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特開2022-189599エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189599
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/23 20060101AFI20221215BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A61K8/23
A61Q19/00
A61K8/06
A61K8/37
A61K8/92
A61K8/67
A61K8/73
A61K8/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098263
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】318002437
【氏名又は名称】株式会社ヒロセ
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 亙
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA082
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB361
4C083AB362
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC352
4C083AC442
4C083AD352
4C083AD641
4C083AD642
4C083AD662
4C083BB47
4C083CC05
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE12
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】
新規で実用性のあるエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
以下のような工程で製造される。
1)まず、シア脂を主成分とするA剤と、
水に硫酸マグネシムを溶解したものにBG(1,3-ブチレングリコール)などを添加したB剤を準備する。
2)次に、A剤を80℃以上で完全に溶解し、混合する。
3)B剤を常温または60°以上で完全に溶解するまで撹拌混合する。
なお、高濃度硫酸マグネシムを配合する場合は60℃位まで温度上昇させて撹拌混合する。
4)上記2)で溶解したA剤に75℃以上で3)のB剤を少量ずつ加え、乳化・混合させる。
5)次に4)で得た材料を40℃~50℃に冷まし、600回転/分で20秒間
2000回転/分で2分間さらに撹拌して乳化させる。
6)最後に、フェノキシエタノール、キサンタンガムおよびトコフェロールを加えて撹拌する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法であって、
1)シア脂を主成分とするA剤と、硫酸マグネシム(エプソムソルト)水溶液を主成分とするB剤とを準備し、
2)前記A剤を80℃以上で完全に溶解し、混合し、
3)前記B剤を常温で完全に溶解するまで撹拌混合し、
4)上記2)で溶解した前記A剤を75℃以上に保った状態で、上記3)の前記B剤を少量ずつ加えて、乳化・混合させ、
5)次に、上記4)で得た材料を40℃~50℃に冷まし、600回転/分で20秒間、次いで2000回転/分で2分間さらに撹拌して乳化させ、
6)最後に、保存剤、増粘剤、酸化防止剤を加えて撹拌する、
ことにより前記エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームを得られることができるようにしたことを特徴とするエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法。
【請求項2】
エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法であって、
1)シア脂を主成分とするA剤と、硫酸マグネシム(エプソムソルト)水溶液を主成分とするB剤とを準備し、
2)前記A剤を80℃以上で完全に溶解し、混合し、
3)前記B剤を60℃以上で完全に溶解するまで撹拌混合し、
4)上記2)で溶解した前記A剤を75℃以上に保った状態で、上記3)の前記B剤を少量ずつ加えて、乳化・混合させ、
5)次に、上記4)で得た材料を40℃~50℃に冷まし、600回転/分で20秒間、次いで2000回転/分で2分間さらに撹拌して乳化させ、
6)最後に、保存剤、増粘剤、酸化防止剤を加えて撹拌する、
ことにより前記エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームを得られることができるようにしたことを特徴とするエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法。
【請求項3】
前記B剤において、水に溶解される硫酸マグネシウムが、前記エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの総量に対して5%~25%の配合割合となるようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法。
【請求項4】
前記B剤において、水に溶解される硫酸マグネシウムが、前記エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの総量に対して12%~18%の配合割合となるようにしたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法。
【請求項5】
前記B剤において、水に溶解される硫酸マグネシウムが、前記エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの総量に対して14.9%の配合割合となるようにしたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法。
【請求項6】
前記A剤が、シア脂、オリーブ油、ワセリン、ミツロウ、乳化剤からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法。
【請求項7】
前記B剤が、水、硫酸マグネシウム(エプソムソルト)、BG(1,3-ブチレングリコール)、アスコルビン酸ナトリウムからなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸マグネシウム、所謂エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エプソムソルトは欧米では古くから入浴剤として普及していたが、ここ数年でわが国でも愛用されるようになってきた。
ちなみに、化粧品の分野で入浴剤以外では特開2019-26631号公報(特許文献1参照)のようなスクラブ剤も知られている。
【0003】
ところが現在まで、エプソムソルトの利用方法として化粧クリーム剤として有効に利用できることは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-26631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、エプソムソルトの利用方法として入浴剤やスクラブ剤は知られていたものの、エプソムソルトの利用方法として化粧クリーム剤として有効に利用できることは知られていなかったのである。
【0006】
したがって本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法は、エプソムソルトの有用性について種々検討し、化粧クリームとして有効に利用することができる成分であることを見出したものであり、そのような新規で実用性のあるエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法は、
1)シア脂を主成分とするA剤と、硫酸マグネシム(エプソムソルト)水溶液を主成分とするB剤とを準備し、
2)前記A剤を80℃以上で完全に溶解し、混合し、
3)前記B剤を常温で完全に溶解するまで撹拌混合し、
4)上記2)で溶解した前記A剤を75℃以上に保った状態で、上記3)の前記B剤を少量ずつ加えて、乳化・混合させ、
5)次に、上記4)で得た材料を40℃~50℃に冷まし、600回転/分で20秒間、次いで2000回転/分で2分間さらに撹拌して乳化させ、
6)最後に、保存剤、増粘剤、酸化防止剤を加えて撹拌する、
ことにより前記エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームを得られることができるようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法は、
1)シア脂を主成分とするA剤と、硫酸マグネシム(エプソムソルト)水溶液を主成分とするB剤とを準備し、
2)前記A剤を80℃以上で完全に溶解し、混合し、
3)前記B剤を60℃以上で完全に溶解するまで撹拌混合し、
4)上記2)で溶解した前記A剤を75℃以上に保った状態で、上記3)の前記B剤を少量ずつ加えて、乳化・混合させ、
5)次に、上記4)で得た材料を40℃~50℃に冷まし、600回転/分で20秒間、次いで2000回転/分で2分間さらに撹拌して乳化させ、
6)最後に、保存剤、増粘剤、酸化防止剤を加えて撹拌する、
ことにより前記エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームを得られることができるようにしたことをも特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法は、前記B剤において、水に溶解される硫酸マグネシウムが、前記エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの総量に対して5%~25%の配合割合となるようにしたことをも特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法は、前記B剤において、水に溶解される硫酸マグネシウムが、前記エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの総量に対して14.9%の配合割合となるようにしたことをも特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法は、前記A剤が、シア脂、オリーブ油、ワセリン、ミツロウ、乳化剤からなることをも特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法は、前記B剤が、水、硫酸マグネシウム(エプソムソルト)、BG(1,3-ブチレングリコール)、アスコルビン酸ナトリウムからなることをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
以上にように、本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法によれば、非常に効率よくエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームが製造できる。
したがって、大幅なコストの低減が可能となり、長期間にわたって品質を保つことができるエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームが製造できるという利点がある。
また、本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法によってエプソムソルトクリームを製造すれば、エプソムソルトを0.1%~5%未満の低濃度のみならず、5%~25%程度の高濃度まで配合することが可能となるのである。
【0014】
本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法によって得られたエプソムソルトクリームは以下のような化粧品としての効果を奏するものであった。
(a)皮膚を健やかに保つことができる。
(b)水分、油分を補い、かつ保つことができる。
(c)乾燥を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法に係る実施の形態を実施例に基いて詳細に説明する。
【0016】
本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法となる工程の一例は、次のとおりである。
1)まず、シア脂を主成分とし、オリーブ油、ワセリン、ミツロウと、乳化剤を添加したA剤と、
水に硫酸マグネシウム(エプソムソルト)を溶解したものに、BG(1,3-ブチレングリコール)、アスコルビン酸ナトリウムを添加したB剤を準備する。
このとき、前記A剤において、前記乳化剤としてはオリーブ油脂肪酸セテアリルおよびオリーブ油脂肪酸ソルビタン(株式会社マツモト交商製、商品名「オリベム1000」)を好適に用いることができる。
また、前記B剤において、前記硫酸マグネシウムとしては株式会社ヒロセ製、商品名「エプソムソルトシークリスタル」(登録商標)を好適に用いることができる。
【0017】
2)次に、製造に際してまず前記A剤を80℃以上で完全に溶解し、混合する。
3)これとは別に、前記B剤を常温で完全に溶解するまで撹拌混合する。
なお、前記B剤において、5%~25%の高濃度硫酸マグネシムを配合した場合は、上記工程3)において60℃以上に温度上昇させて撹拌混合するとよい。
4)上記2)で溶解した前記A剤を75℃以上に保った状態で、上記3)の前記B剤を少量ずつ加え、乳化・混合させる。
5)その後、上記4)で得た材料を40℃~50℃に冷却したのち、600回転/分で20秒間、次いで2000回転/分で2分間さらに撹拌して乳化させる。
6)最後に、保存剤、増粘剤、酸化防止剤を添加して撹拌する。
なお、前記保存剤としてはフェノキシエタノールを、前記増粘剤としてはキサンタンガムを、前記酸化防止剤としてはトコフェロールを好適に用いることができる。
【0018】
このように、本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法は、非常に効率よくエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームが製造できるので、大幅なコストの低減が可能となり、長期間にわたって品質を保つことができるエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームが製造できる。
【0019】
また、前記B剤において、水に溶解させる硫酸マグネシウム(エプソムソルト)の配合割合は、本発明の製造方法により得られるエプソムソルトクリームの総量に対して、0.1%~5%未満の低濃度であってもある程度の効果と実感を得ることができるが、5%~25%の高濃度の配合割合とすることにより、低濃度域よりも次の効果と実感を顕著に得ることができる。
(a)皮膚を健やかに保つことができる。
(b)水分、油分を補い、かつ保つことができる。
(c)乾燥を防ぐことができる。
【0020】
前記硫酸マグネシウムの配合割合が25%を超えた場合は、クリームの状態として、滑らかさが損なわれる等の使用感が悪化することが判明しており、さらに配合割合を高めて30%を超えてしまうと、使用者の肌に塗布した際に、白い粉が析出してしまい、好ましくない。
【0021】
下記に前述のA剤、B剤の具体的な配合例を挙げる。

【表1】
【0022】
アスコルビン酸ナトリウムとBG(1,3-ブチレングリコール)および2価金属塩である硫酸マグネシウム(エプソムソルト)を併用することで保存安定性が向上し、かつ化粧料としての効果が損なわれないという効果がある。
すなわち、
(a)皮膚を健やかに保つことができる。
(b)水分、油分を補い、かつ保つことができる。
(c)乾燥を防ぐことができる。
このような効果は、前記硫酸マグネシウム(エプソムソルト)を0.1%~5%未満の低濃度で配合した場合であってもその効果を実感することができるが、本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法を用いて、5%~25%の高濃度硫酸マグネシウムを配合することにより、その効果を十分に実感することができるのである。
【0023】
そして、上述のとおり、前記硫酸マグネシウムの配合割合が前記5%~25%の高濃度域であれば、上述の効果を十分に得られ実感することができるものであるが、発明者の調査によると、使用者の70%が前記硫酸マグネシウムの配合割合が前記12%~18%の高濃度域において、上述の効果を十分に得られ実感することができたと回答したことから、前記硫酸マグネシウムの配合割合を12%~18%の高濃度域とすることが良いものと考えられる。
さらに、使用者の回答の中でも、最も使用者から良好な回答が得られた前記硫酸マグネシウムの配合割合は14.9%であった。この前記硫酸マグネシウムの配合割合を14.9%した場合、特に前記エプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの状態が良く、肌に塗布しても硫酸マグネシウムが析出せず、滑らかに塗布することができる状態となることが判明した。
したがって、前記硫酸マグネシウムの配合割合を14.9%とすることにより、前記硫酸マグネシウムの配合割合が5%~25%の高濃度域の中でも、特に、
(a)皮膚を健やかに保つことができる。
(b)水分、油分を補い、かつ保つことができる。
(c)乾燥を防ぐことができる。
という顕著な効果および実感と、
クリームの保存安定性、滑らかさ、肌への塗り伸ばし性能、肌への浸透性能等のクリームの状態とを、最も良好な状態で両立させることができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上の説明から理解できるように、本発明のエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法は、化粧品用途について鋭意研究した結果として得られたものであり、そのような用途として上述のような条件が最適であることが判明したのである。
したがって、効率的で安全性に優れたエプソムソルトを配合したエプソムソルトクリームの製造方法が得られるのである。