず、減圧弁82を閉とし、減圧弁81およびバルブ121,122、123を開として、ボンベ62からLCO
2を取り出し、抽出槽64を経て混合槽65にLCO
2を導入する。混合槽65には、温度計131と圧力計132とが備えられている。LCO
2の充填量は、例えば、3.0MPa~7.0MPa程度の圧力となるようにLCO
2を充填することができる。
【0031】
ここで、原料として用いるガスは、高純度のものを用いることが好ましい。液化炭酸ガスとしては、好ましくは例えば、純度99.980vol%以上、不純物として水分0.012vol%以下のガスを用いることができる。また、水素ガスとしては、好ましくは例えば、純度99.9999vol%以上のガスを用いることができる。しかしながら、炭酸ガスおよび水素ガスは、水素炭酸水の用途に応じて変更すれば良く、これに限定されない。
【0032】
続いて、減圧弁81を閉とし、減圧弁82を開として、抽出槽64および混合槽65に導入されたLCO2中に、水素ガスをバブリングする形で充填する。図示していないが、例えば、バブリングノズルを使用することによってLCO2中に溶解する水素の量を増加させることもできる。水素ガスの充填量は、例えば3.5MPa~14.5MPa程度の圧力となるように水素ガスを充填することができる。
【0033】
続いて、減圧弁82,バルブ121,122,123を閉として、所定の圧力、温度になるまで静置する。所定の圧力、温度になったことを確認し、水素含有LCO2を得る。
【0034】
バルブ122,123を開閉し、混合槽65の液相部分から抽出槽64へと水素含有LCO2を移送する。抽出槽64をガスカートリッジに交換し、ガスカートリッジに水素含有LCO2を充填することもできる。ガスカートリッジの充填圧力は、特に制限されないが、例えば7MPa以上、11MPa以下(未使用時)とすることができる。また、二酸化炭素と水素の割合は、例えば、環境温度25度において、二酸化炭素の分圧6MPaに対して、水素の分圧を1MPa以上、5MPa以下とできる。
【0035】
(水素炭酸水の製造方法)
本開示にかかるガスカートリッジおよび製造装置を用いて水素炭酸水を製造する方法を説明する。水素炭酸水は、一般的な炭酸水を製造する方法に準じて製造できる。原料液体として水を用いる場合、常温の水を用いてもよく、0~10℃程度の水を用いることも好ましい。
【0036】
水素炭酸水の製造においては、装置に設置したボトル中の原料液体に対して、水素含有LCO2をノズルから噴射し、原料液体と混合してもよい。また、原料液体と水素含有LCO2とをミキサで混合した後に、ボトルに移送する形態であってもよい。製造装置の連通部を通じて、ガスカートリッジから取り出された水素含有LCO2が、原料液体の液中に直接注入されるようにしてもよい。取出し経路中に気化部が備えられていてもよい。気化部を備える場合、液相から取り出された水素含有LCO2が気化された上で原料液体に注入される。
【0037】
原料液体に対する水素含有LCO2の注入量は、特に制限されない。一例としてはたとえば、飲用の水素炭酸水の場合、水1Lに対して3L~8L程度の水素含有LCO2ガスを注入することができ、4L~7L程度であればより好ましい。このような量の水素含有LCO2は、例えば、容量が10mL~15mL程度である使い切りタイプのガスカートリッジに収容された形態で提供されうる。この範囲であれば、水素炭酸水としての効果が期待できるとともに、炭酸水としてのおいしさが得られる。また、美容用(例えば風呂等)の水素炭酸水の場合、200~280L程度の水に対して、30~45L程度の水素含有LCO2ガスを注入することができる。ここでいう水素含有LCO2ガスの体積は、25℃、1atmにおける、二酸化炭素と水素の混合ガスとしての体積を意味している。なお、これは、必ず25℃、1atmの条件下で注入が行われることを意味するものではない。原料液体に対する水素含有LCO2の注入は、例えば0℃~100℃である任意の温度、例えば1atm~10atmである任意の圧力で行われてよい。
【0038】
[実施例]
(試験1:水素含有LCO
2の製造および評価)
図4に示す装置を用いて、温度計、圧力計および液温測定用の温度センサが取り付けられたサイトグラス(容量30mL、型番OD120127 T-12031、耐圧硝子工業株式会社製)の下部より、LCO
2(一般グレード、イワタニファインガス社製)を6.0~6.5MPaで充填した。続いて、サイトグラス下部よりH
2(工業用グレード、イワタニファインガス社製)を1.0~3.0MPaで加圧充填した。所定の温度および圧力(温度25℃、トータル圧力7.0~9.5MPa)になるまで15分程度静置し、水素含有LCO
2を得た。一連の操作は、雰囲気温度25℃の環境下で実施した。このとき、液化炭酸ガスの中に溶存する水素の濃度は、782wt.ppm~1866wt.ppmであると計算された。
【0039】
続いて、サイトグラスの下部に取り付けたステンレス製5mL管(1/4インチステンレス管)を使用して、水素含有LCO2を5mL分離し、シリンダー(容積1000mL、Swagelok社製、試料採取用ステンレスボンベ304L-HDF4-1000)に回収した。シリンダーに回収された水素含有LCO2を、ガスクロマトグラフィー装置(型番GPA-20、Yanaco社製)を用いてガスクロマトグラフィー分析した。
【0040】
ガスクロマトグラフィー分析の結果を、
図5のグラフに示す。
図5に示されるとおり、LCO
2に対する充填時の水素ガス分圧(MPa)と、水素含有LCO
2を取り出して気化させた後の水素濃度(%)(二酸化炭素に対する水素の濃度)とは比例することが確認された。また、二酸化炭素に対してパーセントオーダーの水素ガスを含んだ水素含有炭酸ガスを供給できることが確認された。
【0041】
(試験2:水素含有LCO
2の製造および取り出しの実施例)
図4に示す装置を用いて、温度計および圧力計が取り付けられたサイトグラス(容量30mL、型番OD120127 T-12031、耐圧硝子工業株式会社製)の下部より、LCO
2(一般グレード、イワタニファインガス社製)を6.0~6.5MPaで充填した。続いて、サイトグラス下部よりH
2(工業用グレード、イワタニファインガス社製)を2.0MPaで加圧充填した。所定の温度および圧力になるまで15分程度静置し、水素含有LCO
2を得た。一連の操作は、雰囲気温度25℃の環境下で実施した。このとき、液化炭酸ガスの中に溶存する水素の濃度は、1390wt.ppmであると計算された。
【0042】
続いて、サイトグラスの下部に接続した内容積1000mLのシリンダー(Swagelok社製、試料採取用ステンレスボンベ304L-HDF4-1000)に水素含有LCO2を充填し、液相部を全て気化させた。気化させたガスを直接ガスクロマトグラフィー装置(型番GPA-20、Yanaco社製)に導入し、ガスクロマトグラフィー分析を実施した。サンプル流量は100mL/minとし、サンプル取得間隔は5分/回とした。
【0043】
結果を
図6のグラフに示す。
図6は、測定開始からの経過時間(分)と、各時間における水素濃度(%)(二酸化炭素に対する水素の濃度)を示している。
図6に示されるとおり、取り出し開始直後からシリンダー内の圧力が0MPaになる40分後まで、安定して高い水素濃度が維持されることが確認された。
【0044】
(試験3:比較例)
上記と同様の方法および条件で水素含有LCO2を得た。続いて、サイトグラスの上部に設けた減圧弁の二次側圧力を0.1MPa、流量を10mL/分としてガスクロマトグラフィー装置(試験2と同じ)にサイトグラス内の気相部を供給し、ガスクロマトグラフィー分析を実施した。その後、サイトグラス上部から気相部を流量100mL/分で5分間または10分間ブローし続けた。この操作を、サイトグラス内の全圧が0MPaになるまで繰り返し行った。
【0045】
結果を
図7のグラフに示す。
図7は測定開始からの経過時間(分)と、各時間における水素濃度(%)(二酸化炭素に対する水素の濃度)を示している。
図7に示されるとおり、取り出し開始直後の水素濃度は15%であり、時間の経過とともに低下し、終了時には1%となった。この結果から、気相部からの取り出しでは、水素を安定した濃度で供給することが難しいと考えられた。
【0046】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0047】
1 ガスカートリッジ、11 耐圧容器、15 圧力調整機構、21 タンク、31 口部、51 液化ガス、61 製造システム、62、63 ボンベ、64 抽出槽、65 混合槽、7 製造装置、71 本体、72 ガス取出し部、73 ボトル、74 保持部、75 連通部、81、82 減圧弁、121、122、123 バルブ