(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189606
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】自動車用ペダルアーム
(51)【国際特許分類】
G05G 1/30 20080401AFI20221215BHJP
G05G 1/44 20080401ALI20221215BHJP
G05G 1/46 20080401ALI20221215BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G05G1/30 E
G05G1/44
G05G1/46
B60T7/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098271
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000112082
【氏名又は名称】ヒルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤 企三宜
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】吉川 修司
【テーマコード(参考)】
3D124
3J070
【Fターム(参考)】
3D124AA34
3D124BB01
3D124CC58
3D124DD29
3J070AA32
3J070BA66
3J070CA06
3J070CB02
3J070CC04
3J070CC07
3J070DA01
(57)【要約】
【課題】
ペダルアームにおける取付部と出力部を接続する部分との間の剛性と強度を向上させて捻じれにくくし、軽量なペダルアームを提供する。
【解決手段】
ペダル操作を行うための蹴面と、ペダルアームの支持部材に対して揺動可能な状態で取り付けるための取付部と、前記蹴面と前記取付部との間に延在するアーム部とを備えており、前記アーム部は、ブレーキ装置への出力部が接続される接続部とを備えており、前記接続部と前記蹴面との間の部分で車幅方向に屈曲又は湾曲する形状であり、前記アーム部は、前記取付部と前記接続部との間の部分に、前記アーム部が屈曲又は湾曲する方向の反対側の方向に突出し、かつ前記アーム部の長手方向に延在する凸部を備える自動車用ペダルアームである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダル操作を行うための蹴面と、ペダルアームの支持部材に対して揺動可能な状態で取り付けるための取付部と、前記蹴面と前記取付部との間に延在するアーム部とを備えており、
前記アーム部は、ブレーキ装置への出力部が接続される接続部を備えており、前記接続部と前記蹴面との間の部分で車幅方向に屈曲又は湾曲する形状であり、
前記アーム部は、前記取付部と前記接続部との間の部分に、前記アーム部が屈曲又は湾曲する方向の反対側の方向に突出し、かつ前記アーム部の長手方向に延在する凸部を備える自動車用ペダルアーム。
【請求項2】
前記凸部は、前記接続部から前記取付部に向けて、突出する高さが徐々に大きくなる形状である請求項1に記載の自動車用ペダルアーム。
【請求項3】
前記凸部は、前記接続部から前記取付部に向けて、幅が徐々に大きくなる形状である請求項1又は2に記載の自動車用ペダルアーム。
【請求項4】
前記凸部の基部となる前記ペダルアームは、平坦である第1部分を有する形状であり、
前記凸部は、頂部に配されかつ平坦である第2部分を有する形状である請求項1~3のいずれかに記載の自動車用ペダルアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ペダルアームに関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1には、ペダル踏み部と、ボス部との間に延在するアーム部を備えたクラッチペダルが記載されている。アーム部は、2枚の金属板を接合して構成される。アーム部には、ペダル踏み部に隣接する部分に、折曲げ片部が設けられる。また、板状のアーム部の両面には、車幅方向にむかって隆起する凸部がそれぞれ設けられる形状とされている。
【0003】
特許文献2には、蹴面と、車体に対して回動可能に支持される被支持部と、車両機器に連結される出力部とを有する車両用ペダルアームが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-314562号公報
【特許文献2】特開2011-164897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1又は特許文献2のように、一般的な自動車用ペダルアームでは、アーム部は、車両に組付けた状態において正面から視ると、上方から下方へと直線状に延在する形状とされる。
【0006】
部品の配置の都合上、車体に組付けた状態において、ペダルアームのアーム部を車幅方向に屈曲又は湾曲した形状とせざるを得ない場合がある。ペダルアームは、ペダルアームの支持部材に対して揺動可能な状態で取り付けられる。蹴面を踏むと、ペダルアームが揺動してプッシュロッドなどの出力部を変位させて、ブレーキ装置を作動させる。
【0007】
上述のように、車幅方向に屈曲又は湾曲したペダルアームでは、ペダルアームは蹴面を踏むと、蹴面が位置する側にペダルアームが捩じれるように力が作用する。ペダルアームは前記取付部と前記出力部用の接続部において、拘束されており、ペダルアームの揺動を利用して前記出力部を作動させる。このため、前記取付部から前記接続部にかけても大きな応力が作用しやすい。
【0008】
特許文献1のペダルアームは、2枚の金属材を接合して、両面に凸部を構成するものであり、製造工程が煩雑であるし、重量の点で不利であった。特許文献2のペダルアームは、ペダルアームに孔を穿ち、その上に補強材を溶接するものであり、やはり製造工程が煩雑であるし、補強材を使用するため重量の点で不利であった。
【0009】
本発明は、ペダルアームにおける取付部と出力部を接続する部分との間の剛性と強度とを向上させて捻じれにくくし、軽量なペダルアームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ペダル操作を行うための蹴面と、ペダルアームの支持部材に対して揺動可能な状態で取り付けるための取付部と、前記蹴面と前記取付部との間に延在するアーム部とを備えており、前記アーム部は、ブレーキ装置への出力部が接続される接続部を備えており、前記接続部と前記蹴面との間の部分で車幅方向に屈曲又は湾曲する形状であり、前記アーム部は、前記取付部と前記接続部との間の部分に、前記アーム部が屈曲又は湾曲する方向の反対側の方向に突出し、かつ前記アーム部の長手方向に延在する凸部を備える自動車用ペダルアームにより、上記の課題を解決する。
【0011】
前記取付部と前記出力部との間の部分に、前記アーム部が屈曲又は湾曲する方向の反対側の方向に突出する前記所定形状の凸部を設けることにより、蹴面を踏むことにより生じる捻じれに対して、対抗できる剛性と強度を発揮させることができる。前記凸部は、補強材を付加しないため、ペダルアームの軽量化を実現することができる。
【0012】
前記凸部は、前記接続部から前記取付部に向けて、突出する高さが徐々に大きくなる形状とすることが好ましい。これにより、前記捻じれに対してより高い剛性と強度を発揮させることができる。
【0013】
前記凸部は、前記接続部から前記取付部に向けて、幅が徐々に大きくなる形状とすることが好ましい。これにより、前記捻じれに対してより高い剛性と強度を発揮させることができる。
【0014】
上記の自動車用ペダルアームにおいて、前記凸部の基部となる前記ペダルアームは、平坦である第1部分を有する形状であり、前記凸部は、頂部に配されかつ平坦である第2部分を有する形状とすることが好ましい。平坦な第1部分と平坦な第2部分とを有する形状とすることにより、前記凸部が突出する高さを測定しやすくなり、品質管理が容易になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記取付部と前記出力部との間の剛性と強度を向上させて捻じれにくくし、軽量なペダルアームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係るペダルアームを、車体に取り付けた状態を示す左側面図である。
【
図2】第1実施形態に係るペダルアームの正面図である。
【
図5】第1実施形態に係るペダルアームの左側面図である。
【
図8】第1実施形態に係るペダルアームを右側面側から示した斜視図である。
【
図9】第1実施形態に係るペダルアームを左側面側から示した斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係るペダルアームの断面図であり、前記AA´部に相当する位置における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のペダルアームの実施形態について説明する。以下に示す各実施形態は、本発明の限られた例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施形態に限定されるものではない。
【0018】
[第1実施形態]
図1ないし
図9に第1実施形態に係るペダルアーム1を示す。本実施形態のペダルアーム1は、
図1に示したように、その上端部に設けられた取付部11を介して、車体3に固定されたペダルアームの支持部材2に対して揺動可能な状態で取り付けられる。ペダルアーム1の下端部には、蹴面12が設けられる。ユーザーは、蹴面12を足で踏みつけて、ペダルアーム1を操作する。
【0019】
前記ペダルアーム1は、前記蹴面12と前記取付部11との間に延在する長尺な形状であるアーム部13を備える。前記アーム部13は、車体に設けられたブレーキ装置への出力部4と前記アーム部13の接続部14を備える。ユーザーが、前記蹴面12を踏むと、前記ペダルアーム1が揺動して、前記出力部4が車体の前方側へ変位する。これにより、車体3に設けられた前記ブレーキ装置が作動する。
【0020】
前記アーム部13は、
図2に示したように、車体の運転席における部品の配置の都合上、車幅方向に屈曲する形状である。ユーザーが、前記蹴面12を踏むと、前記蹴面12における負荷点Eと前記接続部14とを結ぶ直線を軸にして、前記アーム部13が屈曲する側に前記アーム部13が捩じれる力が作用する。前記アーム部13に捻じれが生じると、前記ペダルアーム1の操作感が悪化するし、長期的には前記ペダルアーム1の前記取付部11と前記支持部材2との接点や軸部、又は前記接続部14と前記出力部4との接点や軸部に偏摩耗や破損が生じる原因となる。
【0021】
本実施形態のペダルアーム1では、前記取付部11と前記接続部14との間の部分に、前記アーム部13が屈曲又は湾曲する方向の反対側の方向に突出し、かつ前記アーム部の長手方向に延在する凸部15を備える。前記凸部15は、前記アーム部13を構成する材を曲げ加工することにより構成されており、前記アーム部を構成する材を隆起させた形状を有する。前記凸部15は、
図4に示したように、正面視において、前記接続部14(
図5参照)から前記取付部11に向けて、突出する高さが徐々に大きくなる形状である。突出する高さは、前記凸部15の基端が接するアーム部13と前記凸部15の頂部との距離を基準とする。
【0022】
前記凸部は、
図7に示したように、前記接続部14から前記取付部11に向けて、幅が徐々に大きくなる形状である。前記凸部15の幅は、前記凸部15の基端と前記アーム部13との境界線を基準とする。前記凸部15は、側面視においては、上端部と下端部が円弧状であり、下端部の幅に比して、上端部の幅が大きく構成されており、上端部と下端部とを結ぶ直線状の部分を有する略楕円状である。
【0023】
前記ペダルアーム1の蹴面12を踏んだときの捻じれの軸線を
図2において一点鎖線で示す。上記形状を有する前記凸部15をアーム部13が屈曲する方向と反対側のアーム部13に設けることによって、前記凸部15を設けない場合又は前記凸部15をアーム部が屈曲する方向と同じ側に設ける場合に比して、剪断中心が捩じりの軸線により近くなる。これによって、前記蹴面12を蹴下した際に、前記接続部14と取付部11との間の領域に入力される荷重により生じる捻じれに対する強度と剛性を向上させることができる。
【0024】
本実施形態のペダルアーム1では、前記凸部15は、前記接続部14から前記取付部11に向けて、突出する高さが徐々に大きくなる形状であり、これにより、前記捻じれに対する強度と剛性がより高くなるように構成されている。
【0025】
本実施形態のペダルアーム1では、前記凸部15は、前記接続部14から前記取付部11に向けて、幅が徐々に大きくなる形状であり、これにより、前記捻じれに対する強度と剛性がより高くなるように構成されている。
【0026】
なお、前記凸部15をアーム部13が湾曲する方向と同じ側に設けた場合には、剪断中心が捩じりの軸線から離れる方向に位置する。前記凸部15をアーム部13が湾曲する方向と同じ側に設けた場合には、前記蹴面12を蹴下することにより、負荷される荷重に対する満足な補強効果は得られない。
【0027】
図4に示したように、ペダルアーム1を正面側から見た際に、前記凸部15の基部となる前記ペダルアーム1は、平坦な第1部分131を有する形状であり、前記凸部15は、頂部に配される平坦な第2部分151を有する形状である。前記第1部分131と平行な第1直線132(一点鎖線)と、前記第2部分151に平行な第2直線152(一点鎖線)とを想定した際に、前記第1直線132と前記第2直線152とは互いに平行にはならず、前記第1直線132と前記第2直線152は角度θ1をなす。角度θ1は、例えば、0.5~10°にすることができる。
【0028】
前記第1部分131及び前記第2部分151を設けることによって、θ1を測定することが容易になる。θ1を測定し、設計した通りの角度が設定されているか確認することにより、ペダルアームを製造する際における品質管理を容易に行うことができる。
【0029】
図7に示したように、前記ペダルアーム1を側面視から見た際に、前記凸部15と前記アーム部13との境界線153及び154に平行な第3直線155と第4直線156とを想定した際に、前記第3直線155と前記第4直線156とは互いに平行にはならず、前記第3直線155と前記第4直線156は角度θ2をなす。角度θ2は、例えば、1~10°にすることができる。前記凸部15は、左右の前記境界線が直線状になっている。このため、θ2を測定することが容易になる。θ2を測定することにより、設計した通りの角度が設定されているか確認することにより、品質管理を容易に行うことができる。
【0030】
前記凸部15は、前記アーム部13の延在方向に延在する形状である。
図3に示したように、前記凸部15の短手方向における断面形状は、表裏面共に円弧状であり、表面の円弧状の部分の頂部には平坦部157を備える形状である。
図6に示したように、前記凸部15の長手方向における断面形状は、表裏面共に頂部に平坦な部分を備えており、上下の端部に傾斜部を備える形状である。
【0031】
前記凸部15は、板状の金属材をプレス成型することにより簡単に成形することができる。前記アーム部13は、正面視における幅が側面視における幅よりも小さい板状である。前記凸部15は、原料となる金属材を曲げることにより成形されるため、補強材等の余剰な金属材の付加を伴わないし、前記凸部15の加工に関して溶接加工も必要ない。前記凸部15により、ペダルアームの重量を増大させずに、前記アーム部13の剛性と強度を向上させることができる。
【0032】
本実施形態のペダルアーム1においては、取付部11は、
図6に示したように、中空の環状体から構成される。中空の環状体、及びペダルアーム1を車体に固定するための前記支持部材2に設けた貫通孔に対して、軸を挿通することにより、前記ペダルアーム1は、前記支持部材2に対して揺動可能な状態で支持される。取付部の構成は、
図6等に示した例に限定されず、例えば、前記アーム部13の上端部に軸を設けて、当該軸を前記支持部材2に設けた貫通孔に挿通するなど他の構成にしてもよい。
【0033】
図1の例では、出力部4は、ロッド41と、当該ロッド41の一端部に設けられるブラケット42とを有する。
図6に示したように、ペダルアーム1には、前記接続部14として円形の貫通孔が設けられる。ペダルアーム1と出力部4のロッド41とは、前記接続部14を構成する前記貫通孔と前記ブラケット42の貫通孔に軸43を挿通及び固定することによって、揺動可能な状態で固定される。
【0034】
接続部と出力部の構成は、上記の例に限定されず、前記蹴面12の踏下によるペダルアームの揺動を利用して、ブレーキ装置を作動させることができるものであればよい。例えば、アーム部に軸を設けて、当該軸にブラケットを固定するなどの構成にしてもよい。
【0035】
上記のペダルアーム1においては、アーム部13は屈曲する形状の例である。アーム部13は、車幅方向に対して円弧状に湾曲する形状であってもよい
【0036】
上記のペダルアーム1においては、運転席からの視点において、前記アーム部13が車幅方向の右側に屈曲する形状である。前記アーム部13は車幅方向の左側に屈曲又は湾曲する形状としてもよい。
【0037】
蹴面12の形状は、上記の例に限定されず、適宜変更することができる。
【0038】
前記凸部を成形する方法は、曲げ加工に限定されず、例えば、肉盛溶接により前記凸部を形成してもよい。
【0039】
[第2実施形態]
前記凸部15の形状は、
図10に示すように変更してもよい。
図10に示す第2実施形態に係るペダルアーム1bは、アーム部13の延在方向に沿って延在する凸部15bであって、短手方向における断面において、平坦部157と当該平坦部157の両端部に隣接する傾斜部158を有する凸部15bを備える。
【0040】
前記凸部15bは、
図10に示すように、頂部が上述の円弧状の頂部に比して、幅広な平坦部157bとなっている。このため、前記凸部15bが突出する高さを測定する際に、測定器具が安定しやすい。
【符号の説明】
【0041】
1 ペダルアーム
12 蹴面
11 取付部
13 アーム部
4 出力部
14 接続部
15 凸部
131 第1部分
151 第2部分
1b ペダルアーム
15b 凸部