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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189569
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】絞り弁装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/10 20060101AFI20221215BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20221215BHJP
   F16K 31/53 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F02D9/10 H
F02D9/02 351G
F16K31/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098218
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】595054589
【氏名又は名称】株式会社デンソーダイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】榊原 明斗
(72)【発明者】
【氏名】清水 泰
【テーマコード(参考)】
3G065
3H063
【Fターム(参考)】
3G065DA05
3G065HA06
3G065KA15
3G065KA16
3H063AA02
3H063BB33
3H063DA14
3H063DB31
3H063GG03
3H063GG19
(57)【要約】
【課題】ボデーフックの幅とバルブギヤフックの幅とが一致しない場合であっても、双方のガイドを極力ボデーフックとバルブギヤフックとに当接させる。
【解決手段】第1ガイドフックは、先端側と基端側との中間位置にスプリング端に向けて突出する突起部を設け、ボデーフック及びバルブギヤフックのいずれか一方との当接部を支点とし、この突起部とを力点として、コイルスプリングのバネ力でボデーフック及びバルブギヤフックのいずれか他方側に変形可能である。そのため、ボデーフックとバルブギヤフックとの幅に誤差が生じたとしても、第1ガイドフックの変形によりその誤差を解消ないしは縮小することができる。これにより、バルブ中間開度の位置を安定することが可能である。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路及びモータ空間を有するボデー(300)と、
このボデーの前記通路に配置され、シャフト(402)と共に回動して前記通路を開閉するバルブ(400)と、
前記ボデーの前記モータ空間に保持され電気信号に応じて回転し、バルブギヤ(210)を介して前記シャフトを回動するモータ(100)と、
前記ボデー内で前記バルブギアと前記バルブとの間に配置され、両端に径方向外方に延びるスプリング端を有し、前記モータの回転が前記シャフトに伝達される際にバネ力による抗力を付加するコイルスプリング(450)と、
このコイルスプリングの一面側(453)を覆い、一端側スプリング端(451)が当接する第1ガイドフック(468)を備える第1ガイド(460)と、
前記ボデーに設けられ、前記第1ガイドフックの先端側と前記コイルスプリングの抗力で当接するボデーフック(3050)と、
前記バルブギヤに設けられ、前記第1ガイドフックの基端側と当接し、前記第1ガイドフックを前記コイルスプリングの抗力に抗して前記シャフトの回りに回動させるバルブギヤフック(2100)とを備え、
前記第1ガイドフックは、先端側と基端側との中間位置に前記スプリング端に向けて突出する突起部(4686)を設け、前記ボデーフック及び前記バルブギヤフックのいずれか一方との当接部を支点として、この突起部とを力点として、前記コイルスプリングのバネ力で前記ボデーフック及び前記バルブギヤフックのいずれか他方側に変形可能である
ことを特徴とする絞り弁装置。
【請求項2】
請求項1の絞り弁装置において、更に、
前記コイルスプリングの他面側(454)を覆い、他端側スプリング端(452)が当接する第2ガイドフック(4610)を備える第2ガイド(461)を備える
ことを特徴とする絞り弁装置。
【請求項3】
前記第1ガイドは、前記コイルスプリングの一面側を覆う第1円盤部を有し、この第1円盤部から前記第1ガイドフックが径方向外方に延出している
ことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の絞り弁装置。
【請求項4】
前記第1ガイドの前記第1円盤部には、前記第1ガイドフックの近傍に前記コイルスプリングの一端側スプリング端が通る貫通孔が形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の絞り弁装置。
【請求項5】
前記第1ガイドは、前記第1円盤部の前記第1ガイドフックの近傍のみに前記コイルスプリングの外周を覆う覆い壁が形成されている
ことを特徴とする請求項3若しくは請求項4に記載の絞り弁装置。
【請求項6】
前記第1ガイドフックの肉厚は、基端側が先端側に比して薄くなっている
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の絞り弁装置。
【請求項7】
前記第1ガイドフックは、前記コイルスプリングの一端側スプリング端が当接する当接壁と、この当接壁の一方側の側壁のみで形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の絞り弁装置。
【請求項8】
前記第2ガイドは、前記第1ガイドと同一形状である
ことを特徴とする請求項2及び請求項2に従属する請求項3ないし7のいずれかに記載の絞り弁装置。
【請求項9】
前記コイルスプリングは、一端側スプリング端が前記第1ガイドフック部に当接した状態で一面側が前記第1ガイドに覆われ、他端側スプリング端が前記第2ガイドフック部に当接した状態で他面側が前記第2ガイドに覆われて、前記ボデーに組付けられる
ことを特徴とする請求項8に記載の絞り弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絞り弁装置に関する。該絞り弁装置は、エンジンの吸気をコントロールする電子スロットル装置、排気ガス循環システムに用いられるEGRバルブ、ディーゼルエンジンの吸気通路圧力制御弁、燃料電池の水素濃度を制御するための負圧制御バルブ等の用途がある。
【0002】
本開示は、特にバルブを付勢するコイルスプリングによって、バルブが通路を全閉とする位置ではなく、若干開いた位置(以下、この位置をバルブ中間開度という。)で保持する絞り弁装置に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば電子スロットル装置では、エンジンの運転状態をコントロールするエンジンコントロールユニット、または電子スロットルに何らかの故障が生じた場合にも、自動車を退避走行可能とするようにしている。具体的には、電子スロットル装置のモータが駆動力を生じない時に、スロットルバルブが吸気通路を全閉とする位置ではなく、バルブ中間開度で停止するよう構成されている。
【0004】
特許文献1に記載の電子スロットル装置では、コイルスプリングを用いて、コイルスプリングの両端にそれぞれ樹脂製ガイドを配置している。バルブ中間開度からバルブ全閉開度の間は、一方の樹脂製ガイドがボデーフックと当接してストッパとして機能する。その状態で、他方の樹脂製ガイドがバルブギヤフックと当接して、コイルスプリングの抗力に反して回動する。逆に、バルブ中間開度からバルブ全開開度の間は、他方の樹脂製ガイドがボデーフックと当接してストッパとして機能する。その状態で一方の樹脂製ガイドがバルブギヤフックに当接して、コイルスプリングの抗力に抗して回動する。
【0005】
特許文献1に記載の電子スロットル装置では、スロットルバルブがバルブ中間開度にある状態で、一方の樹脂製ガイドがボデーフックと当接し、かつ、バルブギヤフックにも当接することを前提としている。同時に、スロットルバルブがバルブ中間開度にある状態で、他方の樹脂製ガイドもボデーフックと当接しつつ、バルブギヤフックにも当接することを前提としている。
【0006】
しかしながら、製造上のバラツキにより、常にボデーフックの幅とバルブギヤフックの幅とが一致するとは限らない。そのため、スロットルバルブがバルブ中間開度にある状態で、一方の樹脂製ガイドとボデーフック、一方の樹脂製ガイドとバルブギヤフック、他方の樹脂製ガイドとボデーフック、及び他方の樹脂製ガイドとバルブギヤフックのいずれかで当接しない事態も生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-32088号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
いずれかの樹脂製ガイドとボデーフック若しくはバルブギヤフックとが当接しない場合には、バルブ中間開度の位置が安定しない。そのため、バルブの開度が安定せず、退避走行にも支障をきたす懸念がある。
【0009】
本件開示の課題は、上記点に鑑みて、ボデーフックの幅とバルブギヤフックの幅とが一致しない場合であっても、双方の樹脂製ガイドを極力ボデーフックとバルブギヤフックとに当接させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1は、通路及びモータ空間を有するボデー(300)と、このボデーの通路に配置され、シャフト(402)と共に回動して通路を開閉するバルブ(400)と、ボデーのモータ空間に保持され電気信号に応じて回転し、バルブギヤ(210)を介してシャフトを回動するモータ(100)と、ボデー内でバルブギヤとバルブとの間に配置され、両端に径方向外方に延びるスプリング端を有し、モータの回転がシャフトに伝達される際にバネ力による抗力を付加するコイルスプリング(450)とを備えている。
【0011】
また、本開示の第1は、コイルスプリングの一面側(453)を覆い、一端側スプリング端(451)が当接する第1ガイドフック(468)を備える第1ガイド(460)と、ボデーに設けられ、第1ガイドフックの先端側とコイルスプリングの抗力で当接するボデーフック(3050)と、バルブギヤに設けられ、第1ガイドフックの基端側と当接し、第1ガイドフックをコイルスプリングの抗力に抗してシャフトの回りに回動させるバルブギヤフック(2100)とも備えている。
【0012】
そして、本開示の第1は、第1ガイドフックは、先端側と基端側との中間位置にスプリング端に向けて突出する突起部(4686)を設け、ボデーフック及びバルブギヤフックのいずれか一方との当接部を支点とし、この突起部とを力点として、コイルスプリングのバネ力でボデーフック及びバルブギヤフックのいずれか他方側に変形可能である。
【0013】
このように、本開示の第1は、第1ガイドフックの先端側と基端側との中間位置にスプリング端に向けて突出する突起部(4686)を設けて、コイルスプリングのバネ力でボデーフック若しくはバルブギヤフック側に変形可能としている。そのため、ボデーフックとバルブギヤフックとの幅に誤差が生じたとしても、第1ガイドフックの変形によりその誤差を解消ないしは縮小することができる。これにより、バルブ中間開度の位置を安定することが可能である。
【0014】
本開示の第2は、更に、コイルスプリングの他面側(454)を覆い、他端側スプリング端(452)が当接する第2ガイドフック(4610)を備える第2ガイド(461)を備える。第1ガイドと第2ガイドとの双方によりコイルスプリングの両端を挟持することができる。
【0015】
本開示の第3は、第1ガイドは、コイルスプリングの一面側を覆う第1円盤部を有し、この第1円盤部から第1ガイドフックが径方向外方に延出している。第1円盤部と第1ガイドフックにより、コイルスプリングの一面側を確実に保持することが可能である。
【0016】
本開示の第4は、第1ガイドの第1円盤部に、第1ガイドフックの近傍にコイルスプリングの一端側スプリング端が通る貫通孔を形成している。一端側スプリング端の位置が安定し、第1ガイドフックが撓みやすくなる。
【0017】
本開示の第5は、第1ガイドは第1円盤部の第1ガイドフックの近傍のみにコイルスプリングの外周を覆う覆い壁を形成している。覆い壁によりコイルスプリングの脱落が防止できる。かつ、第1ガイドフックの近傍のみの形成のため、軽量化が図れる。
【0018】
本開示の第6は、第1ガイドフックの肉厚は、基端側が先端側に比して薄くなっている。肉厚を薄くすることで、第1ガイドフックが撓みやすくなる。
【0019】
本開示の第7は、第1ガイドフックは、コイルスプリングの一端側スプリング端が当接する当接壁と、この当接壁の一方側の側壁のみで形成されている。側壁を片側のみとすることで第1ガイドフックが撓みやすくなり、かつ、軽量化も図れる。
【0020】
本開示の第8は、第2ガイドは、第1ガイドと同一形状である。同一形状のため、部品の取り違えがなくなり、組付けしやすくなる。かつ、第1ガイドと第2ガイドの設計が共通化し、設計効率も向上する。
【0021】
本開示の第9は、コイルスプリングは、一端側スプリング端が第1ガイドフックに当接した状態で一面側が第1ガイドに覆われ、他端側スプリング端が第2ガイドフックに当接した状態で他面側が第2ガイドに覆われて、ボデーに組付けられる。組付け性が簡素化する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、電子スロットル装置の縦断面図である。
図2図2は、ボデーの正面図である。
図3図3は、コイルスプリング、第1ガイド、第2ガイドを示す斜視図である。
図4図4は、図2より中間ギヤ及びバルブギヤを取り外した正面図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿う断面図である。
図6図6は、図5のVI-VI線に沿う断面図である。
図7図7は、図5のVII-VII線に沿う断面図である。
図8図8は、第1ガイドの正面図である。
図9図9は、図8図示第1ガイドの部分拡大図である。
図10図10は、第1ガイドとバルブフック、ボデーフックとを示す正面図である。
図11図11は、図10図示第1ガイドの変形を示す説明図である。
図12図12は、第1ガイドとバルブフック、ボデーフックとを示す正面図である。
図13図13は、図12図示第1ガイドの変形を示す説明図である。
図14図14は、第1ガイドの斜視図である。
図15図15は、コイルスプリングのバネ力のヒステリシスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本開示の絞り弁装置を電子スロットル装置に用いた実施形態を、図に基づいて説明する。なお、本開示の絞り弁装置は、上述の通り、EGRバルブ、ディーゼルエンジン吸気通路圧力制御弁、燃料電池用負圧制御バルブ等、絞り弁装置として幅広く利用可能である。従って、スロットルシャフトやスロットルバルブ等の名称は本開示を電子スロットル装置に用いた場合の例で、シャフトやバルブの用途はスロットルに限定されるものではない。
【0024】
図1は電子スロットル装置の縦断面図で、この図1に基づいて電子スロットル装置1の概要を説明する。電子スロットル装置1はエンジンルームに配置され、エンジンに吸入される吸気の流量を制御する。ドライバーのアクセルペダル操作や、エンジンの回転状態等に応じて、図示しないエンジンコントロールユニットが最適な吸気量を演算して、演算結果に応じた回転量をモータ100に出力する。
【0025】
アルミニウム若しくはアルミニウム合金製のボデー300のモータ空間330にモータ100が配置される。モータ100の回転は、モータシャフト101(図2図示)に圧入固定されたモータピニオン102から、減速機構200に伝達される。減速機構200は、図2に示すように、モータピニオン102、中間ギヤ201及びバルブギヤ210により形成される。
【0026】
中間ギヤ201の大径歯車202は、モータピニオン102と歯合する。中間ギヤ201は中間シャフト203を中心として回転自在に保持されている。中間シャフト203はボデー300の嵌合穴301に圧入固定されている。
【0027】
中間ギヤ201の小径歯車204が、バルブギヤ210の外周に円弧状に形成された歯部211と歯合しており、モータピニオン102の回転は中間ギヤ201を介してバルブギヤ210に伝達される。減速割合は、凡そモータシャフト101が28回転する毎にバルブギヤ210の1歯部211が時計回り若しくは反時計回りに進むこととなる。
【0028】
バルブギヤ210のコップ状中心部212の内周には、半円弧状の磁石220及び221が配置され、磁石220、221により磁気回路が形成される。バルブギヤ210のコップ状中心部212の奥部(図1の下方)には円盤状のレバー401が配置されている。そして、磁石220、221とレバー401はバルブギヤ210にインサート成形されている。
【0029】
レバー401はスロットルシャフト402の端面にカシメ固定される。従って、バルブギヤ210は、レバー401を介してスロットルシャフト402に連結し、バルブギヤ210の回転がスロットルシャフト402に伝達される。スロットルシャフト402には、円盤状のスロットルバルブ400がスクリュー403により固定されている。スロットルバルブ400は、その回動に応じてボデー300に形成された吸気通路320の開口面積を増減させる。
【0030】
ボデー300の開口端303(図1の上側、図2の正面)は、カバー500によって覆われている。カバー500は、ポリブチルテレフタレートPBTなどの樹脂で成形されており、所定部位にリブを形成して強度を得ている。
【0031】
カバー500のうち、スロットルシャフト402の軸線407に対応する位置には、ホールICからなる一対の回転角センサ510が配置されている。回転角センサ510はカバー500に固定されているが、その外周にバルブギヤ210にインサート成形された一対の円弧状の磁石220、221が配置されている。そして、磁石220、221はスロットルシャフト402の回動に応じて軸線407周りを回動するので、磁気回路はスロットルバルブ400の回転角に応じた位置に変化する。回転角センサ510は、この磁気回路の位置変化に起因する磁力の変化を検知して、スロットルバルブ400の開度を検出する。そして、検出した位置情報を、図示しないエンジンコントロールユニットにフィードバックする。
【0032】
スロットルシャフト402はスロットルバルブ400を挟んで両側に配置された軸受405、406によって、ボデー300に回転自在に支持されている。軸受405は滑り軸受であり、軸受406はボールベアリングである。ボデー300の開口部302は、軸受405を挿入するための開口で、プラグ310によって覆われている。
【0033】
ボデー300にはバルブギヤ210を収容する空間321が形成されており、この空間321にはスロットルシャフト402をバネ力で付勢するコイルスプリング450が配置されている。コイルスプリング450は、バネ鋼製で、図3に示すように、直径が15ミリメートル程度の円筒状をしている。そして、一端側スプリング端451、及び他端側スプリング端452が径方向外側に折れ曲がって5ミリメートル程度外方に突出している。
【0034】
コイルスプリング450の一面側端面453は第1ガイド460により覆われている。また、コイルスプリング450の他面側端面454は第2ガイド461により覆われている。第1ガイド460も第2ガイド461も共に66ナイロン樹脂製である。以下、第1ガイド460に付いて説明する。
【0035】
第1ガイド460には、円筒状をしたコイルスプリング450の一面側端面453を覆う第1円盤部462が形成されている。そして、この第1円盤部462にコイルスプリング450の一面側端面453が収納される。第1ガイド460は、第1円盤部462の中心部にハブ463を形成し、ハブ463の中心穴464内にスロットルシャフト402が遊嵌入される。換言すれば、第1ガイド460はスロットルシャフト402の周りに回転自在に配置される。
【0036】
第1ガイド460の第1円盤部462からは、第1ガイドフック468が径方向に突出形成されている。第1ガイドフック468は、図8及び図9に示すように、一端側スプリング端451が当接してコイルスプリング450のバネ力を受ける係止面4681と、一端側スプリング端451が通過する穴部4682、及び一端側スプリング端451の一方の側面を覆う保護部4683とからなる。穴部4682によりコイルスプリング450の組付け性が向上し、保護部4683によりコイルスプリング450の脱落防止が図れる。この穴部4682と保護部4683とにより、一端側スプリング端451のバネ力が確実に係止面4681に伝達されることとなる。
【0037】
以上は、第1ガイド460に関して説明したが、第2ガイド461は第1ガイド460と同一形状をしており、第1ガイド460に関する説明は第2ガイド461にも適用できる。図8及び図9に基づいて第1ガイド460の説明を行ったが、図1の第2ガイド461も同形状となっている。
【0038】
このように、第1ガイド460と第2ガイド461とを同一形状とすることで、組付け時に第1ガイド460と第2ガイド461との層別を行う必要がなくなり、組み付け時間の短縮が図れる。加えて、同一形状とすることで、組み付け設備のコストも低減でき、かつ、部品コストも低減できる。
【0039】
ただ、第2ガイド461は第1ガイド460に対して反転して配置されている。そのため、図3に示すように、第1ガイド460の第1円盤部462がコイルスプリング450の一面側端面453を収納して保持するのに対し、第2ガイド461の第2円盤部4611は、コイルスプリング450の他面側端面454を収納保持することとなる。
【0040】
第1ガイド460、コイルスプリング450及び第2ガイド461は、図1に示すように、バルブギヤ210の背面(図1の下方)でスロットルシャフト402の周囲に配置される。配置された状態で、第1ガイド460のハブ463は金属製のレバー401に当接し、第2ガイド461のハブ463はボールベアリング(軸受406)のインナーレースと当接している。
【0041】
後述するように、ボデー300には第1ガイド460の第1ガイドフック468及び第2ガイド461の第2ガイドフック4610と当接して、コイルスプリング450のバネ力を受けるボデーフック3050が形成されている。そして、第1ガイドフック468及び第2ガイドフック4610がボデーフック3050に当接した状態では、コイルスプリング450の付勢力によって、スロットルバルブ400は吸気通路320をバルブ中間開度に保持する。このバルブ中間開度は閉位置ではあるが、故障時の退避走行が可能なように、スロットルバルブ400は吸気通路320を全閉にすることはなく、所定量の吸気は流入できるように多少開いた位置となっている。
【0042】
次に、コイルスプリング450の組付けを説明する。コイルスプリング450にプリロードの掛かっていない状態では、第1ガイド460と第2ガイド461との間は、コイルスプリング450により大きく離れている。尤も、この状態でも、第1ガイド460の第1円盤部462がコイルスプリング450の一面側端面453を収納しつつ、第1ガイドフック468が一端側スプリング端451を保持し、また、第2ガイド461の第2円盤部4611がコイルスプリング450の他面側端面454を収納しつつ、第2ガイドフック4610が他端側スプリング端452を保持している。
【0043】
この状態から、コイルスプリング450にプリロードを加えて、第1ガイド460の第1ガイドフック468をバルブギヤ210のバネ受けに当接させ、一方、第2ガイド461の第2ガイドフック4610をボデー300のバネ受けに当接させる。
【0044】
従って、組付け状態での第1ガイド460及び第2ガイド461の当接部は、第1ガイド460のハブ463が金属製のレバー401に当接するのと、第2ガイド461のハブ463がボールベアリング(軸受406)のインナーレースに当接するのみとなっている。そのため、回動に伴う摺動抵抗は極めて小さくなっている。
【0045】
次に、スロットルバルブ400の開閉をコイルスプリング450の挙動と共に説明する。エンジンの回転数を上昇させるためにスロットルバルブ400が吸気通路320を開く場合、コイルスプリング450の他端側スプリング端452はその位置を保持し、一端側スプリング端451がスロットルシャフト402の回動に応じて移動する。この移動に応じ、コイルスプリング450はスロットルシャフト402やバルブギヤ210、ひいてはモータ100にリターン側の付勢力を付加する。
【0046】
一方で、アイドリング状態とすべく、スロットルバルブ400が吸気通路320を閉じる場合には、スロットルシャフト402はバルブ中間開度から全閉位置に回動する。その場合には、全開方向とは逆に、コイルスプリング450の一端側スプリング端451はその位置を保持し、他端側スプリング端452がスロットルシャフト402の回動に応じて移動する。
【0047】
この移動を図4乃至図7を用いて説明する。図4は、図2より中間ギヤ201やバルブギヤ210を取り外した正面図で、バルブ中間開度の位置である。第1ガイド460の第1ガイドフック468はボデー300に形成された第1ボデーフック305に当接している。同時に、第2ガイド461の第2ガイドフック4610もボデー300に形成された第2ボデーフック307に当接している。本開示では、第1ボデーフック305と第2ボデーフック307とを総称してボデーフック3050とする。第1ボデーフック305及び第2ボデーフック307は、共にボデー300の外表面に一体形成されている。
【0048】
図5は、図4のV‐V線に沿う断面図で、図に示すように、第1ガイド460と第2ガイドは、レバー401と軸受406によって挟持されている。図6及び図7は、それぞれ図5のVI‐VI線及びVII-VII線に沿う断面図である。また、図6及び図7の(a)はバルブ中間開度、(b)は全閉位置、(c)は全開位置を示す。
【0049】
図6に示すように、バルブ中間開度((a)位置)から全閉((b)位置)の間は、一端側スプリング端451を保持する第1ガイドフック468は、ボデー300の第1ボデーフック305に当接したままである。単にバルブギヤ210の第1バルブギヤフック2101が第1ガイドフック468から離れるのみである。逆に、バルブ中間開度((a)位置)から全開((c)位置)の間は、第1ガイドフック468はバルブギヤ210の第1バルブギヤフック2101により時計回り方向に移動する。
【0050】
次に、第2ガイドフック4610の移動を図7に示す。バルブ中間開度((a)位置)から全閉((b)位置)の間は、他端側スプリング端452を保持する第2ガイドフック4610は、バルブギヤ210の第2バルブギヤフック2102の回動に合わせてボデー300の移動溝306内を反時計回りに移動する。一方、バルブ中間開度((a)位置)から全開((c)位置)の間は、第2ガイドフック4610はボデー300の移動溝306の一端である第2ボデーフック307に係止したままで移動はない。
【0051】
図3に示すように、第1バルブギヤフック2101及び第2バルブギヤフック2102はバルブギヤ210より一体的に突出形成されている。第1ガイドフック468と当接する部位が第1バルブギヤフック2101であり、第2ガイドフック4610と当接する部位が第2バルブギヤフック2102である。第1バルブギヤフック2101と第2バルブギヤフック2102を総称してバルブギヤフック2100とする。
【0052】
このように、バルブ中間開度では、第1ガイドフック468と第2ガイドフック4610は、ともにボデーフック3050とバルブギヤフック2100と当接していることを前提としている。この前提のもと、バルブ中間開度からモータ100が回転してバルブギヤ210が回動すれば直ちにスロットルバルブ400が吸気通路320を開いたり閉じたりすることができるとしている。
【0053】
ただ、第1バルブギヤフック2101と第2バルブギヤフック2102とは、バルブギヤフック2100の異なる部位に設けられている。そのため、加工や組付けの誤差や部品の公差により、ボデーフック3050の位置とバルブギヤフック2100の位置がずれる可能性もある。このような位置ずれが生じれば、第1ガイドフック468と第1ボデーフック305との間、第1ガイドフック468と第1バルブギヤフック2101との間、第2ガイドフック4610と第2ボデーフック307との間、第2ガイドフック4610と第2バルブギヤフック2102との間のいずれかで、当接しない部位ができる。
【0054】
非当接の部位が生じれば、モータ100を回転させ、バルブギヤ210を回動させても、コイルスプリング450のバネ力が生じないこととなる。図15に示すように、バルブ中間開度の位置が定まらないこととなり、バルブ中間開度の位置が安定しない。そのため、スロットルバルブ400から流れる吸入空気の量もバラツキ、退避走行にも支障をきたす懸念がある。なお、図15の横軸は、スロットルバルブ400の開度Xを示す。縦軸は、スロットルシャフト402の軸トルクTを示し、コイルスプリング450のバネ力の大きさを表す。縦軸の上方側は図6の時計方向への移動トルクを示し、下方側は図7の反時計方向への移動トルクを示す。共に中心より遠ざかるほど、トルクは大きくなる。
【0055】
例えば、図10に示すように、第1ガイドフック468の基端側4684ではバルブギヤフック2100と当接しているが、先端側4685ではボデーフック3050と非当接であるとする。すると、非当接部に間隙Aが生じる。この間隙Aの大きさは公差の積み重ねにより0.2ミリメートル程度となる場合があり、これに加工誤差が加わればより大きくなる可能性もある。この間隙Aの領域ではコイルスプリング450のバネ力が働かないため、スロットルバルブ400の位置は安定しない。
【0056】
本開示では、バルブ中間開度の位置を安定させるため、図9に示すように、第1ガイド460の係止面4681の中間部位に、一端側スプリング端451に向けて0.5ミリメートル程度突出する突起部4686を形成している。また、係止面4681の肉厚を、基端側4684の方が先端側4685より薄くして、第1ガイドフック468を変形しやすくしている。一例として、基端側4684の肉厚を1~1.5ミリメートル程度とし、先端側4685の肉厚を2ミリメートル程度としている。
【0057】
なお、中間位置とは厳密に先端側4685と基端側4684との中心を指すのではない。先端側4685に位置するボデーフック3050と基端側4684に位置するバルブギヤフック2100との間の位置であればよい。
【0058】
図10に示す例の場合、コイルスプリング450のバネ力は、非当接部の間隙Aを縮める方向に働く。図11に示すように、一端側スプリング端451でのバネ力は当接しているバルブギヤフック2100と突起部4686に加わる。その結果、バルブギヤフック2100との当接部が支点として、突起部4686との当接部が力点として、バネ力が第1ガイドフック468に加わる。それにより、第1ガイドフック468の先端側4685が撓む。この撓みにより、間隙Aは無くなるか、少なくとも間隙Aの幅を縮めることができる。
【0059】
図12に示すように、第1ガイドフック468の基端側4684でバルブギヤフック2100と非当接で、先端側4685がボデーフック3050と当接である例でも同様である。この場合も、コイルスプリング450のバネ力は、非当接の間隙Aを縮める方向に働く。図13に示すように、一端側スプリング端451でのバネ力は当接しているボデーフック3050と突起部4686に加わる。その結果、ボデーフック3050との当接部が支点として、突起部4686との当接部を力点として、バネ力が第1ガイドフック468に加わる。このバネ力により、第1ガイドフック468の基端側4684が撓む。これにより、間隙Aは無くなるか、少なくとも間隙Aの幅を縮めることができる。
【0060】
なお、以上の説明は第1ガイドフック468に非当接の部位が生じる例で行ったが、第2ガイドフック4610でも同様である。即ち、第1ガイドフック468はバルブギヤフック2100、ボデーフック3050共に当接している状態で、第2ガイドフック4610に非当接の部位が生じても、上述のバネ力により間隙Aは縮められる。勿論、第1ガイドフック468と第2ガイドフック4610ともに非当接の部位が生じる場合も同様である。
【0061】
非当接の部位が生じるのは、上述の通り、加工や組付けの誤差や部品の公差による。そのため、非当接の部位が生じるとしても、間隙Aは大きくはない。本開示によれば、誤差や公差により生じる間隙Aは第1ガイドフック468や第2ガイドフック4610が撓むことで吸収することができる。
【0062】
なお、図3の例では第1ガイド460の第1円盤部462の全周に覆い壁を形成していたが、第1ガイド460や第2ガイド461の形状は、図3の形状には限らない。例えば、図14に示すように、第1円盤部462のうち第1ガイドフック468の近傍のみに覆い壁4621を形成するようにしても良い。このようにすれば、覆い壁4621の面積を小さくして、軽量化が図れる。かつ、第1ガイドフック468の近傍で覆い壁4621がコイルスプリング450を保持するので、コイルスプリング450の保持が不充分となることは無い。
【0063】
また、本例ではバルブ中間開度から全閉開度の回動ではコイルスプリング450の第2ガイド461側の他端側スプリング端452が変動し、バルブ中間開度から全開開度の回動で第1ガイド460側の一端側スプリング端451が変動する構成としたが、コイルスプリング450の動作を逆にしてもよい。モータ100の回転方向が逆になるが、動作は本例と同様である。本開示において、第1ガイドフック468はその位置のより特定されるものではない。
【0064】
また、上述の例では、第1ガイドフック468の係止面4681の肉厚を、基端側4684の方が先端側4685より薄くしていた。これにより、第1ガイドフック468が変形しやすくなるという利点がある。ただ、製造上の理由等により、肉厚を同一にしたり、逆に先端側4685を薄くしたりすることも可能である。
【0065】
また、上述の例では第1ガイド460と第2ガイド461とを同一形状として、組付け時間の短縮、組付け設備コストの低減、及び部品コストの低減を図っていた。但し、バルブギヤ210やボデー300の形状との関係で、第1ガイド460と第2ガイド461との形状を異ならせる必要がある場合には、形状変更は許容せざるを得ない。いずれか一方のガイドに突起部4686を形成することが出来ない場合も、許容せざるを得ない。本開示においては、突起部4686を有する側のガイドフックを第1ガイドフック468としている。
【0066】
更に、必要に応じ、第2ガイド461を廃止して、第1ガイド460のみとしても、非当接部の間隙Aを縮める効果は得られる。この場合も、コイルスプリング450のいずれかの端面を覆うガイドが第1ガイド460となる。
【0067】
更に、上述の材料や寸法は一例であり、電子スロットル装置1に求められる要請に応じて適宜選択することが可能である。
【0068】
上述の通り、本件開示の絞り弁装置は、エンジンの吸気量を制御する電子スロットル装置や、排気ガス循環量を制御するEGRバルブ、ディーゼルエンジンの吸気を制御する吸気通路圧力制御弁、燃料電池の水素濃度を制御する負圧制御バルブ等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 電子スロットル装置
210 バルブギヤ
2100 バルブギヤフック
3050 ボデーフック
400 スロットルバルブ
450 コイルスプリング
451 一端側スプリング端
452 他端側スプリング端
460 第1ガイド
461 第2ガイド
468 第1ガイドフック
4610 第2ガイドフック
4686 突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15