(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189568
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/16 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
B60N2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098217
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 拓也
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA17
3B087BB25
(57)【要約】
【課題】セクタギヤと噛合するピニオンギヤを支持するサイドフレームが大きく変形することを防止する。
【解決手段】車両に搭載されるシートのシートクッションの骨格部材であるサイドフレーム12と、回転可能にサイドフレームに支持されたピニオンギヤ64と、ピニオンギヤと噛合し、ピニオンギヤによってサイドフレームに対して相対回転させられることにより、サイドフレーム及びシートクッションを車体に対して昇降させるセクタギヤ50と、を備え、サイドフレームの中で最もセクタギヤ側に位置し且つセクタギヤの少なくとも一部と水平方向に対向する突部20が、サイドフレームの下縁部に設けられた。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるシートのシートクッションの骨格部材であるサイドフレームと、
回転可能に前記サイドフレームに支持されたピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤと噛合し、前記ピニオンギヤによって前記サイドフレームに対して相対回転させられることにより、前記サイドフレーム及び前記シートクッションを前記車両の車体に対して昇降させるセクタギヤと、
を備え、
前記サイドフレームの中で最も前記セクタギヤ側に位置し且つ前記セクタギヤの少なくとも一部と水平方向に対向する突部が、前記サイドフレームの下縁部に設けられた車両用シート装置。
【請求項2】
前記セクタギヤの前記サイドフレームに対する相対回転位置が何れの位置にあるかに拘わらず、前記突部が前記セクタギヤの少なくとも一部と水平方向に対向する請求項1に記載の車両用シート装置。
【請求項3】
前記サイドフレームの下縁部に、前記セクタギヤ側に突出する下部フランジが設けられ、
前記下部フランジの一部に、前記下部フランジの他の部位よりも前記セクタギヤ側に突出する前記突部が設けられる請求項1又は請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項4】
前記シートを該シートの幅方向に見たときに、前記突部が前記ピニオンギヤの真下に位置する請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、リフタ機構を備える車両用シート装置が開示されている。リフタ機構は、シートクッションに設けられたサイドフレームに回転可能に支持されたピニオンギヤと、ピニオンギヤと噛合するセクタギヤと、を備える。ピニオンギヤによってセクタギヤが回転させられると、シートクッションが車両床面に対して昇降する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の衝突等に起因して、ピニオンギヤが支持されたサイドフレームに大きな力が掛かったときに、サイドフレームが変形することがある。上記特許文献1は、ピニオンギヤが支持されたサイドフレームの車両の衝突等に起因する変形を抑制することに関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、セクタギヤと噛合するピニオンギヤを支持するサイドフレームが大きく変形することを防止可能な車両用シート装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両用シート装置は、車両に搭載されるシートのシートクッションの骨格部材であるサイドフレームと、回転可能に前記サイドフレームに支持されたピニオンギヤと、前記ピニオンギヤと噛合し、前記ピニオンギヤによって前記サイドフレームに対して相対回転させられることにより、前記サイドフレーム及び前記シートクッションを前記車両の車体に対して昇降させるセクタギヤと、を備え、前記サイドフレームの中で最も前記セクタギヤ側に位置し且つ前記セクタギヤの少なくとも一部と水平方向に対向する突部が、前記サイドフレームの下縁部に設けられる。
【0007】
請求項1に記載の車両用シート装置が搭載された車両に衝突等が発生すると、ピニオンギヤが回転可能に支持されたサイドフレームに大きな力が掛かることがある。この場合、サイドフレームの下縁部がセクタギヤに接近するように変形することがある。この場合、サイドフレームの下縁部に設けられた突部がセクタギヤに接触して、サイドフレームのそれ以上の変形を規制する。さらにサイドフレームの下縁部に突部を設ける場合は、サイドフレームの下縁部より上側の部位に突部を設ける場合と比べて、突部がセクタギヤに接触したときのサイドフレームの変形量が小さくなり易い。従って、請求項1に記載の車両用シート装置は、セクタギヤと噛合するピニオンギヤを支持するサイドフレームが大きく変形することを防止可能である。
【0008】
さらにサイドフレームの変形量が小さいので、ピニオンギヤのセクタギヤから離れる方向の移動量が小さくなる可能性が高い。従って、請求項1に記載の車両用シート装置は、サイドフレームが変形した場合であっても、ピニオンギヤとセクタギヤの噛合状態を維持し易い。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る車両用シート装置は、請求項1に記載の車両用シート装置において、前記セクタギヤの前記サイドフレームに対する相対回転位置が何れの位置にあるかに拘わらず、前記突部が前記セクタギヤの少なくとも一部と水平方向に対向する。
【0010】
請求項2に記載の車両用シート装置の突部は、セクタギヤのサイドフレームに対する相対回転位置が何れの位置にあるかに拘わらず、セクタギヤの少なくとも一部と水平方向に対向する。従って、請求項2に記載の車両用シート装置は、セクタギヤの回転位置に拘わらず、セクタギヤと噛合するピニオンギヤを支持するサイドフレームが大きく変形することを防止可能である。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る車両用シート装置は、請求項1又は請求項2に記載の車両用シート装置において、前記サイドフレームの下縁部に、前記セクタギヤ側に突出する下部フランジが設けられ、前記下部フランジの一部に、前記下部フランジの他の部位よりも前記セクタギヤ側に突出する前記突部が設けられる。
【0012】
請求項3に記載の車両用シート装置の突部は下部フランジの一部に設けられている。そのため、突部の機械的強度が高い。従って、請求項3に記載の車両用シート装置は、サイドフレームが大きく変形することを突部によって防止し易い。
【0013】
請求項4に記載の発明に係る車両用シート装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シート装置において、前記シートを該シートの幅方向に見たときに、前記突部が前記ピニオンギヤの真下に位置する。
【0014】
請求項4に記載の車両用シート装置の突部は、シートをシートの幅方向に見たときに、ピニオンギヤの真下に位置する。そのため、突部がセクタギヤに接触したときに、サイドフレームのピニオンギヤを支持する部位の変形量が、突部がピニオンギヤの真下に位置しない場合と比べて小さくなり易い。従って、請求項4に記載の車両用シート装置は、ピニオンギヤとセクタギヤの噛合状態をより維持し易い。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る車両用シート装置によれば、セクタギヤと噛合するピニオンギヤを支持するサイドフレームが大きく変形することが防止可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用シート装置のシートクッションの骨格部材及びリフタ機構を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示される右側のサイドフレーム及びリフタ機構の側面図である。
【
図3】
図2に示される右側のサイドフレームの後部の斜視図である。
【
図5】
図1に示される車両用シート装置が搭載された車両に衝突が発生したときの
図2のV-V矢線に沿う断面図である。
【
図6】
図1に示される車両用シート装置が搭載された車両に衝突が発生したときの
図2のIV-IV矢線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1~
図7を用いて本発明の実施形態に係る車両用シート装置10(以下、シート装置10)について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印LHは車両左右方向(車両幅方向)の左側を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示す。
【0018】
図1に示されたシート装置10は、車両(図示省略)の車室に設けられている。シート装置10は、シートクッションと、シートクッションの後端部に下端部が回転可能に接続されたシートバックと、を備える。シートクッションは、金属製の骨格部材として左右一対のサイドフレーム12、リアフレーム30及びフロントフレーム32を有する。車室の床面(車体)には左右一対の前後方向に延びるロアレール(図示省略)が固定され、各ロアレールに左右のアッパレール(図示省略)がそれぞれスライド可能に支持されている。さらにロアレール及びアッパレールには、アッパレールのロアレールに対するスライド動作を許容又は規制するスライドロック機構が設けられている。さらに左右のアッパレールの上部には、左右のベース部材(図示省略)がそれぞれ固定されている。
【0019】
図1~
図3に示されるように、右側のサイドフレーム12の後端部には、シートバックの下端部が接続される接続部14が設けられている。右側のサイドフレーム12の接続部14を除く部分の周縁部には、左側に向かって突出するフランジ16が設けられている。右側のサイドフレーム12の下縁部には、フランジ16の一部である下部フランジ18が設けられている。さらに
図3に示されるように、下部フランジ18の一部には、下部フランジ18のその他の部位よりも左側への突出量が大きい突部20が設けられている。さらに
図2に示されるように、突部20は矢印Lで示される範囲に渡って下部フランジ18に設けられている。
【0020】
右側のサイドフレーム12の接続部14より前方に位置する部位には、フランジ16より内周側に位置し且つ左側に向かって突出する膨出部22が設けられている。
図3に示されるように膨出部22の後部には、膨出部22を左右方向に貫通する貫通孔24が形成されている。
図3に示されるように、右側のサイドフレーム12の後端部には接続孔26が形成されている。
図1に示されるように、右側のサイドフレーム12の前端部には接続孔28が形成されている。
図3及び
図4に示されるように、突部20は膨出部22より左側に突出する。突部20は、右側のサイドフレーム12の中で最も左側(セクタギヤ50側)に位置する。突部20の膨出部22より左側に突出する部位の左右寸法はPAである(
図4参照)。突部20は、右側のサイドフレーム12の中で左側への突出量が最も大きい部位である。
【0021】
左側のサイドフレーム12の構成は右側のサイドフレーム12と実質的に同一である。但し、左側のサイドフレーム12は、突部20及び貫通孔24を具備しない。
【0022】
左右のサイドフレーム12の接続孔26にはリアフレーム30の両端近傍部が挿入されている。リアフレーム30はサイドフレーム12に対して自身の軸線まわりに相対回転可能である。さらにリアフレーム30はサイドフレーム12に対して、リアフレーム30の軸線方向に相対移動不能である。
【0023】
左右のサイドフレーム12の接続孔28にはフロントフレーム32の両端近傍部が挿入されている。フロントフレーム32の両端近傍部は、左右のサイドフレーム12に固定されている。
【0024】
シート装置10はリフタ機構40を備える。リフタ機構40は、リアリンク42、フロントリンク44、セクタギヤ50、駆動ユニット60、リテーナブラケット68、ボルト72、ナット74、及び固定部材76を有する。
【0025】
図1に示されるように、リアフレーム30の左端部近傍にはリアリンク42の上端部が固定されている。リアリンク42は左側のサイドフレーム12より右側に位置する。フロントフレーム32の両端部近傍には、左右のフロントリンク44の上端部がそれぞれ回転可能に支持されている。左右のフロントリンク44は、左右のサイドフレーム12の間に位置する。リアリンク42の下端部及び左右のフロントリンク44の下端部はサイドフレーム12の下部フランジ18より下方に位置する。
【0026】
リアフレーム30の右端部近傍には金属製のセクタギヤ50が固定されている。セクタギヤ50は、貫通孔52、リンク部54、及びギヤ部56を有する。さらにセクタギヤ50には円弧孔58が貫通孔として形成されている。リアフレーム30が貫通孔52を貫通しており、貫通孔52の周縁部がリアフレーム30に固定されている。ギヤ部56及び円弧孔58は、貫通孔52を中心とする円弧形状である。リンク部54の下端部はサイドフレーム12の下部フランジ18より下方に位置する。右側のフロントリンク44の下端部及びリンク部54の下端部は、右側のベース部材に左右方向に延びる回転軸まわりに回転可能に接続されている。左側のフロントリンク44の下端部及びリアリンク42の下端部は、左側のベース部材に左右方向に延びる回転軸まわりに回転可能に接続されている。
【0027】
図4及び
図5に示されるように、駆動ユニット60は、本体部62及び金属製のピニオンギヤ64を有する。ピニオンギヤ64の軸線は左右方向に延びている。ピニオンギヤ64は本体部62に対して自身の軸線まわりに相対回転可能である。ピニオンギヤ64は、その左端部である先端部64Aと、先端部64Aに隣接し且つ先端部64Aより大径のギヤ部64Bと、を有する。
図4に示されるように、駆動ユニット60は右側のサイドフレーム12に支持されている。より詳細には、本体部62が膨出部22の右側面に固定され、ピニオンギヤ64の先端部64A及びギヤ部64Bが貫通孔24を貫通して膨出部22より左側に位置する。
図2に示されるように、側面視において右側のサイドフレーム12の下部フランジ18はピニオンギヤ64より下方に位置する。さらに
図2に示されるように、側面視において突部20がピニオンギヤ64の真下に位置する。さらに駆動ユニット60には、右側のサイドフレーム12より右側に位置する操作ハンドル(図示省略)が接続される。
【0028】
操作ハンドルを上方へ回転させると、ピニオンギヤ64が正方向へ回転し、ピニオンギヤ64と噛合するセクタギヤ50が
図2の反時計方向に回転する。これにより側面視におけるリンク部54のサイドフレーム12の下部フランジ18より下方への突出量が増大する。操作ハンドルを上限位置まで回転させると、リンク部54は
図2に符号54Uで示された第1回転位置まで回転する。操作ハンドルを下方へ回転させると、ピニオンギヤ64が逆方向へ回転し、ピニオンギヤ64と噛合するセクタギヤ50が
図2の時計方向に回転する。これにより側面視におけるリンク部54のサイドフレーム12の下部フランジ18より下方への突出量が減少する。操作ハンドルを下限位置まで回転させると、リンク部54は
図2に符号54Dで示された第2回転位置まで回転する。
図2に示されるように、リンク部54が第1回転位置と第2回転位置との間の何れの位置に位置するときも、右側のサイドフレーム12の突部20はセクタギヤ50の少なくとも一部と左右方向(水平方向)に対向する。
【0029】
右側のサイドフレーム12の膨出部22の左側には、金属製のリテーナブラケット68が位置する。リテーナブラケット68の前端部は膨出部22の左側面に接触している。リテーナブラケット68の前端部は、膨出部22を貫通する2本のボルト72及び各ボルト72の左端部に螺合された2つのナット74によって、膨出部22に固定されている。平面視においてリテーナブラケット68の後端部は前部より左側に位置する。そのためリテーナブラケット68の後端部は膨出部22の左側面から左側に離れる。リテーナブラケット68の後端部には、左右方向に延びる固定部材76の左端部が固定されている。固定部材76はセクタギヤ50の円弧孔58を貫通している。さらに固定部材76の右端部が膨出部22の後端部に固定されている。即ち、セクタギヤ50のギヤ部56を含む一部は、右側のサイドフレーム12の膨出部22とリテーナブラケット68との間に位置する。さらに
図4及び
図6に示されるように、リテーナブラケット68に形成された貫通孔68Aをピニオンギヤ64の先端部64Aが貫通する。さらにリテーナブラケット68の後端近傍部に、右側に突出する膨出部68Bが形成されている。
【0030】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0031】
例えばセクタギヤ50のリンク部54が
図2の実線で示される位置にある場合に操作ハンドルによってリンク部54を上記第2回転位置(54D)まで回転させると、リアフレーム30に固定されたリアリンク42が時計方向に回転する。さらにフロントフレーム32に固定された左右のフロントリンク44も時計方向に回転する。そのため左右のサイドフレーム12及びシートクッションが左右のベース部材に対して下方へ相対移動する。操作ハンドルを下限位置まで回転させると、左右のサイドフレーム12及びシートクッションが左右のベース部材に対して最も接近する下端位置まで移動する。
【0032】
また、例えばセクタギヤ50のリンク部54が
図2の実線で示される位置にある場合に操作ハンドルによってリンク部54を上記第1回転位置(54U)まで回転させると、リアフレーム30に固定されたリアリンク42が反時計方向に回転する。さらにフロントフレーム32に固定された左右のフロントリンク44も反時計方向に回転する。そのためシートクッションが左右のベース部材に対して上方へ相対移動する。操作ハンドルを上限位置まで回転させると、シートクッションが左右のベース部材から最も離れる上端位置まで移動する。
【0033】
ところでシート装置10を搭載した車両の後部に別の車両が後方から衝突すると、この衝突に起因してシート装置10に着座した乗員がシートバックに対して後ろ向きの外力を付与し、この外力がシートバックから右側のサイドフレーム12に伝わることがある。右側のサイドフレーム12の後端部はリアフレーム30を介して左側のサイドフレーム12に連結されている。そのため、このとき右側のサイドフレーム12の後端部は殆ど変形しない。その一方で、右側のサイドフレーム12のリアフレーム30より前方に位置する部位は、シートバックから伝わる上記外力によって変形し易い。例えば、
図5及び
図6に示されるように、この外力によって右側のサイドフレーム12が上下方向に対して側方に傾くように変形することがある。即ち、サイドフレーム12の下部フランジ18がセクタギヤ50に接近し且つサイドフレーム12の上縁部が右側へ移動するようにサイドフレーム12が変形することがある。このときサイドフレーム12に支持された駆動ユニット60並びにボルト72、ナット74及び固定部材76によって膨出部22に固定されたリテーナブラケット68は、サイドフレーム12と一緒に側方に傾く。
【0034】
このとき
図5に示されるように側方に傾いた膨出部68Bの上縁部が左側からセクタギヤ50に接触する。従って、セクタギヤ50の右側のサイドフレーム12及び駆動ユニット60に対する左側への相対移動が膨出部68Bによって規制される。
【0035】
さらに
図6に示されるように、右側のサイドフレーム12が側方に角度θだけ傾いたときに、サイドフレーム12の突部20が右側からセクタギヤ50のリンク部54に接触する。従って、右側のサイドフレーム12のそれ以上の変形(傾き)が規制される。この角度θは小さい角度である。即ち、右側のサイドフレーム12の変形(傾き)は小さい量で規制される。さらに突部20は下部フランジ18に設けられているため、突部20の機械的強度が高い。そのため、突部20の機械的強度が低い場合と比べて、突部20はセクタギヤ50のリンク部54に接触したときにサイドフレーム12の変形を確実に規制できる。そのため本実施形態のシート装置10は、車両に衝突等が発生したときに、セクタギヤ50と噛合するピニオンギヤ64を支持する右側のサイドフレーム12が大きく変形することを防止可能である。
【0036】
図7は本発明の比較例である。この比較例では右側のサイドフレーム12の膨出部22の左側面に、膨出部22から左側へ左右寸法PAだけ突出する突部20Aが設けられている。この場合に車両に衝突が発生すると、右側のサイドフレーム12が側方に角度θ1だけ傾いたときに、サイドフレーム12の突部20Aが右側からセクタギヤ50のリンク部54に接触する。
【0037】
図6及び
図7から明らかなように、角度θは角度θ1より小さい。即ち、突部20がサイドフレーム12の下縁部に設けられた場合は、突部20Aがサイドフレーム12の下縁部より上側に設けられた場合と比べて、サイドフレーム12の変形量を小さく抑えることが可能である。換言すると、突部20がサイドフレーム12の下縁部に設けられた場合は、突部20Aがサイドフレーム12の下縁部より上方に設けられた場合と比べて、ピニオンギヤ64(ギヤ部64B)のセクタギヤ50(ギヤ部56)から離れる方向の移動量が小さくなる可能性が高い。さらにシートをシートの幅方向に見たときに、突部20がピニオンギヤ64の真下に位置する。そのため、突部20がセクタギヤ50に接触したときのサイドフレーム12のピニオンギヤ64が設けられた部位及びその周辺部の変形量は、突部20がピニオンギヤ64の真下に位置しない場合と比べて小さくなり易い。換言すると、突部20がピニオンギヤ64の真下に位置しない場合と比べて、ピニオンギヤ64のセクタギヤ50から離れる方向の移動量が小さくなり易い。従って、車両に衝突等が発生したときに、サイドフレーム12に支持されたピニオンギヤ64のギヤ部64Bとセクタギヤ50のギヤ部56との噛合状態が維持される可能性が高い。
【0038】
さらに突部20はサイドフレーム12に設けられている。従って、本実施形態のシート装置10は、セクタギヤ50より右側に位置するサイドフレーム12とは別の部材(図示省略)に突部20を設ける場合と比べて、部品点数が少ない。
【0039】
さらにリンク部54が第1回転位置と第2回転位置との間の何れの位置に位置するときも、サイドフレーム12の突部20はセクタギヤ50の少なくとも一部と左右方向(水平方向)に対向する。従って、本実施形態のシート装置10は、セクタギヤ50の回転位置に拘わらず、セクタギヤ50と噛合するピニオンギヤ64を支持する右側のサイドフレーム12が大きく変形することを防止可能である。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0041】
例えば、突部20を
図2の矢印L1で示される範囲に渡ってサイドフレーム12に形成してもよい。この場合は、第2回転位置に位置するリンク部54の前端より突部20の前端が前方に位置し且つ第1回転位置に位置するリンク部54の後端より突部20の後端が後方に位置する。換言すると、リンク部54が第1回転位置と第2回転位置との間の何れの位置に位置するときも、突部20がセクタギヤ50と左右方向に対向し且つ下部フランジ18の突部20以外の部位がセクタギヤ50と左右方向に対向しない。この変形例によれば、上記実施形態と比べて、右側のサイドフレーム12が大きく変形することをより防止し易くなる。
【0042】
左側のサイドフレーム12に、右側に向かって突出する突部20を設けてもよい。この場合は、左側のサイドフレーム12に駆動ユニット60を設け、且つ、リアフレーム30の左端部にギヤ部64Bと噛合するセクタギヤ50を固定する。
【符号の説明】
【0043】
10 車両用シート装置(シート装置)
12 サイドフレーム
18 下部フランジ
20 突部
50 セクタギヤ
64 ピニオンギヤ