(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189636
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】スタンディングパウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 30/16 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
B65D30/16 A BSE
B65D30/16 K BSG
B65D30/16 BRL
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098327
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 元春
(72)【発明者】
【氏名】八島 昇
(72)【発明者】
【氏名】宮本 健一
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AB23
3E064BA05
3E064BA25
3E064BA40
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA30
3E064FA04
3E064GA02
3E064HA06
3E064HB04
3E064HB05
3E064HN65
3E064HS04
3E064HU03
(57)【要約】
【課題】ヒートシール部が所要の接合強度を有し、外層の剥がれを防止できるとともに、内側フィルム層と外層とを容易に分離することができるスタンディングパウチを提供すること。
【解決手段】スタンディングパウチ1の容器本体10は、側壁11a,11bと襠部14とを有し、シート材どうしが熱融着されたヒートシール部16を有し、ヒートシール部16は、側部シール部s1を含んでおり、少なくとも一方の側壁11aは、内側フィルム層17と外層18とを有し、該外層18は、紙層又は該内側フィルム層17とは異なる樹脂から構成され、外層18が、ヒートシール部16の少なくとも側部シール部s1において中間層19を介して内側フィルム層17に接合され、外層18と内側フィルム層17との接合強度が、ヒートシール部16において16N/15mm未満であり、且つヒートシール部16以外の部分が、非接合領域又は弱接合領域となっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に内容物の収容空間を有する容器本体を備えたスタンディングパウチであって、
前記容器本体は、相対する一対の側壁と、少なくとも下端部において該側壁どうしを連結する襠部とを有し、一方の前記側壁を構成するシート材と他方の前記側壁又は前記襠部を構成するシート材とが熱融着されたヒートシール部を有しており、
前記ヒートシール部は、前記側壁の幅方向の両端に位置する側部シール部を含んでおり、
少なくとも一方の前記側壁は、
樹脂製の内側フィルム層と、該内側フィルム層の外面側に配された外層とを有し、該外層は、紙層又は該内側フィルム層とは異なる樹脂から構成されており、
前記外層における前記内側フィルム層側に、加熱により接合力が向上する材料からなる中間層を有し、前記外層が、前記ヒートシール部において該中間層を介して前記内側フィルム層に接合されており、
前記外層と前記内側フィルム層との接合強度が、前記ヒートシール部の少なくとも前記側部シール部において16N/15mm未満であり、且つ該ヒートシール部以外の部分が、前記外層と前記内側フィルム層との間が接合されていない非接合領域、又は前記接合強度が該ヒートシール部における接合強度より低い弱接合領域となっている、スタンディングパウチ。
【請求項2】
前記側部シール部における前記接合強度が、5N/15mm超である、請求項1に記載のスタンディングパウチ。
【請求項3】
前記ヒートシール部以外の部分における前記接合強度が、0N/15mm超である、請求項1又は2に記載のスタンディングパウチ。
【請求項4】
前記中間層は、加熱粘着剤又はイージーオープン樹脂により構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
【請求項5】
前記ヒートシール部以外の部分における前記外層にスリットが設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
【請求項6】
前記容器本体は、上端部において該側壁どうしを連結する襠部を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
【請求項7】
一対の前記側壁、及び一対の該側壁の前記上端部側に位置する前記襠部の外面の全域が、前記外層によって形成されている、請求項6に記載のスタンディングパウチ。
【請求項8】
前記側壁の層間に形成された非接合領域に充填剤が封入されて構成された支持部を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンディングパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
液体洗剤等の液状の内容物を収容するパウチが知られている。環境負荷の低減の観点から、前記パウチのリサイクル性を担保する必要性が高まっており、リサイクル性を高めたパウチの開発が進められている。一般に、前記パウチは、文字や絵柄が印刷された印刷層を有するところ、該パウチをリサイクルするときに印刷層の印刷インキが混入すると、リサイクルの質が低下するという問題があった。これに対し、印刷層を分離できるパウチが種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、袋体と、該袋体に固定されるフィルム体を備えた包装袋が記載されている。袋体は、重ね合わされた樹脂フィルムの周囲に周縁接合部が形成されて、その内側に内容物が収容されている。フィルム体は、文字や絵柄などが表示された表示領域と無表示領域とを有し、表示領域内の文字や絵柄が形成された印刷層がフィルム体の中央部にあり、その外側の領域に無表示領域が設けられている。同文献の包装袋では、無表示領域に、表示領域を切り離すことができる易カット部が設けられており、易カット部を切断することにより無表示領域と表示領域とを切り離すことができるようになっている。
【0004】
また特許文献2には、互いに向かい合って位置する2つの前面壁と、これら前面壁の間に配置された底折畳み部とを備えるバッグ本体を有するフィルムバッグが記載されている。前面壁は、結合継ぎ目により結合されている。前面壁の上に、印刷部を備える材料部片が配置されている。前面壁と材料部片とは、固定継ぎ目において固定されている。同文献のフィルムバッグでは、固定継ぎ目に沿って破断線が延びており形成されており、材料部片を引っ張ったときに、破断線において材料部片の材料分離が生じ、印刷部を有する材料部片の内側の領域全体が引き剥がされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-218077号公報
【特許文献2】特開2020-011777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2には、印刷層が形成されている部材から、該印刷層が形成されている部分を切り離すことが記載されているところ、特許文献1及び2では、印刷層を剥離することについては何ら検討されていない。パウチにおいて、印刷層を消費者が実際に手で剥離することを想定した場合、該パウチは剛性が低いので、ストレスの少ない剥離感を得るためには、剥離力を適切に設計することが求められる。特許文献1及び2においては、剥離力についても何ら検討されていない。
【0007】
本発明は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る、容器を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内部に内容物の収容空間を有する容器本体を備えたスタンディングパウチに関する。
前記容器本体は、相対する一対の側壁と、少なくとも下端部において該側壁どうしを連結する襠部とを有し、一方の前記側壁を構成するシート材と他方の前記側壁又は前記襠部を構成するシート材とが熱融着されたヒートシール部を有していることが好ましい。
前記ヒートシール部は、前記側壁の幅方向の両端に位置する側部シール部を含んでいることが好ましい。
少なくとも一方の前記側壁は、樹脂製の内側フィルム層と、該内側フィルム層の外面側に配された外層とを有し、該外層は、紙層又は該内側フィルム層とは異なる樹脂から構成されてことが好ましい。
前記外層における前記内側フィルム層側に、加熱により接合力が向上する材料からなる中間層を有し、前記外層が、前記ヒートシール部において該中間層を介して前記内側フィルム層に接合されており、
前記外層と前記内側フィルム層との接合強度が、前記ヒートシール部の少なくとも前記側部シール部において16N/15mm未満であり、且つ該ヒートシール部以外の部分が、前記外層と前記内側フィルム層との間が接合されていない非接合領域、又は前記接合強度が該ヒートシール部における接合強度より低い弱接合領域となっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスタンディングパウチによれば、ヒートシール部においては十分な接合強度を有するとともに、内側フィルム層と外層とを容易に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明に係るスタンディングパウチの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すスタンディングパウチを底部側からみた斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すスタンディングパウチの水平方向に沿う断面を模式的に示す部分断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すスタンディングパウチの側壁の構造を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すスタンディングパウチの容器本体を展開した状態の一例を模式的に示す平面図であり、
図5(a)は、内側フィルム層の展開平面図であり、
図5(b)は、外層の展開平面図である。
【
図6】
図6(a)及び(b)は、
図1に示すスタンディングパウチの内側フィルム層と外層とを分離する方法を説明する斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明のスタンディングパウチの別の実施形態を示す斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示すスタンディングパウチの正面図である。
【
図8】
図8は、本発明のスタンディングパウチのさらに別の実施形態を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明のスタンディングパウチの一実施形態が示されている。
本実施形態のスタンディングパウチ(以下、単に「パウチ」ともいう。)1は、自立可能なスタンディングパウチであり、可撓性のシートから形成されている。パウチ1は、
図1に示すように、内容物の収容空間を形成する容器本体10を有する。容器本体10は、内容物の収容空間を有する胴部15と、注出部2とを備えている。
本実施形態において、胴部15は、
図1及び
図2に示すように、相対する一対の側壁11a,11bと、少なくとも下端部において該側壁11a,11bどうしを連結する襠部14と、一方の側壁11aを構成するシート材35と他方の側壁11b又は襠部を構成するシートとが熱癒着されたヒートシール部16とを有している。
また胴部15は、上端部において側壁11a,11bどうしを連結する襠部13を有している。上端部側の襠部13に注出部2が設けられている。以下、注出部2が設けられた方の襠部13を「天面部13」ともいい、注出部2が設けられていない方の襠部14を「底部14」ともいう。本発明のパウチは、上端部において側壁11a,11bが一部に注出部を形成する部材を介在させた状態で直接接合されている等の構成を有していてもよく、天面部13を有していなくてもよいが、パウチの自立性の向上、他の容器への内容物詰め替え時の安定性の向上、パウチの形状、特に内容物を収容したパウチの形状の維持の観点から、本実施形態のパウチ1のように、天面部13を有することが好ましい。パウチ1の形状が維持されることは、パウチ1の輸送効率や陳列性の向上の観点から好ましい。パウチ1の形状は特に制限されないが、後述する側部シール部s1に沿う方向に長い細長形状であることが好ましい。
【0012】
本実施形態のパウチ1は、容器本体10の底部14を水平面に設置させることで、自立可能である。斯かる自立状態において、パウチ1の高さ方向Zは、鉛直方向と一致する。すなわち、容器本体10の底部14が下方になり、容器1の高さ方向Zにおける該底部14の反対側(例えば注出部2側)が上方になる。以下、特に断らない限り、
図1~5に示す実施形態の容器1の説明は、自立状態におけるパウチ1の説明とする。
本実施形態のパウチ1は、側壁11a,11bに対し左右方向となる幅方向Xと、該幅方向Xに直交する奥行方向Yとを有している。以下、説明の便宜上、一対の側壁11a,11bの一方を「前側壁11a」,他方を「後側壁11b」ともいう。
容器本体10における一対の側壁11a,11bは、奥行方向Yにおいて対向配置されており、天面部13及び底部14は、高さ方向Zにおいて対向配置されている(
図1及び
図3参照)。
【0013】
胴部15が備える一対の側壁11a,11b及び2つの襠部13,14それぞれは、可撓性のシートによって形成されている。少なくとも一方の側壁11a,11bは、
図3及び4に示すように、樹脂製の内側フィルム層17と、該内側フィルム層17の外面側に配された外層18とを有している。本実施形態では、側壁11a,11bを形成する側壁形成シート35が、内側フィルム層17と外層18とが積層された積層構造Sを有している。外層18は、紙層又は該内側フィルム層とは異なる樹脂から構成されている。本実施形態では、天面部13及び底部14も前記積層構造Sを有している。より具体的には、天面部13を形成する天面部形成シート33及び底部14を形成する底部形成シート34が、前記積層構造Sを有している。なお
図5(a)及び(b)においては、天面部形成シート33、側壁形成シート35及び底部14を形成する底部形成シート34が有する内側フィルム層17にそれぞれ符号33a,35a,34aを付し、天面部形成シート33、側壁形成シート35及び底部14を形成する底部形成シート34が有する外層18にそれぞれ符号33b,35b,34bを付している。
【0014】
胴部15は、その内部に内容物の収容空間を有する。斯かる収容空間は、内側フィルム層17によって形成されている。胴部15を構成する各部11a,11b,13,14の接合状態について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
天面部13は、天面部形成シート33により形成されている。天面部形成シート33は、胴部15の上端部であって一対の側壁11a,11bの間に固定されている。より詳細には、奥行方向Yにおいて天面部形成シート33を、前側壁11a側の前半分と、後側壁11b側の後半分とに二等分したとき、前側壁11aの上縁部と、天面部形成シート33の前半分の周縁部とが、前側上部シール部t1により接合されている。また、後側壁11bの上縁部と、天面部13の後半分の周縁部とが、後側上部シール部t2により接合されている。前側上部シール部t1及び後側上部シール部t2それぞれは、天面部形成シート33と、側壁11a,11bの内側フィルム層17とを接合している。
【0015】
胴部15は、
図1に示すように、幅方向Xの両端部において、前側壁11aを形成する側壁形成シート35の両側縁部と、後側壁11bを形成する側壁形成シート35の両側縁とが接合された一対の側部シール部s1,s1を有している。側部シール部s1は、側壁11a,11bの幅方向Xの両端に位置している。この一対の側部シール部s1,s1は、前側上部シール部t1及び後側上部シール部t2の下端から下方に延びて形成されており、一対の側壁形成シート35における内側フィルム層17どうしを接合している。これにより、筒状の胴部15が形成されている。
【0016】
底部14は、
図2に示すように、底部形成シート34により形成されている。底部形成シート34は、胴部15の下端部であって一対の側壁11a,11bの間に固定されている。より詳細には、一対の側壁11a,11bにおける内側フィルム層17からなる筒状体の下端部と、底部14の周縁部とが下部シール部u1により接合されている。
胴部15は、このように、側壁形成シート35、天面部形成シート33、底部形成シート34の各部が接合されることによって袋状に形成されており、内部に、内容物の収容空間を有している。
【0017】
ヒートシール部16は、一対の側壁11a,11bそれぞれの周縁部に位置している。本実施形態において、各側壁11a,11bのヒートシール部16は、一対の側部シール部s1,s1と、前側上部シール部t1又は後側上部シール部t2と、下部シール部u1とを含んでいる。
パウチ1は、高さ方向Zの下部に、一方の側壁11aを構成する側壁形成シート35と他方の側壁11bを構成する側壁形成シート35とが、両者間に、2つ折りされた底部形成シート34が介在した状態で一体化されている部分を有していてもよく、その場合、当該部分も側部シール部s1の一部とする。
【0018】
天面部13は、
図1に示すように、幅方向Xにおける中央部がその両側に位置する側部よりも上方に位置しており、該側部は傾斜した部分となっている。斯かる中央部に、注出部2が形成されている。
容器本体10は、胴部15(天面部13)から突出した注出部2を有している。注出部2は、注出部形成部材20により構成されている。斯かる注出部形成部材20は、
図1に示すように、筒状部21とフランジ部23とを備えており、該筒状部21が、板状のフランジ部23に立設されている。注出部形成部材20は、フランジ部23において筒状部21が設けられている側の面が胴部15の天面部13の内面と接するように固定されており、筒状部21が天面部13を貫通し、該天面部13から突出した状態で固定されている。筒状部21は、その内部を貫通する注出路を有しており、該注出路の上端に開口部22を有している。筒状部21は、その外周面に複数の螺条が形成されている。
パウチ1は、注出部2に装着されたキャップ3を備えている。キャップ3は、その内周面に複数の螺条が形成されており、筒状部21に脱着自在に螺合可能である。キャップ3は、注出部2に装着された状態において開口部22を閉鎖している。
【0019】
側壁11a,11bは、前述したように、内側フィルム層17と外層18とが積層した積層構造Sを有している。一対の側壁11a,11bのうち少なくとも一方の側壁は、外層18における内側フィルム層17側に中間層19を有する。中間層19は、加熱により接合力が向上する材料からなる。外層18は、ヒートシール部16において中間層19を介して内側フィルム層17に接合されている。本実施形態においては、両方の側壁11a,11bが中間層19を有している。
【0020】
本実施形態では、
図1に示すように、ヒートシール部16以外の部分における外層18にスリット5が設けられている。スリット5は、外層18を厚み方向に貫通して形成されている。スリット5は一つのみ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。スリット5は、側壁11a,11b及び天面部13のいずれか一方にのみ設けられていてもよいし、側壁11a,11b及び天面部13の両方に設けられていてもよい。スリット5が側壁11a,11bに設けられている場合、該スリット5は、一方又は双方の側壁11a,11bにおけるヒートシール部16,16に囲まれた領域に形成されていることが好ましい。本実施形態では、スリット5は、前側壁11aの上端部、及び天面部13の幅方向Xにおける端部それぞれに設けられている。
【0021】
側壁11a,11bにおけるヒートシール部16以外の部分は、外層18と内側フィルム層17との間が接合されていない非接合領域であってもよいし、接合強度がヒートシール部16における接合強度より低い弱接合領域であってもよい。本実施形態では、側壁11a,11bにおけるヒートシール部16以外の部分は、弱接合領域となっている。より具体的には、
図3に示すように、側壁11a,11bにおけるヒートシール部16以外の部分にも中間層19が配されており、ヒートシール部16以外の部分も、該中間層によって外層18と内側フィルム層17とが接合されている。
【0022】
上述のように、中間層19は加熱により接合力が向上する材料からなるところ、ヒートシール部16は、一方の側壁11aを構成するシート材と他方の側壁11b又は襠部を構成するシート材とが熱融着されて形成されている。したがって、側壁11a,11bにおけるヒートシール部16においては、ヒートシール部16以外の部分に比して、中間層19の接合力が向上しており、外層18と内側フィルム層17とがより強固に接合している。このように、外層18と内側フィルム層17との接合強度が、ヒートシール部16においては相対的に高く、該ヒートシール部16以外の部分では相対的に低いことの利点は以下のとおりである。
【0023】
ヒートシール部16においては、外層18と内側フィルム層17との接合強度が相対的に高いため、該ヒートシール部16は十分な接合強度を有する。これにより、パウチ1の自立性及び形状の安定性を一層向上させることができる。また、ヒートシール部16は、側壁形成シート35を製袋してパウチ1を製造するときに、該パウチ1の幅方向Xの端部に位置するので、ヒートシール部16において外層18が浮き、剥がれてしまう恐れがあるところ、ヒートシール部16において外層18と内側フィルム層17との接合強度が相対的に高いことにより、ヒートシール部16において外層18が剥がれることを防止することもできる。また、ヒートシール部16が十分な接合強度を有することにより、パウチ1の落下衝撃耐性を向上させることもできる。
一方、ヒートシール部16以外の部分においては、外層18と内側フィルム層17との接合強度が相対的に低いため、例えばパウチ1の内容物を使い切ったあとに、外層18と内側フィルム層17とを容易に分離することができる。本実施形態のパウチ1は、外層18にスリット5を有していることにより、外層18と内側フィルム層17とを一層容易に分離することができるようになっている。具体的には、
図6(a)に示すように、側壁11aに形成されたスリット5に指等を差し込み、外層18を把持した状態で、矢印P方向に外層18を引っ張ることによって外層18の上部を剥がし、その後、
図6(b)に示すように、内側フィルム層17に接合されたままの外層18の一部を把持し、矢印Q方向に外層18を引っ張ることで、残りの外層18も剥がすことができる。パウチ1は、内側フィルム層17と外層18とを容易に分離することができるので、該パウチ1をリサイクルするときに内側フィルム層17と外層18と別々回収することが容易であり、リサイクル性が向上している。例えば、外層18を剥がした内側フィルム層17を水平リサイクルすることによって、品質のよいパウチのリサイクル材料を得ることができる。
【0024】
このように本実施形態のパウチ1によれば、ヒートシール部16においては十分な接合強度を有し、意図しない外層の剥がれを防止できるとともに、内側フィルム層と外層とを容易に分離することができる。この効果が確実に奏されるようにする観点から、外層18と内側フィルム層17との接合強度は、ヒートシール部16の少なくとも側部シール部s1において16N/15mm未満とすることが好ましい。
本発明のパウチは、一対の側壁11a,11bの少なくとも一方、好ましくは両方において、ヒートシール部16の少なくとも側部シール部s1における前記接合強度が上述した範囲内であることが好ましい。また、側部シール部s1に加えて、前側上部シール部t1又は後側上部シール部t2を有する場合、前側上部シール部t1又は後側上部シール部t2についても、前記中間層19が存在し、前記接合強度が上述した範囲内であることが好ましい。
【0025】
接合強度は、以下の方法により測定することができる。
<接合強度の測定方法>
パウチ1のヒートシール部16において前側壁11aと後側壁11bとを分離し、各側壁11a,11bにおけるヒートシール部16に対応する部分から、ヒートシール部16の延在方向に直交する方向を長さ方向とする、幅15mm、長さ100mmの短冊状の測定サンプルを切り出す。例えば、側部シール部s1における接合強度を測定する場合は、側壁の幅方向Xを長さ方向とし、該長さ方向の一端側に側部シール部s1を有する測定サンプルを切り出す。そして、測定サンプルにおける外層18と内側フィルム層17との接合強度を、T型剥離試験機(例えば、島津製作所製、オートグラフ AG-5kNX)により測定する。剥離の向きは測定サンプルの長辺方向に沿った向きとする。測定は、前側壁11a及び後側壁11bそれぞれから切り出した測定サンプルについて行い、各測定サンプルにおける極大点強度の最大値の平均値を、接合強度とする。なお、前述した寸法の測定サンプルを切り出すことができない場合、幅が15mmに満たない、又は長さが100mmに満たない測定サンプルを切り出して同様の測定を行い、測定値を幅15mmあたりの値に換算して求めてもよい。
【0026】
ヒートシール部16の少なくとも側部シール部s1における外層18と内側フィルム層17との接合強度は、パウチ1の自立性及び形状の安定性をより一層向上させる観点、ヒートシール部16における外層18の剥がれを防止する観点、並びにパウチ1の落下衝撃耐性を向上させる観点から、好ましくは5N/15mm超、より好ましくは9N/15mm以上であり、外層18と内側フィルム層17とを剥離しやすくする観点から、好ましくは14N/15mm以下、より好ましくは12N/15mm以下であり、これらの両立の観点から、好ましくは5N/15mm超14N/15mm以下、より好ましくは9N/15mm以上12N/15mm以下である。
【0027】
上述のように、側壁11a,11bにおけるヒートシール部16以外の部分は、非接合領域であってもよいが、パウチ1の自立性及び形状の安定性をより一層向上させる観点、及び側壁形成シート35を製袋してパウチ1を製造するときに、外層18と内側フィルム層17とのずれを抑制する観点から、ヒートシール部16以外の部分は弱接合領域であることが好ましい。具体的には、ヒートシール部16以外の部分の接合強度は、パウチ1の自立性及び形状の安定性をより一層向上させる観点、及び側壁形成シート35を製袋してパウチ1を製造するときに、外層18と内側フィルム層17とのずれを抑制する観点から、好ましくは0N/15mm超、より好ましくは0.2N/15mm以上であり、外層18と内側フィルム層17とを剥離しやすくする観点から、好ましくは2N/15mm以下、より好ましくは1N/15mm以下であり、これらの両立の観点から、好ましくは0N/15mm超2N/15mm以下、より好ましくは0.2N/15mm以上1N/15mm以下である。
ヒートシール部16以外の部分の接合強度は、上述の<接合強度の測定方法>と同様にして測定することができる。ヒートシール部16以外の部分の接合強度を測定する場合、測定サンプルは、ヒートシール部16以外の部分から切り出す。
【0028】
次に、側壁11a,11bが有する積層構造Sの各層について、説明する。
内側フィルム層17は、樹脂素材により構成された樹脂フィルム層であり、単層であっても、基材となる複数の樹脂フィルム層が積層された構成であっても良い。内側フィルム層17から得られるリサイクル材料の品質向上という観点から、該内側フィルム層17は、単一種樹脂素材により構成されたものであるのが好ましい。ここで、「単一種樹脂素材により構成された」とは、内側フィルム層17の単層又は複数の層を構成している樹脂素材が全て同じ種類に分類される(単一種である)ことを意味する。つまり内側フィルム層17がモノマテリアルであることを意味する。したがって、内側フィルム層17が、複数の樹脂フィルム層が積層された構成である場合、それらの樹脂フィルム層を構成する全ての樹脂素材がいずれも同じ種類に分類されることを意味する。なお、内側フィルム層17の表面や積層間には、例えばコーティング層などをさらに含んでも良いが、内側フィルム層17として樹脂素材以外、より好ましくは上記した単一種樹脂素材以外の素材を実質的に含まない構成であることが好適である。ここで、「実質的に含まない」とは、質量割合として1%未満であることを意味し、0.5%未満であることが好ましく、0%であることが最も好ましい。以下においても同様である。
【0029】
内側フィルム層17を構成する樹脂素材としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂などが好ましい例として挙げられる。ポリエチレン系樹脂には、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、これらのいずれかを延伸した一軸延伸ポリエチレン(OPE)、二軸延伸ポリエチレン(BOPE)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などが包含され、また、ポリエステル系樹脂には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、非晶性ポリエチレンテレフタレート(非晶性PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などが包含される。水平リサイクル等のし易さなどの観点から、この内側フィルム層17を構成する樹脂素材は、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂を含む樹脂素材であるのがより好ましく、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂素材であるのがさらに好ましく、ポリオレフィン系樹脂の単一種樹脂素材であるのがさらに好ましい。特に、内側フィルム層17がポリエチレン系樹脂の単一種で構成されていると、複数の樹脂フィルム層が積層された構成であっても積層間の接合をヒートシールにより容易に行うことができ、ラミネート接合を行うシーラント層を形成する必要がない。
【0030】
また、内側フィルム層17は、ポリオレフィン系樹脂、より好ましくはポリエチレン系樹脂の単一種で構成されており、且つガスバリア性を有するポリオレフィン系樹脂、より好ましくはエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)により構成されたガスバリア層を少なくとも含む構成であるのが好適である。収容物の香気成分(揮発成分)などが外部に抜けることなどを抑制することができるからである。このガスバリア層のガスバリア性は、限定されるものではないが、23℃65%RHにおいて100mL/m2・day・atm以下(MOCON社製OX-TRAN2/21MLにより、JIS K7126に準拠した方法によって測定)であるのが好ましく、50mL/m2・day・atm以下であるのがより好ましく、10mL/m2・day・atm以下であるのがさらに好ましい。
【0031】
外層18は、上述のように、紙層又は内側フィルム層17とは異なる樹脂から構成されている。内側フィルム層17とは異なる樹脂とは、該内側フィルム層17を構成する樹脂とは別の種類に分類される樹脂を意味する。なお、内側フィルム層17を構成している樹脂素材が複数種ある場合には、この複数の種類の樹脂素材のいずれとも異なる種類の樹脂素材を少なくとも含むことを意味する。外層18が紙層からなる場合、該紙層(ペーパーフィルム層)は、紙材の特性(印刷適性、遮光性など)を有するため、この外層18に内側フィルム層17の特性とは異なる紙材の特性を付与することができる。なお、この紙層の表面にニスやセルロースナノファイバー(CNF)などがコーティングされていても良い。また、この紙層が一定の厚さ(例えば坪量30g/m2以上、さらには坪量50g/m2以上)を有すると、包装容器100が上記した自立がよりし易くなる。
【0032】
この紙層を構成する紙材としては、例えば、クラフト紙、上質紙、模造紙、グラシン紙、パーチメント紙、合成紙、白板紙、マニラボール、ミルクカートン原紙、カップ原紙、アイボリー紙などが挙げられる。そして、その原料としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)あるいは針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)に代表される針葉樹由来のパルプや広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)に代表される広葉樹由来のパルプ等の木材パルプ、綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプ、キュプラやレーヨン等の再生セルロース繊維などが挙げられる。耐久性の観点から、この紙層は、NBKP又はNUKPを原料として用いた紙材により構成されたものであるのが好ましく、特に、これらのうち繊維長が比較的長いもの(例えば繊維長が0.5mm以上であるNBKP又はNUKP)を原料として用いた紙材により構成されたものであるのがより好ましい。
【0033】
外層18が、内側フィルム層17とは異なる樹脂から構成されている場合も、外層18に内側フィルム層17の特性とは異なる特性を付与することができる。例えば、内側フィルム層17がポリエチレン系樹脂の単一種で構成されている場合、このポリエチレン系樹脂とは異なる種類に分類される樹脂素材(ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂など)により構成された層を含む外層18とすることにより、ポリエチレン系樹脂により構成されたフィルム層の特性とは異なる特性(蒸着適性、印刷適性、耐熱性など)を付与することができる。そして、例えばポリエステル系樹脂により構成された樹脂層として、ペットボトルを原料としたリサイクルPETフィルムを用いることもできる。
【0034】
なお、外層18は、少なくとも内側フィルム層17とは異なる樹脂又は紙材により構成された層を含む限り、これらのいずれかの層の単層であっても良く、あるいは、複数の層が積層された構成(例えば複数の紙層が積層された構成、複数の樹脂層が積層された構成、紙層と樹脂層とが積層された構成など)であっても良い。さらに、これら以外の材料により構成された層(例えば金属フィルム層(アルミニウムフィルム層、銅フィルム層等)やストーンペーパー層など)を含んでいても良い。また各層の厚みは、限定されるものではないが、紙層であれば坪量30~200g/m2程度、さらには坪量30~100g/m2程度、上記した樹脂層であれば10~200μm程度、さらには10~100μm程度が例示される。
【0035】
中間層19は、外層18と内側フィルム層17とを接合可能な接合性能(シート材として一体となって機能させることが可能な接合性能)を有し、且つ、物理的又は化学的な処理によって外層18を内側フィルム層17から剥離させることが可能な易剥離性を有する材料により構成されていることが好ましい。
【0036】
この「易剥離性」は、物理的又は化学的な処理(物理的な力の負荷、水や有機溶媒などとの接触、加熱など)によって外層18を内側フィルム層17から剥離させることが可能な構成であれば限定されない。なお、この構成には、外層18を内側フィルム層17から剥離させたときに、内側フィルム層17に外層18の一部がわずかに残存する場合(内側フィルム層17への外層18の残存が、パウチ1における外層18の全質量の例えば10質量%未満、さらには5質量%未満となるように剥離させることが可能な構成など)も包含されるが、特に、この中間層19は、物理的又は化学的な処理によって外層18を内側フィルム層17に実質的に残存させないように剥離させることが可能な構成であるとより好ましい。そして、これらの構成としては、例えば、中間層19において外層18との接合側の方が内側フィルム層17との接合側よりも接合強度が強い構成や、外層18との接合側の接合強度及び内側フィルム層17との接合側の接合強度が中間層19自体の破壊強度よりも強い構成などが例示される。また、加熱粘着剤又はイージーオープン樹脂等により構成された層なども例示される。
中間層19を加熱粘着剤によって構成することにより、ヒートシール部16の接合強度と、該ヒートシール部16以外の部分の接合強度とを容易に異ならせることができるので、ヒートシール部16における接合強度を担保するとともに、外層18と内側フィルム層17との剥離性を向上させることが容易となる。加熱粘着剤としては、アクリル系2液架橋型粘着剤等が挙げられる。アクリル系2液架橋型粘着剤としては、例えば商品名「BPS6458」(トーヨーケム株式会社製)、商品名「BPS6017」(トーヨーケム株式会社製)等が好ましい。
【0037】
中間層19をイージーオープン樹脂によって構成することにより、外層18と内側フィルム層17とを一層容易に剥離することができるようになる。イージーオープン樹脂は、外層18と内側フィルム層17とをヒートシールなどによって接合することができるシーラント樹脂層を形成可能な樹脂であって、さらに、この接合力を上回る物理的な力によってシーラント樹脂層で剥離させることが可能な樹脂である。イージーオープン樹脂には、シーラント樹脂層の接合界面で剥離する形態を有する界面剥離タイプ、接合界面付近で凝集破壊(素材自身の破壊)を伴いながら剥離する凝集剥離タイプ、及び多層フィルムで構成されたシーラント樹脂層の層間が剥離する層間剥離タイプなどがあるが、内側フィルム層17がポリオレフィン系樹脂の単一種で構成されている場合などでは、内側フィルム層17側に中間層19からの異種材料の剥がれ残りが発生することを抑制するため、界面剥離タイプ又は凝集剥離タイプを使用することが好ましい。なかでも、コスト面及び接合の安定性から凝集剥離タイプを使用するのがより好ましい。凝集剥離タイプとしては、内側フィルム層17がポリエチレン系樹脂の単一種で構成されている場合、ポリエチレン系樹脂と他の種類の樹脂による二元系であり、剥離後に内側フィルム層17に残る剥がれ残りがポリエチレン系樹脂のみであるようなイージーオープン樹脂を用いることがより好ましい。
【0038】
また中間層19は、紙、不織布、ポリエステル系樹脂等により構成された基材層の両方の表面に粘着剤が塗工された構成であっても良い。この塗工は全面塗工であっても良く、あるいはパターン塗工であっても良い。そして、このような構成の場合、この粘着剤が塗工された基材層の両面に外層18と内側フィルム層17とがそれぞれ接合される。前記基材層の表面に塗工される粘着剤は、加熱粘着剤であってもよいし、加熱粘着剤ではない、通常の粘着剤であってもよい。
【0039】
パウチ1の側壁11a,11bがこのような中間層19を備えていることにより、外層18を内側フィルム層17から容易に剥離させて分離することができ、接合されていた外層18の残存がないあるいは残存が極めて少ない内側フィルム層17を容易に取得することができる。そして、この内側フィルム層17を水平リサイクルすること等によって、品質の良い包装容器のリサイクル材料を得ることができる。
【0040】
本実施形態のパウチ1は、外層18を内側フィルム層17から剥離するための起点となる剥離誘導部を有することが好ましい。剥離誘導部は、外層18を剥離する起点となり得るような構成とすることができる。ここで、「起点」とは、必ずしも最初に剥離が開始する構成でなくても良く、外層18の全体が剥離するまでにおける前半段階において剥離させることができ、外層18の全体の剥離を誘導できる構成であれば良い。つまり、パウチ1は、剥離誘導部よりも早く外層18の剥離が開始する部分を有していてもよい。
【0041】
側壁11a,11bは、中間層19を介して外層18が内側フィルム層17に接合され、接合強度が16N/15mm未満であるヒートシール部16によって三方又は四方が囲まれた領域を有する場合、該領域に剥離誘導部を有することが好ましい。また襠部についても、中間層19を介して外層18が内側フィルム層17に接合され、接合強度が16N/15mm未満であるヒートシール部16によって三方又は四方が囲まれた領域を有する場合、該領域に剥離誘導部を有することが好ましい。
【0042】
剥離誘導部としては、例えば
図1に示すようなスリット5、外層18の一部に形成されたミシン目、側壁形成シートの周縁から内側に向かって一部が切り込み又は切り欠きされているノッチ部、側壁形成シートの周縁部の少なくとも一部において外層18が内側フィルム層17よりも延出している延出部、中間層19の接合性能が他の領域よりも弱くなるように調整された領域などが例示される。また、これらのいずれかを複数備える構成であっても良く、これらの2以上を組み合わせた構成であっても良い。パウチ1が剥離誘導部を有することにより、剥離誘導部において、外層18が一層剥離しやすくなり、外層18を、該剥離誘導部を起点として内側フィルム層17から容易に分離することができる。
【0043】
ここで、上述した延出部は、側壁形成シートにおいて、同じ形状の外層18と内側フィルム層17との積層、接合時における位置ズレにより形成されるものではなく、外層18が内側フィルム層17とは別形状の部位を有し、外層18におけるこの別形状の部位により形成されるものであることが好ましい。例えば、外層18の周縁の一部が内側フィルム層17の周縁から延出している形態や、内側フィルム層17の周縁の一部が外層18の周縁よりも内方に位置しており、結果的に外層18の周縁の一部が内側フィルム層17の周縁から延出している形態等が挙げられる。
【0044】
本実施形態のパウチ1は、例えば、積層構造Sを有するシート材を、製袋することにより製造することもできる。具体的には、
図5(a)に示すような展開形状に切り取られた内側フィルム層17と、
図5(b)に示すような展開形状に切り取られた外層18とが中間層19により接合されたシート材を、外層18が外側に配置されるように折り畳み、側壁11a,11bの両側部どうしを熱融着し、ヒートシール部16を形成する。そして、天面部13に注出部2を取り付ける。その後、天面部13の周縁部と側壁11a,11bの上縁部とを接合し、前側上部シール部t1及び後側上部シール部t2を形成することにより、パウチ1が製造される。なお、ヒートシール部16を形成する前に、天面部13に注出部2を取り付けてもよい。
【0045】
次に、本発明のスタンディングパウチの別の実施形態について
図7及び8を参照しながら説明する。これらの実施形態については、先に述べた実施形態と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については、先に述べた実施形態についての説明が適宜適用される。また、
図7及び8において、
図1ないし
図6と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0046】
図7に示すパウチ1Bは、側壁11a,11bの層間に形成された非接合領域59に充填剤が封入されて構成された支持部7を備えている。非接合領域59は、積層構造Sが有する層間に形成することができ、例えば外層18と内側フィルム層17との間に形成することができる。また外層18及び内側フィルム層17のいずれか一方又は両方が複数の層からなる場合、該外層18の複数の層間及び内側フィルム層17の複数の層間のいずれか一方又は両方に形成することもできる。パウチ1Bにおいて、非接合領域59は、外層18と内側フィルム層17とを該非接合領域59の形状を画定するようにその周縁に沿って接合することで、該外層18と該内側フィルム層17との層間に形成されている。非接合領域59は、天面部13、底部14、側壁11a,11bに渡って連続して配されるように形成されている。パウチ1Bは、例えば天面部13に、非接合領域59に充填材を導入する口部(図示せず)が形成されていることが好ましい。非接合領域59は、口部から充填材となる例えば空気が充填(封入)されることで支持部7を形成する。パウチ1Bが支持部7を備えることは、自立時の姿勢確保、及び剛性を高める観点から、好ましい。
パウチ1Bは、複数の独立した非接合領域59を有していてもよい。また、天面部13、底部14、側壁11a,11bのいずれかに1又は2以上に、非接合領域59を有していてもよい。パウチ1Bの内容物を使い切った後には、非接合領域59から充填材を除去することにより、パウチ1Bは剛性を失うため、該パウチ1Bを容易に小さく押しつぶすこともできる。
【0047】
図8に示すパウチ1Cは、天面部13を有していない。パウチ1Cは、一対の側壁11a,11bの上端部どうしが直接接合されている。パウチ1Cにおいては、側壁11a,11bの上端部の一部がヒートシール部16から延出した延出部40が形成されている。延出部40においては、外層18と内側フィルム層17とは接合されていない。また、側壁11a,11bの下端部においても、外層18と内側フィルム層17とが接合されていない。パウチ1Cは、延出部40又は側壁11a,11bの下端部の外層18を把持し、該外層18を引っ張ることにより、該外層18を内側フィルム層17から剥がすことができる。
【0048】
パウチ1Cは、該パウチ1Cを製袋するときに、一対の側壁11a,11bの上端部の一部に、該上端部どうしの非接合部を形成し、該非接合部から内容物を収容した後に、該非接合部をヒートシール等によって接合して、パウチ1,1Bを密閉してもよい。パウチ1Cを使用するときには、例えば一対の側壁11a,11bの上端部どうしの接合部の一部をハサミ等によって切断して開口部を形成し、該開口部から内容物を注出してもよい。
【0049】
次に、上述した各実施形態に共通する事項について説明する。
パウチ1,1B,1Cは、例えば、被詰め替え容器に内容物を再充填又は補充するための詰め替え容器として好ましく用いられる。被詰め替え容器としては、例えば、ディスペンサー付のキャップを備えた注出容器等が挙げられる。
また、パウチ1,1Bに収容される内容物は、液体でも粉体でもよい。内容物としては、例えばシャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアリンス等の液状のヘアケア剤、ボディソープやハンドソープ等の液体石鹸、衣類や食器用の液体洗剤、柔軟剤や漂白剤、バストイレや床洗浄用の液体洗浄剤、液状の化粧品、液状の医薬品等が挙げられる。
【0050】
本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。
例えば、上述したパウチ1,1Bにおいては、一対の側壁11a,11b、及び一対の該側壁11a,11bの上端部側に位置する襠部14、即ち天面部13の外面の全域が、外層18によって形成されているが、側壁11a,11b及び天面部13の外面の一部のみが外層18によって形成されていてもよい。換言すれば、側壁11a,11b及び天面部13において、内側フィルム層17の全域を外層18が覆っていてもよいし、該内側フィルム層17の一部のみを外層18が覆っていてもよい。パウチ1,1Bを遮光性とする観点からは、側壁11a,11b及び天面部13において、内側フィルム層17の全域を外層18が覆っていることが好ましい。またこの場合、外層18は着色されていることが好ましい。なお、底部14においても、内側フィルム層17の全域を外層18が覆っていてもよいし、該内側フィルム層17の一部のみを外層18が覆っていてもよい。
【0051】
一対の側壁11a,11b及び天面部13の外面の全域が、外層18によって形成されており、一対の該側壁11a,11bそれぞれと該天面部13とに、側部シール部s1におけるのと同様に、外層18が中間層17を介して内側フィルム層17に16N/15mm未満の接合強度で接合されている、一対の側部シール部s1,s1、前側上部シール部t1及び後側上部シール部t2を有していることも好ましい。
上端部側の襠部13の周縁部に、側壁11a,11bを構成するシート材と襠部13を構成するシート材とが熱融着されたヒートシール部を有する場合、該ヒートシール部においても、側部シール部s1におけるのと同様の接合強度で、外層18が中間層17を介して内側フィルム層17に接合されていてもよい。下端部側の襠部14の周縁部に、側壁11a,11bを構成するシート材と襠部14を構成するシート材とが熱融着されたヒートシール部を有する場合、該ヒートシール部においても、側部シール部s1におけるのと同様の接合強度で、外層18が中間層17を介して内側フィルム層17に接合されていてもよい。
【実施例0052】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0053】
〔実施例〕
図8に示す形態のパウチ1Cを製造した。内側フィルム層17としては、LLDPEの層、EVOHの層及びLLDPEの層が積層されたものを用いた。中間層19としては、イージーオープン樹脂を用いた。外層18としては、PET12を用いた。ヒートシール部16の接合強度は、5N/15mmであった。
【0054】
〔比較例〕
ヒートシール部16の接合強度が、16N/15mmである以外は、実施例のパウチと同様のパウチを製造した。
【0055】
〔評価〕
実施例及び比較例のパウチについて、4名の専門パネラーによって外層18の剥がしやすさを評価した。具体的には、各パウチについて、(1)延出部40の外層18を把持して該外層18を剥がす方法、及び(2)側壁11a,11bの下端部において外層18と内側フィルム層17との間に指を入れて、該外層18を把持し該外層18を剥がす方法の2種類の方法により、剥がしやすさを評価した。剥がしやすさは、以下の評価基準により評価した。
〇:容易に剥離できる。
×:剥離が困難である。
【0056】
〔結果〕
実施例のパウチにおいては、上記(1)及び(2)の両方の方法において4名のパネラー全員の評価が〇であった。具体的には、4名のパネラー全員が、上記(1)及び(2)の方法で外層18を容易に剥がすことができた。これに対し、比較例のパウチにおいては、上記(1)及び(2)の両方の方法において4名のパネラー全員の評価が×であった。具体的には、4名のパネラー全員が、上記(1)及び(2)のいずれの方法でも外層18を剥がすことはできなかった。したがって、実施例のパウチは、外層18と内側フィルム層17とを容易に分離することができることが分かる。