(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189611
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ボールペンリフィル
(51)【国際特許分類】
B43K 1/08 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
B43K1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098279
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 裕
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350HA12
2C350NA11
(57)【要約】
【課題】ボールペンチップの先端への付着強度を得るとともに、耐衝撃性をも向上可能とされた樹脂被膜を得ることを目的とする。
【解決手段】ホルダと、前記ホルダに抱持される筆記ボールと、前記筆記ボール及び前記ホルダの先端に付着しながら被覆する樹脂被膜と、を備えたボールペンチップを有し、前記樹脂被膜は、前記ホルダの先端に直接付着する内層被膜と、前記内層被膜を被覆する外層被膜とを有し、前記樹脂被膜の前記外層被膜は、前記内層被膜に比べて硬度が低いことを特徴とする、ボールペンリフィル。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダと、
前記ホルダに抱持される筆記ボールと、
前記筆記ボール及び前記ホルダの先端に付着しながら被覆する樹脂被膜と、
を備えたボールペンチップを有し、
前記樹脂被膜は、前記ホルダの先端に直接付着する内層被膜と、前記内層被膜を被覆する外層被膜とを有し、
前記樹脂被膜の前記外層被膜は、前記内層被膜に比べて硬度が低いことを特徴とする、
ボールペンリフィル。
【請求項2】
前記内層被膜は、さらに前記外層被膜に比べて付着強度が高いことを特徴とする、
請求項1に記載のボールペンリフィル。
【請求項3】
前記内層被膜は、さらに前記外層被膜に比べて軟化温度が高いことを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載のボールペンリフィル。
【請求項4】
前記内層被膜は、さらに前記外層被膜に比べて水蒸気透過度が低いことを特徴とする、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のボールペンリフィル。
【請求項5】
前記内層被膜は、さらに前記外層被膜と異なる色に着色されていることを特徴とする、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のボールペンリフィル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペンリフィルに関する。
【背景技術】
【0002】
水性インク、ゲルインクなど、揮発性を有するインクを用いるボールペンリフィルでは、製造後にインクの揮発を防止するために、熱可塑性樹脂を用いた樹脂被膜をボールペンリフィルのボールペンチップの先端に付着させ、ボールペンチップの先端の保護を行う場合がある。この樹脂被膜には、ボールペンの販売時にユーザが触れたために脱落すること及びボールペンを落下させたときの衝撃によって割れること等を防ぐことが求められる。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載された先行技術では、熱可塑性樹脂をボールペンチップの先端に被覆するように付着させ、室温まで冷却した後に再加熱して固着力を高める方法が開示されている。
【0004】
またたとえば、特許文献2に記載された先行技術では、チップ本体の先端部外面に凹部を形成して樹脂被膜の固着力を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5585424公報
【特許文献2】特開2001-225584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された先行技術では、ユーザが触れた場合などに脱落しにくくなるよう、付着強度の向上を図ることが可能となるが、ボールペンを落下させたときの衝撃に耐える方法が開示されていない。
【0007】
また、衝撃に耐えるために被膜に軟質性の材料を選択する方法が考えられるが、この場合、樹脂被膜は、ボールペンチップの先端への付着強度を減じてしまうおそれがある。
【0008】
特許文献2に記載された先行技術では、熱可塑性樹脂の固着力を向上させることが可能であるが、ボールペンチップの先端に突起部を形成するため、製造コストを増加させるおそれがある。
【0009】
本願の実施態様は、上記課題に鑑みてなされたものであって、ボールペンチップの先端への付着強度を得るとともに、耐衝撃性をも向上可能とされた樹脂被膜を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の第1実施態様によるボールペンリフィルによれば、筆記ボールと、前記筆記ボールを抱持するホルダと、前記筆記ボールの先端から前記ホルダの先端の一部までを被覆する樹脂被膜と、を備えたボールペンチップを有し、前記樹脂被膜は、前記ホルダの先端に直接付着する内層被膜と、前記内層被膜を被覆する外層被膜とを有し、前記樹脂被膜の前記外層被膜は、前記内層被膜に比べて硬度が低い、ことを特徴とする。
【0011】
また、本願の第2実施態様によるボールペンリフィルの前記内層被膜は、本願の第1実施態様のボールペンリフィルにおいて、さらに前記外層被膜に比べて付着強度が高いことが好ましい。
【0012】
また、本願の第3実施態様によるボールペンリフィルの前記内層被膜は、本願の第1実施態様又は本願の第2実施態様のボールペンリフィルにおいて、さらに前記外層被膜に比べて軟化温度が高いことが好ましい。
【0013】
また、本願の第4実施態様によるボールペンリフィルの前記内層被膜は、本願の第1実施態様から本願の第3実施態様までのボールペンリフィルにおいて、さらに前記外層被膜に比べて水蒸気透過性が低いことが好ましい。
【0014】
また、本願の第5実施態様によるボールペンリフィルの前記内層被膜は、本願の第1実施態様から本願の第4実施態様までのボールペンリフィルにおいて、さらに前記外層被膜と異なる色に着色されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本願の実施態様によれば、ボールペンリフィルのボールペンチップの先端への付着強度を得るとともに、耐衝撃性をも向上可能とされた樹脂被膜を用いたボールペンリフィルが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】本願の一実施形態に係るボールペンリフィルを示す図である。
【
図1B】本願の一実施形態に係るボールペンリフィルの断面を示す図である。
【
図1C】本願の一実施形態に係るボールペンチップの断面を示す図である。
【
図2】本願の一実施形態の変形例に係るボールペンチップの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第一実施形態]
本開示の一実施形態に係るボールペンリフィル10を、
図1Aから
図1Cまでを適宜参照して説明する。なお、以下の説明では、ボールペンリフィル10において、ボールペンチップ16が装着されている側を「先端側」とし、その反対側を「後端側」とする。
【0018】
(構成)
図1Aは、本開示の一実施形態に係るボールペンリフィル10を示す図である。ボールペンリフィル10は、略円筒型に形成されたインク収容管12と、インク収容管12の先端に接続された中空部材である継手14と、継手14の先端に保持されて、紙面にインク22を転写するボールペンチップ16とを有している。
【0019】
図1Bは、本開示の一実施形態に係るボールペンリフィル10の断面を示す図である。
図1Bに示すように、インク収容管12は、内部にインク22を収容するとともに、先端側を継手14に接続され、後端側に追従体20を収容している。なお、インク収容管12は、ポリプロピレン等の合成樹脂で作られている。
【0020】
インク22は、インク収容管12内部に収容されている。インク22は、後述する継手14の内部を通って、ボールペンチップ16へと供給されている。なお、インク22は、たとえば、水性インクあるいは水性ゲルインクである。
【0021】
追従体20は、たとえば不揮発性のグリースであり、インク22がインク収容管12の後端側から揮発することを防止する。
【0022】
継手14は、たとえばボールペンチップ16を外嵌して保持するとともに、インク収容管12に内嵌されて接続されている。上述の通り、継手14は、インク収容管12に収容されたインク22を、継手14の内部でボールペンチップ16へ供給する。なお、継手14は、ABS、PP、PBT等の合成樹脂で作られている。
【0023】
図1Cは、本開示の一実施形態に係るボールペンチップ16の断面を示す図である。
図1B及び
図1Cに示すように、ボールペンチップ16は、ホルダ24と、ホルダ24の内部に収容されるスプリング36と、ホルダ24の先端側に形成された先端部34で抱持される筆記ボール44と、筆記ボール44及びホルダ24の先端に付着しながら被覆する樹脂被膜18とを有する。
【0024】
ホルダ24は、略円筒型の中間部30と、中間部30の後端側を中空にくり抜かれて形成された接続部32と、中間部30の先端側で中空にくり抜かれて形成された先端部34と、を有する。なお、ホルダ24は、たとえば、ステンレス等の金属によって作られている。
【0025】
接続部32は、たとえば、ホルダ24の中間部30に比して外径を縮径されており、継手14に内嵌されて保持されるとともに、内部でインク収容管12から中間部30にインク22を供給する。また、中間部30は、その内部で接続部32から先端部34にインク22を供給する。
【0026】
先端部34は、たとえば、中間部30からホルダ24の先端側に向かって外径を先細に縮径されたテーパ部40と、テーパ部40の先端側に形成された先端縮径部42と、先端縮径部42先端側で内方にかしめられたカシメ部46とを有する。また、テーパ部40は、内部で中間部30から先端縮径部42にインク22を供給する。
【0027】
先端縮径部42は、たとえば、テーパ部40の先端で円筒形状に形成される。また、先端縮径部42の先端側では、後述する筆記ボール44を内部に保持した状態で、先端縮径部42の先端側の開口が筆記ボール44よりも小さい寸法となるように内方にかしめられ、カシメ部46が形成される。また内部でテーパ部40から筆記ボール44にインク22を供給する。
【0028】
筆記ボール44は、先端縮径部42でカシメ部46に転動可能に抱持され、先端縮径部42の先端側に形成された開口によって外部に露出されるとともに、先端縮径部42の内部でインク22を供給される。また、筆記ボール44は、先端縮径部42の先端側で紙面等に接触しながら転動することによって、筆記ボール44の表面に付着したインク22を紙面等に転写する。そして、筆記ボール44は、先端縮径部42の内部で供給されるインク22を連続的に表面に付着させることで、紙面にインク22を連続的に転写することが可能とされている。なお、筆記ボール44は、超硬合金によって作られている。
【0029】
ここで、本開示の一実施形態に係る樹脂被膜18は、ホルダ24の先端から先端部34のテーパ部40に直接付着する内層被膜である第一樹脂被膜50と、第一樹脂被膜50を密着して被覆しながらホルダ24の先端部34に付着する外層被膜である第二樹脂被膜52とを有している。ここで、第一樹脂被膜50の材料は、第一熱可塑性樹脂とされ、第二樹脂被膜52の材料は、第二熱可塑性樹脂とされる。
【0030】
第一樹脂被膜50は、たとえば、軟化温度以上に加熱されて溶融した第一熱可塑性樹脂に、ボールペンチップ16の先端からテーパ部40まで浸漬させて付着させることによって形成されている。これにより、第一樹脂被膜50は、上述したホルダ24の先端において、筆記ボール44、先端縮径部42及びテーパ部40を密着して覆いながら付着している。
【0031】
第二樹脂被膜52は、たとえば、軟化温度以上に加熱されて溶融した第二熱可塑性樹脂に、第一樹脂被膜50を有するボールペンチップ16の先端からテーパ部40まで浸漬させて第一樹脂被膜50を覆うように付着させることによって形成されている。これにより、第二樹脂被膜52は、上述した第一樹脂被膜50を密着して被覆しながら、テーパ部40に付着している。
【0032】
ここで、第一樹脂被膜50及び第二樹脂被膜52は、次に示す条件のもと、材料の選択がなされる。
【0033】
まず、第一樹脂被膜50は、先端部34において筆記ボール44を密着して覆うとともに確実にテーパ部40に付着するために、先端部34及び筆記ボール44への付着強度、すなわち先端部34及び筆記ボール44に対する付着性を有する、第一熱可塑性樹脂が選択される。
【0034】
続いて、第二樹脂被膜52は、第一樹脂被膜50を密着して覆うとともに、外部からの耐衝撃性を向上させるために、製造後の流通時において、第一樹脂被膜50に比して、より軟質性を有する第二熱可塑性樹脂が選択される。
【0035】
このように、本実施形態に係る樹脂被膜18は、第一樹脂被膜50によって筆記ボール44及びテーパ部40への付着強度を確保しつつ、第二樹脂被膜52によって軟質性を有することによって、耐衝撃性を確保している。
【0036】
なお、第一熱可塑性樹脂及び第二熱可塑性樹脂の硬度は、デュロメータ(Dタイプ)を用いて計測し、得られた硬度の値をデュロメータ硬さの記号であるHDDに付して示す。そして、第二熱可塑性樹脂について得られる硬度の値を、第一の熱可塑性樹脂について得られる硬度の値よりも低いものとすることで、「より軟質性を有する」とする。
【0037】
(作用及び効果)
本開示の一実施形態に係る樹脂被膜18は、第一樹脂被膜50によってボールペンチップ16の先端への付着性を確保するとともに、第二樹脂被膜52によって、ボールペンチップ16の先端に衝撃が与えられた場合の耐衝撃性を向上させている。
【0038】
したがって、本開示の一実施形態に係る樹脂被膜18は、第一樹脂被膜50及び第二樹脂被膜52を有することによって、ボールペンチップ16の先端への付着強度の確保及びボールペンチップ16の先端への衝撃に対する耐衝撃性の向上を両立することが可能となる。
【0039】
なお、上述の通り、本開示の一実施形態に係る樹脂被膜18は、まず軟化温度以上に加熱されて溶融した第一熱可塑性樹脂をボールペンチップ16の先端に付着させて形成され、続いて、軟化温度以上に加熱されて溶融した他の熱可塑性樹脂をボールペンチップ16の先端に第一樹脂被膜50を覆うように付着させて形成される。
【0040】
ここで、第一熱可塑性樹脂が第二熱可塑性樹脂より軟化温度が低い場合、第二樹脂被膜52を第一樹脂被膜50に付着させる工程中に、第一樹脂被膜50が軟化してしまうため、付着強度の低下のおそれが生じる。
【0041】
また、第一熱可塑性樹脂が第二熱可塑性樹脂より軟化温度が低い場合、第二樹脂被膜52を第一樹脂被膜50に付着させる工程中に、第一樹脂被膜50と第二樹脂被膜52とが混合することによる変質のおそれが生じる。
【0042】
しかしながら、第二熱可塑性樹脂の軟化温度が第一熱可塑性樹脂の軟化温度に対して低い場合、第二樹脂被膜52を第一樹脂被膜50が軟化しない温度で付着させることが可能となるため、上記のおそれを低減することが可能となる。したがって、第一樹脂被膜50の材料は、第二樹脂被膜52よりも軟化温度が高い材料を用いることがより好ましい。
【0043】
以上、詳述した通り、ボールペンチップ16の先端へ異なる特性の熱可塑性樹脂を重ねて付着させることで、様々な性能を両立することが可能となる。
【0044】
(変形例)
本開示にかかるボールペンリフィル10の変形例を、
図2を適宜参照して説明する。
図2は、本開示の一実施形態の変形例に係るボールペンリフィル10の図である。本変形例は、本開示の一実施形態に対し、先端縮径部42は、一実施形態に比してボールペンリフィル10の軸方向に長く形成され、樹脂被膜18は、先端縮径部42のみに付着している。
【0045】
本変形例に係るボールペンチップ16は、先端縮径部42が一実施形態に比してボールペンリフィル10の軸方向に長く形成されていることにより、一実施形態に係るボールペンチップ16の先端縮径部42に比して、樹脂被膜18が外れにくくなる。これにより、一実施形態に係るボールペンチップ16と同等の付着強度を有しながら、使用する樹脂被膜18の量を削減することが可能となる。
【0046】
他にも、本開示の一実施形態に係る樹脂被膜18がボールペンチップ16の先端から脱落することを抑えるために、第一樹脂被膜50又は第二樹脂被膜52のいずれか一方のみによって付着強度が得られていれば足りる。
【0047】
したがって、第一樹脂被膜50及び第二樹脂被膜52は、付着強度の異なる熱可塑性樹脂を用いて形成されてもよい。たとえば、第一樹脂被膜50は、内層であるため、第一熱可塑性樹脂を第二熱可塑性樹脂に比して付着強度が高い材料とすることによって、樹脂被膜18の付着強度を得ることができる。すなわち、第一樹脂被膜50について付着強度を要求することによって第二熱可塑性樹脂の選択の自由度を向上させることが可能となる。
【0048】
なお、第一熱可塑性樹脂及び第二熱可塑性樹脂の付着強度の測定は、次の手順による。まず、第一熱可塑性樹脂及び第二熱可塑性樹脂のボールペンチップ16に付着した面積を測定する。次に、樹脂被膜18にボールペンチップ16から引きはがす力を与え、樹脂被膜18がボールペンチップ16から引きはがされた時の力を測定する。そして樹脂被膜18がボールペンチップ16から引きはがされた時の力を、ボールペンチップ16に付着した面積で除して得られた値を付着強度とする。このようにして、第一熱可塑性樹脂の付着強度の値を、第二熱可塑性樹脂の付着強度の値よりも高いものとする。
【0049】
また、本開示の一実施形態に係る樹脂被膜18によってインク22の揮発を抑えるためには、ボールペンチップ16の先端からインク22の揮発を抑えるために、第一樹脂被膜50又は第二樹脂被膜52のいずれか一方のみによってインク22の揮発を抑えることが可能とされていれば足りる。
【0050】
したがって、第一樹脂被膜50及び第二樹脂被膜52は、水蒸気透過度を異なる熱可塑性樹脂を用いて形成されてもよい。たとえば、筆記ボール44に直接接触する第一樹脂被膜50の材料である第一熱可塑性樹脂は、第二熱可塑性樹脂に比して水蒸気透過度が低い材料とすることによって、インク22の揮発を抑えてもよい。
【0051】
これにより、第一樹脂被膜50又は第二樹脂被膜52のいずれか一方について水蒸気透過度を要求することによって、第一樹脂被膜50及び第二樹脂被膜52の形成する熱可塑性樹脂の選択の自由度を向上させることが可能となる。
【0052】
なお、第一熱可塑性樹脂及び第二熱可塑性樹脂の水蒸気透過度は、50℃の恒温槽に1ヶ月間放置した後、重量計を用いて計測する。計測によって得られた水蒸気透過度の値は、揮発によって減じた重量を%として示す。
【0053】
また、本開示の一実施形態に係る樹脂被膜18が形成されるためには、第一樹脂被膜50及び第二樹脂被膜52が形成されていることを製造時に認識する必要がある。
【0054】
この場合、第一樹脂被膜50及び第二樹脂被膜52は、それぞれ異なる色に着色された熱可塑性樹脂を用いることにより、製造時に第一樹脂被膜50及び第二樹脂被膜52の形成を容易に認識することが可能となる。
【0055】
また、第一樹脂被膜50及び第二樹脂被膜52は、熱可塑性樹脂以外の材料を用いて形成されてもよい。たとえば、本開示の一実施形態に係る樹脂被膜18は、熱硬化性樹脂及び紫外線硬化樹脂等を用いられて形成されてもよい。
【0056】
なお、本開示の一実施形態について、樹脂被膜18が第一樹脂被膜50及び第二樹脂被膜52からなる形態について説明したが、本開示に係る樹脂被膜18は、これに限らず、さらに複数の樹脂を付着させることによって多数の層を形成されていてもよい。
【実施例0057】
次に、下記実験を行い、本開示の一実施形態の効果について検証を行った。
(実験方法)
比較例1として第一熱可塑性樹脂のみを用いて樹脂被膜18を形成した場合、比較例2として第二熱可塑性樹脂のみを用いて樹脂被膜18を形成した場合、実施例として第一熱可塑性樹脂を用いて第一樹脂被膜50を形成し、さらに第二熱可塑性樹脂を用いて第一樹脂被膜50を被覆する第二樹脂被膜52を形成することによって、樹脂被膜18を形成した場合のそれぞれのボールペンリフィル10を装着したボールペンを用い、付着強度及び耐衝撃性を測定した。
【0058】
比較例1では、第一熱可塑性樹脂に昭和電工マテリアルズ株式会社製ハイボン9877(軟化点111℃)を、該軟化点を超えた温度に加熱し、溶融させて、ボールペンチップ16の先端からテーパ部40まで浸漬させて付着させて樹脂被膜18を形成した。
【0059】
比較例2では、第二熱可塑性樹脂にボスティック・ニッタ株式会社製HC126-B(軟化点104℃)を、該軟化点を超えた温度に加熱し、溶融させて、ボールペンチップ16の先端からテーパ部40まで浸漬させて付着させて樹脂被膜18を形成した。
【0060】
実施例では、第一熱可塑性樹脂に昭和電工マテリアルズ株式会社製ハイボン9877を、第一樹脂被膜50の該軟化点を超えた温度に加熱し、溶融させて、ボールペンチップ16の先端からテーパ部40まで浸漬させて付着させて第一樹脂被膜50を形成した後、第二熱可塑性樹脂にボスティック・ニッタ株式会社製HC126-Bを、該軟化点を超え、第一樹脂被膜50の該軟化点未満の温度に加熱し、溶融させて、ボールペンチップ16の先端からテーパ部40まで浸漬させて第一樹脂被膜50を覆うように付着させて樹脂被膜18を形成した。
【0061】
ここで、第一熱可塑性樹脂及び第二熱可塑性樹脂の物性値及び成分を表1に示す。
【0062】
【0063】
第一熱可塑性樹脂及び第二熱可塑性樹脂の軟化点は環球式軟化点試験法によって測定した。
【0064】
また、第一熱可塑性樹脂及び第二熱可塑性樹脂の硬度は、デュロメータ(タイプD)によって測定した。
【0065】
また、実験に用いるボールペンチップ16は、筆記ボール44の直径が0.38mm、先端の頂角を30°とした。また、ボールペンチップ16の材質は、筆記ボール44の材質が超硬合金、ホルダ24の材質をステンレス鋼とした。また、インク22には、以下の配合を用いた。
マイクロスフェア:15質量部
キサンタンガム(増粘剤、KESLAN S、三晶):0.18質量部
リン酸エステル(プライサーフA219B、第一工業製薬):0.5質量部
防腐剤(バイオデン421、大和化学工業):0.2質量部
ベンゾトリアゾール(防錆剤):0.3質量部
アミノメチルプロパノール(pH調整剤):0.1質量部、
プロピレングリコール(溶剤):15質量部、
イオン交換水:残部
【0066】
また、それぞれの条件における樹脂被膜18の付着強度は、上述した手順により測定した。
【0067】
また、それぞれの条件における樹脂被膜18の耐衝撃性は、次に示す手順で評価した。まず、ボールペンの先端がコンクリートに当たるように、0.75mの高さからコンクリート面に対してボールペンを自由落下させた。次に樹脂被膜18がボールペンチップ16から脱落又は樹脂被膜18の割れを確認して耐衝撃性を評価した。
【0068】
また、それぞれの条件における樹脂被膜18の水蒸気透過度は、上述した手順により測定した。
【0069】
樹脂被膜18の付着強度、耐衝撃性試験、水蒸気透過度試験の結果を表2に示す。
【0070】
【0071】
なお、表2中の「A」は、耐衝撃性試験により樹脂被膜18が脱落、割れ等が生じなかった試験品であり、「B」は、耐衝撃性試験により樹脂被膜18が脱落、割れ等が生じたものを示している。
【0072】
表2から、第一樹脂被膜50及び第二樹脂被膜52を重ねて付着させることにより、第一樹脂被膜50における付着強度及び第二樹脂被膜52における耐衝撃性を有していることがわかる。