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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189612
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】仕切部材、パネル及び空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20221215BHJP
   F24F 13/068 20060101ALI20221215BHJP
   F24F 7/013 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F24F13/02 C
F24F13/02 F
F24F13/02 G
F24F13/02 A
F24F13/068 A
F24F7/013 101S
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098280
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 和也
(72)【発明者】
【氏名】堀江 昭秀
(72)【発明者】
【氏名】小東 弘明
(72)【発明者】
【氏名】小松 和隆
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AC03
3L080BA03
3L080BA12
3L080BB02
(57)【要約】
【課題】建物の空調システムの施工現場での工事負担を軽減する。
【解決手段】ドア104は、建物の内部を仕切るドア本体122と、ドア本体122を貫通し、一端及び他端にドア本体122から開口する開口部146、148を備える貫通ダクト144と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内部を仕切る仕切部材本体と、
前記仕切部材本体を貫通し、一端及び他端に前記仕切部材本体から開口する開口部を備えると共に、前記開口部の間で連続する気体の流路を形成する貫通ダクトと、
を有する仕切部材。
【請求項2】
前記貫通ダクトの前記一端の前記開口部と前記他端の前記開口部とは異なる高さ位置にある請求項1に記載の仕切部材。
【請求項3】
前記貫通ダクトの前記一端の前記開口部と前記他端の前記開口部とは前記仕切部材本体の異なる面にある請求項1又は請求項2に記載の仕切部材。
【請求項4】
前記貫通ダクトの前記一端の前記開口部は前記仕切部材本体の高さ方向の中央よりも上部にある請求項1~請求項3の何れか一項に記載の仕切部材。
【請求項5】
前記貫通ダクトの前記一端の前記開口部は前記仕切部材本体の幅方向の中央よりも一方側にある請求項1~請求項3の何れか一項に記載の仕切部材。
【請求項6】
複数の前記貫通ダクトを備える請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の仕切部材。
【請求項7】
前記貫通ダクトに備えられ、運転により空気の流れを生じさせる換気扇、を有する請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の仕切部材。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか一項に記載の仕切部材が接続されるパネルであって、
前記建物に取り付けられるパネル本体と、
前記パネル本体に設けられ前記貫通ダクトの前記一端の前記開口部と連通する連通部と、
を備え、
前記連通部に、前記建物に備えられた空調機器からの建物ダクトが接続される、
パネル。
【請求項9】
前記連通部を閉塞し、前記貫通ダクトが接続されると前記貫通ダクトに連動して前記連通部を開放する開閉部材、を有する請求項8に記載のパネル。
【請求項10】
前記連通部に備えられ、運転により空気の流れを生じさせる換気扇、を有する請求項8又は請求項9に記載のパネル。
【請求項11】
請求項1~請求項7の何れか一項に記載の仕切部材と、
請求項8~請求項10の何れか一項に記載のパネルと、
一端が前記空調機器に接続され他端が前記連通部に接続された前記建物ダクトと、
を有する空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、仕切部材、パネル及び空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の空調や換気を行うために、各種のシステムが提案されている。たとえば特許文献1には、外壁に設けた窓サッシの上部に、窓サッシの上縁に沿ったガラリを形成し、ガラリと天井面に形成した換気口とを天井裏に配設したダクトで接続し、ダクトに換気用ファンを装備した建物の換気システムが記載されている。
【0003】
この換気システムでは、換気用ファンを駆動することにより、ガラリ、ダクト及び換気口を介して室内の強制換気(排気又は給気)を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-322256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される従来技術では、窓サッシに沿ったガラリを外壁に形成すると共に天井面に換気口を形成し、さらにガラリと換気口とをダクトで接続した上で、ダクトに換気用ファンを装備している。
【0006】
すなわち、引用文献1に記載される技術では、建物の換気システムとして、外気の取入口(ガラリ)から換気用ファンまでのダクトの全体を天井に設けており、現場での工事負担が大きい。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、建物の空調システムの施工現場での工事負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一態様の仕切部材では、建物の内部を仕切る仕切部材本体と、前記仕切部材本体を貫通し、一端及び他端に前記仕切部材本体から開口する開口部を備えると共に、前記開口部の間で連続する気体の流路を形成する貫通ダクトと、を有する。
【0009】
この仕切部材では、貫通ダクトを備える。貫通ダクトは、仕切部材本体を貫通しており、一端及び他端に開口部を備えている。そして、開口部の間には、連続する気体の流路が形成されている。したがって、仕切部材本体によって建物内部を仕切った状態で、貫通ダクトに、建物に備えられた建物ダクトを接続すれば、貫通ダクトを、空調機器からの空気を流す空調ダクトの一部として機能させることができる。空調ダクトの一部が仕切部材に備えられているので、空調ダクトの全体が建物に設けられる構成と比較して、施工現場での工事負担が軽減される。
【0010】
第二態様では、前記貫通ダクトの前記一端の前記開口部と前記他端の前記開口部とは異なる高さ位置にある。
【0011】
これにより、一端の開口部から空気が導入された場合、一端の開口部とは異なる高さ位置にある他端の開口部から空気を排出できる。
【0012】
第三態様では、前記貫通ダクトの前記一端の前記開口部と前記他端の前記開口部とは前記仕切部材本体の異なる面にある。
【0013】
これにより、仕切部材本体の異なる面の間で空気を移動させることができる。
【0014】
第四態様では、前記貫通ダクトの前記一端の前記開口部は前記仕切部材本体の高さ方向の中央よりも上部にある。
【0015】
空調機器からの建物ダクトが建物の天井付近にある場合に、貫通ダクトの一端の開口部を建物ダクトに容易に接続できる。
【0016】
第五実施形態では、前記貫通ダクトの前記一端の前記開口部は前記仕切部材本体の幅方向の中央よりも一方側にある。
【0017】
空調機器からの建物ダクトが建物の壁付近にある場合に、貫通ダクトの一端の開口部を建物ダクトに容易に接続できる。
【0018】
第六態様では、複数の前記貫通ダクトを備える。
【0019】
複数の貫通ダクトで、一端及び他端の開口部は異なる位置にあるので、異なる位置で空気を取り込んだり、排出したりできる。
【0020】
第七態様では、前記貫通ダクトに備えられ、運転により空気の流れを生じさせる換気扇、を有する。
【0021】
換気扇の運転により、貫通ダクト内の空気の流れを生成できる。
【0022】
第八態様では、前記仕切部材が接続されるパネルであって、前記建物に取り付けられるパネル本体と、前記パネル本体に設けられ前記貫通ダクトの前記一端の前記開口部と連通する連通部と、を備え、前記連通部に、前記建物に備えられた空調機器からの建物ダクトが接続される。
【0023】
パネル本体の連通部に空調機器からの建物ダクトが接続され、さらに連通部は貫通ダクトの一端の開口部と連通するので、空調機器から貫通ダクトの他端の開口部まで連通した構造を実現できる。
【0024】
第九態様では、前記連通部を閉塞し、前記貫通ダクトが接続されると前記貫通ダクトに連動して前記連通部を開放する連動手段、を有する。
【0025】
貫通ダクトが連通部に接続されていない状態では開閉部材により連通部が閉塞され、連通部への異物の進入を抑制できる。貫通ダクトが接続されると開閉部材は連通部を開放するので、連通部を通る空気の流れが可能になる。
【0026】
第十態様では、前記連通部に備えられ、運転により空気の流れを生じさせる換気扇、を有する。
【0027】
換気扇の運転により、建物ダクト内の空気の流れを補助できる。パネルの連通部が仕切部材の一端の開口部と連通している状態では、仕切部材の貫通ダクト内の空気の流れも補助できる。
【0028】
第十一態様の空調システムでは、前記仕切部材と、前記パネルと、一端が前記空調機器に接続され他端が前記連通部に接続された前記建物ダクトと、を有する。
【0029】
この空調システムでは、空調機器から建物ダクト、連通部を経て貫通ダクトまでの空気が流れる空調ダクトを構成できる。空調ダクトの一部は仕切部材に備えられた貫通ダクトとして構成されているので、空調ダクトの全体が建物に設けられる構成と比較して、施工現場での工事負担が軽減される。
【発明の効果】
【0030】
本願では、建物の空調システムの施工現場での工事負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は第一実施形態のドア及びパネルを備えた空調システムを示す斜視図である。
図2図2は第一実施形態の空調システムをドア本体の閉状態で示す斜視図である。
図3図3は第一実施形態のドアを示す正面図である。
図4図4は第一実施形態のドアを示す図3の4-4線断面図である。
図5図5は第一実施形態のドアを示す図3の5-5線断面図である。
図6図6は第一実施形態のドアとパネルとの接続過程を部分的に拡大して示す説明図である。
図7図7は第一実施形態のドアとパネルとの接続過程を部分的に拡大して示す説明図である。
図8図8は第一実施形態のドアとパネルとの接続状態を部分的に拡大して示す説明図である。
図9図9は第二実施形態のドア及びパネルを備えた空調システムを示す斜視図である。
図10図10は第三実施形態のドア及びパネルを備えた空調システムを示す斜視図である。
図11図11は開示の技術に適用可能な換気扇を示す斜視図である。
図12図12は開示の技術に適用可能は換気扇を示す断面図である。
図13図13は第四実施形態のドア及びパネルを備えた空調システムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0033】
図1には、第一実施形態のドア104及びパネル106を備えた空調システム102が示されている。ドア104は、本願の開示技術における仕切部材の一例である。
【0034】
ドア104は、板状のドア本体122を有している。ドア本体122の幅方向、奥行き方向(厚み方向)及び高さ方向を、それぞれ矢印W、矢印D、矢印Hで示す。ドア本体122において、厚み方向の一方の面(図1における奥側の面)を第一面122P、他方の面(図1における手前側の面)を第二面122Qとする。
【0035】
ドア本体122の幅方向の一方側には、ヒンジ112が設けられている。ドア本体122は、ヒンジ112を用いて建物の内壁等に取り付けられ、二点鎖線で示す閉状態(図2にも示す)と、実線で示す開状態と、の間で回動可能である。ドア本体122は、閉状態では建物内の出入口や通路(以下「出入口等」という)を閉塞し、開状態では出入口等を開放する。
【0036】
ドア本体122には、貫通ダクト144が設けられている。図1に示す例では、第一貫通ダクト144Aと第二貫通ダクト144Bの2つの貫通ダクト144がドア本体122に形成されている。
【0037】
図4にも示すように、第一貫通ダクト144Aは、ドア本体122の第一面122Pから第二面122Qまでドア本体122の厚み方向に沿って形成されている。第一貫通ダクト144Aには、第一面122P及び第二面122Qで開口する開口部146が形成されている。以下では、第一面122Pの開口部146を第一開口部146P、第二面122Qの開口部146を第二開口部146Qと適宜区別する。第一貫通ダクト144Aは、第一開口部146Pから第二開口部146Qまで連続しており、第一開口部146Pと第二開口部146Qの間で気体の流路を形成している。
【0038】
図5に示すように、第二貫通ダクト144Bは、ドア本体122の内部において、ドア本体122の高さ方向(矢印H方向)に延在されている。この第二貫通ダクト144Bにも開口部148が設けられている。具体的には、第一開口部148Pは、第二貫通ダクト144Bの上端において、第一面122Pで開口しており、第二開口部148Qは、第二貫通ダクト144Bの下端において、第二面122Qで開口している。第二貫通ダクト144Bも第一貫通ダクト144Aと同様に、第一開口部148Pから第二開口部148Qまで連続しており、第一開口部148Pと第二開口部148Qの間で気体の流路を形成している。
【0039】
したがって、第一貫通ダクト144Aの第一開口部146Pと、第二貫通ダクト144Bの第一開口部148Pとは、いずれも、ドア本体122の上部にある。また、第一貫通ダクト144Aの第二開口部146Qも、ドア本体122の上部(第一開口部146Pと同じ高さ位置)にある。これに対し、第二貫通ダクト144Bの第二開口部148Qは、ドア本体122の下部にある。すなわち、第二貫通ダクト144Bでは、第一開口部148Pと第二開口部148Qとは異なる高さ位置にある。なお、この「上部」とは、ドア本体122の高さ方向において中央よりも上の位置であり、「下部」とは、同じくドア本体122の高さ方向において中央よりも下の位置である。
【0040】
図2に示すように、建物の天井108には、ドア本体122が閉状態にあるときに、このドア本体122において、第一開口部146P、148Pと対向する高さ位置に、パネル106が取り付けられている。
【0041】
天井108の上方には、建物ダクト116A、116Bが配設されている。建物ダクト116A、116Bの一端は建物に備えられた空調機器114に接続されている。
【0042】
パネル106は、天井108に取り付けられるパネル本体118を有している。第一実施形態では、パネル本体118は、たとえば、その下面が天井108の下面と同一面をなしている(いわゆる面一の状態にある)。そして、ドア本体122が閉状態にあるとき、このドア本体122の上部と対向する部材である。
【0043】
パネル本体118には連通部150が設けられている。連通部150は、第一実施形態では2つである。以下では、2つの連通部150を連通部150A、150Bとして適宜区別する。
【0044】
具体的には、連通部150A、150Bはそれぞれ建物ダクト116A、116Bに一対一で対応する筒状の部材である。建物ダクト116A、116Bの他端が連通部150A、150Bに接続されている。
【0045】
連通部150Aは、第一貫通ダクト144Aの第一開口部146Pと対向する位置に形成され、連通部150Bは、第二貫通ダクト144Bの第一開口部148Pと対向する位置に形成されている。
【0046】
図6に示すように、連通部150には、弁152が設けられている。弁152は、連通部150における空気の流れ方向(矢印F1方向)軸方向と直交する回転中心軸154周りに回転可能とされ、バネ156によって矢印R1方向に回転付勢されている。
【0047】
連通部150の内周にはストッパ片158が突設されており、バネ156の回転付勢力を受けた弁152がストッパ片158に当たることで、弁152が連通部150を閉塞した角度、すなわち閉弁姿勢に維持されるようになっている。バネ156の付勢力に抗して弁152を矢印R1と反対の方向に回転させることで、弁152は開弁姿勢となり、連通部150を開放することができる。連通部150が開放された状態では、内部を矢印F1方向に空気が流れる。
【0048】
貫通ダクト144は、押圧片160を有している。図6に示す例では、押圧片160は、第一開口部146P、148Pに設けられている。押圧片160は、ドア本体122が開位置にある状態では弁152と非接触である。しかし、図7に示すように、ドア本体122の閉位置への回動によって弁152に接触する。そして、ドア本体122が閉位置へ回動するに伴い、バネ156の付勢力に抗して弁152を矢印R1と反対の方向に回転させる。
【0049】
図8に示すように、ドア本体122が閉位置にある状態では、押圧片160に押された弁は、連通部150内での空気の流れ方向に沿った姿勢となる。
【0050】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0051】
ドア本体122の閉状態では、図2に示すように、第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bの第一開口部146P、148Pが、パネル106の連通部150A、150Bと連通する。これにより、建物ダクト116と貫通ダクト144とがつながり、空調機器114から、第二開口部146Q、148Qに至る一続きの空調ダクトが構成される。第二開口部146Q、148Qは、建物の内部に向けて開口しているので、空調機器114からの空気を第二開口部146Q、148Qから建物内に排出したり、建物内の空気を第二開口部146Q、148Qから吸引して空調機器114に送ったりすることが可能である。すなわち、第二開口部146Q、148Qは、空調システム102における空気の吸排気口として機能する。
【0052】
このように、第一実施形態では、空調機器114から、空気の吸排気口(第二開口部146Q、148Q)までの空調ダクトの一部が、ドア本体122を貫通する第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bとしてドア本体122に設けられている。空調機器から空気の吸排気口までの空調ダクトの全体を建物に設ける構成と比較して、建物の施工現場での工事負担が軽減される。空調システム102としても、空調ダクトの一部がドア104の第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bとして設けられているので、空調システム102を設置する際の工事負担も軽減される。
【0053】
第一実施形態では、建物の天井108に、パネル106が配設されている。このパネル106のパネル本体118に連通部150A、150Bが設けられており、ドア本体122を閉状態にすると、ドア104の第一開口部146P、148Pと連通する。すなわち、第一実施形態では、パネル106を有することで、空調機器114から第二開口部146Q、148Qまで連通する構造を実現できる。
【0054】
図6に示すように、パネル106の連通部150には弁152が設けられており、ドア104が閉状態にない場合は、弁152によって連通部150が閉塞されている。これにより、連通部150に不用意に埃等の異物が進入することを抑制できる。
【0055】
しかも、弁152にはバネ156の回転付勢力が作用すると共に、この回転付勢力を受けた弁152の回転が、ストッパ片158に接触することで、連通部150を閉塞した姿勢に維持される。これにより、弁152が不用意に回転して連通部150が開放されることが抑制される。
【0056】
図7に示すように、ドア104を閉状態へと回動させると、押圧片160が弁152を押し、バネ156の回転付勢力に抗して弁152を回転させる。ドア104が開状態になると、図8に示すように、連通部150が開放され、空気の流れが可能となる。
【0057】
第一実施形態では、第一開口部146P、148Pが、ドア本体122の上部にある。したがって、パネル106が建物の天井108に設けられている場合に、第一開口部146P、148Pがパネル106の連通部150A、150Bの近くに位置する。すなわち、パネル106が建物の天井108に設けられている構成に対し、第一開口部146P、148Pと連通部150A、150Bとの接続状態を容易に実現できる。
【0058】
なお、このように建物の天井108に設けられたパネル106において、第一開口部146P、148Pと連通部150A、150Bとの接続状態を容易に実現するためには、第一開口部146P、148Pの高さ方向の位置は、たとえばドア本体122の上端から、ドア本体122の高さの30%以内の範囲にあることが好ましく、10%以内の範囲にあることがさらに好ましい。
【0059】
ドア本体122において、第二貫通ダクト144Bは、ドア本体122の高さ方向に延在しており、空気を高さ方向(上下方向)に移動させることができる。第一実施形態では、第一開口部148Pと異なる高さ位置に第二開口部148Qが形成されているので、たとえば、空調機器114で生成された暖気を、第一開口部148Pから第二貫通ダクト144Bに導入し、下方に移動させて第二開口部148Qから排出すれば、暖気を室内の下部に供給できる。これとは逆に、室内の空気を第二開口部148Qから取り込む場合には、室内の下部に溜まった冷気を効果的に第二開口部148Qから取り込める。
【0060】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0061】
第二実施形態のドア164では、図9に示すように、第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bが、ドア本体122の幅方向(矢印W方向)の一方側に設けられている。この「幅方向の一方側」とは、ドア本体122の幅方向において中央よりも一方側である。そして、第一貫通ダクト144Aはドア本体122の上部に、第二貫通ダクト144Bはドア本体122の下部に位置している。
【0062】
また、第二実施形態では、パネル106が、建物の内壁110に沿って、上下方向に延在する形状とされている。そして、2つの連通部150A、150Bが、高さ方向に間隔をあけて配置されている。
【0063】
第二実施形態においても、第一実施形態と同様に、ドア104の閉状態では、第一開口部146P、148Pが、パネル106の連通部150A、150とそれぞれ連通し、空調機器114から、第二開口部146Q、148Qに至る一続きの空調ダクトが構成される。空調機器114から、空気の吸排気口(第二開口部146Q、148Q)までの空調ダクトの一部がドア本体122に設けられているので、建物の施工現場での工事負担が軽減される。
【0064】
第二実施形態では、第一開口部146P、148Pが、ドア本体122の幅方向の一方側にある。したがって、パネル106が建物の内壁110に沿って上下方向に延在している場合に、第一開口部146P、148Pがパネル106の連通部150A、150Bの近くに位置する。すなわち、パネル106が建物の内壁に沿って上下方向に延在されている構成に対し、第一開口部146P、148Pと連通部150A、150Bとの接続状態を容易に実現できる。
【0065】
なお、このように建物の内壁に沿って設けられたパネル106において、第一開口部146P、148Pと連通部150A、150Bとの接続状態を容易に実現するためには、第一開口部146P、148Pの幅方向の位置は、たとえばドア本体122の幅方向一端から、ドア本体122の幅の30%以内の範囲にあることが好ましく、10%以内の範囲にあることがさらに好ましい。
【0066】
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態において、第一実施形態又は第二実施形態と同様の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0067】
第三実施形態のドア174では、図10に示すように、第一実施形態のドア104と同様の第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bを有しているが、第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bのそれぞれに、換気扇124が設けられている。図10に示す例では、第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bにおいて、第二開口部146Q、148Qに換気扇124が設けられている。
【0068】
図11及び図12には、換気扇124の構造の一例が示されている。ここで例示する換気扇124は、換気扇本体126、シャッタ128、ルーバ130、フィルタ132、保持部138及び固定部140を有している。
【0069】
保持部138は円筒状の部材であり、第一貫通ダクト144A又は第二貫通ダクト144Bの内部に配置される。保持部138の内側には、換気扇本体126が保持されている。
【0070】
換気扇本体126は、たとえば複数のプロペラを有するプロペラファンであり、図示しないモータによる回転で空気の流れを生じさせることができる。そして、ドア本体122を締めた状態で、換気扇本体126の運転により、第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bにおいて、空気の流れを生成することが可能である。そして、これにより、ドア本体122の両側に位置する室の間で空気を積極的に移動させることが可能である。
【0071】
しかも、例えば、換気扇本体126を2方向に回転可能(正転及び逆転可能)とすることで、図12に示す矢印F1方向の空気の流れと、矢印F2方向の空気の流れと、を生じさせることができる。なお、換気扇本体126はプロペラファンに限定されず、シロッコファンやターボファンであってもよい。
【0072】
シャッタ128は、少なくとも「開」状態と「閉」状態の2つの状態を採り得る。開状態では、換気扇124を通る空気の移動が可能である。たとえば、換気扇本体126の運転時には開状態を採る。また、換気扇本体126が運転停止している状態であっても、シャッタ128が開状態であれば、換気扇124を通る空気の流れは可能である。これに対し、シャッタ128の閉状態では、換気扇124を通る空気の流れを遮断する。換気扇本体126が運転停止している状態でシャッタ128を閉状態とすれば、換気扇124を通る空気の流れが遮断される。さらに、シャッタ128の閉状態では、音や臭いが伝わることも抑制される。
【0073】
ルーバ130は、たとえば、換気扇124の風の流れ方向に対し傾斜する複数の羽板を有している。羽板の傾斜角度や傾斜方向を変更することで、換気扇124からの空気の排出方向を変更することが可能である。さらには、換気扇124への空気の吸込方向も変更可能である。
【0074】
シャッタ128及びルーバ130はそれぞれ、図示しないアクチュエータにより作動される。
【0075】
フィルタ132は、空気の通過は許容するが、通過時に空気中の埃や微粒子等の異物を捕捉する。
【0076】
保持部138には、軸方向の端部の位置に固定部140が設けられている。固定部140は、保持部138から径方向外側に広がる環状(フランジ状)に形成されている。
【0077】
図11に示すように、固定部140には、周方向に一定の間隔、図11に示す例では中心角90度をなす4か所に、固定孔142が貫通して形成されている。この固定孔142にたとえばスクリュウを挿通し、さらにこのスクリュウをドア本体122にねじ込むことで、固定部140をドア本体122に固定できる。
【0078】
このような構成とされた第三実施形態では、換気扇124を運転することで、第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bにおいて空気の流れを生成することができる。第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bがそれぞれ建物ダクト116A、116Bと連通して空調ダクトを構成している状態では、空調ダクトにおける空気の流れを換気扇124の運転により補助できる。
【0079】
換気扇124はルーバ130を有しているので、第二開口部146Q、148Qから排出される空気の向きを調整することが可能である。
【0080】
換気扇124はシャッタ128を有しているので、第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bの空気の流れを断つようにすることも可能である。
【0081】
換気扇124はフィルタ132を有しているので、第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bを流れる空気から異物を除去することも可能である。
【0082】
次に、第四実施形態について説明する。第四実施形態において、第一~第三の各実施形態と同様の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0083】
第四実施形態では、第一実施形態と同様のドア104を有しているが、パネル106において、連通部150A、150Bのそれぞれに、弁152に代えて換気扇124が設けられている。
【0084】
したがって、第四実施形態では、換気扇124を運転することで、建物ダクト116A、116Bにおいて空気の流れを生成することができる。第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bがそれぞれ建物ダクト116A、116Bと連通して空調ダクトを構成している状態では、空調ダクトにおける空気の流れを換気扇124の運転により補助できる。しかも、シャッタ128が実質的に弁152の作用、すなわち、連通部150を開閉する動作を行うので、第四実施形態では連通部150において弁152を省略できる。また、ドア本体122が閉状態にない場合にはシャッタ128を開けることで連通部150から室内に空気を排出できる。この場合に、ルーバ130により、空気の排出方向を調整可能である。連通部150から室内に空気を排出する必要がない場合は、ルーバ130を省略してもよい。
【0085】
なお、第三実施形態のように貫通ダクト144に及換気扇124を有する構成を、第二実施形態に適用することも可能である。同様に、第四実施形態のように連通部140に換気扇124を有する構成を第二実施形態に適用することも可能である。
【0086】
本願の開示の技術において、貫通ダクト144や連通部150に換気扇124が設けられていな部位に、ルーバ、シャッタ及びフィルタの少なくとも1つを、必要に応じて設けてもよい。たとえば、第二開口部146Q、148Qにシャッタを設けて開口断面積を調整することで、第二開口部146Q、148Qを流れる空気の量を変更することが可能である。また、第二開口部146Q、148Qにルーバを設けることで、第二開口部146Q、148Qから排出される空気の向きを変更することが可能である。貫通ダクト144にフィルタを設けることで、貫通ダクト144を流れる空気から異物を除去することが可能である。
【0087】
また、連通部150に弁152を設けた構成において、貫通ダクト144が連通部150にそれぞれ接続されると弁152を開弁姿勢へ回転させる構成は、上記した押圧片160で押圧する構成に限定されない。たとえば、弁152と貫通ダクト144とに磁石を取り付け、弁152に貫通ダクト144が接近すると磁石の斥力で弁152が開弁姿勢に向けて回転するようにしてもよい。いすれの構成であっても、弁152を回転させるためのモータ等は不要であり、機械的構成で弁152を開弁姿勢に向けて回転させることができる。
【0088】
本願の開示の技術において、第一貫通ダクト144A及び第二貫通ダクト144Bは、ドア本体122の第一面122P及び第二面122Qに開口している。したがって、第一面122P側から第二面122Q側へ空気が流れる流路を形成できる。そして、第一面122P側の領域と、第二面122Q側の領域との間で空気を移動させることができる。
【0089】
また、本願の開示の技術において、貫通ダクト144は、ドア本体122に対し複数(第一貫通ダクト144Aと第二貫通ダクト144Bの2つ)設けられている。複数の貫通ダクトで、それぞれ第一開口部と第二開口部146Qの位置は異なるので、異なる位置で貫通ダクトに空気を取り込んだり、空気を排出したりすることが可能となる。また、複数の貫通ダクト144を有することで、1つの貫通ダクト144を有する構成と比較して、空気の流路としての流路断面積を広く確保できる。
【符号の説明】
【0090】
102 空調システム
104 ドア
106 パネル
108 天井
110 内壁
112 ヒンジ
114 空調機器
116 建物ダクト
118 パネル本体
122 ドア本体
122P 第一面
122Q 第二面
124 換気扇
144 貫通ダクト
146、148 開口部
150 連通部
152 弁
164 ドア
174 ドア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13