(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189582
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】情報処理プログラム,情報処理装置,データ構造及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20221215BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20221215BHJP
G06N 3/08 20060101ALI20221215BHJP
G01N 3/40 20060101ALI20221215BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G06N20/00 130
G06N3/08
G01N3/40 Z
C21B5/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098241
(22)【出願日】2021-06-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年9月1日、一般社団法人日本鉄鋼協会第180回秋季講演大会概要集「材料とプロセス」、Vol.33(2020)、No.2、第492頁 令和2年9月16日、一般社団法人日本鉄鋼協会第180回秋季講演大会
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】夏井 俊悟
(72)【発明者】
【氏名】埜上 洋
(72)【発明者】
【氏名】平井 東
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059BB09
2G059EE02
2G059EE20
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】計算コストを抑えつつ、CSR値毎のコークスの変形特性を分類する。
【解決手段】コークスの三次元モデルについて、前記コークスの物質内の硬度分布に応じて三次元の格子上に複数種類のラベルをそれぞれ付与し、前記複数種類のラベルを付与した複数バッチの三次元モデルのデータを、三次元モデルのバッチ数及び前記三次元モデルの三次元要素からなる四次元データ23として入力を受け付け、四次元データ23に対して、フィルタ要素を乗算してバイアスを加算することによって畳み込み処理を行ない、一次元の全結合データを出力データ24として取得する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークスの三次元モデルについて、前記コークスの物質内の硬度分布に応じて三次元の格子上に複数種類のラベルをそれぞれ付与し、前記複数種類のラベルを付与した複数バッチの前記三次元モデルのデータを、前記三次元モデルのバッチ数及び前記三次元モデルの三次元要素からなる四次元データとして入力を受け付け、
前記四次元データに対して、フィルタ要素を乗算してバイアスを加算することによって畳み込み処理を行ない、一次元の全結合データを出力データとして取得する、
処理をコンピュータに実行させる、情報処理プログラム。
【請求項2】
前記出力データを用いて、硬度分布に応じた前記コークスの分類を実行する、
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項3】
前記三次元モデルの硬度分布は、回転タンブラー内での前記コークスの形状変化によって定められる、
請求項1又は2に記載の情報処理プログラム。
【請求項4】
前記回転タンブラーの回転数の増加によって粉化せずに残った前記格子上の部位ごとに、前記複数種類のラベルを付与する、
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項3に記載の情報処理プログラム。
【請求項5】
コークスの三次元モデルを取得し、
前記三次元モデルについて、前記コークスの物質内の硬度分布に応じて三次元の格子上に複数種類のラベルをそれぞれ付与し、前記複数種類のラベルを付与した複数バッチの前記三次元モデルのデータから、前記三次元モデルのバッチ数及び前記三次元モデルの三次元要素からなる四次元データを生成し、
前記四次元データの入力を受け付け、前記四次元データに対して、フィルタ要素を乗算してバイアスを加算することによって畳み込み処理を行ない、一次元の全結合データを出力データとして取得する、
プロセッサを備える、情報処理装置。
【請求項6】
前記三次元モデルを前記プロセッサに入力する入力部と、
前記プロセッサが取得した一次元の全結合データを出力する出力部と、
を備える、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コークスの三次元モデルについて、前記コークスの物質内の硬度分布に応じて三次元の格子上に複数種類のラベルをそれぞれ付与し、前記複数種類のラベルを付与した複数バッチの前記三次元モデルのデータを、前記三次元モデルのバッチ数及び前記三次元モデルの三次元要素からなる四次元データとして入力されるものであって、
コンピュータで、前記四次元データに対して、フィルタ要素を乗算してバイアスを加算することによって畳み込み処理を行ない、一次元の全結合データを出力させるために使用される、
機械学習用のデータ構造。
【請求項8】
コークスの三次元モデルを取得し、
前記三次元モデルについて、前記コークスの物質内の硬度分布に応じて三次元の格子上に複数種類のラベルをそれぞれ付与し、
前記複数種類のラベルを付与した複数バッチの前記三次元モデルのデータから、前記三次元モデルのバッチ数及び前記三次元モデルの三次元要素からなる四次元データを生成し、
前記四次元データの入力を受け付け、前記四次元データに対して、フィルタ要素を乗算してバイアスを加算することによって畳み込み処理を行ない、一次元の全結合データを出力データとして取得する、
処理をコンピュータが実行する、情報処理方法。
【請求項9】
物質の三次元モデルについて、前記物質内の硬度分布に応じて三次元の格子上に複数種類のラベルをそれぞれ付与し、前記複数種類のラベルを付与した複数バッチの前記三次元モデルのデータを、前記三次元モデルのバッチ数及び前記三次元モデルの三次元要素からなる四次元データとして入力を受け付け、
前記四次元データに対して、フィルタ要素を乗算してバイアスを加算することによって畳み込み処理を行ない、一次元の全結合データを出力データとして取得する、
処理をコンピュータに実行させる、情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理プログラム,情報処理装置,データ構造及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉は、鉱石及びコークスを交互に装入して層状充填した向流型充填層反応器である。コークスは充填層内の装入原料による荷重を支えつつ通気性を確保するスペーサーとしての役割を果たす。
【0003】
近年、CO2排出量削減のために、高炉内の装入コークスに対する装入鉱石の割合が高い操業、すなわち低コークス比操業が求められている。低コークス比操業によって熱力学的にはCO2を削減できるが、コークスの薄層化は高炉内の通気性に大きな影響を与える。鉱石層の通気性の低下により鉱石の還元の進行が停滞すると、コークスの反応負荷が増大し、コークスが摩耗しやすくなる。強度が低下したコークスが粉化すると、高炉内の空隙の狭小化及び閉塞が生じ、高炉内の通気性が極端に悪化する。従って、低コークス比の高炉で安定操業を行なうには、コークスの品質及び挙動を正確に知る必要がある。
【0004】
コークスの品質評価の指標として、コークスをCO2ガスと一定時間反応させたガス化量(Coke Reaction Index;CRI)と、その後の回転強度を示す反応後強度(Coke Strength after Reaction;CSR)等が用いられている。
【0005】
例えば、特許文献1には、単味炭コークスのCRIの加重平均値に基づいて配合炭コークスの反応率(CRI)を求め、求めた配合炭コークスのCRIを、コークス到達温度、コークスの気孔率及びコークス炉の炉幅からなる操業条件に基づき補正し、補正した配合炭コークスのCRIと、配合炭コークス表面破壊強度DI150
6に基づいて配合炭コークスのCSRを推定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【0007】
コークスの挙動を知る方法として、固体粒子運動の計算方法である離散要素法(Discrete Element Method;DEM)を用いたコークス及び粉体の運動シミュレーションが試みられている。本法では、炉内反応・荷重によるコークス形状変化を反映した動力学モデルにより、固・気・液・粉の流動現象を可視化評価し、高炉の空隙の閉塞の予測を行なう。本法は、粉体及び空隙幾何を考慮し、数値流体力学(Computational Fluid Dynamics;CFD)法との連成により通気・通粉・通液・移動層を統一的に取り扱うことができるため、原料性状(コークス粉化)や通気性及び通液性の関係の新たな評価指標として期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の推定方法によれば、操業条件を含む複数の情報に基づいて演算を行なうため、計算コストを抑えることが難しいという課題がある。
【0009】
また、上述の運動シミュレーションでは、計算負荷は大きいが、実際の充填層構造をコークス形状まで考慮して評価できる範囲は1m3程度の立方体空間に留まり、確率的に生じる変形挙動をスケール階層的に解析するのが難しいという課題がある。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み案出されたもので、計算コストを抑えつつ、CSR値毎のコークスの変形特性を分類することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここで開示する情報処理プログラムは、コンピュータに、コークスの三次元モデルについて、前記コークスの物質内の硬度分布に応じて三次元の格子上に複数種類のラベルをそれぞれ付与し、前記複数種類のラベルを付与した複数バッチの前記三次元モデルのデータを、前記三次元モデルのバッチ数及び前記三次元モデルの三次元要素からなる四次元データとして入力を受け付け、前記四次元データに対して、フィルタ要素を乗算してバイアスを加算することによって畳み込み処理を行ない、一次元の全結合データを出力データとして取得する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、計算コストを抑えつつ、CSR値毎のコークスの変形特性を分類することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る情報処理装置の機能構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図3】(a)はコークスの表面形状を示す図であり、(b)はマーカーを付けた代表コークスを示す図である。(c)は回転衝撃を与えた2つのコークスの変形の様子を示す図である。
【
図4】所定のCSR値を有する代表コークスを例示する。
【
図5】(a)は変形過程のコークスの断面を示す図であり、(b)は実施形態に係る情報処理装置において、三次元の格子上に複数ラベルを付与する処理を二次元の表で説明する図である。
【
図6】実施形態に係る情報処理装置において、ニューラルネットワークにより深層学習する処理を説明する図である。
【
図7】実施形態に係る情報処理方法による訓練段階の処理手順のフローチャートの例である。
【
図8】実施形態に係る情報処理方法による分類段階の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】異なる条件下の分類精度の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形又は技術の適用を排除する意図はない。すなわち、本実施形態を、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、各図は、図中に示す構成要素のみを備えるという趣旨ではなく、他の機能を含むことができる。なお、以下の説明で用いる図面において、同一符号を付した部分は、特に断らない限り、同一若しくは同様の部分を表す。
【0015】
〔A〕一実施形態
図1に示す情報処理装置1は、コークスの三次元モデルから四次元データを生成し、四次元データをニューラルネットワークによって深層学習して出力データ及び分類モデルを取得する情報処理装置の一例である。さらに、情報処理装置1は、分類モデルを用いて新規なデータを出力データで分類する情報処理装置の一例である。
【0016】
〔A-1〕情報処理装置のハードウェア構成例
図1は、本実施形態の情報処理装置(コンピュータ)1のハードウェア(HW)構成例を模式的に示すブロック図である。コンピュータ1は、HW構成として、例示的に、プロセッサ1a、メモリ1b、記憶部1c、IF(Interface)部1d、IO(Input / Output)部1e、及び読取部1fを備えてよい。
【0017】
プロセッサ1aは、種々の制御や演算を行なう演算処理装置の一例である。プロセッサ1aは、コンピュータ1内の各ブロックとバス1iで相互に通信可能に接続されてよい。プロセッサ1aとしては、例えば、Central Processing Unit(CPU)及びGraphics Processing Unit(GPU)等の集積回路(IC;Integrated Circuit)が挙げられる。
【0018】
メモリ1bは、種々のデータやプログラム等の情報を格納するHWの一例である。メモリ1bとしては、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリ、及び、PM(Persistent Memory)等の不揮発性メモリ、の一方又は双方が挙げられる。
【0019】
記憶部1cは、種々のデータやプログラム等の情報を格納するHWの一例である。記憶部1cとしては、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)等の半導体ドライブ装置、不揮発性メモリ等の各種記憶装置が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えば、フラッシュメモリ、SCM(Storage Class Memory)、ROM(Read Only Memory)等が挙げられる。
【0020】
また、記憶部1cは、コンピュータ1の各種機能の全部若しくは一部を実現するプログラム(情報処理プログラム)1gを格納してよい。
【0021】
例えば、情報処理装置1のプロセッサ1aは、記憶部1cに格納されたプログラム1gをメモリ1bに展開して実行することにより、後述する
図2に示される情報処理装置1(制御部10)としての機能を実現できる。また、後述する
図2に例示するメモリ部20は、メモリ1b及び記憶部1cの少なくとも1つが有する記憶領域により実現されてよい。さらに、後述する
図2に例示する取得部11、生成部12、機械学習部13及び分類部14は、記憶装置の一例としてのメモリ1b及び記憶部1cの少なくとも1つに取得(生成)した情報を格納してもよい。
【0022】
IF部1dは、ネットワークとの間の接続及び通信の制御等を行なう通信IFの一例である。例えば、IF部1dは、イーサネット(登録商標)等のLAN(Local Area Network)、或いは、FC(Fibre Channel)等の光通信等に準拠したアダプタを含んでよい。例えば、情報処理装置1は、IF部1dを介して、図示しない測定装置(3Dスキャナ)と相互に通信可能に接続されてよい。また、例えば、プログラム1gは、当該通信IFを介して、ネットワークからコンピュータ1にダウンロードされ、記憶部1cに格納されてもよい。
【0023】
IO部1eは、入力装置、及び、出力装置、の一方又は双方を含んでよい。入力装置としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等が挙げられる。出力装置としては、例えば、モニタ、プロジェクタ、プリンタ等が挙げられる。例えば、後述する
図2に示す取得部11、生成部12、機械学習部13及び分類部14は、IO部1eの入力装置から情報や指示が入力され、出力装置に取得(生成)した情報を出力し表示させてもよい。
【0024】
読取部1fは、記録媒体1hに記録された情報(データ)やプログラムの情報を読み出すリーダの一例である。読取部1fは、記録媒体1hを接続可能又は挿入可能な接続端子又は装置を含んでよい。読取部1fとしては、例えば、USB(Universal Serial Bus)等に準拠したアダプタ、記録ディスクへのアクセスを行なうドライブ装置、SDカード等のフラッシュメモリへのアクセスを行なうカードリーダ等が挙げられる。なお、記録媒体1hにはプログラム1gが格納されてもよく、読取部1fが記録媒体1hからプログラム1gを読み出して記憶部1cに格納してもよい。
【0025】
記録媒体1hとしては、例示的に、磁気/光ディスクやフラッシュメモリ等の非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体が挙げられる。磁気/光ディスクとしては、例示的に、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク、HVD(Holographic Versatile Disc)等が挙げられる。フラッシュメモリとしては、例示的に、USBメモリやSDカード等の半導体メモリが挙げられる。
【0026】
上述した情報処理装置1のHW構成は例示である。従って、情報処理装置1内でのHWの増減(例えば任意のブロックの追加や削除)、分割、任意の組み合わせでの統合、又は、バスの追加若しくは削除等は適宜行なわれてもよい。例えば、情報処理装置1において、IO部1e及び読取部1fの少なくとも一方は、省略されてもよい。
【0027】
〔A-2〕情報処理装置の機能構成例
図2は、本実施形態の情報処理装置1の機能構成例を模式的に示すブロック図である。
図2に示すように、情報処理装置1は、制御部10と、メモリ部20と、入力部30と、出力部40とを備える。制御部10と、メモリ部20と、入力部30と、出力部40とは、相互に通信可能に接続されてよい。
【0028】
入力部30は、
図1のIF部1d、IO部1e及び読取部1fで実現され、制御部10で行なわれる処理に必要な情報や指示の入力を受け付ける。また、出力部40は、
図1のIO部1eで実現され、制御部10で行われる処理によって得られる情報の出力を行なう。
【0029】
制御部10は、
図1に示すプロセッサ1aであり、記憶部1cに格納されたOperating system(OS)や情報処理プログラム1gを実行することで、取得部11、生成部12、機械学習部13及び分類部14としての機能を果たす。
【0030】
メモリ部20は、
図2に示すメモリ1b及び記憶部1cの少なくとも1つが有する記憶領域により実現され、種々のデータを記憶する。
図2に示すように、メモリ部20は、例えば、三次元モデル21、教師データ22、四次元データ23、出力データ24及び分類モデル25を記憶する。
【0031】
取得部11は、入力部30を介して入力される三次元モデル21及び教師データ22を取得する。取得した三次元モデル21及び教師データ22はメモリ部20に格納されてよい。
【0032】
三次元モデル21は、三次元空間内に作成された物質の形状である。三次元モデル21は、3Dスキャナを用いて作成され、ファイル形式としてはStandard Triangulated Language(STL)等がある。三次元モデル21は、例えば、スキャンした物質の表面座標の点群のうち30万点を代表値と選択し、これらの点を三角形の頂点で結んだ3点で構成されたメッシュで囲まれたポリゴンデータである。
【0033】
本実施形態では、三次元モデル21は、1単位の物質が変形する過程を複数の段階でスキャンしたデータである。別言すると、三次元モデル21は、物質の形状変化を示す時系列のデータ(の集合体)である。
【0034】
本実施形態における物質は、コークスである。コークスとは、高温で蒸し焼きにした(乾留工程を経た)石炭で、石炭から硫黄、コールタール、ピッチ、硫酸、アンモニアなどの成分が除去されたものである。コークスは、例えば、
図3(a)に示す表面形状を有する。
【0035】
本実施形態では、コークスの反応後強度(Coke Strength after Reaction;CSR)値を調べる過程におけるコークスの段階的な形状変化をスキャンすることで三次元モデル21を得る。以下、本実施形態のコークスの三次元モデル21を得るための手法を説明する。
【0036】
本実施形態では、試料コークスとして、一定強度の治金用コークスを用いた。試料コークスの初期粒径は、約10kgを25~38mmでふるい分けし、平均粒径35mmのものを選択した。これは、高炉下部のコークスの粒径は、通常、質量比25mm以上が50%程度であるためである。
【0037】
(1.1)まず、試料コークスにガス化処理を行なう。本実施形態では、試料コークスをCO2雰囲気(100%),1100℃,40minの条件の下でガス化処理した。
【0038】
(1.2)次に、ガス化処理後の試料コークスの中から、複数個のコークスを取り出し、これらを回転数0[rev]の代表コークスとする。
図3(b)に示すように、代表コークスにφ1mmの貫通孔を設け、糸を通しコークスに結び付けてマーカーとした。これは、後述する(1.3)で複数の試料コークスの中から代表コークスを特定するためである。代表コークスを3Dスキャナでスキャンし、三次元モデル21を得る。この時点の三次元モデル21は、代表コークスの変形前(初期状態)のデータである。本実施形態では、3DスキャナはNextEngineを使用した。
【0039】
(1.3)続いて、代表コークスを含む試料コークスに所定の回数の回転衝撃を与える。回転衝撃を与える回転強度試験法として、本実施形態では、JIS K2151-1977のタンブラー試験法を採用した。タンブラー試験法で用いるタンブラー試験機は、ドラム試験機よりも落下衝撃が低く体積破壊を抑えることができるため、コークスの微妙な形状変化を追跡するのに適している。タンブラー試験機に代表コークスを含む試料コークスを充填し、所定の数まで回転させる。本実施形態では、所定の数は50,100,200,400[rev]に設定した。回転が所定の数に達する度に、タンブラー試験機を静止させ、代表コークスを取り出して3Dスキャナでスキャンし、三次元モデル21を得る。
図3(c)に、回転衝撃を与えた2つのコークスの変形の様子を示す。
【0040】
(1.4)上記手順を全ての代表コークスに対して行ない、各代表コークスについて、変形前及び4段階の変形後のコークスの三次元モデル21を得る。本実施形態では、代表コークス1粒子あたり、5個(0,50,100,200,400[rev])のスキャンデータを1組とする三次元モデル21が得られた。
【0041】
(1.5)上記タンブラー試験により、各代表コークスのCSR値を得ることができる。各代表コークスの三次元モデル21に対応するCSR値は、教師データ22として用いられる。
【0042】
ここで、CSR(Coke Strength after Reaction)値は、上述の反応後強度であり、コークスの品質、特に硬度を評価することができる。CSR値は、初期状態のコークスの重量と、タンブラー試験後のコークスの重量とから算出でき、初期状態から粉化せずに最終的に残った割合を重量%で表したものである。例えば、CSR値が61.9の場合、タンブラー試験後のコークスの重量は初期状態のコークスの61.9%の重量であることを示す。従って、CSR値が高いほどコークスの硬度は高いことを示す。
【0043】
図4に、高CSR値(61.8)及び低CSR値(38.5)を有する代表コークスを例示する。コークスの破壊は、初期状態の粒子を大きく分断するように体積的に起こる破壊である体積破壊と、初期状態の粒子の表面が圧縮され微粉を発生する破壊である表面破壊とによって生じる。
図4に示すように、低CSR値のコークスは表面破壊に加え、体積破壊が生じやすいため、高CSR値のコークスに比べて破壊が進みやすい。
【0044】
生成部12は、取得部11が取得した三次元モデル21に基づき、四次元データ23を生成する。生成した四次元データ23はメモリ部20に格納されてよい。
【0045】
四次元データ23は、機械学習部13及び分類部14の処理対象のデータである。四次元とは、三次元モデル21のバッチ数と、三次元モデル21の三次元要素とからなることを意味する。ここで、バッチ数とは、学習用に選択するコークスの個数であり、三次元モデル21の三次元要素とは、三次元モデル21を配置した三次元の格子の高さ、幅、奥行きである。別言すると、四次元データ23は、(バッチ数,奥行き,高さ,幅)の四次元要素からなるデータである。
【0046】
四次元データ23は、三次元モデル21について、物質内の硬度分布に応じて三次元の格子上に複数種類のラベルをそれぞれ付与した複数バッチの三次元モデル21のデータである。具体的には、四次元データ23は、物質内に仮想される三次元の格子上の各部位に合致する座標に、形状変化の段階毎に、物質の粉化情報を埋め込んだデータである。硬度分布は、回転タンブラー内のコークスの形状変化によって定められる。別言すると、硬度分布は、タンブラー試験で回転衝撃を与えることでコークスの物質内の部位毎の硬度の差が形状の変化として現れたものである。
【0047】
図5(a)は、変形過程のコークスの断面図である。Ωは粉化領域を示し、回転数が増加するにつれて粉化領域はコークスの内側に向かって進んでいく。物質の表面形状を、所定の三次元の格子と格子内に配置された物質の表面との境界と捉えると、物質の変形過程は、検出された境界の移動距離として物質の表面座標上に数値化できると考えられる。以下、本実施形態における四次元データ23を生成する手法を説明する。
【0048】
本実施形態では、4種類のCSR値(A:61.9, B:59.2, C:40.5, D:38.5)のいずれかに該当する代表コークスの三次元モデル21を用いて四次元データ23を生成する。
【0049】
(2.1)始めに、生成部12は、所定の回転数の増加に応じたコークスの表面座標の変位を計算する。生成部12は、三次元モデル21全体を長さLの立方体空間(立方体領域)に配置し、当該立方体空間を間隔dxの正方格子のブロックに分割する。ブロックに分割することで、三次元形状の空間的特徴が捉えやすくなる。本実施形態では、間隔dxは64が採用され、従って、正方格子は64×64×64の大きさである。さらに、生成部12は、1辺dxの正方格子(ブロック)の各格子中心座標から、コークスの三角形メッシュ表面までの距離を計算する。計算にはLevel set関数(固相内部では正、外部では負となる関数)を用いることで、正の粒子のみ配置することで固体形状を数値化することができる。本実施形態では、上記データ処理には、Insight(登録商標)Meshman_ParticleGen_HPC Ver. 2.0.1を用いた。
【0050】
(2.2)次に、生成部12は、コークスの硬度分布に応じて三次元の格子上に複数種類のラベルを付与する。具体的には、生成部12は、上記(2.1)より得られた、三次元モデル21が配置された立方体空間のボクセルデータを構成する各立方格子に硬度分布を示すラベルを付与する。ここで、ボクセルデータとは、三次元形状を立方体の集合で表現したものである。当該ボクセルによって、物質の表面形状の部位の座標を特定することが容易になる。なお、データは、バイナリやテキストであってもよく、あるいは他の形式で記述されてもよい。
【0051】
さらに、生成部12が各ボクセルに数値化した硬度情報を埋め込む処理を、
図5(b)を参照して説明する。
図5(b)は、実施形態に係る情報処理装置1において、三次元の格子上にラベルを付与する処理を二次元の表で説明する図である。
図5(b)に示される表は、コークスの表面形状の部位、ここでは四角で囲まれた一定領域の粉化情報を数値化して表したものである。当該処理は三次元の処理であるが、説明の便宜上、
図5では、二次元の処理としてボクセルをピクセルに置き換えて表現している。
図5の例では、表の高さ及び幅はブロックの高さ及び奥行きにそれぞれ対応し、1マスの高さ及び幅はボクセルの高さ及び奥行きにそれぞれ対応する。
【0052】
表のマス目に記入された数字0~5は、コークスの存在(粉化)を示すラベルであり、三次元の格子上の部位(ボクセル)ごとに付与される。コークスが存在しない部位は「0」で示され、タンブラー試験で回転数の増加によって粉化せずに残った部位を、回転数の増加に応じて1~5の数字で示している。すなわち、数字1~5は硬度の高低に対応している。さらに、
図5(b)では、数字とともに色の濃淡で硬度の違いを示している。
【0053】
「0」が付与された領域と「1」が付与された領域との境界は、回転数0の時に得られた三次元モデル21の表面形状を示す。同様に、「1」が付与された領域と「2」が付与された領域との境界は、回転数50の回転衝撃を受けた後に得られた三次元モデル21の表面形状を示し、「2」が付与された領域と「3」が付与された領域との境界は、回転数100の回転衝撃を受けた後に得られた三次元モデル21の表面形状を示す。さらに、「3」が付与された領域と「4」が付与された領域との境界は、回転数200の回転衝撃を受けた後に得られた三次元モデル21の表面形状を示し、「4」が付与された領域と「5」が付与された領域との境界は、回転数400の回転衝撃を受けた後に得られた三次元モデル21の表面形状を示す。
【0054】
「1」の領域は、回転数0の回転衝撃で粉化せずに残った部位である。同様に、「2」の領域は、回転数50の回転衝撃で粉化せずに残った部位であり、「3」の領域は、回転数100の回転衝撃で粉化せずに残った部位である。さらに、「4」の領域は、回転数200の回転衝撃で粉化せずに残った部位であり、「5」の領域は、回転数400の回転衝撃で粉化せずに残った部位である。
【0055】
このように、3次元の格子上の部位は、1粒子あたりのコークスの変形過程そのものを示す情報である。別言すると、三次元の格子上の部位は、コークスの物質内の硬度分布を示す情報である。
【0056】
(2.3)生成部12は、上記手順で得られた三次元の格子上にラベルが付与された三次元モデル21のデータをランダムに複数選択し、これを1バッチとする。この1バッチのデータを四次元データ23として生成する。
図6に、実施形態に係る情報処理装置1において、ニューラルネットワークにより深層学習する例を示す。本実施形態では、8192個の四次元データ23からランダムに100個のデータを選択し、これを1バッチとした。本実施形態の四次元データ23は、(バッチ数,奥行き,高さ,幅)=(100,64,64,64)の四次元データである。なお、
図6の左端に示されるコークスの画像はイメージである。
【0057】
コークスは等方性があるため、三次元の格子内の三次元モデル21を回転させ、回転させた三次元モデル21に対して上記(2.1)~(2.3)の処理を行なうことで、複数の四次元データ23を生成することができる。従って、各代表コークスの1組の三次元モデル21があれば、任意の数のパターンの四次元データ23を得ることができる。本実施形態では、各代表コークスの1組の三次元モデル21から8パターンの四次元データ23を生成した。上述した四次元データ23は、機械学習部13によって機械学習されることから、機械学習用のデータ構造とも称される。
【0058】
機械学習部13は、入力部30を介して、四次元データ23の機械学習指示が入力されると、生成部12が生成した四次元データ23をニューラルネットワークに入力して出力データ24を得る。機械学習部13は、出力データ24の誤差が小さくなるように重みとバイアスを更新する。
【0059】
四次元データ23に教師データ22が付加されている場合、機械学習部13は、ニューラルネットワークの出力データ24と教師データ22との誤差に基づいて、当該誤差が小さくなるように重みとバイアスを更新する。
【0060】
本実施形態では、教師データ22が付与された四次元データ23を学習する。四次元データ23は、ランダムに選択した100個のデータで構成される1バッチの学習を1エポックとして、20エポックの学習を行なった。
【0061】
ここで用いられるニューラルネットワークは、例えば、
図6に示すように、入力層、中間層および出力層の3層を有し、入力層で四次元データ23の入力を受け付け、中間層で四次元データ23に対して畳み込み処理を行ない、出力層で一次元の全結合データを出力データ24として出力する。
【0062】
入力層では、四次元データ23を行列に変換する。本実施形態では、im2col(image to column)関数を使用した。これにより、中間層のフィルタにとって都合の良いように入力されたデータを展開できる。つまり、三次元の格子を横一列に展開して行列計算をより高速に実行できる。
【0063】
中間層では、四次元データ23に対してフィルタ要素を乗算してバイアスを加算する。中間層では、四次元データ23に含まれるコークスの変形過程の特徴を段階的に学習する。本実施形態の中間層は、フィルタ要素である、畳み込み層(T)、活性化関数(K)、プーリング層(P)、アフィン層(A)のいずれかの組み合わせで構成される。本実施形態では、畳み込み層では6層の深さで特徴抽出を行ない、活性化関数にはReLU関数を用いた。さらに、プーリング層でデータを圧縮し、アフィン層でデータの全結合を行なった。
図6における#1~#6は各要素の1~6層を示し、アルファベットT,K,P,Aは各層を示している。例えば、#1-Tは第1層目の畳み込み層を示す。
【0064】
出力層では、一次元の全結合データを出力データ24として出力する。本実施形態では、出力層は50個の隠れ層ニューロンを有する全結合層を介して、Softmax関数により4種類のCSR値の確率を出力する。機械学習部13は、出力された4種類のCSR値の確率を出力データ24として取得する。
【0065】
中間層の各層のフィルタ要素のサイズ(batch(バッチ数),channel(奥行),height(高さ),weight(幅))は任意に設定可能である。本実施形態では、フィルタ要素のサイズが、中間層の左端の#1-Tから右端の#1-Aに向かって徐々に小さくなっていくように設定した。
【0066】
機械学習部13は、出力データ24と教師データ22とを比較し、重みとバイアスパラーメータを更新する。本実施形態では、損失関数Eを計算した後に、誤差勾配を逆伝播法で求め、Adaptive Movement estimation(Adam)で最適化を行なうことで、重みとバイアスパラーメータを更新した。学習率は0.001と設定し、過学習を避けるためDropoutアルゴリズムを採用した。
【0067】
機械学習部13は、所定回数の機械学習を実行した場合、又は、誤差が所定値よりも小さくなった場合に機械学習を終了し、重み及びバイアス等の各種パラメータを分類モデル25としてメモリ部20に記憶してよい。また、機械学習部13は、出力データ24を、出力部40を介して、例えば、モニタ等の出力装置に表示してもよい。
【0068】
分類部14は、機械学習部13による四次元データ23の機械学習後に、新規の物質に関するデータを入力とした、機械学習済みの分類モデル25による分類結果を出力する。本実施形態では、分類部14は、出力データ24に基づいて生成した分類モデル25を用いて、コークスをコークスの硬度分布に応じてCSR値で分類する。別言すると、分類部14は、出力データ24を用いて、硬度分布に応じた物質の分類を実行する。分類結果は、物質の評価予測値であり、数値あるいはその他の表現で示されてよい。本実施形態の分類結果は、CSR予測値であり、例えば確率で示される。
【0069】
例えば、取得部11は、入力部30を介して、新規の(分類対象の)三次元モデル21を受信すると、分類対象の三次元モデル21としてメモリ部3に格納してよい。生成部42は、分類対象の三次元モデル21を用いて、上述した手法(1.1)~(1.4)及び(2.1)~(2.3)により、分類対象の四次元データ23を生成し、メモリ部20に格納してよい。
【0070】
分類部14は、メモリ部20を参照し、機械学習済みの分類モデル25を用いて、生成した分類対象の四次元データ23を分類する。例えば、分類部14は、機械学習済みの分類モデル25の重み及びバイアス等の各種パラメータを設定したニューラルネットワークを構築し、分類対象の四次元データ23をニューラルネットワークに入力して分類結果を取得してよい。さらに、取得した分類結果を出力データ24として、出力部40を介して、例えば、モニタ等の出力装置に表示(出力)してよい。
【0071】
〔A-3〕情報処理装置の動作
図7は、実施形態に係る情報処理方法による訓練段階の処理手順のフローチャートの例である。
【0072】
情報処理装置1の制御部10において、取得部11は、入力部30を介して三次元モデル21を取得し(ステップS1)、メモリ部20に格納する。さらに、取得部11は、三次元モデル21に紐づけられた教師データ22を取得してよい。なお、取得部11は、三次元モデル21をメモリ部20に格納すると、生成部12に生成指示を出力してもよい。
【0073】
生成部12は、例えば、取得部11又は入力部30から生成指示が入力されると、三次元モデル21に基づき、四次元データ23を生成して(ステップS2)、生成した四次元データ23をメモリ部3に格納する。四次元データ23は、上記(2.1)~(2.3)に記載の手法を用いて生成されてよい。
【0074】
機械学習部13は、例えば、生成部12から機械学習指示が入力されると、メモリ部3を参照し、四次元データ23を機械学習する(ステップS3)。機械学習は上述のニューラルネットワークで行われてよい。機械学習部13は、例えば、所定回数の機械学習が実行された場合、又は、ニューラルネットワークの出力データ24と教師データ22との誤差が所定値よりも小さくなった場合に機械学習を終了する。そして、機械学習部13は、重み及びバイアス等の各種パラメータ等を分類モデル25としてメモリ部20に格納し(ステップS4)、処理が終了する。なお、ステップS3の後に出力データ24を、出力部40を介して出力してもよい。
【0075】
図8は、実施形態に係る情報処理方法による分類段階の処理手順のフローチャートの例である。
【0076】
情報処理装置1の制御部10において、取得部11は、入力部30を介して、新規の(分類対象の)三次元モデル21を取得し(ステップS11)、メモリ部3に格納する。なお、取得部11は、三次元モデル21をメモリ部3に格納すると、生成部12に生成指示を出力してもよい。
【0077】
生成部12は、例えば、取得部11から生成指示が入力されると、三次元モデル21に基づき、四次元データ23を生成して(ステップS12)、生成した四次元データ23をメモリ部20に格納する。四次元データ23は、上記(2.1)~(2.3)に記載の手法を用いて生成されてよい。
【0078】
分類部14は、例えば、生成部12から分類指示が入力されると、メモリ部20を参照し、出力データ24に基づいて生成した分類モデル25を用いて、分類対象の四次元データ23を分類する(ステップS13)。分類部14は、分類モデル25の分類結果を、出力部40を介して出力し(ステップS14)、処理が終了する。
【0079】
〔A-4〕効果
(1)取得部11は、コークス(物質)の三次元モデル21を取得し、生成部12は、三次元モデル21について、コークスの物質内の硬度分布に応じて三次元の格子上に複数種類のラベルをそれぞれ付与し、複数種類のラベルを付与した複数バッチの前記三次元モデルのデータから、前記三次元モデルのバッチ数及び前記三次元モデルの三次元要素からなる四次元データ23を生成する。さらに、機械学習部13は、四次元データ23の入力を受け付け、四次元データ23に対して、フィルタ要素を乗算してバイアスを加算することによって畳み込み処理を行ない、一次元の全結合データを出力データ24として取得する。
【0080】
このように、本実施形態の情報処理プログラム1g、情報処理装置1及び情報処理方法によれば、物質が配置された三次元の格子における物質の表面形状の部位に合致する座標に、形状変化の段階毎に、物質の粉化情報を埋め込むことができる。これにより、1粒子のコークス形状の硬度分布という大きな容量のデータを三次元(バッチ数を含めると四次元)のデータとして得られるため、次元の増加を防ぎ、機械学習における計算コストを抑えることができる。さらに、CSR値毎のコークスの変形過程を学習することができる。
【0081】
(2)分類部14は、出力データ24を用いて、硬度分布に応じたコークスの分類を実行する。
【0082】
出力データ24を用いてニューラルネットワークの重み及びバイアス等のパラメータを更新することができ、得られた分類モデル25を用いて、CSR毎のコークスの変形特性を分類することができる。
【0083】
(3)三次元モデル21の硬度分布は、回転タンブラー内でのコークスの形状変化によって定められる。
【0084】
これにより、外力が継続的にかかる状況で時々刻々変形していく1粒子のコークス形状の時系列情報である三次元モデル21を得ることができる。さらに、各三次元モデル21に対応するCSR値である教師データ22を得ることができる。
【0085】
(4)生成部12は、回転タンブラーの回転数の増加によって粉化せずに残った格子上の部位ごとに、複数種類のラベルを付与する。
【0086】
これにより、1粒子のコークスの形状の変化した箇所が特定できるとともに、粉化の進行状態を確認できるため、コークスの変形過程を正確に把握できる。
【0087】
(5)入力部30は、制御部10の処理に必要な情報及び指示を制御部10に入力し、出力部40は、制御部10の処理によって得られた情報を出力する。
【0088】
これにより、本実施形態の情報処理プログラム1g、情報処理装置1及び情報処理方法は、外部から処理に必要な情報(コークス(物質)の三次元データ)を得て、処理結果(コークス(物質)のCSR値の確率,CSR予測値(評価予測値))を外部に示すことが可能である。
【0089】
(6)また、上述したコークスの三次元モデル21から生成される四次元データ23は、コンピュータで処理される機械学習用のデータ構造である。
【0090】
当該データ構造は、コンピュータが機械学習処理を行なうために用いられるものであるから、プログラムに準ずるものであり、その効果も上述した情報処理プログラム1gで記載した効果を有する。
【0091】
上述の構成により、CSR値毎のコークスの変形特性を分類することができた。そこで、上記分類モデル25をより発展させて、CSR値を入力してコークスの変形過程を逆算的に算出することが期待される。CSR値から算出されるコークスの変形過程を上述の動力学モデルによる運動シミュレーション等に組み込めば、コークスの物質内の変形の力学応答の計算を省略できるため、高炉全体のコークスの挙動を解析する際の計算コストを大幅に低減することができる。
【0092】
〔A-5〕評価
図9は、上述の情報処理方法を層の数を変更して学習した場合の分類精度を比較するグラフである。機械学習部13のニューラルネットワークの層は1層又は6層に設定した。
図9では、訓練対象の四次元データを用いて機械学習を行なった訓練結果(train)を破線で示し、分類対象の四次元データを分類モデルで分類したテスト結果(test)を実線で示す。
【0093】
訓練結果(train)を見ると、訓練対象の四次元データでは99%以上の正答率が得られた。また、テスト結果(test)を見ると、分類対象の四次元データでは97%以上の正答率が得られた。このことから、本実施形態に係る情報処理方法によれば、CSR毎のコークスの変形を正確に分類できることが確認できた。
【0094】
層の数の違いに着目すると、1層の方が6層よりもエポックの増加に対する正答率の上昇が早い。すなわち、1層の方が6層の場合よりもコークスの変形を高速に認識できる。6層が1層に比べて認識のスピードが遅い理由は、機械学習及び分類時に過学習を低減するアルゴリズムが働くことで、ニューロンがランダムに消去(dropout)されるためである。従って、変形の認識のスピードは劣るが、6層でコークスの変形特性の機械学習及び分類を行なう方が過学習が抑えられるため、精度の高い分類結果が得られると考える。
【0095】
図10は、上述の情報処理方法を6層のニューラルネットワークで実行した場合の損失関数Eの推移であり、損失関数Eは徐々に低減することが確認できた。
【0096】
〔B〕その他
上述した一実施形態に係る技術は、以下のように変形、変更して実施することができる。
【0097】
例えば、
図1に示す情報処理装置1が備える取得部11、生成部12、機械学習部13、分類部14は、任意の組み合わせで併合してもよく、それぞれ分割してもよい。
【0098】
本実施形態では、三次元モデル21から四次元データ23を生成しているが、三次元モデル21はポリゴンデータの他、その前段階であるスキャン(点群)データ、その後段階であるサーフェスデータであってもよく、また、ボクセルデータとして取得されてもよいが、これらに限られない。
【0099】
本実施形態ではコークスを例に挙げて説明したが、本実施形態はコークス以外の物質にも適用可能である。すなわち、本実施形態における情報処理プログラム1g、情報処理装置1及び情報処理方法によれば、コークス以外の物質の三次元モデルについて、前記物質内の硬度分布に応じて三次元の格子上に複数種類のラベルをそれぞれ付与し、前記複数種類のラベルを付与した複数バッチの前記三次元モデルのデータを、前記三次元モデルのバッチ数及び前記三次元モデルの三次元要素からなる四次元データとして入力を受け付け、前記四次元データに対して、フィルタ要素を乗算してバイアスを加算することによって畳み込み処理を行ない、一次元の全結合データを出力データとして取得することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 情報処理装置(コンピュータ)
1a プロセッサ
1b メモリ
1c 記憶部
1d IF部
1e IO部
1f 読取部
1g プログラム(情報処理プログラム)
1h 記録媒体
10 制御部
11 取得部
12 生成部
13 機械学習部
14 分類部
20 メモリ部
21 三次元モデル
22 教師データ
23 四次元データ(データ構造)
24 出力データ
25 分類モデル
30 入力部
40 出力部