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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189588
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】シャフトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
B23K20/00 310L
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098248
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000144614
【氏名又は名称】株式会社三條機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】刈谷 博之
(72)【発明者】
【氏名】関根 隆尋
(72)【発明者】
【氏名】服部 文彦
(72)【発明者】
【氏名】五井 一志
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 亮
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA03
4E167AA05
4E167AA13
4E167BA05
4E167BA10
4E167CB01
4E167CB03
4E167CC03
4E167DA04
4E167DA10
(57)【要約】
【課題】円筒状部材(パイプ部材)の両端に連結部材が接合された中空シャフトをより効率的に製造可能とする、これまでにないシャフトの製造方法を提供する。
【解決手段】円筒状部材10の端部に連結部材11が設けられたシャフトを製造する方法であって、端部に雄螺子部5が形成された円筒状部材10を準備する準備工程と、前記雄螺子部5に螺合する雌螺子部6を有する前記連結部材11を該雄螺子部5に螺合する螺合工程と、螺合した前記連結部材11による締め付けにより、前記連結部材11と前記円筒状部材10の対向端面同士を押し付けた状態で加熱して該対向端面同士の拡散接合を行う拡散接合工程とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状部材の端部に連結部材が設けられたシャフトを製造する方法であって、
端部に雄螺子部が形成された円筒状部材を準備する準備工程と、
前記雄螺子部に螺合する雌螺子部を有する前記連結部材を該雄螺子部に螺合する螺合工程と、
螺合した前記連結部材による締め付けにより、前記連結部材と前記円筒状部材の対向端面同士を押し付けた状態で加熱して該対向端面同士の拡散接合を行う拡散接合工程とを含むことを特徴とするシャフトの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のシャフトの製造方法において、前記円筒状部材は、第一半筒体と第二半筒体とを互いの対向端部同士を向かい合わせて円筒状としたものであることを特徴とするシャフトの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のシャフトの製造方法において、前記拡散接合工程は、前記第一半筒体と第二半筒体との対向端部同士を拡散接合する工程を含むことを特徴とするシャフトの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のシャフトの製造方法において、前記拡散接合工程は、前記連結部材による締め付けにより、前記連結部材と前記円筒状部材の対向端面同士を押し付けた状態で且つ前記第一半筒体と前記第二半筒体の前記対向端部同士を押し付けた状態で加熱し、前記連結部材と前記円筒状部材の前記対向端面同士の拡散接合及び前記第一半筒体と前記第二半筒体の前記対向端部同士の拡散接合を行うことを特徴とするシャフトの製造方法。
【請求項5】
請求項2~4いずれか1項に記載のシャフトの製造方法において、前記第一半筒体の対向端部には第一係合部が設けられ、前記第二半筒体の対向端部には前記第一係合部と係合する第二係合部が設けられていることを特徴とするシャフトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モーター等のシャフトとして、既製のパイプ部材の両端に、ギアやスプラインが設けられた連結部材が摩擦圧接により接合された中空シャフトが用いられることがある(特許文献1参照)。例えば電気自動車(EV)用モーターのシャフトなどのように、軽量化の要請が強い場合に、この中空シャフトが採用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-258236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、円筒状部材(パイプ部材)の両端に連結部材が接合された中空シャフトをより効率的に製造可能とする、これまでにないシャフトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0006】
円筒状部材10の端部に連結部材11が設けられたシャフトを製造する方法であって、
端部に雄螺子部5が形成された円筒状部材10を準備する準備工程と、
前記雄螺子部5に螺合する雌螺子部6を有する前記連結部材11を該雄螺子部5に螺合する螺合工程と、
螺合した前記連結部材11による締め付けにより、前記連結部材11と前記円筒状部材10の対向端面同士を押し付けた状態で加熱して該対向端面同士の拡散接合を行う拡散接合工程とを含むことを特徴とするシャフトの製造方法に係るものである。
【0007】
また、請求項1記載のシャフトの製造方法において、前記円筒状部材10は、第一半筒体1と第二半筒体2とを互いの対向端部同士を向かい合わせて円筒状としたものであることを特徴とするシャフトの製造方法に係るものである。
【0008】
また、請求項2記載のシャフトの製造方法において、前記拡散接合工程は、前記第一半筒体1と第二半筒体2との対向端部同士を拡散接合する工程を含むことを特徴とするシャフトの製造方法に係るものである。
【0009】
また、請求項3記載のシャフトの製造方法において、前記拡散接合工程は、前記連結部材11による締め付けにより、前記連結部材11と前記円筒状部材10の対向端面同士を押し付けた状態で且つ前記第一半筒体1と前記第二半筒体2の前記対向端部同士を押し付けた状態で加熱し、前記連結部材11と前記円筒状部材10の前記対向端面同士の拡散接合及び前記第一半筒体1と前記第二半筒体2の前記対向端部同士の拡散接合を行うことを特徴とするシャフトの製造方法に係るものである。
【0010】
また、請求項2~4いずれか1項に記載のシャフトの製造方法において、前記第一半筒体1の対向端部には第一係合部3が設けられ、前記第二半筒体2の対向端部には前記第一係合部3と係合する第二係合部4が設けられていることを特徴とするシャフトの製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のようにするから、円筒状部材の両端に連結部材が接合された中空シャフトをより効率的に製造可能とする、これまでにないシャフトの製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例の工程概略説明図である。
図2】本実施例の工程概略説明図である。
図3】円筒状部材10の概略説明端面図である。
図4】第一係合部3及び第二係合部4の形状の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0014】
円筒状部材10の端部に雄螺子部5を形成し、この雄螺子部5に連結部材11の雌螺子部6を螺合することで、円筒状部材10の端部に連結部材11を設ける。
【0015】
そして、円筒状部材10と連結部材11の対向端面同士を押し付け合うように円筒部材を螺動せしめ、この連結部材11による締め付けにより、連結部材11と円筒状部材10の対向端面同士を押し付け合わせた状態で該対向端面同士の拡散接合を行う。
【0016】
すなわち、円筒状部材10の端部に連結部材11を押し付ける状態を作出するための治具等を別途用いることなく、連結部材11自身の螺動により円筒状部材10に押し付けて拡散接合することができ、それだけ簡易に且つ効率的にシャフトを製造することが可能となる。
【0017】
また、例えば円筒状部材10として半円筒状の第一半筒体1と第二半筒体2とを向かい合わせて円筒状としたものを採用した場合には、連結部材11により第一半筒体1と第二半筒体2の対向端部同士を押し付け合わせた状態で円筒形状を維持することができ、しかも、前記連結部材11と円筒状部材10との対向端面同士を拡散接合する際に、同時に第一半筒体1と第二半筒体2の対向端部同士の拡散接合を行うことが可能となる。
【実施例0018】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0019】
本実施例は、円筒状部材10の端部に、ギアやスプライン等の係合部が設けられた金属製の連結部材11が設けられたシャフトを製造する方法である。
【0020】
具体的には、端部に雄螺子部5が形成された円筒状部材10を準備する準備工程と、前記雄螺子部5に螺合する雌螺子部6を有する前記連結部材11を該雄螺子部5に螺合する螺合工程と、螺合した前記連結部材11による締め付けにより、前記連結部材11と前記円筒状部材10の対向端面同士を押し付けた状態で該対向端面同士の拡散接合を行う拡散接合工程とを含むものである。
【0021】
円筒状部材10としては、既存のパイプ部材(円筒部材)を採用しても良いし、半円筒状の第一半筒体1と第二半筒体2とを向かい合わせて円筒状としたものを採用しても良い。本実施例では、第一半筒体1と第二半筒体2とからなるものを採用している。
【0022】
なお、螺合工程前に第一半筒体1と第二半筒体2とが必ずしも接合して一体化している必要はない。すなわち、第一半筒体1と第二半筒体2とは後述するように、拡散接合工程において接合するようにしても良い。
【0023】
本実施例の第一半筒体1及び第二半筒体2は、筒状部材を概ね二分割した半円筒状の例えば高張力鋼、ステンレス鋼またはチタン合金等の金属製の部材であり、第一係合部3と第二係合部4の形状を除き、同形である。第一半筒体1及び第二半筒体2の素材は同一金属素材としても異種金属素材としても良い。
【0024】
本実施例では、図3に図示したように、第一半筒体1の対向端部には、夫々第一係合部3が設けられ、第二半筒体2の対向端部には夫々第一係合部3と係合する第二係合部4が設けられている。第一係合部3と第二係合部4とが係合することで、径方向へのずれが防止され円筒形状が維持される。第一係合部3及び第二係合部4の形状は、凹凸嵌合する形状であれば適宜設定できる。
【0025】
第一半筒体1と第二半筒体2の重合面1a・2a(第一係合部3及び第二係合部4の互いに接触する面)の面粗度は、Ra0.4~Ra1.6程度とするのが好ましい。0.4未満では、加工難易度が高い割に接合品質の飛躍的な向上が期待できず、1.6を超えると接合品質が低下するためである。
【0026】
連結部材11は、素材を冷間または熱間鍛造により外側ほど段階的に径小となるように中空加工した後、外面に機械加工(切削加工、ギア加工、スプライン転造など)によりギア部やスプライン部を形成したものを用いる。また、円筒状部材10との圧接面は切削加工により形成される。
【0027】
なお、本実施例では第一半筒体1と第二半筒体2との対向方向Xに対して直交する方向Yに対してのずれが抑制される構成であれば良く、係合状態においてX方向に対しての移動は阻害されない構成としている(種々の形状が考えられるが、例えば、第一係合部3及び第二係合部4を拡大した図4の(a)乃至(e)及び(g)乃至(p)のような構成。図3は(d)に相当。)。また、例えば、図4の(f)、(q)及び(r)のようなX方向に対して抜けない形状(両者を係合した状態で接合していなくとも治具を使用せずに円筒形状を自己保持可能な構成)としても良い。(d)乃至(f)の形状(z字状や逆z字状)では重合面を広く取ることができ、それだけ良好に拡散接合できる。
【0028】
また、X方向に対して抜けない抜け止め係合する形状において、第一半筒体1若しくは第二半筒体2自身の弾性を利用して、拡散接合面となる第一係合部3と第二係合部4の重合面を押し付け合った状態とすることができる構成としてもよい。
【0029】
製造工程について具体的に説明する。
【0030】
半円筒体に第一係合部3が形成された第一半筒体1を作製すると共に、半円筒体に第一係合部3と合致する第二係合部4が形成された第二半筒体2を作製する。
【0031】
第一半筒体1及び第二半筒体2の第一係合部3及び第二係合部4を円筒形状をなすように係合させ、円筒状部材10(第一半筒体1及び第二半筒体2)の円筒形状を適宜な治具で保持した状態で(図1(a))、円筒状部材10の両端部にネジ加工により雄螺子部5を形成し(図1(b))、両端に雄螺子部5が形成された円筒状部材10を得る(準備工程)。
【0032】
雄螺子部5を形成した際に外周部分に形成される外方を向く面10aと、連結部材11の雌螺子部6の開口部外周に存在する端面11aとが、円筒状部材10と連結部材11の対向端面となる。
【0033】
また、準備工程を行うと共に、各雄螺子部5と螺合する雌螺子部6が内周面に形成された連結部材11を一対準備する(図1(c))。
【0034】
続いて、円筒状部材10の両端部に夫々連結部材11を螺合せしめる(螺合工程。図2(d))。連結部材11による締め付け度合いは適宜調整し、円筒状部材10と連結部材11の対向端面同士の接触度合い(面圧)を調整する。例えば、締め付けトルクにより面圧を管理・調整することができる(例えば50~100N・m程度とする。)。
【0035】
そして、円筒状部材10と連結部材11の対向端面同士が所定の圧力で押し付け合う状態で加熱炉内に導入し、加熱炉内部を真空雰囲気若しくは不活性雰囲気とした状態で加熱して拡散接合を行う(拡散接合工程。図2(e))。例えば、10-6Paから10-3Pa程度の真空雰囲気で900℃~1000℃程度に加熱し、所定時間(数十分~数時間)保持することで拡散接合を行う。
【0036】
すなわち、連結部材11による締め付けにより、連結部材11と円筒状部材10の対向端面同士を押し付けた状態で且つ第一半筒体1と第二半筒体2の対向端部同士を押し付けた状態で加熱し、連結部材11と円筒状部材10の対向端面同士Aの拡散接合及び第一半筒体1と第二半筒体2の対向端部同士Bの拡散接合を行う。
【0037】
この際、円筒状部材の第一半筒体1と第二半筒体2の円筒形状は、連結部材11により維持されており、例えば雄螺子部5と雌螺子部6の径を適宜設定することで、第一半筒体1と第二半筒体2との対向端部同士を所定の圧力で押し付け合う状態とすることができる。したがって、連結部材11を円筒状部材10の両端部に螺合することで第一係合部3と第二係合部4との接触状態(押付状態)が維持されて、第一半筒体1及び第二半筒体2も同時に拡散接合することが可能となる。
【0038】
拡散接合工程後、例えば200℃程度まで冷却してから、加熱炉から取り出し円筒状部材10の両端に連結部材11が設けられたシャフトを得る(図2(f))。
【0039】
得られたシャフトは、EV用モーター用のシャフトなどに用いることができる。
【0040】
なお、拡散接合工程後、円筒状部材10と連結部材11との連結部の外面側の凹凸等を除去するために切削・研磨等の仕上げ加工(外仕上げ工程)を行ってもよい。さらに、拡散接合工程後、円筒状部材10の対向端部の内面側の凹凸等を除去するための切削・研磨等の仕上げ加工(内仕上げ工程)を行ってもよい。
【0041】
本実施例は上述のようにしたから、円筒状部材10の両端部に雄螺子部5を形成し、この雄螺子部5に連結部材11の雌螺子部6を螺合することで、円筒状部材10の端部に連結部材11を設け、円筒状部材10と連結部材11の対向端面同士を押し付け合うように円筒部材を螺動せしめ、この連結部材11による締め付けにより、連結部材11と円筒状部材10の対向端面同士を押し付け合わせた状態で該対向端面同士の拡散接合を行うことができる。
【0042】
すなわち、円筒状部材10の端部に連結部材11を押し付ける状態を作出するための治具等を別途用いることなく、連結部材11自身の螺動により円筒状部材10に押し付けて拡散接合することができ、それだけ簡易に且つ効率的にシャフトを製造することが可能となる。
【0043】
また、背景技術で述べたように、円筒状部材10の端部に連結部材11を接合する際に摩擦圧接を用いることがあるが、摩擦圧接では量産工程における製品個々の欠陥検出手法がなく品質保証することが一般的には難しい。
【0044】
この点、本発明では、円筒状部材10の端部に連結部材11を螺合し、連結部材11による締め付けにより、連結部材11と円筒状部材10の対向端面同士を押し付けた状態で加熱して該対向端面同士の拡散接合を行うことで、螺合強度に加えて拡散接合強度が付与されることにより、接合部の品質保証が容易になる。
【0045】
また、円筒状部材10として半円筒状の第一半筒体1と第二半筒体2とを向かい合わせて円筒状としたものを採用しても、連結部材11により第一半筒体1と第二半筒体2の対向端部同士を押し付け合わせた状態で円筒形状を維持することができ、しかも、前記連結部材11と円筒状部材10との対向端面同士を拡散接合する際に、同時に第一半筒体1と第二半筒体2の対向端部同士の拡散接合を行うことが可能となる。
【0046】
したがって、円筒状部材10を既存のパイプ部材に限らず、任意の素材で構成することができ、素材選択の幅を広げることが可能となり、さらに、半円筒部材を予め接合したものを採用する場合より、工数を削減できる。
【0047】
よって、本実施例は、円筒状部材の両端に連結部材が接合された中空シャフトをより効率的に製造可能とする、これまでにないシャフトの製造方法となる。
【符号の説明】
【0048】
1 第一半筒体
2 第二半筒体
3 第一係合部
4 第二係合部
5 雄螺子部
6 雌螺子部
10 円筒状部材
11 連結部材
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状部材の端部に連結部材が設けられたシャフトを製造する方法であって、
端部に雄螺子部が形成された円筒状部材を準備する準備工程と、
前記雄螺子部に螺合する雌螺子部を有する前記連結部材を該雄螺子部に螺合する螺合工程と、
前記円筒状部材と前記連結部材の対向端面同士を直接接触させ当該接触面の面圧を、前記螺合による締め付け度合いにより調整する面圧調整工程と、
螺合した前記連結部材による締め付けにより、前記連結部材と前記円筒状部材の対向端面同士を前記面圧調整工程により適正に押し付けた状態として加熱し、前記対向端面同士を直接拡散接合する拡散接合工程とを含むことを特徴とするシャフトの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のシャフトの製造方法において、前記円筒状部材は、第一半筒体と第二半筒体とを互いの対向端部同士を向かい合わせて円筒状としたものであることを特徴とするシャフトの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のシャフトの製造方法において、前記拡散接合工程は、前記第一半筒体と第二半筒体との対向端部同士を拡散接合する工程を含むことを特徴とするシャフトの製造方法。
【請求項4】
円筒状部材の端部に連結部材が設けられたシャフトを製造する方法であって、
第一半筒体と第二半筒体とを互いの対向端部同士を向かい合わせて円筒状とされ端部に雄螺子部が形成された円筒状部材を準備する準備工程と、
前記雄螺子部に螺合する雌螺子部を有する前記連結部材を該雄螺子部に螺合する螺合工程と、
螺合した前記連結部材による締め付けにより、前記連結部材と前記円筒状部材の対向端面同士を押し付けた状態で且つ前記第一半筒体と前記第二半筒体の前記対向端部同士を押し付けた状態で加熱し、前記連結部材と前記円筒状部材の前記対向端面同士の拡散接合及び前記第一半筒体と前記第二半筒体の前記対向端部同士の拡散接合を行うことを特徴とするシャフトの製造方法。
【請求項5】
請求項2~4いずれか1項に記載のシャフトの製造方法において、前記第一半筒体の対向端部には第一係合部が設けられ、前記第二半筒体の対向端部には前記第一係合部と係合する第二係合部が設けられていることを特徴とするシャフトの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モーター等のシャフトとして、既製のパイプ部材の両端に、ギアやスプラインが設けられた連結部材が摩擦圧接により接合された中空シャフトが用いられることがある(特許文献1参照)。例えば電気自動車(EV)用モーターのシャフトなどのように、軽量化の要請が強い場合に、この中空シャフトが採用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-258236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、円筒状部材(パイプ部材)の両端に連結部材が接合された中空シャフトをより効率的に製造可能とする、これまでにないシャフトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0006】
円筒状部材10の端部に連結部材11が設けられたシャフトを製造する方法であって、
端部に雄螺子部5が形成された円筒状部材10を準備する準備工程と、
前記雄螺子部5に螺合する雌螺子部6を有する前記連結部材11を該雄螺子部5に螺合する螺合工程と、
前記円筒状部材10と前記連結部材11の対向端面同士を直接接触させ当該接触面の面圧を、前記螺合による締め付け度合いにより調整する面圧調整工程と、
螺合した前記連結部材11による締め付けにより、前記連結部材11と前記円筒状部材10の対向端面同士を前記面圧調整工程により適正に押し付けた状態として加熱し、前記対向端面同士を直接拡散接合する拡散接合工程とを含むことを特徴とするシャフトの製造方法に係るものである。
【0007】
また、請求項1記載のシャフトの製造方法において、前記円筒状部材10は、第一半筒体1と第二半筒体2とを互いの対向端部同士を向かい合わせて円筒状としたものであることを特徴とするシャフトの製造方法に係るものである。
【0008】
また、請求項2記載のシャフトの製造方法において、前記拡散接合工程は、前記第一半筒体1と第二半筒体2との対向端部同士を拡散接合する工程を含むことを特徴とするシャフトの製造方法に係るものである。
【0009】
また、円筒状部材10の端部に連結部材11が設けられたシャフトを製造する方法であって、
第一半筒体1と第二半筒体2とを互いの対向端部同士を向かい合わせて円筒状とされ端部に雄螺子部5が形成された円筒状部材10を準備する準備工程と、
前記雄螺子部5に螺合する雌螺子部6を有する前記連結部材11を該雄螺子部5に螺合する螺合工程と、
螺合した前記連結部材11による締め付けにより、前記連結部材11と前記円筒状部材10の対向端面同士を押し付けた状態で且つ前記第一半筒体1と前記第二半筒体2の前記対向端部同士を押し付けた状態で加熱し、前記連結部材11と前記円筒状部材10の前記対向端面同士の拡散接合及び前記第一半筒体1と前記第二半筒体2の前記対向端部同士の拡散接合を行うことを特徴とするシャフトの製造方法に係るものである。
【0010】
また、請求項2~4いずれか1項に記載のシャフトの製造方法において、前記第一半筒体1の対向端部には第一係合部3が設けられ、前記第二半筒体2の対向端部には前記第一係合部3と係合する第二係合部4が設けられていることを特徴とするシャフトの製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のようにするから、円筒状部材の両端に連結部材が接合された中空シャフトをより効率的に製造可能とする、これまでにないシャフトの製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例の工程概略説明図である。
図2】本実施例の工程概略説明図である。
図3】円筒状部材10の概略説明端面図である。
図4】第一係合部3及び第二係合部4の形状の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0014】
円筒状部材10の端部に雄螺子部5を形成し、この雄螺子部5に連結部材11の雌螺子部6を螺合することで、円筒状部材10の端部に連結部材11を設ける。
【0015】
そして、円筒状部材10と連結部材11の対向端面同士を押し付け合うように円筒部材を螺動せしめ、この連結部材11による締め付けにより、連結部材11と円筒状部材10の対向端面同士を押し付け合わせた状態で該対向端面同士の拡散接合を行う。
【0016】
すなわち、円筒状部材10の端部に連結部材11を押し付ける状態を作出するための治具等を別途用いることなく、連結部材11自身の螺動により円筒状部材10に押し付けて拡散接合することができ、それだけ簡易に且つ効率的にシャフトを製造することが可能となる。
【0017】
また、例えば円筒状部材10として半円筒状の第一半筒体1と第二半筒体2とを向かい合わせて円筒状としたものを採用した場合には、連結部材11により第一半筒体1と第二半筒体2の対向端部同士を押し付け合わせた状態で円筒形状を維持することができ、しかも、前記連結部材11と円筒状部材10との対向端面同士を拡散接合する際に、同時に第一半筒体1と第二半筒体2の対向端部同士の拡散接合を行うことが可能となる。
【実施例0018】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0019】
本実施例は、円筒状部材10の端部に、ギアやスプライン等の係合部が設けられた金属製の連結部材11が設けられたシャフトを製造する方法である。
【0020】
具体的には、端部に雄螺子部5が形成された円筒状部材10を準備する準備工程と、前記雄螺子部5に螺合する雌螺子部6を有する前記連結部材11を該雄螺子部5に螺合する螺合工程と、螺合した前記連結部材11による締め付けにより、前記連結部材11と前記円筒状部材10の対向端面同士を押し付けた状態で該対向端面同士の拡散接合を行う拡散接合工程とを含むものである。
【0021】
円筒状部材10としては、既存のパイプ部材(円筒部材)を採用しても良いし、半円筒状の第一半筒体1と第二半筒体2とを向かい合わせて円筒状としたものを採用しても良い。本実施例では、第一半筒体1と第二半筒体2とからなるものを採用している。
【0022】
なお、螺合工程前に第一半筒体1と第二半筒体2とが必ずしも接合して一体化している必要はない。すなわち、第一半筒体1と第二半筒体2とは後述するように、拡散接合工程において接合するようにしても良い。
【0023】
本実施例の第一半筒体1及び第二半筒体2は、筒状部材を概ね二分割した半円筒状の例えば高張力鋼、ステンレス鋼またはチタン合金等の金属製の部材であり、第一係合部3と第二係合部4の形状を除き、同形である。第一半筒体1及び第二半筒体2の素材は同一金属素材としても異種金属素材としても良い。
【0024】
本実施例では、図3に図示したように、第一半筒体1の対向端部には、夫々第一係合部3が設けられ、第二半筒体2の対向端部には夫々第一係合部3と係合する第二係合部4が設けられている。第一係合部3と第二係合部4とが係合することで、径方向へのずれが防止され円筒形状が維持される。第一係合部3及び第二係合部4の形状は、凹凸嵌合する形状であれば適宜設定できる。
【0025】
第一半筒体1と第二半筒体2の重合面1a・2a(第一係合部3及び第二係合部4の互いに接触する面)の面粗度は、Ra0.4~Ra1.6程度とするのが好ましい。0.4未満では、加工難易度が高い割に接合品質の飛躍的な向上が期待できず、1.6を超えると接合品質が低下するためである。
【0026】
連結部材11は、素材を冷間または熱間鍛造により外側ほど段階的に径小となるように中空加工した後、外面に機械加工(切削加工、ギア加工、スプライン転造など)によりギア部やスプライン部を形成したものを用いる。また、円筒状部材10との圧接面は切削加工により形成される。
【0027】
なお、本実施例では第一半筒体1と第二半筒体2との対向方向Xに対して直交する方向Yに対してのずれが抑制される構成であれば良く、係合状態においてX方向に対しての移動は阻害されない構成としている(種々の形状が考えられるが、例えば、第一係合部3及び第二係合部4を拡大した図4の(a)乃至(e)及び(g)乃至(p)のような構成。図3は(d)に相当。)。また、例えば、図4の(f)、(q)及び(r)のようなX方向に対して抜けない形状(両者を係合した状態で接合していなくとも治具を使用せずに円筒形状を自己保持可能な構成)としても良い。(d)乃至(f)の形状(z字状や逆z字状)では重合面を広く取ることができ、それだけ良好に拡散接合できる。
【0028】
また、X方向に対して抜けない抜け止め係合する形状において、第一半筒体1若しくは第二半筒体2自身の弾性を利用して、拡散接合面となる第一係合部3と第二係合部4の重合面を押し付け合った状態とすることができる構成としてもよい。
【0029】
製造工程について具体的に説明する。
【0030】
半円筒体に第一係合部3が形成された第一半筒体1を作製すると共に、半円筒体に第一係合部3と合致する第二係合部4が形成された第二半筒体2を作製する。
【0031】
第一半筒体1及び第二半筒体2の第一係合部3及び第二係合部4を円筒形状をなすように係合させ、円筒状部材10(第一半筒体1及び第二半筒体2)の円筒形状を適宜な治具で保持した状態で(図1(a))、円筒状部材10の両端部にネジ加工により雄螺子部5を形成し(図1(b))、両端に雄螺子部5が形成された円筒状部材10を得る(準備工程)。
【0032】
雄螺子部5を形成した際に外周部分に形成される外方を向く面10aと、連結部材11の雌螺子部6の開口部外周に存在する端面11aとが、円筒状部材10と連結部材11の対向端面となる。
【0033】
また、準備工程を行うと共に、各雄螺子部5と螺合する雌螺子部6が内周面に形成された連結部材11を一対準備する(図1(c))。
【0034】
続いて、円筒状部材10の両端部に夫々連結部材11を螺合せしめる(螺合工程。図2(d))。連結部材11による締め付け度合いは適宜調整し、円筒状部材10と連結部材11の対向端面同士の接触度合い(面圧)を調整する。例えば、締め付けトルクにより面圧を管理・調整することができる(例えば50~100N・m程度とする。)。
【0035】
そして、円筒状部材10と連結部材11の対向端面同士が所定の圧力で押し付け合う状態で加熱炉内に導入し、加熱炉内部を真空雰囲気若しくは不活性雰囲気とした状態で加熱して拡散接合を行う(拡散接合工程。図2(e))。例えば、10-6Paから10-3Pa程度の真空雰囲気で900℃~1000℃程度に加熱し、所定時間(数十分~数時間)保持することで拡散接合を行う。
【0036】
すなわち、連結部材11による締め付けにより、連結部材11と円筒状部材10の対向端面同士を押し付けた状態で且つ第一半筒体1と第二半筒体2の対向端部同士を押し付けた状態で加熱し、連結部材11と円筒状部材10の対向端面同士Aの拡散接合及び第一半筒体1と第二半筒体2の対向端部同士Bの拡散接合を行う。
【0037】
この際、円筒状部材の第一半筒体1と第二半筒体2の円筒形状は、連結部材11により維持されており、例えば雄螺子部5と雌螺子部6の径を適宜設定することで、第一半筒体1と第二半筒体2との対向端部同士を所定の圧力で押し付け合う状態とすることができる。したがって、連結部材11を円筒状部材10の両端部に螺合することで第一係合部3と第二係合部4との接触状態(押付状態)が維持されて、第一半筒体1及び第二半筒体2も同時に拡散接合することが可能となる。
【0038】
拡散接合工程後、例えば200℃程度まで冷却してから、加熱炉から取り出し円筒状部材10の両端に連結部材11が設けられたシャフトを得る(図2(f))。
【0039】
得られたシャフトは、EV用モーター用のシャフトなどに用いることができる。
【0040】
なお、拡散接合工程後、円筒状部材10と連結部材11との連結部の外面側の凹凸等を除去するために切削・研磨等の仕上げ加工(外仕上げ工程)を行ってもよい。さらに、拡散接合工程後、円筒状部材10の対向端部の内面側の凹凸等を除去するための切削・研磨等の仕上げ加工(内仕上げ工程)を行ってもよい。
【0041】
本実施例は上述のようにしたから、円筒状部材10の両端部に雄螺子部5を形成し、この雄螺子部5に連結部材11の雌螺子部6を螺合することで、円筒状部材10の端部に連結部材11を設け、円筒状部材10と連結部材11の対向端面同士を押し付け合うように円筒部材を螺動せしめ、この連結部材11による締め付けにより、連結部材11と円筒状部材10の対向端面同士を押し付け合わせた状態で該対向端面同士の拡散接合を行うことができる。
【0042】
すなわち、円筒状部材10の端部に連結部材11を押し付ける状態を作出するための治具等を別途用いることなく、連結部材11自身の螺動により円筒状部材10に押し付けて拡散接合することができ、それだけ簡易に且つ効率的にシャフトを製造することが可能となる。
【0043】
また、背景技術で述べたように、円筒状部材10の端部に連結部材11を接合する際に摩擦圧接を用いることがあるが、摩擦圧接では量産工程における製品個々の欠陥検出手法がなく品質保証することが一般的には難しい。
【0044】
この点、本発明では、円筒状部材10の端部に連結部材11を螺合し、連結部材11による締め付けにより、連結部材11と円筒状部材10の対向端面同士を押し付けた状態で加熱して該対向端面同士の拡散接合を行うことで、螺合強度に加えて拡散接合強度が付与されることにより、接合部の品質保証が容易になる。
【0045】
また、円筒状部材10として半円筒状の第一半筒体1と第二半筒体2とを向かい合わせて円筒状としたものを採用しても、連結部材11により第一半筒体1と第二半筒体2の対向端部同士を押し付け合わせた状態で円筒形状を維持することができ、しかも、前記連結部材11と円筒状部材10との対向端面同士を拡散接合する際に、同時に第一半筒体1と第二半筒体2の対向端部同士の拡散接合を行うことが可能となる。
【0046】
したがって、円筒状部材10を既存のパイプ部材に限らず、任意の素材で構成することができ、素材選択の幅を広げることが可能となり、さらに、半円筒部材を予め接合したものを採用する場合より、工数を削減できる。
【0047】
よって、本実施例は、円筒状部材の両端に連結部材が接合された中空シャフトをより効率的に製造可能とする、これまでにないシャフトの製造方法となる。
【符号の説明】
【0048】
1 第一半筒体
2 第二半筒体
3 第一係合部
4 第二係合部
5 雄螺子部
6 雌螺子部
10 円筒状部材
11 連結部材