(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189620
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】容器内充填物の製造装置及び固形化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65B 3/26 20060101AFI20221215BHJP
B65B 3/12 20060101ALI20221215BHJP
A61K 8/02 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
B65B3/26
B65B3/12
A61K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098293
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山脇 健司
(72)【発明者】
【氏名】福田 茂彦
(72)【発明者】
【氏名】山星 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】吉野 秀樹
【テーマコード(参考)】
3E118
4C083
【Fターム(参考)】
3E118AA04
3E118AB18
3E118BA07
3E118BB21
3E118DA02
3E118EA03
3E118FA03
4C083CC11
4C083CC19
4C083DD21
4C083FF06
(57)【要約】
【課題】運転条件や流動体の組成が変更されても、容器に流動体を安定して充填でき、容器内充填物の品質を安定化できる、容器内充填物の製造装置及び固形化粧料の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の容器内充填物の製造装置1は、ポンプ15と、チューブと、圧力検出手段4と、三方バルブ3と、制御手段5とを備え、該チューブは、流動体10の流路をなしている。製造装置1は、制御手段5は、ポンプ15による流動体10の吐出を制御して、第1流路F1及び第2流路F2を介して該流動体10を容器23内に充填する充填部52と、圧力検出手段4にて検出された第2流路F2内の圧力が所定の値に達すると同時に流動体10の流路を、三方バルブ3によって第2流路F2から第3流路F3に切り替える切替部51とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を含む流動体を容器底部に設けた充填孔より該容器内に充填する、容器内充填物の製造装置であって、
前記流動体を吐出するポンプと、前記流動体を流通させるチューブと、前記チューブの内部に流通する前記流動体の圧力を検出する圧力検出手段と、前記チューブに取り付けられ、前記流動体の流路を変える三方バルブと、前記製造装置の全体を制御する制御手段とを備え、
前記チューブは、前記流動体の流路であって、以下の第1流路、第2流路、及び第3流路をなしており、
第1流路:前記ポンプの吐出口と前記三方バルブとを接続する流路
第2流路:前記三方バルブと前記充填孔とを接続する流路
第3流路:前記三方バルブと前記ポンプの流動体投入口とを接続する流路
前記圧力検出手段は、第2流路内に設けられており、
前記制御手段は、
前記ポンプによる前記流動体の吐出を制御して、第1流路及び第2流路を介して該流動体を前記容器内に充填する充填部と、
前記圧力検出手段にて検出された第2流路内の圧力が所定の値に達すると同時に前記流動体の流路を、前記三方バルブによって第2流路から第3流路に切り替える切替部とを備えている、容器内充填物の製造装置。
【請求項2】
前記制御手段が、さらに、前記圧力検出手段により検出された第2流路内の圧力が所定の値に漸近するように、前記ポンプの回転数を比例制御、微分制御及び積分制御から選択される1種又は2種以上の組み合わせの制御によって調整する調整指示部を備える、請求項1に記載の容器内充填物の製造装置。
【請求項3】
化粧料成分及び液体を含む流動体を容器底部に設けた充填孔より該容器内に充填する充填装置を用いた、固形化粧料の製造方法であって、
前記充填装置が、前記流動体を吐出するポンプと、前記流動体を流通させるチューブと、前記チューブの内部に流通する前記流動体の圧力を検出する圧力検出手段と、前記チューブに取り付けられ、前記流動体の流路を変える三方バルブとを備え、
前記チューブは、前記流動体の流路であって、以下の第1流路、第2流路、及び第3流路をなしており、
第1流路:前記ポンプの吐出口と前記三方バルブとを接続する流路
第2流路:前記三方バルブと前記充填孔とを接続する流路
第3流路:前記三方バルブと前記ポンプの流動体投入口とを接続する流路
前記圧力検出手段は、第2流路内に設けられており、
前記圧力検出手段によって検出された第2流路内の圧力が所定の値に達すると同時に前記流動体の流路を前記三方バルブによって第2流路から第3流路に切り替える、固形化粧料の製造方法。
【請求項4】
前記圧力検出手段により検出された第2流路内の圧力が所定の値に漸近するように、前記ポンプの回転数を比例制御、微分制御及び積分制御から選択される1種又は2種以上の組み合わせの制御によって調整する、請求項3に記載の固形化粧料の製造方法。
【請求項5】
前記流動体が揮発性溶媒を含有し、該流動体を前記充填孔より前記容器内に充填した後、該流動体から前記揮発性溶媒を吸引除去する、請求項3又は4に記載の固形化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内充填物の製造装置及び固形化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アイシャドウやファンデーション等といった固形化粧料は、皿状の容器に化粧料を含む流動体(スラリー)を充填して製造される。その一般的な製造方法として、例えば、充填対象物となる粉体及び油剤に水やアルコールなどの揮発性液媒を混合してスラリー状としたものを容器に充填し、その後、液媒を除去する湿式法がある。斯かる湿式法の製造方法としては、充填容器の上部が開口した上部開口部から充填対象物を充填する充填方法(いわゆるフロント充填)と、容器底面に形成された充填孔からスラリーを充填するとともに、容器上面の開口部を溶媒除去できる治具で塞いで、流動体における溶媒を吸引除去することで充填対象物を固化させる方法(いわゆるバック充填)がある。特許文献1には、後者のバック充填方法による製造方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、前記バック充填を行う装置として、化粧料を吐出するポンプと、該ポンプに接続され化粧料を流通させるチューブと、該チューブの内の化粧料の圧力を検出する圧力検出手段とを備えた、固形化粧料の製造装置が開示されている。斯かる製造装置は、圧力検出手段にて検出された化粧料の圧力が所定の閾値を超えた場合に、化粧料の充填満了を検知する検知部によって、化粧料の充填満了を検知した場合に、ポンプによる化粧料の充填を停止するように制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56-128107号公報
【特許文献2】特開2013-153788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記流動体の容器への充填量がばらつくと、製品の外観や硬度等の品質がばらつくので、容器内充填物の製造装置には、流動体の安定した充填が求められている。特許文献2に記載の製造装置は、容器に接続されたチューブ内の圧力に基づき、ポンプを停止して、容器内における流動体の充填量を制御するものである。しかしながら、ポンプを停止させる操作をしても、ポンプが完全に停止するまでにはタイムラグがあるため、チューブ内の圧力が上昇し続けることがあり、圧力が前記閾値を超えてオーバーシュートすることがある。このオーバーシュートは容器内充填物の品質に影響を及ぼすことがあるので、品質のばらつきが生じる虞がある。また、オーバーシュートの程度は、ポンプの流量等の運転条件や流動体の組成によって変化する傾向にある。これにより運転条件や流動体の組成ごとに充填を安定化させるための条件を試行錯誤する手間が発生する。特許文献1及び2に記載の技術は、充填時における圧力の安定性が不十分であり、容器内充填物の品質の安定性も不十分である。
【0006】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る容器内充填物の製造装置及び固形化粧料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液体を含む流動体を容器底部に設けた充填孔より該容器内に充填する、容器内充填物の製造装置に関する。
前記流動体を吐出するポンプと、前記流動体を流通させるチューブと、前記チューブの内部に流通する前記流動体の圧力を検出する圧力検出手段と、前記チューブに取り付けられ、前記流動体の流路を変える三方バルブと、前記製造装置の全体を制御する制御手段とを備えている。
前記チューブは、前記流動体の流路であって、以下の第1流路、第2流路、及び第3流路をなしている。
第1流路:前記ポンプの吐出口と前記三方バルブとを接続する流路
第2流路:前記三方バルブと前記充填孔とを接続する流路
第3流路:前記三方バルブと前記ポンプの流動体投入口とを接続する流路
前記圧力検出手段は、第2流路内に設けられている。
前記制御手段は、前記ポンプによる前記流動体の吐出を制御して、第1流路及び第2流路を介して該流動体を前記容器内に充填する充填部と、前記圧力検出手段にて検出された第2流路内の圧力が所定の値に達すると同時に前記流動体の流路を、前記三方バルブによって第2流路から第3流路に切り替える切替部とを備えている。
【0008】
また、本発明は、化粧料成分及び液体を含む流動体を容器底部に設けた充填孔より該容器内に充填する充填装置を用いた、固形化粧料の製造方法に関する。
前記充填装置が、前記流動体を吐出するポンプと、前記流動体を流通させるチューブと、前記チューブの内部に流通する前記流動体の圧力を検出する圧力検出手段と、前記チューブに取り付けられ、前記流動体の流路を変える三方バルブとを備えている。
前記チューブは、前記流動体の流路であって、以下の第1流路、第2流路、及び第3流路をなしている。
第1流路:前記ポンプの吐出口と前記三方バルブとを接続する流路
第2流路:前記三方バルブと前記充填孔とを接続する流路
第3流路:前記三方バルブと前記ポンプの流動体投入口とを接続する流路
前記圧力検出手段は、第2流路内に設けられている。
前記圧力検出手段によって検出された第2流路内の圧力が所定の値に達すると同時に前記流動体の流路を前記三方バルブによって第2流路から第3流路に切り替える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の容器内充填物の製造装置によれば、運転条件や流動体の組成が変更されても、容器に流動体を安定して充填でき、容器内充填物の品質を安定化できる。
本発明の固形化粧料の製造方法によれば、運転条件や流動体の組成が変更されても、容器に流動体を安定して充填でき、固形化粧料の品質を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の容器内充填物の製造装置の一実施形態を示す概略図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す三方バルブの切り替えによって制御される第2流路内の圧力変化を示すグラフである。
【
図4】
図4は、
図1に示す三方バルブの切り替え及び
図2に示す調整指示部によって制御される第2流路内の圧力変化を示すグラフである。
【
図5】
図5は、
図1に示す製造装置を用いた固形化粧料の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図2に示す調整指示部が実行する調整工程の一例を示す、フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る容器内充填物の製造装置は、液体を含む流動体を容器内に充填して、容器内充填物を製造する充填装置である。容器内充填物は、容器の収容空間に充填物が充填された物品である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明に係る容器内充填物の製造装置の一実施形態が示されている。
図1に示す容器内充填物の製造装置1(以下、単に「装置1」という)は、流動体10を容器23内に充填して固形化粧料を製造する装置である。
本実施形態で製造する固形化粧料は、アイシャドウやファンデーション等の粉末の固形化粧料である。本実施形態における流動体10は、化粧料成分と、該化粧料成分を分散する液体の分散媒とを含んで構成されており、スラリー状となっている。本実施形態の分散媒は、揮発性溶媒である。流動体10の組成等の詳細については後述する。
【0012】
本実施形態の容器23は、一方の面が開口した凹部を有する皿状の容器である。斯かる容器23の凹部の底部には該底部を貫通する充填孔が形成されている。充填孔の内径は、特に制限されない。充填をより容易にする観点から、充填孔の内径は、直径で表して、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上であり、また好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.5mm以下、さらに好ましくは4.0mm以下である。
容器23の内容積(すなわち凹部の容積)は、目的とする容器内充填物の容量に応じて適宜変更可能であるが、好ましくは0.5cm3以上であり、好ましくは20cm3以下である。
容器23が有する凹部の深さは、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上であり、また好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
容器23の材質は、特に制限されず、例えば金属やプラスチック等を用いることができる。
【0013】
本実施形態の装置1は、流動体10を吐出するポンプ15と、流動体10を流通させるチューブ11,12,13と、装置1の全体を制御する制御手段5とを備えている。装置1におけるチューブ11,12,13は、流動体10の流路を形成している。装置1は、流動体10の流路を変える三方バルブ3と、該流路内に設けられ、チューブの内部に流通する流動体10の圧力を検出する圧力検出手段4とを備えている。
図1は、装置1の要部のみを示すものであり、該装置1のすべての構成を示すものではない。
【0014】
本実施形態におけるポンプ15は、ポンプ本体16と流動体10を貯蔵するホッパー15aとが一体化したホッパー一体型ポンプである。ポンプ本体16は、流動体10を貯蔵する収容空間を内部に有するホッパー15aの下方に位置しており、該ポンプ本体16の内部が該収容空間と連通している。本実施形態ではホッパー15aの排出口にポンプ本体16が設けられている。ポンプ15は、ポンプ本体16によってホッパー15a内の流動体10を、チューブ11,12を介して後述する充填機構20等に送液する。本実施形態のポンプ15では、ホッパー15aの上方に設けられたモーター15cと、ポンプ本体16とが連結棒で連結されており、該モーター15cの駆動によりポンプ本体16が稼働する。ポンプ本体16には、モーノポンプ(一軸偏心ねじポンプ)、ピストンポンプ、チューブポンプ、ギヤポンプ、ダイヤフラムポンプ等の任意のポンプを用いることができる。
ポンプ15は、後述する第3流路F3から送液された流動体10をホッパー15a内に貯蔵する。ホッパー15aは、第3流路F3と接続された流動体投入口15bを有している。また、装置1は、ホッパー15aに流動体10を連続的又は断続的に供給する流動体供給部を備えている(図示せず)。
【0015】
本実施形態の装置1は、容器23底部に設けた充填孔(図示せず)より該容器23内に流動体10を充填する充填機構20を備えている。本実施形態の充填機構20は、容器23の充填孔に挿入又は当接されるノズル21を備えており、ポンプ15から送液された流動体10をチューブ11,12及びノズル21を介して容器23内に充填する。ノズル21の開口部には、該開口部を開閉する弁(図示せず)が設けられていてもよく、その場合、ノズル21が充填孔に挿入されている間は、該弁は開放状態に維持される。
【0016】
本実施形態の充填機構20は、容器23の凹部の開口側に配される介在シート27と、容器23内の流動体10を押圧しつつ、該流動体10に含まれる液体(揮発性溶媒)を吸引する充填治具25とを備えている。斯かる充填機構20では、容器23の凹部の開口を被覆するように介在シート27が配され、さらに介在シート27の上に充填治具25が配される。
充填治具25は、下面に、別体の真空ポンプに接続された吸引孔(図示せず)を1個又は2個以上、好ましくは5個以上、より好ましくは10個以上備えている。充填治具25は、介在シート27を介して容器23内の流動体10を該治具25の下面で押圧(圧縮)しながら、該流動体10に含まれる液体(揮発性溶媒)を吸引除去できるように構成されている。充填治具25の前記押圧時、介在シート27と該充填治具25とは接触した状態であるが、押圧していないときは、介在シート27と該充填治具25とは接触していない。
充填機構20は、該容器23の底部に形成された充填孔から該容器23内に流動体10を充填し、充填治具25により容器23の凹部内を吸引する。斯かる流動体10の充填後、更に充填機構20は、介在シート27を介し、容器23の凹部内に充填された流動体10を充填治具25で押圧(プレス)しつつ、該充填治具25によって該流動体10に含まれる液体(揮発性溶媒)を吸引する。これにより、容器23内の流動体10が固化して、容器内充填物である固形化粧料が得られる。
充填機構20は、ノズル21の位置及び充填治具25の位置をそれぞれ独立して上下に変位させる昇降機構(図示せず)をさらに有していることも好ましい。これにより、ノズル21及び充填治具25と容器23との間隔や、各部材の当接の度合いを調整できるようになされている。
【0017】
装置1は、流動体10の流路を複数有し、該流路の切り替えを行う三方バルブ3を備えている。三方バルブ3は、後述する第1流路F1から分岐する第2流路F2及び第3流路F3の切り替えを行う。三方バルブ3が具備する切替え弁は、例えば、グローブバルブ、ニードルバルブ、ベローズバルブ、ボールバルブ、アングルバルブ、バタフライバルブ、ゲートバルブ、又はダイヤフラムバルブ等の公知の開閉弁とすることができる。三方バルブ3における流路の切り替えは、制御手段5により制御される。
【0018】
三方バルブ3の好ましい形態としては、例えば、90°に屈曲したL字型の通路部が内部に設けられた円柱状のバルブ本体部30を具備するものが挙げられる(
図1参照)。斯かる三方バルブ3は、バルブ本体部30をその中心軸周りに回転させることで、該バルブ本体部30内の通路部により、第1流路F1及び第2流路F2間が接続されるか、又は第1流路F1及び第3流路F3間が接続される。すなわち、バルブ本体部30を回転させることで、第2流路F2又は第3流路F3への切替えが可能になされている。このバルブ本体部30は、その中心軸上に設けられた電動アクチュエータ31によって回転が制御される。
【0019】
装置1は、流動体10の流路として、以下の第1流路F1、第2流路F2、及び第3流路F3を有している(
図1参照)。これら流路は、前述したようにチューブ11,12,13により形成される。
第1流路F1:ポンプ15の吐出口と三方バルブ3とを接続する流路
第2流路F2:三方バルブ3と容器23の充填孔とを接続する流路
第3流路F3:三方バルブ3とポンプ15の流動体投入口とを接続する流路
容器23に流動体10を充填する場合、三方バルブ3において第1流路F1と第2流路F2とが連通されて、ポンプ15から第1流路F1、三方バルブ3及び第2流路F2を介して、流動体10が該容器23に送液される。後述する第2流路F2内の圧力が所定の値に達した場合、三方バルブ3において第1流路F1と第3流路F3とが連通されて、ポンプ15から第1流路F1、三方バルブ3及び第3流路F3を介して流動体10が該ポンプ15に送液される。すなわち、ポンプ15から吐出された流動体10が再びポンプ15に戻る循環経路となる。
【0020】
本実施形態の装置1は、さらにチューブ14により形成された減圧路F4を有している。
減圧路F4:第2流路F2から分岐し、該第2流路F2と排出口とを接続する流路
減圧路F4は、三又ジョイント17を介して第2流路F2から分岐しており、該第2流路F2内を減圧するための流動体10の排出路であり、余分な流動体10を外部に排出する。
本実施形態の装置1は、減圧路F4の途中に二方バルブ18を備えている。装置1では、二方バルブ18における弁を開くことにより、第2流路F2内の圧力を開放する。この際、余分な流動体10が減圧路F4に送液されて外部へ排出されることがあるが、第2流路F2内は依然として流動体10で満たされており、該流動体10の容器23への安定した連続充填が可能になっている。二方バルブ18は、減圧路F4の開閉を行う。減圧路F4を開放して第2流路F2内の圧力を開放することで、次の容器23への充填前に残圧によりノズル21から流動体10が漏れ出すのを防止する。この減圧時、第2流路F2は第1流路F1と連通していない状態である。
【0021】
本実施形態におけるチューブ11,12,13,14の材質は特に限定されず、任意の材質を用いることができる。チューブの材質としては、例えば、ナイロン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)等が挙げられる。
【0022】
チューブ11,12,13,14の内径は特に制限されないが、後述する第2流路F2内の圧力制御の精度をより向上させる観点から、好ましくは4mm以上、より好ましくは6mm以上、さらに好ましくは8mm以上であり、また好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm以下であり、また好ましくは4mm以上30mm以下、より好ましくは6mm以上20mm以下、さらに好ましくは8mm以上10mm以下である。
【0023】
圧力検出手段4は、第2流路F2を形成するチューブ12の内部に流通する流動体10の圧力を検出する。すなわち、圧力検出手段4は、第2流路F2内に設けられ、該第2流路F2内の圧力を測定する。圧力検出手段4には、公知の圧力計を用いることができる。圧力検出手段4で測定された第2流路F2内の圧力値は、制御手段5に送信される。
【0024】
図2には本実施形態の制御手段5の構成が示されている。本実施形態の制御手段5は、圧力情報取得部50、充填部52、切替部51、及び調整指示部55を備えている。制御手段5は、ポンプ15(ポンプ本体16)、三方バルブ3、圧力検出手段4、二方バルブ18と電気的に接続されており、これらの動作制御を行う。制御手段5における各部の制御は、CPU、ROM、RAMなどを含んで構成されており、例えばCPUがROMやディスクなどに格納されたプログラムをRAMに展開して実行することにより実現される。前記制御は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)により実現されてもよい。さらに、前記制御は、ASICとFPGAとの組み合わせにより実現されてもよい。
【0025】
圧力情報取得部50は、圧力検出手段4により測定された第2流路F2の圧力値を取得し、該圧力値のデータを時系列で記憶する。圧力情報取得部50は、装置1の運転時にこの圧力値をリアルタイムで取得する。前記圧力値を時系列で記憶したデータを、以下、単に「圧力データ」ともいう。圧力情報取得部50は、圧力データを、保存部(図示せず)に保存する。また、圧力情報取得部50は、圧力データの保存部への書き込み及び該保存部からの読み出しの制御等、圧力データに関する制御を行う。
【0026】
充填部52は、ポンプ15による流動体10の吐出を制御して、第1流路F1及び第2流路F2を介して該流動体10を容器23内に充填する。具体的には、充填部52は、ポンプ15の稼働(ON,OFF)を制御して、ノズル21から吐出される流動体10の吐出、すなわち容器23内への流動体10の充填を制御する。
【0027】
切替部51は、圧力検出手段4にて検出された第2流路F2内の圧力が所定の値に達すると同時に流動体10の流路を、三方バルブ3によって第2流路F2から第3流路F3に切り替える。換言すると、切替部51は、第2流路F2内の圧力に応じて、三方バルブ3における第1流路F1と第2流路F2との連通(充填経路)から、第1流路F1と第3流路F3との連通(循環経路)への切替えを制御する。三方バルブ3における流路の切替えは、弁の開閉によって行われる。斯かる開閉はごく短時間に行われるので、切替部51は、当該弁の開度を全開又は全閉で制御する。
【0028】
本実施形態の装置1では、第2流路F2から第3流路F3に切り替えた後、第2流路F2内が所定の圧力となるか、又は所定の時間を経過すると、切替部51が二方バルブ18における弁を開放、すなわち減圧路F4を開放する。これにより、第2流路F2内の圧力を開放し、該流路F2内を減圧する。また、第2流路F2内の圧力が大気圧に戻り、且つノズル21より流動体10が漏れ出さない状態になると、切替部51が二方バルブ18を閉じ、減圧路F4を閉鎖する。二方バルブ18における弁の開閉のタイミングは、流動体10の粘度等の液物性により異なる。そのため、連続運転を開始する前に、第2流路F2内がどの程度の圧力になった場合に、又は第1切替えT1後にどの程度時間が経過した場合に流動体10が漏れ出さなくなるかどうかを、予め目視により確認して、二方バルブ18における弁の開閉のタイミングを設定しておく。また、切替部51は、当該弁の開度を全開又は全閉で制御する。
【0029】
充填部52及び切替部51による第2流路F2内の圧力の制御を、
図3を用いて説明する。
図3には、前記圧力データが示されている。本実施形態の装置1は、流動体10の充填が容器1毎に行われるので、第2流路F2内の圧力が、
図3に示すように周期的に変動する。
図3では、圧力データとともに、ポンプの稼働(ON)のタイムチャートと、切替部51による流路の切替えT1,T2,T3のタイミングとが示されている。
【0030】
流動体10を容器23内に充填する場合は、最初にポンプ15を稼働させて(ON)、ポンプ15の吐出口から、第1流路F1及び第2流路F2を介して充填機構20に流動体10を送液する。流動体10の充填時、三方バルブ3では、第1流路F1と第2流路F2とが連通されており、ポンプ15によって送液される流動体10の流量に応じて、第2流路F2内の圧力が上昇する。
図3において、ポンプ15の回転数は一定であり、ポンプ15の稼働時間に比例して、第2流路F2内の圧力が上昇する。
第2流路F2内の圧力が所定の値A(以下、「設定圧力値A」ともいう)に達すると、切替部51が作動し、三方バルブ3によって流動体10の流路を第2流路F2から第3流路F3に切り替える。斯かる切替えを「第1切替えT1」ともいう。
【0031】
第1切替えを行うと、第2流路F2内への流動体10の流入が遮断される。流動体10の余勢で第2流路F2の圧力は設定圧力値Aを若干超えて上昇するが、第1切替えT1後においても、ノズル21は開放状態で容器23の充填孔に挿入又は当接されているので、前記充填治具25の吸引により、第2流路F2内の圧力が低下する。当該圧力は低下するものの、大気圧よりも高く保持される。そして、所定の圧力となるか(例えば
図3の圧力値C)、又は所定の時間を経過すると、切替部51が作動し、二方バルブ18を開放して、排出口と接続された減圧路F4が開放される。これにより、第2流路F2内が一気に減圧され、第2流路F2内の圧力が大気圧に戻る。斯かる減圧路F4への切替えを「第2切替えT2」ともいう。第2切替えT2時において、第2流路F2は第1流路F1と連通されていない。本実施形態では、過剰な量の流動体10(第2流路F2内を満たす流動体10)により、第1切替えT1後においても第2流路F2内が大気圧よりも高い圧力で保持されていたが、第2流路F2内の圧力を保持する必要が無い場合、第1切替えT1と第2切替えT2とを同じタイミングで実行してもよい。
【0032】
第2切替えT2によって第2流路F2内は大気圧に戻る。その後、容器23の充填孔からノズル21が離れて充填を終了する。この後、容器23内の流動体10に対し、充填治具25によるさらなる液体(揮発性溶媒)の吸引除去が行われてもよい。斯かる吸引後、充填された容器23は別の工程に搬送され、充填機構20において別の容器23が補充される。次の空の容器23が所定の位置に配置され、介在シート27、充填治具25、ノズル21の準備が完了されると、切替部51が作動し、二方バルブ18の弁を閉じて、減圧路F4を閉鎖するとともに、三方バルブ3における第1流路F1と第3流路F3との連通を閉鎖して、第1流路F1と第2流路F2とを連通させる。斯かる流路の切替えを「第3切替えT3」ともいう。第3切替えT3時に、第1流路F1よりも下流の流路が第3流路F3から第2流路F2へ切り替わり、流動体10の容器23への充填を開始する。本実施形態の装置1は、以上の動作を繰り返し、
図3に示す圧力制御で容器内充填物を製造できる。
図3に示す実施形態では、ポンプ15を連続稼働して、容器23内に流動体10を充填していたが、第1切替えT1後にポンプ15をOFFとし、第3切替えT3の前にポンプ15をONとする設定としてもよい。斯かるポンプのONとOFFの切替えは、充填部52により制御される。
【0033】
ポンプ15を停止する操作をしても、該ポンプ15の回転数は完全に0(ゼロ)となるまでには時間がかかるため、ポンプ15停止後も第2流路F2内に流動体10が流入し、第2流路F2内の圧力が設定圧力値Aよりも大幅に上昇する傾向にある。これに対し、本実施形態の装置1は、第2流路F2内の圧力が設定圧力値Aになると同時に、第1切替えT1を行うことによって、瞬時に第2流路F2内への流動体10の流入を遮断し、該流路F2内の圧力が該設定圧力値Aよりも過度に上昇することを効果的に抑制できる。この第1切替えT1を行うことによって、ポンプ15が連続稼働していても、第2流路F2内の過度の圧力上昇を抑制できる。本発明者らは、斯かる圧力の上昇幅を抑えることで、容器23内への流動体10の充填量を精度よく制御できるとともに、容器23内の充填物の硬度等、該充填物の品質を効果的に安定化できることを見出した。この効果を、品質安定効果ともいう。
また、流動体10の組成や製品の種類ごとに、容器23内への流動体10の充填速度を異ならせることが一般的に行われる。本発明者らは、斯かる充填速度を異ならせても、前記圧力の上昇幅を抑えることで、前記と同様の品質安定効果が得られることを見出した。品質安定効果は、容器内充填物が、流動体10から液体(揮発性溶媒)を吸引させて得られる固形化粧料の製造に特に有効である。具体的には、固形化粧料の充填量及び硬度のばらつきが抑えられ、安定した品質とともに優れた外観が得られる。このような効果は、後述する実施例においても示されている。
【0034】
品質安定効果をより確実に奏させる観点から、流動体10の充填時における第2流路F2内の最大圧力値Bと設定圧力値Aとの差は小さいほど好ましい。
上記と同様の観点から、第2流路F2内の最大圧力値Bは、設定圧力値Aに対して好ましくは170%以下、より好ましくは150%以下、さらに好ましくは120%以下、さらに一層好ましくは100%である。
上記と同様の観点から、第2流路F2内の最大圧力値Bと設定圧力値Aとの差は、好ましくは0.07MPa以下、より好ましくは0.05MPa以下、さらに好ましくは0.02MPa以下、さらに一層好ましくは0MPaである。
【0035】
本実施形態の制御手段5は、前述したように調整指示部55を備えている(
図2参照)。調整指示部55は、圧力検出手段4により検出された第2流路F2内の圧力が所定の値に漸近するように、ポンプ15の回転数を比例制御、微分制御及び積分制御から選択される1種又は2種以上の組み合わせの制御によって調整する。例えば、調整指示部55は、第2流路F2内の圧力の測定値と設定圧力値Aとの差に対して、比例制御、比例微分制御又は比例微分積分制御を行って、ポンプ15の回転数を制御し、第2流路F2内の圧力を制御する。すなわち、調整指示部55は、第2流路F2内の圧力の実測値に基づき、ポンプ15の回転数をフィードバック制御する。調整指示部55によりポンプ15の回転数が制御されると、第2流路F2内の圧力が、設定圧力値Aに漸近するように上昇していく(
図4参照)。斯かるポンプ15の回転数により、流動体10の容器23内への充填量も制御される。
品質安定効果をより向上させる観点から、調整指示部55は、第2流路F2内の圧力の測定値と設定圧力値Aとの差に対して、比例微分制御又は比例積分制御を行うことが好ましく、比例微分積分制御を行うことがより好ましい。
【0036】
充填部52及び切替部51に加え調整指示部55による第2流路F2内の圧力の制御を、
図4を用いて説明する。
図4には、圧力データとともに、ポンプの稼働(ON)のタイムチャートと、切替部51による流路の切替えT1,T2,T3のタイミングとが示されている。
図4に示す流路の各切替えT1,T2,T3について、
図3と同じ切替えを行っているものには同じ符号を付して、その詳しい説明を省略する。本実施形態の装置1は、流動体10の充填が容器23毎に行われるので、
図4に示す圧力データにおいても、第2流路F2内の圧力が周期的に変動する。
【0037】
図4に示す圧力データにおいて、流動体10を容器23内に充填する場合は、
図3と同様に、最初にポンプ15を稼働させて(ON)、ポンプ15の吐出口から、第1流路F1及び第2流路F2を介して充填機構20に流動体10を送液する。
図4において、ポンプ15の回転数は調整指示部55によって制御されているので、ポンプ15の稼働時間に連れて、設定圧力値Aに漸近するように第2流路F2内の圧力が上昇する。すなわち、調整指示部55は、ポンプ15の稼働時間に連れてポンプ15の回転数を漸減させる。
第2流路F2内の圧力が設定圧力値Aに達すると、切替部51が作動し、第1切替えT1が行われる(
図4参照)。
【0038】
調整指示部55により、ポンプ15の回転数は漸減するので、第2流路F2内の圧力は設定圧力値Aかその近似値となる。この状態で第1切替えT1が行われるので、第2流路F2内の圧力が設定圧力値Aを超えて上昇することが効果的に抑制されて、第2流路F2内の圧力を、設定圧力値Aに高精度に制御することができる。これにより、容器入り充填物(本実施形態においては固形化粧料)の充填をより安定化でき、品質安定効果をより向上できる。
【0039】
図4では、第1切替えT1を行うと、第2流路F2内への流動体10の流入が遮断される。第2流路F2の圧力は設定圧力値Aを超えて上昇することなく、該圧力は低下に転じる。第1切替えT1後においても、ノズル21は開放状態で容器23の充填孔に挿入又は当接されているので、前記充填治具25の吸引により、第2流路F2内の圧力が低下する。当該圧力は低下するものの、大気圧よりも高く保持される。そして、所定の圧力となるか(例えば
図4の圧力値C)、又は所定の時間を経過すると切替部51が作動し、二方バルブ18を開放して、排出口と接続された減圧路F4が開放される。これにより、第2流路F2内が一気に減圧され、第2流路F2内の圧力が大気圧に戻る。なお、第2流路F2内の圧力を大気圧よりも高く保持する必要が無い場合、第1切替えT1と第2切替えT2とを同じタイミングで実行してもよい。その後、容器23の充填孔からノズル21が離れて充填を終了する。この後、さらに容器23内の流動体10に対し、充填治具25によるさらなる液体(揮発性溶媒)の吸引除去が行われてもよい。斯かる吸引後、充填された容器23は別の工程に搬送され、充填機構20において別の容器23が補充される。次の空の容器23が所定の位置に配置され、介在シート27、充填治具25、ノズル21の準備が完了されると、切替部51が作動し、第3切替えT3が行われるとともに、第1流路F1よりも下流の流路が第3流路F3から第2流路F2へ切り替わり、流動体10の容器23への充填を開始する。本実施形態の装置1は、以上の動作を繰り返し、
図4に示す圧力制御で容器内充填物を製造できる。
図4に示す実施形態では、ポンプ15を連続稼働して、容器23内に流動体10を充填していたが、第1切替えT1後にポンプ15をOFFとし、第3切替えT3の前にポンプ15をONとする設定としてもよい。斯かるポンプのONとOFFの切替えは、充填部52により制御される。
【0040】
次に、本実施形態の装置1を用いた固形化粧料の製造方法について説明する。本実施形態の装置1は、第2流路F2内の圧力を圧力情報取得部50が取得し、切替部51が第1切替えT1を行う切替え制御により制御する製造方法iと、該圧力を圧力情報取得部50が取得し、切替部51が行う該切替え制御に加え調整指示部55が行うフィードバック制御により第2流路F2内の圧力を制御する製造方法iiとを実行可能である。
これら製造方法i及び製造方法iiにおいて、圧力情報取得部50は、リアルタイムで第2流路F2内の圧力測定値を取得し、その圧力データを保存する。説明の便宜上、
図5及び
図6に示すフローチャートの説明では、圧力情報取得部50の動作を省略する。
【0041】
前記製造方法iについて、
図5に示すフローチャートを用いて説明する。
先ず、ステップS1では、制御手段5における充填部52がポンプ15を稼働させる。ステップS1におけるポンプ15の稼働は、最初の容器23が所定の位置にセット(配置)されると、光電センサーが該容器23を検知し、その信号を充填部52が受信することで実行される。次のステップS2では、圧力情報取得部50が取得した第2流路F2内の圧力が設定圧力値A以上であるか否かを判定する。ステップS2において、第2流路F2内の圧力が設定圧力値A以上ではないと判定された場合、ステップS2の判定を繰り返す。第2流路F2内の圧力が設定圧力値A未満である間は、ステップS2の判定は、1秒間に151~200回実行される。ステップS2において第2流路F2内の圧力が設定圧力値A以上と判定された場合、ステップS3に進む。
【0042】
ステップS3では、切替部51が、第1切替えT1を行い、流動体10の流路を第2流路F2から第3流路F3へ切り替える。
【0043】
ステップS3の第1切替えT1が行われると、第2流路F2内の圧力は一旦上昇し、その後充填治具25による液体(揮発性溶媒)の吸引により下降する(
図3参照)。ステップS3に続くステップS4では、第2切替えを実行するか否かを判定する、第2切替え判定を行う。第2切替え判定の判定基準は、第2流路F2内の圧力変化や、第1切替え後の時間管理等、任意の判定基準とすることができる。例えば、第2切替え判定として、第2流路F2内の圧力が圧力値C以下であるか否か、第2流路F2内の圧力が減少に転じたか否か、又は第1切替えT1後、所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS4において、第2切替え判定の判定基準を満たしていないと判定された場合、ステップS4の判定を繰り返す。第2切替え判定で判定基準を満たしていない間、ステップS4の判定は、1秒間に151~200回実行される。ステップS4において第2切替え判定の判定基準を満たしたと判定された場合、ステップS5に進む。
例えば、第2切替え判定の判定基準が、第1切替えT1後の時間経過である場合、ステップS4では、第1切替えT1後、所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していない場合は、ステップS4の判定を繰り返し、所定時間が経過した場合は、ステップS5に進む。
また、第2切替え判定の判定基準が、第2流路F2内の圧力値である場合、ステップS4では、第1切替えT1後、第2流路F2内の圧力が圧力値C以下(
図3参照)であるか否かを判定する。圧力値C以下ではない場合は、ステップS4の判定を繰り返し、所定の圧力値C以下となった場合は、ステップS5に進む。
第2切替えの判定基準となる前記時間経過や第2流路F2内の圧力(圧力値C)は、前述したノズル21から流動体10が漏れ出さないか否かの指標となるものであり、事前に設定される。
【0044】
ステップS5では、切替部51が、第2切替えT2を行い、減圧路F4を開放する。これにより、第2流路F2内が一気に減圧される(
図3参照)。
次にステップS6では、次の空の容器23が所定の位置に配置されたか否かを判定する。斯かる判定は、ステップS1と同じ光電センサーを用いて行われる。ステップS6において、空の容器23が所定の位置に配置されたと判定された場合、ステップS7に進む。ステップS7では、充填部52が介在シート27、充填治具25、及びノズル21の充填準備が完了するまで、ポーズ処理を行う。充填準備が完了すると、充填機構20から信号が発信され、切替部51がこれを受信し、ステップS8に進む。充填機構20は、所定の制御プログラムにより充填に係る動作が制御されている。
ステップS8では、切替部51が第3切替えT3を行う。このステップS8の後、ステップS2に戻り、該ステップS2以降の動作を繰り返す。
ステップS6の判定において、次の空の容器23が所定の位置に配置されていないと判定された場合、充填部52がポンプ15を停止させ、本製造方法iを終了する。すなわち、製造装置1による固形化粧料の製造が停止される。
本実施形態においてステップS7は、充填準備が完了するまでステップS8に進まないポーズ処理を行うものであったが、これに代えて所定時間が経過するまでポーズ処理を行うものであってもよい。
【0045】
前記製造方法iiについて、
図6に示すフローチャートを用いて説明する。
先ず、ステップS11では、制御手段5における充填部52がポンプ15を稼働させる。ステップS11は上述したステップS1と同じ動作である。次のステップS12では、圧力情報取得部50が取得した第2流路F2内の圧力が設定圧力値Aに達したか否かを判定する。ステップS12において、第2流路F2内の圧力が設定圧力値Aに達していないと判定された場合、ステップS13に進む。ステップS13では、調整指示部55が、前述のように第2流路F2内の圧力の測定値と設定圧力値Aとの差に基づき、比例制御、比例微分制御、比例積分制御又は比例微分積分制御を行って、ポンプ15の回転数を調整し、フィードバック制御する。このステップS13の後、ステップS12に戻って、該ステップS12の判定を実行する。第2流路F2内の圧力が設定圧力値A未満である間は、ステップS12及びステップS13を繰り返す。第2流路F2内の圧力が設定圧力値Aに達するまで、ステップS12及びステップS13は、1秒間に151~200回実行される。これにより、第2流路F2内の圧力が、設定圧力値Aに漸近するように上昇する(
図4参照)。ステップS12において第2流路F2内の圧力が設定圧力値Aに達したと判定された場合、ステップS14に進む。
【0046】
ステップS14では、上述したステップS3と同様に、切替部51が、第1切替えT1を行い、流動体10の流路を第2流路F2から第3流路F3へ切り替える。ステップS14の第1切替えT1が行われると、充填治具25による液体(揮発性溶媒)の吸引により、第2流路F2内の圧力は下降する(
図4参照)。続くステップS15では、上述したステップS4と同様に、第2切替え判定を行う。この第2切替え判定において、前述した判定基準を満たしている場合、ステップS16に進む。判定基準を満たしていない場合、ステップS15の判定を、ステップS4と同様に繰り返す。
ステップS16では、上述したステップS5と同様に、第2切替えT2を行い、減圧路F4を開放する。これにより、第2流路F2内が一気に減圧される(
図4参照)。
【0047】
次にステップS17では、上述したステップS6と同様に、次の空の容器23が所定の位置に配置されたか否かを判定する。ステップS17において、空の容器23が所定の位置に配置されたと判定された場合、ステップS18に進む。ステップS18では、上述したステップS7と同様に、充填部52が介在シート27、充填治具25、及びノズル21の充填準備が完了するまで、ポーズ処理を行う。充填準備が完了すると、ステップS19に進む。ステップS19では、上述したステップS8と同様に、切替部51が第3切替えT3を行う。このステップS19の後、ステップS12に戻り、該ステップS12以降の動作を繰り返す。
ステップS17の判定において、次の容器23がないと判定された場合、充填部52がポンプ15を停止させ、本製造方法iiを終了する。すなわち、製造装置1による固形化粧料の製造が停止される。
本実施形態においてステップS18は、充填準備が完了するまでステップS19に進まないポーズ処理を行うものであったが、これに代えて所定時間が経過するまでポーズ処理を行うものであってもよい。
【0048】
本発明に係る流動体10について詳述する。流動体10は、液体そのものであるか、液体を含むものであることが好ましい。すなわち、当該流動体は、固体のみの形態又は気体のみの形態は除外される。
このような流動体としては、例えば、充填対象物と、液体である分散媒とを含む混合物である分散液や、充填対象物を液体の溶媒に溶解させた溶液、あるいは、充填対象物の単体又は充填対象物を含む組成物を加熱溶融させた溶融液などが挙げられる。分散液としては、固体の粉体である充填対象物が液体の分散媒に分散されてなるスラリーや、充填対象物と分散媒とを乳化させた乳化液等が挙げられる。流動体の構成材料の詳細は後述する。
【0049】
品質安定効果をより向上させる観点から、流動体10の粘度は、好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは500mPa・s以上、さらに好ましくは1000mPa・s以上である。
容器への充填をより容易にする観点から、流動体10の粘度は、好ましくは30000mPa・s以下、より好ましくは20000mPa・s以下、さらに好ましくは10000mPa・s以下である。
品質安定効果をより向上させるとともに、容器への充填をより容易にする観点から、流動体10の粘度は、好ましくは100mPa・s以上30000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以上20000mPa・s以下、さらに好ましくは1000mPa・s以上10000mPa・s以下である。
流動体10が例えば流動体がスラリーである場合には、流動体10の粘度は、25℃において、東機産業社製のB型粘度計(TVB-10形粘度計)を用いて測定された値とする。この場合の測定条件は、ロータNo.H3、回転数は20rpmとする。流動体10が加熱溶融液である場合、流動体10の温度を充填時と同じ温度にした上で、前述の測定条件により粘度を測定することとする。
【0050】
流動体10は、充填対象物として、粉体等の固体、及び油剤のうち一種又は二種以上を含むことが好ましい。充填対象物が化粧料である場合には、化粧料として、粉体及び油剤等の化粧料成分を含むメイクアップ化粧料、UV化粧料等が挙げられるが、これらに限られない。
【0051】
容器内充填物として化粧料を製造する場合には、流動体は、例えば、着色顔料及び体質顔料などの通常の化粧料に用いられる粉体を含むことが好ましい。
着色顔料及び体質顔料としては、例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、クレー、ベントナイト、雲母、チタン被膜雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミン、カーボンブラック、チッ化ホウ素これらの複合体等の無機粉体;ポリアミド、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、セルロース、長鎖アルキルリン酸金属塩、N-モノ長鎖アルキルアシル塩基性アミノ酸、これらの複合体等の有機粉体;及び前記無機粉体と前記有機粉体との複合粉体などが挙げられる。
これらの体質顔料や着色顔料は、着色しているか又は非着色(例えば、白色又は本質的に透明)であり、組成物又は皮膚に対して、着色、光の回折、油分吸収、半透明性、不透明性、光沢、光沢のない外観、すべすべ感などのうちの一つ以上の効果を提供し得る。
【0052】
流動体中における粉体の含有量は、その目的に応じて異なるが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。このような範囲であることで、固形化粧料を製造した場合に、化粧料としての良好な発色性を高めることができる。
同様の観点から、流動体中における粉体の平均粒径は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。平均粒径は、例えばレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で測定される累積体積50容量%における体積累積粒D50とすることができる。
【0053】
流動体中に含まれ得る油剤は、1気圧、20℃で液体の油(以下、これを液体油ともいう。)、及び1気圧、20℃で固体の油(以下、これを固体油ともいう。)のうち一種又は二種以上が挙げられる。
【0054】
液体油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;ホホバ油、オリーブ油等の植物油、液状ラノリン等の動物油、モノアルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油;ポリエチレングリコール等の高分子アルコール;などが挙げられる。
固体油としては、例えば、ワセリン、セタノール、ステアリルアルコール、セラミド、等が挙げられる。
【0055】
流動体中における油剤の含有量は、その目的に応じて異なるが、総量として、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは4質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。このような範囲であることで、固形化粧料を製造した場合に、化粧料としての良好な発色性や感触を高めることができる。
【0056】
流動体は、目的とする容器内充填物の種類や液粘度等の物性に応じて、増粘剤、皮膜剤、界面活性剤、糖、多価アルコール、水溶性高分子、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、皮膚コンディショニング剤、ビタミン、酸化防止剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤等の一種又は二種以上の成分(化粧料成分)を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。
紫外線吸収剤としては、例えばジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸塩、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸塩等のベンゾフェノン誘導体、メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル等のメトキシ桂皮酸誘導体、から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
紫外線散乱剤としては、例えば平均粒径が0.1μm以下の微粒子からなる酸化亜鉛、酸化チタン及びシリカ等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0057】
流動体は、液媒をさらに含むことも好ましい。液媒は、充填対象物を溶解又は分散させる溶媒又は分散媒として使用することができる液体である。流動体をスラリーの形態とする場合、該流動体は、粉体及び液媒を少なくとも含むことが好ましい。化粧料成分を含むスラリーの形態とする場合には、流動体は、上述した顔料を含む粉体、油剤及び液媒を少なくとも含むことが好ましい。
【0058】
上述した液媒としては、例えば、水、アルコール及びケトン等の、液体の状態において揮発性を有する物質(揮発性溶媒)の一種又は二種以上が好ましく挙げられる。
アルコールとしては、例えば一価の炭素数1~6の鎖式脂肪族アルコールや、一価の炭素数3~6の環式脂肪族アルコールや、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、プロパノール、ペンタノールなどが挙げられる。
ケトンとしては例えば炭素数3~6の鎖式脂肪族ケトンや、炭素数3~6の環式脂肪族ケトンや、炭素数8~10の芳香族ケトンが好適に用いられる。それらの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどが挙げられる。
充填治具25による吸引除去の効率を高める観点から、液媒として、水、エタノールを用いることがさらに好ましい。
【0059】
流動体10に液媒を含む場合、流動体中における液媒の含有量は、その目的に応じて異なるが、総量として、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。このような範囲であることで、流動体の構成材料の均一分散性を高めつつ、取り扱い性を高めることができる。
【0060】
本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。また、上述した実施形態を組み合わせてもよい。
例えば、上述した実施形態の制御手段5は、調整指示部55を備えていたが、本発明に係る制御手段5は、調整指示部55を備えていなくてもよい。
また、上述した実施形態の充填機構20は、ノズル21を1個備えるものであったが、これに代えてノズル21を2個以上の複数備えるものであってもよい。すなわち、装置1は、底部に複数の充填孔が形成された容器23に、複数のノズル21を介して流動体10を充填するものであってもよい。この場合、充填される流動体10は、ノズル21ごとに異ならせてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、流動体10を容器23に充填する際、容器23内の流動体10を充填治具25で吸引していたが、斯かる吸引を行わずに充填してもよい。容器内充填物が固形物を含有する固形化粧料であり、流動体10が液体(分散媒)として揮発性溶媒を含有する場合には、流動体10を容器23に充填した後、充填治具25で流動体10から液体(揮発性溶媒)を吸引除去することが好ましい。また、流動体10が固形物を含有しないものである場合、該流動体10の充填時、容器23内の流動体10を充填治具25で押圧しなくてもよい。すなわち、装置1は、充填治具25を備えていないものであってもよい。
さらに、上述した実施形態の容器内充填物は、流動体10の充填後の後工程(吸引)で固化したものであったが、該充填物は、流動体のままであってもよい。あるいは充填後の工程によって流動性が変化してもよい。
【0062】
また、上述した実施形態における容器内充填物は、固形化粧料であったがこれに限定されない。例えば、洗剤などの液体洗剤、ゼリーやプリン、ヨーグルト、グミ、アイスクリーム、マヨネーズ、ドレッシング、ジャム、蜂蜜等の容器に充填された食品、軟膏、等の容器に充填された皮膚外用剤等が挙げられる。
【実施例0063】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0064】
〔流動体の調製〕
以下の方法により、流動体10を調製した。まず、油剤13.3質量%及び界面活性剤1.6質量%を量り取り、60℃に加熱して均一な油相とした。次に、60℃に加熱した水33.3質量%に防腐剤0.2質量%を添加して水相とし、前記油相に投入し、ホモミキサーにて6,000rpmで5分間混合した。その後、ヘラで撹拌しながら水冷し乳化物を得た。得られた乳化物に、顔料を含む粉体51.6質量%を投入し、自転公転ミキサーにて、150秒間混錬することにより流動体10を調製した。得られた流動体10の粘度は、25℃において、4540mPa・sであった。
【0065】
〔実施例1〕
得られた流動体10を
図1に示す装置1を用いて容器に充填した。容器23は、該容器23の凹部が22.8mm×26.5mmの開口と、3.5mmの深さを有し、且つ底部に直径3.0mmの充填孔を1つ有するものを用いた。容器が有する凹部の開口部側に介在シート27を配し、その上に充填治具25を配した。次いで、装置1のノズル21を容器23の充填孔に挿入し、該充填孔から流動体を充填すると同時に、間に介在シート27を挟んだ状態で、充填治具25で押圧しながら該流動体10の揮発性溶媒を吸引した。これにより流動体10を固化させて、固形化粧料であるアイシャドウを得た。また、圧力検出手段4により第2流路F2内の圧力を測定し、該圧力が設定圧力値である0.1MPaに達すると同時に、三方バルブ3で第1切替えT1を行い、流動体10の流路を第2流路F2から第3流路F3に切り替えた。斯かる流動体10の充填では、
図3に示すように、ポンプ15を最初に稼働(ON)させ、そのまま稼働状態とした。以上の操作により固形化粧料を製造した。
【0066】
〔実施例2~10〕
実施例2~10では、容器23内への充填時に、調整指示部55によってポンプの回転数をフィードバック制御した。斯かる制御は、第2流路F2内の圧力の測定値と表1に示した設定圧力値Aとの差に対し、比例微分積分制御を行うものであった。
また、実施例3~10では、フィードバック制御以外に、表1に示した設定圧力値A及び流動体10の充填流量の一方又は双方を実施例1と異ならせた。
上記の点以外は、実施例1と同様の方法により固形化粧料(アイシャドウ)を製造した。
【0067】
〔比較例1~4〕
比較例1~4では、第1切替えT1を行わず、代わりに第2流路F2内の圧力が表1に示した設定圧力値Aに達すると同時に、ポンプ15の稼働の停止(OFF)を行った。
また、比較例2~4では、表1に示した設定圧力値A及び流動体10の充填流量の一方又は双方を実施例1と異ならせた。
上記の点以外は、実施例1と同様の方法により固形化粧料(アイシャドウ)を製造した。
【0068】
各実施例及び各比較例の設定圧力値A、第2流路F2内の最大圧力値B、及びこれら圧力値の差(B-A)、並びに流動体10の充填流量等の製造条件を下記表1に示す。流動体10の充填流量(mL/分)は、ポンプ15から吐出される流動体10の1分間当たりの吐出量である。
各実施例及び各比較例で得られた固形化粧料について、その硬度及び容器23内の充填量を測定した。斯かる測定を、固形化粧料10個について行い、その平均値を求めた。該平均値を測定結果として下記表1に示す。
【0069】
〔硬度の測定方法〕
固形化粧料(容器内23の充填物)に対し、RHEO METER COMPAC-100II(サン科学)を用いて、該固形化粧料の硬度を測定した。測定は、直径φ2mmの冶具を用意し、table speedを60mm/分に設定した上で、該冶具を深さ1mmまで固形化粧料に針入させたときの最大値を測定することにより行った。
【0070】
〔充填量の測定方法〕
固形化粧料の質量を、電子天秤を用いて測定し、当該質量から容器の質量を減算して、充填量を算出した。
【0071】
【0072】
表1に示す結果から明らかなとおり、実施例1における設定圧力値Aと第2流路F2内の最大圧力値Bとの差は0.02MPaであり、比較例1及び3のポンプ15の停止による方法よりも圧力の上昇幅を大きく抑えられた。斯かる結果から、第1切替えT1によって、充填状態の変動幅を効果的に抑制できることが示された。
また、ポンプの回転数のフィードバック制御を行った実施例2~10では、設定圧力値Aと第2流路F2内の最大圧力値Bとの差がなかった。斯かる結果から、前記フィードバック制御により第2流路F2内の圧力を高精度に制御できることが示された。
さらに、実施例1~4の対比、実施例5~7の対比、及び実施例8~10の対比から、流動体10の充填流量(mL/分)を異ならせても、同じ設定圧力値Aで第2流路F2内の圧力を制御すれば、固形化粧料における充填量と硬度とをほぼ均一化できることが示された。斯かる結果より、製品ごとに運転条件や流動体の組成が変更されても、設定圧力値Aを同じに制御すれば、容器に流動体を安定して充填でき、容器内充填物の品質を安定化できると考えられる。すなわち、本発明の製造装置及び固形化粧料の製造方法によれば、運転条件や流動体の組成ごとに充填を安定化させるための試行錯誤が不要であることが示された。