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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189608
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】方法、標示装置、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221215BHJP
   E01F 9/547 20160101ALI20221215BHJP
【FI】
G08G1/16 D
E01F9/547
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098274
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100187078
【弁理士】
【氏名又は名称】甲原 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】桜田 伸
(72)【発明者】
【氏名】西村 和也
(72)【発明者】
【氏名】金子 宗太郎
【テーマコード(参考)】
2D064
5H181
【Fターム(参考)】
2D064AA01
2D064AA22
2D064BA11
2D064EB01
2D064EB34
2D064EB38
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181GG07
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL08
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】道路上の横断歩道を人間に認識させる技術を改善する。
【解決手段】車道を横断しようとする歩行者に視認させる第1横断歩道、及び車道上の車両30の運転者に視認させる第2横断歩道を標示する標示装置10が実行する方法であって、車道を第1の側から第2の側に横断しようとする第1歩行者31が検出されるという条件を少なくとも含む1つ以上の条件が満たされると、第1横断歩道及び第2横断歩道を標示すること、第1歩行者31が車道を横断している間に、第1横断歩道を第1の側から第2の側に向かって非標示にし始めること、及び第1歩行者31が車道を横断し終えると、第2横断歩道を非標示にすることを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道を横断しようとする歩行者に視認させる第1横断歩道、及び前記車道上の車両の運転者に視認させる第2横断歩道を標示する標示装置が実行する方法であって、
前記車道を第1の側から第2の側に横断しようとする第1歩行者が検出されるという条件を少なくとも含む1つ以上の条件が満たされると、前記第1横断歩道及び前記第2横断歩道を標示すること、
前記第1歩行者が前記車道を横断している間に、前記第1横断歩道を前記第1の側から前記第2の側に向かって非標示にし始めること、及び
前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道を非標示にすること
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記標示装置は、前記第1歩行者が前記車道上を進むにしたがって、前記第1横断歩道のうち前記第1歩行者が通り過ぎた部分を非標示にする、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記車道を横断しようとする歩行者を検出する処理を開始すること、及び
前記第2横断歩道の少なくとも一部が標示されている状態が所定時間継続すると、前記処理を一時的に停止することを更に含む、方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の方法であって、
前記標示装置は、前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道を前記第1の側から前記第2の側に向かって非標示にする、方法。
【請求項5】
請求項1から3の何れか一項に記載の方法であって、
前記標示装置は、前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道を前記第2の側から前記第1の側に向かって非標示にする、方法。
【請求項6】
請求項1から3の何れか一項に記載の方法であって、
前記標示装置は、前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道の全体を一度に非標示にする、方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の方法であって、
前記標示装置は、前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記車道を前記第2の側から前記第1の側に向かって横断中の第2歩行者が存在する場合、前記第2歩行者が前記車道上を進むにしたがって、前記第2横断歩道のうち前記第2歩行者が通り過ぎた部分を非標示にする、方法。
【請求項8】
車道を横断しようとする歩行者に視認させる第1横断歩道、及び前記車道上の車両の運転者に視認させる第2横断歩道を標示する制御部を備える標示装置であって、
前記制御部は、
前記車道を第1の側から第2の側に横断しようとする第1歩行者が検出されるという条件を少なくとも含む1つ以上の条件が満たされると、前記第1横断歩道及び前記第2横断歩道を標示し、
前記第1歩行者が前記車道を横断している間に、前記第1横断歩道を前記第1の側から前記第2の側に向かって非標示にし始め、
前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道を非標示にする、
標示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の標示装置であって、
前記制御部は、前記第1歩行者が前記車道上を進むにしたがって、前記第1横断歩道のうち前記第1歩行者が通り過ぎた部分を非標示にする、標示装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の標示装置であって、
前記制御部は、
前記車道を横断しようとする歩行者を検出する処理を開始し、
前記第2横断歩道の少なくとも一部が標示されている状態が所定時間継続すると、前記処理を一時的に停止する、標示装置。
【請求項11】
請求項8から10の何れか一項に記載の標示装置であって、
前記制御部は、前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道を前記第1の側から前記第2の側に向かって非標示にする、標示装置。
【請求項12】
請求項8から10の何れか一項に記載の標示装置であって、
前記制御部は、前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道を前記第2の側から前記第1の側に向かって非標示にする、標示装置。
【請求項13】
請求項8から10の何れか一項に記載の標示装置であって、
前記制御部は、前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道の全体を一度に非標示にする、標示装置。
【請求項14】
請求項8から13の何れか一項に記載の標示装置であって、
前記制御部は、前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記車道を前記第2の側から前記第1の側に向かって横断中の第2歩行者が存在する場合、前記第2歩行者が前記車道上を進むにしたがって、前記第2横断歩道のうち前記第2歩行者が通り過ぎた部分を非標示にする、標示装置。
【請求項15】
それぞれ車道に設けられた複数の歩行者用光源と、
それぞれ前記車道に設けられた複数の車両用光源と、
前記車道を横断しようとする歩行者に視認させる第1横断歩道を前記複数の歩行者用光源を用いて標示し、前記車道上の車両の運転者に視認させる第2横断歩道を前記複数の車両用光源を用いて標示する標示装置と、
を備えるシステムであって、
前記標示装置は、
前記車道を第1の側から第2の側に横断しようとする第1歩行者が検出されるという条件を少なくとも含む1つ以上の条件が満たされると、前記第1横断歩道及び前記第2横断歩道を標示し、
前記第1歩行者が前記車道を横断している間に、前記第1横断歩道を前記第1の側から前記第2の側に向かって非標示にし始め、
前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道を非標示にする、
システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、
前記標示装置は、前記第1歩行者が前記車道上を進むにしたがって、前記第1横断歩道のうち前記第1歩行者が通り過ぎた部分を非標示にする、システム。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のシステムであって、
前記標示装置は、
前記車道を横断しようとする歩行者を検出する処理を開始し、
前記第2横断歩道の少なくとも一部が標示されている状態が所定時間継続すると、前記処理を一時的に停止する、システム。
【請求項18】
請求項15から17の何れか一項に記載のシステムであって、
前記標示装置は、前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道を前記第1の側から前記第2の側に向かって非標示にする、システム。
【請求項19】
請求項15から17の何れか一項に記載のシステムであって、
前記標示装置は、前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道を前記第2の側から前記第1の側に向かって非標示にする、システム。
【請求項20】
請求項15から17の何れか一項に記載のシステムであって、
前記標示装置は、前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道の全体を一度に非標示にする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、方法、標示装置、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両が走行する道路上の横断歩道を歩行者又は運転者等の人間に認識させる技術が知られている。例えば特許文献1には、車両のフロントガラスに疑似的な横断歩道を提示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-225151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路上の横断歩道を人間に認識させる技術には改善の余地があった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、道路上の横断歩道を人間に認識させる技術を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る方法は、
車道を横断しようとする歩行者に視認させる第1横断歩道、及び前記車道上の車両の運転者に視認させる第2横断歩道を標示する標示装置が実行する方法であって、
前記車道を第1の側から第2の側に横断しようとする第1歩行者が検出されるという条件を少なくとも含む1つ以上の条件が満たされると、前記第1横断歩道及び前記第2横断歩道を標示すること、
前記第1歩行者が前記車道を横断している間に、前記第1横断歩道を前記第1の側から前記第2の側に向かって非標示にし始めること、及び
前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道を非標示にすることを含む。
【0007】
本開示の一実施形態に係る標示装置は、
車道を横断しようとする歩行者に視認させる第1横断歩道、及び前記車道上の車両の運転者に視認させる第2横断歩道を標示する制御部を備える標示装置であって、
前記制御部は、
前記車道を第1の側から第2の側に横断しようとする第1歩行者が検出されるという条件を少なくとも含む1つ以上の条件が満たされると、前記第1横断歩道及び前記第2横断歩道を標示し、
前記第1歩行者が前記車道を横断している間に、前記第1横断歩道を前記第1の側から前記第2の側に向かって非標示にし始め、
前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道を非標示にする。
【0008】
本開示の一実施形態に係るシステムは、
それぞれ車道に設けられた複数の歩行者用光源と、
それぞれ前記車道に設けられた複数の車両用光源と、
前記車道を横断しようとする歩行者に視認させる第1横断歩道を前記複数の歩行者用光源を用いて標示し、前記車道上の車両の運転者に視認させる第2横断歩道を前記複数の車両用光源を用いて標示する標示装置と、
を備えるシステムであって、
前記標示装置は、
前記車道を第1の側から第2の側に横断しようとする第1歩行者が検出されるという条件を少なくとも含む1つ以上の条件が満たされると、前記第1横断歩道及び前記第2横断歩道を標示し、
前記第1歩行者が前記車道を横断している間に、前記第1横断歩道を前記第1の側から前記第2の側に向かって非標示にし始め、
前記第1歩行者が前記車道を横断し終えると、前記第2横断歩道を非標示にする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、道路上の横断歩道を人間に認識させる技術が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る標示装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】車道及び歩道を上空から俯瞰した例を示す図である。
図3】標示装置の動作を示すフローチャートである。
図4】車道上に標示される横断歩道の例を示す図である。
図5】車道上に標示される横断歩道の例を示す図である。
図6】車道上に標示される横断歩道の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について説明する。
【0012】
(実施形態の概要)
図1及び図2を参照して、本開示の実施形態に係る標示装置10の概要について説明する。概略として標示装置10は、自動車等の車両が走行する車道上に横断歩道を標示する装置である。図1に示す標示装置10は、複数の歩行者用光源11と、複数の車両用光源12と、検出部13と、通信部14と、記憶部15と、制御部16と、を備える。
【0013】
歩行者用光源11及び車両用光源12のそれぞれは、1つ以上の発光素子を含む。発光素子は、例えばLED(Light Emitting Diode)又はレーザダイオード等であるが、これらに限られない。
【0014】
複数の歩行者用光源11のそれぞれは、車道の幅方向に光を発するように、車道に設けられる。例えば、歩行者用光源11は、車道の幅方向以外の方向(例えば、車道の延設方向)に対して光を遮蔽するマスクを含んでもよい。或いは、歩行者用光源11の光は、車道の幅方向に指向性を有してもよい。
【0015】
一方、複数の車両用光源12のそれぞれは、車道の延設方向に光を発するように、車道に設けられる。なお「延設方向」は、車道が延びる方向であって、例えば車道の幅方向と略直交する。例えば、車両用光源12は、車道の延設方向以外の方向(例えば、車道の幅方向)に対して光を遮蔽するマスクを含んでもよい。或いは、車両用光源12の光は、車道の延設方向に指向性を有してもよい。
【0016】
本実施形態では、例えば図2に示すように、複数の歩行者用光源11は、車道上の複数の第1領域21に分散して設けられる。一方、複数の車両用光源12は、車道上の複数の第2領域22に分散して設けられる。複数の第1領域21及び複数の第2領域22は、車道の幅方向における一端側から他端側に向かって交互に並設される。歩行者用光源11及び車両用光源12のそれぞれは、例えば車道に埋め込まれてもよい。歩行者用光源11及び車両用光源12のそれぞれは、車道の路面から突出して設けられてもよく、路面から陥没して設けられてもよく、或いは路面に対して平らに設けられてもよい。
【0017】
歩行者用光源11の光は、上述のように車道の幅方向に発せられる。複数の第1領域21に分散して配置された複数の歩行者用光源11の光は、例えば車道の両脇に存在する歩道上の歩行者によっては視認が比較的容易であるのに対し、車道上に存在する車両30(30a、30b)の運転者によっては視認が比較的困難である。このため、複数の歩行者用光源11が点灯すると、複数の第1領域21は、車道を横断しようとする歩行者に視認させる第1横断歩道として機能する。なお、本実施形態において「点灯」は、例えば光源を継続的に点灯させることに限られず、例えば所定の周期又はパターンで光源を明滅させることを含んでもよい。
【0018】
一方、車両用光源12の光は、上述のように車道の延設方向に発せられる。複数の第2領域22に分散して配置された複数の車両用光源12の光は、例えば車道上に存在する車両30の運転者によっては視認が比較的容易であるのに対し、車道の両脇に存在する歩道上の歩行者によっては視認が比較的困難である。このため、複数の車両用光源12が点灯すると、複数の第2領域22は、車道上の車両30の運転者に視認させる第2横断歩道として機能する。
【0019】
図2に示す例では、5つの第1領域21及び5つの第2領域22が設けられている。また、第1領域21及び第2領域22それぞれの形状は矩形である。しかしながら、第1領域21及び第2領域22それぞれの数、寸法、形状、及び配置は、図2に示す例に限られない。
【0020】
検出部13は、歩道及び車道を撮影可能に設けられた1つ以上のカメラを含む。当該カメラとして、例えば歩道に設けられた監視カメラが採用されてもよい。検出部13のカメラの映像は、車道を横断しようとする歩行者、及び車道を横断している歩行者の検出に用いられる。検出部13のカメラの映像は、車道を走行する車両の検出に用いられてもよい。
【0021】
通信部14は、歩行者用光源11、車両用光源12、及び検出部13のそれぞれと有線又は無線を介して通信する1つ以上の通信インタフェースを含む。無線を介して通信する通信インタフェースは、例えば4G(4th Generation)若しくは5G(5th Generation)等の移動体通信規格、又はWifi(登録商標)若しくはBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信規格等に対応するが、これらに限られず任意の通信規格に対応してもよい。通信部14は、例えばインターネット又は端末間通信ネットワークを介して、歩行者用光源11、車両用光源12、及び検出部13のそれぞれと通信してもよい。
【0022】
記憶部15は、1つ以上のメモリを含む。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られない。記憶部15に含まれる各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部15は、標示装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部15は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び組み込みソフトウェア等を記憶してもよい。
【0023】
制御部16は、1つ以上のプロセッサ、1つ以上のプログラマブル回路、1つ以上の専用回路、又はこれらの組合せを含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるがこれらに限られない。プログラマブル回路は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)であるがこれに限られない。専用回路は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)であるがこれに限られない。制御部16は、通信部14を介して、歩行者用光源11、車両用光源12、及び検出部13のそれぞれと通信可能である。なお、上述した通信部14、記憶部15、及び制御部16は、例えば車道に沿って配置された1つ以上のエッジコンピュータに備えられてもよい。
【0024】
制御部16は、標示装置10全体の動作を制御する。本実施形態において、制御部16は、複数の歩行者用光源11と複数の車両用光源12とを別々に制御可能である。
【0025】
(標示装置の動作フロー)
図3を参照して、本実施形態に係る標示装置10の動作について具体的に説明する。
【0026】
ステップS100:標示装置10の制御部16は、車道を横断しようとする歩行者を検出する第1検出処理を開始する。
【0027】
具体的には、制御部16は、検出部13のカメラで撮影された映像を取得する。制御部16は、当該映像を用いて、例えば物体認識又は骨格認識等の任意の画像認識処理を実行し、車道を横断しようとする歩行者の検出を開始する。車道を横断しようとする歩行者の検出には、任意の手法が採用可能である。例えば、制御部16は、映像に映っている歩行者が車道に向かったまま移動せずに所定時間が経過した場合、車道を横断しようとする歩行者が検出されたと判定してもよい。或いは、制御部16は、映像に映っている歩行者が、例えば手を挙げる等の所定の動作を実行した場合、車道を横断しようとする歩行者が検出されたと判定してもよい。
【0028】
ステップS101:制御部16は、車道を第1の側から第2の側に横断しようとする第1歩行者が検出されるという条件を少なくとも含む1つ以上の条件が満たされるか否かを判定する。当該1つ以上の条件が満たされると判定された場合(ステップS101-Yes)、プロセスはステップS102に進む。一方、当該1つ以上の条件のうち少なくとも1つの条件が満たされないと判定された場合(ステップS101-No)、プロセスはステップS101を繰り返す。
【0029】
「第1の側」及び「第2の側」は、車道の幅方向における一方の側及び他方の側である。図2及び図4図6では、車道を走行する車両30(30a、30b)の進行方向を正面として、「第1の側」は左側であり、「第2の側」は右側である。しかしながら、「第1の側」と「第2の側」とが反対であってもよい。図4に示す例では、車道を第1の側(左側)から第2の側(右側)に横断しようとする第1歩行者31が、第1検出処理によって検出され得る。
【0030】
また「1つ以上の条件」は、車道を第1の側(左側)から第2の側(右側)に横断しようとする第1歩行者が検出されるという条件に加えて、例えば第1歩行者が車道を横断する際の安全性を確保するための任意の他の条件を更に含んでもよい。安全性を確保するための当該条件は、例えば、検出された第1歩行者から所定距離以内のエリアに所定速度以上で走行中の車両30が存在しないという条件であるが、これに限られない。
【0031】
ステップS102:ステップS101で1つ以上の条件が満たされると判定された場合(ステップS101-Yes)、制御部16は、第1横断歩道及び第2横断歩道を標示する。
【0032】
具体的には、制御部16は、通信部14を介して複数の歩行者用光源11及び複数の車両用光源12へ、点灯を指示する制御信号を送信する。当該制御信号を受信した各歩行者用光源11及び各車両用光源12は、点灯状態になる。
【0033】
上述したように、複数の歩行者用光源11は、車道上の複数の第1領域21に分散して配置される。このため、歩道上の歩行者(例えば、第1歩行者31)は、図4に示すように、光を発する複数の第1領域21で標示される第1横断歩道を視認し得る。第1歩行者31は、車道上に車両30が存在しないこと、又は第1横断歩道の手前で車両30(図4では、車両30a及び30b)が一時停車していること等を確認してから、第1横断歩道に沿って車道の横断を開始し得る。なお上述したように、複数の第1領域21で標示される第1横断歩道は、車道上の車両30の運転者によっては比較的視認が困難であり得る。
【0034】
また上述したように、複数の車両用光源12は、車道上の複数の第2領域22に分散して配置される。このため、車両30(30a、30b)の運転者は、図4に示すように、光を発する複数の第2領域22で標示される第2横断歩道を視認し得る。車両30(30a、30b)の運転者は、視認した第2横断歩道の手前で一時停止することで、第1歩行者31の横断を促し得る。なお上述したように、複数の第2領域22で標示される第2横断歩道は、歩道上の歩行者(例えば、第1歩行者31)によっては比較的視認が困難である。
【0035】
ステップS103:制御部16は、車道を横断中の歩行者を検出する第2検出処理を開始する。
【0036】
具体的には、制御部16は、検出部13のカメラで撮影された映像を用いて任意の画像認識処理を実行し、車道を横断中の歩行者の検出を開始する。制御部16は、検出された歩行者の車道上の位置を監視する。図5に示す例では、車道を横断中の第1歩行者31の車道上の位置が監視される。
【0037】
ステップS104:制御部16は、第1歩行者31が車道を横断している間に、第1横断歩道を第1の側(左側)から第2の側(右側)に向かって非標示にし始める。
【0038】
本実施形態では、制御部16は、第1歩行者31が車道上を進むにしたがって、第1横断歩道のうち第1歩行者31が通り過ぎた部分を非標示にする。具体的には、制御部16は、第1歩行者31が1つの第1領域21を通りすぎる度に、通信部14を介して当該1つの第1領域21に配置された各歩行者用光源11へ、消灯を指示する制御信号を送信する。当該制御信号を受信した各歩行者用光源11は、消灯状態になる。図5に示す例では、第1横断歩道に相当する5つの第1領域21のうち、第1歩行者31が通り過ぎた2つの第1領域21が非標示(すなわち、当該2つの第1領域21に配置された各歩行者用光源11が消灯状態)であり、破線で示されている。
【0039】
ここで仮に、第1歩行者31による車道の横断中、第1横断歩道の全体を標示させたままにする場合を考える。この場合、第1の側(左側)の歩道に位置する歩行者は、第1横断歩道を視認することによって車道を横断可能と判断し、第1歩行者31の後に続いて車道の横断を開始し得る。そして、第1歩行者31の後に続いて多数の歩行者が次々に車道の横断を開始してしまうと、第1横断歩道及び第2横断歩道の手前で停止している車両30(30a、30b)は発進することができず、渋滞が発生する可能性がある。これに対して本実施形態によれば、第1歩行者31による車道の横断中に、第1横断歩道が第1の側(左側)から順次非標示になる。第1の側(左側)の歩道に位置する歩行者は、第1横断歩道が第1の側(左側)から非表示になっていく様子を視認することによって車道を横断できないと判断し得る。このため、第1歩行者31の後に続いて多数の歩行者が次々に車道の横断を開始し渋滞が発生するという不都合の発生が低減される。
【0040】
なお、第1横断歩道を第1の側(左側)から第2の側(右側)に向かって非標示にする手法は、上述の例に限られない。例えば、時間の経過にしたがって第1横断歩道を第1の側(左側)から第2の側(右側)に向かって非標示にする手法が採用されてもよい。
【0041】
ステップS105:制御部16は、第1歩行者31が車道を横断し終えたか否かを判定する。第1歩行者31が車道を横断し終えたと判定された場合(ステップS105-Yes)、プロセスはステップS106に進む。一方、第1歩行者31が車道を横断し終えていないと判定された場合(ステップS105-No)、プロセスはステップS105を繰り返す。
【0042】
第1歩行者31が車道を横断し終えたか否かの判定には、任意の手法が採用可能である。例えば、制御部16は、第2検出処理によって取得される第1歩行者31の位置が車道の第2の側(右側)の端部を超えると、第1歩行者31が車道を横断し終えたと判定してもよい。図5に示す例では、第1歩行者31が車道の第2の側(右側)の端部を超えて歩道上に位置している。かかる場合、第1歩行者31が車道を横断し終えたと判定され得る。
【0043】
ここで、第1歩行者31が車道を横断し終えたと判定された場合であって、且つ第1横断歩道の少なくとも一部が標示されている場合、制御部16は、第1横断歩道の当該少なくとも一部を非標示にしてもよい。換言すると、制御部16は、第1歩行者31が車道を横断中に第1横断歩道を第1の側(左側)から第2の側(右側)に向かって非標示にし始め、第1歩行者31が車道を横断し終えるまでは第1横断歩道の少なくとも一部を標示したままにし、第1歩行者31が車道を横断し終えると第1横断歩道の全体を非標示にしてもよい。
【0044】
ステップS106:ステップS105で第1歩行者31が車道を横断し終えたと判定された場合(ステップS105-Yes)、制御部16は、第2横断歩道を非標示にする。その後、プロセスは終了する。
【0045】
かかる構成によれば、第1歩行者31が車道を横断し終えるまで第2横断歩道が標示されたままになる。このため、ステップS104で第1横断歩道が非標示になり始めても、車両30(30a、30b)の運転者は、標示されている第2横断歩道を視認することにより、第1歩行者31が車道を横断し終えるまで一時停止を継続し得る。したがって、例えば第1歩行者31が車道を横断し終える前に車両30(30a、30b)が発進する蓋然性が低減し、交通の安全性が向上し得る。
【0046】
ここで、第2横断歩道の非標示には任意の手法が採用可能である。以下、3つの具体例について説明する。
【0047】
第1例では、制御部16は、第2横断歩道を第2の側(右側)から第1の側(左側)に向かって非標示する。具体的には、制御部16は、例えば図6に示すように、第2横断歩道に相当する5つの第2領域22のうち、第2の側(右側)から1つ目の第2領域22を非標示にする(すなわち、当該1つの第2領域22が配置された各車両用光源12を消灯状態にする)。その後、制御部16は、残りの4つの第2領域22を第2の側(右側)から順番に非標示にする。
【0048】
例えば日本では、車道が複数の車線を含む場合、最も第2の側(右側)の車線が追い越し車線である。図6に示す例では、車両30aは通常の車線に位置し、車両30bは追い越し車線に位置する。一般的に、追い越し車線上の車両30(30a)は、通常の車線上の車両30(30b)よりも早く先に進みたいという要求がある。上述の第1例によれば、最も第2の側(右側)の車線が追い越し車線であると定められた国において、第2横断歩道が追い越し車線側から非標示になるので、車両30aよりも車両30bの方が先に発進し得る。したがって、上記要求が満たされるので、円滑な交通を図ることが可能である。
【0049】
第2例では、制御部16は、上述の第1例とは逆に、第2横断歩道を第1の側(左側)から第2の側(右側)に向かって非標示する。具体的には、制御部16は、第2横断歩道に相当する5つの第2領域22のうち、第1の側(左側)から1つ目の第2領域22を非標示にする。その後、制御部16は、残りの4つの第2領域22を第1の側(左側)から順番に非標示にする。
【0050】
例えば米国又は中国では、車道が複数の車線を含む場合、上述した日本の例とは逆に、最も第1の側(左側)の車線が追い越し車線である。図6に示す例では、車両30aは追い越し車線に位置し、車両30bは通常の車線に位置する。上述の第2例によれば、最も第1の側(左側)の車線が追い越し車線であると定められた国において、第2横断歩道が追い越し車線側から非標示になるので、車両30bよりも車両30aの方が先に発進し得る。したがって、上記要求が満たされるので、円滑な交通を図ることが可能である。
【0051】
第3例では、制御部16は、第2横断歩道の全体を一度に非標示にする。具体的には、制御部16は、第2横断歩道に相当する5つの第2領域22を略同時に非標示にする。当該第3例であっても、上述したように、第1歩行者31が車道を横断し終える前に車両30(30a、30b)が発進する蓋然性が低減し、交通の安全性が向上し得る。
【0052】
以上述べたように、本実施形態に係る標示装置10は、車道を横断しようとする歩行者に視認させる第1横断歩道、及び車道上の車両30の運転者に視認させる第2横断歩道を標示する制御部16を備える。制御部16は、車道を第1の側から第2の側に横断しようとする第1歩行者31が検出されるという条件を少なくとも含む1つ以上の条件が満たされると、第1横断歩道及び第2横断歩道を標示する。制御部16は、第1歩行者31が車道を横断している間に、第1横断歩道を第1の側から第2の側に向かって非標示にし始める。そして制御部16は、第1歩行者31が車道を横断し終えると、第2横断歩道を非標示にする。
【0053】
本実施形態によれば、第1歩行者31による車道の横断中に、第1横断歩道が第1の側から順次非標示になる。第1の側の歩道に位置する歩行者は、第1横断歩道が第1の側から非表示になっていく様子を視認することによって車道を横断できないと判断し得る。このため、第1歩行者31の後に続いて多数の歩行者が次々に車道の横断を開始し渋滞が発生するという不都合の発生が低減される点で、道路上の横断歩道を人間に認識させる技術が改善される。
【0054】
また、本実施形態によれば、第1歩行者31が車道を横断し終えるまで第2横断歩道が標示されたままになる。このため、第1横断歩道が非標示になり始めても、車両30(30a、30b)の運転者は、標示されている第2横断歩道を視認することにより、第1歩行者31が車道を横断し終えるまで一時停止を継続し得る。したがって、例えば第1歩行者31が車道を横断し終える前に車両30(30a、30b)が発進する蓋然性が低減し、交通の安全性が向上し得る点で、道路上の横断歩道を人間に認識させる技術が改善される。
【0055】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び改変を行ってもよいことに注意されたい。したがって、これらの変形及び改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0056】
例えば、上述した実施形態に係る標示装置10の一部の構成が、標示装置10から分離して設けられてもよい。例えば、複数の歩行者用光源11、複数の車両用光源12、及び検出部13が標示装置10から分離されてもよい。かかる場合、本開示は、複数の歩行者用光源11と、複数の車両用光源12と、検出部13と、通信部14、記憶部15、及び制御部16を備える標示装置10aと、を備えるシステムとしても実現可能である。
【0057】
また、例えば汎用のコンピュータを、上述した実施形態の変形例に係る標示装置10aとして機能させる実施形態も可能である。具体的には、上述した実施形態に係る標示装置10aの各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、汎用のコンピュータのメモリに格納し、プロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させる。したがって、本開示は、プロセッサが実行可能なプログラム、又は当該プログラムを記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体としても実現可能である。
【0058】
また、上述した実施形態において、標示装置10の制御部16は、第2横断歩道の少なくとも一部が標示されている状態が所定時間継続すると、車道を横断しようとする歩行者を検出する第1検出処理を一時的に停止してもよい。かかる構成によれば、第2横断歩道が標示された状態が比較的長く継続している状態で、新たな第1歩行者31が検出されることで第1横断歩道及び第2横断歩道が再び標示されてしまい渋滞を招き得るという不都合の発生が低減し得る。
【0059】
また、上述した実施形態において、第1歩行者31が車道を横断し終えると第2横断歩道を非標示にする手法の第1例として、第2横断歩道を第2の側(右側)から第1の側(左側)に向かって非標示する手法について説明した。ここでは、当該第1例において、第1歩行者31が車道を横断し終えたときに、車道を第2の側(右側)から第1の側(左側)に向かって(すなわち、第1歩行者31とは逆向きに)横断中の第2歩行者が存在する場合を考える。かかる場合、標示装置10の制御部16は、第2検出処理によって、第2歩行者の車道上の位置を監視してもよい。そして制御部16は、第2歩行者が車道上を進むにしたがって、第2横断歩道のうち第2歩行者が通り過ぎた部分を非標示にしてもよい。かかる構成によれば、第1歩行者31が車道を横断し終えても、第1歩行者31とは逆向きに車道を横断中の第2歩行者が存在する間は、第2横断歩道の少なくとも一部が標示されたままとなる。このため、例えば第2歩行者が横断中であるにも関わらず、第2横断歩道の全体が非標示になり車両30(30a、30b)が発進してしまう等の不都合の発生が低減し得る。
【符号の説明】
【0060】
10、10a 標示装置
11 歩行者用光源
12 車両用光源
13 検出部
14 通信部
15 記憶部
16 制御部
21 第1領域
22 第2領域
30、30a、30b 車両
31 第1歩行者
図1
図2
図3
図4
図5
図6