(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189597
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ハードコートフィルム、光学部材、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 1/14 20150101AFI20221215BHJP
G02B 1/115 20150101ALI20221215BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20221215BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20221215BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20221215BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221215BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20221215BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221215BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G02B1/14
G02B1/115
G02B1/18
G02B5/30
B32B7/023
B32B27/00 M
G02F1/1335 510
G09F9/00 302
G02F1/1333
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098260
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幸大
(72)【発明者】
【氏名】淵田 岳仁
(72)【発明者】
【氏名】水川 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】角田 豊
(72)【発明者】
【氏名】安藤 豪彦
【テーマコード(参考)】
2H149
2H189
2H291
2K009
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
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2K009CC03
2K009CC09
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4F100AA20B
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5G435AA06
5G435AA14
5G435BB05
5G435BB06
5G435BB12
5G435HH05
(57)【要約】
【課題】 表面の耐摩耗性と折り曲げ耐性とを両立させたハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】 本発明のハードコートフィルム10は、光透過性基材(A)11の少なくとも一方の面上に、ハードコート層(B)12、光学機能層(C)13及び防汚層(D)14が前記順序で積層されている。防汚層(D)14は、元素としてフッ素を含む。光透過性基材(A)11の平均厚みdS[μm]、ハードコート層(B)12の平均厚みdH[μm]及び光学機能層(C)13の平均厚みdI[μm]は、下記数式(1)及び(2)の関係を満たす。
0.2≦dH×dI≦4 (1)
0.02≦(dH+dI)/dS≦0.62 (2)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材(A)の少なくとも一方の面上に、ハードコート層(B)、光学機能層(C)及び防汚層(D)が前記順序で積層され、
前記防汚層(D)は、元素としてフッ素を含み、
前記光透過性基材(A)、前記ハードコート層(B)及び前記光学機能層(C)の平均厚みが、下記数式(1)及び(2)の関係を満たすことを特徴とするハードコートフィルム。
0.2≦dH×dI≦4 (1)
0.02≦(dH+dI)/dS≦0.62 (2)
前記数式(1)及び(2)において、
dSは、前記光透過性基材(A)の平均厚み[μm]であり、
dHは、前記ハードコート層(B)の平均厚み[μm]であり、
dIは、前記光学機能層(C)の平均厚み[μm]である。
【請求項2】
前記防汚層(D)において、前記基材(A)とは反対側の面における表面粗さが1~10nmの範囲である請求項1記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層(B)の平均厚みが2~12μmの範囲である請求項1又は2記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記光透過性基材(A)の平均厚みが100μm以下である請求項1から3のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記防汚層(D)の平均厚みが1~30nmの範囲である請求項1から4のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
前記ハードコート層(B)が、有機樹脂、酸化ケイ素、酸化チタン及び酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも一つを含む請求項1から5のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のハードコートフィルムを含む光学部材。
【請求項8】
偏光板である請求項7記載の光学部材。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載のハードコートフィルム、又は請求項7若しくは8記載の光学部材を含む画像表示装置。
【請求項10】
前記ハードコートフィルムは、前記光透過性基材(A)の一方のみの面上に、前記ハードコート層(B)、前記光学機能層(C)及び前記防汚層(D)が前記順序で積層され、
前記光透過性基材(A)の他方の面上に粘接着層が積層され、
前記ハードコートフィルムは、前記粘接着層によって、ガラスを含む部材又はプラスチックフィルムに貼付されている請求項9記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルム、光学部材、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードコートフィルムは、フィルム表面にハードコート層を設けて表面の強度等を高めたフィルムであり、画像表示装置に広く用いられている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、画像表示装置として、可撓性を有するフレキシブルディスプレイ装置等の需要が高まっている。そのような用途にハードコートフィルムを用いる場合、表面の耐摩耗性だけでなく、折り曲げ耐性も必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、表面の耐摩耗性と折り曲げ耐性とを両立させたハードコートフィルム、光学部材、及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のハードコートフィルムは、
光透過性基材(A)の少なくとも一方の面上に、ハードコート層(B)、光学機能層(C)及び防汚層(D)が前記順序で積層され、
前記防汚層(D)は、元素としてフッ素を含み、
前記光透過性基材(A)、前記ハードコート層(B)及び前記光学機能層(C)の平均厚みが、下記数式(1)及び(2)の関係を満たすことを特徴とするハードコートフィルム。
0.2≦dH×dI≦4 (1)
0.02≦(dH+dI)/dS≦0.62 (2)
前記数式(1)及び(2)において、
dSは、前記光透過性基材(A)の平均厚み[μm]であり、
dHは、前記ハードコート層(B)の平均厚み[μm]であり、
dIは、前記光学機能層(C)の平均厚み[μm]である。
【0007】
本発明の光学部材は、本発明のハードコートフィルムを含む光学部材である。
【0008】
本発明の画像表示装置は、本発明のハードコートフィルム、又は本発明の光学部材を含む画像表示装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面の耐摩耗性と折り曲げ耐性とを両立させたハードコートフィルム、光学部材、及び画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のハードコートフィルムの構成を例示する断面図である。
【
図2】
図2は、本発明のハードコートフィルムの別の例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施例の折り曲げ耐性試験の方法を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により、なんら限定されない。
【0012】
本発明のハードコートフィルムは、例えば、前記防汚層(D)において、前記基材(A)とは反対側の面における表面粗さが1~10nmの範囲であってもよい。
【0013】
本発明のハードコートフィルムは、例えば、前記ハードコート層(B)の平均厚みが2~12μmの範囲であってもよい。
【0014】
本発明のハードコートフィルムは、例えば、前記光透過性基材(A)の平均厚みが100μm以下であってもよい。
【0015】
本発明のハードコートフィルムは、例えば、前記防汚層(D)の平均厚みが1~30nmの範囲であってもよい。
【0016】
本発明のハードコートフィルムは、例えば、前記ハードコート層(B)が、有機樹脂、酸化ケイ素、酸化チタン及び酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0017】
本発明の光学部材は、例えば、偏光板であってもよい。
【0018】
本発明の画像表示装置において、例えば、
前記ハードコートフィルムは、前記光透過性基材(A)の一方のみの面上に、前記ハードコート層(B)、前記光学機能層(C)及び前記防汚層(D)が前記順序で積層され、
前記光透過性基材(A)の他方の面上に粘接着層が積層され、
前記ハードコートフィルムは、前記粘接着層によって、ガラスを含む部材又はプラスチックフィルムに貼付されていてもよい。
【0019】
なお、本発明において、「重量」と「質量」とは、特に断らない限り、互いに読み替えてもよいものとする。例えば、「質量部」は「重量部」と読み替えてもよく、「重量部」は「質量部」と読み替えてもよく、「質量%」は「重量%」と読み替えてもよく、「重量%」は「質量%」と読み替えてもよいものとする。
【0020】
[1.ハードコートフィルム]
本発明のハードコートフィルムは、前述のとおり、
光透過性基材(A)の少なくとも一方の面上に、ハードコート層(B)、光学機能層(C)及び防汚層(D)が前記順序で積層され、
前記防汚層(D)は、元素としてフッ素を含み、
前記光透過性基材(A)、前記ハードコート層(B)及び前記光学機能層(C)の平均厚みが、下記数式(1)及び(2)の関係を満たすことを特徴とするハードコートフィルム。
0.2≦dH×dI≦4 (1)
0.02≦(dH+dI)/dS≦0.62 (2)
前記数式(1)及び(2)において、
dSは、前記光透過性基材(A)の平均厚み[μm]であり、
dHは、前記ハードコート層(B)の平均厚み[μm]であり、
dIは、前記光学機能層(C)の平均厚み[μm]である。
【0021】
[1-1.ハードコートフィルムの構成等]
図1の断面図に、本発明のハードコートフィルムの構成の一例を模式的に示す。図示のとおり、このハードコートフィルム10は、光透過性基材(A)11の少なくとも一方の面上に、ハードコート層(B)12、光学機能層(C)13及び防汚層(D)14が前記順序で積層されている。防汚層(D)14は、元素としてフッ素を含む。同図において、dSは、光透過性基材(A)11の平均厚み[μm]である。dHは、ハードコート層(B)12の平均厚み[μm]である。dIは、光学機能層(C)13の平均厚み[μm]である。dFは、防汚層(D)14の平均厚み[μm]である。光透過性基材(A)11の平均厚みdS[μm]、ハードコート層(B)12の平均厚みdH[μm]及び光学機能層(C)13の平均厚みdI[μm]は、前記数式(1)及び(2)の関係を満たす。
【0022】
なお、本発明において、「上に」又は「面上に」は、上に、又は面上に直接接触した状態でもよいし、他の層等を介した状態でもよい。
【0023】
図2の断面図に、本発明のハードコートフィルムの別の一例を模式的に示す。図示のとおり、このハードコートフィルム10Aは、光透過性基材(A)11の少なくとも一方の面上に、ハードコート層(B)12、光学機能層(C)13及び防汚層(D)14が前記順序で積層されている。防汚層(D)14は、元素としてフッ素を含む。
図1では各層の表面が平坦であったが、
図2では、ハードコート層(B)12における光透過性基材(A)11と反対側の表面に凹凸が形成されている。ハードコート層(B)12上に形成されている光学機能層(C)13及び防汚層(D)14の表面も、ハードコート層(B)12表面と同様の凹凸形状を有している。また、
図2では、ハードコート層(B)12が粒子を含む。図示のとおり、ハードコート層(B)12は、樹脂層12a中に粒子12bが含まれて形成されている。
【0024】
なお、本発明において、「上に」又は「面上に」は、上に、又は面上に直接接触した状態でもよいし、他の層等を介した状態でもよい。例えば、
図1及び2では、光透過性基材(A)11、ハードコート層(B)12、光学機能層(C)13及び防汚層(D)14が直接積層されているが、後述するように、他の層を介して積層されていてもよい。
【0025】
本発明のハードコートフィルムにおいて、前記(A)~(D)の各層は、例えば
図1のように平坦でもよいし、例えば
図2のように凹凸が形成されていてもよい。
【0026】
本発明のハードコートフィルムにおいて、前記(A)~(D)の各層の「平均厚み」の測定方法は、特に限定されないが、例えば、リニアゲージ、TEM(透過電子顕微鏡)、蛍光X線等を用いて測定可能であり、具体的には、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。また、例えば、各層(例えば前記ハードコート層(B))の表面に凹凸があって各部の厚みにばらつきがある場合であっても、例えば、1μm平方の視野での撮像で任意の3点の厚みを測定し、さらに、同様にして1μm平方の視野で5か所測定し、合計15点の厚みの測定結果を平均した数値を平均厚みとすれば、平均厚みを測定できる。
【0027】
前述のとおり、本発明のハードコートフィルムは、下記数式(1)を満たす。すなわち、前記ハードコート層(B)の平均厚みdH[μm]と前記光学機能層(C)の平均厚みdI[μm]との積が、0.2~4の範囲である。
0.2≦dH×dI≦4 (1)
【0028】
前記ハードコート層(B)の平均厚みdH[μm]と前記光学機能層(C)の平均厚みdI[μm]との積dH×dIが0.2未満の場合、ハードコートフィルムの機械的強度が低下し、耐摩耗性が不十分となる。dH[μm]×dI[μm]が4を超える場合、ハードコートフィルムが硬くなりすぎて靭性が不足するため折り曲げ耐性が不十分となり、折り曲げた際にハードコートフィルムの破壊が起こるおそれがある。dH[μm]×dI[μm]は、例えば、0.2以上、0.3以上、0.4以上、又は0.5以上であってもよく、例えば、4.0以下、3.5以下、3.0以下、又は2.5以下であってもよく、例えば、0.2~4.0、0.3~3.5、0.4~3.0、又は0.5~2.5であってもよい。
【0029】
前述のとおり、本発明のハードコートフィルムは、下記数式(2)を満たす。すなわち、前記ハードコート層(B)の平均厚みdH[μm]と前記ハードコート層(B)の平均厚みdH[μm]とを足して前記光透過性基材(A)の平均厚みdS[μm]で割った数値が、0.02~0.62の範囲である。
0.02≦(dH+dI)/dS≦0.62 (2)
【0030】
(dH[μm]+dI[μm])/dS[μm]が0.02未満であることは、ハードコートフィルムにおいて、硬さを担保する前記ハードコート層(B)の厚みと前記光学機能層(C)の厚みとの合計に対し、前記ハードコート層(B)及び前記光学機能層(C)と比較して弾性率が低い前記光透過性基材(A)の厚みが比率として大きすぎることを意味する。このような場合、ハードコートフィルム全体で強度の弱い部材が構成の大部分を占めることにより、耐摩耗性が低くなる。一方、(dH[μm]+dI[μm])/dS[μm]が0.62を超える場合、ハードコートフィルム全体で硬度が大きい部分の占める割合が大きすぎるため、折り曲げ耐性が低くなる。(dH[μm]+dI[μm])/dS[μm]は、例えば、0.02以上、0.03以上、0.04以上、又は0.05以上であってもよく、例えば、0.6以下、0.5以下、0.4以下、又は0.3以下であってもよく、例えば、0.02~0.6、0.03~0.5、0.04~0.4、又は0.05~0.3であってもよい。
【0031】
また、本発明のハードコートフィルムは、前記光透過性基材(A)、前記ハードコート層(B)、前記光学機能層(C)及び前記防汚層(D)以外の他の層を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。例えば、前記光透過性基材(A)、前記ハードコート層(B)、前記光学機能層(C)及び前記防汚層(D)は、それぞれ、直接積層されていてもよいが、粘接着層等の他の層を介して積層されていてもよい。また、例えば、前記防汚層(D)の外側に他の層が積層されていてもよいし、積層されていなくてもよい。
【0032】
なお、本発明において、「粘接着層」は「粘着層又は接着層」を意味する。「粘着層」は「粘着剤により形成された層」を意味する。「接着層」は「接着剤により形成された層」を意味する。一般に、接着力(粘着力)が比較的小さく被着体の再剥離が可能なものを「粘着剤」と呼び、接着力(粘着力)が比較的大きく被着体の再剥離が不可能又は困難なものを「接着剤」と呼んで区別する場合がある。本発明では、接着力(粘着力)が比較的小さいものを「粘着剤」と呼び、接着力(粘着力)が比較的大きいものを「接着剤」と呼ぶが、両者に明確な区別は無い。
【0033】
前記粘接着層は、例えば、粘着剤(粘着剤組成物)により形成された粘着層でもよい。前記粘着層の厚みは、特に限定されないが、例えば、5μm以上、10μm以上、20μm以上、又は25μm以上であってもよいし、例えば、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、又は20μm以下であってもよい。前記粘着剤は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー等が挙げられる。これらは、例えば、溶媒に溶解又は分散させて溶液又は分散液の形態とし、それを前記粘着剤(粘着剤組成物)として用いてもよい。前記溶媒としては、例えば、酢酸エチル等が挙げられ、1種類のみ用いても複数種類併用してもよい。前記溶液又は分散液中の溶質又は分散質(例えば、前記アクリル系ポリマー)の濃度は、例えば、10質量%以上、又は15質量%以上であってもよく、例えば、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、又は25質量%以下であってもよい。なお、本発明において、「(メタ)アクリル系ポリマー」は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリルアミドの少なくとも一種類のモノマーの重合体又は共重合体をいう。また、本発明において、(メタ)アクリル酸は、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方」を意味し、「(メタ)アクリル酸エステル」は、「アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの少なくとも一方」を意味する。前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸の直鎖又は分枝アルキルエステル等があげられる。前記(メタ)アクリル酸の直鎖又は分枝アルキルエステルにおいて、アルキル基の炭素数は、例えば、1以上、2以上、3以上、又は4以上であってもよく、例えば、18以下、16以下、14以下、12以下、10以下、又は8以下であってもよい。前記アルキル基は、例えば、1又は複数の置換基で置換されていても置換されていなくてもよい。前記置換基は、例えば、水酸基等が挙げられ、複数の場合は、同一でも異なっていてもよい。前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。また、前記粘着剤は、一種類のみ用いてもよいし、複数種類併用してもよい。
【0034】
つぎに、前記(A)~(D)の各層について、例を挙げて説明する。
【0035】
[1-2.光透過性基材(A)]
前記光透過性基材(A)は、特に限定されないが、例えば、一般的なハードコートフィルムに用いられる光透過性基材と同様であってもよく、具体的には、例えば、透明プラスチックフィルム基材等が挙げられる。前記透明プラスチックフィルム基材は、特に制限されないが、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下のもの)が好ましく、例えば、特開2008-90263号公報に記載の透明プラスチックフィルム基材が挙げられる。前記透明プラスチックフィルム基材としては、光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。本発明のハードコートフィルムは、例えば、保護フィルムとして偏光板に使用することもでき、この場合には、前記透明プラスチックフィルム基材としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン等から形成されたフィルムが好ましい。また、本発明において、前記透明プラスチックフィルム基材は、偏光子自体であってもよい。このような構成であると、TAC等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので、偏光板もしくは画像表示装置の製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、このような構成であれば、偏光板を、より薄層化することができる。なお、前記透明プラスチックフィルム基材が偏光子である場合には、例えば、前記非透明層が、保護層としての役割を果たすことになる。また、このような構成であれば、本発明のハードコートフィルムは、例えば、液晶セル表面に装着される場合、カバープレートとしての機能を兼ねることになる。
【0036】
本発明において、前記光透過性基材(A)の平均厚みは、特に制限されないが、例えば、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、又は50μm以上であってもよく、例えば、前述のとおり100μm以下であってもよく、例えば、90μm以下、80μm以下、70μm以下、又は60μm以下であってもよく、例えば、10~100μm、20~90μm、30~80μm、40~70μm、又は50~60μmであってもよい。加工性の確保、耐折り曲げ性の観点からは、前記光透過性基材(A)の平均厚みが大きすぎないことが好ましい。強度不足の観点からは、前記光透過性基材(A)の平均厚みが小さすぎないことが好ましい。また、前記光透過性基材(A)の平均厚みの測定方法は特に限定されないが、例えば、後述する実施例のようにリニアゲージを用いて測定することができる。
【0037】
前記光透過性基材(A)の屈折率は、特に制限されない。前記屈折率は、例えば、1.30~1.80または1.40~1.70の範囲である。
【0038】
なお、本発明において、「屈折率」は、特に断らない限り、波長550nmの屈折率をいう。また、本発明において、屈折率の測定方法は、特に限定されないが、粒子等の微細な物質の屈折率の場合は、例えば、ベッケ法を用いて測定できる。ベッケ法とは、スライドガラス上で標準屈折液に測定試料を分散させ、顕微鏡で観察した際に、試料の輪郭が消えるか、またはぼやけるときの標準屈折液の屈折率をその試料の屈折率とする測定法である。また、ベッケ法で屈折率を測定できない測定対象物(例えば、防眩性フィルム、防眩層、または防眩層を構成する樹脂等)の屈折率の測定方法は、特に限定されないが、例えば、一般的な屈折計(屈折率測定用の機器)を用いて測定できる。前記屈折計も特に限定されないが、例えば、アッベ屈折計等が挙げられる。前記アッベ屈折計としては、例えば、株式会社アタゴ製の多波長アッベ屈折計DR-M2/1550(商品名)が挙げられる。
【0039】
[1-3.ハードコート層(B)]
前記ハードコート層(B)は、特に限定されず、例えば、一般的なハードコートフィルムのハードコート層と同様又はそれに準じてもよい。例えば、前記ハードコート層(B)は、樹脂層により形成されていてもよい。また、例えば、前記ハードコート層(B)は、フィラー、チキソトロピー付与剤、表面調整剤、顔料、染料等を、それぞれ含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記フィラーは、特に限定されないが、例えば、粒子等であってもよい。前記粒子は、特に限定されず、例えば、有機粒子でも無機粒子でもよいし、例えば、不定形粒子でも球形粒子でもよい。前記ハードコート層(B)の形成材料について、詳しくは後述する。
【0040】
本発明において、前記ハードコート層(B)の平均厚みは、特に制限されないが、例えば、0.5μm以上、1.0μm以上、1.5μm以上、2.0μm以上、又は2.5μm以上であってもよく、例えば、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、又は10μm以下であってもよく、例えば、0.5~30μm、1.0~25μm、101.5~20μm、2.0~15μm、又は2.5~10μmであってもよい。カール防止、加工不良発生防止の観点からは、前記ハードコート層(B)の平均厚みが大きすぎないことが好ましい。鉛筆硬度低下防止、硬度不足防止の観点からは、前記ハードコート層(B)の平均厚みが小さすぎないことが好ましい。前記ハードコート層(B)の平均厚みの測定方法は特に限定されないが、例えば、後述する実施例のようにリニアゲージを用いて測定することができる。
【0041】
本発明において、前記ハードコート層(B)の、前記基材(A)とは反対側の面における表面粗さは、特に制限されないが、例えば、1nm以上、1.5nm以上、2.0nm以上、2.5nm以上、又は3.0nm以上であってもよく、例えば、10nm以下、9.5nm以下、9.0nm以下、8.5nm以下、又は8.0nm以下であってもよく、例えば、1~10nm、1.5~9.5nm、2.0~9.0nm、2.5~8.5nm、又は3.0~8.0nmであってもよい。なお、以下において、本発明のハードコートフィルムの各層の「表面粗さ」は、特に断らない限り、前記基材(A)とは反対側の面における表面粗さをいう。前記ハードコート層(B)の表面粗さは、例えば、前記ハードコート層(B)と前記光学機能層(C)との密着性に影響する。また、ヘイズ防止、表面の傷つき防止の観点からは、前記ハードコート層(B)の表面粗さが大きすぎないことが好ましい。前記光学機能層(C)との密着性不良防止、アンチブロッキング性低下防止の観点からは、前記ハードコート層(B)の表面粗さが小さすぎないことが好ましい。
【0042】
本発明において、ハードコートフィルムの各層等における表面粗さRaの測定方法は、特に限定されないが、例えば、下記の測定方法により測定できる。本発明のハードコートフィルムにおいては、最外層の表面粗さを測定すれば、その下の層の表面粗さは、通常は、前記最外層の表面粗さにほぼ等しいと推定できる。前記防汚層(D)の上に他の層が形成されていない場合は、前記防汚層(D)が最外層となる。例えば、前記防汚層(D)が最外層である場合、前記防汚層(D)の表面粗さを測定すれば、通常は、前記光学機能層(C)及び前記ハードコート層(B)の表面粗さは、前記防汚層(D)の表面粗さの測定値にほぼ等しいと推定できる。
【0043】
[表面粗さRaの測定方法]
本発明のハードコートフィルムにおける前記防汚層(D)表面を、原子間力顕微鏡(商品名「SPI3800」、セイコーインスツルメンツ社製)によって観察し、1μm四方の観察像に基づいて、表面粗さRa(算術平均粗さ)を算出する。
【0044】
[1-4.光学機能層(C)]
前記光学機能層(C)は、例えば、反射防止機能を有する反射防止層であってもよい。また、前記光学機能層(C)は、例えば、無機物質により形成された無機層であってもよい。なお、本発明において「無機物質」は、例えば、後述する有機無機ハイブリッド材料も含むものとする。前記光学機能層(C)の形成材料である無機物質は、特に限定されないが、例えば、金属、金属酸化物、ケイ素及びケイ素酸化物からなる群から選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。以下、前記光学機能層(C)について、例を挙げて説明する。
【0045】
前記光学機能層(C)において、前記金属は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、亜鉛、スズ、インジウム、ガリウム、ジルコニウム、鉛等が挙げられる。前記金属酸化物は、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム(例えばAl2O3)、亜鉛スズ複合酸化物(ZTO)、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、ガリウム亜鉛複合酸化物(GZO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)等が挙げられる。本発明において、前記ケイ素酸化物は、例えば、SiOx(0<x≦2)で表される化合物である。前記ケイ素酸化物は、特に限定されないが、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)等が挙げられる。
【0046】
前記光学機能層(C)の形成材料は特に限定されず、一般的な光学フィルム(例えばハードコートフィルム)における光学機能層と同様でもよい。例えば、前記光学機能層(C)が反射防止層である場合は、その形成材料は、一般的な反射防止層と同様でもよい。例えば、前記光学機能層(C)が無機層である場合は、その形成材料は、一般的な無機層と同様でもよい。また、前記光学機能層(C)は、一層のみからなっていてもよいし、複数の層から形成されていてもよい。前記光学機能層(C)の各層は、それぞれ一種類の形成材料のみからなっていてもよいし、複数種類の形成材料が併用されていてもよい。例えば、前記光学機能層(C)が、密着層と他の層との積層体であってもよい。具体的には、例えば、前記ハードコート層(B)と前記他の層との密着性を高めるために、まず、前記ハードコート層(B)上に前記密着層を形成し、さらにその上に前記他の層を形成してもよい。前記密着層は、例えば、ITO層でもよい。なお、ITOは、高屈折率で、かつ光を吸収しやすいため、ITO層の厚みが大きすぎると、例えば、反射防止性能が低下するおそれがある。このため、前記光学機能層(C)が反射防止層である場合は、ITO層の厚みを大きくし過ぎないことが好ましい。
【0047】
前記光学機能層(C)は、例えば、有機無機ハイブリッド材料等を含んでいてもよい。前記有機無機ハイブリッド材料は、特に限定されないが、例えば、ポリシロキサン樹脂、シルセスキオキサン樹脂等が挙げられる。また、前記光学機能層(C)は、例えば、無機物質以外の他の成分を、含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。前記他の成分は、例えば、有機化合物でもよい。前記有機化合物は、特に限定されないが、例えば、各種樹脂等でもよい。前記樹脂は特に限定されないが、例えば、前記光透過性基材(A)の形成材料として使用できる樹脂と同様であってもよく、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。前記樹脂は、例えば、アクリル樹脂等であってもよい。例えば、前記光学機能層(C)が、アクリル樹脂と酸化ジルコニウムとの混合物、又はアクリル樹脂と酸化ケイ素(シリカ)との混合物等により形成されていてもよい。前記光学機能層(C)が前記他の成分を含む場合、その含有率は、特に限定されないが、例えば、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下あってもよく、下限値は特に限定されないが、例えば0質量%を超える数値である。
【0048】
前記光学機能層(C)を形成する方法は、特に限定されないが、いわゆるドライプロセス(溶媒を用いない形成方法)が好ましい。具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及び化学気相成長法(CVD)からなる群から選択される少なくとも一つの方法により形成してもよい。真空蒸着法、スパッタリング法、及び化学気相成長法(CVD)を行う具体的な方法も特に限定されず、例えば、一般的な方法と同様又はそれに準じてもよい。
【0049】
本発明の前記光学機能層(C)を形成する方法は、特に限定されない。例えば、無機物質を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、及び化学気相成長法(CVD)からなる群から選択される少なくとも一つの方法により、ある程度以上の厚みの前記光学機能層(C)を形成することで、本発明の前記光学機能層(C)を形成することができる。前記無機物質は、特に限定されないが、例えば、前述のとおり、金属、金属酸化物、ケイ素及びケイ素酸化物からなる群から選択される少なくとも一つの材料を含んでいてもよい。
【0050】
前記光学機能層(C)の平均厚みは、特に限定されないが、例えば、0.05μm以上、0.06μm以上、0.07μm以上、0.08μm以上、又は0.09μm以上であってもよく、例えば、0.5μm以下、0.4μm以下、0.3μm以下、0.2μm以下、又は0.1μm以下であってもよく、例えば、0.05~0.5μm、0.06~0.4μm、0.07~0.3μm、0.08~0.2μm、又は0.09~0.1μmであってもよい。耐折り曲げ性低下防止の観点からは、前記光学機能層(C)の平均厚みが大きすぎないことが好ましい。耐摺動性低下防止の観点からは、前記光学機能層(C)の平均厚みが小さすぎないことが好ましい。前記光学機能層(C)の平均厚みの測定方法は、特に限定されないが、例えば、後述する実施例のようにTEM(透過電子顕微鏡)を用いて測定することができる。
【0051】
本発明において、前記光学機能層(C)の表面粗さは、特に制限されないが、例えば、前記ハードコート層(B)の表面粗さと同様である。また、ヘイズ防止、表面の傷つき防止の観点からは、前記光学機能層(C)の表面粗さが大きすぎないことが好ましい。前記防汚層(D)との密着性不良防止、アンチブロッキング性低下防止の観点からは、前記光学機能層(C)の表面粗さが小さすぎないことが好ましい。
【0052】
[1-5.防汚層(D)]
前記防汚層(D)は、特に限定されないが、例えば、一般的な光学部材等に持ちいれられる防汚層と同様又はそれに準じてもよい。前記防汚層(D)は、前述のとおり、元素としてフッ素を含む。具体的には、例えば、前記防汚層(D)が、防汚成分として、フッ素の単体及びフッ素化合物の少なくとも一方を含んでいてもよい。前記防汚成分としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロポリエーテル基を有する有機シラン化合物等が挙げられる。また、前記防汚層(D)は、前記防汚成分以外の他の成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記防汚層(D)が前記他の成分を含む場合、その含有率は、特に限定されないが、例えば、50質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下であってもよく、下限値は特に限定されないが、例えば0質量%を超える数値である。
【0053】
前記防汚層(D)は、元素としてフッ素を含むことで、例えば、薄い膜厚でも高い防汚性を発揮できるため、前記光学機能層(C)の光学機能を阻害しにくい。なお、前記光学機能層(C)の光学機能としては、例えば、反射防止機能等が挙げられる。また、前記防汚層(D)は、元素としてフッ素を含むことで、例えば、低屈折率を実現できて前記光学機能層(C)との屈折率差が小さくなる。これにより、例えば、前記防汚層(D)が前記光学機能層(C)の反射スペクトルを変化させにくく、前記光学機能層(C)の光学機能(例えば反射防止機能等)を阻害しにくい。チタン酸化物等の防汚層と比較した場合、本発明における前記防汚層(D)は、例えば、前述のとおり、低屈折率を実現できる。また、チタン酸化物等の防汚層は、ドライプロセス(溶媒を用いない形成方法)以外の方法で形成することが困難である。このため、防汚層の厚みが大きいと、生産性が低くなるおそれがある。これに対し、本発明における前記防汚層(D)は、その形成材料にもよるが、例えば、ウェットコーティング、蒸着処理等の様々な方法で製膜(形成)することが可能であり、その形成方法は限定されない。
【0054】
前記防汚層(D)を形成する方法は、前述のとおり特に限定されないが、いわゆるドライプロセス(溶媒を用いない形成方法)が好ましい。具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及び化学気相成長法(CVD)からなる群から選択される少なくとも一つの方法により形成してもよい。真空蒸着法、スパッタリング法、及び化学気相成長法(CVD)を行う具体的な方法も特に限定されず、例えば、一般的な方法と同様又はそれに準じてもよい。
【0055】
前記防汚層(D)の平均厚みは、特に限定されないが、例えば、1nm以上、2nm以上、3nm以上、4nm以上、又は5nm以上であってもよく、例えば、30nm以下、28nm以下、26nm以下、24nm以下、又は22nm以下であってもよく、例えば、1~30nm、2~28nm、3~26nm、4~24nm、又は5~22nmであってもよい。膜脱離(前記防汚層(D)の剥離)防止の観点からは、前記防汚層(D)の平均厚みが大きすぎないことが好ましい。耐摩耗性低下防止、防汚性低下防止の観点からは、前記防汚層(D)の平均厚みが小さすぎないことが好ましい。前記防汚層(D)の平均厚みの測定方法は、特に限定されないが、例えば、後述する実施例のように蛍光X線を用いて測定することができる。
【0056】
本発明において、前記防汚層(D)の表面粗さは、特に制限されないが、例えば、1nm以上、1nm以上、1.5nm以上、2.0nm以上、2.5nm以上、又は3.0nm以上であってもよく、例えば、10nm以下、9.5nm以下、9.0nm以下、8.5nm以下、又は8.0nm以下であってもよく、例えば、1~10nm、1.5~9.5nm、2.0~9.0nm、2.5~8.5nm、又は3.0~8.0nmであってもよい。表面粗さの測定方法は、特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。ヘイズ防止、キズの入りやすさの観点からは、前記防汚層(D)の表面粗さが大きすぎないことが好ましい。アンチブロッキング性の観点からは、前記防汚層(D)の表面粗さが小さすぎないことが好ましい。
【0057】
本発明において、前記防汚層(D)表面(前記基材(A)とは反対側の表面における表面)の水接触角は、特に限定されないが、例えば、95°以上、100°以上、105°以上、110°以上、又は115°以上であってもよい。汚れ防止性能の観点からは、前記防汚層(D)の水接触角が大きすぎないことが好ましい。
【0058】
[1-6.その他]
本発明のハードコートフィルムは、例えば、クリアフィルム又は防眩性フィルム(AGフィルムともいう)として使用できる。例えば、防眩性フィルムとして用いるためには、例えば、前記ハードコート層(B)に防眩性(AG性)を持たせればよい。
【0059】
本発明のハードコートフィルムは、例えば、前記ハードコートフィルム全体の波長550nmにおける光透過率が90%以上であってもよい。前記ハードコートフィルム全体の波長550nmにおける光透過率は、例えば、90%以上、92%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上であってもよく、例えば、100%以下、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、95%以下、94%以下、93%以下、92%以下、又は90%以下であってもよく、例えば、90~100%、90~99%、90~98%、90~97%、90~96%、90~95%、90~94%、90~93%、90~92%、92~100%、92~99%、92~98%、92~97%、92~96%、92~95%、92~94%、92~93%、94~100%、94~99%、94~98%、94~97%、94~96%、94~95%、95~100%、95~99%、95~98%、95~97%、95~96%、96~100%、96~99%、96~98%、96~97%、97~100%、97~99%、97~98%、98~100%、98~99%、又は99~100%であってもよい。ハードコートフィルム全体の光透過率が高いことにより、例えば、偏光板化した際に明るさを損なわない、透明度が高いため外観検査がしやすい、等の利点がある。
【0060】
なお、本発明において、光透過率の測定方法は、特に限定されないが、例えば、下記の測定方法により測定できる。
【0061】
[光透過率の測定方法]
・装置:積分球式分光透過率測定器(商品名:DOT-3C、村上色彩技術研究所製)
・測定モード:全光線透過率&色彩計算
・光源:D65光源
・視野角:2度視野
・以上の設定で気温23度、湿度50%の測定条件で、波長550nmでの光透過率を測定する。
【0062】
[2.ハードコートフィルムの製造方法]
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、特に限定されず、例えば、一般的なハードコートフィルムの製造方法と同様にして、又はそれに準じて行うことができる。以下に、本発明のハードコートフィルムの製造方法について、例を挙げて説明する。
【0063】
まず、光透過性基材(A)を準備する。光透過性基材(A)の材質、厚み等は、例えば前述のとおりである。
【0064】
つぎに、光透過性基材(A)上にハードコート層(B)を形成する。光透過性基材(A)上にハードコート層(B)を形成する方法は特に限定されないが、例えば、以下のとおりである。以下、このハードコート層(B)を形成する工程を「ハードコート層形成工程」ということがある。前記ハードコート層形成工程は、例えば、光透過性基材(A)上にハードコート層形成用塗工液(以下、単に「塗工液」又は「ハードコート層形成材料」という場合がある。)を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含んでいてもよい。また、例えば、前記ハードコート層形成工程が、さらに、前記塗膜を硬化させる硬化工程を含んでいてもよい。前記硬化は、例えば、前記乾燥の後に行なうことができるが、これに限定されない。前記硬化は、例えば、加熱、光照射等により行うことができる。前記光は、特に限定されないが、例えば、紫外線等であってもよい。前記光照射の光源も特に限定されないが、例えば、高圧水銀ランプ等であってもよい。
【0065】
前記塗工液(ハードコート層形成材料)は、例えば、樹脂材料と希釈溶媒(以下、単に「溶媒」という場合がある。)とを含む塗工液であってもよい。また、前記塗工液は、これら以外の他の成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記他の成分としては、特に限定されないが、例えば、チキソトロピー付与剤、フィラー等が挙げられる。前記フィラーとしては、例えば、粒子等が挙げられる。前記粒子は、特に限定されず、例えば、有機粒子でも無機粒子でもよいし、例えば、不定形粒子でも球形粒子でもよい。前記チキソトロピー剤、前記粒子等は、特に限定されないが、例えば、一般的なハードコート層に含まれるチキソトロピー剤、粒子等と同様又はそれに準じてもよい。前記粒子としては、例えば、アクリル-スチレン共重合体、シリコーン樹脂、シリカ等が挙げられる。
【0066】
前記塗工液に含まれる前記樹脂材料は、例えば、ハードコート層(B)を形成する樹脂そのものであってもよいし、重合、硬化等により前記樹脂を形成する樹脂材料であってもよい。前記樹脂は、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化樹脂等であってもよい。また、前記樹脂は、例えば、アクリレート樹脂(アクリル樹脂ともいう)を含んでいてもよく、例えば、ウレタンアクリレート樹脂を含んでいてもよい。また、前記樹脂は、例えば、硬化型ウレタンアクリレート樹脂及び多官能アクリレートの共重合物であってもよい。
【0067】
前記樹脂材料は、例えば、官能基を有するオリゴマーとモノマーとを含んでいてもよい。例えば、ハードコート層(B)を形成する樹脂が、前記官能基を有するオリゴマーと前記モノマーとの共重合体であってもよい。前記官能基を有するオリゴマーとしては、特に限定されないが、例えば、硬化型ウレタンアクリレート樹脂等が挙げられる。前記硬化型ウレタンアクリレート樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製の商品名「UV-1700TL」、三菱ケミカル株式会社製の商品名「UT-7314」等が挙げられる。前記モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、多官能アクリレート等が挙げられる。前記多官能アクリレートとしては、例えば、東亜合成株式会社製の商品名「M-920」等が挙げられる。
【0068】
前記溶媒は、特に制限されず、種々の溶媒を使用可能であり、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。例えば、前記樹脂の組成、前記ナノシリカ粒子及び前記チキソトロピー付与剤の種類、含有量等に応じて、最適な溶媒種類や溶媒比率を適宜選択してもよい。前記溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール、t-ブチルアルコール(TBA)、2-メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等があげられる。また、例えば、前記溶媒が、炭化水素溶媒と、ケトン溶媒とを含んでいてもよい。前記炭化水素溶媒は、例えば、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、及びベンゼンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ケトン溶媒は、例えば、シクロペンタノン、及びアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記溶媒は、例えば、チキソトロピー付与剤(例えば増粘剤)を溶解させるために、前記炭化水素溶媒(例えばトルエン)を含むことが好ましい。前記溶媒は、例えば、前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒とを、90:10~10:90の質量比で混合した溶媒であってもよい。前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒との質量比は、例えば、80:20~20:80、70:30~30:70、又は40:60~60:40等であってもよい。この場合において、例えば、前記炭化水素溶媒がトルエンであり、前記ケトン溶媒がメチルエチルケトンであってもよい。また、前記溶媒は、例えば、トルエンを含むとともに、さらに、酢酸エチル、酢酸ブチル、IPA、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、及びTBAからなる群から選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0069】
光透過性基材(A)として、例えば、アクリルフィルムを採用して中間層(浸透層)を形成する場合は、アクリルフィルム(アクリル樹脂)に対する良溶媒が好適に使用できる。その溶媒としては、例えば、前述のとおり、炭化水素溶媒と、ケトン溶媒とを含む溶媒でもよい。前記炭化水素溶媒は、例えば、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、及びベンゼンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ケトン溶媒は、例えば、シクロペンタノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、及びアセトフェノンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記溶媒は、例えば、前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒とを、90:10~10:90の質量比で混合した溶媒であってもよい。前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒との質量比は、例えば、80:20~20:80、70:30~30:70、又は40:60~60:40等であってもよい。この場合において、例えば、前記炭化水素溶媒がトルエンであり、前記ケトン溶媒がメチルエチルケトンであってもよい。
【0070】
光透過性基材(A)として、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)を用いる場合は、前記溶媒としては、特に限定されないが、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、シクロペンタノン等が挙げられ、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。この場合、前記溶媒は、例えば、MIBK及びシクロペンタノンの混合溶媒でもよい。MIBK及びシクロペンタノンの混合比は、特に限定されないが、例えば、質量比で、90:10~10:90、80:20~20:80、70:30~30:70であってもよい。
【0071】
また、溶媒を適宜選択することによって、チキソトロピー付与剤を含有する場合において防眩性ハードコート層形成材料(塗工液)へのチキソ性を良好に発現させることができる。例えば、有機粘土を用いる場合には、トルエン及びキシレンを好適に、単独使用又は併用することができ、例えば、酸化ポリオレフィンを用いる場合には、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルメーテルを好適に、単独使用又は併用することができ、例えば、変性ウレアを用いる場合には、酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトンを好適に、単独使用又は併用することができる。
【0072】
前記ハードコート層形成材料には、各種レベリング剤を添加することができる。前記レベリング剤としては、塗工ムラ防止(塗工面の均一化)を目的に、例えば、フッ素系又はシリコーン系のレベリング剤を用いることができる。本発明では、ハードコート層表面に防汚性が求められる場合、又は、前記他の層反射防止層(低屈折率層)や層間充填剤を含む層がハードコート層上に形成される場合などに応じて、適宜レベリング剤を選定することができる。
【0073】
前記レベリング剤の配合量は、前記樹脂100重量部に対して、例えば、5重量部以下、好ましくは0.01~5重量部の範囲である。
【0074】
前記ハードコート層形成材料には、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、防汚剤、酸化防止剤等が添加されてもよい。これらの添加剤は一種類を単独で使用してもよく、また二種類以上併用してもよい。
【0075】
前記ハードコート層形成材料には、例えば、特開2008-88309号公報に記載されるような、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0076】
前記ハードコート層形成材料(塗工液)を光透過性基材(A)上に塗工して塗膜を形成する方法としては、例えば、ファンテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗工法を用いることができる。
【0077】
つぎに、前述のとおり、前記塗膜を乾燥及び硬化させ、ハードコート層(B)を形成する。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でもよいし、風を吹きつけての風乾であってもよいし、加熱乾燥であってもよいし、これらを組み合わせた方法であってもよい。
【0078】
前記ハードコート層形成材料(塗工液)の乾燥温度は、例えば、30~200℃の範囲であってもよい。前記乾燥温度は、例えば、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、又は100℃以上であってもよく、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下、120℃以下、又は110℃以下であってもよい。乾燥時間は特に限定されないが、例えば、30秒以上、40秒以上、50秒以上、又は60秒以上であってもよく、150秒以下、130秒以下、110秒以下、又は90秒以下であってもよい。
【0079】
前記塗膜の硬化手段は、特に制限されないが、紫外線硬化が好ましい。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50~500mJ/cm2が好ましい。照射量が、50mJ/cm2以上であれば、硬化が十分に進行しやすく、形成されるハードコート層の硬度が高くなりやすい。また、500mJ/cm2以下であれば、形成されるハードコート層の着色を防止することができる。
【0080】
以上のようにして、光透過性基材(A)上にハードコート層(B)が積層された積層体を製造できる。
【0081】
つぎに、ハードコート層(B)における、光透過性基材(A)と反対側の面上に光学機能層(C)を形成する(光学機能層形成工程)。この光学機能層形成工程において光学機能層(C)を形成する方法は、特に限定されないが、前述のとおりドライプロセスが好ましく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及び化学気相成長法(CVD)からなる群から選択される少なくとも一つの方法により形成してもよい。真空蒸着法、スパッタリング法、及び化学気相成長法(CVD)を行う具体的な方法も特に限定されず、例えば、一般的な方法と同様又はそれに準じてもよい。光学機能層(C)の材質、厚み等については、例えば前述のとおりである。また、例えば、光学機能層(C)を形成する光学機能層形成工程に先立ち、ハードコート層(B)と光学機能層(C)との密着性を高めるために、ハードコート層(B)の表面を、プラズマ処理、コロナ処理、水洗処理、溶剤塗布等の方法で表面処理してもよい。この表面処理の条件も特に限定されず、例えば、一般的な正面処理と同様又はそれに準じてもよい。
【0082】
なお、前記「ハードコート層形成工程」及び前記「光学機能層形成工程」において、光透過性基材(A)、ハードコート層(B)及び光学機能層(C)の平均厚みが、前記数式(1)及び(2)の関係を満たすように、ハードコート層(B)及び光学機能層(C)を形成する。
【0083】
さらに、光学機能層(C)における光透過性基材(A)とは反対側の面上に、さらに防汚層(D)を形成し(防汚層形成工程)、本発明のハードコートフィルムを製造することができる。この防汚層形成工程における防汚層(D)の形成方法(製造方法)は、特に限定されないが、例えば、一般的な防汚層の形成方法と同様又はそれに準じてもよい。具体的には、例えば、前述のとおり、ドライプロセスで形成することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及び化学気相成長法(CVD)等で形成することができる。この方法は、特に限定されず、例えば、前述のとおり、一般的な真空蒸着法、スパッタリング法、及び化学気相成長法(CVD)と同様又はそれらに準じてもよい。防汚層(D)の材質、厚み等については、例えば前述のとおりである。
【0084】
以上のようにして、光透過性基材(A)の少なくとも一方の面上に、ハードコート層(B)、光学機能層(C)及び防汚層(D)が前記順序で積層された本発明のハードコートフィルムを製造することができる。ただし、前述のとおり、この製造方法は例示であって、本発明のハードコートフィルムの製造方法は、これに限定されない。
【0085】
また、本発明のハードコートフィルムの製造方法は、例えば、連続製法とすることが可能である。具体的には、例えば、本発明のハードコートフィルムの製造方法は、前記光透過性基材(A)が長尺状であり、前記光透過性基材(A)を搬送しながら、前記ハードコート層形成工程、前記光学機能層形成工程、前記防汚層形成工程、及び必要に応じて他の工程を連続的に行う製造方法であってもよい。より具体的には、例えば、前記長尺状の光透過性基材(A)がロール状であり、ロールから前記光透過性基材(A)を繰り出しながら本発明のハードコートフィルムの製造方法を実施してもよい。
【0086】
[3.ハードコートフィルム、光学部材および画像表示装置]
本発明のハードコートフィルムは、特に限定されず、例えば、前述のとおり、クリアフィルムであってもよいし、防眩性フィルム(防眩性ハードコートフィルム)であってもよい。
【0087】
本発明の光学部材は、特に限定されないが、例えば、偏光板であってもよい。前記偏光板も、特に限定されないが、例えば、本発明のハードコートフィルムおよび偏光子を含んでいてもよいし、さらに、他の構成要素を含んでいてもよい。前記偏光板の各構成要素は、例えば、接着剤または粘着剤等により貼り合わせられていてもよい。
【0088】
本発明の画像表示装置も特に限定されず、どのような画像表示装置でもよいが、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置、プラズマ表示装置等が挙げられる。
【0089】
本発明の画像表示装置の構成は、特に限定されず、例えば、一般的な画像表示装置と同様の構成であってもよい。例えば、LCDの場合、液晶セル、偏光板等の光学部材、および必要に応じ照明システム(バックライト等)等の各構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により製造できる。
【0090】
本発明の画像表示装置の用途は、特に限定されず、任意の用途に使用可能である。その用途としては、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器、スマートグラス、VR機器等が挙げられる。本発明の画像表示装置は、例えば、カメラ機能を有する画像表示装置であってもよい。その場合、例えば、前述のとおり、本発明のハードコートフィルムにおける前記透明層が、画像表示装置のカメラホール用の透明層であってもよい。本発明によれば、前述のとおり、透明層の透明性を損なわずにハードコートフィルムを提供することができるので、例えば、カメラ画像の画質を損なわずに画像表示装置を提供することが可能である。
【実施例0091】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例および比較例により制限されない。
【0092】
なお、以下の実施例及び比較例において、物質の部数は、特に断らない限り、質量部(重量部)である。
【0093】
〔実施例1〕
以下のようにして、光透過性基材(A)の一方の面上に、ハードコート層(B)、光学機能層(C)及び防汚層(D)が前記順序で積層された本発明のハードコートフィルムを製造した。
【0094】
まず、光透過性基材(A)として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み65μm)を準備した。つぎに、その光透過性基材(A)の一方の面に、ハードコート層(B)を形成した(ハードコート層形成工程)。具体的には、まず、紫外線硬化型のモノマー及びSiO2フィラーの混合物(商品名「オプスターZ7540」、固形分濃度56質量%、荒川化学工業社製)100質量部(固形分換算)と、光重合開始剤(商品名「IRGACURE906」、BASF社製)5質量部と、レベリング剤(商品名「LE-303」、共栄社化学社製)0.1質量部とを混合して、混合液を得た。その混合液に酢酸ブチルとMIBKとの混合溶媒(質量比は50:50)を添加して固形分濃度を40%に調整した。これにより、紫外線硬化性の樹脂組成物(ワニス)を調製した。その樹脂組成物を、前記PETフィルム(光透過性基材(A))の片面に塗布して塗膜を形成した。この塗膜を、加熱により乾燥させた後、紫外線照射により硬化させた。前記塗膜の加熱の温度は70℃とし、加熱の時間は60秒間とした。前記紫外線照射では、光源として高圧水銀ランプを使用し、波長365nmの紫外線を用い、積算照射光量を300mJ/cm2とした。以上のようにして、前記PETフィルム(光透過性基材(A))上に厚み5μmのハードコート層(B)を形成し、光透過性基材(A)とハードコート層(B)との積層体を製造した。なお、以下において、本実施例で形成した前記ハードコート層(B)を、単に「HC層」という場合がある。また、以下において、本実施例で製造した前記光透過性基材(A)とハードコート層(B)との積層体を「HC層付きPETフィルム」という場合がある。
【0095】
なお、本実施例において、光透過性基材(A)の平均厚みdSは、リニアゲージで測定した。本実施例の光透過性基材(A)は、厚みが均一であるため、任意の地点の厚みを平均厚みdSに等しいと推定することができる。また、ハードコート層(B)の平均厚みdHは、前記光透過性基材(A)とハードコート層(B)との積層体(HC層付きPETフィルム)の平均厚みをリニアゲージで測定し、その数値からdSを減算して得られた数値をdHとした。前記光透過性基材(A)とハードコート層(B)との積層体の平均厚みdS+dHについては、1μm平方の視野での撮像で前記積層体の任意の3点の厚みを測定し、さらに、同様にして1μm平方の視野で5か所測定し、合計15点の厚みの測定結果を平均した数値を前記平均厚みdS+dHとした。後述する各実施例及び比較例においても同様である。
【0096】
つぎに、ロールトゥロール方式のプラズマ処理装置により、前記HC層付きPETフィルムのHC層表面を、1.0Paの真空雰囲気下でプラズマ処理した。このプラズマ処理では、不活性ガスとしてアルゴンガスを用い、放電電力を780Wとした。
【0097】
つぎに、プラズマ処理後の前記HC層付きPETフィルムのHC層上に、密着層と無機酸化物下地層とをスパッタ成膜法により前記順序で形成することにより(スパッタ成膜工程)、前記密着層及び前記無機酸化物下地層からなる光学機能層(C)を形成した(光学機能層形成工程)。具体的には、まず、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置により、前記HC層付きPETフィルムのHC層上に、まず、密着層としての厚み2.0nmのインジウムスズ酸化物(ITO)層を形成した。つぎに、同じスパッタ成膜装置により、前記ITO層上に、無機酸化物下地層として、SiO2層とNb2O5層とを、前記順序で、厚みの合計が0.23μmとなるように形成した。前記SiO2層の厚みは0.11μmとなるように形成し、前記Nb2O5層の厚みは0.12μmとなるように形成した。以上のようにして、前記密着層(ITO層)及び前記無機酸化物下地層(前記SiO2層と前記Nb2O5層との積層体)からなる光学機能層(C)を形成した。なお、前記密着層の形成では、ITOターゲットを用い、不活性ガスとしてのアルゴンガスと、前記アルゴンガス100体積部に対して10体積部の反応性ガスとしての酸素ガスとを用い、放電電圧を350Vとし、成膜室内の気圧(成膜気圧)を0.4Paとし、MFACスパッタリングによってITO層を成膜した。前記無機酸化物下地層の形成では、Siターゲット及びNbターゲットを用い、100体積部のアルゴンガス及び30体積部の酸素ガスを用い、放電電圧を350Vとし、成膜気圧を0.3Paとし、MFACスパッタリングによって前記SiO2層及び前記Nb2O5層を形成した。
【0098】
なお、本実施例において、光学機能層(C)の平均厚みdIは、断面のTEM(透過電子顕微鏡)観察により測定した。具体的には、まず、前記光透過性基材(A)とハードコート層(B)と光学機能層(C)との積層体における光学機能層(C)表面をFIB樹脂で保護し、その後深さ方向に向かって切断した。切断して得られた断面をTEM(透過電子顕微鏡)で観察し、その断面画像で、ハードコート層(B)と光学機能層(C)との界面から光学機能層(C)とFIB樹脂保護膜との界面までの距離を光学機能層(C)の平均厚みdIとした。なお、本実施例における光学機能層(C)は、厚みがほぼ均一であるため、任意の地点の厚みを平均厚みdIに等しいと推定することができる。ただし、本実施例では、前記光透過性基材(A)とハードコート層(B)との積層体の平均厚みdS+dHの測定点と同じ15点で光学機能層(C)の厚みを測定し、その15点の測定結果を平均した数値を光学機能層(C)の平均厚みdIとした。後述する各実施例及び比較例においても同様の方法で光学機能層(C)の平均厚みdIを測定した。また、完成品の(防汚層(D)を形成した)ハードコートフィルムに対しても、同様の方法で光学機能層(C)の平均厚みdIを測定することができる。
【0099】
さらに、前記光学機能層(C)上に防汚層(D)を形成した(防汚層形成工程)。具体的には、パーフルオロポリエーテル基含有のアルコキシシラン化合物を蒸着源として用いた真空蒸着法により、厚み10nmの防汚層(D)を、前記無機酸化物下地層上に形成した。なお、前記蒸着源は、信越化学工業社製の「KY1903-1」(パーフルオロポリエーテル基含有アルコキシシラン化合物、固形分濃度20質量%)を乾燥して得た固形分である。また、前記真空蒸着法における前記蒸着源の加熱温度は260℃とした。
【0100】
なお、本実施例において、防汚層(D)の平均厚みdFは、蛍光X線分析機器(株式会社リガク製、商品名ZXS PrimusII)の定量モードで測定した。また、本実施例では、前記光透過性基材(A)とハードコート層(B)との積層体の平均厚みdS+dHの測定点と同じ15点で防汚層(D)の厚みを測定し、その15点の測定結果を平均した数値を防汚層(D)の平均厚みdFとした。後述する各実施例及び比較例においても同様である。
【0101】
以上のようにして、光透過性基材(A)の一方の面上に、ハードコート層(B)、光学機能層(C)及び防汚層(D)が前記順序で積層された本実施例(実施例1)のハードコートフィルムを製造した。
【0102】
〔実施例2~5及び比較例1~4〕
光透過性基材(A)の一方の面上に、ハードコート層(B)、光学機能層(C)及び防汚層(D)の平均厚みを、それぞれ下記表1に記載したとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~5及び比較例1~4のハードコートフィルムを製造した。なお、実施例2~5及び比較例1~4において、光透過性基材(A)としては、全てPETフィルムを用いた。比較例1の光学機能層(C)において、SiO2層の厚みは0.15μmとなるように形成し、Nb2O5層の厚みは0.15μmとなるように形成した。比較例2及び3の光学機能層(C)において、SiO2層の厚みは0.20μmとなるように形成し、Nb2O5層の厚みは0.20μmとなるように形成した。比較例4の光学機能層(C)において、SiO2層の厚みは0.05μmとなるように形成し、Nb2O5層の厚みは0.05μmとなるように形成した。
【0103】
以上のようにして製造した前記各実施例及び比較例のハードコートフィルムについて、下記の測定方法により、耐摩耗性試験及び折り曲げ耐性試験を行った。
【0104】
[耐摩耗性試験]
実施例および比較例の各ハードコートフィルムについて、防汚層(D)表面を消しゴムで擦った前後における前記防汚層(D)表面の防汚性低下の程度を測定し、これを耐摩耗性試験とした。具体的には、以下のとおりである。まず、ハードコートフィルムの防汚層(D)表面に消しゴムを接触させて往復動させることにより擦った。この往復動では、Minoan社製の消しゴム(Φ6mm)を用い、防汚層(D)表面に対する消しゴムの荷重を1kgw/6mmΦとし、防汚層(D)表面上の消しゴムの移動距離(往復動における片道距離)を20mmとし、消しゴムの移動速度を40rpmとし、防汚層(D)表面に対して消しゴムを往復動させる回数は6000往復とした。一方、防汚層(D)表面において、消しゴムで擦った箇所の、擦る前の水接触角θ0と、擦った後の水接触角θ1とを、それぞれ下記の方法で測定した。
【0105】
〈水接触角の測定方法〉
各実施例及び比較例のハードコートフィルムについて、防汚層(C)における光透過性基材(A)とは反対側の表面の水接触角を測定した。まず、防汚層表面に約1μLの純水の滴下によって水滴を形成した。次に防汚層(D)表面上の水滴と防汚層(D)表面とのなす角度を測定した。測定には接触角計(商品名「DMo-501」、協和界面化学社製)を使用した。
【0106】
〈耐摩耗性の評価〉
防汚層(D)表面において、消しゴムで擦った箇所の、擦る前の水接触角θ0と、擦った後の水接触角θ1との差の絶対値|θ0-θ1|を計算した。|θ0-θ1|の値が小さいほど、擦った前後で表面状態の変化が小さく耐摩耗性に優れていると評価した。下記のとおり、耐摩耗性を○△×の三段階で評価した。
○ : |θ0-θ1|≦20°
△ : 20°≦|θ0-θ1|≦30°
× : 30°≦|θ0-θ1|
【0107】
[粘着剤組成物Aの調製]
後述する折り曲げ耐性試験に用いる粘着剤組成物Aを、以下の方法により調製した。
【0108】
(アクリルオリゴマーの調製)
モノマー成分としてメタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)60重量部およびメタクリル酸メチル(MMA)40重量部、連鎖移動剤としてα-チオグリセロール3.5重量部、および重合溶媒としてトルエン100重量部を混合し、窒素雰囲気下にて70℃で1時間撹拌した。次に、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を投入し、70℃で2時間反応させた後、80℃に昇温して2時間反応させた。その後、反応液を130℃に加熱して、トルエン、連鎖移動剤および未反応モノマーを乾燥除去して、固形状のアクリルオリゴマーを得た。アクリルオリゴマーの重量平均分子量は5100、ガラス転移温度(Tg)は130℃であった。
【0109】
(プレポリマーの重合)
プレポリマー形成用モノマー成分として、ラウリルアクリレート(LA)43重量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)44重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)6重量部、およびN-ビニル-2-ピロリドン(NVP)7重量部、ならびに光重合開始剤としてIGM Resins製「Omnirad 184」0.015重量部を配合し、紫外線を照射して重合を行い、プレポリマー組成物(重合率;約10%)を得た。
【0110】
(粘着剤組成物の調製)
上記のプレポリマー組成物100重量部に、後添加成分として、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.07重量部、上記のオリゴマー:3重量部、およびシランカップリング剤(信越化学工業製「KBM403」):0.3重量部を添加した後、これらを均一に混合して、粘着剤組成物Aを調製した。
【0111】
[折り曲げ耐性試験]
以下のとおり、実施例および比較例の各ハードコートフィルムを用いて、有機EL表示装置を模擬した模擬サンプルを製造し、これを用いて折り曲げ耐性試験を行った。まず、
図3(a)に示すとおり、ハードコートフィルムの光透過性基材(A)11における、ハードコート層(B)12、光学機能層(C)13及び防汚層(D)14が積層された側とは反対側の面に、アクリル系粘着剤層21(前記粘着剤組成物A、厚み25μm)、ポリイミドフィルム22(KORON社製、厚み50μm)、アクリル系粘着剤層23(前記粘着剤組成物A、厚み25μm)、PETフィルム24(東レ株式会社製、厚み38μm)、及びアクリル系粘着剤層25(前記粘着剤組成物A、厚み25μm)を、この順序で積層させて、有機EL表示装置を模擬した模擬サンプル100を製造した。つぎに、
図3(b)に示すとおり、模擬サンプル(D)の防汚層(D)14側に直径1mmのステンレス製の円柱芯200を接触させた。その後、
図3(c)に示すとおり、模擬サンプル100を円柱芯200側に折りたたんで折り曲げ状態とした。さらにその後、模擬サンプル100を開いて
図3(b)の状態に戻した。この開閉(折り曲げ及び開き)を150,000回繰り返した。なお、この開閉は、耐久試験機(型番「DMLHB-FS-C」、YUASA社製)を用いて行った。この開閉150,000回の前後で、模擬サンプル100における折り曲げ部101(模擬サンプル100と円柱芯200との接触部分)にLED光源(ツインバード社製、商品名LK-H766B)で光照射して折り曲げ部101の外観を目視で反射検査し、折り曲げ耐性を下記のとおり○△×の三段階で評価した。
○:開閉前後で折り曲げ部101の外観に変化が見られない。
△:開閉前後で折り曲げ部101の外観に変化があるが、変化の状態確認が難しい。
×:開閉前後で折り曲げ部101の外観が著しく変化した。
【0112】
以上のようにして試験した耐摩耗性及び折り曲げ耐性の試験結果を、まとめて下記表1に示す。
【0113】
【0114】
前記表1に示したとおり、dH×dIが0.2~4の範囲であり(前記数式(1)を満たし)、かつ、(dH+dI)/dSが0.02~0.62の範囲である(前記数式(2)を満たす)実施例1~5のハードコートフィルムは、いずれも、表面の耐摩耗性と折り曲げ耐性とを両立していた。これに対し、比較例1~4のハードコートフィルムは、いずれも、前記数式(1)及び(2)のいずれかを満たしておらず、その結果、表面の耐摩耗性と折り曲げ耐性とのいずれかが不良であった。
以上、説明したとおり、本発明によれば、表面の耐摩耗性と折り曲げ耐性とを両立させたハードコートフィルム、光学部材、及び画像表示装置を提供することができる。本発明のハードコートフィルムは、前述のとおり、クリアフィルムとしても、防眩性フィルム(防眩性ハードコートフィルム)としても使用可能であり、かつ、多種多様な光学部材及び画像表示装置に用いることができるため、その産業上利用価値は多大である。